説明

複数の反応空間および電極を備える容器

本発明は、少なくとも3つの反応空間(2)を備える容器(1)に関し、当該反応空間(2)は、前記反応空間(2)内に電界を生じさせる電圧を印加するための少なくとも1つの電極ペアを有し、且つ、幾何学的に少なくとも1列に配置されているか、および/または、電気的に少なくとも1列に接続されており、1つの反応空間(2)の少なくとも1つの電極(3、4)は、少なくとも1つの他の反応空間(2)との共通電極(3、4)である。本発明によれば、n+x個の電極(3、4、5)が設けられる(ここで、nは反応空間(2)の数であり、n≧3であり、xは列の数であり、x≧1である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つの反応空間を備える容器に関し、その反応空間は、いずれも、反応空間内に電界を生じさせる電圧を印加するための少なくとも1つの電極ペアを有し、且つ、幾何学的に少なくとも1列に配置されているか、および/または、電気的に少なくとも1列に接続されており、1つの反応空間の少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの他の反応空間との共通電極である。本発明はさらに、少なくとも2つの反応空間を備える容器用の蓋に関し、その反応空間は、いずれも、反応空間内に電界を生じさせる電圧を印加するための少なくとも1つの電極を有し、且つ、幾何学的に少なくとも1列に配置されているか、および/または、電気的に少なくとも1列に接続されており、電極が接点によって電気的にコンタクトされることが可能であり、蓋が反応空間を覆っている。本発明はさらに、上記容器の製造方法に関し、その方法では、各反応空間ごとに、導電性ポリマーで形成される少なくとも2つの領域が射出成形型に射出され、非導電性ポリマーで形成され反応空間を区切る壁領域が上記少なくとも2つの領域の周囲に射出される。
【背景技術】
【0002】
電極を備える容器は、反応バッチが電圧パルスで行わなければならない用途、たとえば、生きた細胞の、エレクトロポレーション、電気融合、および電気刺激など、に特に用いられる。このタイプの容器は複数の反応空間を有することができ、その場合には、それぞれの反応空間は電極を備えることができる。それらの容器は、マルチウェルプレート(multiwell plate)、マイクロタイタープレート(microtitre plate)、またはマルチウェルとして、一般的に知られている。それらは、多数の反応バッチを同時にテストしなければならない、生化学および製薬の用途で最も使用されている。その場合、HT分析(HT=高スループット)の場合には特にそうであるが、できるだけ多くの反応空間、たとえば384個の反応空間、を提供するための努力が知られており、そこでは、多数のサンプルができるだけ短時間にテストされなければならない。
【0003】
公知の容器は、通常、複数の反応空間からなり、反応空間はいずれも、反応空間内において反応バッチ(たとえば細胞懸濁液)と接触している2つの電極を有する。反応空間の2つの電極は、反応空間の内部において電圧が印加される場合、電界と電流のフローとを生じさせ、たとえば直流の場合には、それらは異なる電位および/または極性を有する。この場合、異なる反応空間の同じ極性を有する電極(すなわち、たとえば、すべてのカソードおよび/またはすべてのアノード)は、一体として構成されているか、または互いに電気的に結合されているかのいずれかであり、そのため、それらは共通の電気的なコンタクトを介して電源に接続され得る。
【0004】
電圧パルスによる負荷は、そのような容器の反応空間の電荷を蓄積するための1つまたは2つの蓄電装置を含む特別なスイッチ配列によって生じる。蓄電装置はいずれも、所定の電気量が充電され所望量の放電によって所定の電圧パルスを出力できるコンデンサである。蓄電装置は、電気的スイッチ(たとえばパワー半導体)であって、蓄電装置の所望量の放電をスイッチする電気的スイッチに接続される。2つの蓄電装置を用いることによって、1つの後に次が続くかまたは互いに結合している2つの短い電圧パルスの出力が可能になり、そのことは、所定の細胞タイプのエレクトロポレーションにおいて長所になりえる。コンタクトピンは、通常、容器の電極の電気的なコンタクトのために用いられ、そのコンタクトピンは、アーム上またはプレート上に配置され、手動または自動で電極と接触させられる。
【0005】
複数の反応空間を備える容器は、欧州特許出願公開第1,577,378号(特許文献1)で知られており、その容器は複数のモジュールを含む。この場合、各モジュールは、平行に配置された2列の反応空間を含み、その反応空間はいずれも、反応空間内に電界を生じさせる電圧を印加するための、第1および第2の電極からなる電極ペアを有する。列の異なる反応空間の同じ側に配置された第1の電極は、導電的に結合され、一方、反応空間の第2の電極は、電気的に別々に接続され得る。この場合、隣接する列の異なる反応空間の第1電極であって対向するように配置された第1の電極も、導電的に結合される。この公知の容器では、すべての反応空間は、別々にあるいは個々にアドレスすることが可能であり、すなわち、他の反応空間とは無関係に、分離している各反応空間に電圧パルスを与えることが可能である。
【0006】
複数の反応空間を備える容器は、さらに米国特許第5,183,744号(特許文献2)でも知られており、その容器では、同様に、分離している反応空間は別々にアドレス可能である。この公知の容器の分離している各反応空間は、2つの電極を備えており、いずれの場合も、電極ペアの電極のうちの1つは、反応空間の列にある他の反応空間の対応する電極に電気的に結合される。各反応空間の電極ペアのもう一方の電極は、別々に電気的にコンタクトされ、その結果、分離している各反応空間に個々に電圧パルスを与えることができる。米国特許第5,183,744号は、複数の反応空間を備える容器をさらに開示しており、その容器では、分離している反応空間の電極は、マトリクス状に互いに接続されている。この場合、マトリクスは、交差している導体路(conductor track)によって形成され、導体路は、それぞれの交差ポイントにおいて絶縁層によって互いに分離されている。分離している層は、分離している各反応空間が理論的にアドレス可能なように、接点を介して導体路に接続されている。すなわち、交差する2つの導体路に電圧が印加される場合、理論的に、それら2つの導体路に接続されている反応空間のみに電圧が与えられる。しかしながら、そのようなマトリクスの場合には寄生電流が発生することが実務上確認されており、その結果、電流は、意図していないのに他の反応空間にも流れる。そのため、このタイプの解決策は、望ましくない副作用が生じるという短所を有し、そのことは、このタイプの容器を用いて行われる方法の効率および再現性を著しく害する。
【0007】
同様に、国際公開第WO2005/044983(A2)号パンフレット(特許文献3)は、複数の反応空間を備える容器を開示しており、その容器では、各反応空間は、電圧を印加するための電極ペアを有する。この場合、すでに米国特許第5,183,744号で知られているように、電極は、マトリクス状に交差する導体路によって互いに接続されている。そのため、ここでも同様に、寄生電流、および、その結果の望ましくない副作用を防止できない。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0231873号(特許文献4)は、複数の反応空間を備える容器を開示しており、その容器では、分離している各反応空間は、対向するように配置された2つの電極を備えている。しかしながら、この容器の場合には、分離されている反応空間が、個々にアドレス可能ではなく、それぞれ複数の反応空間からなり分離しているグループのみに、電圧パルスが同時に与えられる。
【0009】
複数の反応空間を備える容器は、さらに国際公開第WO2007/094947(A2)号パンフレット(特許文献5)でも知られており、その容器では、各反応空間は、対向するように配置された2つの電極を有する。しかしながら、この公知の容器は、分離している反応空間が個々にアドレス可能でなく単にグループとしてアドレス可能であるにすぎない、という短所を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,577,378号明細書
【特許文献2】米国特許第5,183,744号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2005/044983号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0231873号明細書
【特許文献5】国際公開第WO2007/094947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すべての公知の容器は、反応空間が別々にアドレス可能ではないという短所、または、容器が全体として非常に多くの電極を有している(電極の数は、反応空間の数の2倍である)という短所を有している。このことは、容器の寸法が決められている場合に、分離している反応空間の動的および静的体積の減少をもたらす。
【0012】
本発明の目的は、最初に述べたタイプの、個々にアドレス可能な反応空間を備える容器であって、決められた容器の寸法において、分離している反応空間の、増大した動的および静的体積を有する容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記目的は、最初に述べたタイプの容器であって、n+x個の電極が設けられた容器によって達成される(ここで、nは反応空間の数であり、n≧3であり、xは列の数であり、x≧1である)。容器の決められた寸法における、分離している反応空間の動的体積は、電極の数の削減によって最大限に増大される。電極間(すなわち、その内部で実際の反応またはプロセスが基本的に起こるところ)に位置する反応空間の体積は、本発明の意味において、動的体積とされる。本発明の意味における「列(row)」は、反応空間が、少なくとも1つの列、ライン、または段(column)に幾何学的に配置されていること、および/または、反応空間またはそれらの電極の少なくとも1つが少なくとも1つの列において電気的にスイッチされること、を意味する。本発明による容器の構成によって、384個の反応空間を備える容器に必要な電極の数を、たとえば、768個から408個に減らすことができる。電極の数の削減によって、材料をさらに節約でき、電圧パルス生成装置およびコンタクトしている装置の側における装置の経費を大幅に削減できる。さらに、射出成形プロセスにおける本発明による容器の製造の場合には、成形型の製造の経費が削減される。
【0014】
本発明の有益な構成の1つは、少なくとも1つの共通電極が、列内において隣接する2つの反応空間の間に少なくとも部分的に配置された構成である。この電極の交互の幾何学的な配置によって、電極、または、それらに割り当てられたコンタクト部材の間の距離が最大限に増大され、その結果、電気的な信頼性を著しく高めることができる。この場合、電極も、オフセットに、および/または、容器の長手方向の軸に対してジグザグに配置できる。
【0015】
本発明の有益な構成の1つは、電極が、電圧を印加するために電気的にコンタクトされ得るコンタクト部材を備えた構成である。好ましくは、特に、2つの反応空間の共通電極がコンタクト部材を備える。電極は、コンタクト部材によってコンタクトが容易であり、電極への最適な電流のフローを確実にする材料をコンタクト部材の材料として選択できる。容器の各コンタクト部材は、好ましくは、それぞれに隣接するコンタクト部材に対して、可能な限り最大の距離をとっている。
【0016】
本発明の特に有益な構成の一例は、1つの反応空間の電極が備えるコンタクト部材が、当該反応空間の両側に配置された構成である。この場合、好ましくは、コンタクト部材は、対角線上に対向するように、および/または、オフセットまたは容器の長さ方向に対してジグザグに配置され、その結果、それらは互いに対して最大の間隔となる。このようにして、隣接する2つのコンタクト部材間において電気的な火花放電(sparkover)が生じることが防止される。さらに、それによって、分離している反応空間の静的体積は、与えられた全体の体積において最大限に増大される。電極間に位置しない反応空間(すなわち、その内部が、実際的に、反応または電気的な刺激プロセスが基本的に起こらないところ)の体積は、本発明の意味において、静的体積とされる。好ましくは、電極に対するコンタクト部材のコンタクト面であって電極上にまたはその内にあるコンタクト面が、5mm2以上、好ましくは6mm2以上、特に好ましくは7mm2以上、そして特に8mm2以上の面積を有する。
【0017】
本発明の有益な構成において、コンタクト部材は、電極によって部分的に囲まれてもよく、コンタクト部材の長さの10%以上、特に20%以上または30%以上、好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上が電極内に存在してもよい。
【0018】
好ましくは、コンタクト部材は、ピン状、針状またはねじ状に構成され、および/または、少なくともほぼ円形の断面を有する。コンタクト部材のこの形は、電極中のコンタクト部材の固定を簡単にし、本発明による容器の製造における特にすぐれた電気的コンタクトを保証する。コンタクト部材は、たとえば、射出成形プロセスにおいて電極の導電性の材料によってオーバーモールドされてもよいし、導電性の電極材料にねじ込まれてもよい。電気的コンタクトをさらに向上させるため、コンタクト部材にぎざぎざを付けたり、その他の方法で表面を粗くしたりしてもよい。また、少なくともある程度まで少なくとも平らにされている断面は、特定の場合には(たとえば電極における固定を向上させる場合には)有益になりえる。
【0019】
本発明の有益な構成では、反応空間は上方の領域に開口を有し、その上方の領域において電極がコンタクトされ得る。上方からのコンタクトのおかげで、容器の下側はアクセス可能なままであり、その結果、たとえば光学的な測定を行うことができる。さらに、この実施形態の場合には、容器は、下側経由、特に電極経由で容易に冷却できる。これは、強度の熱が発生するため有益であり、特に、高速で連続する電圧パルス、または、高スループットおよびとても大きな振幅(amplitude)で操作が行われるような用途において有益である。
【0020】
本発明のさらに有益な構成は、コンタクト部材が、電極の上側に配置されていること、および/または、電極から上方へ突き出ることであり、その結果、電極は上方から容易にコンタクトされ得る。これは、底がフリーなままであるという長所を持ち、そのため、反応空間の内容物の分析のために底を透明にすることが可能である。標準的な底以外の底が特定の用途のために必要とされる場合、本発明の容器の機能を失うことなく、底を、たとえば機械的または化学的に除去し、他の材料(たとえば、膜またはガラス)で形成された底に置き換えることができる。
【0021】
本発明の特に有益な構成は、少なくとも1つの列、好ましくは各列、がモジュールを形成しており、それらのモジュールが、直接または間接的に互いに接続可能となっている構成である。このモジュール構成によって、本発明による容器の様々な形式を非常に柔軟に提供できる。そのため、たとえば16個の反応空間を備えるモジュールを準備することによって、6個のモジュールからなり96個の反応空間を備える容器や、24個のモジュールからなり384個の反応空間を備える容器を、分離しているモジュールの簡単な組み合わせによって得ることができる。この場合、好ましくは、分離しているモジュールが適切なフレームに固定され、その結果、それらは、取り外せるようにまたは取り外せないように互いに接続され、1つのユニットを形成する。フレーム中におけるモジュールの組み立ては、たとえば、不可逆的なラッチ機構、または、接着によって行うことができる。ラッチ機構に対応するフレーム中におけるモジュールの可逆的な組み立ては、同様に可能である。モジュールは、フレームに、超音波溶接、ねじ止め、リベット止め、熱コーキング(hot caulking)またはクランプ締めによって固定してもよい。モジュールは、たとえば好ましくはニッケルをめっきした真鍮からなるものでもよい挿入ピンと共に、好ましくは2つのプラスチック成分(すなわち、たとえば導電性のポリカーボネートおよび透明なポリカーボネート)からなる。導電性のポリカーボネートは、電極、および、基体(base body)または壁領域のベースとして透明なポリカーボネートを製造するために使用される。フレームは、射出成形されたプラスチックのパーツであってもよく、たとえば、ポリスチレンまたは他の熱可塑性プラスチックからなるものであってもよい。
【0022】
容器および/または各反応空間が、少なくともある程度は透明な底を有する場合、光学的なモニタリングおよび/または測定を、反応空間の内部で行うことができる。この場合、容器および/または各反応空間は、少なくともある程度はガラスおよび/またはプラスチックからなる底を有してもよい。
【0023】
セルの接着を可能にするか、または、所定の光学的な測定を行なうために、少なくともある程度まで底をコーティングしてもよい。この場合、コーティングは、合成ポリマーおよび/またはバイオポリマーを含んでもよい。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、底は、容器全体の下側に連続的に延びていてもよい。
【0025】
好ましくは、本発明による容器は、多数の反応空間、好ましくは、6、8、12、16、24、32、48、64、96、128、192、384、1536、3456または6144個の反応空間を含む。
【0026】
本発明による容器の少なくとも1つの電極は、導電性の材料がドープされたポリマーからなるものでもよい。この場合、導電性の材料(たとえば金属または導電性プラスチック)はすべて、ドーパントとして利用できる。特に好ましいのは、炭素を含んでいる物質、特に、炭素繊維、黒鉛、カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブである。この場合、ドーパントは、20〜80重量%の濃度でポリマー中に含まれる。
【0027】
好ましくは、コンタクト部材は、23℃において電極の構成材料よりも低い比抵抗または界面抵抗を有するコンタクト材料からなる。コンタクト材料は、たとえば、金属であってもよいし、および/または、23℃において1×10-5オーム・cm以下、好ましくは1×10-6オーム・cm〜2×10-6オーム・cmの比抵抗を有してもよい。
【0028】
本発明による容器の電極が下から冷却された方がよいか、または、下から冷却されなければならない場合、容器の底および/または反応空間の壁領域を越えて電極が下方へ突き出ることは、特に有益である。このようにして、熱伝導を最適化できるように、適切な冷却部材へのコンタクトを強化できる。
【0029】
本発明はさらに、最初に述べたタイプの蓋(本発明による容器に特に用いられ、接点の数に対応する穴を有する蓋)に関する。本発明によるこの構成によって、電極は、蓋を取り除く必要なしにコンタクトされ得る。従って、各方法を実施している間、蓋の保護機能も完全なままである。
【0030】
本発明の特に有益な構成は、蓋がn+x個の穴を有する構成である(ここで、nは反応空間の数であり、n≧3であり、xは列の数であり、x≧1である)。
【0031】
本発明のさらに有益な構成は、蓋が、反応空間の端の領域において反応空間に面する側に隆起(elevation)を有すること、および/または、シール材料を備えた構成であり、その結果、分離している反応空間から物質または液体が漏れることはない。これは、高電流が反応空間を流れ、そのためにガス生成が増加し、液の跳びはねを生じ得る場合に特に有益である。従って、内側における蓋の特別な構成によって、相互汚染、すなわち1つの反応空間から他の反応空間への汚染を特に防止できる。
【0032】
蓋は、射出成形されたプラスチックのパーツであってもよく、たとえば、透明なポリスチレンからなるものであってもよい。
【0033】
本発明による容器は、最初に述べたタイプの方法で製造され、その方法では、コンタクト部材がまず射出成形型に挿入され、それから少なくとも2種類のポリマーでオーバーモールドされる。このように、容器は、高速の射出成形プロセスで、高品質且つ正確に製造できる。この場合、コンタクト部材をオーバーモールドするポリマーは、好ましくは、導電性のポリマーである。実質的に容器を構成する2つのポリマーは、また、多成分射出成形で射出成形されてもよい。しかしながら、この場合、2つのポリマーは、混合物としてではなく、互いに続く2つのステップの操作で注入される。この場合、射出成形型へのコンタクト部材の挿入によって、追加の工程の必要がなくなり、その結果、製造方法が単純化および高速化される。
【0034】
マイクロタイタープレートの製造のための射出成形プロセスは、部品数が多いマイクロタイタープレートを製造するための有益な方法である。射出成形されたパーツ中の挿入部品の使用は、射出成形されたパーツの機械的または電気的特性を向上させるかまたは可能にすることに役立つ。それは、コスト的に効率がよい選択肢をもたらす。なぜなら、工程においてコンタクト部材を射出成形型に自動的に挿入することができるためである。これは、エレクトロポレーション用のマルチウェルプレートの製造を簡単にし、その上、このプロセスは高い精度につながる。
【0035】
コンタクト部材をオーバーモールドすることに代えて、コンタクト部材は、導電性の電極材料にねじ込まれてもよいし、押し込まれてもよい。さらに、導電性の接着剤で、コンタクト部材を導電性の電極材料に接着することも可能である。
【0036】
さらに有益な実施形態では、電極がコンタクト部材またはコンタクト面と一体となって、ホットスタンプ(hot stamping)により、容器の上側に配置される。
【0037】
本発明による容器は、また、本発明に従った方法で製造してもよく、その場合には、分離しているモジュールが射出成形プロセスで製造され、そのモジュールがいずれも、少なくとも1列に配置された反応空間からなり且つそれらの短辺に固定部材を有する。この場合、少なくとも1つのモジュールをフレーム部材に固定してもよく、その場合には、各モジュールが固定されるフレームは、少なくとも1つの固定手段(好ましくは延長部の形状)をいずれも、対向する2つの側に有し、その固定手段は、それぞれの固定部材(好ましくは小穴の形状)に対応している。好ましくは、モジュールは、熱コーキングによってフレーム部材に固定される。その場合には、モジュールがフレーム部材に挿入される際に固定手段がそれぞれの固定部材とかみ合い、また、固定手段と固定部材との間で確実な接続がもたらされるように固定手段が加熱される。しかしながら、上記の代わりに、超音波溶接によってフレーム部材にモジュールを固定してもよいし、または、適切な接着剤によってフレーム部材にモジュールを接着してもよい。
【0038】
本発明による方法の好ましい実施形態では、壁領域の底を容器から取り除くことができ、それに続いて新しい底を容器に取り付けることができる。このように、容器は、特別な要求に柔軟に適応させることができる。新しい底が透明な物質からなるときには、たとえば、内部で光学的な測定が行うことができる場合に容器を用いることができる。
【0039】
本発明はさらに、反応空間内に電界を生じさせる電圧を印加するための少なくとも1つの電極を有する少なくとも1つの反応空間を備える容器に関する。容器を個々に識別できるようにするために、本発明によれば、容器は、少なくとも1つのトランスポンダ(特に、容器の明確な識別のためのトランスポンダ)に、取り外せないように接続される。この場合、それぞれの容器に関するデータは、適切な読み取り装置によって、読み取ること、および、電気的に処理することができる。このようにして、時間を消費する手作業での容器のマーキングやラベリングが回避され、本発明によれば、もはや、情報が光学的に認識可能である必要がなくなる。このことは、たとえば高スループットプロセスの場合と同様に、試験シリーズにおいて多様な容器が使用されるときには、特に有益である。このタイプのプロセスは、本発明による容器を用いることによって高速化でき、その場合には、データ収集が、改善され、とりわけより信頼できるものになる。さらに、情報を取り扱うことはより難しく、プロセス信頼度は著しく増加し、また、容器のトレーサビリティーが最適となる。
【0040】
本発明の有益な構成では、トランスポンダは、少なくとも1つの反応空間を区切るかまたは形成する壁領域と一体化される。容器の壁領域または基体が、射出成形可能なプラスチックからなる場合、トランスポンダは、たとえば、製造プロセスの間に容器の壁領域に注入されてもよい。
【0041】
トランスポンダは、好ましくはRFIDトランスポンダである。あるいは、それは、たとえば「アイボタン(iButton)」(マキシム社(MAXIM)/ダラス(DALLAS))のような「単線識別(one wire identification)」タグであってもよい。RFIDトランスポンダは、好ましくは、アンテナ、アナログ回路、デジタル回路および/または蓄電装置を含む。
【0042】
本発明によれば、このタイプの容器は、容器が射出成形プロセスで製造され且つトランスポンダが少なくとも1つのポリマーによってオーバーモールドされるプロセスによって製造されてもよい。
【0043】
従って、本発明によれば、各容器は、射出成形プロセスの間にガラスカプセルとして、または、それに続くプロセスで所定の位置に接着するかラベルの形態で配置するかすることによって、容器内または容器上に固定されるトランスポンダ(タグ)を備えてもよい。容器が処理される装置は、トランスポンダを読むための通信技術を有さなければならない。その装置では、それに続いて、処理時間において識別(identification)が記録される。情報の読み取りによって、プレートシーケンスにおけるエラーが、先に設定された実験に従って、実行時間におけるセットアップの調整によって起こり得る。記録された情報は、エラーパターンの評価/相関、および、製造バッチの指定(assignment)に使用できる。従って、既に処理された容器が再び用いられる場合には、実験を停止することができるか、または、ユーザーに警告を出すことができる。トランスポンダを装備した本発明による容器は、さらに、液体試料を分析するために電気的な処理を行う場合における、シーケンス試験、反応プレートの追跡、プロセスの信頼性の確保、または問題の回避に用いることができる。
【0044】
マトリクス状に結合された電極を備える公知の容器について最初に指摘した問題は、少なくとも4つの反応空間を備える本発明の容器によって解決される。この容器の場合、反応空間はいずれも、反応空間の電極に電圧を印加するための、第1および第2の電極からなる少なくとも一組の電極を有し、結合された電極の少なくとも2つのグループがいずれも、電気的に結合された異なる反応空間の少なくとも2つの第1の電極が電気的に結合されるように形成されており、また、結合された電極の少なくとも2つの別のグループがいずれも、異なる反応空間の第2の電極が同様に電気的に結合されるように形成されており、結合された電極の各グループは、反応空間の異なるグループを含み、結合された電極の2つのグループはいずれも、最大で1つの共通する反応空間を含む。本発明によれば、異なる反応空間の第1の電極は、有益な方法で、少なくともダイオードを介して互いに接続され、少なくとも1つのダイオードが各反応空間に割り当てられる。この場合、ダイオードは、意図的にアドレスされて電圧パルスが与えられた反応空間から、アドレスされていない他の反応空間に寄生電流が拡散する可能性をなくす。このようにして、望ましくない副作用(それぞれの方法の効率および/または再現性を害するかもしれない副作用)が、効果的に回避される。
【0045】
この場合、ダイオードが、それぞれの反応空間の方向に逆方向に配置されることが、特に有益である。しかしながら、上記の代わりに、本発明の容器内におけるそれらの配置および方向が、全体としてアドレスされていない反応空間に寄生電流が流れないようなものである限り、ダイオードは、それぞれの反応空間のいずれの側およびいずれの方向に配置されてもよい。従って、ダイオードは、それぞれの反応空間の方向に順方向に配置してもよい。
【0046】
本発明の有益な構成は、異なる反応空間の電極は、少なくとも1つの共通の導電性の接続部材(好ましくは導体路)によって結合される構成である。この場合、ダイオードは、好ましくは、導電性の接続部材とそれぞれの反応空間の第1の電極との間に配置される。
【0047】
本発明による容器は多数の反応空間を含むことができ、好ましくは6、8、12、16、24、32、48、64、96、128、192、384、1536、3456または6144個の反応空間を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明を、図に基づいて、例を挙げて以下に説明する。
【図1】本発明による容器の特に有益な実施形態の斜視図
【図2】図1の本発明による容器の平面図
【図3】図1の容器の電極の配置の斜視図
【図4】図1の本発明による容器の一部における断面および断面の形状を示す図
【図5】モジュールで構成されフレーム部材を備える本発明による容器の特定の実施形態の平面図
【図6】モジュールのない図5のフレーム部材の斜視図
【図7】本発明による容器の他の特に有益な実施形態の斜視図
【図8】本発明による容器の他の実施形態の斜視図を模式的に示す図
【図9】本発明による蓋の特に有益な実施形態の下側における平面図
【図10】電極のマトリクス状の結合を備える本発明による容器の特に有益な実施形態の斜視図
【図11】図10の本発明による容器の一部の回路図
【図12】電極のマトリクス状の結合を備える本発明による容器の電極、導体路、およびダイオードの別の回路図
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明による容器の特に有益な実施形態の斜視図を示す。容器1は、16個の反応空間2を含み、その反応空間2は、この例においては、互いに直接隣接するように一列(x=1)に配置されている。各反応空間2は、対向するように配置された2つの電極3、4、5を有し、その形状および配置は図3に基づいて説明される。いずれもが2つの反応空間2の間に配置されている電極3、4は、共通電極3、4であり、すなわち、それらの電極3、4は、隣接する2つの反応空間2の内部6と接続されている。2つの反応空間2の間に配置された各電極3、4が共通電極3、4であるということは、この典型的な実施形態における本発明の容器1が、合計で17個の電極を含むことを意味する。共通電極3、4に加えて、分離している電極5は、いずれも、容器1の外端部に配置されている。従って、本発明による容器1は、16個の反応空間2(n=16)および17個の電極3、4、5(n+x=17)を含む。もし、各反応空間が、分離している電極ペアを備えているとしたら、16個の反応空間を備える当該容器は、32個の電極を含むことになってしまう。しかしながら、本発明による解決手段によって、本発明による容器1は、わずか17個の電極3、4、5しか含まず、そのため、この典型的な実施形態における電極の数を15電極削減することが可能である。この典型的な実施形態では、各電極3、4、5は、コンタクト部材7を備えており、コンタクト部材は、電極の電気的なコンタクトを可能にする。この典型的な実施形態におけるコンタクト部材7は、電極材料でオーバーモールドされた金属ピンである。コンタクト部材7は、容器1から上方へ突き出ており、その結果、電極3、4、5は上方からコンタクトされ得る。これは、容器1の下側がフリーであるという長所を有し、その結果、容器1の下側は、たとえば光学的な測定のためにアクセス可能である。本発明による容器1は、分離している容器として使用するか、または、モジュール配列内の1つのモジュールとして使用することが可能である。本発明による容器1が1つのモジュールとして使用される場合には、その容器1は、いずれもが容器1の短辺に形成される固定部材8によってフレーム部材に固定できる。このように、全体として、多数の反応空間(たとえば96個または384個の反応空間)を備える容器が得られるように、複数の容器を互いに連結することができる。
【0050】
図2は、図1の本発明による容器1の平面図を示す。この図では、いずれもが2つの反応空間2の間に配置された電極3、4が、隣接する2つの反応空間2用の共通電極3、4を意味することが明らかになっている。この配置によって、本発明による容器1を非常にコンパクトに構成でき、電極3、4、5の数、または、コンタクト部材7の数は、著しく削減される。ここではさらに、コンタクト部材7がオフセット形式で配置されること(すなわち、容器1の長さ方向に対してジグザグに伸びていること)が明らかになっており、その結果、それらは互いに対して最大の間隔となる。コンタクト部材の互いへの距離を最大化することによって、2つのコンタクト部材間の電気的な火花放電の可能性が最小とされるか、および/または、許容される最大のパルス電圧が増大する。
【0051】
図3は、図1および2の容器1の電極3、4、5の配置の斜視図を示す。電極3、4、5は一列に配置されており、隣接する電極3、4、5の表面であっていずれもが互いに向かいあっている表面9が、それらの間に存在する反応空間2を形成しており、電極3、4、5へ電圧を印加すると、その反応空間を通って電流が流れることができる。それぞれの反応空間2を形成する電極3、4、5の表面9は、平らに構成されており、いずれもが、ほぼ(すなわち製造許容誤差の範囲内で)、平行平面形式に配置される。電極は、導電性の材料、好ましくは導電性の材料がドープされたポリマーからなる。射出成形することができるポリマー(たとえば、炭素繊維および/または黒鉛がドープされたポリカーボネート)から作られた電極は、特に好ましい。電極は、好ましくは、射出成形プロセスにおいて適切な射出成形型に射出される。この場合、電極は、好ましくは別のポリマー(好ましくは透明なポリカーボネート)の射出成形の後に、コンタクト部材(たとえば、この図ではフリーの状態のままになっていた領域10において射出成形型に挿入される金属ピン)の周囲に一工程で、射出成形型に射出成形される。
【0052】
図4は、図1および図2の本発明による容器1の一部を通る断面を示し、上方の図は、断面線11による切断の経路を明らかにしている。ここでも、共通電極3、4がいずれも、反応空間2の間に配置されていることが明らかになっている。この場合、電極3、4、5(白で示される)は、好ましくは導電性ポリマー、たとえば炭素繊維および黒鉛がドープされたポリカーボネートからなる。容器1(ここでは影が付されている)の残りの領域は、好ましくは同様にポリマー、好ましくは透明なポリカーボネートからなる。コンタクト部材7は、2つのポリマーに投入され、容器1から上方へ突き出ており、その結果、電極3、4、5は上方からコンタクトされ得る。コンタクト部材7はピン状に構成され、好ましくは円形の断面を有する。コンタクト部材7の長さの少なくとも10%、好ましくは50〜60%、がポリマーに埋め込まれる。導電性ポリマー内のコンタクト部材7のコンタクト面は、好ましくは5mm2以上であり、好ましくは6〜8mm2である。
【0053】
図5は、本発明による容器の特定の実施形態の平面図を示す。容器15は、24個のモジュール17が固定されているフレーム部材16で構成されている。各モジュール17は、16個の反応空間18を含み、その反応空間はいずれも一列に配置されている。従って、合計では、容器15は384個の反応空間18を含む。この場合、モジュール17は図1の容器1に相当する。すなわち、各反応空間18は2つの電極19、20を含み、その電極はそれぞれ、容器15から上方へ突き出ているコンタクト部材21を備える。本発明による容器15は、高スループットの方法(高スループットスクリーニング)における電気的形質移入(electrotransfection)に特に適している。
【0054】
図6は、モジュールのない図5のフレーム部材16の斜視図を示す。フレーム部材16は、好ましくはポリスチレンからなるプラスチック射出成形されたパーツである。フレーム部材16の長辺の内側は、図5のモジュール17をガイドするかまたはセンタリングするために用いられるガイド手段25を有する。モジュールは、たとえば、熱コーキングによってフレーム部材16に固定できる。その目的のために、フレーム部材は、固定されるモジュールごとに、両側に1本ずつプラスチックピンを有する射出成形で製造されなければならない。一方、モジュールは、両方の短辺に小穴を有し、その小穴は、プラスチックピンのサイズに適合している。このようにして、フレームにモジュールを挿入できる。その後、ピンは、適切な道具で加熱され、その結果、ピンと小穴との間の確実な接続がもたらされる。
【0055】
図7は、本発明による容器の他の特に有益な実施形態の斜視図を示す。容器30は、基本的に、その構成において図1の容器1に相当する。図1の容器1とは異なり、容器30は、2列(x=2)の反応空間31を含む。この場合、各列は、16個の反応空間31を含み、その結果、容器30は合計で32個の反応空間(n=32)を含む。容器30の各列は17個の電極を含み、その結果、容器30は合計で34個の電極32(n+x=34)を含む。もし、分離している電極ペアを各反応空間が備えているとしたら、32個の反応空間を備える当該容器は、64個の電極を含むことになってしまう。しかしながら、本発明による解決手段によって、本発明による容器30は、わずか34個の電極32しか含まず、そのため、この典型的な実施形態の中の電極の数を、15電極削減することが可能である。このようにして、サイズが決められている場合に、動的な反応空間の体積を最大限に増大できる。
【0056】
図8は、本発明による容器の他の実施形態の斜視図を模式的に示す。本発明による容器35は複数列の反応空間を含むが、ここではそのうちの一列のみを示す。反応空間36は、いずれも電極を有さない壁領域37によって形成されている。容器35は蓋38をさらに含み、蓋38の内側であって反応空間36に面する内側には、電極39、40が固定されている。反応空間36の壁領域37上に蓋38を取り付けると、電極39、40が、それぞれの反応空間36内に浸かる。電極39、40に電圧を印加すると、電流は、反応空間36を通って流れることができる。列の両端部に配置された電極39はいずれも、分離している電極であり、いずれも、1つの反応空間36内に浸かるだけである。対照的に、それらの間に存在する電極40は共通電極であり、その共通電極はいずれも、脚状の2つの延長部41を有する。いずれの場合も、隣接する電極40の脚状の延長部41のうちの1つは、いずれも、共通の反応空間36内に浸かり、一方、各電極40の脚状の2つの延長部41は、いずれも、隣接する反応空間36に浸かる(上方右側の、蓋がない図を参照)。このようにして、電極40はいずれも、隣接する2つの反応空間36用の共通電極を形成する。従って、各反応空間36は電極ペアを含み、そのペアは、2つの電極40の脚状の2つの延長部41からなるか、または、1つの電極40の脚状の1つの延長部41および分離している電極39の脚状の1つの延長部41からなるかのいずれかである。16個の反応空間36(n=16)を備える本発明による容器35の一列(x=1)は、この図に示される。容器35はさらに17個の電極39、40(n+x=16+1=17)を含み、すでに公知である容器と比較して、電極の数が著しく削減されている。
【0057】
図9は、本発明による蓋の特に有益な実施形態の下側における平面図を示す。蓋45は、たとえば、図5の本発明による容器15の反応空間を覆うために用いることができる。蓋45は、コンタクト部材の数に相当する多くの穴46を有し、コンタクト部材は、その穴を通ってコンタクトされ得る。蓋は、その下側(それは容器に面している)に環状のシールリング47を有し、そのシールリングは、所定の位置にある蓋45と一体となって容器の反応空間を密閉する。このようにして、反応空間に存在する細胞懸濁液の跳びはねによる相互汚染を防止できる。シールリング47の代わりに、単純な隆起または、または、反応空間を互いに密閉できるのであればビード(bead)を用いてもよい。
【0058】
図10は、電極のマトリクス状の結合を備える本発明による容器の特に有益な実施形態の斜視図を示す。本発明による容器50は、すべてが基体52の中にある4つの列に配置された16個の反応空間51を含む。各反応空間51は、対向するように配置された2つの電極53、54を備えている。一列の電極53、54はいずれも、異なる面で交差する接続部材55、56によって互いに電気的に結合されている。接続部材55、56は、たとえば、分離している電極に接続される金属製導体路であってもよい。好ましくは、接続部材は、ホットスタンプによって電極上に貼り付けられる金属箔である。この場合、反応空間51の一列にいずれもが属する第1の電極53は、接続部材55によって電気的に結合されている。ここで垂直に配置されている反応空間51の一列にいずれもが属する第2の電極54は、いずれも、接続部材56によって互いに結合されている。この場合、反応空間51の第1の電極53は、いずれも、ダイオード57によって接続部材55に接続されている。各反応空間51がダイオード57を備えるということは、反応空間51のすべての第1の電極53がいずれもダイオード57によって互いに接続されている、ということを意味する。この場合、ダイオード57は、好ましくは、反応空間51の方向に逆方向に配置される。電極53、54のマトリクス状の結合によって、各反応空間51は、電圧印加の間、電圧が印加される接続部材55、56に応じて、電圧パルスが別々に与えられ得るか、または、別々にアドレスされ得る。この場合、電圧が印加された導体路55、56の交差ポイントに位置する反応空間51だけに、いずれの場合も電圧パルスが与えられる。このことは、図11を参照して説明される。この場合、ダイオード57は、導体路55を介して電圧パルスが与えられた反応空間51から他の反応空間51に寄生電流が拡散することを有益に防止する。このようにして、望ましくない副作用(それは、それぞれの方法の効率および/または再現性を害するかもしれない)が回避される。
【0059】
図11は、図10の本発明による容器50の電極53、54、導体路55、56、およびダイオード57の回路図を示す。この図では、導体路55が、結合された第1の電極53の様々なグループを形成し、一方、導体路56が、結合された第2の電極54の様々なグループを形成することが明らかになっている。この場合、導体路55、56は、互いに垂直に延びており、その結果、それらはマトリクス状のグリッドを形成する。しかし、導体路55、56は異なる面内を延びており、その結果、それらはそれぞれの交差ポイント58において、互いに電気的に結合されない。導体路55によって、異なる反応空間51の列の第1の電極53はいずれも、電気的に結合されている。ここで垂直に延びている列の第2の電極54は、導体路56によって、異なる反応空間51に電気的に結合されている。この図では、従って、結合された第1の電極53の3つのグループと、結合された第2の電極54の3つのグループとが図示されている。この場合、結合された電極53、54の各グループは、反応空間51の異なるグループを含み、結合された電極53、54の2つのグループはいずれも、最大で1つの共通の反応空間51を含む。従って、結合された電極53、54の2つのグループへ電圧を印加した場合は、その反応空間51を通ってのみ電流が流れる。従って、この典型的な実施形態では、電圧は、導体路59および60(HV=高電圧、GND=アース)に印加され、電流はアドレスされた反応空間61(雷光マーク)のみを流れる。この場合、電流は、導体路59から、第2の電極62を介し、反応空間61を通り、それから第1の電極63およびダイオード64を介し、アースされた導体路60へと流れる。図に示すように、アクティブ状態にない導体路55は、シンク(sink)を構成していないため(すなわち、アース(GND)に接続されていないため)、高電圧(HV)が、一番下の列の真ん中の反応空間51の第2の電極54に加えられたとしても、電流は流れない。アクティブ状態にある反応空間61に「水平方向に」隣接する反応空間の第1の電極53におけるダイオード57は、電流が流れているダイオード64から、アクティブ状態にない反応空間51へ電流が流れこむことを防止する。望ましくない副作用は、このように有効に防止できる。
【0060】
図12は、電極のマトリクス状の結合を備える本発明による容器の電極、導体路、およびダイオードの別の回路図を示す。図11の回路図とは対照的に、ここでは、ダイオード57、64は、反応空間51、61に対して反対側に、すなわち反応空間51、61と導体路56、59との間に配置される。従って、この実施形態では、ダイオード57、64は、導体路56、59の方向に逆方向に配置される。この実施形態の場合でも、アドレスされていない反応空間へ寄生電流が流れることを防止できる。
【符号の説明】
【0061】
1 容器
2 反応空間
3 電極
4 電極
5 電極
6 内部
7 コンタクト部材
8 固定部材
9 表面
10 領域
11 断面線
15 容器
16 フレーム部材
17 モジュール
18 反応空間
19 電極
20 電極
21 コンタクト部材
25 ガイド手段
30 容器
31 反応空間
32 電極
35 容器
36 反応空間
37 壁領域
38 蓋
39 電極
40 電極
41 延長部
45 蓋
46 穴
47 シールリング
50 容器
51 反応空間
52 基体
53 電極
54 電極
55 接続部材、導体路
56 接続部材、導体路
57 ダイオード
58 交差ポイント
59 導体路
60 導体路
61 反応空間
62 電極
63 電極
64 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの反応空間(2、18、31、36)を備える容器(1、15、30、35)であって、当該反応空間(2、18、31、36)は、いずれも、前記反応空間(2、18、31、36)内に電界を生じさせる電圧を印加するための少なくとも1つの電極ペア(3、4、5、19、20、32、39、40)を有し、且つ、幾何学的に少なくとも1列に配置されているか、および/または、電気的に少なくとも1列に接続されており、1つの反応空間(2、18、31、36)の少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの他の反応空間(2、18、31、36)との共通電極(3、4、40)であり、ここで、n+x個の電極(3、4、5、19、20、32、39、40)が設けられている(ここで、nは反応空間(2、18、31、36)の数であり、n≧3であり、xは列の数であり、x≧1である)ことを特徴とする、容器。
【請求項2】
少なくとも1つの共通電極(3、4、40)が、幾何学的に、前記列内において隣接している2つの反応空間(2、18、31、36)の間に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)が、電圧を印加するために電気的にコンタクトされ得るコンタクト部材(7、21)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記2つの反応空間(2、18、31、36)の前記共通電極(3、4、40)が、コンタクト部材(7、21)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記容器(1、15、30、35)の各コンタクト部材(7、21)が、それぞれに隣接する前記コンタクト部材(7、21)に対して、可能な限り最大の距離をとっていることを特徴とする、請求項3または4に記載の容器。
【請求項6】
1つの反応空間(2、18、31、36)の電極(3、4、5、19、20、32、39、40)が備えるコンタクト部材(7、21)が、当該反応空間(2、18、31、36)の両側に配置されることを特徴とする、請求項3、4または5に記載の容器。
【請求項7】
前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)に対する前記コンタクト部材(7、21)のコンタクト面であって前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)上またはその内にあるコンタクト面が、5mm2以上、好ましくは6mm2以上、特に好ましくは7mm2以上、そして特に8mm2以上、の面積を有することを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記コンタクト部材(7、21)が前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)によって部分的に囲まれ、前記コンタクト部材(7、21)の長さの40%以上、好ましくは50%以上、が前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)内に存在する、請求項3〜7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記コンタクト部材(7、21)が、ピン状、針状またはねじ状に構成されること、および/または、少なくともほぼ円形の断面を有することを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
前記反応空間(2、18、31、36)が上方の領域に開口を有しており、前記上方の領域で前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)がコンタクトされ得ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
前記コンタクト部材(7、21)が、前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)の上側に配置されていること、および/または、前記電極(3、4、5、19、20、32、39、40)から上方へ突き出ていることを特徴とする、請求項3〜10のいずれか1項に記載の容器。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の容器(1、15、30)用の蓋(45)であって、前記容器(1、15、30)の前記電極が、接点によって電気的にコンタクトされることが可能であり、前記蓋(45)が、前記容器(1、15、30)の前記反応空間(2、18、31)を覆う蓋において、前記蓋(45)がn+x個の穴(46)を有する(ここで、nは前記反応空間(2、18、31)の数であり、n≧3であり、xは列の数であり、x≧1である)ことを特徴とする、蓋(45)。
【請求項13】
前記蓋(45)が、前記反応空間(2、18、31)の端の領域において前記反応空間(2、18、31)に面する側に、隆起を有すること、および/または、シール材料を備えることを特徴とする、請求項12に記載の蓋。
【請求項14】
前記容器(1、15、30、35)が、少なくとも1つのトランスポンダに、取り外せないように接続されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
少なくとも1つの前記反応空間(2、18、31)が、前記トランスポンダが一体化される壁領域によって区切られていることを特徴とする、請求項14に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−515530(P2012−515530A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545702(P2011−545702)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000296
【国際公開番号】WO2010/083986
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(503147734)ロンザ ケルン ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】