説明

複数の対象物の検出装置及び検出方法

【課題】異なる波長の蛍光を発生する第1、第2対象物を含む複数の対象物を蛍光認識法により検出し、しかも構造の簡略化及びコストの低減を果たし得る検出装置を提供する。
【解決手段】第1、第2対象物を含む複数の対象物を画像認識して少なくとも第1対象物の領域を検出する検出装置で、複数の対象物に、第1、第2対象物が蛍光を発生させる励起光源11,12、励起光を透過せず、第1、第2対象物からの蛍光を透過させる第1蛍光フィルタ15、第1蛍光フィルタ15を通過した第1透過光から第1蛍光をカットし、第2蛍光を透過させる第2蛍光フィルタ16、第1,第2蛍光フィルタ15,16を透過してきた第1、第2透過光をそれぞれ撮像する撮像装置19,21、撮像装置19,21の出力第1、第2透過光に対応した第1、第2画像信号を演算し、少なくとも第1対象物の画像領域を検出する画像処理装置22とを備える検出装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の一部に電極及び接着剤層などが形成されている、すなわち複数の対象物が存在する部分において、該複数の対象物の占める領域を検出するための検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント回路基板や様々な電子部品において、完成品の欠陥を検査するために、光学的検査装置が種々提案されている。例えば、セラミック基板上にエポキシ系接着剤などの透明樹脂層と、電極とが形成されているような電子部品では、透明樹脂層を構成している樹脂が染み出し、電極表面に至っている場合がある。このような欠陥品を選別するために、セラミック部分、透明樹脂層部分及び電極部分を光学的に検出する方法が種々提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、このような検査装置の一例が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているパターン検査装置の概略構成図を図9に示す。
【0005】
図9に示すパターン検査装置1001は、Hgランプ1002から生じた励起光1003を回路基板1004上に照射する。回路基板1004は、基板本体1005と、基板本体1005上に設けられた回路パターン1006とを有する。基板本体1005はセラミックなどの絶縁性材料からなる。回路パターン1006は金属からなる。
【0006】
励起光が照射された際に、基板本体1005が発生する蛍光と、金属からなる回路パターン1006が発生する蛍光とを検出する。そのために、基板本体1005が領域に露出している部分を検出するに際しては、基板本体1005を構成している材料から蛍光を発生させるための励起光を、第1の励起光フィルタ1008を介して基板1004上に導く。そして、基板本体1005から生じた蛍光を、第1の蛍光フィルタ1006を通して検出器1011により検出する。
【0007】
さらに、回路パターン1006から発生する蛍光を検出するために、第1の励起光フィルタ1008に代えて、第2の励起光フィルタ1009を用い、第2の励起光フィルタ1009を透過してきた励起光を回路パターン1006に与える。そして、回路パターン1006から生じた蛍光を、第2の蛍光フィルタ1007を通して透過させ、検出器1011により検出する。
【0008】
検出器1011において、材質が異なる基板本体1005及び回路パターン1006により生じた蛍光によりそれぞれの材質が占める領域を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−122265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の検査装置1001では、上記のように、材質が異なる基板本体1005及び回路パターン1006が占める領域を検出するにあたり、それぞれの材質に応じて、第1及び第2の励起光フィルタ1008,1009を用い、異なる波長の励起光基板1004上に導いていた。そして、基板本体1005及び回路パターン1006から発生した蛍光を、それぞれ、各蛍光の波長に応じて、第1及び第2の蛍光フィルタ1006,1007を通して検出器1011に導いていた。
【0011】
そのため、基板本体1005が占める領域を検出する工程と、回路パターン1006が占める領域を検出する工程とを独立に実施しなければならなかった。すなわち、基板本体1005が占める領域を検出した後に上記のように第2の励起光フィルタ1007に切替え、さらに第1の蛍光フィルタ1006を第2の蛍光フィルタ1007に切替えねばならなかった。従って、蛍光フィルタ1006,1007が設けられているフィルタレボルバ1010を機械的に回転駆動する複雑な装置を必要としていた。
【0012】
また、フィルタレボルバ1010を用いない場合には、各蛍光フィルタ1006,1007の後段に、それぞれ個別に検出装置を設けねばならなかった。従って、検査装置全体の構造が複雑になり、かつコストが高くつくという問題があった。また、基板1004の検査に際し、上記のような煩雑な工程を実施しなければならなかった。
【0013】
本発明の目的は、装置の簡略化及び小型化を図り得るだけでなく、1回の撮像検査により複数の対象物の状態を検出することを可能とする検出装置及び検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の第1の発明は、第1及び第2の対象物を含む複数の対象物を画像認識して、少なくとも第1の対象物の占める領域を検出する検出装置である。
【0015】
本発明では、前記複数の対象物に、前記第1及び第2の対象物が蛍光を発生させる励起光を与えるための励起光源と、前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から生じた第1の蛍光及び前記第2の対象物から生じた第2の蛍光の双方を透過させる第1の蛍光フィルタと、前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から発生する第1の蛍光を透過させず、前記第2の対象物から発生した第2の蛍光を透過させる第2の蛍光フィルタと、前記第1及び第2の蛍光フィルタをそれぞれ通過した第1及び第2の透過光が与えられ、該第1及び第2の透過光による第1及び第2の画像に応じ、第1及び第2の画像信号を出力する撮像装置と、前記撮像装置から与えられた前記第1及び第2の画像信号を演算し、少なくとも前記第1の対象物の占める領域を検出する画像処理装置とを備える。
【0016】
本発明に係る検出装置のある特定の局面では、前記撮像装置が、前記第1の蛍光フィルタを通過してきた第1の透過光が与えられ、第1の透過光に応じた第1の画像信号を出力する第1の撮像装置と、前記第2の蛍光フィルタを通過してきた第2の透過光が与えられ、該第2の透過光に応じた第2の画像信号を出力する第2の撮像装置とを有する。この場合には、第1の透過光による画像と、第2の透過光による画像とを第1及び第2の撮像装置において撮像すればよいだけであるため、第1及び第2の撮像装置自体の簡略化を図ることができる。
【0017】
また、本願の第2の発明は、第1及び第2の対象物を含む複数の対象物を画像認識して、少なくとも第1の対象物の占める領域を検出する検出装置であって、前記第1及び第2の対象物が同じ波長の励起光が照射された際に、それぞれ、緑色及び赤色の蛍光を発生する物質からなり、前記複数の対象物に、前記第1及び第2の対象物が前記蛍光を発生させる前記励起光を与える励起光源と、前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から生じた前記緑色の蛍光を選択的に透過させ、前記赤色の蛍光及び青色の蛍光を透過させない第1の蛍光フィルタと、前記励起光が照射された際に、前記第2の対象物から生じた前記赤色の蛍光を透過させ、前記緑色及び前記青色の蛍光を透過させない第2の蛍光フィルタと、前記第1の蛍光フィルタ及び前記第2の蛍光フィルタをそれぞれ透過してきた第1及び第2の透過光が与えられ、前記第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光に応じた第1の画像信号と、前記第2の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光に応じた第2の画像信号とを出力するカラー撮像装置と、前記カラー撮像装置から出力された前記第1及び第2の画像信号を演算し、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の占める領域を検出する画像処理装置とを備える。
【0018】
本願の第1及び第2の発明(以下、適宜本発明と総称する)の他の特定の局面では、前記複数の対象物が、前記励起光が与えられたときに蛍光を発生しない第3の対象物を含み、前記画像処理装置において、前記第1及び第2の対象物の占める領域と、前記第3の対象物の占める領域とを検出する。このように、本発明では、蛍光を発しない第3の対象物の領域を検出してもよい。
【0019】
本願の第3の発明は、励起光が照射されると波長の異なる第1及び第2の蛍光をそれぞれ発する第1及び第2の対象物を含む複数の対象物の占める領域を検出する方法である。この検出方法は、前記第1及び第2の対象物の双方が蛍光を発生させる励起光を前記第1及び第2の対象物に照射する工程と、前記第1の蛍光及び第2の蛍光の双方を透過させる第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光による画像と、前記第1の蛍光を透過させず、第2の蛍光を透過させる第2の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光による画像と撮像装置で撮影し、前記第1の画像及び第2の画像に応じた第1及び第2の画像信号を得る工程と、前記第1及び第2の画像信号を演算し、少なくとも前記第1の対象物の占める領域を検出する工程とを備える。
【0020】
本願の第3の発明のある特定の局面では、前記第1の透過光による画像と前記第2の透過光による第2の画像とをそれぞれ、第1及び第2の撮像装置により別々に撮像する。この場合には、第1及び第2の撮像装置を用いて、第1及び第2の蛍光フィルタを透過してきた透過光による画像を検出することができ、各撮像装置の簡略化を図ることができる。
【0021】
本願の第4の発明は、励起光が照射されると緑色及び赤色の蛍光をそれぞれ発する第1及び第2の対象物を含む複数の対象物の占める領域を検出する方法であって、前記第1及び第2の対象物の双方が蛍光を発生させる励起光を前記第1及び第2の対象物に照射する工程と、前記赤色の蛍光を透過させず、緑色の蛍光を透過させる第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光による画像と、緑色の蛍光を透過させず、赤色の蛍光を透過させる第2の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光による第2の画像とを撮像装置で撮影し、前記第1の画像及び第2の画像に応じた第1及び第2の画像信号を得る工程と、前記第1及び第2の画像信号を演算し、前記第1の対象物及び第2の対象物の占める領域を検出する工程とを備える。
【0022】
本願の第3及び第4の発明では、複数の対象物が励起光を与えたときに蛍光を発生しない第3の対象物を含んでいてもよく、その場合、前記画像処理装置において、前記第1及び第2の対象物の占める領域に加えて、第3の対象物の占める領域を演算してもよい。それによって、蛍光を発生しない第3の領域の占める部分も確認することができる。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明に係る検出装置では、第1及び第2の対象物において蛍光を発生させるのに、共通する励起光を励起光源から発生させればよい。そして、1回の検出工程により、第1及び第2の対象物を含む複数の対象物の状態を個別に画像認識し、例えば欠陥の有無を検出することができる。従って、検出装置の簡略化及び検出時間の短縮を図ることができる。
【0024】
第2及び第4の発明によれば、第1及び第2の対象物に共通する波長の励起光を用いて、同時に複数の対象物に照射し、第1及び第2の対象物により生じた蛍光を、上記第1及び第2の蛍光フィルタにより選択的に透過させ、画像処理することができる。そのため、第2及び第4の発明においても、検出装置の簡略化、特に光学系の簡略化を図ることができ、検出装置のコストを低減することができる。また、検出工程の簡略化及び検出時間の短縮を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検出装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態において、基板、基板上の電極及び透明樹脂層における励起光と生じる蛍光との関係を示す模式的正面図である。
【図3】第1の実施形態において、照射される励起光と、透明樹脂層及び基板から生じる蛍光と、第1の蛍光フィルタの光学特性との関係を示す図である。
【図4】第1の実施形態において、照射される励起光と、透明樹脂層及び基板から生じる蛍光と、第2の蛍光フィルタの光学特性との関係を示す図である。
【図5】(a)は、検査対称である基板上の構造を示す模式的平面図であり、(b)及び(c)は、第1のカメラで撮影された画像及び該画像の明暗を反転させて得られた画像を示す各模式図であり、(d)は第2のカメラで撮影された画像を示す模式図であり、(e)は(c)及び(d)で得られた画像をAND処理演算することにより得られた画像であって、透明樹脂層が占める領域を示す画像を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る検出装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における各カラーフィルタの光学特性と、透明樹脂及び基板から生じる蛍光との関係を示す図である。
【図8】(a)は、第2の実施形態において検出される基板、電極及び透明樹脂層を示す平面図であり、(b)及び(c)は、赤色の第1の蛍光フィルタを透過してきた透過光により得られる画像と、該画像の明暗を反転させた画像を示す模式図であり、(d)は、緑色の光を透過させる緑色フィルタ部を透過してきた透過光から得られた画像であって、電極部分が黒色、基板及び透明樹脂層が白色とされている画像を示す模式図であり、(e)は、(c)で得られた画像と、(d)で得られた画像をAND処理演算することにより得られた画像であって、透明樹脂層の占める領域を示す画像の模式図である。
【図9】従来のパターン検査装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に検出装置の概略構成図である。
【0028】
本実施形態の検出装置1では、電子部品2を検査する。図2に拡大して示すように、電子部品2は、セラミックからなる基板3を有する。基板3上に、電極4が形成されている。また、電極4上に、透明樹脂層5が形成されている。透明樹脂層5は、電極4の上面の一部のみを選択的に覆っている。この電子部品2では、透明樹脂層5が、予め定められた領域から外側にはみ出さないことが必要であり、透明樹脂層5のはみ出しが生じると欠陥品となる。
【0029】
本実施形態では、上記電子部品2において、セラミックスからなる基板3、金属からなる電極4及び合成樹脂からなる透明樹脂層5が占める領域がそれぞれ検出される。すなわち、透明樹脂層5が所定の領域からはみ出しているか否かを検出する。言い換えれば、本実施形態の検出装置1は、検査対象物として、基板3、電極4及び透明樹脂層5の3種類の対象物を有する電子部品2を検査するものである。このうち、電極4が本発明における第3の対象物に相当し、透明樹脂層5が第1の対象物に相当し、基板3が第2の対象物に相当する。
【0030】
図1に示すように、検出装置1は、第1,第2の光源11,12を有する。第1,第2の光源11,12は、対象物に励起光を与え、対象物において蛍光を発生させるために用いられる。なお、第1,第2の光源11,12と、電子部品2との間には、それぞれ、第1,第2の励起フィルタ13,14が配置されている。第1,第2の励起フィルタ13,14は、光源11,12から与えられた光の波長分布を制限し、電子部品2に所定の波長の励起光を与えるために設けられている。
【0031】
上記光源11,12としては、例えば青色LED、水銀ランプなどの励起光の波長に応じた適宜の光源を用いることができる。また、第1,第2の励起フィルタ13,14としては、例えば、バンドパスフィルターなどを用いることができる。
【0032】
本実施形態では、光源11、12は青色LEDからなり、励起光の波長は420nm〜530nmの範囲にある。上記励起フィルタ13,14を透過した励起光の波長は、中心波長は460nmであり、430nm〜490nmの範囲に渡っている。
【0033】
なお、本実施形態では、第1の光源11及び第1の励起フィルタ13は、電子部品2の電極4に覆われていない基板3の上面に励起光を与えるために用いられている。また、第2の光源12及び第2の励起フィルタ14は、電極4及び電極4上の透明樹脂層5が設けられている部分に励起光を効率良く与えるために設けられている。もっとも、第1の光源11及び第1の励起フィルタ13から与えられる励起光と、第2の光源12と第2の励起フィルタ14から与えられる励起光の波長は等しくされている。従って、単一の光源及び単一の励起フィルタにより、励起光を基板3上に照射してもよい。
【0034】
もっとも、本実施形態のように、複数の光源11,12を用いることにより、基板3上の広い領域に渡り、励起光を確実に照射することができる。
【0035】
本実施形態では、基板3がチタン系セラミックスからなり、電極4が金からなり、透明樹脂層5がエポキシ樹脂からなる。従って、460nmの波長の励起光を照射すると、基板3及び透明樹脂層5は蛍光を発する。基板3が発生させる蛍光を第2の蛍光とする。また、透明樹脂層5から発する蛍光を第1の蛍光とする。第2の蛍光の波長は650nmであり、第1の蛍光の波長550nmと異なる。さらに、電極4は金属からなり、上記波長の励起光が与えられたとしても蛍光を発しない。このように、第1の対象物としての透明樹脂層5及び第2の対象物としての基板3が発する第1及び第2の蛍光の波長の違いを利用し、さらに電極4が蛍光を発しないことを利用する。それによって、基板3、電極4及び透明樹脂層5の占める領域を画像処理により検出することができる。
【0036】
図1に示すように、電子部品2の上方には、第1の蛍光フィルタ15及び第2の蛍光フィルタ16がこの順序で配置されている。
【0037】
第1の蛍光フィルタ15に、上記第1及び第2の蛍光が導かれる。第1の蛍光フィルタ15の光学特性を図3に示す。
【0038】
励起光は、青色LED光であり、光源11,12は青色LED光を与える。励起フィルタ13,14は、波長430nm〜490nmの光を透過させる。このように第1,第2の励起フィルタ13,14で選択された波長の励起光が電子部品2の上面に与えられるように構成されている。
【0039】
上記励起光は、第1の対象物としての透明樹脂層5及び第2の対象物としての基板3においてそれぞれ第1,第2の蛍光を発生させる、すなわち両者において蛍光を発生させる共通の励起光である。
【0040】
図3の実線Aは、第1の対象物としての透明樹脂層5から発する第1の蛍光の分光分布を示し、実線Bは、基板3から発する第2の蛍光の分光分布を示す。第1の蛍光は緑色の蛍光であり、その中心波長は550nmである。第2の蛍光はオレンジ色〜赤色の蛍光であり、その中心波長は650nmである。
【0041】
他方、図3に示すように、第1の蛍光フィルタは、実線Eで示すように、波長490nm以下の光をカットする光学特性を有する。図3の曲線Cは第1,第2の光源11,12から与えられる励起光の波長分布を示し、実線Dは第1,第2の励起フィルタ13,14を通過した励起光の波長分布を示す。
【0042】
従って、第1の蛍光フィルタ15により、励起光及び励起フィルタを通過した励起光がカットされることになり、第1,第2の蛍光が第1の蛍光フィルタ15を通過する。
【0043】
このような第1の蛍光フィルタ15は、例えば、バンドパスフィルターにより形成することができ、本実施形態ではバンドパスフィルターが用いられている。
【0044】
第2の蛍光フィルタ16の光学特性を図4に示す。図4において、破線Aは、第1の蛍光の波長分布を示し、破線Bは第2の蛍光の波長分布を示す。また、実線Fは第2の蛍光フィルタの光学特性を示す。図4から明らかなように、第2の蛍光フィルタでは、波長570nm以下の光がカットされる。従って、第1の蛍光がカットされ、第2の蛍光のみが通過することとなる。第2の蛍光フィルタ16の前段にはビームスプリッター17が設けられている。ビームスプリッター17は、反射面17aを有する。反射面17aは、第1の蛍光フィルタ15を透過してきた第1の透過光の一部が反射され、レンズ18を介して反射光を第1のカメラ19に与える。他方、第1の蛍光フィルタ15を透過してきた第1の透過光の一部が反射面17aを透過し、第2の蛍光フィルタ16に与えられる。第2の蛍光フィルタ16の光学特性を図4に示す。図4に示すように、第2の蛍光フィルタは、波長570nm以下の光をカットする。従って、第2の蛍光フィルタ16を透過してきた第2の透過光は、第1の蛍光を含まない。すなわち、基板3から発した第2の蛍光のみを含むこととなる。このような第2の蛍光フィルタ16及びビームスプリッターは本実施形態では、ダイクロイックミラーが用いられている。
【0045】
この第2の蛍光フィルタ16の後段に、レンズ20を介して第2のカメラ21が配置されている。第2のカメラ21は、この第2の蛍光フィルタ16を透過してきた第2の透過光を撮像する。
【0046】
上記第1,第2のカメラ19,21は、公知のCCDカメラなどの撮像装置により構成することができる。
【0047】
第1,第2のカメラ19,21には、上記のように、第1の透過光及び第2の透過光が与えられ、該第1,第2の透過光に対応した第1,第2の画像信号を出力する。第1,第2のカメラ19,21は、画像処理装置22に接続されており、画像処理装置22は、上記第1の画像信号と第2の画像信号とを演算し、基板3、電極4及び透明樹脂層5の占める領域を識別する。
【0048】
これを、図5(a)〜(e)を参照して説明する。
【0049】
図5(a)は、上記電子部品2のより具体的な模式的平面図であり、基板3上に複数の電極4が形成されており、中央の電極4上に透明樹脂層5が形成されている。
【0050】
図5(b)は、第1のカメラ19で撮影された画像を示す模式図である。すなわち、第1の蛍光フィルタ15を透過してきた第1の透過光では、図3に示したように、励起光がカットされ、第1の蛍光及び第2の蛍光を含む。従って、図5(b)に示す画像が第1のカメラ19により撮像され、該画像に応じた信号が画像処理装置22に与えられる。図5(b)に示すように、蛍光を発している領域が白色となり、蛍光を発しない電極がクロスハッチングで示すように黒色となる画像が得られる。
【0051】
他方、第2の蛍光フィルタ16を透過してきた第2の透過光による画像は、第2のカメラ21で発生される。この第2のカメラ21で発生された画像は図5(c)に示す通りとなる。すなわち、図4に示すように、第2の蛍光フィルタは、第1の蛍光をカットし、第2の蛍光のみを透過させる。従って、第2の透過光は、基板から発した蛍光のみを含む画像を示す。よって、図5(c)に示すように、基板構成部分が白色となり、電極4が黒色となり、透明樹脂層構成部分も現れない。
【0052】
次に、図5(c)に示した画像に基づく第2の画像信号を、画像処理装置22において明暗を反転させる。このようにして、図5(d)に示す画像が得られる。
【0053】
そして、画像処理装置22においては、図5(d)に示した画像と、図5(b)に示した画像とをAND処理演算する。その結果、図5(e)に示すように、電極4上に位置している透明樹脂層のみを抽出することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態によれば電極4上に存在してはならない透明樹脂層部分を検出することができる。
【0055】
また、上記図5(b)及び(d)から明らかなように、電極が占める領域、並びに基板3が露出している部分の領域をも検出することができる。
【0056】
本実施形態の検出装置1及び検出方法を用いれば、上記のように、第1,第2の光源11,12から励起光を電子部品2に照射し、同時に第1のカメラ19及び第2のカメラ21で上記第1,第2の透過光を撮像し、画像処理装置22で演算するだけで、電極4上の透明樹脂層5が占める部分を速やかにかつ確実に検出することができる。従って、複数の対象物にそれぞれ励起光を与え、それぞれ個別に発生した蛍光による画像を撮像する必要がないため、装置全体の簡略化を図ることができる。また、検出工程の簡略化及び短縮を図ることができる。
【0057】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る検出装置の概略構成図である。第2の実施形態の検出装置30では、第1の実施形態と同様の電子部品2を検査する。すなわち、第1の実施形態と同様に、電子部品2の上面において、電極4上に位置している透明樹脂層を検出する。
【0058】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1,第2の光源11,12及び第1,第2の励起フィルタ13,14が備えられている。この第1,第2の光源11,12及び第1,第2の励起フィルタ13,14から、第1の実施形態と同様に、波長430nm〜490nmの青色の励起光が電子部品2の上面に照射される。電子部品2の詳細は図2に示した通りである。すなわち、基板3、電極4及び透明樹脂層5は第1の実施形態の場合と同様の材料からなる。従って、基板3は、波長590nm〜700nmのオレンジ〜赤色の第2の蛍光を発生し、電極4は蛍光を発生せず、透明樹脂層5は波長500nm〜590nmの範囲の緑色の第1の蛍光を発生する。
【0059】
上記電子部品2の上方に、励起光除去用の蛍光フィルタ31が配置されている。蛍光フィルタ31の光学特性は第1の実施形態の第1の蛍光フィルタ15と同様である。従って、蛍光フィルタ31を透過してきた透過光は、励起光を含まず、第1の蛍光及び第2の蛍光を含む。
【0060】
本実施形態では、蛍光フィルタ31の後段にレンズ33が配置されている。レンズ33は、蛍光フィルタ31を透過してきた光を収束する。レンズ33を透過してきた透過光が、カラーフィルタ34が前段に備えられたカラーカメラ35に導かれる。カラーカメラ35は第2のカラーフィルタ34としてRGB分離フィルタを内蔵している。RGB分離フィルタは、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の光を分離する。図7は、このRGBフィルタの光学特性を示す図である。
【0061】
図7から明らかなように、上記RGBフィルタは、青色の光を選択的に透過させるBフィルタ部と、緑色の光を選択的に透過させるGフィルタ部と、赤色の光を選択的に透過させるRフィルタ部とを備えている。図7において、第1の蛍光及び第2の蛍光の分光分布をそれぞれ、破線A及びBで示す。
【0062】
カラーカメラ35は、上記Bフィルタ部及びGフィルタ部及びRフィルタ部を透過してきた画像を撮像する。すなわち、色成分毎の画像を生成させることができる。
【0063】
従って、カラーカメラ35の色成分毎の画像信号を画像処理装置22に与え、画像処理装置22において、色成分毎の画像信号に基づき、透明樹脂層の電極4上に位置している部分を検出することができる。これを、図8を参照して説明する。
【0064】
図8(a)は、上記電子部品2の模式的平面図であり、材質が異なる部分を異なるハッチングで示す。すなわち、基板3、電極4及び透明樹脂層5を異なるハッチングを付して示す。
【0065】
この電子部品2を上記カラーカメラ35で撮像した場合の赤色成分の画像を図6(b)に示す。赤色成分画像とは、上記Rフィルタ部を透過してきた光による画像である。図8(b)に示すように、基板が存在する部分が明色すなわち白色となり、電極4が存在する部分は黒色となる。
【0066】
画像処理装置22において、図8(b)に示した画像の明暗を反転させる。その結果、図8(c)に示すように、基板3が存在する部分が黒色となり、電極4が存在する部分が白色となる。
【0067】
他方、図8(d)は、緑色の成分画像を示す。緑色の成分画像は上記Gフィルタ部を透過してきた光による画像である。図8(d)に示すように、透明樹脂層5が存在する部分が白色となり、基板3及び電極4が存在する部分が黒色となる。
【0068】
画像処理装置22においては、図8(c)で得られた画像と、図8(d)で得られた画像とをAND処理演算する。その結果、図8(e)に示すように、電極4上に位置している透明樹脂層の占める領域を検出することができる。
【0069】
従って、本実施形態においても、電極4上に存在してはならない透明樹脂層5の位置を検出することができる。よって、電極4上に透明樹脂層が存在している欠陥品の電子部品2を選別することができる。
【0070】
本実施形態においても、複数種の蛍光を発する対象物を含む電子部品2の検査に際し、複数の蛍光を発生する対象物に共通励起光を与え、1つのカラーカメラ35を用い、上記欠陥品を検出することができる。従って、装置の簡略化及びコストの低減を果たすことができる。また、検出工程の簡略化及び短縮を図ることが可能となる。
【0071】
なお、上述してきた第1及び第2の実施形態では、励起フィルタを用いたが、対象物から発する蛍光と波長分布において重なり合わない励起光を発生させることができるのであれば、励起フィルタは必ずしも設けずともよい。
【0072】
また、上記第1及び第2の実施形態では、レンズ18,20,33を設けたが、これらのレンズ18,20,33は省略されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、電子部品2の検査を行ったが、電子部品2に代えて、波長が異なる蛍光を発する複数の対象物を含む部品の検査等に本発明の検出装置及び検出方法を一般的に用いることができる。従って、上記基板3、電極4及び透明樹脂層5を含む電子部品2に限らず、様々な部品や部材の検査に本発明の検出装置及び検出方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…検出装置
2…電子部品
3…基板
4…電極
5…透明樹脂層
11,12…光源
13,14…励起フィルタ
15,16…蛍光フィルタ
17…ビームスプリッター
17a…反射面
18,20…レンズ
19,21…カメラ
22…画像処理装置
30…検出装置
31…蛍光フィルタ
33…レンズ
34…カラーフィルタ
35…カラーカメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の対象物を含む複数の対象物を画像認識して、少なくとも第1の対象物の占める領域を検出する検出装置であって、
前記複数の対象物に、前記第1及び第2の対象物が蛍光を発生させる励起光を与えるための励起光源と、
前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から生じた第1の蛍光及び前記第2の対象物から生じた第2の蛍光の双方を透過させる第1の蛍光フィルタと、
前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から発生する第1の蛍光を透過させず、前記第2の対象物から発生した第2の蛍光を透過させる第2の蛍光フィルタと、
前記第1及び第2の蛍光フィルタをそれぞれ通過した第1及び第2の透過光が与えられ、該第1及び第2の透過光による第1及び第2の画像に応じ、第1及び第2の画像信号を出力する撮像装置と、
前記撮像装置から与えられた前記第1及び第2の画像信号を演算し、少なくとも前記第1の対象物の占める領域を検出する画像処理装置とを備える、検出装置。
【請求項2】
前記撮像装置が、前記第1の蛍光フィルタを通過してきた第1の透過光が与えられ、第1の透過光に応じた第1の画像信号を出力する第1の撮像装置と、前記第2の蛍光フィルタを通過してきた第2の透過光が与えられ、該第2の透過光に応じた第2の画像信号を出力する第2の撮像装置とを有する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
第1及び第2の対象物を含む複数の対象物を画像認識して、少なくとも第1の対象物の占める領域を検出する検出装置であって、
前記第1及び第2の対象物が同じ波長の励起光が照射された際に、それぞれ、緑色及び赤色の蛍光を発生する物質からなり、
前記複数の対象物に、前記第1及び第2の対象物が前記蛍光を発生させる前記励起光を与える励起光源と、
前記励起光が照射された際に、前記第1の対象物から生じた前記緑色の蛍光を選択的に透過させ、前記赤色の蛍光及び青色の蛍光を透過させない第1の蛍光フィルタと、
前記励起光が照射された際に、前記第2の対象物から生じた前記赤色の蛍光を透過させ、前記緑色及び前記青色の蛍光を透過させない第2の蛍光フィルタと、
前記第1の蛍光フィルタ及び前記第2の蛍光フィルタをそれぞれ透過してきた第1及び第2の透過光が与えられ、前記第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光に応じた第1の画像信号と、前記第2の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光に応じた第2の画像信号とを出力するカラー撮像装置と、
前記カラー撮像装置から出力された前記第1及び第2の画像信号を演算し、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の占める領域を検出する画像処理装置とを備える、検出装置。
【請求項4】
前記複数の対象物が、前記励起光が与えられたときに蛍光を発生しない第3の対象物を含み、前記画像処理装置において、前記第1及び第2の対象物の占める領域と、前記第3の対象物の占める領域とを検出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
励起光が照射されると波長の異なる第1及び第2の蛍光をそれぞれ発する第1及び第2の対象物を含む複数の対象物の占める領域を検出する方法であって、
前記第1及び第2の対象物の双方が蛍光を発生させる励起光を前記第1及び第2の対象物に照射する工程と、
前記第1の蛍光及び第2の蛍光の双方を透過させる第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光による画像と、
前記第1の蛍光を透過させず、第2の蛍光を透過させる第1の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光による画像とを撮像装置で撮影し、前記第1の画像及び第2の画像に応じた第1及び第2の画像信号を得る工程と、
前記第1及び第2の画像信号を演算し、少なくとも前記第1の対象物の占める領域を検出する工程とを備える、複数の対象物の占める領域を検出する検出方法。
【請求項6】
前記第1の透過光による画像と前記第2の透過光による第2の画像とをそれぞれ、第1及び第2の撮像装置により別々に撮像する、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
励起光が照射される緑色及び赤色の蛍光をそれぞれ発する第1及び第2の対象物を含む複数の対象物の占める領域を検出する方法であって、
前記第1及び第2の対象物の双方が蛍光を発生させる励起光を前記第1及び第2の対象物に照射する工程と、
前記赤色の蛍光を透過させず、緑色の蛍光を透過させる第1の蛍光フィルタを透過してきた第1の透過光による第1の画像と、
緑色の蛍光を透過させず、赤色の蛍光を透過させる第2の蛍光フィルタを透過してきた第2の透過光による第2の画像とを撮像装置で撮影し、前記第1の画像及び第2の画像に応じた第1及び第2の画像信号を得る工程と、
前記第1及び第2の画像信号を演算し、前記第1の対象物及び第2の対象物の占める領域を検出する工程とを備える、複数の対象物の占める領域を検出する検出方法。
【請求項8】
前記複数の対象物が、前記励起光が照射された際に蛍光を発しない第3の対象物を有し、前記第1の画像信号及び第2の画像信号を演算することにより、前記第1及び第2の対象物の占める領域と、前記第3の対象物の占める領域とを検出する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127924(P2012−127924A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282209(P2010−282209)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】