複数の磁場集中部材をカバーする保護部材を備えたイオンビーム照射装置用磁石
【課題】イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成する。
【解決手段】イオンビーム照射装置で用いられる磁石1は、イオンビーム8を挟むように対向して配置された一対の磁極2と、一対の磁極2の各対向面に設けられ、磁極2間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材3と、少なくとも複数の磁場集中部材3におけるイオンビーム8を挟んで相対向している面を覆う保護部材4とを備えている。
【解決手段】イオンビーム照射装置で用いられる磁石1は、イオンビーム8を挟むように対向して配置された一対の磁極2と、一対の磁極2の各対向面に設けられ、磁極2間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材3と、少なくとも複数の磁場集中部材3におけるイオンビーム8を挟んで相対向している面を覆う保護部材4とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオンビーム照射装置に用いられ、イオンビームを偏向、走査、収束または発散させる磁石内に電子を閉じ込める為の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオンビーム照射装置の生産性の向上が求められている。その一つの手段として、正の電荷を有する低エネルギーイオンビームの輸送効率を向上させる技術が着目されている。より具体的には、イオンビーム照射装置で用いられる磁石内部に電子を閉じ込めることによって、磁石内部を通過するイオンビームの空間電荷効果による広がりを抑制しようという技術がある。
【0003】
その技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、互いに対向配置された磁極部材の対向面に複数の磁場集中部材を備えた分析磁石が開示されている。
【0004】
複数の磁場集中部材は畝部と溝とを備えており、分析磁石内部において磁気ミラー効果を発生させる。これにより、磁極部材間で発生される磁場の方向に沿って移動している電子が一方の磁極部材に近づくと、磁場集中部材により形成される集中磁場の影響を受けて、他方の磁極部材の側に反射される。その後、反射された電子は再び磁極部材間で発生する磁場の方向に沿って、他方の磁極部材へ向けて移動する。そして、他方の磁極部材に近づいた時、磁場集中部材の集中磁場によって再び反対方向に向けて反射される。このようにして、磁極部材間での電子の移動と磁場集中部材による電子の反射とを組み合わせることで、磁石内部での電子の閉じ込めが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−521208号公報(段落0020−0022、図2〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて磁石内部での電子の閉じ込めが上手く出来たとしても、それだけでは必ずしもイオンビーム照射装置の生産性が向上出来るとは言えない。
【0007】
通常、イオンビームが通過する磁極部材間のギャップは、そこを通過するイオンビームの寸法を考慮した上で、当該イオンビームの寸法よりも少し大きい寸法となるように設計されている。これは、イオンビームの全域に渡って十分に均一な磁場を発生させる為である。
【0008】
イオンビームは空間電荷効果により発散する性質を有している。その為、磁石内部で電子によってイオンビームの発散を抑制したとしても、完全にその発散を抑制することは難しく、わずかに発散することが考えられる。また、イオンビームは全体として真っ直ぐに進んでいるように見えるが、局所的には色々な方向のビーム成分が含まれている。この為、磁極部材間のギャップを通過するイオンビームが磁極上に設けられた磁場集中部材に衝突してしまうことが考えられる。
【0009】
イオンビームが磁場集中部材に衝突し、磁場集中部材がスパッタリングされると、磁場集中部材の形状が変形してしまう。その結果、十分な集中磁場を発生させることが出来なくなる。ひいては、電子の閉じ込め効果にも支障をきたしてしまう。このような場合、電子の閉じ込め効果を維持するには、変形してしまった磁場集中部材を新しいものに交換しなければならない。この交換の間、イオンビーム照射装置を停止させることになるので、イオンビーム照射装置の生産性が低下してしまう。
【0010】
さらに、イオンビームによりスパッタリングされた磁場集中部材がパーティクルとして飛散する。仮に磁場集中部材に金属が使用されていると、飛散した磁場集中部材の一部が、イオンビームが照射される基板内に混入されて、半導体素子の製造にとって致命的とも言える金属汚染を引き起こしてしまう。そうなると、半導体製造素子の不良率が上がり、イオンビーム照射装置の生産性が低下する。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る磁石は、イオンビーム照射装置で用いられる磁石であって、前記磁石の内側で、イオンビームを挟むように相対向して配置された一対の磁極と、前記一対の磁極の対向面に設けられ、前記磁極間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材と、少なくとも前記複数の磁場集中部材における前記イオンビームを挟んで相対向している面を覆う保護部材とを備えていることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、イオンビームによって磁場集中部材が直接にスパッタリングされないので、磁場集中部材のスパッタリングによる変形を防止することが出来る。また、磁場集中部材の変形が生じないので、電子閉じ込め機能の低下を防止することが出来る。ひいては、電子閉じ込め機能の低下が防止出来るので、磁場集中部材の交換によって装置を停止させる必要がない。さらには、磁場集中部材として金属が用いられている場合であっても、磁場集中部材がスパッタリングされることがないので、金属汚染の心配も生じない。よって、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することが可能となる。
【0014】
また、部材同士の組み付け、取り外し作業といったメンテナンスを簡単に行う為に、前記保護部材と前記複数の磁場集中部材とが一体形成されていることが望ましい。
【0015】
このような構成にすれば、保護部材の磁極への組み付けや磁極からの取り外しと複数の磁場集中部材の磁極への組み付けや磁極からの取り外しとを同時に行うことが出来るので、組み付け、取り外しに係るメンテナンス作業を簡単に行うことが出来る。
【0016】
さらに、保護部材の磁極への組み付けを短時間で精度良く行うのに、前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向をX方向とし、前記一対の磁極が対向する方向をY方向とし、前記X方向と前記Y方向に直交する方向をZ方向とした時、前記Z方向と交差する前記保護部材の2つの側面に溝が設けられているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記溝に挿入されている保持部材を有していることが望ましい。
【0017】
一方で、保護部材の前記イオンビームと対向する面には凹みが形成されているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記凹みに当接している保持部材を有している構成を採用しても良い。
【0018】
上記された構成にすれば、保持部材を用いて保護部材をスライドさせることで磁極に対する保護部材の組み付けが行えるので、組み付け時に行う保護部材の位置調整作業に要する時間を短縮することができる。
【0019】
そのうえ、長時間イオンビーム照射装置を安定して運転させる為に、前記保護部材には突起部が形成されており、前記磁極のイオンビームと対向する面を基準にした場合、前記突起部の高さは前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向に沿って徐々に低くなるように設定されているとともに、前記イオンビームと前記磁場集中部材の間に前記突起部が位置していることが望ましい。
【0020】
このような構成にすれば、長時間イオンビーム照射装置を運転した場合であっても、磁場集中部材の上方に位置する保護部材がスパッタリングにより消耗されにくくなる。その為、磁石内部での電子閉じ込め効果を長時間維持させることが出来る。
【0021】
そして、前記突起部はカーボンナノチューブを備えていることが考えられる。
【0022】
このような構成にすると、イオンビーム中に含まれる発散成分がイオンビームの被照射物であるウェハやガラス基板に到達することを防止出来る。
【0023】
また、前記保護部材は、複数の部材から構成されていても良い。
【0024】
通常、磁極の平面形状は磁極間を通過する設計上のイオンビームの軌道に沿って複雑に湾曲している。その為、保護部材を磁極に対してスライドして組み付ける場合、磁極や保護部材の形状によっては、単一の保護部材を上手くスライドさせて磁極表面の全域を覆うように組み付けることが出来ないことが予測される。そのような場合には、保護部材を磁極の形状に合わせた上で、スライドさせ易い大きさで複数に分けておき、分割された保護部材を個別にスライドさせて磁極に組み付ける。このような構成にすることで、組み付けや取り外しの作業が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
このように構成した本発明によれば、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る磁石を表す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図3】本発明の別の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図4】図2、図3のZX平面上での様子を表す。
【図5】本発明の他の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図6】本発明の更なる実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】複数の保護部材によって磁極平面が覆われていることを示す概略図である。
【図9】図8のXY平面上での様子を表す概略図である。
【図10】図9の斜視図である。
【図11】図10から保護部材を取り除いた様子を表す斜視図である。
【図12】保持構造についての別の実施例である。
【図13】図12に示される線分A−Aで、Y方向に沿って構造物をせん断した時のその断面を表す。
【図14】保持構造についての他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の一実施例に係る磁石全体を示す斜視図である。図に示すX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、磁石に入射するイオンビームの設計上の進行方向がX方向である。
【0028】
図1を元に本発明の一実施例に係る磁石全体の構成を説明する。図1では、X方向に沿って進行するイオンビーム8が磁石1に入射する。磁石1にはY方向にてイオンビーム8を挟むように一対の磁極2が設けられている。例えば、磁極2は磁石1に対してボルト等を用いて取り付けられている。
【0029】
一対の磁極2の対向面、つまりは、一対の磁極2間を通過するイオンビーム8に対向する側の磁極2の面には、従来技術と同様にミラー磁場により一対の磁極2間に電子を閉じ込めるための複数の磁場集中部材3が設けられている。また、この磁場集中部材3もボルト等によって磁極2に取り付けられている。なお、図1では図を簡略化するために、複数の磁場集中部材3を単一の部材として描いている。さらに、図1では複数の磁場集中部材3を磁極2のイオンビームと対向する面の一部にのみ配置しているが、イオンビームと対向する磁極2の全面に配置するようにしても良い。
【0030】
さらに、一対の磁極2間をイオンビーム8が通過する際、イオンビーム8と対向する側に設けられた複数の磁場集中部材3の面を全て覆うように、保護部材4が設けられている。
【0031】
この保護部材4を設けることにより、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成可能にしている。
【0032】
保護部材4の材質としては、イオンビーム8によってスパッタリングされ難いカーボンが考えられる。また、イオンビームの被照射物がシリコンウェハである場合には、シリコンを用いても良い。
【0033】
図1の磁石1では保護部材4を磁極2に対してスライドさせることで組み付けている。そして、本発明における一実施例では、図1のZ方向に位置する保護部材4の両側面に溝5が設けられている。
【0034】
磁極2のZ方向に位置する両側面には、一端部が例えばボルトといった止め具7によって磁極2に固定された保持部材6が設けられている。保持部材6の他端部は、保護部材4に設けられた溝5に挿入された状態で、保護部材4をスライドさせて磁極2に組み付けられるような構成となっている。図1の場合、イオンビームの進行方向と逆方向に保護部材4をスライドさせることで組み付けがなされている。
【0035】
なお、保護部材4のZ方向の側面に設けられた溝5は、保護部材4がスライドにより組み付けることができるようなものであれば、どのような形状であっても構わない。また、図1の例では保護部材4の両側面における長さ方向に沿って、その一部分にのみ溝5が設けられているが、長さ方向の全長に渡り溝を形成しておいても良い。
【0036】
図2には、本発明の一実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。この図2では、磁極2、磁場集中部材3、保護部材4の関係をわかり易くする為に保持部材6を省略している。また、ここに描かれている磁極は、図1に記載の磁石において対向配置された一対の磁極の内、Y方向下側に位置する磁極2である。対向配置された2つの磁極2において、各々の磁極に設けられる磁場集中部材3、保護部材4、保護部材4を保持する保持部材6の構成は同じものを用いれば良い。重複する説明を避ける為、本発明の実施例では一方の磁極とそれに設けられる各部材についての説明に留めている。
【0037】
複数の磁場集中部材3は、図2に示されるように複数の永久磁石から構成されている。これは一例であって、永久磁石の他に集中磁場を発生させるようなものであればどのようなものでも良い。また、複数の磁場集中部材3は図2に示すように磁極面上に部分的に配置してもいいし、磁石内での電子の閉じ込めをより確実に行いたい場合には磁極面の全面に渡って配置しても良い。
【0038】
また、一対の磁極2は磁極間での磁場を一方向に発生させる為に、一対の極性を有している。図2では一例としてN極の磁極が配置されている。そして、複数の磁場集中部材3を構成する永久磁石の極性は、磁極側がS極で、その反対側がN極となるようにして配置されている。なお、磁極2の極性がS極であれば、複数の磁場集中部材3を構成する永久磁石の極性の向きは前述したものと反対になる。
【0039】
磁極面上に配置された複数の磁場集中部材3の上面(Y方向側)を覆うように保護部材4が設けられている。この保護部材4のZ方向と交差する2つの側面には、図1に示された保持部材の一端が挿入される溝が形成されている。この例では、保護部材4は磁場集中部材3の上面のみを覆っているが、磁極2表面上に部分的に配置された複数の磁場集中部材3間の隙間も覆うようにしても良い。図2に示される構成では、保護部材4と複数の磁場集中部材3とは個別の部材で構成されており、それぞれ別々に組み付け作業や取り外し作業が行われる。
【0040】
複数の磁場集中部材3の他の例としては、透磁率が高い材料と低い材料とを交互に配置することが考えられる。この場合、高い透磁率の材料を図2の永久磁石が配置されている箇所に配置し、低い透磁率の材料を永久磁石間の隙間の位置に配置することが考えられる。なお、高い透磁率の材料と低い透磁率の材料との位置関係を上記したものと反対にしても良い。
【0041】
複数の磁場集中部材が配置される間隔をより小さくし、局所的な集中磁場をより密にするのに、磁性材料を有するカーボンナノチューブを磁極面上に配置しても良い。例えば、カーボンナノチューブを輪切りにし、磁極面上に起立させた上で、カーボンナノチューブ内に永久磁石等の磁性材料を配置しておくことが考えられる。
【0042】
図3には、本発明の別の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。 ここでは、複数の磁場集中部材3と保護部材4とが一体の部材として取り扱われる。例えば、複数の磁場集中部材3は、保護部材4の中に埋め込まれている。この点が、図2の構成と異なる。このようにすることで、磁極2に対する各部材の組み付け、取り外しが容易となる。
【0043】
図4は、図2および図3のZX平面上での様子を表す。図2と図3では保護部材4が磁極2の全面を覆うようにしているので、図4においてY方向と反対の方向から保護部材4上を見たとき、磁極2が保護部材4に隠れて見えない。しかしながら、保護部材4は複数の磁場集中部材3上を覆うようにしていれば良いので、このように磁極2の全面を覆う構成でなくても良い。あくまで一例である。
【0044】
図4では、溝5と複数の磁場集中部材3の位置関係が容易に理解できるように破線にてそれらの外形を描いている。実際に保護部材4の上方から見た場合には、保護部材4が透明の材質で構成されていない限りこれらの部材を見ることは出来ない。
【0045】
図2や図3では一見すると磁極2の上面からY方向に溝5と複数の磁場集中部材3とを離間させなければならないように見えるがそうではない。図4から理解出来るように、溝5と磁場集中部材3とはZ方向で互いの位置が異なっている。その為、Y方向において、磁極2の表面から同じ高さとなるような位置に、溝5と複数の磁場集中部材3とを配置しても構わない。
【0046】
図5には本発明の他の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。図1〜4に示される保護部材4のY方向における上面は、いずれもZX平面に平行な平面形状を有していたが、そのような平面形状でなくても良い。
【0047】
イオンビーム8が直進軌道を描く場合、理想的にはイオンビームを構成する全ての成分が直進軌道を描く。しかしながら、現実には、空間電荷効果によってイオンビーム8は発散する。その為、イオンビームは直進する成分と発散する成分とを含むようになる。図5では、直進するイオンビームの成分を成分Aとし、発散するイオンビームの成分を成分Bとしている。
【0048】
この場合、イオンビーム8の成分Bによって保護部材4がスパッタリングされる恐れがある。複数の磁場集中部材3を保護している保護部材4がスパッタリングされると、保護部材4から複数の磁場集中部材3が露出する恐れが生じる。
【0049】
複数の磁場集中部材3が露出されると、イオンビーム8により複数の磁場集中部材3がスパッタリングされてしまう。その結果、部材の変形や変形による性能劣化、さらには複数の磁場集中部材が金属で構成されている場合には金属汚染の問題をも引き起こしてしまう恐れがある。このような問題が発生すると、イオンビーム照射装置を長時間安定して運転させることが困難になる。
【0050】
このような点を改善すべく、図5に示されるような複数の突起部9を保護部材に設けることが考えられる。この突起部9はZX平面上に位置する保護部材4の表面からY方向に突出している部分をさし、X方向に沿って畝のように連続して形成されている。各突起部9における磁極2の表面からの高さは、イオンビーム8の設計上の進行方向であるX方向に沿って、徐々に低くなるように設定されている。例えば、X方向の上流側における突起部9の磁極表面からの高さをL1とし、X方向の下流側における突起部9の磁極面からの高さをL2とする。この場合、L2よりもL1が大きくなるように設定しておくとともに、X方向に沿ってL1からL2にかけて任意の一次関数に基づいて減少するようにしておけば良い。その上で、複数の磁場集中部材3を突起部9が形成されている下方に配置させておく。別の言い方をすれば、イオンビームと磁場集中部材との間に突起部が位置している。
【0051】
このようにすれば、発散成分であるイオンビームの成分Bが、保護部材4に設けられた突起部9に衝突することになる。これによって、複数の磁場集中部材3が配置されている突起部9のY方向における上面が削られにくくなる。その為、イオンビーム照射装置を長時間運転した場合であっても、複数の磁場集中部材3がイオンビーム8によってスパッタリングされる可能性を低くすることができる。
【0052】
また、このような構成を用いた場合、イオンビーム8の発散成分である成分Bをある程度の割合でイオンビーム8から取り除くことが可能となる。図5に一点鎖線で示されるイオンビームの成分Bを参照すると、突起部9のもっとも高い部分に衝突して、反射される。反射されたイオンビームの成分Bは、保護部材4の別の部分に衝突し、再び反射される。最終的に、イオンビーム8の成分Bはイオンビームの成分Aとおおよそ反対の方向に進むことになる。この結果、おおよそイオンビームの成分Aのみを有するイオンビーム8を被照射物であるウェハやガラス基板といったターゲット面に向けて照射することが出来るので、半導体素子の製造に係る不良率が改善される。
【0053】
図6は、図5に示した突起部9の構成についての別の実施例である。図5では突起部9のもっとも高い部分が保護部材4の表面から垂直に起立するように設けられていたが、イオンビーム8の設計上の進行方向であるX方向に沿って突起部9の高さが徐々に低くなるように設定されていれば、図6に示すような構成であっても図5に示す構成と同等の効果を得ることができる。
【0054】
なお、図5、図6ともに磁極表面からの突起部9の高さをイオンビームの進行方向に沿って任意の一次関数に従って減少するように設定していたが、これに限られない。例えば、任意の二次関数を用いて設定しても良い。
【0055】
図7は図5の突起部9に関する要部拡大図である。この図7に見られるように、X方向の上流側に位置する突起部9の表面に細かく輪切りにしたカーボンナノチューブ10を設けておくことが考えられる。この場合、カーボンナノチューブ10を1本ずつ突起部9に取り付けることは難しいので、予めカーボン等で構成された板状の部材の上に複数のカーボンナノチューブ10を設けておき、1つのユニットとして突起部9に取り付けるようにしておく。
【0056】
このようなカーボンナノチューブ10を設けておくと、図5で示したイオンビームの成分Bがカーボンナノチューブ10に衝突した時に、輪切りにされたカーボンナノチューブ10の内部に、あるいは複数のカーボンナノチューブ10の間に、イオンビームの成分Bを閉じ込めることが期待できる。これによってイオンビームの成分Bが保護部材4の突起部9から反射される可能性が少なくなる。
【0057】
また、仮に反射されたとしても、イオンビームの成分Bはカーボンナノチューブ10に衝突している為、反射された後のビーム成分Bの速度はカーボンナノチューブ10がない場合に比べてかなり減速されることになる。その為、被照射物であるウェハやガラス基板といったターゲットに突起部9で反射されたイオンビームの成分Bが到達する可能性を軽減することが出来る。
【0058】
なお、カーボンナノチューブ10を突起部9に取り付ける構成について、図5の場合を例にして説明したが、図6の突起部9の構成であっても図7に示したようなカーボンナノチューブ10を取り付けることが出来る。
【0059】
図6の突起部9の場合、カーボンナノチューブ10を取り付ける場所については、図6でイオンビームの成分Bが衝突する場所、つまり、設計上のイオンビームの進行方向であるX方向と平行でないイオンビームの発散成分が衝突する場所に設けておけば良い。もちろん、イオンビーム8の状態は様々に変化する為、突起部9の全面にカーボンナノチューブ10を設けるようにしておいても良い。
【0060】
図1に示した磁極2の形状はおおよそ長方形状をしていたが、図8に一点鎖線で示されるような複雑な曲線形状を有していることもある。
【0061】
このような場合、磁極2の形状が複雑である為、磁極2の全面を覆うような単一の保護部材4をスライドにより組み付けることが困難になることが予想される。つまり、図8に示されるような磁極2の形状の場合、単一の保護部材4をスライドさせると、スライドさせている最中に保護部材4が引っかかってしまう場合が考えられる。
【0062】
この問題を解決する為に、単一の保護部材4の形状を磁極2の全面を覆うような長方形状とし、その上で、保護部材2の形状を保持できるようにZ方向における磁極2の側面から保持部材6を磁極2の外側へ向けて張り出しておくことが考えられる。ただし、これだと保持部材6と保護部材4の両方を大きな部材としなければならないので、装置の大型化を招いてしまう。
【0063】
そこで、このような複雑な磁極形状に対応すべく、磁極2の全面を覆う大きな保護部材4を複数に分割することが考えられる。図8では、2つに分割された保護部材4が用いられている。
【0064】
図9は、図8のXY平面上での様子を表す概略図である。2つの保護部材4のZ方向における側面には、溝5が個別に設けられている。また、保持部材6も2つの保護部材4に対応するように個別に設けられている。この場合、X方向において上流側(左側)に位置する保護部材4はX方向に沿ってスライドさせることで磁極2に組み付けている。一方、X方向において下流側(右側)に位置する保護部材4はX方向と反対の方向に沿ってスライドさせることで磁極2に組み付けている。なお、ここで述べた構成を理解する為に、図9の斜視図である図10を参照しても良い。
【0065】
図11は、保持部材6の構成をわかり易くするために描かれた斜視図である。この図には先の図10から保護部材4を取り除いた時の様子が描かれている。この図11からもわかるように、保持部材6の形状はおおよそ磁極形状に沿った形状をしており、かつ、磁極2を挟んでおおよそ対向するように設けられた保持部材の関係が、その長さ方向に沿って略平行な関係になっている。
【0066】
このように複数に分割された保護部材4を用いることで、複雑な磁極形状となった場合でも、1つの保護部材を用いることによって発生する磁極への組み付けの困難性、装置の大型化の問題をなくすことができる。
【0067】
図12は、保護部材4の保持構造についての別の実施例である。これまでの実施例では保護部材4に溝5を設ける構成について述べてきたが、ここでは、保護部材4をスライドさせることにより、保持部材6と磁極2との間のスペースに保護部材4の全体を嵌め込む構成にしている。その為、保護部材4に溝5を形成する必要がないので、溝5の製作にかかる手間を省略することが出来る。
【0068】
図13には、図12に示される線分A−Aで、Y方向に沿って構造物をせん断した時の断面が描かれている。この図からも、保護部材4は磁極2と保持部材6によって作り出されるスペースにスライドにより嵌め込まれていることが理解出来る。
【0069】
図12と図13で示した例では、保護部材4の上面に保持部材6の一部が露出している。その為、露出している保持部材6がイオンビーム8によってスパッタリングされ、そこから飛散したパーティクルがウェハやガラス基板といった被照射物に混入してしまう恐れがある。そこで保持部材6の材質を保護部材4と同じく、カーボンや被照射物と同じ材料にすることで、スパッタリングされる量を減らしたり、混入による影響を少なくしたりといった対策を取ることが考えられるが、材質を工夫する以外に、保持構造を工夫することで保持部材6のスパッタリングをある程度少なくすることが出来る。
【0070】
この具体的な保持構造が、図14に示されている。保護部材4の端部に凹み11を設けておき、この凹み11に保持部材6の端部が位置するように構成しておく。このような構成にすることで、凹みの分、保護部材4の上面から遠い位置に保持部材6が位置することになるので、イオンビーム8によって保持部材6がスパッタリングされ難くなる。
【0071】
また、保護部材4の上面側に露出される保持部材6の端部の面積を減らすようにしても良い。図14の例では、X方向に沿って露出されている保持部材6の端部が連続していない。更に、図14のX方向上流側に位置するように3つの小さい保持部材6を用いて保護部材4を保持するように構成しておいてもいいし、X方向下流側に位置する保護部材4を保持する保持部材6のように1つの保持部材6から保護部材4の凹み11にかかるように3つの部分が三叉状に延設されるような構成にしてもいい。なお、図14の例においても図12のように保護部材4はスライドにより磁極2に組み付けられている。
【0072】
また、図8〜図14において、複数の磁場集中部材3は磁極2への保護部材4の組み付けについて説明する場合には不要となる為、これらについての図示を省略している。念の為に述べておくと、複数の磁場集中部材3が保護部材4とは別体で磁極2上に存在している場合には、保護部材4をスライドにより磁極2に組み付ける際、保護部材4の底面が複数の磁場集中部材3の各々の上を滑るようにして組み付けられる。そして、複数の磁場集中部材3が保護部材4とは一体形成されている場合には、保護部材4の底面が磁極2の上を滑るようにして組み付けられることになる。
【0073】
以上、本発明での磁石およびそれに備えられた磁極、磁場集中部材、保護部材等の実施例を述べてきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。また、本発明に係る磁石1は、永久磁石、電磁石のいずれであっても構わない。さらに、本発明に係るイオンビーム照射装置とは、イオン注入装置、イオンビーム配向装置といった装置で、正の電荷を有するイオンビームをシリコンウェハ等の基板に照射するものであれば、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1.磁石
2.磁極
3.磁場集中部材
4.保護部材
5.溝
6.保持部材
7.止め具
8.イオンビーム
9.突起部
10.カーボンナノチューブ
11.凹み
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオンビーム照射装置に用いられ、イオンビームを偏向、走査、収束または発散させる磁石内に電子を閉じ込める為の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオンビーム照射装置の生産性の向上が求められている。その一つの手段として、正の電荷を有する低エネルギーイオンビームの輸送効率を向上させる技術が着目されている。より具体的には、イオンビーム照射装置で用いられる磁石内部に電子を閉じ込めることによって、磁石内部を通過するイオンビームの空間電荷効果による広がりを抑制しようという技術がある。
【0003】
その技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、互いに対向配置された磁極部材の対向面に複数の磁場集中部材を備えた分析磁石が開示されている。
【0004】
複数の磁場集中部材は畝部と溝とを備えており、分析磁石内部において磁気ミラー効果を発生させる。これにより、磁極部材間で発生される磁場の方向に沿って移動している電子が一方の磁極部材に近づくと、磁場集中部材により形成される集中磁場の影響を受けて、他方の磁極部材の側に反射される。その後、反射された電子は再び磁極部材間で発生する磁場の方向に沿って、他方の磁極部材へ向けて移動する。そして、他方の磁極部材に近づいた時、磁場集中部材の集中磁場によって再び反対方向に向けて反射される。このようにして、磁極部材間での電子の移動と磁場集中部材による電子の反射とを組み合わせることで、磁石内部での電子の閉じ込めが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−521208号公報(段落0020−0022、図2〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて磁石内部での電子の閉じ込めが上手く出来たとしても、それだけでは必ずしもイオンビーム照射装置の生産性が向上出来るとは言えない。
【0007】
通常、イオンビームが通過する磁極部材間のギャップは、そこを通過するイオンビームの寸法を考慮した上で、当該イオンビームの寸法よりも少し大きい寸法となるように設計されている。これは、イオンビームの全域に渡って十分に均一な磁場を発生させる為である。
【0008】
イオンビームは空間電荷効果により発散する性質を有している。その為、磁石内部で電子によってイオンビームの発散を抑制したとしても、完全にその発散を抑制することは難しく、わずかに発散することが考えられる。また、イオンビームは全体として真っ直ぐに進んでいるように見えるが、局所的には色々な方向のビーム成分が含まれている。この為、磁極部材間のギャップを通過するイオンビームが磁極上に設けられた磁場集中部材に衝突してしまうことが考えられる。
【0009】
イオンビームが磁場集中部材に衝突し、磁場集中部材がスパッタリングされると、磁場集中部材の形状が変形してしまう。その結果、十分な集中磁場を発生させることが出来なくなる。ひいては、電子の閉じ込め効果にも支障をきたしてしまう。このような場合、電子の閉じ込め効果を維持するには、変形してしまった磁場集中部材を新しいものに交換しなければならない。この交換の間、イオンビーム照射装置を停止させることになるので、イオンビーム照射装置の生産性が低下してしまう。
【0010】
さらに、イオンビームによりスパッタリングされた磁場集中部材がパーティクルとして飛散する。仮に磁場集中部材に金属が使用されていると、飛散した磁場集中部材の一部が、イオンビームが照射される基板内に混入されて、半導体素子の製造にとって致命的とも言える金属汚染を引き起こしてしまう。そうなると、半導体製造素子の不良率が上がり、イオンビーム照射装置の生産性が低下する。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る磁石は、イオンビーム照射装置で用いられる磁石であって、前記磁石の内側で、イオンビームを挟むように相対向して配置された一対の磁極と、前記一対の磁極の対向面に設けられ、前記磁極間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材と、少なくとも前記複数の磁場集中部材における前記イオンビームを挟んで相対向している面を覆う保護部材とを備えていることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、イオンビームによって磁場集中部材が直接にスパッタリングされないので、磁場集中部材のスパッタリングによる変形を防止することが出来る。また、磁場集中部材の変形が生じないので、電子閉じ込め機能の低下を防止することが出来る。ひいては、電子閉じ込め機能の低下が防止出来るので、磁場集中部材の交換によって装置を停止させる必要がない。さらには、磁場集中部材として金属が用いられている場合であっても、磁場集中部材がスパッタリングされることがないので、金属汚染の心配も生じない。よって、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することが可能となる。
【0014】
また、部材同士の組み付け、取り外し作業といったメンテナンスを簡単に行う為に、前記保護部材と前記複数の磁場集中部材とが一体形成されていることが望ましい。
【0015】
このような構成にすれば、保護部材の磁極への組み付けや磁極からの取り外しと複数の磁場集中部材の磁極への組み付けや磁極からの取り外しとを同時に行うことが出来るので、組み付け、取り外しに係るメンテナンス作業を簡単に行うことが出来る。
【0016】
さらに、保護部材の磁極への組み付けを短時間で精度良く行うのに、前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向をX方向とし、前記一対の磁極が対向する方向をY方向とし、前記X方向と前記Y方向に直交する方向をZ方向とした時、前記Z方向と交差する前記保護部材の2つの側面に溝が設けられているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記溝に挿入されている保持部材を有していることが望ましい。
【0017】
一方で、保護部材の前記イオンビームと対向する面には凹みが形成されているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記凹みに当接している保持部材を有している構成を採用しても良い。
【0018】
上記された構成にすれば、保持部材を用いて保護部材をスライドさせることで磁極に対する保護部材の組み付けが行えるので、組み付け時に行う保護部材の位置調整作業に要する時間を短縮することができる。
【0019】
そのうえ、長時間イオンビーム照射装置を安定して運転させる為に、前記保護部材には突起部が形成されており、前記磁極のイオンビームと対向する面を基準にした場合、前記突起部の高さは前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向に沿って徐々に低くなるように設定されているとともに、前記イオンビームと前記磁場集中部材の間に前記突起部が位置していることが望ましい。
【0020】
このような構成にすれば、長時間イオンビーム照射装置を運転した場合であっても、磁場集中部材の上方に位置する保護部材がスパッタリングにより消耗されにくくなる。その為、磁石内部での電子閉じ込め効果を長時間維持させることが出来る。
【0021】
そして、前記突起部はカーボンナノチューブを備えていることが考えられる。
【0022】
このような構成にすると、イオンビーム中に含まれる発散成分がイオンビームの被照射物であるウェハやガラス基板に到達することを防止出来る。
【0023】
また、前記保護部材は、複数の部材から構成されていても良い。
【0024】
通常、磁極の平面形状は磁極間を通過する設計上のイオンビームの軌道に沿って複雑に湾曲している。その為、保護部材を磁極に対してスライドして組み付ける場合、磁極や保護部材の形状によっては、単一の保護部材を上手くスライドさせて磁極表面の全域を覆うように組み付けることが出来ないことが予測される。そのような場合には、保護部材を磁極の形状に合わせた上で、スライドさせ易い大きさで複数に分けておき、分割された保護部材を個別にスライドさせて磁極に組み付ける。このような構成にすることで、組み付けや取り外しの作業が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
このように構成した本発明によれば、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る磁石を表す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図3】本発明の別の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図4】図2、図3のZX平面上での様子を表す。
【図5】本発明の他の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図6】本発明の更なる実施例に係る保護部材のXY平面上での様子を表す。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】複数の保護部材によって磁極平面が覆われていることを示す概略図である。
【図9】図8のXY平面上での様子を表す概略図である。
【図10】図9の斜視図である。
【図11】図10から保護部材を取り除いた様子を表す斜視図である。
【図12】保持構造についての別の実施例である。
【図13】図12に示される線分A−Aで、Y方向に沿って構造物をせん断した時のその断面を表す。
【図14】保持構造についての他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の一実施例に係る磁石全体を示す斜視図である。図に示すX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、磁石に入射するイオンビームの設計上の進行方向がX方向である。
【0028】
図1を元に本発明の一実施例に係る磁石全体の構成を説明する。図1では、X方向に沿って進行するイオンビーム8が磁石1に入射する。磁石1にはY方向にてイオンビーム8を挟むように一対の磁極2が設けられている。例えば、磁極2は磁石1に対してボルト等を用いて取り付けられている。
【0029】
一対の磁極2の対向面、つまりは、一対の磁極2間を通過するイオンビーム8に対向する側の磁極2の面には、従来技術と同様にミラー磁場により一対の磁極2間に電子を閉じ込めるための複数の磁場集中部材3が設けられている。また、この磁場集中部材3もボルト等によって磁極2に取り付けられている。なお、図1では図を簡略化するために、複数の磁場集中部材3を単一の部材として描いている。さらに、図1では複数の磁場集中部材3を磁極2のイオンビームと対向する面の一部にのみ配置しているが、イオンビームと対向する磁極2の全面に配置するようにしても良い。
【0030】
さらに、一対の磁極2間をイオンビーム8が通過する際、イオンビーム8と対向する側に設けられた複数の磁場集中部材3の面を全て覆うように、保護部材4が設けられている。
【0031】
この保護部材4を設けることにより、イオンビーム照射装置の生産性に支障をきたすことなく、磁石内部での電子の閉じ込めを達成可能にしている。
【0032】
保護部材4の材質としては、イオンビーム8によってスパッタリングされ難いカーボンが考えられる。また、イオンビームの被照射物がシリコンウェハである場合には、シリコンを用いても良い。
【0033】
図1の磁石1では保護部材4を磁極2に対してスライドさせることで組み付けている。そして、本発明における一実施例では、図1のZ方向に位置する保護部材4の両側面に溝5が設けられている。
【0034】
磁極2のZ方向に位置する両側面には、一端部が例えばボルトといった止め具7によって磁極2に固定された保持部材6が設けられている。保持部材6の他端部は、保護部材4に設けられた溝5に挿入された状態で、保護部材4をスライドさせて磁極2に組み付けられるような構成となっている。図1の場合、イオンビームの進行方向と逆方向に保護部材4をスライドさせることで組み付けがなされている。
【0035】
なお、保護部材4のZ方向の側面に設けられた溝5は、保護部材4がスライドにより組み付けることができるようなものであれば、どのような形状であっても構わない。また、図1の例では保護部材4の両側面における長さ方向に沿って、その一部分にのみ溝5が設けられているが、長さ方向の全長に渡り溝を形成しておいても良い。
【0036】
図2には、本発明の一実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。この図2では、磁極2、磁場集中部材3、保護部材4の関係をわかり易くする為に保持部材6を省略している。また、ここに描かれている磁極は、図1に記載の磁石において対向配置された一対の磁極の内、Y方向下側に位置する磁極2である。対向配置された2つの磁極2において、各々の磁極に設けられる磁場集中部材3、保護部材4、保護部材4を保持する保持部材6の構成は同じものを用いれば良い。重複する説明を避ける為、本発明の実施例では一方の磁極とそれに設けられる各部材についての説明に留めている。
【0037】
複数の磁場集中部材3は、図2に示されるように複数の永久磁石から構成されている。これは一例であって、永久磁石の他に集中磁場を発生させるようなものであればどのようなものでも良い。また、複数の磁場集中部材3は図2に示すように磁極面上に部分的に配置してもいいし、磁石内での電子の閉じ込めをより確実に行いたい場合には磁極面の全面に渡って配置しても良い。
【0038】
また、一対の磁極2は磁極間での磁場を一方向に発生させる為に、一対の極性を有している。図2では一例としてN極の磁極が配置されている。そして、複数の磁場集中部材3を構成する永久磁石の極性は、磁極側がS極で、その反対側がN極となるようにして配置されている。なお、磁極2の極性がS極であれば、複数の磁場集中部材3を構成する永久磁石の極性の向きは前述したものと反対になる。
【0039】
磁極面上に配置された複数の磁場集中部材3の上面(Y方向側)を覆うように保護部材4が設けられている。この保護部材4のZ方向と交差する2つの側面には、図1に示された保持部材の一端が挿入される溝が形成されている。この例では、保護部材4は磁場集中部材3の上面のみを覆っているが、磁極2表面上に部分的に配置された複数の磁場集中部材3間の隙間も覆うようにしても良い。図2に示される構成では、保護部材4と複数の磁場集中部材3とは個別の部材で構成されており、それぞれ別々に組み付け作業や取り外し作業が行われる。
【0040】
複数の磁場集中部材3の他の例としては、透磁率が高い材料と低い材料とを交互に配置することが考えられる。この場合、高い透磁率の材料を図2の永久磁石が配置されている箇所に配置し、低い透磁率の材料を永久磁石間の隙間の位置に配置することが考えられる。なお、高い透磁率の材料と低い透磁率の材料との位置関係を上記したものと反対にしても良い。
【0041】
複数の磁場集中部材が配置される間隔をより小さくし、局所的な集中磁場をより密にするのに、磁性材料を有するカーボンナノチューブを磁極面上に配置しても良い。例えば、カーボンナノチューブを輪切りにし、磁極面上に起立させた上で、カーボンナノチューブ内に永久磁石等の磁性材料を配置しておくことが考えられる。
【0042】
図3には、本発明の別の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。 ここでは、複数の磁場集中部材3と保護部材4とが一体の部材として取り扱われる。例えば、複数の磁場集中部材3は、保護部材4の中に埋め込まれている。この点が、図2の構成と異なる。このようにすることで、磁極2に対する各部材の組み付け、取り外しが容易となる。
【0043】
図4は、図2および図3のZX平面上での様子を表す。図2と図3では保護部材4が磁極2の全面を覆うようにしているので、図4においてY方向と反対の方向から保護部材4上を見たとき、磁極2が保護部材4に隠れて見えない。しかしながら、保護部材4は複数の磁場集中部材3上を覆うようにしていれば良いので、このように磁極2の全面を覆う構成でなくても良い。あくまで一例である。
【0044】
図4では、溝5と複数の磁場集中部材3の位置関係が容易に理解できるように破線にてそれらの外形を描いている。実際に保護部材4の上方から見た場合には、保護部材4が透明の材質で構成されていない限りこれらの部材を見ることは出来ない。
【0045】
図2や図3では一見すると磁極2の上面からY方向に溝5と複数の磁場集中部材3とを離間させなければならないように見えるがそうではない。図4から理解出来るように、溝5と磁場集中部材3とはZ方向で互いの位置が異なっている。その為、Y方向において、磁極2の表面から同じ高さとなるような位置に、溝5と複数の磁場集中部材3とを配置しても構わない。
【0046】
図5には本発明の他の実施例に係る保護部材のXY平面上での様子が描かれている。図1〜4に示される保護部材4のY方向における上面は、いずれもZX平面に平行な平面形状を有していたが、そのような平面形状でなくても良い。
【0047】
イオンビーム8が直進軌道を描く場合、理想的にはイオンビームを構成する全ての成分が直進軌道を描く。しかしながら、現実には、空間電荷効果によってイオンビーム8は発散する。その為、イオンビームは直進する成分と発散する成分とを含むようになる。図5では、直進するイオンビームの成分を成分Aとし、発散するイオンビームの成分を成分Bとしている。
【0048】
この場合、イオンビーム8の成分Bによって保護部材4がスパッタリングされる恐れがある。複数の磁場集中部材3を保護している保護部材4がスパッタリングされると、保護部材4から複数の磁場集中部材3が露出する恐れが生じる。
【0049】
複数の磁場集中部材3が露出されると、イオンビーム8により複数の磁場集中部材3がスパッタリングされてしまう。その結果、部材の変形や変形による性能劣化、さらには複数の磁場集中部材が金属で構成されている場合には金属汚染の問題をも引き起こしてしまう恐れがある。このような問題が発生すると、イオンビーム照射装置を長時間安定して運転させることが困難になる。
【0050】
このような点を改善すべく、図5に示されるような複数の突起部9を保護部材に設けることが考えられる。この突起部9はZX平面上に位置する保護部材4の表面からY方向に突出している部分をさし、X方向に沿って畝のように連続して形成されている。各突起部9における磁極2の表面からの高さは、イオンビーム8の設計上の進行方向であるX方向に沿って、徐々に低くなるように設定されている。例えば、X方向の上流側における突起部9の磁極表面からの高さをL1とし、X方向の下流側における突起部9の磁極面からの高さをL2とする。この場合、L2よりもL1が大きくなるように設定しておくとともに、X方向に沿ってL1からL2にかけて任意の一次関数に基づいて減少するようにしておけば良い。その上で、複数の磁場集中部材3を突起部9が形成されている下方に配置させておく。別の言い方をすれば、イオンビームと磁場集中部材との間に突起部が位置している。
【0051】
このようにすれば、発散成分であるイオンビームの成分Bが、保護部材4に設けられた突起部9に衝突することになる。これによって、複数の磁場集中部材3が配置されている突起部9のY方向における上面が削られにくくなる。その為、イオンビーム照射装置を長時間運転した場合であっても、複数の磁場集中部材3がイオンビーム8によってスパッタリングされる可能性を低くすることができる。
【0052】
また、このような構成を用いた場合、イオンビーム8の発散成分である成分Bをある程度の割合でイオンビーム8から取り除くことが可能となる。図5に一点鎖線で示されるイオンビームの成分Bを参照すると、突起部9のもっとも高い部分に衝突して、反射される。反射されたイオンビームの成分Bは、保護部材4の別の部分に衝突し、再び反射される。最終的に、イオンビーム8の成分Bはイオンビームの成分Aとおおよそ反対の方向に進むことになる。この結果、おおよそイオンビームの成分Aのみを有するイオンビーム8を被照射物であるウェハやガラス基板といったターゲット面に向けて照射することが出来るので、半導体素子の製造に係る不良率が改善される。
【0053】
図6は、図5に示した突起部9の構成についての別の実施例である。図5では突起部9のもっとも高い部分が保護部材4の表面から垂直に起立するように設けられていたが、イオンビーム8の設計上の進行方向であるX方向に沿って突起部9の高さが徐々に低くなるように設定されていれば、図6に示すような構成であっても図5に示す構成と同等の効果を得ることができる。
【0054】
なお、図5、図6ともに磁極表面からの突起部9の高さをイオンビームの進行方向に沿って任意の一次関数に従って減少するように設定していたが、これに限られない。例えば、任意の二次関数を用いて設定しても良い。
【0055】
図7は図5の突起部9に関する要部拡大図である。この図7に見られるように、X方向の上流側に位置する突起部9の表面に細かく輪切りにしたカーボンナノチューブ10を設けておくことが考えられる。この場合、カーボンナノチューブ10を1本ずつ突起部9に取り付けることは難しいので、予めカーボン等で構成された板状の部材の上に複数のカーボンナノチューブ10を設けておき、1つのユニットとして突起部9に取り付けるようにしておく。
【0056】
このようなカーボンナノチューブ10を設けておくと、図5で示したイオンビームの成分Bがカーボンナノチューブ10に衝突した時に、輪切りにされたカーボンナノチューブ10の内部に、あるいは複数のカーボンナノチューブ10の間に、イオンビームの成分Bを閉じ込めることが期待できる。これによってイオンビームの成分Bが保護部材4の突起部9から反射される可能性が少なくなる。
【0057】
また、仮に反射されたとしても、イオンビームの成分Bはカーボンナノチューブ10に衝突している為、反射された後のビーム成分Bの速度はカーボンナノチューブ10がない場合に比べてかなり減速されることになる。その為、被照射物であるウェハやガラス基板といったターゲットに突起部9で反射されたイオンビームの成分Bが到達する可能性を軽減することが出来る。
【0058】
なお、カーボンナノチューブ10を突起部9に取り付ける構成について、図5の場合を例にして説明したが、図6の突起部9の構成であっても図7に示したようなカーボンナノチューブ10を取り付けることが出来る。
【0059】
図6の突起部9の場合、カーボンナノチューブ10を取り付ける場所については、図6でイオンビームの成分Bが衝突する場所、つまり、設計上のイオンビームの進行方向であるX方向と平行でないイオンビームの発散成分が衝突する場所に設けておけば良い。もちろん、イオンビーム8の状態は様々に変化する為、突起部9の全面にカーボンナノチューブ10を設けるようにしておいても良い。
【0060】
図1に示した磁極2の形状はおおよそ長方形状をしていたが、図8に一点鎖線で示されるような複雑な曲線形状を有していることもある。
【0061】
このような場合、磁極2の形状が複雑である為、磁極2の全面を覆うような単一の保護部材4をスライドにより組み付けることが困難になることが予想される。つまり、図8に示されるような磁極2の形状の場合、単一の保護部材4をスライドさせると、スライドさせている最中に保護部材4が引っかかってしまう場合が考えられる。
【0062】
この問題を解決する為に、単一の保護部材4の形状を磁極2の全面を覆うような長方形状とし、その上で、保護部材2の形状を保持できるようにZ方向における磁極2の側面から保持部材6を磁極2の外側へ向けて張り出しておくことが考えられる。ただし、これだと保持部材6と保護部材4の両方を大きな部材としなければならないので、装置の大型化を招いてしまう。
【0063】
そこで、このような複雑な磁極形状に対応すべく、磁極2の全面を覆う大きな保護部材4を複数に分割することが考えられる。図8では、2つに分割された保護部材4が用いられている。
【0064】
図9は、図8のXY平面上での様子を表す概略図である。2つの保護部材4のZ方向における側面には、溝5が個別に設けられている。また、保持部材6も2つの保護部材4に対応するように個別に設けられている。この場合、X方向において上流側(左側)に位置する保護部材4はX方向に沿ってスライドさせることで磁極2に組み付けている。一方、X方向において下流側(右側)に位置する保護部材4はX方向と反対の方向に沿ってスライドさせることで磁極2に組み付けている。なお、ここで述べた構成を理解する為に、図9の斜視図である図10を参照しても良い。
【0065】
図11は、保持部材6の構成をわかり易くするために描かれた斜視図である。この図には先の図10から保護部材4を取り除いた時の様子が描かれている。この図11からもわかるように、保持部材6の形状はおおよそ磁極形状に沿った形状をしており、かつ、磁極2を挟んでおおよそ対向するように設けられた保持部材の関係が、その長さ方向に沿って略平行な関係になっている。
【0066】
このように複数に分割された保護部材4を用いることで、複雑な磁極形状となった場合でも、1つの保護部材を用いることによって発生する磁極への組み付けの困難性、装置の大型化の問題をなくすことができる。
【0067】
図12は、保護部材4の保持構造についての別の実施例である。これまでの実施例では保護部材4に溝5を設ける構成について述べてきたが、ここでは、保護部材4をスライドさせることにより、保持部材6と磁極2との間のスペースに保護部材4の全体を嵌め込む構成にしている。その為、保護部材4に溝5を形成する必要がないので、溝5の製作にかかる手間を省略することが出来る。
【0068】
図13には、図12に示される線分A−Aで、Y方向に沿って構造物をせん断した時の断面が描かれている。この図からも、保護部材4は磁極2と保持部材6によって作り出されるスペースにスライドにより嵌め込まれていることが理解出来る。
【0069】
図12と図13で示した例では、保護部材4の上面に保持部材6の一部が露出している。その為、露出している保持部材6がイオンビーム8によってスパッタリングされ、そこから飛散したパーティクルがウェハやガラス基板といった被照射物に混入してしまう恐れがある。そこで保持部材6の材質を保護部材4と同じく、カーボンや被照射物と同じ材料にすることで、スパッタリングされる量を減らしたり、混入による影響を少なくしたりといった対策を取ることが考えられるが、材質を工夫する以外に、保持構造を工夫することで保持部材6のスパッタリングをある程度少なくすることが出来る。
【0070】
この具体的な保持構造が、図14に示されている。保護部材4の端部に凹み11を設けておき、この凹み11に保持部材6の端部が位置するように構成しておく。このような構成にすることで、凹みの分、保護部材4の上面から遠い位置に保持部材6が位置することになるので、イオンビーム8によって保持部材6がスパッタリングされ難くなる。
【0071】
また、保護部材4の上面側に露出される保持部材6の端部の面積を減らすようにしても良い。図14の例では、X方向に沿って露出されている保持部材6の端部が連続していない。更に、図14のX方向上流側に位置するように3つの小さい保持部材6を用いて保護部材4を保持するように構成しておいてもいいし、X方向下流側に位置する保護部材4を保持する保持部材6のように1つの保持部材6から保護部材4の凹み11にかかるように3つの部分が三叉状に延設されるような構成にしてもいい。なお、図14の例においても図12のように保護部材4はスライドにより磁極2に組み付けられている。
【0072】
また、図8〜図14において、複数の磁場集中部材3は磁極2への保護部材4の組み付けについて説明する場合には不要となる為、これらについての図示を省略している。念の為に述べておくと、複数の磁場集中部材3が保護部材4とは別体で磁極2上に存在している場合には、保護部材4をスライドにより磁極2に組み付ける際、保護部材4の底面が複数の磁場集中部材3の各々の上を滑るようにして組み付けられる。そして、複数の磁場集中部材3が保護部材4とは一体形成されている場合には、保護部材4の底面が磁極2の上を滑るようにして組み付けられることになる。
【0073】
以上、本発明での磁石およびそれに備えられた磁極、磁場集中部材、保護部材等の実施例を述べてきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。また、本発明に係る磁石1は、永久磁石、電磁石のいずれであっても構わない。さらに、本発明に係るイオンビーム照射装置とは、イオン注入装置、イオンビーム配向装置といった装置で、正の電荷を有するイオンビームをシリコンウェハ等の基板に照射するものであれば、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1.磁石
2.磁極
3.磁場集中部材
4.保護部材
5.溝
6.保持部材
7.止め具
8.イオンビーム
9.突起部
10.カーボンナノチューブ
11.凹み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビーム照射装置で用いられる磁石であって、
前記磁石の内側で、イオンビームを挟むように相対向して配置された一対の磁極と、
前記一対の磁極の対向面に設けられ、前記磁極間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材と、
少なくとも前記複数の磁場集中部材における前記イオンビームを挟んで相対向している面を覆う保護部材とを備えていることを特徴とする。
【請求項2】
前記保護部材と前記複数の磁場集中部材とが一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁石。
【請求項3】
前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向をX方向とし、前記一対の磁極が対向する方向をY方向とし、前記X方向と前記Y方向に直交する方向をZ方向とした時、前記Z方向と交差する前記保護部材の2つの側面に溝が設けられているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記溝に挿入されている保持部材を有していることを特徴とする請求項1または2記載の磁石。
【請求項4】
前記保護部材の前記イオンビームと対向する面には凹みが形成されているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記凹みに配置される保持部材を有していることを特徴とする請求項1または2記載の磁石。
【請求項5】
前記保護部材には突起部が形成されており、前記磁極のイオンビームと対向する面を基準にした場合、前記突起部の高さは前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向に沿って徐々に低くなるように設定されているとともに、前記イオンビームと前記磁場集中部材の間に前記突起部が位置していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の磁石。
【請求項6】
前記突起部はカーボンナノチューブを備えていることを特徴とする請求項5記載の磁石。
【請求項7】
前記保護部材は複数の部材から構成されている請求項1、2、3、4、5又は6記載の磁石。
【請求項1】
イオンビーム照射装置で用いられる磁石であって、
前記磁石の内側で、イオンビームを挟むように相対向して配置された一対の磁極と、
前記一対の磁極の対向面に設けられ、前記磁極間における電子の閉じ込め作用を発生させる複数の磁場集中部材と、
少なくとも前記複数の磁場集中部材における前記イオンビームを挟んで相対向している面を覆う保護部材とを備えていることを特徴とする。
【請求項2】
前記保護部材と前記複数の磁場集中部材とが一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁石。
【請求項3】
前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向をX方向とし、前記一対の磁極が対向する方向をY方向とし、前記X方向と前記Y方向に直交する方向をZ方向とした時、前記Z方向と交差する前記保護部材の2つの側面に溝が設けられているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記溝に挿入されている保持部材を有していることを特徴とする請求項1または2記載の磁石。
【請求項4】
前記保護部材の前記イオンビームと対向する面には凹みが形成されているとともに、一端部が前記磁極に係止され他端部が前記凹みに配置される保持部材を有していることを特徴とする請求項1または2記載の磁石。
【請求項5】
前記保護部材には突起部が形成されており、前記磁極のイオンビームと対向する面を基準にした場合、前記突起部の高さは前記磁極間を通過する前記イオンビームの設計上の進行方向に沿って徐々に低くなるように設定されているとともに、前記イオンビームと前記磁場集中部材の間に前記突起部が位置していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の磁石。
【請求項6】
前記突起部はカーボンナノチューブを備えていることを特徴とする請求項5記載の磁石。
【請求項7】
前記保護部材は複数の部材から構成されている請求項1、2、3、4、5又は6記載の磁石。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−198738(P2011−198738A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218429(P2010−218429)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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