説明

複数の糸を巻取るための方法及び装置

本発明は、複数の糸(1.1,1.2)を複数のボビン(9.1,9.2)に巻取るための方法及び装置に関する。この場合、ボビン(9.1,9.2)は、互いに平行に並んで配置された2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)に同時に保持され、巻き取られる。ボビンスピンドルは、回転可能に支承された圧着ローラ(6.1,6.2)と協働し、この場合、圧着ローラ(6.1,6.2)は巻取り中にボビン(9.1,9.2)の外周面に所定の当接力で当接する。各ボビンスピンドル(7.1,7.2)において、できるだけ均一なボビン(9.1,9.2)を巻取ることができるようにするために、ボビン(9.1,9.2)に作用する当接力は、互いに堅固に結合された圧着ローラ(6.1,6.2)の重量負荷及び/又は重量負荷軽減によって生ぜしめられる。このために、圧着ローラ(6.1,6.2)は可動なホルダ(13)に保持されており、このホルダによって、圧着ローラ(6.1,6.2)は一緒に、対応配置されたボビンスピンドル(7.1,7.2)に対して半径方向にガイド可能で、このホルダは、少なくとも1つの制御可能な力発生器(32)と協働する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した形式の、複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法、並びにこの方法を実施するための、請求項12の上位概念部に記載した装置に関する。
【0002】
最近の傾向では、合成繊維糸を製作する際に、1つの巻取り位置において多数の糸を互いに隣り合って同時にポリマー溶融物から紡糸し、次いで複数のボビンに巻取ることが、多く行われている。従って、10本、12本、16本又はそれ以上の糸を互いに平行に紡糸し、それと同時に複数の巻取ることが公知である。この場合、複数の糸の巻取りは巻取り機によって行われる。この巻取り機において複数のボビンが1つのボビンスピンドルに保持され、巻き取られるようになっている。より大きいボビン幅及びより多数の糸においては、このような形式の巻取り機は相応に長いボビンスピンドルを必要とする。従って、複数の糸を、互いに平行に隣り合って配置された2つのボビンスピンドルによって同時に複数のボビンに巻取るという、新たな構想が開発された。このような形式の方法並びにこのような形式の装置は、国際公開第03/068648号パンフレットにより公知である。
【0003】
このような公知の方法及び装置において、複数の糸は、互いに並んで配置された2つのボビンスピンドルにおいて複数のボビンに巻き取られるようになっている。このために、複数のボビンスピンドルはそれぞれ1つのスピンドル駆動装置によって駆動されるようになっている。各ボビンスピンドルには1つの圧着ローラが対応配置されており、この圧着ローラは揺動体(ロッカ)を介してボビンスピンドルに対して半径方向に可動に保持されている。この場合、複数の糸が複数のボビンに巻き取られる間、圧着ローラもボビンスピンドルもその位置を変えられるようになっている。より大きい自由度を得るために、可動に保持された複数の圧着ローラがキャリッジによって付加的に、ボビンスピンドルに対して半径方向に走行可能となっている。しかしながらこのような高い自由度によって、2つのボビンスピンドルの複数のボビンは必然的に異なるボビン構造を有することになる。2つの圧着ローラの独立した個別の可動性によって、2つのボビンスピンドルにおいて例えば一定の当接力を維持することは、非常に高価な調整費用を伴ってのみ可能となる。従って、2つのボビンスピンドルにおいて種々異なるボビンの巻取りが行われることは避けられない。
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法及び装置を改良して、2つのボビンスピンドルにおいて複数の糸を同時に巻取る際にほぼ一様なボビンが巻き取られるようにすることである。
【0005】
本発明によればこの課題は、請求項1に記載した特徴を有する方法、及び請求項12に記載した特徴を有する装置によって解決された。
【0006】
本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載した特徴及び、これらの特徴の組み合わせによって得られる。
【0007】
本発明は、各巻取り部に、複数のボビンスピンドルと圧着ローラとの間の同じ幾何学的な対応配置が得られることを特徴としている。しかも、2つのボビンスピンドルでボビンを巻取るための、圧着ローラによってもたらされる当接力を、簡単な手段で調節することができる。この場合、当接力は有利な形式で、互いに堅固に接続された複数の圧着ローラの重量負荷及び/又は重量負荷軽減によって得られるようになっている。このために、圧着ローラがホルダによって互いに結合されており、このホルダは機械フレームに可動に保持されていて、重量負荷及び/又は重量負荷軽減のために制御可能な力発生器と協働するようになっている。従って本発明の特別な利点は、ボビン形成中の各時点で、2つのボビンスピンドで巻き取られるそれぞれのボビンが、同じ大きさのボビン直径を有している、という点にある。種々異なるボビン増大、及びひいては異なるボビン直径が形成されることは、有利な形式で避けられる。
【0008】
2つのボビンスピンドルにおいてボビンを一様に形成することは、巻取り中に、ボビンスピンドルと、このボビンスピンドルに対応配置(配属)された圧着ローラとの間の軸方向間隔を一定に維持することによって、さらに改善することができる。
【0009】
また、請求項3に記載した有利な実施態様によれば、装置における製造公差を補償することができる。従って例えば製造公差に基づいて、装置内における圧着ローラに対して相対的なボビンスピンドルの位置のずれは小さい。従って特に、巻取り過程の開始時において、圧着ローラと、この圧着ローラに対応配置されたボビンスピンドルとの間の一様な接触が行われることはない。この方法の変化実施例によれば、このような形式の製造公差を調整するために、まずボビンスピンドルと圧着ローラとの間の高い接触力が調節される。この場合、接触は、長く突き出すボビンスピンドルの弾性に基づいて2つの圧着ローラは、これらの圧着ローラに対応配置されたボビンスピンドルと接触するように、寸法設計されている。このために、圧着ローラ又はボビンスピンドルは平行な弾性を有しているので、撓みは避けられる。複数の糸がボビンスピンドルの巻管に巻き付けられていれば、接触力は、より低い当接力に変わる。
【0010】
本発明による装置はこのために力発生器として少なくとも1つの負荷軽減シリンダユニットを有しており、この負荷軽減シリンダユニットは制御装置に接続されている。これによって、巻取り開始時に圧着ローラの支持が相応に減少されるので、接触力を加えるために全重量の殆どが利用される。
【0011】
2つのボビンスピンドルにおいて複数の糸を巻取ることができるようにするために、圧着ローラは有利にはエンドリングを有しており、このエンドリングは、複数の糸を把持し、巻取り開始する際にボビンスピンドルに接触する。ベース層の巻取りが終了してから、圧着ローラがボビンと接触する。この時点までに、有利な形式で接触力が当接力に切り換えられる。
【0012】
2つの圧着ローラのエンドリングは有利には同じ大きさに構成されているので、各ボビンは均一なベース層を有している。
【0013】
しかしながら、例えば位置公差のより大きい相違を補償できるようにするために、2つの圧着ローラのエンドリングの外径を異なって構成することも可能である。同様に、エンドリングを圧着ローラにではなく、ボビンスピンドルの外周面に直接当て付けることも可能である。
【0014】
従って、有利な形式で重量負荷軽減を簡単に変えることによって、接触力を当接力に切り換えることができる。
【0015】
複数の糸の巻取り中に、圧着ローラとボビンとの間で作用する当接力がほぼ一定に保たれる。しかしながら、例えばボビンの弾性及びひいてはボビン密度に影響を与えるために、この当接力を所定の力プロフィールに従って変えることも可能である。力プロフィールは、ボビンスピンドルにおける振動を減衰するために、いわゆる揺動運動を維持することもできる。
【0016】
2つのボビンスピンドルをできるだけ同じ回転数、及びひいてはボビンの同じ周速度で駆動することができるようにするために、本発明の有利な実施態様によれば、ボビンスピンドルは同期的に駆動及び制御される。このために、ボビン駆動装置は有利な形式で2つの電動機と1つの制御器とから形成されており、この場合、制御器は制御装置に接続されている。
【0017】
ボビンの外周面に糸を巻き付けて設置する際に、ボビンの外周面と圧着ローラの外周面との間にスリップが発生する。このようなスリップが2つの圧着ローラにおいて異なって発生するのを避けるために、本発明の別の実施態様によれば、有利な形式で、2つの圧着ローラは、同じ回転数で回転するように、機械的又は電気的に互いに連結されている。連結するための、圧着ローラは伝動手段によって互いに接続されている。伝動手段は、2つの圧着ローラの回転を適合させるために、機械的又は電気的に構成されている。
【0018】
この場合、圧着ローラは外部駆動装置によって付加的に逆方向で駆動することができる。これは特にボビン交換過程のために効果的である。有利な形式で圧着ローラの外部駆動装置は、駆動されるボビンと圧着ローラとの間の所定の負荷比を形成するために適している。従って、圧着ローラの外部駆動装置は、常に駆動成分又は制動成分がボビンの外周面に作用するように構成されている。負荷比を前もって与えておくことによって、巻き取られた糸の糸張力に有利な影響を与えることができる。何故ならば、圧着ローラとボビンとの間の所定のスリップ発生が調節可能だからである。
【0019】
ボビン直径の増大に基づいて、付加的に、ボビンスピンドルと圧着ローラとの間の重畳された変位運動が実施される。このような形式の変位運動は、個別にかつ一括して実施することができ、この場合、基本的に圧着ローラとボビン外周面との接触が失われることはない。
【0020】
この変位運動は、巻取り中に圧着ローラとホルダとがキャリッジによってキャリッジガイド内で一緒にガイドされるように構成することができる。これによって、変位運動中に、2つの巻取り部において同じ当接力を調節することが確実に得られる。
【0021】
しかしながら基本的に、圧着ローラを定置に保持し、変位運動をもっぱらボビンスピンドルだけによって実施することも可能である。このために、ボビンスピンドルはそれぞれ2つの可動なスピンドル支持体によって有利な形式で同期的にガイドされる。このような形式のスピンドル支持体は例えばボビンリボルバによって形成することができ、巻取り開始時に圧着ローラとボビンスピンドルとの間の必要な接触を得るためにも用いることができる。
【0022】
また、ボビンを増大させるためのボビンスピンドルと圧着ローラとの間の変位運動を、圧着ローラの運動によっても、またボビンスピンドルの運動によっても実施することもできる。さらに、ボビンリボルバとして構成された可動なスピンドル支持体を使用することによって、各巻取り部に第2のボビンスピンドルを保持することができ、2つのボビンスピンドルを交互に巻取り領域と交換領域とにガイドすることができる。
【0023】
以下に本発明による方法を、図面に示した本発明による装置の幾つかの実施例を用いて説明する。
【0024】
図1及び図2は、本発明による方法を実施するための本発明による装置の実施例の概略的な正面図であって、異なる運転状態を示す。
【0025】
図3は、図1に示した実施例の概略的な側面図、
図4は、図1に示した実施例の駆動状態を示す概略図、
図5は、図1に示した別の駆動状態を示す概略図である。
【0026】
図1乃至図5には、本発明による方法を実施するための本発明による装置の実施例が示されている。この場合、図1及び図2は、種々異なる運転状態の正面図、図3は実施例の側面図である。特に指摘がなければ、以下の説明はすべての図面に当てはまる。
【0027】
本発明による装置の実施例は、2つの巻取り部29.1,29.2を有しており、これらの巻取り部29.1,29.2は、機械フレーム12内に互いに並んで形成されている。この場合、巻取り部29.1,29.2は、中央の左右対称平面を中心にして鏡像対称的に構成されている。従って右側の巻取り部29.1は、機械フレーム12内に回転可能に支承されたボビン支持体10.1より成っている。このボビン支持体10.1に、第1の突き出したボビンスピンドル7.1と、これに対して180°ずらして配置された第2の突き出したボビンスピンドル11.1とが保持されている。この場合、第1のボビンスピンドル7.1は、複数の糸を巻取るための運転位置にある。第2のボビンスピンドル11.1は、満管ボビンを空の巻管に交換するための交換位置にある。
【0028】
ボビン支持体10.1に対して鏡像対称的に、第2の巻取り部29.2に、同一平面に配置された第2のスピンドル支持体10.2が機械フレーム12内に保持されている。スピンドル支持体10.2は、突き出したボビンスピンドル7.2及び11.2を有している。図示の運転状態ではボビンスピンドル7.2が運転位置にあり、ボビンスピンドル11.2が交換位置にある。
【0029】
スピンドル支持体10.1及び10.2は、この実施例ではボビンリボルバとして構成されており、このボビンリボルバは機械フレーム12内に回転可能に支承され保持されている。2つのボビンリボルバ10.1,10.2は共通の回転駆動装置30に連結されており、この場合、ボビンリボルバ10.1及び10.2は同じ回転方向で駆動可能である。回転駆動装置30は中央の制御装置21に接続されている。ボビン支持体10.1及び10.2に保持されたボビンスピンドル7.1,7.2,11.1及び11.2にはそれぞれ1つのスピンドル駆動装置が対応配置されており、図2には、巻取り部29.2のボビンスピンドル7.2及び11.2のボビン駆動装置23.2及び31.2が示されている。2つの巻取り部29.1及び29.2のボビンスピンドルのスピンドル駆動装置23.1,23.2,31.1及び31.2は、中央の制御装置21に接続されている。
【0030】
糸道内で各スピンドル支持体10.1,10.2の前に、それぞれ1つの圧着ローラ6.1及び6.2が配置されている。この場合、巻取り部29.1では、糸群1.1をそれぞれ1つのボビン9.1に巻取るために、圧着ローラ6.1がボビンスピンドル7.1と協働する。糸の巻取り中に、圧着ローラ6.1は、巻き取ろうとするボビン9.1の外周面に当接する。
【0031】
巻取り部29.2では相応に、第2の糸群1.2をボビン9.2に巻取るために、圧着ローラ6.2が、運転位置にあるボビンスピンドル(この場合7.2)と協働する。この場合も、圧着ローラ6.2は、巻き取ろうとするボビン9.2の外周面に当接する。
【0032】
圧着ローラ6.1及び6.2はホルダ13に回転可能に支承されていて、ホルダ13と互いに堅固に結合されている。ホルダ13は、圧着ローラ6.1及び6.2の前に配置された綾振り装置(トラバース装置)4を有している。綾振り装置4は、巻取り部29.1と29.2との間の中心平面内に配置されていて、各巻取り部29,1及び29.2に対してそれぞれ複数の綾振りガイド5.1及び5.2を有しており、これらの綾振りガイド5.1及び5.2によって、糸群1.1,1.2の進入してくる複数の糸が綾振りストローク内で往復移動せしめられる。綾振り装置4は例えば可逆溝付きドラム(Kehrgewindewelle)によって形成されており、この可逆溝付きドラムはその外周面に、綾振り糸ガイド5.1及び5.2をガイドするための1つ又は複数の溝を有している。
【0033】
ホルダ13の上側に糸ガイド支持体3が設けられており、この糸ガイド支持体3は、糸ガイド2.1及び2.2の2つのグループを支持している。この場合、糸ガイド2.1のグループは巻取り部29.1に対応配置されていて、糸ガイド2.2のグループは巻取り部29.2に対応配置されている。
【0034】
ホルダ13は、キャリッジ15及びキャリッジガイド14.1,14.2によって垂直方向で可動に機械フレーム12に保持されている。この場合、キャリッジ15は、圧着ローラ6.1及び6.2がそれぞれ所定の当接力で、糸群1.1及び1.2の複数の糸の巻取り中に各ボビン9.1及び9.2に当接するように、力発生器32によってキャリッジガイド14.1,14.2内に保持されている。力発生器32は2つの負荷軽減シリンダユニット16.1,16.2によって形成されており、これら2つの負荷軽減シリンダユニットによって、2つの圧着ローラ6.1,6.2並びにホルダ13の全重量、及びホルダ13に付加的に取り付けられた構成部分(例えば綾振り装置4)が支えられるようになっている。装置の両側でキャリッジ15に作用する負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2は、制御装置21に接続されており、この制御装置21によって、負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2はその支持作用が制御されるようになっている。これによって、糸の巻取り中に、圧着ローラ6.1,6.2とボビン9.1及び9.2との間に作用する当接力が、全重量の一部によって規定される。
【0035】
図1乃至図3に示した実施例では、巻取り部29.1,29.2内でそれぞれ、糸群1.1及び1.2の4本の糸がボビン9.1及び9.2に巻き取られる。この装置は、図1では巻取り過程の開始時が示されていて、図2及び図3では巻取り過程の途中が示されている。
【0036】
複数の糸をボビンに巻取るために、ボビンスピンドル7.1,7.2に、相前後して被せ嵌められた複数の巻管8.1,8.2が保持されている。この場合、同時に4つ以上の巻管がボビンスピンドル7.1並びにボビンスピンドル7.2に保持されていてもよい。
【0037】
ボビンスピンドル7.1及び7.2の軸受端部には、それぞれ1つのエンドリング17.1,17.2が保持されている。エンドリング17.1及び17.2は、その外径が同じに構成されている。この場合、エンドリング17.1及び17.2の外径ボビンスリーブ8.1,8.2の直径よりもやや大きき構成されている。しかしながら有利には、エンドリング17.1,17.2は、圧着ローラ6.1及び6.2の外周面に配置されている。
【0038】
ボビンスピンドル7.1,7.2における巻取り過程を開始するため、圧着ローラ6.1,6.2は、キャリッジ15及び負荷軽減シリンダ16.1,16.2によって下側の位置にガイドされる。制御装置21によって、負荷軽減シリンダユニット16.1,16.2内に負荷軽減圧力が調節され、この負荷軽減圧力は、圧着ローラ6.1,6.2並びにホルダ13の僅かな重量補償だけを実施する。圧着ローラ6.1,6.2とボビンスピンドル7.1,7.2との間には接触力だけが作用する。この接触力は、圧着ローラ6.1がエンドリング17.1の外周面に達し、圧着ローラ6.2がエンドリング17.2の外周面に達するように働く。この場合、複数の糸がまず設置されるか、又はボビン交換の際に詳しく図示していない補助装置によってガイドされるかは問題ではない。こうしてボビンスピンドル7.1,7.2は、糸群1.1,1.2の複数の糸を受容するために準備されている。この状態は図1に示されている。この場合、圧着ローラ6.1,6.2及びボビンスピンドル7.1,7.2は、全長に亘って均一な当接状態を維持するために平行な弾性を有している。
【0039】
糸群1.1,1.2の複数の糸が巻管8.1,8.2によって把持されて、巻き取られると、制御装置を介して接触力から当接力への切換が開始される。このために、負荷軽減装置16.1,16.2が制御され、それによって圧着ローラ6.1,6.2を支持するためのより高い負荷軽減圧力が作用する。圧着ローラ6.1,6.2は、形成しようとするボビン9.1,9.2の外周面に当接力を伴って当接する。この状態は図3に示されている。
【0040】
当接力は、有利な形式でボビンスピンドル7.1,7.2において複数の糸を巻取る間一定に維持される。このために、例えば負荷軽減シリンダ16.1,16.2内の負荷軽減圧力が、所定の値に調節され、センサされ、制御装置21を介して制御される。このような形式の圧力制御によって、有利な形式でキャリッジ15の変位運動を制御することができる。巻取り機におけるキャリッジのためのこのような形式の制御若しくは調整過程は、一般的に公知であって、例えばドイツ連邦共和国特許公開第2544773号明細書に詳しく記載されているので、ここでは詳しく説明されていない。
【0041】
糸群1.1,1.2の複数の糸の巻取り中に、ボビン9.1,9.2の増大に基づいて必要とされる変位運動は、基本的にこの実施例では、可動に保持されたホルダ13によっても、また可動に保持されたボビンスピンドル7.1,7.2によっても実施される。圧着ローラ6.1,6.2をホルダ13に堅固に配置することによって、ボビン9.1,9.2の増大は、キャリッジ15の運動によって同期的に行われる。
【0042】
ボビン支持体10.1,10.2の回転駆動装置30は、変位運動を有利な形式で段階的に又は連続的に実施するために駆動されるようになっている。この場合、2つのスピンドル支持体10.1,10.2は、伝動手段によって互いに連結されているので、巻取り中に常に、ボビンスピンドルと、このボビンスピンドルに対応配置された圧着ローラとの間の軸方向間隔が常に一定に維持される。この一定の軸方向間隔は、段階的に又は連続的に増大する。
【0043】
図2には、ボビン9.1,9.2の完成直前の運転状態が示されている。圧着ローラ6.1,6.2を備えたホルダ13は、キャリッジ15の上側の位置の直前で機械フレーム12に保持される。この場合、ボビンスピンドル7.1,7.2におけるボビン9.1,9.2の巻取り中の変位運動は、主にキャリッジ15の運動によって行われる。圧着ローラ6.1,6.2の変位運動とは無関係に、圧着ローラ6.1,6.2とボビン9.1,9.2との間の所定の当接力が調節されている。ボビン9.1,9.2がその所定の終端直径に達すると直ちに、交換が行われる。このためにボビン支持体10.1は時計回り方向で回転し、ボビン支持体10.2は反時計回り方向で回転するようになっているので、各ボビンスピンドル1.1,11.2は運転領域に達し、糸群1.1,1.2の複数の糸の巻取りが継続される。ボビンスピンドル11.1,11.2が運転領域に達すると、圧着ローラ6.1及び6.2がキャリッジ15によってその下の位置にガイドされる。同時に、当接力が接触力に切り替わるので、圧着ローラ6.1,6.2はボビンスピンドル11.1,11.2の各エンドリングに達する。糸交換後に新たな巻取り作業が開始される。
【0044】
本発明による装置の前記実施例の駆動形式を説明するために、以下に図4及び図5を用いて2つの可能な実施例を説明する。見やすくするために、図4及び図5には、巻取り部29.1,29.2の、駆動のために必要な装置部分を後ろから見た概略図が示されている。
【0045】
図4に示した駆動形式においては、巻取り部29.1においてボビンスピンドル7.1がスピンドル端部22.1を介してスピンドル駆動装置23.1に連結されている。スピンドル駆動装置23.1には制御器24.1が対応配置されており、この制御器24.1は上位の制御装置21に接続されている。この場合、ボビンスピンドル7.1で巻き取られるボビン9.1は破線で示されている。ボビン9.1の外周面には、自由に回転可能に支承された圧着ローラ6.1が当接している。この圧着ローラ6.1は同様に破線で示されている。圧着ローラ6.1はローラ端部18.1を有している。このローラ端部18.1には回転数センサ6.1が対応配置されており、この回転数センサ6.1によって圧着ローラ6.1の回転速度が検出されるようになっている。回転数センサ20は制御装置21に接続されている。
【0046】
第2の巻取り部29.2ではボビンスピンドル7.2がスピンドル端部22.2によってスピンドル駆動装置23.2に連結されている。スピンドル駆動装置23.2には制御器24.2が対応配置されている。ボビンスピンドル7.2の外周面に形成されている、同様に破線で示されたボビン9.2は第2の圧着ローラ6.2と接触している。この第2の巻取り部29.2の第2の圧着ローラ6.2は同様に自由回転可能に保持されている。この場合、第2の圧着ローラ6.2はその一方のロータ端部18.2が、伝動手段19によって第1の巻取り部29.1の圧着ローラ6.1に連結されている。伝動手段19はこの実施例ではベルト又はチェーンによって機械的に構成されているので、2つの巻取り部の2つの圧着ローラ6.1,6.2は同じ回転数で回転する。巻取り部29.1で糸1.1を巻取るためにボビンスピンドル7.1はスピンドル駆動装置23.1によって時計回り方向で回転せしめられる。圧着ローラ6.1は、巻き取ろうとするボビン9.1の外周面に当接して、摩擦を介して逆回転方向で駆動せしめられる。
【0047】
糸1.2をボビン9.2に巻取るために、巻取り部29.2において、ボビンスピンドル7.2がスピンドル駆動装置23.2によって反時計回り方向で駆動せしめられる。この場合、圧着ローラ6.2はボビン9.2の外周面において圧着ローラ6.1の相応の回転数で時計回り方向で回転する。圧着ローラ6.1と6.2との間の回転力伝達は伝動手段19によって行われる。2つの巻取り部29.2及び29.2は同期的に巻き取られるので、各ボビンスピンドル7.1及び7.2において同じ形のボビン9.1及び9.2が形成される。
【0048】
糸1.1及び1.2の一定の巻取り速度を維持するために、圧着ローラ6.1の回転速度は回転数センサ20によって連続的に検出され、制御装置21に供給される。制御装置21には圧着ローラ6.1の目標回転数がメモリーされている。圧着ローラ6.1の検出された実際回転速度と、メモリーされた圧着ローラ6.1の目標回転速度との間の、許容できない程度の差が検出されると直ちに、制御信号が発信され、制御器24.1及び24.2に送られる。制御器24.1及び24.2は、圧着ローラ6.1に修正された実際回転速度が与えられるように、スピンドル駆動装置23.1及び23.2の駆動回転数を所望の形式で変化させる。これによって、糸1.1及び1.2全巻取り作業中にボビン9.1及び9.2の一定の周速度が調節される。この場合、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、有利な形式で非同期電動機によって形成されている。
【0049】
図5に示した実施例は、図4に示した実施例とほぼ同じである。この場合、圧着ローラ6.1及び6.2は外部駆動装置25によって駆動される。この場合、外部駆動装置25は2つの電動機28.1及び28.2並びに所属の制御器27によって形成されている。これによって、圧着ローラ6.1及び6.2は外部駆動装置25と電気的に接続されている。
【0050】
しかしながらまた、圧着ローラ6.1及び6.2を伝動手段と連結し、1つの電動機だけによって駆動することも可能である。
【0051】
図4に示した実施例に対して、ボビンスピンドル7.1及び7.2はそれぞれスピンドル駆動装置23.1及び23.2によって駆動されている。この場合、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、非同期電動機として又は同期電動機として構成することができる。スピンドル駆動装置23.1及び23.2には制御器24が対応配置されている。制御器24は制御装置21に接続されていて、ボビン9.1及び9.2の周速度を一定に維持するために、回転数センサ20と共に調整回路を形成している。
【0052】
本発明による方法及び装置は、図1及び図3に示した個別装置の配置構成に限定されるものではない。例えばボビンスピンドルは、不動のスピンドル支持体に保持されていてもよい。また、より大きい力若しくはより小さい重量が用いられている場合には、接触力を重量負荷によって生ぜしめることも可能である。
【0053】
本発明による方法並びに装置は、図1に示した個別装置の配置構成に限定されるものではない。
【0054】
基本的に、巻取り部において圧着ローラを揺動体1によってボビンスピンドル半径方向で可動に保持するようにしてもよい。ボビンスピンドル及び圧着ローラの保持は、変位運動の実施するためにだけ重要である。しかしながら変位運動とは無関係に、複数の糸が同じ巻取り速度ひいてはほぼ一定の糸張力で巻き取られるように、ボビンの周速度が常に調節されている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による方法を実施するための本発明による装置の実施例の概略的な正面図である。
【図2】本発明による方法を実施するための本発明による装置の実施例の概略的な正面図である。
【図3】図1に示した実施例の概略的な側面図である。
【図4】図1に示した実施例の駆動状態を示す概略図である。
【図5】図1に示した別の駆動状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1.1,1.2 糸群、 2.1,2.2 糸ガイドグループ、 3 糸支持体、 4 綾振り部材(トラバース部材)、 5.1,5.2 綾振り糸ガイド、 6.1,6.2 圧着ローラ、 7.1,7.2 ボビンスピンドル、 8.1,8.2 巻管、 9.1,9.2 ボビン、 10.1,10.2 スピンドル支持体、 11.1,11.2 非作業位置にあるボビンスピンドル、 12 機械フレーム、 13 ホルダ、 14.1,14.2 キャリッジガイド、 15 キャリッジ、 16.1,16.2 負荷軽減シリンダユニット、 17.1,17.2 エンドリング、 18.1,18.2 ロータ端部、 19 伝動手段、 20 回転数センサ、 21 制御装置、 22.1,22.2 スピンドル端部、 23.1,23.2 スピンドル駆動装置、 24.1,24.2 制御器、 25 外部駆動装置、 27 制御器、 28.1,28.2 電動機、 29.1,29.2 巻取り部、 30 回転駆動装置、 31.1,31.2 スピンドル駆動装置、 32 力発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法であって、複数のボビンを、互いに平行に隣り合って配置された2つのボビンスピンドルに同時に保持して、巻取るようになっており、2つのボビンスピンドルを駆動し、回転可能に支承された複数の圧着ローラと協働して、これらの圧着ローラを巻取り中に複数のボビンの外周面に所定の当接力で当接させる方法において、
2つのボビンスピンドルのボビンに作用する当接力を、互いに堅固に結合された圧着ローラの重量負荷及び/又は重量負荷軽減によって生ぜしめることを特徴とする、複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法。
【請求項2】
2つのボビンスピンドルにおけるボビンの巻取り中に、2つのボビンスピンドルと、これらのボビンスピンドルに対応配置された圧着ローラとの間の軸方向間隔を一定に維持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の糸を巻取る前に2つの圧着ローラがこれらの圧着ローラに対応配置されたボビンスピンドルと接触するように、ボビンスピンドルと圧着ローラとの間の接触力をより高く調節し、複数の糸を複数のボビンに巻き取った後で、前記圧着力をより低い接触力に変える、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記当接力及び接触力を、2つの圧着ローラにそれぞれ均一に作用する重量負荷軽減によって生ぜしめる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
複数の糸の巻取り中の、かつ/又は振動減衰のための当接力を、所定の力プロフィールに従って変える、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ボビンスピンドルを同期的に駆動し、かつ制御する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
2つの圧着ローラが同じ回転数で反時計回り方向に回転するように、圧着ローラを機械的又は電気的に互いに連結する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
2つの圧着ローラを、付加的に外部駆動装置によって逆方向に駆動する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
巻取り中に2つの圧着ローラを、可動なキャリッジによって一緒にガイドし、それによって複数のボビンを増大させる変位運動を実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ボビンスピンドルを2つの可動なスピンドル支持体によって、同期的に又は互いに独立してガイドし、それによって複数のボビンを増大させる変位運動を実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、複数の糸(1.1,1.2)を同時に複数のボビン(9.1,9.2)に巻取るための複数の巻管(8.1,8.2)を受容する、互いに隣り合って配置された2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)と、2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)を駆動するための、複数のボビンスピンドル(7.1,7.2)に対応配置された2つのスピンドル駆動装置(23.1,23.2)と、巻取り中に複数のボビン(9.1,9.2)の外周面に当接する、回転可能に支承された2つの圧着ローラ(6.1,6.2)とを有している形式のものにおいて、
前記圧着ローラ(6.1,6.2)がホルダ(13)によって互いに堅固に接続されており、該ホルダ(13)は、複数の圧着ローラ(6.1,6.2)が、これらの圧着ローラに対応配置された複数のボビンスピンドル(7.1,7.2)に対して半径方向に一緒にガイドされるようになっており、前記ホルダ(13)が制御可能な力発生器(32)と協働するようになっていることを特徴とする、複数の糸を複数のボビンに巻取るための装置。
【請求項12】
力発生器(32)が、少なくとも1つの負荷軽減シリンダユニット(16.1,16.2)によって形成されており、該負荷軽減シリンダユニット(16.1,16.2)が制御装置(21)に接続されている、請求項12記載の装置。
【請求項13】
各圧着ローラ(6.1,6.2)が外周部に少なくとも1つのエンドリング(17.1,17.2)を有しており、これらのエンドリングによって、複数の糸を巻取る前にボビンスピンドル(7.1,7.2)が支えられている、請求項12又は13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)のエンドリング(17.1,17.2)が同じ大きさの外径を有しており、エンドリング(17.1,17.2)の外径が巻管(8.1,8.2)の直径よりも大きい、請求項14記載の装置。
【請求項15】
スピンドル駆動装置(23.1,23.2)が2つの電動機と1つの制御器(24)とによって形成されており、制御器が制御装置(21)に接続されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)は、これらの2つの圧着ローラ(6.1,6.2)が同じ回転数で逆方向に回転するように、伝動手段(19)によって互いに接続されている、請求項12から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)をそれぞれ独立して又は一緒に逆方向に駆動するための外部駆動装置(25)が設けられている、請求項12から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
キャリッジ(15)とキャリッジガイド(14.1,14.2)とを有するホルダ(13)が機械フレーム(12)に保持されており、この機械フレーム(12)によって、圧着ローラ(6.1,6.2)が半径方向で、ボビンスピンドル(7.1,7.2)に対して相対的な変位運動せしめられるようになっている、請求項12から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
複数のボビンスピンドル(7.1,7.2)がそれぞれ1つの可動なスピンドル支持体(10.1,10.2)によって保持されており、これらのスピンドル支持体(10.1,10.2)が共通の駆動装置(30)によって又は独立した駆動装置によってボビンスピンドルを圧着ローラに対して半径方向でガイドする、請求項12から19までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−526187(P2007−526187A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501182(P2007−501182)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002008
【国際公開番号】WO2005/085111
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】