複数子機同時制御システム
【課題】 通信速度の遅い通信手段を用いる場合であっても、親機によって複数の子機を遅延なく制御することができる複数子機同時制御システムを提供すること。
【解決手段】 子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、制御信号には識別データを使用して構成され制御対象となる子機を指定する指定データが含まれており、制御信号の全部又は一部は複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、制御信号を受信した子機は制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には制御信号に基づいて被制御機器の制御を行うもの。
【解決手段】 子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、制御信号には識別データを使用して構成され制御対象となる子機を指定する指定データが含まれており、制御信号の全部又は一部は複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、制御信号を受信した子機は制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には制御信号に基づいて被制御機器の制御を行うもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の照明装置に対応して設けられた複数の子機とこれら複数の子機を制御する一つ以上の親機とからなる複数子機同時制御システムに係り、特に、上記子機を特定する識別データとして、各子機固有の識別データの他に子機が所属する任意のグループを特定するための識別データを設け、それによって、任意の複数の子機を同時に制御する場合の制御信号を短縮させて、複数の子機を同時に制御する場合の応答性を向上させることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の子機を一つの親機によって制御する構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。この特許文献1には次のような構成の「大規模施設用照明器制御システム」の構成が開示されている。まず、複数の電力系統があり、これら複数の電力系統のそれぞれには複数の照明器具(例えば、4つの照明器具)が接続されている。又、上記複数の電力系統は照明スイッチ盤(親機)に纏められている。又、上記複数の照明器具にはそれぞれPLC(Power Line Communications:電力線通信)子モデム(子機)が設置されている。
【0003】
このような構成において、例えば、複数の照明器具を個別に制御したい場合には、制御したい照明器具に対応するPLC子モデム(子機)に対して照明スイッチ盤(親機)側から制御信号を送信するものである。これに対して、全ての照明器具又は各電力系統に接続された全ての照明器具を同時に制御したい場合には、照明スイッチ盤(親機)において所定のスイッチ操作を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると次のような問題点があった。
既に説明したように、従来の制御システムの場合には、各照明器具を個別に制御することは可能であり、又、全ての照明器具或いは各電力系統に接続されている全ての照明器具を同時に制御することも可能であるが、それ以外の組み合わせ、例えば、異なる電力系統に接続されている任意の照明器具の組み合わせで(例えば、任意の電力系統に接続されている照明器具の一部と隣接する別の電力系統に接続されている照明器具の一部との組み合わせ)、これらを同時に制御することはできないという問題があった。
この場合には、その組み合わせに含まれる照明器具に対応する複数の子機を個別に制御することになるが、制御に長い時間を要してしまうという問題があった。特に、「ZigBee」、「802.15.4G」、「低速PLC」等の通信速度が遅い通信手段や、周囲の状況により通信速度が遅くなる通信手段を用いた場合に顕著であった。
又、厳密には同時制御ではないので、対象となっている複数の照明器具を同時に点灯させることはできず、見た目が悪くなってしまうという問題もあった。
【0006】
また、子機にセンサ、例えば、温度センサを設け、該温度センサにより測定した温度測定データを子機から親機に送信するように構成する場合がある。このような場合においても、例えば、異なる電力系統に接続されている任意の照明器具の組み合わせで(例えば、任意の電力系統に接続されている照明器具の一部と隣接する別の電力系統に接続されている照明器具の一部との組み合わせ)、これらを同時に制御したい場合には、親機から子機それぞれに対して温度測定を指示する温度測定制御信号を個別に送信することになるので、子機毎に温度測定を実行する時刻が異なってしまうことになる。そのため、温度センサにより測定されたある時点の状態に基づいて制御を行いたい場合に不都合が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、通信速度の遅い通信手段を用いる場合であっても、親機によって複数の子機を遅延なく制御することができる複数子機同時制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された複数子機同時制御システムは、制御信号を送信する1つ以上の親機と、上記制御信号を受信する複数の子機と、上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うことを特徴とするものである。
又、請求項2に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれていることを特徴とするものである。
又、請求項3に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1又は請求項2記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号は1つのパケットに収められていることを特徴とするものである。
又、請求項4に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御することを特徴とするものである。
又、請求項5に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1〜請求項4の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機にはセンサが接続されており、上記制御信号には上記センサにより測定された測定値を子機に記録するように指示する測定制御信号や、該記録された測定値を上記親機に送信するように指示する送信制御信号があることを特徴とするものである。
又、請求項6に記載された複数子機同時制御システムは、請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機に上記測定値が記録される際、上記測定値を取得した時刻も上記測定値とともに記録され、上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時刻もともに送信されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように請求項1記載の複数子機同時制御システムによると、制御信号を送信する1つ以上の親機と、上記制御信号を受信する複数の子機と、 上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うように構成されているので、短い制御信号によって複数の子機を同時に制御できる。特に、任意のグループに含まれる複数の子機であれば、その任意のグループを特定するための識別データによって指定することで、短い制御信号によって同時に制御することができる。
また、請求項2記載の複数子機同時制御システムによると、請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれている構成になっているので、短い制御信号により複数の子機を同時に制御できるとともに、その子機の選択パターンをより複雑なものとすることができる。
また、請求項3記載の複数子機同時制御システムによると、上記制御信号は1つのパケットに収められているため、親機と子機との通信に要する時間を短縮することができ、本発明による複数子機同時制御システムの操作性を高めることができる。
また、請求項4記載の複数子機同時制御システムによると、請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御するように構成されているので、まず、一つ一つの子機に対して目標データを送信し、その後、動作指示データを送信することにより、制御対象となる複数の子機を目標データに基づいて同時に制御することができる。この様な制御は、動作対象となる個々の子機を指定した制御信号を順次送信することで制御させていく場合に生じる通信ラグによる影響を回避することができ、確実に全ての子機を同時に動作させることができる。特に、子機に設定された識別番号を用いても制御対象となる子機を簡潔な指定データによって指定できない場合でも、制御対象となる子機を同時に制御させることが可能となる。
また、請求項5記載の複数子機同時制御システムによると、制御対象となる子機にセンサによる測定値を記録・蓄積するように指示する測定指示データを含む制御信号と、制御対象となる子機に記録・蓄積された測定値を親機に送信するように指示する送信指示データを含む制御信号が用いられるので、まず、複数の子機を対象とする測定指示データを含む制御信号を送信しておくことにより、その複数の子機のセンサによる測定を同時に行うことができ、センサの測定値を用いる制御が容易となる。
また、請求項6記載の複数子機同時制御システムによると、請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機が上記測定値を記録・蓄積する際、上記測定値を取得した時間も上記測定値とともに記録・蓄積され、上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時間も共に送信されるため、測定データとその測定データが取得された時間を用いることにより、測定データの補正等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の一実施の形態を示す図で、図1(a)は複数子機同時制御システムに用いられる親機の構成を示す機能ブロック図、図1(b)は複数子機同時制御システムに用いられる子機の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機の配置を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機の識別番号テーブルの内容を説明するための図である。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される照明制御プログラムを表わすフローチャートである。
【図5】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機の操作インターフェースの表示例を示す図であり、制御対象となる子機が選択されていない初期状態を示したものである。
【図6】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機の操作インターフェースの表示例を示す図であり、エントランスと南東側全体の子機(但し、固有番号「41」の子機は除外)が選択されている状態を示したものである。
【図7】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される温度取得リクエストプログラムを表わすフローチャートである。
【図8】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される温度表示プログラムを表わすフローチャートである。
【図9】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機によって実行される子機プログラムを表わすフローチャートである。
【図10】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図11】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図12】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図13】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図14】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図15】本願発明の一実施の形態を示す図で、図15(a)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される照明制御信号の内容を示す図、図15(b)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される別の種類の照明制御信号の内容を示す図である。
【図16】本願発明の一実施の形態を示す図で、図16(a)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される温度測定制御信号の内容を示す図、図16(b)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される温度送信制御信号の内容を示す図である。
【図17】本願発明の一実施の形態を示す図で、親機1における温度データの補正処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図17を参照して、本願発明の一実施の形態について説明する。
【0012】
本実施の形態による複数子機同時制御システムには、図1(a)に示されるような親機1と、図1(b)に示されるような複数の子機3と、これら複数の子機3のそれぞれに接続された被制御機器としての照明装置4が備えられている。
尚、本実施の形態においては1台の親機1を用いているが、複数台の親機1を用いることも考えられる。
【0013】
まず、上記親機1、上記子機3、及び、上記照明装置4の構成について説明する。
上記親機1は、図1(a)に示されるように、親機用マイクロコンピュータ5と、この親機用マイクロコンピュータ5に接続された親機用無線通信モデム7と、親機用データ記憶装置9と、親機用プログラム記憶装置11と、操作インターフェース13とから構成されている。また、上記親機用無線通信モデム7には親機用アンテナ15が接続されている。
【0014】
上記親機用マイクロコンピュータ5は、上記親機用プログラム記憶装置11に記憶されたプログラムや上記操作インターフェース13を介してのユーザ17の操作により、後述する演算処理や、上記親機用無線通信モデム7及び上記親機用データ記憶装置9の制御を行うものである。上記親機用無線通信モデム7は、上記子機3との無線通信を行うためのものであり、通信速度が遅いものでもよい。無線通信には光を利用するものや電波を利用するものがあるが、本実施の形態では電波を利用した無線通信を用いることとする。
【0015】
上記親機用データ記憶装置9には、上記子機3から送信される温度測定データ等の各種データが記憶される。上記操作インターフェース13は、例えば、表示機能付のタッチパネルであって様々な入力や表示を行うものである。この操作インターフェース13を介してユーザ17による指示が入力される、或いはユーザ17に対して情報の提示を行う。
【0016】
また、上記子機3は、図1(b)に示されるように、子機用マイクロコンピュータ19と、この子機用マイクロコンピュータ19に接続された子機用無線通信モデム21と、子機用データ記憶装置23と、子機用プログラム記憶装置25と、温度センサ27とから構成されている。上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19には、既に説明した照明装置4が接続されている。
【0017】
上記子機用マイクロコンピュータ19は、上記子機用プログラム記憶装置25に記憶されたプログラムや上記親機1からの制御信号により、後述する演算処理や、上記子機用無線通信モデム21、上記子機用データ記憶装置23、上記温度センサ27、上記照明装置4の制御を行うものである。上記子機用無線通信モデム21は、上記親機1との無線通信を行うためのものであり、上記親機用無線通信モデム7と同様、通信速度が遅いものでもよく、本実施の形態においては電波を利用した無線通信を採用している。又、上記子機用無線通信モデム21には子機用アンテナ22が接続されている。
【0018】
上記子機用データ記憶装置23は、上記温度センサ27によって測定された温度測定データ等の各種データが記憶されるものである。また、上記子機用データ記憶装置23には識別番号テーブル28が設けられている。この識別番号テーブル28には、親機1が子機3を制御する際、複数の子機3の何れか一つ若しくは複数を識別するための識別データが記憶されている。この識別データは複数(本実施の形態の場合には4つ)の識別番号から構成されている。すなわち、図3に示すように、上記識別番号テーブル28は、第1〜第4の4つの識別番号メモリから構成されていて、それら第1〜第4の4つの識別番号メモリに4種類の識別番号がそれぞれ記憶されているものである。
【0019】
又、図1(b)に示すように、上記照明装置4は照明器具29とスイッチ31とから構成されている。上記照明器具29は、電力線33から供給される電力によって作動する蛍光灯等である。また、上記スイッチ31は、上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19の指示によって、上記電力線33から上記照明器具29への電力の供給と遮断を行うものである。
【0020】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムを実施する場合における、子機3の設置及び識別番号テーブル28の設定について説明する。まず、複数の子機3は、図2に示すように、建物内に所定のレイアウトにて配置されている。また、図2には図示されていないが、個々の子機3によって制御される照明装置4も個々の子機3と同じ位置に配置されている。個々の子機3には、図2に示すように、「1」〜「49」の番号が付与されており、この「1」〜「49」の番号を個々の子機3の固有番号としている。
なお、1つの固有番号に対応する子機は1つしか存在しない。
【0021】
また、上記識別番号テーブル28には、既に説明したように、第1〜第4の4つの識別番号メモリが設けられており、これら第1〜第4の4つの識別番号メモリには、図3に示すような4種類の識別番号がそれぞれ記憶されている。すなわち、複数の子機3の内、固有番号が「1」〜「12」のものについては、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリに「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「101」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「104」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号、例えば、固有番号が「1」の子機3であれば、「1」という固有番号が記憶されている。
【0022】
また、上記複数の子機3の内、固有番号が「13」〜「24」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「101」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「102」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記録されている。
また、上記複数の子機3の内、固有番号が「25」〜「36」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「103」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「104」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記憶されている。
【0023】
また、上記複数の上記子機3の内、固有番号が「37」〜「48」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「102」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「103」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記憶されている。
また、上記複数の上記子機3の内、固有番号が「49」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリ及び第3識別番号メモリには何も記憶されず、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには子機3の固有番号「49」が記憶されている。
尚、図3は全ての子機3の識別番号テーブル28の中身を一つの表に纏めたものである。例えば、固有番号が「1」の子機3の識別番号テーブル28には、第1識別番号メモリに「100」と記憶され、第2識別番号メモリには「101」と記憶され、第3識別番号メモリには「104」と記憶され、第4識別番号メモリには「1」が記憶されている。以下、同様に、個々の子機3の識別番号テーブル28には、自身に該当する4種類の識別番号が記憶されているものである。
【0024】
このようにして、個々の子機3の識別番号テーブル28に識別番号が記憶される。この識別番号によって、複数の子機3は幾つかのグループに分けられることになる。すなわち、上記識別番号テーブル28に「100」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロア全体及びエントランスにある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「101」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの北側半分(図2中上側)にある子機3のグループである。
【0025】
また、上記識別番号テーブル28に「102」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの東側半分(図2中右側)にある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「103」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの南側半分(図2中下側)にある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「104」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの西側半分(図2中左側)にある子機3のグループである。
【0026】
以上の構成を基にその作用を説明する。
最初に、本実施の形態による親機1において行われる処理について説明する。まず、照明制御プログラムについて説明する。この照明制御プログラムとは、ユーザ17の入力に基づいて、親機1が制御対象の照明器具29及びそれに対応する子機3を特定して、照明制御信号をブロードキャスト送信するまでの処理を意味する。以下、図4のフローチャートと図5及び図6を参照して説明する。
【0027】
上記照明制御プログラムが開始されると、まず、ステップS1において、ユーザ17による操作インターフェース13を介しての入力を待つ。ここでいうユーザ17による入力とは、例えば、図5に示されているような表示をみながら、対象とする子機3を選択することを意味している。具体的に説明すると、例えば、「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号41の子機に対応する照明器具29のみ点灯したくない」という内容を示す場合には次のような制御指示の入力を行う。
【0028】
まず、例えば、図5に示すような操作画面が上記操作インターフェース13のタッチパネル上に表示される。その状態で、「エントランス」と「南東側全体」のチェックボックスをタッチすることによりこれらを選択する。このとき、「エントランス」と「南東側全体」のチェックボックスだけでなく、南東側に配置されている子機3を示す「子機37」〜「子機48」のチェックボックスの全てが選択された状態になる。次に、南東部の中で固有番号「41」の子機3を除外するために、「子機41」のチェックボックスをタッチして選択から外す。これらの操作が完了すると、操作画面は図6に示す状態となっている。すなわち、「南東側全体」を示すチェックボックスが選択された状態となっており、且つ、「子機37」〜「子機48」のチェックボックスの内「子機41」以外のチェックボックスが選択されている状態となっている。
【0029】
そして、上記操作インターフェース13を介して上記ユーザ17が上記制御指示を入力すると、それがステップS1の処理により確認される。次に、ステップS2に移行する。このステップS2において、親機用マイクロコンピュータ5はその指示の内容を解釈する。具体的には、入力されている内容から、「エントランスと南東部のみの照明を点灯したいが固有番号「41」の子機のみ点灯したくない」という内容を確認し、指定すべき識別番号や除外すべき識別番号、及び、動作指示等を導き出す。
【0030】
次に、ステップS3に移行して、ステップS2において解釈した内容から論理式を生成する。例えば、「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号「41」の子機3に対応する照明器具29のみ点灯したくない」という内容に対応する論理式は次の式(I)に示すようなものとなる。
((102&103)|49)&(!41)―――(I)
この論理式(I)は、複数の子機3の内の上記制御指示による制御対象を表している。すなわち、論理式(I)には、制御対象となる子機3を指定する識別番号、複数の識別番号が含まれる場合にこれらを論理演算するための論理演算子、論理演算の優先順位を決定する記号、等が含まれている。
この論理式(I)による識別番号の指定や論理演算についての詳細は、後述する。
【0031】
そして、図4のステップS4に移行する。このステップS4においては、まず、上記論理式(I)を制御対象となる子機3を表す指定データとし、動作指示(例えば、「点灯」)を動作指示データとして、上記指定データと上記動作指示データを一つのパケットに格納する。そして、このパケットを照明制御信号として全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
尚、上記動作指示データとは、照明器具29を点灯させるための指示データ或いは消灯させる等の指示データを意味している。例えば、ユーザ17から「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号「41」の子機3に対応する照明器具29のみ点灯したくない」と入力されたのであれば、上記動作指示データは「点灯せよ」という内容のものになる。
【0032】
上記照明制御信号には、直接実行制御信号、目標設定制御信号、目標実行制御信号の3種類があり、それぞれ動作指示データの内容が異なっている。具体的には、「任意の照明動作(点灯/消灯)を直ちに実行せよ」という動作指示データを含むものが直接実行制御信号であり、「将来行う予定の動作(目標データ)を子機用データ記憶装置の照明状態メモリに記憶せよ」という動作指示データを含むものが目標設定制御信号であり、「照明状態メモリに記憶された目標データの通りに動作せよ」という動作指示データを含むものが目標実行制御信号である。
また、前述のステップS4の処理においては、照明制御信号(例えば、直接実行制御信号)のブロードキャスト送信のみを行っているが、処理の内容によっては、ステップS4において、ある種類の照明制御信号(例えば、目標設定制御信号)をユニキャスト送信した後に他の種類の照明制御信号(例えば、目標実行制御信号)をブロードキャスト送信する場合もある。
以上が照明制御プログラムの内容である。
【0033】
次に、温度取得リクエストプログラムについて説明する。この温度取得リクエストプログラムとは、親機1が、子機3に対して、温度センサ27によって温度データを取得させ子機用データ記憶装置23に温度データと測定時刻を示す測定時刻データとを記憶させるための指示と、その子機用データ記憶装置23に記憶された温度データと測定時刻データとを親機1に送信させるための指示を行う処理を意味する。以下、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図7に示すように、温度取得リクエストプログラムが開始されると、ステップS11において、温度取得する規定時刻になったか否かの判別が行われる。ここでいう規定時刻とは、予め設定されている温度測定時刻を意味している。そして、ステップS11において、規定時刻になったと判別された場合には、ステップS12に移行する。このステップS12においては、全ての子機3が含まれるグループを示す指定データと、温度センサ27によって温度データを取得するとともに取得された温度データと測定が行なわれた時刻を示す測定時刻データとを子機用データ記憶装置23に記憶させることを命令する動作指示データを一つのパケットに収め、これを温度測定制御信号として全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
【0035】
次に、ステップS13に移行して、変数kに「1」を代入する。
尚、ここでいう変数kとは、子機3を特定するための固有番号に相当する任意の数字を意味している。
そして、ステップS14に移行する。このステップS14において、上記変数kと同一の固有番号を有する子機3に対して、自己の固有番号と記憶された温度データと測定時刻データの送信を指示する温度送信制御信号をユニキャスト送信する。上記温度送信制御信号とは、固有番号がkである子機を指定する指定データと、その子機の固有番号と温度データと測定時刻データの送信を命令する動作指示データとを組み合わせた制御信号である。また、上記温度送信制御信号は一つのパケットに収められて送信されるものである。
【0036】
次に、ステップS15に移行する。このステップS15においては、変数kを「1」だけ増加させる処理が行われる。次に、ステップS16に移行して、変数kが「49」より大きいか否かの判別が行われる。変数kが「49」より大きければ温度取得リクエスト処理は終了する。これに対して、変数kが「49」以下であればステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。これらの処理によって、全ての子機3に対して、温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信していく。
【0037】
なお、ステップS13における子機3の固有番号を意味する変数kの初期値「1」や、ステップS15における変数kの増加量「1」や、ステップS16における変数kの上限値「49」は、あくまで例であって他の値を設定する場合もある。変数kの初期値や、ステップS15における変数kの増加量を適宜設定することにより、例えば、偶数の固有番号の子機3のみを指定することや、ある範囲の固有番号を指定すること等も可能である。
以上が温度取得リクエストプログラムの内容である。
【0038】
なお、図7のフローチャートにおけるステップS14では、既に説明したように、ユニキャスト送信を行うことにより、全ての子機3に対して温度の送信指示を行っているが、これは次のような理由による。
例えば、全ての子機3を指定する指定データ「100」を含む温度送信制御信号をブロードキャスト送信によって全ての子機3に送信する場合を想定する。この場合、上記親機1からブロードキャスト送信された温度送信制御信号が親機1と全ての子機3との間のネットワーク経路に同時に流れることになり、ネットワークに大きな負荷を掛けてしまう。その上、上記温度送信制御信号を受け受信した全ての子機3が温度データ等を一斉に親機1に送信するため、ネットワーク上で子機3が送信した信号同士の衝突が起こり、それによって、子機3から親機1への温度データ等の送信に不具合が生じてしまうことが予想される。
本実施の形態の場合には、そのような事情に鑑みて、前述したようなユニキャスト送信を採用しているものであり、その場合、温度送信制御信号は親機1と特定の子機3との間にしか流れないので、ネットワークへの負荷を軽くすることができる。また、温度送信制御信号を受信した個々の子機3が順次温度データを送信することになるため、子機3から送信される温度データ等を含んだ信号の衝突を防止し、子機3から親機1への信号の伝達を確実なものとすることができる。
【0039】
次に、温度表示プログラムについて説明する。ここでいう温度表示プログラムとは、親機1が子機3から送信されてくる温度測定データを表示するための処理を意味している。以下、図8のフローチャートを参照して説明する。図8に示すように、温度表示プログラムが開始されると、ステップS21において、親機1が子機3から送信された信号を受信したか否かの判別が行われる。子機3からの信号を受信したと判別された場合には、ステップS22に移行する。このステップS22においては、子機3からの信号の入力を行う。
なお、上記子機3からの信号を受信していないのであれば、ステップS21を繰り返し、子機3からの信号が受信されるまで待機する。
【0040】
次に、ステップS23に移行し、上記受信した信号が温度通知信号であるか否かの判定が行われる。この温度通知信号とは、上記親機1の温度送信制御信号によって上記子機3から送信される信号であり、送信元の子機3の固有番号、測定時刻、その測定時刻に測定された温度データが含まれるものである。上記受信した信号が温度通知信号であれば、ステップS24に移行する。このステップS24では、上記温度通知信号から送信元番号kを抽出する。次に、ステップS25に移行し、上記親機1は送信元番号kを固有番号とする子機3から、上記温度通知信号を受信したと解釈する。
【0041】
次に、ステップS26に移行し、上記操作インターフェース13に送信元番号k、受信された温度データの測定時刻、受信された温度データ等を表示する。
なお、ステップS26による表示が終了した場合や、上記ステップS23で受信した信号が温度通知信号ではないと判断された場合は、ステップS21に戻り、子機3からの信号の受信があるまで待機する。
以上が温度表示プログラムの内容である。
【0042】
次に、本実施の形態における複数子機同時制御装置に設けられた子機3における処理、すなわち、子機プログラムについて、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
図9に示すように、まず、子機プログラムが開始されると、ステップ30において、親機1からの制御信号を受信するまで待機する。そして、親機1からの制御信号を受信した場合には、ステップS31において、上記親機1から送信された制御信号を入力する。
なお、ここでいう制御信号とは、図4及び図7を参照して既に説明した各種の制御信号を意味している。
次に、ステップS32に移行する。このステップS32においては、受信した制御信号が照明制御信号(図4にて説明した照明制御信号)であるか否かを判別する。ステップS32において、受信した制御信号が照明制御信号であると判別された場合には、ステップS33に移行する。
【0044】
このステップS33においては、受信した照明制御信号から指定データ、すなわち、子機3を特定するためのデータを抽出する。次に、ステップS34に移行する。このステップS34では、子機用データ記憶装置23内の識別番号テーブル28を参照する。次に、ステップS35に移行する。このステップS35においては、受信した照明制御信号の指定データと上記識別番号テーブル28の内容を比較する。
例えば、指定データが前述した論理式(I)である場合、上記識別番号テーブル28に、識別番号「102」と「103」の両方又は識別番号「49」があり、且つ、識別番号「41」がないことを確認することによって、上記ステップS35における指定データと上記識別番号テーブル28との比較が行われる。
【0045】
次に、ステップS36に移行する。ここでは、前述したステップS35において、指定データと上記識別番号テーブル28を比較した結果について判断され、それに基づいて自己が照明制御信号による制御対象であるか否かを判別する。例えば、指定データが前述した論理式(I)である場合、固有番号が「37」である子機3では、図3に示すように、第2識別番号メモリに識別番号「102」が格納され、第3識別番号メモリに識別番号「103」が格納されており、且つ、識別番号「41」は何れの識別番号メモリにも格納されていない。そのため、この固有番号が「37」である子機3は、制御対象であると判断される。
【0046】
そして、ステップS36において自己が照明制御信号による制御対象であると判別された場合には、ステップS37に移行する。このステップS37においては、照明制御信号が目標設定制御信号であるかどうかを判別する。照明制御信号が目標設定制御信号であれば、ステップS38に移行する。このステップS38では、目標設定制御信号内の目標データを子機用データ記憶装置23の「照明状態メモリ」に記憶する。その後、上記ステップ30へと戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0047】
上記ステップS37において、照明制御信号が目標設定制御信号ではないと判別された場合は、ステップS39へ移行する。このステップS39では、照明制御信号が目標実行制御信号であるかどうかを判別する。照明制御信号が目標実行制御信号であれば、ステップS40へ移行する。このステップS40では、照明器具29を上記子機用データ記憶装置23の「照明状態メモリ」に記憶された目標データに示す状態に制御する。その後、上記ステップ30へと戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0048】
上記ステップS39において、照明制御信号が目標実行制御信号でないと判別された場合は、ステップS41へと移行する。このステップS41では、照明制御信号が直接実行制御信号であると判別し、その指示通りに上記照明器具29を制御する。すなわち、受信した照明制御信号に含まれる動作指示データに指示された通りに被制御機器4のスイッチ31を操作して照明器具29の「点灯」又は「消灯」を行う。そして、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0049】
上記ステップS36において、自己が照明制御信号による制御対象ではないと判別された場合には、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
また、上記ステップS41における上記被制御機器4の操作としては、上記スイッチ31のオン/オフを行わせるもののほか、上記照明器具29を所定の照度に制御するものなども考えられる。
なお、ステップS36〜ステップS39においては、目標設定制御信号、目標実行制御信号、直接実行制御信号の順で判別しているが、判別の順序についてはそれに限定されるものではない。
【0050】
また、ステップ32において、受信した制御信号が照明制御信号ではないと判別された場合には温度センサに関する制御信号(図7にて説明した制御信号)であると判別して、ステップS42へと移行する。このステップS42では、制御信号から指定データを抽出し、次のステップS43へと移行する。ステップ43では、では上記識別番号テーブル28を参照する。そして、ステップS44に移行し、前述したステップS35の場合と同様に、上記指定データと上記識別番号テーブル28の内容を比較する。そして、ステップS45に移行し、前述したステップS36の場合と同様に、自己が制御対象であるかどうか判別する。
【0051】
上記ステップS45において自己が制御対象ではないと判別した場合は、上記ステップ30へ戻り上記親機1からの制御信号の受信を待つ。上記ステップS45において自己が制御対象であると判別された場合には、ステップS46に移行する。ステップS46では、受信した制御信号が温度測定制御信号であるかどうか判別する。
【0052】
受信した制御信号が温度測定制御信号であればステップS47へと移行する。ステップS47では、温度センサ27によって温度データを取得し、それと同時に上記子機用マイクロコンピュータ19に内蔵された時計から上記温度データが計測された時刻を測定時刻データとして取得する。続いて、ステップS48に移行し、上記温度データと上記測定時刻データとを関連付けて子機用データ記憶装置23に記憶する。その後、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0053】
上記ステップS46において受信した制御信号が温度測定制御信号ではないと判別された場合には、この受信した制御信号が温度送信制御信号であると判別し、ステップS49へと移行する。このステップS49では、子機3の固有番号と既に上記子機用データ記憶装置23に記憶されている温度データと測定時刻データとを関連付けて、温度通知信号として上記親機1に送信する。
その後、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
以上が子機プログラムの内容である。
【0054】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムの作用に関して、具体例を挙げながら詳しく説明する。
まず、図2に示すように配置された子機3の全てに接続された照明装置4の照明器具29を、消灯状態から点灯状態に移行する場合について説明する。 この場合、ユーザ17は親機1の操作インターフェース13を操作して全ての子機3に対応する照明器具29を点灯させる指示を行う。そして、図4に示されたフローチャートのステップS1において、その入力された指示が取り込まれる。そして、図4に示されたフローチャートのステップS2とステップS3によって、上記取り込まれた指示に基づいて、例えば、図10に示すような「指定データ」と「動作指示データ」が作成される。次に、ステップS4において、上記「指定データ」と「動作指示データ」が組み合わされた照明制御信号(直接実行制御信号)が全ての子機3にブロードキャスト送信される。
【0055】
上記照明制御信号の指定データは、図10に示すように、「100」である。一方、図3に示すように、全ての子機3は識別番号テーブル28の第1識別番号メモリに「100」が記憶されているので、全ての子機3が上記照明制御信号の制御対象となる。このような判別は、図9のフローチャートのステップS33〜S36の処理によって行われる。そして、図9のフローチャートのステップS41おいて、上記動作指示データに表された「点灯」の指示により、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯されることになる。
【0056】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯した状態から、南側にある子機3に接続された照明装置4の照明器具29のみを消灯させる場合について説明する。この場合は、図11に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3にブロードキャスト送信する。
【0057】
上記照明制御信号の指定データは「103」である。図3によれば、識別番号テーブルの第2識別番号メモリ又は第3識別番号メモリに「103」が記憶されているのは、固有番号が「25」〜「36」の子機3と、固有番号が「37」〜「48」の子機3である。図2に示された子機3の配置によると、固有番号が「25」〜「36」の子機3は南西側(図2中左下側)に位置し、固有番号が「37」〜「48」の子機3は南東側(図2中右下側)に位置している。よって、これらの子機3に接続された照明装置4の照明器具29が上記動作指示データに示された「消灯」の指示により消灯されることになる。
【0058】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、南側の子機3の全てとエントランスの子機3に接続された照明装置4の照明器具29を同時に点灯させたい場合について説明する。この場合は、図12に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3にブロードキャスト送信する。
【0059】
上記照明制御信号の指定データは「103、49」である。前述のように、識別番号テーブル28の第2識別番号メモリ又は第3識別番号メモリに「103」が記録されているのは、南側(図2中下側)に配置された固有番号「25」〜「36」の子機3と固有番号「37」〜「48」の子機3である。また、固有番号「49」が記録されているのは、エントランスに配置された固有番号「49」の子機3である。上記照明制御信号の制御対象となるのはこれらの子機3である。よって、これらの子機3に接続された照明装置4の照明器具29が上記動作指示データに示された「点灯」の指示により点灯されることになる。
【0060】
ここで、前述したような、南側及びエントランスの子機3に接続された照明装置4の照明器具29について点灯する制御を行う別の制御信号について説明する。南側及びエントランスに配置された子機3には、図2及び図3に示すように、「25」〜「49」の固有番号が割り当てられている。そのため、制御信号として、図13に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を用いることも考えられる。しかし、この場合には、指定データが制御対象となる全ての子機3の固有番号を指定するものであり、制御信号が長くなってしまう。これに対して、図12に示されている照明制御信号の指定データを使用すれば、短い制御信号によって同様の制御を行うことができるものである。
【0061】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、エントランスと南東部(図2中右下側)に配置された子機3のうち、固有番号「41」以外の子機3に接続された照明装置4の照明器具29を全て点灯させる場合について説明する。この場合は、図14に示されているような照明制御信号(直接実行制御信号)が親機1から全ての子機3にブロードキャスト送信される。
【0062】
図14に示される「指定データ」には、前記式(I)で示した論理式、すなわち、「((102&103)|49)&(!41)」が記憶されていて、この論理式には論理演算子を表す記号が含まれている。記号「&」は論理演算子「and」を表し、記号「|」は論理演算子「or」を表し、記号「!」は論理演算子「not」を表すものである。すなわち、記号「&」はその両側にある番号を識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表し、記号「|」はその両側にある番号のどちらかを上記識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表し、記号「!」はその右側にある番号以外の番号を識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表すものである。また、上記指定データ中の括弧は、論理演算の優先順位を表し、括弧内の論理演算が優先して行われることとなる。
【0063】
上記論理式「((102&103)|49)&(!41)」は、上記論理演算子及び括弧の意味に従って、上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19によって解釈される。まず、括弧内の演算が優先されるため、「(102&103)」の演算が行われる。これは、上記識別番号テーブル28内に「102」と「103」の両方が存在する子機3が対象であることを表わしている。次に「((102&103)|49)」の演算が行われる。「102と103の両方」と「49」との何れかが識別番号テーブル28内に存在する子機3が対象であることを表わす。
【0064】
次に「(!41)」の演算が行われる。これは、上記識別番号テーブル28に「41」がないものが対象であることを表わす。最後に、前述した「((102&103)|49)」の演算結果と「(!41)」の演算結果とを論理演算子「&」によって演算する。その結果、「((102&103)|49)&(!41)」は、上記識別番号テーブル28に「41」がない子機3のうち、「102」と「103」の両方が上記識別番号テーブル28にある子機3か、「49」が上記識別番号テーブル28にある子機3が制御対象となることが導き出される。このような論理式の解釈も図9のフローチャートにおけるステップS33〜S36の処理によって行われる。
このようにして、図14に示されている照明制御信号(直接実行制御信号)によって、エントランスと南東部(図2中右下側)に配置された子機3のうち、固有番号「41」以外の子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯されることになる。
【0065】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、例えば、偶数の固有番号の子機3のみに接続された照明装置4の照明器具29を全て同時に点灯させる制御を行う場合について説明する。この場合、親機1は、まず、図15(a)に示すような照明制御信号(目標設定制御信号)を図15(a)中上から順番にユニキャスト送信していき、その後、図15(b)に示す照明制御信号(目標実行制御信号)をブロードキャスト送信する。つまり、「2」〜「48」の1つの偶数の固有番号(上記子機3の識別番号テーブル28内の第4識別番号メモリに記憶されている)を指定する指定データと照明状態メモリに「点灯」状態を記憶させる動作指示データとからなる照明制御信号(目標設定制御信号)を、指定する固有番号が小さい順に順次ユニキャスト送信し、最後に識別番号「100」を指定する指定データと照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する指示を示す動作指示データとからなる照明制御信号(目標実行制御信号)を全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
【0066】
最初に「2」〜「48」の偶数の固有番号を有する子機3にユニキャスト送信される照明制御信号は、その上記動作指示データが子機3に対して「点灯」という動作を示す目標データを記憶させる指示を示すものであり、目標設定制御信号ということになる。そのため、このような照明制御信号を受信した子機3は、図9のフローチャートのステップS38において、自身の子機用データ記憶装置23内に確保された「照明状態メモリ」に、その目標データを記憶する。
【0067】
そして、偶数の固有番号を有する子機3の全てが「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データを記憶された状態になった後、指定データが「100」であり動作指示データが「照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する」指示を示すものである照明制御信号(目標実行制御信号)が全ての子機3に対してブロードキャスト送信される。この照明制御信号は、動作指示データが「照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する」ものであるから目標実行制御信号ということになる。このような照明制御信号を受信した子機3は、図9のフローチャートのステップS40において、接続された照明器具29を「照明状態メモリ」に記憶された状態へと操作する。よって、「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データが記憶された子機3、すなわち、偶数の固有番号を有する子機3に接続された上記照明装置4の照明器具29が全て同時に点灯し、それ以外の子機に接続された照明装置4の照明器具29は、「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データが記憶されていないので、点灯することはない。
【0068】
なお、図3に示すような識別番号を用いても、固有番号が偶数の子機3を全て指定する簡潔な指定データを生成することはできない。図3の識別番号は、子機3が図2に示されたビルのフロアにおいて、何れの方角に配置されているかを示すものであり、偶数の固有番号の子機3を示すものではないからである。そのため、「点灯」を指示する動作指示データを含んだ照明制御信号(直接実行制御信号)のブロードキャスト送信だけで固有番号が偶数である子機3の同時制御を行おうとする場合、簡潔な指定データを用いて対象となる子機3を同時に点灯させることはできないものである。すなわち、偶数の固有番号の全てを指定データに含んだ照明制御信号(直接実行制御信号)をブロードキャスト送信することになり、その照明制御信号は非常に長くなってしまい、本実施の形態のような低速の無線通信を使用する場合は、子機3が制御信号を受信して制御されるまでの時間が長くなってしまうことが考えられる。また、このような制御信号を用いると、子機3の何れかに通信の遅れが生じる可能性が高くなり、全ての子機3を同時に制御することができないという問題が生じてしまう。
【0069】
また、固有番号「2」から「48」までの偶数の固有番号を有する個々の子機3を制御対象とする照明制御信号(直接実行制御信号)を順次ユニキャスト送信したとしても、偶数の固有番号を有する個々の子機3に接続された照明装置4の照明器具29がその順番に点灯していくことになり、偶数の固有番号を有する子機3の全てを同時に点灯させることはできない。
そのため、偶数の固有番号を有する個々の子機3の全てに、まず、目標設定制御信号をユニキャスト送信し目標データを順次記憶させ、その後、全ての子機3に目標制御信号をブロードキャスト送信することで偶数の固有番号を有する個々の子機3の全てに照明器具29の点灯を同時に行わせるという方法を採用しているものである。
【0070】
このような方法を用いる以外にも、子機3の識別番号テーブル28に記憶された識別番号の設定次第では、照明制御信号(直接実行制御信号)のブロードキャスト送信のみによって偶数の固有番号を設定された子機3の全てに接続された照明器具29を同時に点灯させる制御を行うことができる場合がある。例えば、偶数の固有番号を設定された子機3の識別番号テーブル28には、偶数の固有番号を設定された子機3の全てを含むグループをあらわす識別番号(例えば、「200」)を記憶させておくことが考えられる。そして、識別番号「200」を指定した指定データと「点灯」の動作を指示する動作指示データとからなる照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3に対してブロードキャスト送信することにより、識別番号「200」を識別番号テーブル28に記憶されている子機3、すなわち、偶数の固有番号を持つ子機3の全ての照明器具29を同時に点灯させることができる。
【0071】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムの全ての子機3を使用して、所定の時刻に温度を測定し、その結果を親機1に送信する制御を行う場合について説明する。この場合、親機1は図7のフローチャートによる動作を行う。まず、温度測定を行う所定の時刻になると、まず、図16(a)に示すような「指定データ」と「動作指示データ」とからなる温度測定制御信号が、親機1から全ての子機3にブロードキャスト送信される。上記「指定データ」には全ての子機3を対象とすることを意味する「100」が記憶されている。又、上記「動作指示データ」には、温度センサ27から測定データを取り込んで子機用データ記憶装置23にその測定データと測定時刻を書き込むことが記憶されている。これが、図7のフローチャートにおけるステップS12において行われる動作である。
【0072】
そして、上記温度測定制御信号により、全ての子機3が上記温度センサ27によって測定を行い、その測定結果である「温度データ」と測定が行われた時刻を示す「測定時刻データ」とを上記子機用データ記憶装置23に記憶する動作を行う。これが、図9のフローチャートにおけるステップS47、ステップS48において行われる動作である。
【0073】
次に、親機1は、固有番号が「1」から「49」までの子機3を1つずつ制御対象とした「温度送信制御信号」を順次ユニキャスト送信し、それによって固有番号が「1」から「49」までの子機3についての「温度データ」と「測定時刻データ」を得る。以下、詳細に説明する。
まず、親機1は、図16(b)に示されるような「指定データ」と「動作指示データ」からなる温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信していく。この温度送信制御信号は、全ての子機3を個別に指定した「指定データ」と、自身の固有番号と子機用データ記憶装置23に記憶された「温度データ」と「測定時刻データ」とを親機1に送信する旨の「動作指示データ」とからなるものである。これが、図7のフローチャートにおけるステップS13からステップS16において行われる動作である。
【0074】
上記温度送信制御信号により、固有番号が「1」から「49」までの子機3、すなわち、全ての子機3が、順次、自己の固有番号と子機用データ記憶装置23に記録された「温度データ」と「測定時刻データ」とを関連付けて、温度通知信号として親機1に送信していく。これが、図9のフローチャートにおけるステップS49において行われる処理である。これにより、親機1は全ての子機3についての「温度データ」と測定された時刻を示す「測定時刻データ」を得ることになる。
【0075】
また、親機1はそれぞれの子機3において温度測定が行われた時刻の差を知ることができる。本実施の形態においては、温度測定制御信号をブロードキャスト送信しているので、基本的に、温度測定時刻に違いが生じることはないが、何らかの理由、例えば、通信の遅れなどにより、温度測定時刻に違いが生じることが予想される。この場合には、上記子機3間で温度を測定したタイミングが異なっても、個々の子機3による温度測定の時刻を確認できるので、親機1は親機用マイクロコンピュータ5によってデータの補正を行うことが可能となる。以下、図17を参照して、このデータの補正処理について説明する。
【0076】
例えば、個々の子機3側において、予め設定された時間毎に複数回の温度測定を行うような場合を想定する。この場合、親機1は、子機3による複数回、例えば、3回の温度測定により、3つの異なる測定時刻における、3つの温度データを得るとする。これらの3つの温度データを、測定時刻が古い順に、温度データ1、温度データ2′、温度データ3とする。また、温度データ1は測定時刻1に測定された温度を示すものであり、温度データ2′は本来の測定時刻2に対して若干遅れた測定時刻2′に測定された温度を示すものであり、温度データ3は測定時刻3に測定されたに測定された温度を示すものである。
【0077】
このような場合、上記親機1は温度データの補正を行い、本来の測定時刻2における温度データ2を推定する処理を行う。すなわち、親機1は、温度データ2′と温度データ1との差、及び、測定時刻2′と測定時刻1との差から、測定時刻1〜測定時刻2′間の温度の単位時間当たりの変化(dT)を求める。図17に示す例では、温度の単位時間当たりの変化(dT)は、測定時刻1〜測定時刻2′間において、正比例の関係になっていて、所定の角度で傾斜した直線として示されている。 そして、この温度の単位時間当たりの変化(dT)を用いて、本来の測定時刻2における温度データ2を推定する。
【0078】
以下、具体的に説明する。図17に示すように、温度データ2′と温度データ1の差がaであり、測定時刻2′と測定時刻1の差がbであるので、測定時刻1〜測定時刻2′間の温度の単位時間当たりの変化(dT)は次の式(II)に示すようなものとなる。
dT=a÷b―――(II)
一方、実際に温度データ2′が測定された測定時刻2′と本来の温度データ2の測定時刻2との差はb′である。よって、実際に測定された温度データ2′と本来予定されていた測定時刻2における温度データ2との差(a′)は次の式(III)に示すようなものとなる。
a′=dT×b′―――(III)
そして、温度データ2′から上記差(a′)を減算することにより、本来予定されていた測定時刻2における温度データ2を推定することができる。
【0079】
このようにして、本来予定していた測定時刻2における温度データ2を算出することにより測定のタイミングがずれた温度データの補正が行われる。
なお、前述の温度データ1〜温度データ3から温度の単位時間当たりの変化(dT)を求めることもでき、この場合は補正の精度をより高いものとすることができる。また、前述の例では、実際に測定された温度データから、温度の直線的な変化を求めることで補正を行ったが(直線補間)、その他の補正手段を用いる場合も考えられる。
【0080】
以上本実施の形態による複数子機同時制御装置によると以下のような効果を奏する。
まず、任意の複数の子機3を同時に制御しようとする場合の制御信号を短くすることができる。これは、子機3を特定するための識別番号として、子機3固有の識別番号だけではなく、任意の複数の子機3が含まれるグループを特定する識別番号も設定されているからである。そのため、任意の複数の子機3を同時に制御したい場合には、そのグループを特定する識別データを使用することにより、親機1から送信される制御信号を短くすることができるものである。
このように、制御信号を短くすることができるので、親機用無線通信モデム7や子機用無線通信モデム21が低速なものであっても、通信時間や子機3が動作を開始するまでの時間を短縮させることができる。
また、親機1と子機3との間の通信の信頼性が高くなり確実な動作を担保することができる。
【0081】
また、制御信号の「指定データ」に複数の識別番号を併用することもできるので、短い制御信号で複雑な組み合わせの複数の子機3の同時制御が可能となる。
また、制御信号の「指定データ」に書き込まれる論理式には、識別番号同士の論理演算を行う論理演算子や、論理演算の優先順位を規定する括弧記号等を含めることもできるので、さらに複雑な組み合わせの複数の子機3の同時制御を短い制御信号によって行うことができる。
【0082】
また、照明制御信号を例に挙げると、直接実行制御信号だけでなく、目標設定制御信号、目標実行制御信号の3種類がある。よって、まず、上記親機1から、制御対象となる個々の上記子機3を指定した上記照明器具29の点灯/消灯の指示を「照明状態メモリ」に記憶させる目標設定制御信号を順次ユニキャスト送信し、その後、全ての子機3の識別番号テーブル28に記録されている識別番号を指定し「照明状態メモリ」の内容通りの制御を行わせる目標実行制御信号をブロードキャスト送信すれば、全ての子機3について同時に「照明状態メモリ」に記録された通りの動作を行わせることができる。これは、上記識別番号テーブル28に設定された識別番号やその論理式による論理演算によっても指定できない組み合わせの子機3が制御対象となる場合に有効であり、低速な通信手段を用いていても、ネットワークに過大な負荷をかけることなく、複数の子機3を同時に動作させることができるものである。
なお、これは照明制御信号に限られたものではなく、その他の様々な制御信号に関しても同様にいえることである。
【0083】
また、制御信号には照明を制御するもののほか、子機3に備えられた温度センサ27による温度測定を指示するものもある。所定の時刻に全ての子機3によって測定された温度データを得るためには、まず、所定の時刻に親機1はブロードキャスト送信によって温度測定制御信号を送信し、全ての子機3による温度の測定とその記憶を行わせる。その後、全ての子機3に対して温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信する。それによって、温度送信制御信号を受信した子機3は、順次、上記親機1に対して所定の時刻に測定された温度データを含む温度通知信号を送信する。このように構成することにより、ネットワークへの負荷を軽減させ、且つ、親機1と子機3との間の通信の信頼性を高めることができる。また、全ての子機3において所定の時刻に測定された温度データを確実に得ることができる。
【0084】
また、親機1は「温度測定データ」の他にその測定時刻を表わす「測定時刻データ」を得ることができるので、仮に、複数の記子機3中に測定のタイミングがずれたものがあっても、親機1が収集したこれらのデータを用いてデータの補正処理を行うことができ、より正確な測定結果を得ることができる。
【0085】
なお、本願発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、親機1や子機3の数、子機3の識別番号テーブル28に設けられた識別番号メモリの数、識別番号テーブル28に設定された識別番号の組み合わせ等は、この限りではない。
また、識別番号がどのような子機3のグループを示すかについてもこの限りではなく、前記一実施の形態で挙げた以外の子機3のグループを同時に制御することも可能である。
また、被制御機器としては、照明装置4に限られず、空調装置、冷蔵庫、冷凍機など、様々な機器が考えられる。
また、親機1から送信される「動作指示データ」としても、スイッチのオン/オフだけではなく、例えば、照明装置の制御であれば照度の調整や、空調・冷凍・冷蔵装置であれば温度の設定など、様々なパラメータを制御する動作を示すデータが考えられる。
【0086】
また、前記一実施の形態の場合には、子機3に温度センサ27が備えられている構成を例に挙げて説明したが、その他にも照度センサ、電力センサなど様々な測定装置を備えた子機3の構成が考えられる。
また、前記一実施の形態においては、親機1と子機3との通信手段として無線通信を例に挙げて説明したが有線であってもよい。
また、前記一実施の形態においては、図7に示す温度取得リクエスト処理において、ステップS14〜ステップS16に示すようなユニキャスト送信を採用しているが、温度データを取得したい子機3の組み合わせによっては、これをブロードキャスト送信によって行うようにしてもよい。
その他、図示した構成はあくまで例である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、複数の制御機器のそれぞれに設けられた複数の子機とこれら複数の子機の内の任意の子機を同時に制御する親機とからなる複数子機同時制御システムに係り、特に、上記子機を特定する識別データとして、子機固有のデータの他に、子機が所属するグループを特定するためのデータを設けることにより、任意の複数の子機を同時に制御する場合の制御信号を短くすることを可能にし、それによって、通信速度の遅い通信手段によって多数の子機を同時に制御する場合であっても遅延なく動作するように工夫したものに関し、例えば、複数の照明装置の制御に好適である。
【符号の説明】
【0088】
1 親機
3 子機
4 照明装置(被制御機器)
27 温度センサ
28 識別番号テーブル
29 照明器具
31 スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の照明装置に対応して設けられた複数の子機とこれら複数の子機を制御する一つ以上の親機とからなる複数子機同時制御システムに係り、特に、上記子機を特定する識別データとして、各子機固有の識別データの他に子機が所属する任意のグループを特定するための識別データを設け、それによって、任意の複数の子機を同時に制御する場合の制御信号を短縮させて、複数の子機を同時に制御する場合の応答性を向上させることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の子機を一つの親機によって制御する構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。この特許文献1には次のような構成の「大規模施設用照明器制御システム」の構成が開示されている。まず、複数の電力系統があり、これら複数の電力系統のそれぞれには複数の照明器具(例えば、4つの照明器具)が接続されている。又、上記複数の電力系統は照明スイッチ盤(親機)に纏められている。又、上記複数の照明器具にはそれぞれPLC(Power Line Communications:電力線通信)子モデム(子機)が設置されている。
【0003】
このような構成において、例えば、複数の照明器具を個別に制御したい場合には、制御したい照明器具に対応するPLC子モデム(子機)に対して照明スイッチ盤(親機)側から制御信号を送信するものである。これに対して、全ての照明器具又は各電力系統に接続された全ての照明器具を同時に制御したい場合には、照明スイッチ盤(親機)において所定のスイッチ操作を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると次のような問題点があった。
既に説明したように、従来の制御システムの場合には、各照明器具を個別に制御することは可能であり、又、全ての照明器具或いは各電力系統に接続されている全ての照明器具を同時に制御することも可能であるが、それ以外の組み合わせ、例えば、異なる電力系統に接続されている任意の照明器具の組み合わせで(例えば、任意の電力系統に接続されている照明器具の一部と隣接する別の電力系統に接続されている照明器具の一部との組み合わせ)、これらを同時に制御することはできないという問題があった。
この場合には、その組み合わせに含まれる照明器具に対応する複数の子機を個別に制御することになるが、制御に長い時間を要してしまうという問題があった。特に、「ZigBee」、「802.15.4G」、「低速PLC」等の通信速度が遅い通信手段や、周囲の状況により通信速度が遅くなる通信手段を用いた場合に顕著であった。
又、厳密には同時制御ではないので、対象となっている複数の照明器具を同時に点灯させることはできず、見た目が悪くなってしまうという問題もあった。
【0006】
また、子機にセンサ、例えば、温度センサを設け、該温度センサにより測定した温度測定データを子機から親機に送信するように構成する場合がある。このような場合においても、例えば、異なる電力系統に接続されている任意の照明器具の組み合わせで(例えば、任意の電力系統に接続されている照明器具の一部と隣接する別の電力系統に接続されている照明器具の一部との組み合わせ)、これらを同時に制御したい場合には、親機から子機それぞれに対して温度測定を指示する温度測定制御信号を個別に送信することになるので、子機毎に温度測定を実行する時刻が異なってしまうことになる。そのため、温度センサにより測定されたある時点の状態に基づいて制御を行いたい場合に不都合が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、通信速度の遅い通信手段を用いる場合であっても、親機によって複数の子機を遅延なく制御することができる複数子機同時制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された複数子機同時制御システムは、制御信号を送信する1つ以上の親機と、上記制御信号を受信する複数の子機と、上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うことを特徴とするものである。
又、請求項2に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれていることを特徴とするものである。
又、請求項3に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1又は請求項2記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号は1つのパケットに収められていることを特徴とするものである。
又、請求項4に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御することを特徴とするものである。
又、請求項5に記載された複数子機同時制御システムは、請求項1〜請求項4の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機にはセンサが接続されており、上記制御信号には上記センサにより測定された測定値を子機に記録するように指示する測定制御信号や、該記録された測定値を上記親機に送信するように指示する送信制御信号があることを特徴とするものである。
又、請求項6に記載された複数子機同時制御システムは、請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機に上記測定値が記録される際、上記測定値を取得した時刻も上記測定値とともに記録され、上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時刻もともに送信されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように請求項1記載の複数子機同時制御システムによると、制御信号を送信する1つ以上の親機と、上記制御信号を受信する複数の子機と、 上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うように構成されているので、短い制御信号によって複数の子機を同時に制御できる。特に、任意のグループに含まれる複数の子機であれば、その任意のグループを特定するための識別データによって指定することで、短い制御信号によって同時に制御することができる。
また、請求項2記載の複数子機同時制御システムによると、請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれている構成になっているので、短い制御信号により複数の子機を同時に制御できるとともに、その子機の選択パターンをより複雑なものとすることができる。
また、請求項3記載の複数子機同時制御システムによると、上記制御信号は1つのパケットに収められているため、親機と子機との通信に要する時間を短縮することができ、本発明による複数子機同時制御システムの操作性を高めることができる。
また、請求項4記載の複数子機同時制御システムによると、請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御するように構成されているので、まず、一つ一つの子機に対して目標データを送信し、その後、動作指示データを送信することにより、制御対象となる複数の子機を目標データに基づいて同時に制御することができる。この様な制御は、動作対象となる個々の子機を指定した制御信号を順次送信することで制御させていく場合に生じる通信ラグによる影響を回避することができ、確実に全ての子機を同時に動作させることができる。特に、子機に設定された識別番号を用いても制御対象となる子機を簡潔な指定データによって指定できない場合でも、制御対象となる子機を同時に制御させることが可能となる。
また、請求項5記載の複数子機同時制御システムによると、制御対象となる子機にセンサによる測定値を記録・蓄積するように指示する測定指示データを含む制御信号と、制御対象となる子機に記録・蓄積された測定値を親機に送信するように指示する送信指示データを含む制御信号が用いられるので、まず、複数の子機を対象とする測定指示データを含む制御信号を送信しておくことにより、その複数の子機のセンサによる測定を同時に行うことができ、センサの測定値を用いる制御が容易となる。
また、請求項6記載の複数子機同時制御システムによると、請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、上記子機が上記測定値を記録・蓄積する際、上記測定値を取得した時間も上記測定値とともに記録・蓄積され、上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時間も共に送信されるため、測定データとその測定データが取得された時間を用いることにより、測定データの補正等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の一実施の形態を示す図で、図1(a)は複数子機同時制御システムに用いられる親機の構成を示す機能ブロック図、図1(b)は複数子機同時制御システムに用いられる子機の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機の配置を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機の識別番号テーブルの内容を説明するための図である。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される照明制御プログラムを表わすフローチャートである。
【図5】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機の操作インターフェースの表示例を示す図であり、制御対象となる子機が選択されていない初期状態を示したものである。
【図6】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機の操作インターフェースの表示例を示す図であり、エントランスと南東側全体の子機(但し、固有番号「41」の子機は除外)が選択されている状態を示したものである。
【図7】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される温度取得リクエストプログラムを表わすフローチャートである。
【図8】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける親機によって実行される温度表示プログラムを表わすフローチャートである。
【図9】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおける子機によって実行される子機プログラムを表わすフローチャートである。
【図10】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図11】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図12】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図13】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図14】本願発明の一実施の形態を示す図で、複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される制御信号の内容の一例を示した図である。
【図15】本願発明の一実施の形態を示す図で、図15(a)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される照明制御信号の内容を示す図、図15(b)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される別の種類の照明制御信号の内容を示す図である。
【図16】本願発明の一実施の形態を示す図で、図16(a)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される温度測定制御信号の内容を示す図、図16(b)は複数子機同時制御システムにおいて親機から送信される温度送信制御信号の内容を示す図である。
【図17】本願発明の一実施の形態を示す図で、親機1における温度データの補正処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図17を参照して、本願発明の一実施の形態について説明する。
【0012】
本実施の形態による複数子機同時制御システムには、図1(a)に示されるような親機1と、図1(b)に示されるような複数の子機3と、これら複数の子機3のそれぞれに接続された被制御機器としての照明装置4が備えられている。
尚、本実施の形態においては1台の親機1を用いているが、複数台の親機1を用いることも考えられる。
【0013】
まず、上記親機1、上記子機3、及び、上記照明装置4の構成について説明する。
上記親機1は、図1(a)に示されるように、親機用マイクロコンピュータ5と、この親機用マイクロコンピュータ5に接続された親機用無線通信モデム7と、親機用データ記憶装置9と、親機用プログラム記憶装置11と、操作インターフェース13とから構成されている。また、上記親機用無線通信モデム7には親機用アンテナ15が接続されている。
【0014】
上記親機用マイクロコンピュータ5は、上記親機用プログラム記憶装置11に記憶されたプログラムや上記操作インターフェース13を介してのユーザ17の操作により、後述する演算処理や、上記親機用無線通信モデム7及び上記親機用データ記憶装置9の制御を行うものである。上記親機用無線通信モデム7は、上記子機3との無線通信を行うためのものであり、通信速度が遅いものでもよい。無線通信には光を利用するものや電波を利用するものがあるが、本実施の形態では電波を利用した無線通信を用いることとする。
【0015】
上記親機用データ記憶装置9には、上記子機3から送信される温度測定データ等の各種データが記憶される。上記操作インターフェース13は、例えば、表示機能付のタッチパネルであって様々な入力や表示を行うものである。この操作インターフェース13を介してユーザ17による指示が入力される、或いはユーザ17に対して情報の提示を行う。
【0016】
また、上記子機3は、図1(b)に示されるように、子機用マイクロコンピュータ19と、この子機用マイクロコンピュータ19に接続された子機用無線通信モデム21と、子機用データ記憶装置23と、子機用プログラム記憶装置25と、温度センサ27とから構成されている。上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19には、既に説明した照明装置4が接続されている。
【0017】
上記子機用マイクロコンピュータ19は、上記子機用プログラム記憶装置25に記憶されたプログラムや上記親機1からの制御信号により、後述する演算処理や、上記子機用無線通信モデム21、上記子機用データ記憶装置23、上記温度センサ27、上記照明装置4の制御を行うものである。上記子機用無線通信モデム21は、上記親機1との無線通信を行うためのものであり、上記親機用無線通信モデム7と同様、通信速度が遅いものでもよく、本実施の形態においては電波を利用した無線通信を採用している。又、上記子機用無線通信モデム21には子機用アンテナ22が接続されている。
【0018】
上記子機用データ記憶装置23は、上記温度センサ27によって測定された温度測定データ等の各種データが記憶されるものである。また、上記子機用データ記憶装置23には識別番号テーブル28が設けられている。この識別番号テーブル28には、親機1が子機3を制御する際、複数の子機3の何れか一つ若しくは複数を識別するための識別データが記憶されている。この識別データは複数(本実施の形態の場合には4つ)の識別番号から構成されている。すなわち、図3に示すように、上記識別番号テーブル28は、第1〜第4の4つの識別番号メモリから構成されていて、それら第1〜第4の4つの識別番号メモリに4種類の識別番号がそれぞれ記憶されているものである。
【0019】
又、図1(b)に示すように、上記照明装置4は照明器具29とスイッチ31とから構成されている。上記照明器具29は、電力線33から供給される電力によって作動する蛍光灯等である。また、上記スイッチ31は、上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19の指示によって、上記電力線33から上記照明器具29への電力の供給と遮断を行うものである。
【0020】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムを実施する場合における、子機3の設置及び識別番号テーブル28の設定について説明する。まず、複数の子機3は、図2に示すように、建物内に所定のレイアウトにて配置されている。また、図2には図示されていないが、個々の子機3によって制御される照明装置4も個々の子機3と同じ位置に配置されている。個々の子機3には、図2に示すように、「1」〜「49」の番号が付与されており、この「1」〜「49」の番号を個々の子機3の固有番号としている。
なお、1つの固有番号に対応する子機は1つしか存在しない。
【0021】
また、上記識別番号テーブル28には、既に説明したように、第1〜第4の4つの識別番号メモリが設けられており、これら第1〜第4の4つの識別番号メモリには、図3に示すような4種類の識別番号がそれぞれ記憶されている。すなわち、複数の子機3の内、固有番号が「1」〜「12」のものについては、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリに「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「101」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「104」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号、例えば、固有番号が「1」の子機3であれば、「1」という固有番号が記憶されている。
【0022】
また、上記複数の子機3の内、固有番号が「13」〜「24」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「101」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「102」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記録されている。
また、上記複数の子機3の内、固有番号が「25」〜「36」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「103」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「104」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記憶されている。
【0023】
また、上記複数の上記子機3の内、固有番号が「37」〜「48」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリには「102」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第3識別番号メモリには「103」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには個々の子機3の固有番号が記憶されている。
また、上記複数の上記子機3の内、固有番号が「49」のものは、上記識別番号テーブル28の第1識別番号メモリには「100」と記憶され、上記識別番号テーブル28の第2識別番号メモリ及び第3識別番号メモリには何も記憶されず、上記識別番号テーブル28の第4識別番号メモリには子機3の固有番号「49」が記憶されている。
尚、図3は全ての子機3の識別番号テーブル28の中身を一つの表に纏めたものである。例えば、固有番号が「1」の子機3の識別番号テーブル28には、第1識別番号メモリに「100」と記憶され、第2識別番号メモリには「101」と記憶され、第3識別番号メモリには「104」と記憶され、第4識別番号メモリには「1」が記憶されている。以下、同様に、個々の子機3の識別番号テーブル28には、自身に該当する4種類の識別番号が記憶されているものである。
【0024】
このようにして、個々の子機3の識別番号テーブル28に識別番号が記憶される。この識別番号によって、複数の子機3は幾つかのグループに分けられることになる。すなわち、上記識別番号テーブル28に「100」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロア全体及びエントランスにある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「101」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの北側半分(図2中上側)にある子機3のグループである。
【0025】
また、上記識別番号テーブル28に「102」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの東側半分(図2中右側)にある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「103」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの南側半分(図2中下側)にある子機3のグループである。また、上記識別番号テーブル28に「104」の識別番号を持つものは、図2に示すビルのフロアの西側半分(図2中左側)にある子機3のグループである。
【0026】
以上の構成を基にその作用を説明する。
最初に、本実施の形態による親機1において行われる処理について説明する。まず、照明制御プログラムについて説明する。この照明制御プログラムとは、ユーザ17の入力に基づいて、親機1が制御対象の照明器具29及びそれに対応する子機3を特定して、照明制御信号をブロードキャスト送信するまでの処理を意味する。以下、図4のフローチャートと図5及び図6を参照して説明する。
【0027】
上記照明制御プログラムが開始されると、まず、ステップS1において、ユーザ17による操作インターフェース13を介しての入力を待つ。ここでいうユーザ17による入力とは、例えば、図5に示されているような表示をみながら、対象とする子機3を選択することを意味している。具体的に説明すると、例えば、「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号41の子機に対応する照明器具29のみ点灯したくない」という内容を示す場合には次のような制御指示の入力を行う。
【0028】
まず、例えば、図5に示すような操作画面が上記操作インターフェース13のタッチパネル上に表示される。その状態で、「エントランス」と「南東側全体」のチェックボックスをタッチすることによりこれらを選択する。このとき、「エントランス」と「南東側全体」のチェックボックスだけでなく、南東側に配置されている子機3を示す「子機37」〜「子機48」のチェックボックスの全てが選択された状態になる。次に、南東部の中で固有番号「41」の子機3を除外するために、「子機41」のチェックボックスをタッチして選択から外す。これらの操作が完了すると、操作画面は図6に示す状態となっている。すなわち、「南東側全体」を示すチェックボックスが選択された状態となっており、且つ、「子機37」〜「子機48」のチェックボックスの内「子機41」以外のチェックボックスが選択されている状態となっている。
【0029】
そして、上記操作インターフェース13を介して上記ユーザ17が上記制御指示を入力すると、それがステップS1の処理により確認される。次に、ステップS2に移行する。このステップS2において、親機用マイクロコンピュータ5はその指示の内容を解釈する。具体的には、入力されている内容から、「エントランスと南東部のみの照明を点灯したいが固有番号「41」の子機のみ点灯したくない」という内容を確認し、指定すべき識別番号や除外すべき識別番号、及び、動作指示等を導き出す。
【0030】
次に、ステップS3に移行して、ステップS2において解釈した内容から論理式を生成する。例えば、「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号「41」の子機3に対応する照明器具29のみ点灯したくない」という内容に対応する論理式は次の式(I)に示すようなものとなる。
((102&103)|49)&(!41)―――(I)
この論理式(I)は、複数の子機3の内の上記制御指示による制御対象を表している。すなわち、論理式(I)には、制御対象となる子機3を指定する識別番号、複数の識別番号が含まれる場合にこれらを論理演算するための論理演算子、論理演算の優先順位を決定する記号、等が含まれている。
この論理式(I)による識別番号の指定や論理演算についての詳細は、後述する。
【0031】
そして、図4のステップS4に移行する。このステップS4においては、まず、上記論理式(I)を制御対象となる子機3を表す指定データとし、動作指示(例えば、「点灯」)を動作指示データとして、上記指定データと上記動作指示データを一つのパケットに格納する。そして、このパケットを照明制御信号として全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
尚、上記動作指示データとは、照明器具29を点灯させるための指示データ或いは消灯させる等の指示データを意味している。例えば、ユーザ17から「エントランスと南東部のみの照明器具29を点灯したいが固有番号「41」の子機3に対応する照明器具29のみ点灯したくない」と入力されたのであれば、上記動作指示データは「点灯せよ」という内容のものになる。
【0032】
上記照明制御信号には、直接実行制御信号、目標設定制御信号、目標実行制御信号の3種類があり、それぞれ動作指示データの内容が異なっている。具体的には、「任意の照明動作(点灯/消灯)を直ちに実行せよ」という動作指示データを含むものが直接実行制御信号であり、「将来行う予定の動作(目標データ)を子機用データ記憶装置の照明状態メモリに記憶せよ」という動作指示データを含むものが目標設定制御信号であり、「照明状態メモリに記憶された目標データの通りに動作せよ」という動作指示データを含むものが目標実行制御信号である。
また、前述のステップS4の処理においては、照明制御信号(例えば、直接実行制御信号)のブロードキャスト送信のみを行っているが、処理の内容によっては、ステップS4において、ある種類の照明制御信号(例えば、目標設定制御信号)をユニキャスト送信した後に他の種類の照明制御信号(例えば、目標実行制御信号)をブロードキャスト送信する場合もある。
以上が照明制御プログラムの内容である。
【0033】
次に、温度取得リクエストプログラムについて説明する。この温度取得リクエストプログラムとは、親機1が、子機3に対して、温度センサ27によって温度データを取得させ子機用データ記憶装置23に温度データと測定時刻を示す測定時刻データとを記憶させるための指示と、その子機用データ記憶装置23に記憶された温度データと測定時刻データとを親機1に送信させるための指示を行う処理を意味する。以下、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図7に示すように、温度取得リクエストプログラムが開始されると、ステップS11において、温度取得する規定時刻になったか否かの判別が行われる。ここでいう規定時刻とは、予め設定されている温度測定時刻を意味している。そして、ステップS11において、規定時刻になったと判別された場合には、ステップS12に移行する。このステップS12においては、全ての子機3が含まれるグループを示す指定データと、温度センサ27によって温度データを取得するとともに取得された温度データと測定が行なわれた時刻を示す測定時刻データとを子機用データ記憶装置23に記憶させることを命令する動作指示データを一つのパケットに収め、これを温度測定制御信号として全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
【0035】
次に、ステップS13に移行して、変数kに「1」を代入する。
尚、ここでいう変数kとは、子機3を特定するための固有番号に相当する任意の数字を意味している。
そして、ステップS14に移行する。このステップS14において、上記変数kと同一の固有番号を有する子機3に対して、自己の固有番号と記憶された温度データと測定時刻データの送信を指示する温度送信制御信号をユニキャスト送信する。上記温度送信制御信号とは、固有番号がkである子機を指定する指定データと、その子機の固有番号と温度データと測定時刻データの送信を命令する動作指示データとを組み合わせた制御信号である。また、上記温度送信制御信号は一つのパケットに収められて送信されるものである。
【0036】
次に、ステップS15に移行する。このステップS15においては、変数kを「1」だけ増加させる処理が行われる。次に、ステップS16に移行して、変数kが「49」より大きいか否かの判別が行われる。変数kが「49」より大きければ温度取得リクエスト処理は終了する。これに対して、変数kが「49」以下であればステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。これらの処理によって、全ての子機3に対して、温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信していく。
【0037】
なお、ステップS13における子機3の固有番号を意味する変数kの初期値「1」や、ステップS15における変数kの増加量「1」や、ステップS16における変数kの上限値「49」は、あくまで例であって他の値を設定する場合もある。変数kの初期値や、ステップS15における変数kの増加量を適宜設定することにより、例えば、偶数の固有番号の子機3のみを指定することや、ある範囲の固有番号を指定すること等も可能である。
以上が温度取得リクエストプログラムの内容である。
【0038】
なお、図7のフローチャートにおけるステップS14では、既に説明したように、ユニキャスト送信を行うことにより、全ての子機3に対して温度の送信指示を行っているが、これは次のような理由による。
例えば、全ての子機3を指定する指定データ「100」を含む温度送信制御信号をブロードキャスト送信によって全ての子機3に送信する場合を想定する。この場合、上記親機1からブロードキャスト送信された温度送信制御信号が親機1と全ての子機3との間のネットワーク経路に同時に流れることになり、ネットワークに大きな負荷を掛けてしまう。その上、上記温度送信制御信号を受け受信した全ての子機3が温度データ等を一斉に親機1に送信するため、ネットワーク上で子機3が送信した信号同士の衝突が起こり、それによって、子機3から親機1への温度データ等の送信に不具合が生じてしまうことが予想される。
本実施の形態の場合には、そのような事情に鑑みて、前述したようなユニキャスト送信を採用しているものであり、その場合、温度送信制御信号は親機1と特定の子機3との間にしか流れないので、ネットワークへの負荷を軽くすることができる。また、温度送信制御信号を受信した個々の子機3が順次温度データを送信することになるため、子機3から送信される温度データ等を含んだ信号の衝突を防止し、子機3から親機1への信号の伝達を確実なものとすることができる。
【0039】
次に、温度表示プログラムについて説明する。ここでいう温度表示プログラムとは、親機1が子機3から送信されてくる温度測定データを表示するための処理を意味している。以下、図8のフローチャートを参照して説明する。図8に示すように、温度表示プログラムが開始されると、ステップS21において、親機1が子機3から送信された信号を受信したか否かの判別が行われる。子機3からの信号を受信したと判別された場合には、ステップS22に移行する。このステップS22においては、子機3からの信号の入力を行う。
なお、上記子機3からの信号を受信していないのであれば、ステップS21を繰り返し、子機3からの信号が受信されるまで待機する。
【0040】
次に、ステップS23に移行し、上記受信した信号が温度通知信号であるか否かの判定が行われる。この温度通知信号とは、上記親機1の温度送信制御信号によって上記子機3から送信される信号であり、送信元の子機3の固有番号、測定時刻、その測定時刻に測定された温度データが含まれるものである。上記受信した信号が温度通知信号であれば、ステップS24に移行する。このステップS24では、上記温度通知信号から送信元番号kを抽出する。次に、ステップS25に移行し、上記親機1は送信元番号kを固有番号とする子機3から、上記温度通知信号を受信したと解釈する。
【0041】
次に、ステップS26に移行し、上記操作インターフェース13に送信元番号k、受信された温度データの測定時刻、受信された温度データ等を表示する。
なお、ステップS26による表示が終了した場合や、上記ステップS23で受信した信号が温度通知信号ではないと判断された場合は、ステップS21に戻り、子機3からの信号の受信があるまで待機する。
以上が温度表示プログラムの内容である。
【0042】
次に、本実施の形態における複数子機同時制御装置に設けられた子機3における処理、すなわち、子機プログラムについて、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
図9に示すように、まず、子機プログラムが開始されると、ステップ30において、親機1からの制御信号を受信するまで待機する。そして、親機1からの制御信号を受信した場合には、ステップS31において、上記親機1から送信された制御信号を入力する。
なお、ここでいう制御信号とは、図4及び図7を参照して既に説明した各種の制御信号を意味している。
次に、ステップS32に移行する。このステップS32においては、受信した制御信号が照明制御信号(図4にて説明した照明制御信号)であるか否かを判別する。ステップS32において、受信した制御信号が照明制御信号であると判別された場合には、ステップS33に移行する。
【0044】
このステップS33においては、受信した照明制御信号から指定データ、すなわち、子機3を特定するためのデータを抽出する。次に、ステップS34に移行する。このステップS34では、子機用データ記憶装置23内の識別番号テーブル28を参照する。次に、ステップS35に移行する。このステップS35においては、受信した照明制御信号の指定データと上記識別番号テーブル28の内容を比較する。
例えば、指定データが前述した論理式(I)である場合、上記識別番号テーブル28に、識別番号「102」と「103」の両方又は識別番号「49」があり、且つ、識別番号「41」がないことを確認することによって、上記ステップS35における指定データと上記識別番号テーブル28との比較が行われる。
【0045】
次に、ステップS36に移行する。ここでは、前述したステップS35において、指定データと上記識別番号テーブル28を比較した結果について判断され、それに基づいて自己が照明制御信号による制御対象であるか否かを判別する。例えば、指定データが前述した論理式(I)である場合、固有番号が「37」である子機3では、図3に示すように、第2識別番号メモリに識別番号「102」が格納され、第3識別番号メモリに識別番号「103」が格納されており、且つ、識別番号「41」は何れの識別番号メモリにも格納されていない。そのため、この固有番号が「37」である子機3は、制御対象であると判断される。
【0046】
そして、ステップS36において自己が照明制御信号による制御対象であると判別された場合には、ステップS37に移行する。このステップS37においては、照明制御信号が目標設定制御信号であるかどうかを判別する。照明制御信号が目標設定制御信号であれば、ステップS38に移行する。このステップS38では、目標設定制御信号内の目標データを子機用データ記憶装置23の「照明状態メモリ」に記憶する。その後、上記ステップ30へと戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0047】
上記ステップS37において、照明制御信号が目標設定制御信号ではないと判別された場合は、ステップS39へ移行する。このステップS39では、照明制御信号が目標実行制御信号であるかどうかを判別する。照明制御信号が目標実行制御信号であれば、ステップS40へ移行する。このステップS40では、照明器具29を上記子機用データ記憶装置23の「照明状態メモリ」に記憶された目標データに示す状態に制御する。その後、上記ステップ30へと戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0048】
上記ステップS39において、照明制御信号が目標実行制御信号でないと判別された場合は、ステップS41へと移行する。このステップS41では、照明制御信号が直接実行制御信号であると判別し、その指示通りに上記照明器具29を制御する。すなわち、受信した照明制御信号に含まれる動作指示データに指示された通りに被制御機器4のスイッチ31を操作して照明器具29の「点灯」又は「消灯」を行う。そして、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0049】
上記ステップS36において、自己が照明制御信号による制御対象ではないと判別された場合には、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
また、上記ステップS41における上記被制御機器4の操作としては、上記スイッチ31のオン/オフを行わせるもののほか、上記照明器具29を所定の照度に制御するものなども考えられる。
なお、ステップS36〜ステップS39においては、目標設定制御信号、目標実行制御信号、直接実行制御信号の順で判別しているが、判別の順序についてはそれに限定されるものではない。
【0050】
また、ステップ32において、受信した制御信号が照明制御信号ではないと判別された場合には温度センサに関する制御信号(図7にて説明した制御信号)であると判別して、ステップS42へと移行する。このステップS42では、制御信号から指定データを抽出し、次のステップS43へと移行する。ステップ43では、では上記識別番号テーブル28を参照する。そして、ステップS44に移行し、前述したステップS35の場合と同様に、上記指定データと上記識別番号テーブル28の内容を比較する。そして、ステップS45に移行し、前述したステップS36の場合と同様に、自己が制御対象であるかどうか判別する。
【0051】
上記ステップS45において自己が制御対象ではないと判別した場合は、上記ステップ30へ戻り上記親機1からの制御信号の受信を待つ。上記ステップS45において自己が制御対象であると判別された場合には、ステップS46に移行する。ステップS46では、受信した制御信号が温度測定制御信号であるかどうか判別する。
【0052】
受信した制御信号が温度測定制御信号であればステップS47へと移行する。ステップS47では、温度センサ27によって温度データを取得し、それと同時に上記子機用マイクロコンピュータ19に内蔵された時計から上記温度データが計測された時刻を測定時刻データとして取得する。続いて、ステップS48に移行し、上記温度データと上記測定時刻データとを関連付けて子機用データ記憶装置23に記憶する。その後、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
【0053】
上記ステップS46において受信した制御信号が温度測定制御信号ではないと判別された場合には、この受信した制御信号が温度送信制御信号であると判別し、ステップS49へと移行する。このステップS49では、子機3の固有番号と既に上記子機用データ記憶装置23に記憶されている温度データと測定時刻データとを関連付けて、温度通知信号として上記親機1に送信する。
その後、ステップS30に戻り、親機1からの制御信号の受信があるまで待機する。
以上が子機プログラムの内容である。
【0054】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムの作用に関して、具体例を挙げながら詳しく説明する。
まず、図2に示すように配置された子機3の全てに接続された照明装置4の照明器具29を、消灯状態から点灯状態に移行する場合について説明する。 この場合、ユーザ17は親機1の操作インターフェース13を操作して全ての子機3に対応する照明器具29を点灯させる指示を行う。そして、図4に示されたフローチャートのステップS1において、その入力された指示が取り込まれる。そして、図4に示されたフローチャートのステップS2とステップS3によって、上記取り込まれた指示に基づいて、例えば、図10に示すような「指定データ」と「動作指示データ」が作成される。次に、ステップS4において、上記「指定データ」と「動作指示データ」が組み合わされた照明制御信号(直接実行制御信号)が全ての子機3にブロードキャスト送信される。
【0055】
上記照明制御信号の指定データは、図10に示すように、「100」である。一方、図3に示すように、全ての子機3は識別番号テーブル28の第1識別番号メモリに「100」が記憶されているので、全ての子機3が上記照明制御信号の制御対象となる。このような判別は、図9のフローチャートのステップS33〜S36の処理によって行われる。そして、図9のフローチャートのステップS41おいて、上記動作指示データに表された「点灯」の指示により、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯されることになる。
【0056】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯した状態から、南側にある子機3に接続された照明装置4の照明器具29のみを消灯させる場合について説明する。この場合は、図11に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3にブロードキャスト送信する。
【0057】
上記照明制御信号の指定データは「103」である。図3によれば、識別番号テーブルの第2識別番号メモリ又は第3識別番号メモリに「103」が記憶されているのは、固有番号が「25」〜「36」の子機3と、固有番号が「37」〜「48」の子機3である。図2に示された子機3の配置によると、固有番号が「25」〜「36」の子機3は南西側(図2中左下側)に位置し、固有番号が「37」〜「48」の子機3は南東側(図2中右下側)に位置している。よって、これらの子機3に接続された照明装置4の照明器具29が上記動作指示データに示された「消灯」の指示により消灯されることになる。
【0058】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、南側の子機3の全てとエントランスの子機3に接続された照明装置4の照明器具29を同時に点灯させたい場合について説明する。この場合は、図12に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3にブロードキャスト送信する。
【0059】
上記照明制御信号の指定データは「103、49」である。前述のように、識別番号テーブル28の第2識別番号メモリ又は第3識別番号メモリに「103」が記録されているのは、南側(図2中下側)に配置された固有番号「25」〜「36」の子機3と固有番号「37」〜「48」の子機3である。また、固有番号「49」が記録されているのは、エントランスに配置された固有番号「49」の子機3である。上記照明制御信号の制御対象となるのはこれらの子機3である。よって、これらの子機3に接続された照明装置4の照明器具29が上記動作指示データに示された「点灯」の指示により点灯されることになる。
【0060】
ここで、前述したような、南側及びエントランスの子機3に接続された照明装置4の照明器具29について点灯する制御を行う別の制御信号について説明する。南側及びエントランスに配置された子機3には、図2及び図3に示すように、「25」〜「49」の固有番号が割り当てられている。そのため、制御信号として、図13に示すような照明制御信号(直接実行制御信号)を用いることも考えられる。しかし、この場合には、指定データが制御対象となる全ての子機3の固有番号を指定するものであり、制御信号が長くなってしまう。これに対して、図12に示されている照明制御信号の指定データを使用すれば、短い制御信号によって同様の制御を行うことができるものである。
【0061】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、エントランスと南東部(図2中右下側)に配置された子機3のうち、固有番号「41」以外の子機3に接続された照明装置4の照明器具29を全て点灯させる場合について説明する。この場合は、図14に示されているような照明制御信号(直接実行制御信号)が親機1から全ての子機3にブロードキャスト送信される。
【0062】
図14に示される「指定データ」には、前記式(I)で示した論理式、すなわち、「((102&103)|49)&(!41)」が記憶されていて、この論理式には論理演算子を表す記号が含まれている。記号「&」は論理演算子「and」を表し、記号「|」は論理演算子「or」を表し、記号「!」は論理演算子「not」を表すものである。すなわち、記号「&」はその両側にある番号を識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表し、記号「|」はその両側にある番号のどちらかを上記識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表し、記号「!」はその右側にある番号以外の番号を識別番号テーブル28に持つ子機3が対象であることを表すものである。また、上記指定データ中の括弧は、論理演算の優先順位を表し、括弧内の論理演算が優先して行われることとなる。
【0063】
上記論理式「((102&103)|49)&(!41)」は、上記論理演算子及び括弧の意味に従って、上記子機3の子機用マイクロコンピュータ19によって解釈される。まず、括弧内の演算が優先されるため、「(102&103)」の演算が行われる。これは、上記識別番号テーブル28内に「102」と「103」の両方が存在する子機3が対象であることを表わしている。次に「((102&103)|49)」の演算が行われる。「102と103の両方」と「49」との何れかが識別番号テーブル28内に存在する子機3が対象であることを表わす。
【0064】
次に「(!41)」の演算が行われる。これは、上記識別番号テーブル28に「41」がないものが対象であることを表わす。最後に、前述した「((102&103)|49)」の演算結果と「(!41)」の演算結果とを論理演算子「&」によって演算する。その結果、「((102&103)|49)&(!41)」は、上記識別番号テーブル28に「41」がない子機3のうち、「102」と「103」の両方が上記識別番号テーブル28にある子機3か、「49」が上記識別番号テーブル28にある子機3が制御対象となることが導き出される。このような論理式の解釈も図9のフローチャートにおけるステップS33〜S36の処理によって行われる。
このようにして、図14に示されている照明制御信号(直接実行制御信号)によって、エントランスと南東部(図2中右下側)に配置された子機3のうち、固有番号「41」以外の子機3に接続された照明装置4の照明器具29が点灯されることになる。
【0065】
次に、全ての子機3に接続された照明装置4の照明器具29が消灯した状態から、例えば、偶数の固有番号の子機3のみに接続された照明装置4の照明器具29を全て同時に点灯させる制御を行う場合について説明する。この場合、親機1は、まず、図15(a)に示すような照明制御信号(目標設定制御信号)を図15(a)中上から順番にユニキャスト送信していき、その後、図15(b)に示す照明制御信号(目標実行制御信号)をブロードキャスト送信する。つまり、「2」〜「48」の1つの偶数の固有番号(上記子機3の識別番号テーブル28内の第4識別番号メモリに記憶されている)を指定する指定データと照明状態メモリに「点灯」状態を記憶させる動作指示データとからなる照明制御信号(目標設定制御信号)を、指定する固有番号が小さい順に順次ユニキャスト送信し、最後に識別番号「100」を指定する指定データと照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する指示を示す動作指示データとからなる照明制御信号(目標実行制御信号)を全ての子機3に対してブロードキャスト送信する。
【0066】
最初に「2」〜「48」の偶数の固有番号を有する子機3にユニキャスト送信される照明制御信号は、その上記動作指示データが子機3に対して「点灯」という動作を示す目標データを記憶させる指示を示すものであり、目標設定制御信号ということになる。そのため、このような照明制御信号を受信した子機3は、図9のフローチャートのステップS38において、自身の子機用データ記憶装置23内に確保された「照明状態メモリ」に、その目標データを記憶する。
【0067】
そして、偶数の固有番号を有する子機3の全てが「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データを記憶された状態になった後、指定データが「100」であり動作指示データが「照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する」指示を示すものである照明制御信号(目標実行制御信号)が全ての子機3に対してブロードキャスト送信される。この照明制御信号は、動作指示データが「照明器具29を照明状態メモリに記憶された状態に操作する」ものであるから目標実行制御信号ということになる。このような照明制御信号を受信した子機3は、図9のフローチャートのステップS40において、接続された照明器具29を「照明状態メモリ」に記憶された状態へと操作する。よって、「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データが記憶された子機3、すなわち、偶数の固有番号を有する子機3に接続された上記照明装置4の照明器具29が全て同時に点灯し、それ以外の子機に接続された照明装置4の照明器具29は、「照明状態メモリ」に「点灯」を示す目標データが記憶されていないので、点灯することはない。
【0068】
なお、図3に示すような識別番号を用いても、固有番号が偶数の子機3を全て指定する簡潔な指定データを生成することはできない。図3の識別番号は、子機3が図2に示されたビルのフロアにおいて、何れの方角に配置されているかを示すものであり、偶数の固有番号の子機3を示すものではないからである。そのため、「点灯」を指示する動作指示データを含んだ照明制御信号(直接実行制御信号)のブロードキャスト送信だけで固有番号が偶数である子機3の同時制御を行おうとする場合、簡潔な指定データを用いて対象となる子機3を同時に点灯させることはできないものである。すなわち、偶数の固有番号の全てを指定データに含んだ照明制御信号(直接実行制御信号)をブロードキャスト送信することになり、その照明制御信号は非常に長くなってしまい、本実施の形態のような低速の無線通信を使用する場合は、子機3が制御信号を受信して制御されるまでの時間が長くなってしまうことが考えられる。また、このような制御信号を用いると、子機3の何れかに通信の遅れが生じる可能性が高くなり、全ての子機3を同時に制御することができないという問題が生じてしまう。
【0069】
また、固有番号「2」から「48」までの偶数の固有番号を有する個々の子機3を制御対象とする照明制御信号(直接実行制御信号)を順次ユニキャスト送信したとしても、偶数の固有番号を有する個々の子機3に接続された照明装置4の照明器具29がその順番に点灯していくことになり、偶数の固有番号を有する子機3の全てを同時に点灯させることはできない。
そのため、偶数の固有番号を有する個々の子機3の全てに、まず、目標設定制御信号をユニキャスト送信し目標データを順次記憶させ、その後、全ての子機3に目標制御信号をブロードキャスト送信することで偶数の固有番号を有する個々の子機3の全てに照明器具29の点灯を同時に行わせるという方法を採用しているものである。
【0070】
このような方法を用いる以外にも、子機3の識別番号テーブル28に記憶された識別番号の設定次第では、照明制御信号(直接実行制御信号)のブロードキャスト送信のみによって偶数の固有番号を設定された子機3の全てに接続された照明器具29を同時に点灯させる制御を行うことができる場合がある。例えば、偶数の固有番号を設定された子機3の識別番号テーブル28には、偶数の固有番号を設定された子機3の全てを含むグループをあらわす識別番号(例えば、「200」)を記憶させておくことが考えられる。そして、識別番号「200」を指定した指定データと「点灯」の動作を指示する動作指示データとからなる照明制御信号(直接実行制御信号)を全ての子機3に対してブロードキャスト送信することにより、識別番号「200」を識別番号テーブル28に記憶されている子機3、すなわち、偶数の固有番号を持つ子機3の全ての照明器具29を同時に点灯させることができる。
【0071】
次に、本実施の形態による複数子機同時制御システムの全ての子機3を使用して、所定の時刻に温度を測定し、その結果を親機1に送信する制御を行う場合について説明する。この場合、親機1は図7のフローチャートによる動作を行う。まず、温度測定を行う所定の時刻になると、まず、図16(a)に示すような「指定データ」と「動作指示データ」とからなる温度測定制御信号が、親機1から全ての子機3にブロードキャスト送信される。上記「指定データ」には全ての子機3を対象とすることを意味する「100」が記憶されている。又、上記「動作指示データ」には、温度センサ27から測定データを取り込んで子機用データ記憶装置23にその測定データと測定時刻を書き込むことが記憶されている。これが、図7のフローチャートにおけるステップS12において行われる動作である。
【0072】
そして、上記温度測定制御信号により、全ての子機3が上記温度センサ27によって測定を行い、その測定結果である「温度データ」と測定が行われた時刻を示す「測定時刻データ」とを上記子機用データ記憶装置23に記憶する動作を行う。これが、図9のフローチャートにおけるステップS47、ステップS48において行われる動作である。
【0073】
次に、親機1は、固有番号が「1」から「49」までの子機3を1つずつ制御対象とした「温度送信制御信号」を順次ユニキャスト送信し、それによって固有番号が「1」から「49」までの子機3についての「温度データ」と「測定時刻データ」を得る。以下、詳細に説明する。
まず、親機1は、図16(b)に示されるような「指定データ」と「動作指示データ」からなる温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信していく。この温度送信制御信号は、全ての子機3を個別に指定した「指定データ」と、自身の固有番号と子機用データ記憶装置23に記憶された「温度データ」と「測定時刻データ」とを親機1に送信する旨の「動作指示データ」とからなるものである。これが、図7のフローチャートにおけるステップS13からステップS16において行われる動作である。
【0074】
上記温度送信制御信号により、固有番号が「1」から「49」までの子機3、すなわち、全ての子機3が、順次、自己の固有番号と子機用データ記憶装置23に記録された「温度データ」と「測定時刻データ」とを関連付けて、温度通知信号として親機1に送信していく。これが、図9のフローチャートにおけるステップS49において行われる処理である。これにより、親機1は全ての子機3についての「温度データ」と測定された時刻を示す「測定時刻データ」を得ることになる。
【0075】
また、親機1はそれぞれの子機3において温度測定が行われた時刻の差を知ることができる。本実施の形態においては、温度測定制御信号をブロードキャスト送信しているので、基本的に、温度測定時刻に違いが生じることはないが、何らかの理由、例えば、通信の遅れなどにより、温度測定時刻に違いが生じることが予想される。この場合には、上記子機3間で温度を測定したタイミングが異なっても、個々の子機3による温度測定の時刻を確認できるので、親機1は親機用マイクロコンピュータ5によってデータの補正を行うことが可能となる。以下、図17を参照して、このデータの補正処理について説明する。
【0076】
例えば、個々の子機3側において、予め設定された時間毎に複数回の温度測定を行うような場合を想定する。この場合、親機1は、子機3による複数回、例えば、3回の温度測定により、3つの異なる測定時刻における、3つの温度データを得るとする。これらの3つの温度データを、測定時刻が古い順に、温度データ1、温度データ2′、温度データ3とする。また、温度データ1は測定時刻1に測定された温度を示すものであり、温度データ2′は本来の測定時刻2に対して若干遅れた測定時刻2′に測定された温度を示すものであり、温度データ3は測定時刻3に測定されたに測定された温度を示すものである。
【0077】
このような場合、上記親機1は温度データの補正を行い、本来の測定時刻2における温度データ2を推定する処理を行う。すなわち、親機1は、温度データ2′と温度データ1との差、及び、測定時刻2′と測定時刻1との差から、測定時刻1〜測定時刻2′間の温度の単位時間当たりの変化(dT)を求める。図17に示す例では、温度の単位時間当たりの変化(dT)は、測定時刻1〜測定時刻2′間において、正比例の関係になっていて、所定の角度で傾斜した直線として示されている。 そして、この温度の単位時間当たりの変化(dT)を用いて、本来の測定時刻2における温度データ2を推定する。
【0078】
以下、具体的に説明する。図17に示すように、温度データ2′と温度データ1の差がaであり、測定時刻2′と測定時刻1の差がbであるので、測定時刻1〜測定時刻2′間の温度の単位時間当たりの変化(dT)は次の式(II)に示すようなものとなる。
dT=a÷b―――(II)
一方、実際に温度データ2′が測定された測定時刻2′と本来の温度データ2の測定時刻2との差はb′である。よって、実際に測定された温度データ2′と本来予定されていた測定時刻2における温度データ2との差(a′)は次の式(III)に示すようなものとなる。
a′=dT×b′―――(III)
そして、温度データ2′から上記差(a′)を減算することにより、本来予定されていた測定時刻2における温度データ2を推定することができる。
【0079】
このようにして、本来予定していた測定時刻2における温度データ2を算出することにより測定のタイミングがずれた温度データの補正が行われる。
なお、前述の温度データ1〜温度データ3から温度の単位時間当たりの変化(dT)を求めることもでき、この場合は補正の精度をより高いものとすることができる。また、前述の例では、実際に測定された温度データから、温度の直線的な変化を求めることで補正を行ったが(直線補間)、その他の補正手段を用いる場合も考えられる。
【0080】
以上本実施の形態による複数子機同時制御装置によると以下のような効果を奏する。
まず、任意の複数の子機3を同時に制御しようとする場合の制御信号を短くすることができる。これは、子機3を特定するための識別番号として、子機3固有の識別番号だけではなく、任意の複数の子機3が含まれるグループを特定する識別番号も設定されているからである。そのため、任意の複数の子機3を同時に制御したい場合には、そのグループを特定する識別データを使用することにより、親機1から送信される制御信号を短くすることができるものである。
このように、制御信号を短くすることができるので、親機用無線通信モデム7や子機用無線通信モデム21が低速なものであっても、通信時間や子機3が動作を開始するまでの時間を短縮させることができる。
また、親機1と子機3との間の通信の信頼性が高くなり確実な動作を担保することができる。
【0081】
また、制御信号の「指定データ」に複数の識別番号を併用することもできるので、短い制御信号で複雑な組み合わせの複数の子機3の同時制御が可能となる。
また、制御信号の「指定データ」に書き込まれる論理式には、識別番号同士の論理演算を行う論理演算子や、論理演算の優先順位を規定する括弧記号等を含めることもできるので、さらに複雑な組み合わせの複数の子機3の同時制御を短い制御信号によって行うことができる。
【0082】
また、照明制御信号を例に挙げると、直接実行制御信号だけでなく、目標設定制御信号、目標実行制御信号の3種類がある。よって、まず、上記親機1から、制御対象となる個々の上記子機3を指定した上記照明器具29の点灯/消灯の指示を「照明状態メモリ」に記憶させる目標設定制御信号を順次ユニキャスト送信し、その後、全ての子機3の識別番号テーブル28に記録されている識別番号を指定し「照明状態メモリ」の内容通りの制御を行わせる目標実行制御信号をブロードキャスト送信すれば、全ての子機3について同時に「照明状態メモリ」に記録された通りの動作を行わせることができる。これは、上記識別番号テーブル28に設定された識別番号やその論理式による論理演算によっても指定できない組み合わせの子機3が制御対象となる場合に有効であり、低速な通信手段を用いていても、ネットワークに過大な負荷をかけることなく、複数の子機3を同時に動作させることができるものである。
なお、これは照明制御信号に限られたものではなく、その他の様々な制御信号に関しても同様にいえることである。
【0083】
また、制御信号には照明を制御するもののほか、子機3に備えられた温度センサ27による温度測定を指示するものもある。所定の時刻に全ての子機3によって測定された温度データを得るためには、まず、所定の時刻に親機1はブロードキャスト送信によって温度測定制御信号を送信し、全ての子機3による温度の測定とその記憶を行わせる。その後、全ての子機3に対して温度送信制御信号を順次ユニキャスト送信する。それによって、温度送信制御信号を受信した子機3は、順次、上記親機1に対して所定の時刻に測定された温度データを含む温度通知信号を送信する。このように構成することにより、ネットワークへの負荷を軽減させ、且つ、親機1と子機3との間の通信の信頼性を高めることができる。また、全ての子機3において所定の時刻に測定された温度データを確実に得ることができる。
【0084】
また、親機1は「温度測定データ」の他にその測定時刻を表わす「測定時刻データ」を得ることができるので、仮に、複数の記子機3中に測定のタイミングがずれたものがあっても、親機1が収集したこれらのデータを用いてデータの補正処理を行うことができ、より正確な測定結果を得ることができる。
【0085】
なお、本願発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、親機1や子機3の数、子機3の識別番号テーブル28に設けられた識別番号メモリの数、識別番号テーブル28に設定された識別番号の組み合わせ等は、この限りではない。
また、識別番号がどのような子機3のグループを示すかについてもこの限りではなく、前記一実施の形態で挙げた以外の子機3のグループを同時に制御することも可能である。
また、被制御機器としては、照明装置4に限られず、空調装置、冷蔵庫、冷凍機など、様々な機器が考えられる。
また、親機1から送信される「動作指示データ」としても、スイッチのオン/オフだけではなく、例えば、照明装置の制御であれば照度の調整や、空調・冷凍・冷蔵装置であれば温度の設定など、様々なパラメータを制御する動作を示すデータが考えられる。
【0086】
また、前記一実施の形態の場合には、子機3に温度センサ27が備えられている構成を例に挙げて説明したが、その他にも照度センサ、電力センサなど様々な測定装置を備えた子機3の構成が考えられる。
また、前記一実施の形態においては、親機1と子機3との通信手段として無線通信を例に挙げて説明したが有線であってもよい。
また、前記一実施の形態においては、図7に示す温度取得リクエスト処理において、ステップS14〜ステップS16に示すようなユニキャスト送信を採用しているが、温度データを取得したい子機3の組み合わせによっては、これをブロードキャスト送信によって行うようにしてもよい。
その他、図示した構成はあくまで例である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、複数の制御機器のそれぞれに設けられた複数の子機とこれら複数の子機の内の任意の子機を同時に制御する親機とからなる複数子機同時制御システムに係り、特に、上記子機を特定する識別データとして、子機固有のデータの他に、子機が所属するグループを特定するためのデータを設けることにより、任意の複数の子機を同時に制御する場合の制御信号を短くすることを可能にし、それによって、通信速度の遅い通信手段によって多数の子機を同時に制御する場合であっても遅延なく動作するように工夫したものに関し、例えば、複数の照明装置の制御に好適である。
【符号の説明】
【0088】
1 親機
3 子機
4 照明装置(被制御機器)
27 温度センサ
28 識別番号テーブル
29 照明器具
31 スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号を送信する1つ以上の親機と、
上記制御信号を受信する複数の子機と、
上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、
上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、
上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、
上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、
上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うことを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれていることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記制御信号は1つのパケットに収められていることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、
上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、
上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御することを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記子機にはセンサが接続されており、
上記制御信号には上記センサにより測定された測定値を子機に記録するように指示する測定制御信号や、該記録された測定値を上記親機に送信するように指示する送信制御信号があることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項6】
請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記子機に上記測定値が記録される際、上記測定値を取得した時刻も上記測定値とともに記録され、
上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時刻もともに送信されることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項1】
制御信号を送信する1つ以上の親機と、
上記制御信号を受信する複数の子機と、
上記子機に接続され上記子機が受信した上記制御信号に基づいて制御される被制御機器と、を具備し、
上記子機のそれぞれには該子機のみを特定するための識別データ及び該子機が所属する任意のグループを特定するための識別データが記録されており、
上記制御信号には上記識別データを使用して構成され制御対象となる上記子機を指定する指定データが含まれており、
上記制御信号の全部又は一部は上記複数の子機の全てに対してブロードキャスト送信されるものであり、
上記制御信号を受信した上記子機は上記制御信号に含まれる指定データと自己に記録された識別データとを比較・演算することにより自己が上記制御信号による制御対象であるか否かを判別し、自己が制御対象であると判別した場合には上記制御信号に基づいて上記被制御機器の制御を行うことを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記指定データは論理式であり、該論理式には論理演算を行うための演算子が含まれていることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記制御信号は1つのパケットに収められていることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記制御信号には上記被制御機器を制御するための動作指示データが含まれていて、
上記動作指示データには動作を目標データとして一旦子機に記録させるものがあり、
上記目標データを記録した上記子機は自身が対象となる動作指示データが含まれブロードキャスト送信された新たな制御信号を受信した場合に上記目標データに基づいて上記被制御機器を制御することを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記子機にはセンサが接続されており、
上記制御信号には上記センサにより測定された測定値を子機に記録するように指示する測定制御信号や、該記録された測定値を上記親機に送信するように指示する送信制御信号があることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【請求項6】
請求項5記載の複数子機同時制御システムにおいて、
上記子機に上記測定値が記録される際、上記測定値を取得した時刻も上記測定値とともに記録され、
上記測定値が上記親機に送信される際、上記測定値を取得した時刻もともに送信されることを特徴とする複数子機同時制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−244377(P2012−244377A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112056(P2011−112056)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(597010628)協立電機株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(597010628)協立電機株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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