説明

複数帯域用アンテナ

本発明は、単一のアンテナエレメント10を用いて、複数の周波数帯で使用できるとともに小型化に好適な複数帯域用アンテナを提供する。アンテナエレメント10の一端Aが給電点12に電気的接続され、アンテナエレメント10の中間の点B,Cおよび他端DをそれぞれスイッチSWb、SWc、SWdを介して接地導体14に電気的接続する。アンテナエレメント10の一端Aから中間の点B,CがスイッチSWb、SWcを介して接地導体14に接続されるまでの電気長、および一端Aから他端DがスイッチSWdを介して接地導体14に接続されるまでの電気長を、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定する。スイッチSWb、SWc、SWdのいずれが1つを閉じて、所望の周波数帯のいずれか1つを選択して共振させ得る。もって、単一のアンテナエレメント10を複数の周波数帯でアンテナとして作用させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、単一のアンテナエレメントによって、複数の周波数帯で使用できるようにした複数帯域用アンテナに関するものである。
【背景技術】
最近の移動体通信は急速に発展し、そのなかでも携帯電話は目覚ましく普及するとともにその小型化および軽量化が著しく図られた。そして、日本ではPDC800MHz帯とPDC1.5GHz帯、欧州ではGSM900MHz帯とGSM1.8GHz帯、北米ではAMPS800MHz帯とPCS1.9GHz帯と、それぞれの地域で2つの周波数帯が用いられている。また、1.5GHzのGPSや2.4GHz帯のブルートゥース(Bluetooth)や2GHz帯のIMT2000などの通信システムが、移動体通信ならびにデータ伝送用に実用化されている。そこで、単一のアンテナで、上述の複数の周波数帯において使用できれば、アンテナの小型化および軽量化の点で好適である。
さらに、北米において、携帯電話方式を欧州のGSMを採用して、北米と欧州で同一の携帯電話が使用できるようにする計画が進行しつつある。しかし、欧州のGSMは、880〜960MHz帯と1710〜1880MHz帯を使用するのに対して、北米のGSMは、824〜894MHz帯と1850〜1990MHzを使用する計画である。そこで、欧州と北米の双方の周波数帯でともに使用できるアンテナとしては、824〜960MHz帯と136MHzの広い周波数帯と、1710〜1990MHz帯と280MHzの広い周波数帯を共に備えることが要望される。
しかるに、従来の単一のアンテナにおいて、上述のごとき複数の周波数帯で使用できるものは存在していない。また、従来のアンテナにおいて、北米と欧州の双方のGSMの周波数帯で使用できる広い周波数帯を備えたものも存在していない。
ところで、携帯電話用として小型化および軽量化されたアンテナとして、特開2001−284935号公報や特開2002−43826号公報で提案されたものがある。これらの技術の原理を簡単に説明する。図26は、従来のアンテナの基本的構成を示す図であり、アンテナエレメント10の一端を給電点12に接続し、他端を接地導体14に電気的に接続し、アンテナエレメント10を給電点12および接地導体14に接続するための立ち上がりおよび立ち下がり以外の大部分を接地導体14に略平行に配設し、しかもアンテナエレメント10全体の電気長をアンテナを使用する周波数帯の1/2波長(λ/2)または1波長(λ)に設定するものである。さらに、アンテナエレメント10をコイル状やメアンダ状や適宜に折り曲げられたループ状として小型化が図られている。これらの技術は、1つの周波数帯でのみ使用できるものである。なお、図26において、点線は電流分布を示す。
また、図27は別の従来技術であり、図26の従来技術において、アンテナエレメント10の中央にコンデンサ16を直列に介装して、アンテナエレメントとコンデンサ16による電気長をアンテナを使用する周波数帯の1/2波長に設定したものである。図27において、点線で示す電流分布は、アンテナエレメント10に同相の電流が生じていることを示し、特にアンテナの指向特性を問題とする場合に有効である。
さらに、図28はさらに別の従来技術であり、図27の従来技術において、コンデンサ16をアンテナエレメント10に介装する位置を中央でなく給電点12側に寄せて設けたものである。また、図29は他の従来技術であり、アンテナエレメント10の中間にて直流的に遮断された2本の平行導体18を直列に介装したことにある。この2本の平行導体18は、互いに誘導結合されて、全体として単一のアンテナエレメントとして作用する。
そして、図30はさらに他の従来技術であり、アンテナエレメント10の一端と給電点12の間に整合回路20を介装し、アンテナエレメント10の他端を接地導体14に電気的に接続する。この図30に示す従来技術では、アンテナエレメント10の長さは、アンテナとして使用する周波数帯の1/2波長でなくても良く、アンテナエレメント10と整合回路20を含んだ電気長が1/2波長となるように、アンテナエレメント10と整合回路20を適宜に設定すれば良い。
しかるに、上述の従来技術は、いずれも単一の周波数帯で使用するものであり、複数の周波数帯で使用できるものでない。そこで、2つの周波数帯が用いられる携帯電話にあっては、各周波数帯に応じた2つのアンテナが必要となる。また、GPSを含む複数の通信システムが搭載される移動体通信機器にあっても、複数のアンテナが必要である。そこで、上述のごとき従来のアンテナを用いたのでは、移動体通信機器を小型化および軽量化することが困難である。
そこで、本発明は、上述のごとき従来技術の事情に鑑みてなされたもので、単一のアンテナエレメント10によって複数の周波数帯で使用でき、小型化および軽量化に好適な複数帯域用アンテナを提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明の複数帯域用アンテナは、アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれスイッチを介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端が前記スイッチを介して前記接地導体に接続されるまでの電気長および前記給電点から前記中間の点が前記スイッチを介して前記接地導体に接続されるまでの電気長を、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定して構成されている。
そこで、単一のアンテナエレメントを用いて、その中間の点および他端と接地導体の間に介装したスイッチにより、所望の数の周波数帯を設定できる。もって、複数の周波数帯を用いる移動体通信用の小型のアンテナとして好適である。
そして、アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれコンデンサとコイルの直列共振回路を介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数と前記他端に接続された直列共振回路の共振周波数を一致させ、また前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数と前記中間の点に接続された前記直列共振回路の共振周波数を一致させ、前記電気長によるそれぞれの共振周波数をそれぞれ異なる所望の周波数帯に設定して構成しても良い。
また、アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれフィルターを介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数が前記他端に接続された前記フィルターを通過するようにし、前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数が前記中間の点に接続された前記フィルターを通過するようにし、しかも前記フィルターは接続位置の前記電気長による共振周波数以外は通過を阻止するようにし、前記電気長によるそれぞれの共振周波数をそれぞれ異なる所望の周波数帯に設定して構成することもできる。
さらに、アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるととに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の1点および前記他端をそれぞれコンデンサとコイルの並列共振回路を介して前記接続導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数と前記中間の点に接続された前記並列共振回路の共振周波数を一致させ、また前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数と前記他端に接続された前記並列共振回路の共振周波数を一致させ、前記電気長による共振周波数を異なる周波数帯に設定して構成することも可能である。
これらの構成の複数帯域用アンテナにあっては、単一のアンテナエレメントを用いて、同時に複数の周波数帯のアンテナとして作用することができる。そこで、GPSと携帯電話のごとく、同時に複数の周波数帯のアンテナを用いることが必要な移動体通信用のアンテナとして好適である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の複数帯域用アンテナでスイッチを用いた第1実施例の原理的構成図である。
図2は、本発明の複数帯域用アンテナで直列共振回路を用いた第2実施例の原理的構成図である。
図3は、本発明の複数帯域用アンテナで並列共振回路を用いた第3実施例の原理的構成図である。
図4は、本発明の複数帯域用アンテナでフィルターを用いた第4実施例の原理的構成図である。
図5は、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメントの給電点側の中間にコンデンサを直列に介装した図である。
図6は、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメントの給電点側の中間に誘電結合する並行導体を直列に介装した図である。
図7は、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメントの一端と給電点の間に整合回路を介装した図である。
図8は、図1に示す第1実施例において、(a)は開かれたスイッチが接続される点のアンテナエレメントの電気長で、閉じられたスイッチが接続される点のアンテナエレメントの電気長の共振周波数帯に近接した共振周波数が生ずる場合があることを示す図であり、(b)は近接した2つの共振周波数により反共点が生ずることを示す図である。
図9は、図8に示す不具合を解決するための第5実施例の構成図である。
図10は、図4に示す第4実施例を用いた本発明の複数帯域用アンテナの具体的な第6実施例を示す図である。
図11は、図4に示す第4実施例を用いた本発明の複数帯域用アンテナを誘電体に設けるとともにアンテナエレメントを容量結合とした具体的な第7実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
図12は、アンテナエレメントを、メアンダ状でさらに側面から見てL字状とした図である。
図13は、アンテナエレメントを、メアンダ状でさらに側面から見てコ字状にした図である。
図14は、アンテナエレメントを、メアンダ状でさらに側面から見てもメアンダ状にした図である。
図15は、本発明の複数帯域用アンテナで、携帯電話に用いることを想定した具体的な一例の外観斜視図である。
図16は、図15の複数帯域用アンテナの構成図である。
図17は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を開きSW2を閉じた状態のVSWR特性図である。
図18は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を開きSW2を閉じた状態のスミスチャートである。
図19は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を閉じSW2を開いた状態のVSWR特性図である。
図20は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を閉じSW2を開いた状態のスミスチャートである。
図21は、図1の第1実施例において、アンテナエレメントの他端を、スイッチSWdを介することなく、直接的に接地導体に電気的に接続した図である。
図22は、図21に示すアンテナエレメントの他端が直接的に接地導体に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な一例の外観斜視図である。
図23は、図21に示すアンテナエレメントの他端が直接的に接地導体に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な他の例の外観斜視図である。
図24は、図21に示すアンテナエレメントの他端が直接的に接地導体に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な別の例の外観斜視図である。
図25は、アンテナエレメントの中間の点および他端を、スイッチや直列共振回路やフィルターの複数種類の電気回路のいずれかを介して接地導体にそれぞれに電気的に接続した図である。
図26は、従来のアンテナの基本的構成を示す図である。
図27は、図26の従来のアンテナにおいて、アンテナエレメントの中央にコンデンサを直列に介装した図である。
図28は、図26の従来のアンテナにおいて、アンテナエレメントの給電側の中間にコンデンサを直列に介装した図である。
図29は、図26の従来のアンテナにおいて、アンテナエレメントの給電点側の中間に誘電結合する2本の並行導体を直列に介装した図である。
図30は、図26の従来のアンテナにおいて、アンテナエレメントの一端と給電点との間に整合回路を介装した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の第1実施例を図1を参照して説明する。図1は、本発明の複数帯域用アンテナでスイッチを用いた第1実施例の原理的構成図である。図1において、アンテナエレメント10の一端が給電点12に接続され、他端がスイッチSWdを介して接地導体14に接続される。そして、アンテナエレメント10の中間の2つの点でスイッチSWb,SWcをそれぞれに介して接地導体14に接続される。なお、アンテナエレメント10は、給電点12およびスイッチSWb,SWc,SWdに接続するための立ち上がりおよび立ち下がり以外の大部分は、接地導体14に略平行となるように配設される。そして、アンテナエレメント10において、給電点12に接続される点A(アンテナエレメント10の一端)からスイッチSWbに接続される点B(アンテナエレメント10の一方の中間の点)までの電気長が、第1の周波数帯f1の1/2波長に設定され、点AからスイッチSWcに接続される点C(アンテナエレメント10の他方の中間の点)までの電気長が、第2の周波数帯f2の1/2波長に設定され、点AからスイッチSWdに接続される点D(アンテナエレメント10の他端)までの電気長が、第3の周波数帯f3の1/2波長に設定される。なお、第1〜3の周波数帯f1,f2,f3の周波数は、f3<f2<f1であることは当然である。そして、アンテナとして使用する複数の周波数帯に、それぞれ第1〜3の周波数f1,f2,f3を設定することは勿論である。
かかる構成の第1実施例において、スイッチSWb,SWcを開き、スイッチSWdのみを閉じれば、アンテナエレメント10で点Aから点Dまでの電気長のアンテナが形成され、図26に示す従来技術と同様に、第3の周波数帯f3が共振するアンテナとして作用する。同様に、スイッチSWb,SWdを開き、スイッチSWcのみを閉じれば、アンテナエレメント10で点Aから点Cまでの電気長のアンテナが形成され、第2の周波数帯f2が共振するアンテナとして作用する。また、スイッチSWc,SWdを開き、スイッチSWbのみを閉じれば、第1の周波数帯f1が共振するアンテナとして作用する。
上述のごとく、本発明の複数帯域用アンテナの第1実施例では、単一のアンテナエレメント10を用いており、小型化および軽量化に好適である。そして、アンテナとして必要な周波数帯の数だけ、スイッチSWb,SWc,SWdを設ければ良く、2つの周波数帯から多数のマルチバンドまで、単一のアンテナエレメント10で対応することができる。なお、第1実施例におけるスイッチSWb,SWc,SWdは、機械的なものに限られず、ピンダイオードなどを用いた半導体スイッチであっても良いことは勿論である。
また、本発明の第2実施例を図2を参照して説明する。図2は、本発明の複数帯域用アンテナで直列共振回路を用いた第2実施例の原理的構成図である。図2において、図1に相違するところは、スイッチSWb,SWc,SWdに代えて、第1〜第3の直列共振回路22,24,26が設けられたことにある。アンテナエレメント10の一方の中間の点Bと接地導体14間に介装される第1の直列共振回路22の共振周波数は、給電点Aから点Bまでの電気長で共振される第1の周波数帯f1に設定される。同様に、アンテナエレメント10の他方の中間の点Cと接地導体14間に介装される第2の直列共振回路24の共振周波数は、給電点Aから点Cまでの電気長で共振される第2の周波数帯f2に設定される。そして、アンテナエレメント10の他端Dと接地導体14間に介装される第3の直列共振回路26の共振周波数は、給電点Aから他端Dまでの電気長で共振される第3の周波数帯f3に設定される。
かかる構成の第2実施例で、第1の周波数帯f1に対しては、一方の中間の点Cが第1の直列共振回路22を介して接地導体14に電気的に短絡されたのと同様に作用し、第1の周波数帯f1が共振するアンテナとして作用する。同様に、第2の周波数帯f2に対しては、他方の中間点Dが第2の直列共振回路24を介して短絡接地し、第2の周波数帯f2が共振するアンテナとして作用する。さらに、第3の周波数帯f3に対しても、他端Dが第3の直列共振回路26を介して短絡接地され、第3の周波数帯f3が共振するアンテナとして作用する。そこで、第2実施例では、第1〜3の周波数帯f1,f2,f3のアンテナとして同時に作用させることができ、給電点12側にて適宜に周波数分離のための回路などを設ければ良い。したがって、この第2実施例の複数帯域用アンテナにあっては、単一のアンテナエレメント10を用いて、GPSと携帯電話のごとく、同時に複数の周波数帯のアンテナを用いることが必要な移動体通信用のアンテナとして好適である。なお、上記説明では、共振して電気的に短絡される周波数帯以外に対して、直列共振回路22,24,26が電気的に遮断する作用を奏するものとしているが、短絡接地されない他の周波数帯に対する直列共振回路の電気的作用を考慮して、給電点Aから中間の点B,Cまたは他端Dまでのアンテナエレメント10の電気長を適宜に設定しても良いことは勿論である。
そして、本発明の第3実施例を図3を参照して説明する。図3は、本発明の複数帯域用アンテナで並列共振回路を用いた第3実施例の原理的構成図である。図3において、図2と相違するところは、アンテナエレメント10の中間の点は1点Bだけであり、この中間の点Bと接地導体14の間に第1の並列共振回路28が介装され、他端Dと接地導体14の間に第2の並列共振回路30が介装されている。そして、第1の並列共振回路28の共振周波数は、点Aから他端Dの電気長により共振される第3の周波数帯f3に設定され、第1の並列共振回路28は第3の周波数帯f3に対してトラップ回路として作用する。そこで、中間の点Bは、点Aから点Bまでの電気長に共振する第1の周波数帯f1に対して接地導体14に電気的に短絡され、第3の周波数帯f3に対して接地導体14から電気的に遮断され、第1の周波数帯f1に共振するアンテナとして作用する。また、同様に、他端Dは、第1の周波数帯f1に対して接地導体14から電気的に遮断され、第3の周波数帯f3に対して接地導体14に電気的に短絡され、第3の周波数帯f3に共振するアンテナとして作用する。なお、上記説明はトラップする周波数帯以外に対して並列共振回路28,30が何ら電気的作用をしないものとしているが、トラップされない周波数帯に対する並列共振回路28,30の電気的作用を考慮して、給電点Aから中間の点Bまたは他端Dまでのアンテナエレメント10の電気長を適宜に設定しても良いことは勿論である。そこで、この第3の実施例の複数帯域用アンテナにあっても、第2実施例と同様に、単一のアンテナエレメント10を用いて、同時に複数の周波数帯のアンテナとして作用することができ、GPSと携帯電話のごとく、同時に複数の周波数帯のアンテナを用いることが必要な移動体通信用のアンテナとして好適である。
なお、第2および第3実施例において、直列および並列共振回路は、集中定数回路または分布定数回路のいずれで構成されても良い。
さらに、本発明の第4実施例を図4を参照して説明する。図4は、本発明の複数帯域用アンテナでフィルターを用いた第4実施例の原理的構成図である。図4において、図1と相違するところは、スイッチSWb,SWc,SWdに代えて、ハイパスフィルター32,バンドパスフィルター34,ローパスフィルター36が設けられたことにある。アンテナエレメント10の一方の中間の点Bと接地導体14間に介装されるハイパスフィルター32は、給電点Aから点Bまでの電気長で共振される第1の周波数帯f1を通過させ、他の第2および第3の周波数帯f2,f3の通過を阻止するように設定される。また、他方の中間の点Cと接地導体14間に介装されるバンドパスフィルター34は、給電点Aから点Cまでの電気長で共振される第2の周波数帯f2を通過させ、他の第1および第3の周波数帯f1,f3の通過を阻止するように設定される。同様に、他端Dと接地導体14間に介装されるローパスフィルター36は、給電点Aから他端Dまでの電気長で共振される第3の周波数帯f3を通過させ、他の第1および第2の周波数帯f1,f2の通過を阻止するように設定される。
かかる構成の第4実施例では、フィルター32,34,36によって、中間の点B,Cおよび他端Dは、給電点Aから当該点までの電気長で共振する周波数帯に対して接地され、他の周波数帯は遮断されるように作用する。そこで、第2実施例と同様に、第1〜3の周波数帯f1,f2,f3のアンテナとして、同時に作用させることができる。もって、この第4の実施例の複数帯域用アンテナにあっても、第2および第3実施例と同様に、単一のアンテナエレメント10を用いて、GPSと携帯電話のごとく、同時に複数の周波数帯のアンテナを用いることが必要な移動体通信用のアンテナとして好適である。なお、ハイパスフィルター32およびローパスフィルター36は、第1の周波数帯f1および第3の周波数帯f3をそれぞれ通過させるバンドパスフィルターであっても良いことは勿論である。
そしてさらに、図5に示すごとく、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメント10の給電点12側の中間に、コンデンサ16を直列に介装しても良い。なお、このコンデンサ16に代えて、容量結合させた構造であっても良い。また、図6に示すごとく、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメント10の給電点12側の中間に、互いに誘導結合する2本の並列導体18を直列に介装しても良い。そして、図7に示すごとく、図1に示す第1実施例において、アンテナエレメント10の一端Aと給電点12の間に整合回路20を介装しても良い。図5ないし図7に示す実施例において、アンテナエレメント10の電気長は、介装されるコンデンサ16,平行導体18,整合回路20を考慮して、その電気長が適宜に設定されれば良い。さらに、第2ないし第4実施例において、第1実施例における図5ないし図7に示す実施例のごとく構成することも可能である。すると、複数の周波数帯のアンテナとして作用させる単一のアンテナエレメント10の電気長を、コンデンサCや整合回路20を設けることで、適宜に設計し得る。
ところで、図1に示す第1実施例において、図8(a)に示すごとく、スイッチSWbが閉じられてスイッチSWc,SWdが開かれた状態で、給電点Aから点Bまでのアンテナエレメント10の電気長に共振する第1の周波数帯f1に対して、給電点Aから点Cまたは/および他端Dまでのアンテナエレメント10の電気長が、第1の周波数f1の波長(λ)に対して、点線で示すように、例えばλ・5/4±Δのごとく、偶然にもλ・(1/4+n・1/2)±Δ(但し、nは整数である)であるとすると、第1の周波数帯f1に近接したf1±αの周波数も同時に共振することとなる。そこで、図8(b)に示すように、第1の周波数帯f1とこれに近接した周波数f1±αにより、反共点が生ずる可能性がある。この反共点ではVSWR特性が劣化し、アンテナ利得も低下する。そのために、反共点は使用すべき周波数帯の帯域外であることが望ましい。
かかる不具合を解決する手段として、図9に示す第5実施例のごとく、一例として、アンテナエレメント10の他の中間の点CをスイッチSWcと延長コイルLを直列に介して接地導体14に接続し、他端DをスイッチSWdと短縮コンデンサCを直列に介して接地導体14に接続する。この延長コイルLと短縮コンデンサCを適宜にそれぞれ介装することで、アンテナエレメント10の給電点Aから他の中間の点Cまでの電気長を短くし、また給電点Aから他端Dまでの電気長を長くし、もって第1の周波数帯f1に対して、給電点Aから点C,Dまでの電気長により、近接した周波数が共振しないようにして、使用する周波数帯内に反共点が生じないようにすることができる。
上記の図8においては、一方の中間の点Bにおける第1の周波数帯f1に対して、他方の中間点Cおよび他端Dで近接した周波数が共振する可能性のあることを説明したが、他方の中間の点Cにおける第2の周波数帯f2に対して、他端Dで近接した周波数が共振する可能性もある。かかる場合には、中間の点B,Cおよび他端Dを、それぞれスイッチSWb,SWc,SWdと適宜な延長コイルまたは短縮コイルを直列に介してまたは介装することなく接地導体14に適宜に接続して、反共点がいずれの使用する周波数帯内にも存在しないようにすれば良いことは容易に理解されるであろう。
次に、本発明の複数帯域用アンテナの具体的構成例につき説明する。図10は、図4に示す第4実施例を用いた本発明の複数帯域用アンテナの具体的な第6実施例を示す図である。図10において、アンテナエレメント10は、円周面状に配設され、円周面状の中心軸と平行方向に折り返されたメアンダ状に形成されて小型化が図られている。そして、アンテナエレメント10には、適宜な絶縁樹脂からなるカバー40が被せられる。また、アンテナエレメント10の一端Aと中間の点C,Dおよび他端Dが適宜に引き出され、図示しない接続端子に電気的に接続される。一方、給電点12とハイパスフィルター32,バンドパスフィルター34,ローパスフィルター36は、基板42に設けられ、適宜に接続端子に電気的に接続される。基板42には、図示しない接地導体が設けられ、フィルター32,34,36が接地される。また、これらの基板42が、図示しない筐体に収容される。そして、筐体に、外方に突出するように配設してアンテナエレメント10を着脱自在に構成し、アンテナエレメント10の一端Aと中間点B,Cおよび他端Dが、それぞれ給電点12と各フィルター32,34,36に接続分離自在に構成される。なお、図10に示すアンテナエレメント10を、図1〜3に示す第1〜3実施例に適用しても良いことは勿論である。このアンテナエレメント10をメアンダ状に形成することで、アンテナエレメント10全体の外形寸法を小型化できる。そして、アンテナエレメント10をメアンダ状であるとともに円周面状とし、しかも他の構成回路と接続分離自在としたので、アンテナエレメント10のみを製造工程で後付けすることも可能である。また、アンテナが破損した場合に、その交換が容易である。さらに、携帯電話の筐体に外方に突出して設けられるアンテナとして好適である。
また、図11は、図4に示す第4実施例を用いた本発明の複数帯域用アンテナを誘電体に設けるとともにアンテナエレメントを容量結合とした具体的な第7実施例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。図11において、誘電体44の表面上に、アンテナエレメント10や給電点Aおよび各フィルター32,34,36を配設したものである。そして、アンテナエレメント10の給電点12側の中間が途切れて、その端部が互いに容量結合38するように構成されている。誘電体44の表面上にメッキや蒸着などにより金属薄膜で形成することができ、量産に好適である。しかも、誘電体44による波長短縮効果により、アンテナエレメント10の物理的長さを短くでき、それだけ小型化にも好適である。なお、アンテエナエレメント10は、誘電体44の表面上に設けられるが、誘電体44を積層構造として各フィルター32,34,36を層間に配設することで誘電体44の内部に配設するようにしても良い。各フィルター32,34,36は、誘電体44のいずれの部分に設けられていても良い。
そして、アンテナエレメント10を小型化するために、本発明にあっては、一例として、図12に示すごとく、一平面でメアンダ状のものを、さらに側面から見てL字状としても良い。また、他の例として、図13に示すごとく、メアンダ状のものをさらに側面から見てコ字状としても良い。さらに、別の例として、図14に示すごとく、メアンダ状のものを、さらに側面から見てもメアンダ状としても良い。
さらに、本発明の第8実施例を、図15ないし図20を参照して説明する。図15は、本発明の複数帯域用アンテナで、携帯電話に用いることを想定した具体的な一例の外観斜視図である。図16は、図15の複数帯域用アンテナの構成図である。図17は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を開きSW2を閉じた状態のVSWR特性図である。図18は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を開きSW2を閉じた状態のスミスチャートである。図19は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を閉じSW2を開いた状態のVSWR特性図である。図20は、図16の複数帯域用アンテナにおいて、SW1を閉じSW2を開いた状態のスミスチャートである。
図15において、接地導体14は、短辺が40mmで長辺が100mmの長方形であり、その一方の短辺側に、接地導体14から離してアンテナエレメント10が配設される。このアンテナエレメント10は、接地導体14の長方形の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状であるとともに側面から見てL字状に形成される。そして、アンテナエレメント10の一端Aおよび中間の点Bおよび他端Dが、接地導体14が設けられる基板46に搭載される回路に、接地導体14に電気的に接続されることなく、適宜に接続される。そして、図16のごとく、一端Aは整合回路20を介して給電点12に接続され、中間の点Bは第1のスイッチSW1を介して接地導体14に接続され、他端Dは第2のスイッチSW2を介して接地される。なお、図15および図16に示す実施例は、携帯電話の800MHz帯と1800MHz帯の2つの周波数帯で使用できるように構成したものである。
まず、第1のスイッチSW1を開き第2のスイッチSW2を閉じた状態では、低い周波数帯が共振し、図17にあっては、824〜960MHzでVSWRが2以下の優れた特性が測定された。そして、図18に示すごとく、824〜960MHzで、略50Ωに近いインピーダンスが得られている。もって、北米の824〜894MHz帯のGSMと欧州の880MHz〜960MHz帯のGSMの双方の広い周波数帯でアンテナとして使用することができる。また、第1のスイッチSW1を閉じ第2のスイッチSW2を開いた状態では、高い周波数帯が共振し、図19にあっては、1710〜1990MHzで、VSWRが2.6以下の優れた特性が測定された。そして、図20に示すごとく、1710〜1990MHzで、50Ωに近いインピーダンスが得られている。もって、北米の1850〜1990MHz帯のGSMと欧州の1710〜1880MHz帯のGSMの双方の広い周波数帯でアンテナとして使用することができる。さらに、アンテナエレメント10を長方形の接地導体14の短辺側に配設するので、中央で折り畳む携帯電話機(シェル型)の操作ボタンが配設された操作側シェルに接地導体14を配設するとともに、アンテナエレメント10を折り畳み用の蝶番近くに設けるのに好適である。そしてまた、操作側シェルおよび表示画面が配設された表示側シェルのいずれの端部側(蝶番と反対側の遊端側)にアンテナエレメント10を設ける場合にも好適である。
なお、上記実施例で、図1と図2および図4ないし図11に示すものは、3つの周波数帯で使用できるようにしたものであり、図3と図15および図16に示すものは、2つの周波数帯で使用できるようにしたものであるが、アンテナとして必要とする周波数帯をカバーできるように適宜に周波数帯の数を設定すれば良い。そして、本発明の複数帯域用アンテナは、アンテナエレメント10がメアンダ状とされるなどにより小型化されることによって、接地導体14の大きさおよび形状により、そのアンテナ特性も影響を受ける。例えば、図15において、接地導体14を短辺が40mmで長辺が80mmの長方形に変更するならば、利得および指向性などで変化はあるが、充分に実用化できるものである。また、アンテナエレメント10を小型化するのに実施例のごときメアンダ状に限られず、鋸波状や波状や螺旋状などで形成しても良い。さらに、スイッチSWb,SWc,SWdおよびSW1,SW2は、共通接点が接地導体14に電気的に接続された切替スイッチが用いられても良い。
さらに、図21に示すごとく、図1の第1実施例において、アンテナエレメント10の他端Dが、スイッチSWdを介することなく、直接的に接地導体14に電気的に接続されても良い。同様に、図2の第2実施例または図4の第4実施例において、アンテナエレメント10の他端Dが、第3の直列共振回路26またはローパスフィルター36を介することなく、直接的に接地導体14に電気的に接続されても良い。かかる構造にあっては、アンテナエレメント10の他端Dが接地導体14に直接的に電気的に接続されるので、それだけ構造が簡単となる。
図22は、図21に示すアンテナエレメント10の他端Dが直接的に接地導体14に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な一例の外観斜視図である。図22に示す一例にあっては、基板48は、2層に積層された平面状の回路基板からなり、下の層には長方形の接地導体14が配設され、上の層には回路等が適宜に配設される。そして、基板48の上の層で、接地導体14の一方の短辺側に、接地導体14の長方形の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状のアンテナエレメント10が配設される。ここで、アンテナエレメント10に臨む下の層には接地導体14は配設されておらず、アンテナエレメント10は接地導体14から離して設けられる。さらに、アンテナエレメント10の給電点側の一端Aおよび中間の点B,Cは、上の層に配設された回路等に適宜に電気的に接続され、他端Dは下の層の接地導体14に電気的に接続される。この他端Dと接地導体14の電気的な接続は、図22に示すごとく、基板48の上の層の一部を切り欠いても良く、また上の層を貫通するスルーホールを設けても良い。アンテナエレメント10が、平面状の基板48に配設されることで、アンテナエレメント10の配設が容易である。また、接地導体14の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状のアンテナエレメント10により、小型化できる。なお、基板48は、2層に積層された回路基板に限られず、3層以上に積層されたものであっても良く、また表面に回路等が配設され、裏面に接地導体14が配設されるものであっても良い。図22に示す接地導体14の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状のアンテナエレメント10は、実験によれば、1800MHz帯の比較的に高い周波数帯で高い利得が得られた。
図23は、図21に示すアンテナエレメント10の他端Dが直接的に接地導体14に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な他の例の外観斜視図である。図23に示す他の例において、図22に示す一例と相違するところは、基板48の上の層で、接地導体14の一方の短辺側に、接地導体14の長方形の短辺と平行方向に折り返されたメアンダ状のアンテナエレメント10が配設されることにある。この図23に示す他の例では、アンテナエレメントの略中央部分Pが、接地導体14から最も離れて配設される。そこで、アンテナエレメント10の全長で比較的に低い800MHz帯を共振させてアンテナとして作用させた際に、アンテナエレメント10の略中央部分Pが最も高い電圧となるが、最も接地導体14から離れていて結合が少ない。そのために、アンテナインピーダンスを高くとることができる。そして、アンテナエレメント10の全長を用いずに給電点側の一部分を用いて比較的に高い周波数帯を共振させて使用させる際にも、図22に示す一例よりも、高い電圧が発生する部分が接地導体14から離れる蓋然性が高く、やはりアンテナインピーダンスを高くとることができる。なお、発明者らの実験によれば、1800MHz帯の高い周波数帯では、図22に示す一例が、図23に示す他の例よりも高い利得が得られ、800MHz帯の低い周波数帯では、図23に示す他の例が、図22に示す一例よりも高い利得が得られる傾向があった。
そこで、上記実験により得られた傾向を応用した別の例を図24に示す。図24は、図21に示すアンテナエレメント10の他端Dが直接的に接地導体14に電気的に接続された本発明の複数帯域用アンテナを、携帯電話に用いることを想定した具体的な別の例の外観斜視図である。図24に示す別の例において、図22および図23に示す例と相違するところは、アンテナエレメント10が、給電点に電気的に接続される一端A側の部分が、接地導体14の長方形の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状に形成され、接地導体14に電気的に接続される一端D側の部分が、接地導体14の長方形の短辺と平行方向に折り返されたメアンダ状に形成されたことにある。1800MHz帯の高い周波数帯に対して、アンテナエレメント10の一端A側の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状の部分がアンテナとして作用し、高い利得が得られる。そして、800MHz帯の低い周波数帯に対して、アンテナエレメント10の全長がアンテナとして作用するが、図22と図23にそれぞれに示すメアンダ状のアンテナエレメント10の中間の利得が得られる。しかも、アンテナエレメント10の各周波数帯でアンテナとして作用させる部分を適宜なメアンダ状とすることで、アンテナインピーダンスおよび利得の調整も可能である。
ここで、図24に示すアンテナエレメント10は、接地導体14の長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状の部分と、短辺と平行方向に折り返されたメアンダ状の部分とで形成されているが、これらの2つの部分の間に、長辺および短辺のいずれとも平行でない方向に折り返されまたはジグザグに折り返されたメアンダ状の部分、さらにはメアンダ状でない部分が介装されていても良い。そして、アンテナエレメント10の給電点に電気的に接続される一端A側に、長辺と平行方向に折り返されたメアンダ状の部分が設けられ、一端D側に短辺と平行方向に折り返されたメアンダ状の部分が設けられたものに限られず、長辺と平行方向のメアンダ状の部分と短辺と平行方向のメアンダ状の部分およびメアンダ状でない部分が適宜に混在させても良いことは勿論である。
そしてまた、図25に示すごとく、アンテナエレメント10の中間の点B,Cおよび他端Dは、図1や図2や図4に示されるごとくスイッチや直列共振回路やフィルターのいずれか一種類の電気回路を介して接地導体14に電気的に接続される必要はなく、スイッチや直列共振回路やフィルターの複数種類の電気回路のいずれかを介して接地導体14にそれぞれに電気的に接続されても良い。コンデンサとコイルの直列共振回路の共振周波数およびフィルターの通過周波数は、接続される点におけるアンテナエレメント10の電気長の共振周波数に一致させることは勿論である。そこで、アンテナエレメント14の中間の点B,Cおよび他端Dが、スイッチSWb,SWc,SWdまたは直列共振回路22,24,26またはフィルター32,34,36のいずれかを介して接地導体14に電気的に接続されれば良く、回路設計の自由度が大きい。
なお、図15に示す第8実施例や図22,図23,図24に示す実施例では、いずれも基板上にアンテナエレメントを配設しているが、回路等の搭載される基板とは別の誘電体からなるキャリア上にアンテナエレメントが配設されても良い。誘電体として、例えば高誘電率の材料であるセラミックなどをキャリアとして用いるならば、アンテナエレメントの大きさを小型化することができる。また、アンテナエレメントのメアンダ状は、上記実施例のごとく折り返しがコ字状のものに限られず、折り返しがV字状やU字状であっても良く、接地導体14の長辺および短辺のいずれとも平行でないジグザグ状であっても良い。さらに、メアンダ状の折り返しピッチは、必ずしも一定でなくても良く、粗密を設けても良い。そしてまた、折り返しと次の折り返しまでの寸法も、一定でなくても良い。
【産業上の利用の可能性】
以上説明したように本発明の複数帯域用アンテナは、アンテナエレメント10の一端Aを給電点12に電気的に接続し、アンテナエレメント10の中間の点B,Cおよび他端DをそれぞれスイッチSWb、SWc、SWdを介して接地導体14に電気的接続する。アンテナエレメント10の一端Aから中間の点B,CがスイッチSWb、SWcを介して接地導体14に接続されるまでの電気長、および一端Aから他端DがスイッチSWdを介して接地導体14に接続されるまでの電気長を、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定する。そして、スイッチSWb、SWc、SWdのいずれか1つを閉じることで、所望の周波数帯のいずれか1つを選択して共振させ得る。もって、単一のアンテナエレメント10を用いて、複数の周波数帯で使用でき、しかも小型化し易い。そこで、携帯電話の複数の周波数帯で使用するための複数帯域用アンテナとして好適である。
【符号の説明】
1. 図17において、符号1、2、3、4は、以下の周波数におけるVSWRを示す。
1 824MHz VSWR 1.76
2 960MHz VSWR 1.20
3 1710MHz VSWR 2.78
4 1990MHz VSWR 6.04
2. 図18において、符号1、2、3、4は、以下の周波数を示す。
1 824MHz
2 960MHz
3 1710MHz
4 1990MHz
3. 図19において、符号1、2、3、4は、以下の周波数におけるVSWRを示す。
1 824MHz VSWR15.65
2 960MHz VSWR 7.43
3 1710MHz VSWR 2.59
4 1990MHz VSWR 1.43
4. 図20において、符号1、2、3、4は、以下の周波数を示す。
1 824MHz
2 960MHz
3 1710MHz
4 1990MHz
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれスイッチを介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端が前記スイッチを介して前記接地導体に接続されるまでの電気長および前記給電点から前記中間の点が前記スイッチを介して前記接地導体に接続されるまでの電気長を、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項2】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれコンデンサとコイルの直列共振回路を介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数と前記他端に接続された直列共振回路の共振周波数を一致させ、また前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数と前記中間の点に接続された前記直列共振回路の共振周波数を一致させ、前記電気長によるそれぞれの共振周波数をそれぞれ異なる所望の周波数帯に設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項3】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端をそれぞれフィルターを介して前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数が前記他端に接続された前記フィルターを通過するようにし、前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数が前記中間の点に接続された前記フィルターを通過するようにし、しかも前記フィルターは接続位置の前記電気長による共振周波数以外は通過を阻止するようにし、前記電気長によるそれぞれの共振周波数をそれぞれ異なる所望の周波数帯に設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項4】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるととに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の1点および前記他端をそれぞれコンデンサとコイルの並列共振回路を介して前記接続導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記他端までの電気長による共振周波数と前記中間の点に接続された前記並列共振回路の共振周波数を一致させ、また前記給電点から前記中間の点までの電気長による共振周波数と前記他端に接続された前記並列共振回路の共振周波数を一致させ、前記電気長による共振周波数を異なる周波数帯に設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項5】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記給電点と前記アンテナエレメントの一端の間に整合回路を介装し、前記整合回路を含んで前記電気長を設定するように構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項6】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントの他端または/および中間の点と前記接地導体の間に、短縮コンデンサまたは延長コイルを介装し、前記短縮コンデンサまたは延長コイルを含めた電気長による前記共振周波数を前記所望の周波数帯に設定するとともに、前記短縮コンデンサまたは延長コイルを含まない電気長による共振周波数が他の前記周波数帯に近接しないように設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項7】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記給電点と前記給電点から最も短い電気長となる中間の点との間を、コンデンサを直列に介装しまたは容量結合して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項8】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記給電点と前記給電点から最も短い電気長となる中間の点との間に、直流的に遮断された2本の平行導体を誘導結合するように直列に介装して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項9】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントをメアンダ状に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項10】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントを誘電体の表面に配設して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項11】
請求項3記載の複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントおよび前記フィルターを誘電体にそれぞれ配設して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項12】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記接地導体を略長方形に形成し、前記長方形の一方の短辺側に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項13】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、平面状の基板に前記接地導体を略長方形に形成し、前記接地導体の長方形の一方の短辺側で前記基板に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項14】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記接地導体を長方形とし、その長方形の一方の短辺側に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設し、前記アンテナエレメントを前記接地導体の前記長方形の長辺と平行方向に折り返すメアンダ状に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項15】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記接地導体を長方形とし、その長方形の一方の短辺側に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設し、前記アンテナエレメントを前記接地導体の前記長方形の短辺と平行方向に折り返すメアンダ状に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項16】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記接地導体を長方形とし、その長方形の一方の短辺側に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設し、前記アンテナエレメントの一部分を前記接地導体の前記長方形の長辺と平行方向に折り返すメアンダ状とし、他の一部分を前記接地導体の前記長方形の短辺と平行方向に折り返すメアンダ状に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項17】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記接地導体を長方形とし、その長方形の一方の短辺側に前記接地導体から離して前記アンテナエレメントを配設し、前記アンテナエレメントの前記給電点に電気的に接続する一端側の部分を、前記接地導体の前記長方形の長辺と平行方向に折り返すメアンダ状とし、前記アンテナエレメントの前記接地導体に電気的に接続される他端側の部分を、前記接地導体の前記長方形の短辺と平行方向に折り返すメアンダ状に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項18】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントをメアンダ状でしかも円周面状に構成し、前記アンテナエレメントの一端と他端および中間の点を、前記給電点およびスイッチまたは直列共振回路または並列共振回路またはフィルターと接続分離自在に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項19】
請求項1ないし4記載のいずれかの複数帯域用アンテナにおいて、前記アンテナエレメントをメアンダ状でしかも円周面状に構成し、前記アンテナエレメントの一端と他端および中間の点を、前記給電点およびスイッチまたは直列共振回路または並列共振回路またはフィルターと接続分離自在に構成し、前記接地導体や給電点およびスイッチまたは直列共振回路または並列共振回路またはフィルターが収容される筐体に、前記アンテナエレメントを外方に突出するように配設するとともに着脱自在に構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項20】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点および前記他端を、それぞれスイッチまたはコンデンサとコイルの直列共振回路またはフィルターのいずれかを介して前記接地導体に電気的に接続し、しかも前記直列共振回路の共振周波数または前記フィルターの通過周波数を前記アンテナエレメントの前記給電点から前記直列共振回路または前記フィルターが接続された前記中間の点または前記他端までの電気長による共振周波数と一致させ、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記中間の点または前記他端で、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。
【請求項21】
アンテナエレメントの一端が給電点に電気的に接続されるとともに他端が接地導体に電気的に接続されるアンテナにおいて、前記アンテナエレメントの前記他端を直接的に前記接地導体に電気的に接続し、前記アンテナエレメントの中間の少なくとも1点を、スイッチまたはコンデンサとコイルの直列共振回路またはフィルターのいずれかを介して前記接地導体に電気的に接続し、しかも前記直列共振回路の共振周波数または前記フィルターの通過周波数を前記アンテナエレメントの前記給電点から前記直列共振回路または前記フィルターが接続された前記中間の点までの電気長による共振周波数と一致させ、前記アンテナエレメントの前記給電点から前記中間の点または前記他端で、それぞれ異なる所望の周波数帯が共振し得るように設定して構成したことを特徴とする複数帯域用アンテナ。

【国際公開番号】WO2004/047223
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553152(P2004−553152)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014250
【国際出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Bluetooth
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】