説明

複数本の糸を用いて運転される繊維機械に、糸を一定の取り込み長で供給する方法及び装置

【課題】糸供給制御装置による制御方法で、取り込まれる各糸の長さ(すなわち、LFA)が、同じタイプの複数個の製品の製造時間中、又は繊維機械に供給される糸において、絶えず一定であるように、複数本の糸を繊維機械に供給する方法及び装置を提供する。
【解決手段】複数本の糸を、一定の供給長で繊維機械5に供給する方法で、各糸2は、スプール1から繰り出て、繊維機械に導かれる前に、糸の張力を一定値に維持するために設けられる通常の供給装置4と協働し、繊維機械への供給を制御する1個の制御手段6を備える方法で、繊維機械へ供給される糸毎に維持すべき取込み糸長値を設定し、繊維機械により有効に取込まれる糸長の実際値を測定し、設定した糸長値と実際値とを比較して異なる場合に、供給装置で対応する糸の張力値を修正し、この張力修正により、取り込み糸長値が所定値に等しくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインクレームの導入部に記載した、繊維機械に複数本の糸を一定長で供給する方法に関する。本発明は、また、こうした方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、繊維機械に糸を一定量で供給できる装置は、相当の期間市販されている。例えば、丸編機に使用する、こうした装置は、複数個の車輪状部材を備え、複数本の糸が、それぞれ車輪状部材に巻かれている。車輪状部材は、半径が可変なプーリに接続され、丸編機の駆動シャフトに固定された伝動部材(ベルト)により回転される。駆動シャフトは、製品(例えば、編み織物)を製造する通常の丸編機のシリンダを回転する。
【0003】
駆動シャフトと直接的に接続するため、駆動シャフトにキー結合されたプーリの半径を拡大し易くすることにより、糸量を調整可能な状態で、車輪状部材は、丸編機に一定の糸量を供給する。
【0004】
上述した公知の装置は、一定の所定糸量を、繊維機械に確実に供給できるが、幾つかの問題点がある。例えば、供給ユニットが異なる毎に、異なる糸量を供給する必要がある場合、一定の糸供給を確保するようにプーリの半径を対応して調節するとともに、プーリ群が異なる毎に糸量を異ならせた状態で、異なる伝動ベルトを使用する必要がある。このため、この公知の装置は、多数のプーリを必要とするが、プーリの数には、嵩張ること、及び繊維機械の周囲では空きスペースが限られている理由から限界がある。
【0005】
公知の装置は、また、繊維機械により取り込まれる糸量が、糸を引き出し糸を使用する繊維機械の部材の状態に応じて絶えず変動することから生ずる問題点も持っている。例えば、編機では、こうした部材は、生地又は網み目を形成する通常の針のストロークを決定する、編み目用カムである。
【0006】
上述した公知の装置の問題点は、編み目を正しく形成するには、カムにより定まる針のストロークを時間が経過しても一定にする必要があることに由来する。しかしながら、実際問題として、機械摩耗及び温度変化により一定性が保てない。例えば、温度が低い機械から温度が高い機械へ移動中に、種々の機械部品を構成する材料により生ずる膨張によって、針のストロークが変化し、供給される糸の量が絶えず変動する。供給される糸に対する取り込まれる糸の割合により、糸の張力が定まるので、糸に作用する針のストロークが変動すると、糸の張力が変動することになるので、最終製品にストリークが生ずる。
【0007】
結局、一定量の糸を供給する装置が、たとえ正しく作動しても、編み目を形成する機械部品(針、シンカー及びカム)の摩耗、及び通常の機械運転中に生ずる、こうした機械部品の寸法変動(熱膨張)により、一定量の糸供給ができなくなり、欠陥のある、又は品質が低下した製品が製造されることになる。
【0008】
さらに、繊維機械の駆動シャフトに接続される車輪状部材により、繊維機械に一定の糸量が供給されるようにするには、糸が弾性を有しないことが指摘される。実際には、このことは無理である。全ての糸は、固有の弾性を持ち、糸に加わる張力に応じて糸が伸びる。この張力も、糸が繰り出されるスプールでは糸量が変化する(スプールに糸が満杯である場合と空である場合)ので変化する。糸の供給用車輪状部材への入口での、張力の変動は、繊維機械の編み目形成部材への入口での糸量、ひいては、製品製造の変動をもたらす。
【0009】
このことは、編機の精度(1インチ当たりの針の数)が増せば増すほど顕著になる。近年の編機は、1インチ当り44本以上の針を備えており、編み目のループが小さくなるにつれて、たとえ、供給中の糸の1本にでも、取り込み糸長(LFA)に変動が生ずれば、編み目を形成する針のストロークにおける小さな変動が、欠陥製品を製造する可能性を高くする。
【0010】
繊維機械に複数本の糸を一定張力で供給する装置も幾つか公知である。これらの公知の装置は、閉ループ調整の連続制御(測定/調整)で供給糸張力が、設定値で一定に維持されるように作動する。しかしながら、こうした装置を使用しても、一定の糸量が、絶えず繊維機械に供給されることを確実化できない。
【0011】
確かに、これらの供給装置では、装置を出る糸は、確実に一定張力を持つ。しかしながら、この張力は、繊維機械、例えば編機の近傍では、変化することがある。これは、糸が、編み目形成シリンダ内で糸を引き取り糸を使用する機械部品(編機の場合では針)と供給装置との間の経路に沿って設けられる複数個の糸ガイドを通過するためである。これらの糸ガイドは、移動する糸に摩擦を加え、糸の張力を変更するため、繊維機械に取り込まれる糸の長さ又は量に変動が生ずる。こうしたことは、基準張力の誤認識(又は、測定部材又はロードセルで負荷がないと、装置は、測定張力をゼロと判断する)によっても生ずる。このため、欠陥製品が製造される虞が現実にある。こうした虞は、編み目を形成する機械部品に特定の(かつ連続した)調整を加えることによって回避することはできる。しかしながら、機械部品は、上述した磨耗及び寸法変化を受けるので、機械部品についても、上述した問題、すなわち、繊維機械に取り込まれる糸長を時間が経過しても一定に維持する問題(したがって製造上の問題)がある。欧州特許第050742号明細書には、供給糸量又は糸長(LFA)を精度よく測定するとともに、編み目を形成する機械部品を測定値に基づいてフィードバックにより制御する、一定張力での糸供給装置を使用することが記載されている。この公知の解決手段は、効果的であるが、繊維機械に、機械部品用に、アクチュエータ(例えば、ステッピング電動機)、又は調整装置を設けて、所望のLFA値を精確に制御して維持する必要がある。
【0012】
最近の製造装置では、こうしたアクチュエータが設けられているけれども、数年前に製造された繊維機械には、アクチュエータは設けられておらず、複雑化のため、アクチュエータを組み込むこともできない。
【0013】
最近は、編み目形成部材を制御するアクチュエータは、ストッキング製造機、パンティーストッキング製造機、シームレス製品製造機等、供給装置の数が少ない新型繊維機械には全て取り付けられているが、多数(84個、96個等)の供給装置を必要とする、大型の編機には設けられていない。
【0014】
織機用の糸供給装置も、公知であり、蓄積型供給装置として知られ、スプールから糸を引き出して、回転する部材に載せて、そこから、繊維機械により引き出されることができるようにしてある。この回転する部材は、糸が引き出される最終張力を規制できる張力部材と組み合わさる。
【0015】
制御した張力(張力部材により制御される)で糸を引き出すことができるが、上記の解決手段では、通常プラスチック製のリング又は環状ブラシから構成される張力部材には、必然的に摩耗が生ずるため、時間の経過とともに張力を維持し難くなる。つまり、張力部材を適宜交換又は調整して、不良品の製造を避ける必要がある。
【0016】
したがって、以上のことから、現在市販されている装置は、役立つものではあるが、主として機械部品の限界と問題(装置自体の部品、又は装置と協働する繊維機械の機械部品の摩耗に関連する)とがあり、製造される製品毎に時間が経過しても一定となるように、又は繊維機械に供給される全ての糸において等しくなるように、LFAを維持することは最終的にはできないことは明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の目的は、繊維機械に複数本の糸を、取り込まれる糸の長さ(すなわち、LFA)が、同じタイプの製品の製造全体に渡って時間が経過しても絶えず一定である、又は繊維機械に供給される全ての糸について等しくなるように、従来の糸供給制御装置により制御できる形で供給する方法及び装置を提供することにある。
【0018】
本発明のより具体的な目的は、糸の各々が供給される繊維機械、又は各糸を供給する装置に干渉せずに、一定なLFAを達成でき、製品製造用に編み目形成部材を制御するアクチュエータを備えている如何を問わず、新規の又は既設の稼働中の如何なるタイプの繊維機械にも適用し実施できる、上述したタイプの装置及び方法を提供することにある。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、繊維機械に取り込まれる前に糸ガイド等の部材と接触するために生ずる、不可避的な摩擦に影響されることなく、一定の取り込み糸長を確保できる、上述したタイプの装置及び方法を提供することにある。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、布地製造での品質欠陥(例えば、ストリーク)が生じる前に、各糸ガイドの近傍での糸の自由な移動を阻害する残留糸くず又は部品の緩みの発生をなくするとともに、糸の破断を防止することができる、上述したタイプの装置及び方法を提供することにある。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、繊維機械に供給される各糸について等しい又は異なる、一定の取り込み糸長を維持でき、公知の全ての糸供給装置を組み合わせ可能なである、上述したタイプの装置及び方法を提供することにある。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、織機等の連続布地製造繊維機械、編機、及びストッキング、タイツ等の単体製品を製造する機械等に使用できる、上述したタイプの装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの目的及び当業者には明らかとなるこの他の目的は、複数本の糸を、一定の供給長で繊維機械(5)に供給する方法であって、各糸(2)は、スプール(1)から繰り出て、繊維機械(5)に導かれる前に、糸(2)の張力を所定値に維持するために設けられる通常の供給装置(4)と協働し、繊維機械(5)への供給を制御する少なくとも1個の制御手段(6)を備える方法において、繊維機械(5)へ供給される糸(2)毎に維持すべき取り込み糸長値を設定し、繊維機械(5)により有効に取り込まれる糸長の実際値を測定し、設定した糸長値と実際値とを比較し、比較の結果が、所定値と実測値との差を示すたびに、供給装置(4)の少なくとも1個に作用することにより、対応する糸(2)の張力値を修正し、この張力修正により、取り込み糸長値が所定値に等しくなるようにすることを特徴とする方法によって達成される。
【0024】
これらの目的及び当業者には明らかとなるこの他の目的は、また、複数本の糸を、一定の供給長で繊維機械(5)に供給する装置であって、各糸(2)は、スプール(1)から繰り出て、繊維機械(5)に供給する装置(4)と協働し、供給装置(4)は、糸(2)の張力を制御調整して張力を所定値に等しくするために設けられるタイプのものであり、繊維機械(5)への全ての糸の供給を制御する制御手段(6)を備える装置において、前記制御手段(6)は、前記制御手段が、少なくとも1個の前記供給装置(4)により供給される実際の糸量に関するデータを、前記制御手段に記憶した所定の供給糸量値を比較する特定時点を定める同期手段に接続され、前記比較によって、前記制御装置は、前記所定値と前記実測値との差を判定して、少なくとも1個の制御装置(4)を操作することにより、前記糸(2)の全てが、同じ長さ又は同じ量で、前記繊維機械(5)に供給されるように、対応する糸の張力を修正することを特徴とする装置によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を、非限定的な実施形態を示した添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0026】
図1を参照すると、本発明による装置は、複数個のスプール1を備え、それぞれのスプールからは、糸2が、繰り出て複数個の糸ガイド3を通り、繊維機械5への各糸の供給を制御する公知の装置4に到達する。各供給制御装置4と、織機、編機、ストッキング製造機等の繊維機械5との間には、種々の糸ガイドを1個以上設けてよい。供給制御装置4は、各糸2の張力を制御調整して一定に維持できるものであればいずれのタイプのものでもよい。
【0027】
各供給制御装置4は、例えば、シリアル回線を通じて、各糸2の供給が、繊維機械5に取り込まれる糸長(LFA)が一定な状態で行われていることをチェックできるマイクロプロセッサ装置6、言い換えると、LFA値が、繊維機械5での製造運転中一定に保たれていることをチェックするマイクロプロセッサ装置6に接続される。こうした運転は、各糸2に対してそれぞれの供給制御装置4により測定した取り込み糸長(LFA)についてのデータを取得し、それぞれの供給制御装置4に基づいて糸の供給張力を必要に応じて調整し、測定LFA値が、所望の設定値に等しい状態に維持されるように、LFA値を適正化する。
【0028】
図1において、マイクロプロセッサ装置6は、各供給制御装置4の外部に設けられるように示されているが、供給制御装置の各々は、好ましくは、添付図面において符号6で示すものに相当する手段を備え、各供給制御装置内に設けたこうした手段により、各供給制御装置の動作を制御し、例えば、公知の機械制御手段へのシリアル接続により繊維機械5と個別にやり取りを行うことができるようにする。
【0029】
図1に示す装置は、本発明による方法を、ストッキング製造機、シームレス製品製造機等の単体製品製造用繊維機械、及び織機、丸編機等の連続布地製造用繊維機械の双方に、実施できるものである。第1のタイプ(単体製品向け)の機械に関する方法の実施は、図2の図面に例示的に示してあり、第2のタイプ(連続布地製品向け)の機械に関する方法の実施は、図3の図面に例示的に示してある。
【0030】
図2を参照すると、まず、単体製品製造用繊維機械では、個々の製品(例えば、単一のストッキング)を製造する例について、通常、「サイクル」と呼ばれるものを把握できるようにしてあることに留意されたい。したがって、以下、本明細書では、用語「製造サイクル」は、機械の製造段階を指すものとして用い、用語「ゼロサイクル」は、ある「製造サイクル」から次の製造サイクルへの移行段階を指すものとして用いる。
【0031】
こうした製品を製造中の繊維機械により取り込まれる各糸の長さ(LFA)を一定に維持する方法を実施するには、このLFAについて基準値を定める。この値、すなわち設定値は、供給制御装置4による自習サイクル(それ自体公知である)で得ることができる。この自習サイクルでは、得られる製品の責任者によりなされる、欠陥のない製品を得ることを目的とする分析を受けた後において、各供給制御装置が、製品を製造する繊維機械(5)に供給される糸の長さ、すなわち量の値を測定し、次いで、この値を各供給制御装置4の基準値としてマイクロプロセッサ装置6に記憶させる。
【0032】
こうする代わりに、この設定値は、過去に得た製造データに基づいて、各供給制御装置4(マイクロプロセッサ装置6が、各供給制御装置内にある場合)に直接記憶させてもよい。これら双方の場合において、各供給制御装置4は、本発明に従った、他の装置の運転におけるデータと等しい又は異なるLFA値で(内部又は外部にあるマイクロプロセッサ装置による制御を受けて、)運転してもよい。
【0033】
設定値は、一定の品質を有することが最初に確認された製品を製造した後において、全ての供給制御装置4について計算された平均LFA値でもよい。
【0034】
単体製品の製造中、公知の編機シリンダの回転毎の糸供給量(LFA)が、例えば、編み模様、糸の個性、又は収縮等による不連続的な要因で、一定でなくなり、「製造サイクル」全般に渡って供給装置毎に異なり、製造中の時点毎に変化することがある。したがって、本発明による制御方法は、サイクルの終了毎にチェックを行うことによって実施してもよい。こうして、本発明による制御の目的は、各供給制御装置を通じて供給される糸量(LFA)と、対応する設定値(自習値でもよい)との間における計算差を、全ての「製造サイクル」中最小化して、糸量を一定化し製造される単体製品を均一化することにある。
【0035】
図2の図面において実施される方法では、繊維機械5に供給される全ての糸についてLFA値を一定に保つ制御は、状態1(図2のブロック20)によるステップで始まる。このステップでは、マイクロプロセッサ装置6は、繊維機械5が、「製造サイクル」段階にあるのか、「ゼロサイクル」段階にあるのかをチェックする。繊維機械の状態は、繊維機械から出力され繊維機械の駆動シャフトに関する信号をモニターすることによって、繊維機械(駆動シャフト)に適切に取り付けたセンサによって、マイクロプロセッサ装置6が、繊維機械の制御手段に組み込まれている場合にはシリアル命令によって、又は他の種々の公知方法で判断される。
【0036】
状態2(ブロック21)で、繊維機械が、「製造サイクル」にある間、マイクロプロセッサ装置は、如何なる制御も行わない。しかしながら、マイクロプロセッサ装置6が、「ゼロサイクル」への移行を検出すると、マイクロプロセッサ装置6は、次の状態に移行する。この次段の状態3(ブロック22)では、マイクロプロセッサ装置6は、例えば、シリアル回線を通じて、個々の供給制御装置4に問合せを行って、「製造サイクル」中の供給糸量(LFA)についての情報を収集する。
【0037】
この問合せを行った後、状態2(ブロック23)では、マイクロプロセッサ装置は、各供給制御装置4での消費量、すなわち取り込み糸長(LFA)を、設定値又は自習設定値と比較して、各供給制御装置4による作用張力に必要な補正を施して、生じ得る誤差範囲を最小化する。実際には、マイクロプロセッサ装置が、糸供給が、設定した供給量よりも大であることを検出すると、対応する供給制御装置4の作用張力を増加し、一方、マイクロプロセッサ装置が、糸供給が、設定した供給量よりも小であることを検出すると、対応する供給制御装置4の作用張力を減少させる。個々の供給装置へ伝えられる張力調整の程度は、一定値(好ましくはプログラム化可能なもの)又は計算誤差の関数であってもよい。
【0038】
次の状態5(ブロック24)では、マイクロプロセッサ装置6は、ブロック23での修正を対応供給制御装置4に伝える前に、新たな作用張力と初期張力との差異が、所定の又はプログラム可能な値よりも大であるか否かを、次の状態に移行する前に、確認する。状態6A(ブロック25)で、マイクロプロセッサ装置6が、新たな作用張力と初期設定値との差異の程度が、所定の又はプログラム可能な値よりも大であることを確認すると、繊維機械を停止し、又は、繊維機械が、消費量、すなわち供給糸長を一定に維持できなくなる限界領域に入りつつあることを作業員に表示する工程に進む。例えば、張力が、供給制御装置4で設定可能な最小若しくは最大張力、又は糸が耐え得る最大張力に極めて近い場合である。
【0039】
設定する新たな作用張力の値が、許容可能であることが確認されると、マイクロプロセッサ装置6は、次の製造サイクルで使用すべき新たな作用張力を、供給制御装置毎に設定する(状態6B、ブロック26)。マイクロプロセッサ装置は、待機状態に入り、状態7(ブロック27)で、「ゼロサイクル」段階から「製造サイクル」段階への繊維機械の移行のモニターに専念する。
【0040】
マイクロプロセッサ装置6が、「ゼロサイクル」段階が、「製造サイクル」段階へ移行したことを検出すると(状態8、ブロック28)、マイクロプロセッサ装置は、状態1に移行する。
【0041】
上述の説明は、本発明を実施する方法の一つについてのものであることは明白である。この点、本発明による方法については、本発明を変更することなく、種々の修正を加えることができる。図2に関して説明した態様に対する、いくつかの修正態様及び/又は変形態様を、以下に説明する。こうした変形態様は、次の通りである。
【0042】
a)上述したように、制御全体を、外部装置ではなく、「製造サイクル」から「製造サイクル」への移行を確認するために繊維機械に適切に結合された、各供給装置により行ってもよい。この場合の供給制御装置4は、マイクロプロセッサ装置6に相当するものを備えてもよい。
【0043】
b)マイクロプロセッサ装置は、そのLFA設定値として、固定的基準値(自習値又は設定値)ではなく、独立した基準装置により測定された、又は複数個の若しくは全ての供給制御装置4から出力されたLFAの平均値として得た、LFA値を持ってもよい。
【0044】
c)LFA制御全体を、外部装置6ではなく、マスターとして用いる供給制御装置4の一つにより行い、他の全ての供給制御装置4は、マスターに従って運転されるように指示するようにしてもよい。
【0045】
d)マイクロプロセッサ装置6は、各「製造サイクル」の終了毎に制御を行うように限定されるのではなく、同じ「製造サイクル」中で、制御サイクルを複数回、例えば、繊維機械のシリンダの1回転中の複数時点毎に、又は「n」回転毎に実施してもよい。
【0046】
e)全ての「製造サイクル」が、必ずしも同じである必要はなく、異なるサイクルの一定の繰り返し(製品1、製品2、製品2・・・・)であってもよい。この場合も、適切な方法によりマイクロプロセッサ装置6を用いて、処理できる。
【0047】
次に、図3では、連続布地又は製品を製造する繊維機械に、本発明による方法を実施する場合を考慮して説明する。この種の方法では、「製造サイクル」と「ゼロサイクル」との間の差異を把握することはできないが、2個の機械状態(以下、「機械製造中」と「機械が製造中でない」という)を特定できる。繊維機械に、基準信号、すなわち「ゼロサイクル」を設定できないので、制御を一定のペースで行うため、同期信号(PRX)が必要となる。この信号は、繊維機械から出力される信号、繊維機械に適切に設けたセンサから出力される信号、又はシリアル回線を通じて受信され工程に同期する命令を介した信号でよい。例えば、PRX信号は、繊維機械のシリンダの1回転中の複数回又は1回転の倍数毎に出力される、すなわち、タイミングが取られる。
【0048】
したがって、本発明による方法の目的は、「機械が製造中」の段階において、各供給装置から供給される糸量(LFA)とそれぞれ対応する設定値との間の計算誤差を、図2に関して先に説明した場合において得られたように、最小化することにある。
【0049】
この実施形態での方法の実施は、状態1(図3のブロック30)で始まる。この段階では、マイクロプロセッサ装置6は、繊維機械5が、「機械が製造中」の状態又は「機械が製造中でない」状態のいずれの状態にあるかをチェックする。こうした状態は、繊維機械から直接出力される信号によって、適切に設けたセンサによって、繊維機械に組み込まれている場合にはシリアル命令によって、又は、公知の他の方法で、判断できる。
【0050】
繊維機械5が、「機械が製造中でない」状態にある間は、マイクロプロセッサ装置6は、状態2(ブロック31)で、繊維機械の状態をチェックする時には、如何なる制御も行わない。マイクロプロセッサ装置は、「機械が製造中」の状態を検出すると、次の状態に移行する。
【0051】
状態3(ブロック32)では、マイクロプロセッサ装置6は、同期のPRX信号又は「機械が製造中でない」状態の認識を示す信号を待機し続ける。こうした信号の受信判断は、繊維機械から直接、適切に設けられたセンサから、又は、繊維機械に組み込まれている場合にはシリアル命令を通じて出力される信号(ハードウェア)をモニターすることにより行う。
【0052】
繊維機械6が、「機械製造中」の状態にある場合には、マイクロプロセッサ装置6は、如何なる制御も行わないが、繊維機械の状態を継続してモニターする(状態4、ブロック33)。「機械が製造中でない」状態になると、マイクロプロセッサ装置6は、次の状態、すなわち状態5に移行する(ブロック34)。後者の状態では、マイクロプロセッサ装置6は、シリアル回線を通じて、各供給制御装置に問合せを行い、2個の同期信号(PRX)の間における供給糸量(LFA)についての情報を収集する。次の状態6(ブロック35)では、マイクロプロセッサ装置6は、供給制御装置から送られてくる供給糸長(LFA)を設定値と比較し、作用張力に必要な修正を行って、誤差の範囲を縮小又は誤差をなくするようにする。実際には、糸の消費量が、設定値よりも大であることをアルゴリズムにより検出すると、供給制御装置の作用張力を増加し、一方、糸の消費量が、設定値よりも小であることをアルゴリズムにより検出すると、供給制御装置の作用張力を減少する。個別の供給制御装置に出力される、張力調整の程度は、一定値(好ましくはプログラム化可能なもの)又は計算誤差の関数であってもよい。
【0053】
次の状態7(ブロック36)では、マイクロプロセッサ装置6は、個別の供給制御装置に修正値を出力する前に、新たな作用張力と設定張力との間の差が、一定の又はプログラム可能な最大許容修正値よりも大であるか否かを、次の状態に移行する前に、確認する。マイクロプロセッサ装置6が、新たな作用張力における差の程度が、最大許容修正値よりも大であることを検出すると(状態8A、ブロック37)、繊維機械を停止し、又は、繊維機械が、消費量を一定には維持できなくなる限界領域に入りつつあることを作業員に表示する。例えば、張力が、供給制御装置で設定可能な最小若しくは最大張力、又は糸が耐え得る最大張力に極めて近い場合である。こうした表示は、発光又は音響装置により公知の方法でなされる。
【0054】
修正張力が、許容できる場合には、マイクロプロセッサ装置は、各供給制御装置4に、所望のLFA値を一定に維持するのに用いる、新たな張力値を設定する(状態8B、ブロック38)。
【0055】
図2の場合と同様に、上述の説明は、連続製造繊維機械に適用した本発明を実施する方法の一つについてのものであることは明白である。変形態様は、次の通りである。
【0056】
a.マイクロプロセッサ装置は、繊維機械と適切にインターフェースで結合された、各供給制御装置内に設けて、「機械が製造中」から「機械が製造中でない」への移行を確認するとともに、PRX同期信号が入力されるようにしてもよい。
【0057】
b.図2の場合と同様に、マイクロプロセッサ装置は、そのLFA設定値として、固定的基準値(自習値又は設定値)ではなく、その代わりに、基準装置により測定された、又は複数個の供給制御装置の平均値として得た、LFA値を持ってもよい。
【0058】
c.本発明による方法は、供給制御装置の一つの制御装置をマスターとして用いて実施してもよい。
【0059】
d.「機械稼動中」状態の間は、繊維機械処理ステージは、製造中の全体に亘って,一定である代わりに、周期的に又は随意に変動して、マイクロプロセッサ装置又は繊維機械5自体が、適切にインターフェースで結合され、PRX制御同期毎に、取り込まれる糸長LFA設定値を変動するようにしてもよい。
【0060】
以上のことから、本発明による方法は、次のように要約及び一般化できる。マイクロプロセッサ装置6(複数個の供給制御装置5の外部にある、供給制御装置の一部にある、又は、複数個の制御装置の1個にのみある)は、設定値(欠陥がない製品が得られる、サンプル製造、及び/又は、自習サイクルの後で得られる)に基づいて、繊維機械5へ各供給制御装置4により供給される糸長(すなわち、LFA)を確認する。このチェックは、完成品を製造するのに要する時間、又は連続基準信号により定められた時間である、基準期間の終了時に行われる。
【0061】
マイクロプロセッサ装置6は、基準期間において各供給制御装置4により供給される実際の糸量に対応する現実のLFA値を、設定値と比較する。差があれば、差があることを検出した、個別の供給制御装置4の張力値を変更して、LFA値を予め定めた設定値に戻す。
【0062】
本発明によれば、明細書の始めに記載した発明の目的が達成される。
【0063】
本発明の種々の実施形態を説明したが、上述の記載に基づいて、他の実施形態も考え得るものであり、こうした、他の実施形態も、特許請求の範囲による保護範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による装置をブロックで示す概略図である。
【図2】本発明による方法の第1実施形態をフローチャートである。
【図3】本発明による方法の第2実施形態をフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の糸を、一定の供給長で繊維機械(5)に供給する方法であって、各糸(2)は、スプール(1)から繰り出て、繊維機械(5)に導かれる前に、糸(2)の張力を所定値に維持するために設けられる通常の供給装置(4)と協働し、繊維機械(5)への供給を制御する少なくとも1個の制御手段(6)を備える方法において、繊維機械(5)へ供給される糸(2)毎に維持すべき取り込み糸長値を設定し、繊維機械(5)により有効に取り込まれる糸長の実際値を測定し、設定した糸長値と実際値とを比較し、比較の結果が、所定値と実測値との差を示すたびに、供給装置(4)の少なくとも1個に作用することにより、対応する糸(2)の張力値を修正し、この張力修正により、取り込み糸長値が所定値に等しくなるようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所定値は、前記供給装置(4)の各々が、前記繊維機械に供給される対応する糸の量を測定した期間中にサンプル製品を製造した後に決定される設定値であり、当該設定値は、当該サンプル製品を分析して欠陥がないことを確認した後に、決定され、当該設定値は、記憶されて、前記供給装置の各々により測定される対応する実際値と以後において比較するための設定取り込み糸長基準値として使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定値は、以前に行った製造から得る所定製造データに基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定値は、欠陥のないサンプル製品の製造中に、前記繊維機械へ糸を供給する複数個の供給装置により供給される糸長の測定値の平均として得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定値は、前記糸(4)用の供給装置(4)の外部にある制御手段(6)に記憶され、当該制御手段(6)は、前記方法の実施を制御することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定値は、前記繊維機械(5)へ糸を供給する供給装置(4)の各々の制御手段に記憶され、前記供給装置の各々は、前記機械装置にインターフェースを介して直接接続されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所定値は、前記繊維機械(5)へ糸を供給する供給装置(4)の一つの制御手段に記憶され、当該一つの供給装置では、前記所定値が、前記供給装置の残りの全てに対して糸の張力の制御及び調整を司ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記取り込まれる糸長に対する実際値の測定は、所定の時間内に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の時間は、1個の製品の製造開始から製造終了までの時間であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の時間は、前記繊維機械の製造段階に関連する2個の同期信号間の時間であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記所定値と前記実測値との間の比較は、単体製品を製造する繊維機械で製造される単体製品毎に製造サイクルの開始前に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所定値と前記実測値との間の比較は、連続製品を製造するために設けられる繊維機械の製造段階における所定の瞬間に対応する基準信号の発生後に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記供給糸長を一定に維持するために必要な張力修正が、所定値を超える場合には、警告信号を発することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記供給糸長を一定に維持するために必要な張力修正が、所定値を超える場合には、前記繊維機械(5)を停止することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数本の糸を、一定の供給長で繊維機械(5)に供給する装置であって、各糸(2)は、スプール(1)から繰り出て、繊維機械(5)に供給する装置(4)と協働し、供給装置(4)は、糸(2)の張力を制御調整して張力を所定値に等しくするために設けられるタイプのものであり、繊維機械(5)への全ての糸の供給を制御する制御手段(6)を備える装置において、前記制御手段(6)は、前記制御手段が、少なくとも1個の前記供給装置(4)により供給される実際の糸量に関するデータを、前記制御手段に記憶した所定の供給糸量値を比較する特定時点を定める同期手段に接続され、前記比較によって、前記制御装置は、前記所定値と前記実測値との差を判定して、少なくとも1個の制御装置(4)を操作することにより、前記糸(2)の全てが、同じ長さ又は同じ量で、前記繊維機械(5)に供給されるように、対応する糸の張力を修正することを特徴とする装置。
【請求項16】
前記制御手段(6)は、前記供給装置(4)の全ての外部に設けられ、前記制御手段は、前記供給装置に接続されて、前記供給装置により供給される糸量に関して前記供給装置からデータの出力を受け、前記糸への張力調整を制御することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記外部に設けられた制御手段(6)は、シリアル回線により前記供給装置に接続されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記供給装置(4)の中の1個の一部に、前記制御手段(6)が設けられて、前記供給装置(4)の全ての動作を制御することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記供給装置(4)の各々の一部に、前記制御手段(6)が設けられることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記同期手段は、前記繊維機械(5)に機能的に接続されることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記繊維機械(5)の一部に、前記同期手段が設けられることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項22】
前記同期手段は、前記繊維機械(5)の回転部材の位置を検出する手段であることを特徴とする、請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−173445(P2009−173445A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−309095(P2008−309095)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(596111896)ビ.ティ.エッセ.エルレ.インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ (8)
【Fターム(参考)】