説明

複製欠損フラビウイルスワクチンおよびワクチンベクター

本発明は、複製欠損フラビウイルスワクチンおよびワクチンベクターならびに対応する組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、複製欠損フラビウイルスワクチンおよびワクチンベクター、ならびに対応する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フラビウイルスは世界中に分布しており、世界的な公衆衛生問題である。フラビウイルスはまた、獣医学に関する病原体として大きな影響を及ぼす。フラビウイルス病原体には、黄熱病(YF)ウイルス、デング1-4型(DEN1-4)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、西ナイル(WN)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、およびTBE血清型群に由来する他のウイルス、例えば、キャサヌール森林病(KFD)ウイルスおよびオムスク出血熱(OHF)ウイルスが含まれる。YFワクチン[生弱毒化ワクチン(LAV)17D株]、JEワクチン[不活化ワクチン(INV)およびLAV]、ならびにTBEワクチン(INV)が利用可能である。DENおよびWNに対する認可されたヒトワクチンは現在利用することができない。例えば、ウマWNワクチン(INV、組換えおよび生キメラワクチン)、アジアではウマ脳炎およびブタ死産を予防するためにJEワクチン(INVおよびLAV)、UKではヒツジ神経疾患を予防するために跳躍病フラビウイルスワクチン(INV)、ならびにチェコ共和国では家畜に用いられるTBEワクチン(INV)を含む、獣医学ワクチンが用いられている(Monath and Heinz, Flaviviruses, in Fields et al. Eds., Fields Virology, 3rd Edition, Philadelphia, New York, Lippincott-Raven Publishers, 1996, pp. 961-1034(非特許文献1))。
【0003】
ダニ媒介脳炎(TBE)は、ヒトの最も重要なダニ媒介性ウイルス性疾患である。ダニ媒介脳炎は、欧州および北アジアの地域における風土病であり、年に10,000件を超える入院の原因であり、致死率は欧州では0.5〜1.5%、シベリアおよび極東では6〜40%である。患者のかなりの割合が持続性の精神神経後遺症にかかる。ニワトリ胚細胞培養において製造された不活化ワクチンが、この疾患の予防に有効であることが分かっている。例えば、オーストリアのワクチン接種率は86%(欧州諸国の中で最も高い)であり、入院件数は約90%減少した(Heinz and Kunz, Arch. Virol. Suppl. 18:201-205, 2004(非特許文献2))。不活化ワクチンは高価であり、一次免疫のために3回の摂取を必要とする。免疫を維持するために定期的な追加免疫(2〜5年ごと)が必要とされる。従って、1〜2回の投与後に効果があり、長続きする、例えば、生涯にわたる免疫を付与する(YF 17D免疫化によって得られる免疫と類似する)安価なTBEワクチンが必要とされており、実際に、WHOによって優先すべき主要事項と特定されている。TBE親ウイルスそれ自体の経験的もしくは合理的な弱毒化、またはTBEウイルスもしくはランガットウイルス(LGT、(血清学的に)TBEと密接に関連する天然弱毒化フラビウイルス)とデング4ウイルスとのキメラ化による、過去数十年間のTBE LAV候補の開発は、候補の毒性が残存している、および/または免疫原性が低い/過剰に弱毒化されるという問題のために困難に直面している(Wright et al., Vaccine 26:882-890, 2008(非特許文献3); Maximova et al., J. Virol. 82:5255-5268, 2008(非特許文献4); Rumyantsev et al., Vaccine 24:133-143, 2006(非特許文献5); Kofler et al., Arch. Virol. Suppl. 18:191-200, 2004(非特許文献6);およびその中の参考文献)。
【0004】
フラビウイルスは、小さく、エンベロープのある+鎖RNAウイルスであり、主に、節足動物の媒介動物(カまたはマダニ)によって自然宿主に伝播する。自然宿主は、主に、脊椎動物、例えば、ヒトを含む様々な哺乳動物、および鳥類である。フラビウイルスゲノムRNA分子は長さが約11,000ヌクレオチド(nt)であり、長さが約120ヌクレオチドの5’非翻訳末端領域および約500ヌクレオチドの3’非翻訳末端領域(UTRs)が隣接する長いオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。このORFは、翻訳と同時におよび翻訳後に切断されて個々のウイルスタンパク質を生じるポリタンパク質前駆体をコードする。これらのタンパク質は、以下の順序:C-prM/M-E-NS1-NS2A/2B-NS3-NS4A/4B-NS5でコードされている。式中、C(コア/カプシド)、prM/M(プレ膜/膜)、およびE(エンベロープ)は、構造タンパク質、すなわちウイルス粒子の成分であり、NSタンパク質は、細胞内ウイルス複製に関与する非構造タンパク質である。フラビウイルス複製は細胞質内で起こる。細胞感染およびゲノムRNAの翻訳が起こると、ポリタンパク質のプロセシングは、prM、E、およびNS1タンパク質の疎水性シグナルによって向けられるように、ポリタンパク質のprM部分が感染細胞の小胞体(ER)内腔に移行することから開始する、それに続いて、EおよびNS1部分が移行する。prM、E、およびNS1タンパク質のアミノ末端は、ER膜の内腔側に位置する細胞シグナラーゼ(signalase)による切断によって作られ、結果として生じた個々のタンパク質はカルボキシ末端が膜に固定されたままになる。非構造領域にある残りの切断の大部分は、ウイルスのNS2B/NS3セリンプロテアーゼによって行われる。このウイルスプロテアーゼはまた、子孫ビリオンに見出される成熟Cタンパク質のC末端の作製も担っている。新たに合成されたゲノムRNA分子およびCタンパク質は高密度の球状ヌクレオカプシドを形成し、ヌクレオカプシドは、EおよびprMタンパク質が埋め込まれた細胞質に取り囲まれる。成熟Mタンパク質は、ウイルス放出の直前に、細胞フューリンまたは類似のプロテアーゼによりprMが切断されることによって生成される。エンベロープの主要タンパク質であるEは、フラビウイルス感染に対する免疫の主な相関物である中和抗体の主な標的である。他の重要な免疫特性は、ウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答である。様々なフラビウイルス構造タンパク質および非構造タンパク質において、複数のCD8+およびCD4+CTLエピトープが特徴付けられている。さらに、自然免疫応答が、ウイルスクリアランスならびに適応免疫応答および免疫記憶の発生の調節の両方に寄与する。
【0005】
前記のフラビウイルスに対する不活化(INV)ワクチンおよび生弱毒化(LAV)ワクチンに加えて、他のワクチンプラットフォームが開発されている。一例は、黄熱病ウイルスのカプシドおよび非構造配列、ならびに免疫が求められる他のフラビウイルスに由来するprM-Eタンパク質を含むキメラフラビウイルスをベースとしている。この技術は、デング(DEN)、日本脳炎(JE)、西ナイル(WN)、およびセントルイス脳炎(SLE)ウイルスワクチン候補を開発するのに用いられている(例えば、米国特許第6,962,708号(特許文献1)および同第6,696,281号(特許文献2)を参照されたい)。黄熱病ウイルスをベースとするキメラフラビウイルスから、臨床試験において極めて有望な結果が得られている。
【0006】
別のフラビウイルスワクチンプラットフォームは、偽感染性ウイルス(PIV)技術の使用をベースとしている(Mason et al., Virology 351:432-443, 2006(非特許文献7); Shustov et al., J. Virol. 21:11737-11748, 2007(非特許文献8); Widman et al., Adv. Virus. Res. 72:77-126, 2008(非特許文献9); Suzuki et al., J. Virol. 82:6942-6951, 2008(非特許文献10); Suzuki et al., J. Virol. 83:1870-1880, 2009(非特許文献11); Ishikawa et al., Vaccine 26:2772-2781, 2008(非特許文献12); Widman et al., Vaccine 26:2762-2771, 2008(非特許文献13))。PIVは、欠失により弱毒化された複製欠損ウイルスである。生フラビウイルスワクチンとは異なり、PIVはインビボで一回(または、任意で、二成分構築物については限られた回数;下記を参照されたい)複製し、これにより、安全性に関して利益が得られ得る。PIVはまたウイルス血症および全身感染を誘導しない。さらに、不活化ワクチンと異なり、PIVはウイルス感染全体を模倣し、これにより、強いB細胞応答およびT細胞応答が誘導されるために効力が高まり、免疫持続性が長くなり、用量の必要条件が下がる。全ウイルスと同様に、PIVワクチンは抗原提示細胞、例えば、樹状細胞を標的とし、toll様受容体(TLR)を刺激し、バランスのとれたTh1/Th2免疫を誘導する。さらに、PIV構築物は、細胞変性効果(CPE)がほとんどまたは全く無く、基質細胞(substrate cell)において高力価まで増殖することが示されており、このために、任意で、感染基質細胞を複数回、収集および/または増殖することによって、高収率で製造することが可能になる。
【0007】
PIV技術の原理を図1および図2に示した。この技術には2つのバリエーションがある。第1のバリエーションでは、カプシドタンパク質(C)の中に大きな欠失があり、このために変異体ウイルスが正常細胞において感染ウイルス粒子を形成できない一成分偽感染性ウイルス(s-PIV)が構築される(図1)。この欠失によって、RNA環化配列を含有するCタンパク質の最初の約20コドン、ならびにCの末端にあるウイルスプロテアーゼ切断部位およびprMシグナルペプチドをコードする、ほぼ同じ数のコドンは除去されない。s-PIVは、例えば、製造中に、Cタンパク質がトランスで供給される基質(ヘルパー)細胞培養において、例えば、Cタンパク質(もしくはCタンパク質を含む、さらに大きなヘルパーカセット)を産生する安定トランスフェクト細胞において、またはCタンパク質を発現するアルファウイルスレプリコン[例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)レプリコン]もしくはCタンパク質を発現する別の細胞内発現ベクターを含有する細胞において増殖することができる。インビボでの接種後に、例えば、免疫化後に、PIVは、感染細胞において、欠失のトランス相補の非存在下では、周囲の細胞に蔓延することなく複製を一回行う。感染細胞は、PIVの中のprM-E遺伝子の産物である空のウイルス様粒子(VLP)を産生し、これにより中和抗体応答が誘導される。ウイルスエピトープがMHC Iに提示されることによって、T細胞応答も誘導されるはずである。このアプローチは、YF 17DウイルスおよびWNウイルスならびにWN/JEおよびWN/DEN2キメラウイルスに適用されている(Mason et al., Virology 351:432-443, 2006(非特許文献7); Suzuki et al., J. Virol. 83:1870-1880, 2009(非特許文献11); Ishikawa et al., Vaccine 26:2772-2781, 2008(非特許文献12); Widman et al., Vaccine 26:2762-2771, 2008(非特許文献13);WO2007/098267(特許文献3);WO2008/137163(特許文献4))。
【0008】
第二のバリエーションでは、二成分PIV(d-PIV)が構築される(図2)。基質細胞を2種類の欠損ウイルスRNAでトランスフェクトする。一方にはC遺伝子に欠失があり、もう一方にはprM-Eエンベロープタンパク質遺伝子が無い。2つの欠損ゲノムは互いに相補し、これにより、細胞培地中に2つのタイプのPIVが蓄積する(Shustov et al., J. Virol. 21:11737-11748, 2007(非特許文献8); Suzuki et al., J. Virol. 82:6942-6951, 2008(非特許文献10))。任意で、2種類のPIVを適切なヘルパー細胞株において別々に製造し、次いで、二成分製剤の中で混合することができる。後者から、2種類の成分の相対濃度を調節し、免疫原性および効力を高めることができるという利点が得られる場合がある。このタイプのPIVワクチンは、接種部位にある一部の細胞に両成分が同時感染するため、インビボでの蔓延を限定的にできるはずである。組織内には、最初に同時感染した細胞によって産生されたウイルス粒子より多くの細胞があるので、蔓延は自己限定的であると予想される。さらに、効率的な同時感染にはかなり高いMOIが必要である。接種部位の外側にある細胞は、(例えば、流入領域リンパ節において)効率的に同時感染すると予想されない。ΔC PIVのみに感染した細胞は高免疫原性VLPを産生する。同時感染細胞は、2つのタイプのパッケージングされた欠損ウイルス粒子を産生し、これも中和抗体を刺激する。この限定的な感染は、s-PIVと比較して強力な中和抗体応答およびT細胞応答をもたらすと予想される。循環フラビウイルスとの組換えを含む、製造中のまたはインビボでの組換えの機会を少なくするために、例えば、同義コドン置換を用いてヌクレオチド配列相同性を下げて、ならびに相補する環化5’エレメントおよび3’エレメントを変異させて、s-PIVおよびd-PIVの中のウイルス配列を改変することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,962,708号
【特許文献2】米国特許第6,696,281号
【特許文献3】WO2007/098267
【特許文献4】WO2008/137163
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Monath and Heinz, Flaviviruses, in Fields et al. Eds., Fields Virology, 3rd Edition, Philadelphia, New York, Lippincott-Raven Publishers, 1996, pp. 961-1034
【非特許文献2】Heinz and Kunz, Arch. Virol. Suppl. 18:201-205, 2004
【非特許文献3】Wright et al., Vaccine 26:882-890, 2008
【非特許文献4】Maximova et al., J. Virol. 82:5255-5268, 2008
【非特許文献5】Rumyantsev et al., Vaccine 24:133-143, 2006
【非特許文献6】Kofler et al., Arch. Virol. Suppl. 18:191-200, 2004
【非特許文献7】Mason et al., Virology 351:432-443, 2006
【非特許文献8】Shustov et al., J. Virol. 21:11737-11748, 2007
【非特許文献9】Widman et al., Adv. Virus. Res. 72:77-126, 2008
【非特許文献10】Suzuki et al., J. Virol. 82:6942-6951, 2008
【非特許文献11】Suzuki et al., J. Virol. 83:1870-1880, 2009
【非特許文献12】Ishikawa et al., Vaccine 26:2772-2781, 2008
【非特許文献13】Widman et al., Vaccine 26:2762-2771, 2008
【発明の概要】
【0011】
本発明は、(i)カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列における1つまたは複数の欠失または変異と、(ii)1つまたは複数の異種の病原体、癌、またはアレルギー関連免疫原をコードする配列とを含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損または欠損偽感染性フラビウイルスを提供する。例えば、欠失/変異は、カプシド(C)配列;プレ膜(prM)および/もしくはエンベロープ(E)配列;カプシド(C)、プレ膜(prM)、およびエンベロープ(E)配列;または非構造タンパク質1(NS1)配列の中にあってもよい。
【0012】
異種免疫原は、例えば、狂犬病ウイルス(例えば、狂犬病ウイルスGタンパク質エピトープ)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)(例えば、OspA免疫原またはその免疫原性断片)、マダニ(例えば、64TRP、Isac、およびSalp20、またはその免疫原性断片からなる群より選択されるマダニ唾液タンパク質)、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザウイルスM2、ヘマグルチニン(HA)、もしくはノイラミニダーゼ(NA)エピトープ、またはその免疫原性断片)、ヒト免疫不全症ウイルス(例えば、コドン最適化HIV gag、tat/nef、もしくはgp120タンパク質、またはその免疫原性断片)、サル免疫不全症ウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV16またはHPV18カプシドタンパク質L1もしくはL2、またはその免疫原性断片)、呼吸器合胞体ウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルスFもしくはG糖タンパク質)、マラリア寄生生物、ならびに結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(下記も参照されたい)からなる群より選択される病原体に由来してもよい。
【0013】
複製欠損偽感染性フラビウイルスは、プレ膜(prM)および/またはエンベロープ(E)タンパク質をコードする配列を含んでもよい。さらに、複製欠損偽感染性フラビウイルスゲノムは、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ランガットウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、およびセントルイス脳炎ウイルス、その弱毒化株、およびそのキメラ(下記も参照されたい)より選択されてもよい。様々な例において、キメラは、第一のフラビウイルス(例えば、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルス)のプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)配列、ならびに第二の異なるフラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、またはランガットウイルス)のカプシド(C)および非構造配列を含む。
【0014】
複製欠損偽感染性フラビウイルスゲノムは、ゲノムのフラビウイルスと同じまたは異なるフラビウイルスに由来するプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)配列を含む粒子内にパッケージングされてもよい。さらに、異種免疫原をコードする配列は、1種もしくは複数のタンパク質の欠失または変異の代わりに、または1種もしくは複数のタンパク質の欠失または変異と組み合わせて挿入されてもよい。
【0015】
異種免疫原をコードする配列は、フラビウイルスゲノムのエンベロープ(E)タンパク質をコードする配列の中に挿入されてもよく、非構造1(NS1)タンパク質をコードする配列の中に挿入されてもよく、プレ膜(prM)タンパク質をコードする配列の中に挿入されてもよく、エンベロープ(E)タンパク質をコードする配列と非構造タンパク質1(NS1)をコードする配列の間の遺伝子間に挿入されてもよく、非構造タンパク質2B(NS2B)をコードする配列と非構造タンパク質3(NS3)をコードする配列の間の遺伝子間に挿入されてもよく、またはフラビウイルスゲノムの3’非翻訳領域でのバイシストロニック挿入として挿入されてもよい。
【0016】
本発明はまた、前記の第一の複製欠損偽感染性フラビウイルス、ならびにカプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むゲノムを含む第二の(またはさらなる)異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスを含む、組成物を含む。これらの組成物において、第二の異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスにおいて欠失または変異が生じる配列によってコードされる1つまたは複数のタンパク質は、第一の複製欠損偽感染性フラビウイルスにおいて欠失が生じる配列によってコードされる1つまたは複数のタンパク質と異なる。
【0017】
さらに、本発明はまた、本明細書に記載の1種もしくは複数の複製欠損偽感染性フラビウイルスおよび/または組成物を対象に投与する工程を含む、対象において免疫原に対する免疫応答を誘導する方法を含む。様々な例において、対象は、病原体に感染するリスクまたは癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有するリスクがあるが、病原体に感染していない、または癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有さない。他の例において、対象は、病原体に感染しているか、または癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有する。従って、本発明は予防方法および治療方法を含む。これらの方法において、免疫原は、例えば、狂犬病ウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ、マダニ、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、サル免疫不全症ウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、マラリア寄生生物、および結核菌(下記も参照されたい)からなる群より選択される病原体に由来してもよい。さらに、前記方法は、免疫原の供給源に加えてフラビウイルスゲノムによりコードされるタンパク質に対する免疫応答を誘導するための方法でもよい。様々な例において、対象は、フラビウイルスのプレ膜および/またはエンベロープタンパク質をコードする配列を含む偽感染性フラビウイルスのゲノムに対応するフラビウイルスに感染するリスクがあるが、偽感染性フラビウイルスのゲノムに対応するフラビウイルスに感染していない。他の例において、対象は、フラビウイルスのプレ膜および/またはエンベロープタンパク質をコードする配列を含む偽感染性フラビウイルスのゲノムに対応するフラビウイルスに感染している。
【0018】
本発明はまた、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列がダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている黄熱病ウイルスを含む、生弱毒化キメラフラビウイルスを含み、キメラフラビウイルスのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質の間のシグナル配列は、黄熱病ウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列とダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列とのハイブリッド、またはその変種を含む。様々な例において、キメラフラビウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列は、アミノ末端領域に黄熱病ウイルス配列およびカルボキシ末端領域にダニ媒介脳炎またはランガットウイルス配列を含む(下記を参照されたい)。
【0019】
さらに、本発明は、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列が、ダニ媒介脳炎またはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている西ナイルウイルスを含む、生弱毒化キメラフラビウイルスを含み、キメラフラビウイルスのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質の間のシグナル配列が、ダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列、またはその変種を含む。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載の1つまたは複数の偽感染性フラビウイルス、組成物、または生弱毒化フラビウイルス、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物を含む。さらに、組成物はアジュバントを含んでもよい。
【0021】
非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、または非構造タンパク質5(NS5)をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスも本発明に含まれる。
【0022】
さらに、本発明は、本明細書に記載の偽感染性フラビウイルスのゲノムまたは生弱毒化フラビウイルスのゲノムに対応する核酸分子、およびその相補鎖を含む。
【0023】
本発明はまた、前記の1つまたは複数の核酸分子を、複製欠損偽感染性フラビウイルスのフラビウイルスゲノムから欠失した任意の配列に対応するタンパク質を発現する細胞に導入する工程を含む、本明細書に記載の複製欠損偽感染性フラビウイルスを作る方法を提供する。これらの方法において、タンパク質は、細胞内で、第二の(または、さらなる)異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスのゲノムから発現させることができる。他の例において、タンパク質は、レプリコン(例えば、アルファウイルスレプリコン、例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルスレプリコン;下記を参照されたい)から発現される。
【0024】
本発明はまた、2つまたはそれ以上の複製欠損偽感染性フラビウイルスを含有する組成物を含む。ここで、複製欠損偽感染性フラビウイルスのうち2つは、以下:(a)日本脳炎ウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、およびデングウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス;(b)黄熱病ウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、およびデングウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス;ならびに(c)ダニ媒介脳炎ウイルス配列もしくはランガットウイルス配列を含むゲノムおよびボレリア・ブルグドルフェリ免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、ならびにダニ媒介脳炎ウイルス配列またはランガットウイルス配列を含むゲノムならびにマダニ唾液タンパク質免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、またはダニ媒介脳炎ウイルス配列またはランガットウイルス配列を含むゲノムならびにボレリア・ブルグドルフェリ免疫原およびマダニ唾液タンパク質免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルスからなる群より選択される。
【0025】
本明細書に記載の生弱毒化キメラフラビウイルスを含む薬学的組成物も本発明に含まれる。さらに、本発明は、このような薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象においてダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに対する免疫応答を誘導する方法を含む。様々な例において、対象は、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染していないが、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染するリスクがある。他の例において、対象は、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染している。
【0026】
さらに、本発明は、カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスを含む。ここで、フラビウイルスゲノムは、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列がダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている黄熱病ウイルス配列を含み、フラビウイルスゲノムのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質の間のシグナル配列をコードする配列は、黄熱病ウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列とダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列とのハイブリッド、またはその変種を含む。様々な例において、フラビウイルスゲノムのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列は、5’領域に黄熱病ウイルス配列および3’領域にダニ媒介脳炎またはランガットウイルス配列を含む。
【0027】
さらに、本発明は、カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスを含む。ここで、フラビウイルスゲノムは、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列がダニ媒介脳炎またはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている西ナイルウイルス配列を含み、フラビウイルスゲノムのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質の間のシグナル配列をコードする配列は、ダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列、またはその変種をコードする配列を含む。
【0028】
さらに、本発明は、カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスを含む。ここで、フラビウイルスゲノムにおける任意のカプシド(C)および非構造(NS)タンパク質はランガットウイルスに由来し、任意のプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)タンパク質はダニ媒介脳炎ウイルスに由来する。
【0029】
「複製欠損偽感染性フラビウイルス」または「PIV」とは、フラビウイルスゲノムに欠失または変異があるために複製欠損になっているフラビウイルスを意味する。欠失または変異は、例えば、大きな配列、例えば、本明細書に記載のカプシドタンパク質の大部分の欠失でもよい(環化配列は残存している;下記を参照されたい)。他の例において、異なるタンパク質(例えば、prM、E、NS1、NS3、および/またはNS5;下記を参照されたい)またはタンパク質の組み合わせ(例えば、prM-EまたはC-prM-E)をコードする配列が欠失される。このタイプの欠失は、異種免疫原を送達するためにPIVをベクターとして使用する場合、欠失によって、例えば、少なくとも欠失配列のサイズまであり得る配列を挿入することができるので有利な場合がある。他の例において、変異は、例えば、前記のように複製欠損をもたらすのであれば点変異でもよい。欠失または変異のために、ゲノムは、完全なフラビウイルス粒子を産生するのに必要な全てのタンパク質をコードしない。無くなった配列は、無くなった配列を発現するように操作された(例えば、レプリコンを用いる;s-PIV;下記を参照されたい)相補細胞株から、または同じ細胞内で2種類の複製欠損ゲノムを同時発現させることによってトランスで供給することができる。ここで、2種類の複製欠損ゲノムは一緒だと見なされた時に、産生に必要な全てのタンパク質をコードする(d-PIV系;下記を参照されたい)。
【0030】
相補タンパク質を発現しない細胞に導入されたら、ゲノムは複製し、場合によっては、「ウイルス様粒子」を作製する。ウイルス様粒子は細胞から放出され、細胞から離れることができ、免疫原性となるが、他の細胞に感染できず、さらなる粒子を生じない。例えば、カプシドタンパク質コード配列に欠失を含むPIVの場合、カプシドを発現しない細胞に感染した後に、prM-Eタンパク質を含むVLPが細胞から放出される。カプシドタンパク質が無いために、VLPにはカプシドおよび核酸ゲノムが無い。d-PIVアプローチの場合、必要とされる全てのタンパク質の産生に関して互いに相補する2種類のPIVに感染した細胞では、さらなるPIVが産生される可能性がある(下記を参照されたい)。
【0031】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、本発明のPIVベクターおよびPIVはかなり弱毒化されており、1〜2回の投与後でも極めて有効であり、長続きする免疫を付与する。さらに、不活化ワクチンと異なり、PIVはウイルス感染全体を模倣し、強いB細胞応答およびT細胞応答を誘導するので、効力を高め、免疫持続性を強め、用量の必要条件を下げることができる。さらに、全ウイルスと同様に、PIVワクチンは、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞を標的とし、toll様受容体(TLR)を刺激し、バランスのとれたTh1/Th2免疫を誘導する。PIV構築物はまた、CPEがほとんどまたは全く無く、基質細胞において高力価まで増殖することが示されており、このために、任意で、感染基質細胞を複数回、収集および/または増殖することによって、高収率で製造することができる。さらに、本発明のPIVベクターは、ワクチンが現在利用できない非フラビウイルス病原体に対するワクチンを開発するための選択肢を提供する。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一成分PIV(s-PIV)技術の模式図である。
【図2】二成分PIV(d-PIV)技術の模式図である。
【図3】マウスにおけるPIVの免疫原性および効力を試験する大まかな実験計画の模式図である。
【図4】マウスにおけるPIV-WN(RV-WN)によって誘導された体液性免疫応答とYF/WN LAV(CV-WN)によって誘導された体液性免疫応答を比較したグラフである。
【図5】PIV-YF(RV-YF)、YF 17D、PIV-WN(RV-WN)、およびYF/WN LAV(CVWN)を用いて免疫化したハムスターに、ハムスター適応Asibi(PIV-YFおよびYF 17Dワクチン)ならびに野生型WN-NY99(PIV-WNおよびYF/WN LAVワクチン)を抗原投与した結果を示す一連のグラフである。
【図6】指示したキメラフラビウイルスを用いて得られたYF/TBEおよびYF/LGTウイルス力価およびプラーク形態を示す表である。
【図7】指示したPIVを含有する細胞のWN/TBE PIV力価および免疫蛍光の例を示す表である。
【図8】VeroおよびBHK細胞株におけるYF/TBE LAVおよびPIV-WN/TBEの複製キネティクスを示す一組のグラフである(CV-Hypr=YF/Hypr LAV;CV-LGT=YF/LGT LAV;RV-WN/TBEV=PIV-WN/TBEV)。
【図9】神経毒性試験における、PIV-TBEおよびYF/TBE LAV構築物をIC接種したマウスの生存を示すグラフである(3.5週齢ICRマウス;RV-WN/Hypr=PIV-WN/TBE(Hypr);CV-Hypr=YF/TBE(Hypr)LAV;CV-LGT=YF/LGTLAV)。
【図10】神経浸潤性試験(3.5週齢ICRマウス)における、PIV-WN/TBE(Hypr)(RV-WN/Hypr)、YF/TBE(Hypr)LAV(CV-Hypr)、およびYF/LGT LAV(CV-LGT)構築物、ならびにYF 17DをIP接種したマウスの生存を示すグラフである。
【図11】s-PIV-TBE候補(左上パネル)、YF/TBEおよびYF/LGTキメラウイルス(右上パネル)、および対照(YF 17D、ヒト死菌TBEワクチン、およびモック;下パネル)を用いて免疫化した群について、TBEウイルス投与後の体重減少の変化によって測定されたマウスにおける病的状態を示す一連のグラフである。
【図12】狂犬病ウイルスGタンパク質を発現するPIV構築物の模式図、ならびに偽感染性ウイルスを作るための構築物のパッケージングおよび免疫化の模式図である。
【図13】(狂犬病Gによって例示される)生存可能な/発現性の構築物をもたらす挿入設計の模式図である。
【図14】指示したPIV-WN構築物(ΔC-狂犬病G、ΔPrM-E-狂犬病G、およびΔC-PrM-E-狂犬病G)でトランスフェクトした細胞の免疫蛍光分析を示す一連の画像および増殖曲線を示すグラフである。
【図15】指示したPIV構築物(ΔC-狂犬病G、ΔPrM-E-狂犬病G、およびΔC-PrM-E-狂犬病G)でトランスフェクトしたVero細胞の原形質膜上で発現したRabGの免疫蛍光分析を示す一連の画像である。
【図16】PIV-WN-狂犬病G構築物の模式図、およびこの構築物がヘルパー細胞では蔓延するが、ナイーブ細胞では蔓延しないことを示す一連の画像である。
【図17】PIV-WNベクターにおける狂犬病Gタンパク質遺伝子の安定性を示す一連のグラフである。
【図18】Vero細胞における一成分対二成分PIV-WN-狂犬病G変種の蔓延の比較を示す一組の画像である。
【図19】トランスフェクション後のヘルパー細胞における、d-PIV-WNのΔprM-E成分による完全長RSV Fタンパク質(A2株)の発現を示す一組の免疫蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、ベクターに挿入された異種の病原体、癌、およびアレルギー関連免疫原、ならびに、任意で、ベクターそれ自体に対する免疫を誘導するための方法において使用することができる、フラビウイルス配列を含む複製欠損または欠損偽感染性ウイルス(PIV)ベクターを提供する。本発明はまた、本明細書に記載のPIVおよび/またはPIVベクターの組み合わせを含む組成物、ならびに挿入された免疫原配列および/またはPIVそれ自体の配列に対する免疫応答を誘導するために、このような組成物を使用する方法も含む。さらに、本発明は、ダニ媒介脳炎ウイルス配列を含む特定のPIVおよび生弱毒化キメラフラビウイルス、ならびに関連するベクター、組成物、および使用方法を含む。本発明のPIVベクター、PIV、生弱毒化キメラフラビウイルス、組成物、および方法をさらに以下で説明する。
【0035】
PIVベクターおよびPIV
本発明のPIVベクターおよびPIVは、前記の一成分または二成分PIVをベースとしてもよい(WO2007/098267およびWO2008/137163も参照されたい)。従って、例えば、一成分PIVの場合、PIVベクターおよびPIVは、カプシドタンパク質をコードする配列において大きな欠失を含むゲノムを含み、カプシドタンパク質をトランスで産生する相補細胞株において産生することができる(一成分;図1および図12)。このアプローチによれば、カプシドコード領域の大部分は欠失され、このために、PIVゲノムは、正常細胞株(すなわち、カプシド配列を発現しない細胞株)およびワクチン接種した対象において感染性の子孫を産生することができない。カプシド欠失は、典型的には、ゲノム環化に必要なRNA配列(すなわち、位置1-26の領域にあるアミノ酸をコードする配列)、および/またはprMからMへの成熟に必要なprM配列を破壊しない。具体的な例では、欠失される配列は、Cタンパク質のアミノ酸26-100、26-93、31-100、または31-93をコードする配列に対応する。
【0036】
一成分PIVベクターおよびPIVは、CまたはC-prM-Eカセットのいずれかを発現する細胞株において増殖させることができ、高レベルまで複製する。一成分PIVベクターおよびPIVの発現に使用することができる例示的な細胞株には、BHK-21(例えば、ATCC CCL-10)、Vero(例えば、ATCC CCL-81)、C7/10、および脊椎動物またはカに由来する他の細胞が含まれる。このような細胞において、ウイルスベクターに由来するレプリコン、例えば、アルファウイルスレプリコン(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、またはロスリバーウイルスをベースとするレプリコン)を用いて、CまたはC-prM-Eカセットを発現させることができる。PIVベクター/PIVと相補配列との増殖性組換えの可能性を少なくするために、レプリコン内の(C、prM、および/またはEをコードする)配列はヌクレオチド変異を含んでもよい。例えば、相補Cタンパク質をコードする配列は非天然環化配列を含んでもよい。変異はコドン最適化によるものでもよく、これにより、PIV収率に関してさらなる利益を得ることができる。さらに、Cタンパク質配列を発現し(C-prM-Eカセットを発現しない)相補細胞の場合、例えば、prMの約20アミノ酸を含む、Cタンパク質のカルボキシ末端にアンカー配列を含むことが有益な場合がある(例えば、WO2007/098267を参照されたい)。
【0037】
本発明のPIVベクターおよびPIVはまた、前記の二成分ゲノム技術をベースとしてもよい。この技術は2つの部分ゲノム構築物を使用し、これらはそれぞれ、増殖性複製に必要な少なくとも1つのタンパク質(カプシドまたはprM/E)の発現が欠損しているが、同じ細胞に存在する時には、PIVを作るのに必要な全ての成分を産生する。従って、二成分ゲノム技術の一例では、第一の成分は、一成分PIVに関して前記に示したように、Cの大きな欠失を含み、第二の成分は、prMおよびEの欠失を含む(図2および図12)。別の例では、第一の成分はC、prM、およびEの欠失を含み、第二の成分はNS1の欠失を含む(図12)。両成分とも、RNA複製に必要なシス作用プロモーターエレメント、および複製酵素複合体を形成する完全な非構造タンパク質セットを含んでもよい。従って、両欠損ゲノムとも、5’非翻訳領域およびカプシドタンパク質のアミノ末端断片を含む、以下の天然タンパク質コード配列の少なくとも約60ヌクレオチド(エレメント1)を含んでもよい。この配列の後ろに、プロテアーゼ切断配列、例えば、ユビキチンまたは口蹄疫ウイルス(FAMDV)特異的2Aプロテアーゼ配列が続いてもよく、カプシドまたはエンベロープ(prM-E)コード配列のいずれかと融合してもよい。さらに、コドン最適化人工配列を用いると、複製能のあるウイルスが形成する可能性のある2種類の欠損ウイルスゲノム間での組換えの可能性を無くすことができる(例えば、WO2008/137163を参照されたい)。二成分ゲノムアプローチの使用は、相補ゲノムを発現する細胞株、例えば、一成分PIVアプローチに関して前記で議論したように、レプリコンで形質転換された細胞の開発を必要としない。二成分ゲノムアプローチにおいて使用することができる例示的な細胞株には、Vero(例えば、ATCC CCL-81)、BHK-21(例えば、ATCC CCL-10)、C7/10、および脊椎動物またはカに由来する他の細胞が含まれる。
【0038】
本発明において使用することができるd-PIVアプローチのさらなる例は、NS3配列またはNS5配列における欠失を含む相補ゲノムの使用をベースとしている。例えば、NS1、NS3,またはNS5タンパク質において、ORFにおいて数百アミノ酸と長い欠失を用いて、選択されたタンパク質配列全体を取り除くか、または1アミノ酸と短い欠失を用いて、タンパク質酵素活性(例えば、NS5 RNAポリメラーゼ活性、NS3ヘリカーゼ活性など)を不活性化することができる。または、アミノ酸の点変化(1アミノ酸と少ない変異または任意でそれ以上の変異)を任意のNSタンパク質に導入して、酵素活性を不活性化することができる。さらに、1つのヘルパー分子の中に、いくつかのΔNS欠失を組み合わせることができる。同じ異種遺伝子、すなわち、第一のd-PIV成分によって発現される異種遺伝子を、第二の成分のNS欠失の代わりに、または第二の成分のNS欠失と組み合わせて発現させて、発現される免疫原の量を増やすことができる。特に、ヘルパーの挿入能力は、NS欠失のサイズに比例して大きくなる。または、ヘルパーの欠失の代わりに異なる外来免疫原を挿入して、多価ワクチンを産生することができる。
【0039】
さらに、本発明において使用するためのPIVベクターおよびPIVの作製において使用することができる、さらなるアプローチは、例えば、WO99/28487、WO03/046189、WO2004/108936、US2004/0265338、US2007/0249032、および米国特許第7,332,322号に記載されている。
【0040】
本発明のPIVベクターおよびPIVは、1種類のフラビウイルス型(例えば、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBE、例えば、Hypr株)、ランガットウイルス(LGT)、黄熱病ウイルス(例えば、YF 17D)、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス(血清型1-4)、セントルイス脳炎ウイルス、クンジンウイルス、ロシオ(Rocio)脳炎ウイルス、イルヘウス脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポーワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセッタローブ(Absettarov)ウイルス、ハンザローバ(Hansalova)ウイルス、およびアポイ(Apoi)ウイルス)に由来する配列からなってもよく、2種類またはそれ以上のフラビウイルスに由来する配列を含んでもよい。これらのウイルスのいくつかの株の配列は、一般にアクセス可能な配列データベースから容易に入手することができる。他の株の配列は当技術分野において周知の方法によって容易に決定することができる。複数のフラビウイルスの配列を含むPIVベクターおよびPIVの場合、これらの配列は前記のキメラフラビウイルスの配列でもよい(例えば、米国特許第6,962,708号;米国特許第6,696,281号;および米国特許第6,184,024号も参照されたい)。ある特定の例において、キメラは、あるフラビウイルス(例えば、免疫が望ましい場合があるフラビウイルス)に由来するプレ膜およびエンベロープ配列、ならびに第二の異なるフラビウイルスに由来するカプシドおよび非構造配列を含む。具体的な1つの例では、第二のフラビウイルスは、黄熱病ウイルス、例えば、ワクチン株YF 17Dである。他の例には、下記のYF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、およびWN/LGTキメラが含まれる。別の例は、TBEウイルスprM-Eタンパク質を含有するLGTウイルスバックボーンをベースとするLGT/TBEキメラである。この遺伝的背景をベースとするPIVワクチンは、LGTがインビトロで非常に効率的に複製し、かなり弱毒化され、ヒトに対する免疫原性が高いので有利である。従って、キメラLGT/TBE PIVワクチンは、特にTBE prM-E遺伝子を含有しているために、ヒトにおいてTBEに対して強い特異的免疫応答を生じると予想される。
【0041】
本発明のベクターは、本明細書に記載のPIV構築物または生弱毒化キメラフラビウイルス(特に、YF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、およびWN/LGT;下記を参照されたい)をベースとしてもよい。PIV構築物をベクターとして用いることは、これらの構築物が大きな欠失を必ず含み、大きな欠失があると、複製効率が損なわれることなく、少なくとも欠失配列のサイズまで挿入を収容しやすくなるので、ある特定の状況において特に有利である。従って、PIVベクターは、一般的に、非常に小さな挿入(例えば、6〜10、11〜20、21〜100、101〜500、またはそれ以上の範囲のアミノ酸残基と、ΔC欠失または他の欠失の組み合わせ)、ならびに比較的大きな挿入または中間サイズの挿入(例えば、501〜1000、1001〜1700、1701〜3000、もしくは3001〜4000またはそれ以上の範囲の残基)を含むことができる。対照的に、ある特定の例において、特に、対応する欠失の非存在下で挿入が加えられる場合、生弱毒化ウイルスにおいて比較的短い配列を発現させることが有利な場合がある。本発明において使用することができる挿入部位に関するさらなる情報を下記に示した。さらに、下記でさらに示したように、本発明のPIVおよびキメラフラビウイルスにおける非フラビウイルス免疫原の発現は、フラビウイルスベクターウイルス病原体および標的異種免疫原(例えば、病原体(例えば、細菌、ウイルス、寄生生物、もしくは真菌の病原体)、癌、またはアレルギー関連免疫原)の両方に対して防御免疫を誘発する二重ワクチンをもたらすことができる。
【0042】
前記のように、本発明のPIVベクターおよびPIVは、キメラフラビウイルス、例えば、第一のフラビウイルス(例えば、免疫が求められるフラビウイルス)のプレ膜配列およびエンベロープ配列、ならびに第二の異なるフラビウイルス、例えば、黄熱病ウイルス(例えば、YF17D;前記ならびに米国特許第6,962,708号;米国特許第6,696,281号;および米国特許第6,184,024号を参照されたい)のカプシドおよび非構造配列を含むキメラフラビウイルスの配列を含んでもよい。さらに、PIVを構築するための供給源として、またはワクチン/ワクチンベクターそれ自体として用いられる本発明のキメラフラビウイルスは、任意で、1つまたは複数の特定の弱毒化変異(例えば、Eタンパク質変異、prMタンパク質変異、Cタンパク質における欠失、および/または3'UTRにおける欠失)、例えば、WO2006/116182に記載のもののいずれかを含んでもよい。例えば、Cタンパク質または3’UTRにおける欠失を、YF/TBEまたはYF/LGTキメラに直接適用することができる。同様の欠失を、他のキメラLAV候補、例えば、LGT/TBE、WN/TBE、およびWN/LGTゲノムをベースとするキメラLAV候補において設計および導入することができる。Eタンパク質変異に関して、WO2006/116182に記載のYF/WNキメラについて述べられたものと類似の弱毒化変異を、例えば、Eタンパク質の結晶構造の知識に基づいて設計し(Rey et al., Nature 375(6529):291-298, 1995)、使用することができる。さらに、TBEウイルスおよび他のフラビウイルスについて述べられた弱毒化Eタンパク質変異のさらなる例を表9に示した。これらも同様にキメラワクチン候補に導入することができる。
【0043】
本発明はまた、PIVベクターおよびPIVを設計するための土台として、生弱毒化キメラフラビウイルスベクターとして、ならびにキメラのプレ膜成分およびエンベロープ成分の供給源に対するワクチンとして使用することができる、新たな特定のキメラフラビウイルスを提供する。これらのキメラには、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスまたは関連prM-E配列が含まれる。従って、キメラは、prM-E配列、例えば、TBEのHypr株またはランガット(LGT)ウイルスに由来するprM-E配列を含んでもよい。キメラのカプシドおよび非構造タンパク質は、黄熱病ウイルス(例えば、YF 17D)または西ナイルウイルス(例えば、NY99)に由来するものを含んでもよい。
【0044】
これらの例示的なYF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、およびWN/LGTキメラの中心的な特徴は、カプシドタンパク質とprMタンパク質の間にあるシグナル配列である。下記の実施例に示したように、本発明者らは、YFをベースとするPIVキメラの場合、黄熱病配列およびTBE配列を含むシグナル配列を使用することが有利であることを発見した(下記を参照されたい)。一例では、このシグナル配列は、アミノ末端領域に黄熱病配列(例えば、SHDVLTVQFLIL)およびカルボキシ末端領域にTBE配列(例えば、GMLGMTIA)を含み、結果として、配列

となる。本発明者らはまた、WNをベースとするPIVキメラの場合、TBE配列(例えば、

)を含むシグナル配列を使用することが有利であることも発見した。従って、本発明は、前記のシグナル配列、または、例えば、シグナル配列でのプロセシングを実質的に妨害しない1〜8、2〜7、3〜6、または4〜5アミノ酸の置換、欠失、または挿入を有する、その変種を含む、YF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、およびWN/LGTキメラ、PIVおよびLAVの両方を含む。様々な例において、置換は、あるアミノ酸残基と別の生物学的に類似する残基の置換を特徴とする「保存的置換」である。保存的置換の例には、ある疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンと別の疎水性残基との置換、またはある極性残基と別の極性残基との置換、例えば、アルギニンとリジンとの置換、グルタミン酸とアスパラギン酸との置換、またはグルタミンとアスパラギンとの置換などが含まれる。これらのキメラに関するさらなる情報を下記の実施例に示した。
【0045】
挿入部位
免疫原をコードする配列を、本発明のベクターの中の1つまたは複数の異なる部位に挿入することができる。PIVもしくはLAV糖タンパク質(例えば、prM、E、および/もしくはNS1タンパク質)の表面上に、ならびに/または他のタンパク質と関連して(主に、それぞれ、B細胞応答およびT細胞応答を誘導するために)、比較的短いペプチドを送達することができる。外来タンパク質の大部分ならびに完全タンパク質を含む他のインサートは、遺伝子間で発現させてもよく、ポリタンパク質のN末端およびC末端で発現させてもよく、バイシストロンで発現させてもよい(例えば、IRESの下でORFの中で、またはIRESの下で3’UTRにおいて;例えば、WO02/102828、WO2008/036146、WO2008/094674、WO2008/100464、WO2008/115314を参照されたい。さらなる詳細については下記を参照されたい)。PIV構築物において、導入された欠失の代わりに直接、外来アミノ酸配列を挿入するさらなる選択肢がある。例えば、ΔC、ΔprM-E、ΔC-prM-E、ΔNS1、ΔNS3、およびΔNS5に挿入がなされてもよい。従って、一例では、s-PIVおよびd-PIVのΔC成分の場合、欠失カプシド配列の代わりに、免疫原コード配列を挿入することができる。免疫原コード配列はまた、任意で、d-PIVのΔprM-E成分にある欠失prM-E配列の代わりに挿入することもできる。別の例において、配列は、ΔC-prM-E構築物の欠失配列の代わりに挿入されるか、または欠失配列と組み合わされる。このような挿入の例を下記の実施例セクションに示した。
【0046】
PIV欠失に挿入を加える場合、挿入は、単に配列がインフレームで融合されるのであれば、外来免疫原のN末端および/もしくはC末端(例えば、配列がΔC欠失に取って代わるのであれば、Cタンパク質の最初の約20個のアミノ酸および最後の数個の残基)に数個の(例えば、1個、2個、3個、4個、もしくは5個の)さらなるベクター特異的残基を設けて、または外来免疫原が、この分野において周知の適切なエレメント(例えば、ウイルスプロテアーゼ切断部位;細胞プロテアーゼ切断部位、例えば、シグナラーゼ、フューリンなど;自己プロテアーゼ;終結コドン;および/もしくはIRESエレメント)に隣接しているのであれば、さらなるベクター特異的残基を設けずに行うことができる。
【0047】
連続したウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)の外側でタンパク質が発現される場合、例えば、配列内リボソーム進入部位(IRES)によってベクターおよび非ベクター配列が分けられる場合、産物を細胞質で発現させることができる、または所望のように、適切なシグナル/アンカーセグメントを用いて産物を分泌経路に向けることができる。タンパク質がベクターORFの内側で発現される場合、重要な考慮すべき事項には、新生ポリタンパク質配列からの外来タンパク質の切断、ならびにER膜に関連する外来タンパク質および(ベクターの存在を確実にするための)全てのウイルスタンパク質の正確なトポロジーの維持、例えば、ER内腔への分泌タンパク質の移行、または細胞質タンパク質もしくは膜結合タンパク質を細胞質内に/ER膜と結合した状態に保持することが含まれる。
【0048】
さらに詳細には、挿入を行う前記のアプローチでは、例えば、糖タンパク質インサートのN末端およびC末端に含まれる、適切なベクターに由来するシグナル配列およびアンカー配列、インサートに由来するシグナル配列およびアンカー配列、または関連のないシグナル配列およびアンカー配列を用いることができる。成長しているポリペプチド鎖からの発現産物の切断を誘導するために、ベクターポリタンパク質から外来タンパク質を放出するために、および構築物の存在を確実なものとするために、標準的な自己プロテアーゼ、例えば、FMDV 2A自己プロテアーゼ(約20アミノ酸)、またはユビキチン(遺伝子約500nt)、または隣接するウイルスNS2B/NS3プロテアーゼ切断部位を使用することができる。任意で、ポリタンパク質鎖の成長は、終結コドンを用いて、例えば、外来遺伝子インサートの後に終結させてもよく、構築物内の残りのタンパク質の合成は、IRESエレメント、例えば、RNAウイルスベクターの分野において一般的に用いられる脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRESを組み込むことによって再開させてもよい。生存可能な組換え体は、ヘルパー細胞(またはd-PIVバージョンの場合は通常の細胞)から回収することができる。例えば、後者がさらに効率的な外来遺伝子発現をもたらすのであれば、任意で、バックボーンPIV配列を再編成することができる。例えば、TBEウイルスに遺伝子再編成が適用されており、ここで、prM-E遺伝子はIRESの制御下でゲノムの3'末端に移動された(Orlinger et al., J. Virol. 80:12197-12208, 2006)。本発明によれば、PIVフラビウイルスワクチン候補および発現ベクターに、prM-Eまたは他の任意の遺伝子の移行を適用することができる。
【0049】
本発明において使用することができる異なる挿入部位に関するさらなる詳細は以下の通りである(前記のWO02/102828、WO2008/036146、WO2008/094674、WO2008/100464、WO2008/115314も参照されたい)。ペプチド配列を、中和抗体の原理的な標的であるエンベロープタンパク質の中に挿入することができる。配列は、例えば、日本脳炎ウイルスエンベロープタンパク質のアミノ酸位置59、207、231、277、287、340、および/または436に対応する位置に挿入することができる(例えば、WO2008/115314およびWO02/102828を参照されたい)。異なるフラビウイルスにおける対応する遺伝子座を特定するために、フラビウイルス配列を日本脳炎ウイルスの配列と整列させる。正確にマッチするものが無い場合があるので、非JEウイルスにおける挿入部位は、どちらの方向でも、例えば、1、2、3、4、または5アミノ酸だけ異なる場合があることが理解されるはずである。さらに、このような部位がJEにおいて許容されると特定されていれば、挿入部位は、JEにおいてどちらの方向でも、例えば、1、2、3、4、または5アミノ酸だけ異なってもよい。さらなる許容可能な部位は、トランスポゾン変異誘発などの方法を用いて特定することができる(例えば、WO02/102828およびWO2008/036146を参照されたい)。指示されたアミノ酸のすぐC末端側に(すなわち、アミノ酸51-52、207-208、231-232、277-278、287-288、340-341、および436-437の間に)、または指示されたアミノ酸で開始する短い欠失(例えば、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8アミノ酸の欠失)の代わりに(またはどちらの方向でもその1〜5位置内で)挿入を行うことによって、特定されたアミノ酸で挿入を行うことができる。
【0050】
エンベロープタンパク質に加えて、例えば、膜/プレ膜タンパク質およびNS1を含む他のウイルスタンパク質に、挿入を行うことができる(例えば、WO2008/036146を参照されたい)。例えば、カプシド/プレ膜切断部位の前にある配列(例えば、-4、-2、もしくは-1にある配列)、またはプレ膜タンパク質の最初の50アミノ酸の中に(例えば、位置26に)、および/あるいはNS1のアミノ酸236と237の間に(または前記の指示された配列の周囲にある領域の中に)、挿入を行うことができる。他の例において、遺伝子間に挿入を行ってもよい。例えば、EとNS1タンパク質の間に、および/またはNS2BとNS3タンパク質の間に、挿入を行うことができる(例えば、WO2008/100464を参照されたい)。遺伝子間挿入の一例において、挿入配列は、Eタンパク質のC末端シグナル/アンカー配列の後ろにある、ベクターのEタンパク質のC末端と融合されてもよく、挿入は、ベクターNS1配列と融合したC末端アンカー/シグナル配列を含んでもよい。遺伝子間挿入の別の例において、挿入配列は隣接するプロテアーゼ切断部位(例えば、YF 17D切断部位)と共に、NS2B/NS3接合部に導入された独特の制限部位に挿入されてもよい(WO2008/100464)。
【0051】
他の例において、配列を、前記のように、配列内リボソーム進入部位(IRES、例えば、脳心筋炎ウイルス;EMCVに由来するIRES)の状況において挿入してもよく、例えば、3’非翻訳領域に挿入してもよい(WO2008/094674)。例えば、黄熱病ウイルス配列を使用する、このようなベクターの一例において、IRES免疫原カセットを、ベクターの3’非翻訳領域に操作されたマルチクローニングサイトに、例えば、ポリタンパク質停止コドン後の欠失(例えば、黄熱病ウイルスをベースとする例の場合、136ヌクレオチド欠失)の中に挿入することができる(WO2008/094674)。
【0052】
本発明のs-PIVおよびd-PIVベクターへの狂犬病ウイルスGタンパク質および完全長呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質の挿入に関する詳細は下記の実施例3に示した。本明細書に記載の他のベクターおよび免疫原の状況において、実施例3に示した情報を適用することができる。
【0053】
免疫原
外来(例えば、非フラビウイルス)病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生生物の病原体)、癌、ならびにアレルギー関連免疫原を送達するために、前記のフラビウイルス配列および生弱毒化キメラフラビウイルス(例えば、YF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、およびWN/LGT)をベースとするPIV(s-PIVおよびd-PIV)を本発明において使用することができる。下記でさらに示したように、ある特定の例において、特定の地域において同じ生態的地位を占める、いくつかの病原体を標的とすることが有利な場合がある。このような免疫原の具体的で非限定的な例を以下に示した。
【0054】
TBEウイルスに加えて、マダニは、別の主要な疾患であるライム病を伝播することが知られている。従って、第一の例において、本発明のPIV、例えば、TBE/LGT配列を含むPIV、ならびにTBE配列(例えば、YF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、LGT/TBE、およびWN/LGT;「TBE」が示されている全ての場合において、これは、Hypr株を使用する選択肢を含む)を含むキメラフラビウイルスを、ライム病の原因因子(ダニ媒介性スピロヘータボレリア・ブルグドルフェリ)の防御免疫原を送達するためのベクターとして使用することができる。TBEおよびライム病は両方ともダニ媒介性疾患であるので、両方の感染因子(TBEおよびB.ブルグドルフェリ)を標的とする、この組み合わせは有利である。PIVアプローチは、本発明によるキメラ(例えば、YF/TBE、YF/LGT、WN/TBE、またはWN/LGT)ならびに非キメラTBEおよびLGTウイルスに適用することができる。本発明において使用することができるB.ブルグドルフェリに由来する例示的な免疫原はOspAである(Gipson et al., Vaccine 21:3875-3884, 2003)。任意で、安全性および/または免疫原性を高めるために、OspAは、自己免疫応答の機会を減らすように、および/または脊椎動物細胞における望ましくない翻訳後修飾、例えば、N結合型グリコシル化の部位を排除するように変異されてもよい。翻訳後修飾は発現産物の免疫原性に影響を及ぼし得る。自己免疫を弱める変異には、例えば、Willett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:1303-1308, 2004に記載の変異が含まれ得る。一例では、FTK-OspA、推定交差反応性T細胞エピトープ、Bb OspA165-173(YVLEGTLTA)が、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelli)の対応するペプチド配列(FTLEGKVAN)に類似するように変えられる。FTK-OspAでは、対応する配列はFTLEGKLTAである。
【0055】
OspAの配列は以下の通りである。

【0056】
完全長配列および/または完全長配列の免疫原性断片を本発明において使用することができる。例示的な断片は、ドメイン1(アミノ酸34-41)、2(アミノ酸65-75)、3(アミノ酸190-220)、および4(アミノ酸250-270)の1つまたは複数を含んでもよい(Jiang et al., Clin. Diag. Lab. Immun. 1(4):406-412, 1994)。
【0057】
従って、例えば、以下の配列のいずれか1つ(またはそれ以上)を含むペプチド(前記で列挙した配列に含めることができる配列バリエーションを任意の組み合わせで含む)を送達することができる。

【0058】
B.ブルグドルフェリ免疫原に加えて、例えば、三価特異性(TBE+ライム病+マダニ)のワクチン候補を作製するために、マダニ唾液タンパク質、例えば、64TRP、Isac、およびSalp20を発現させることができる。または、TBE配列含有ベクターのB.ブルグドルフェリ免疫原の代わりに、マダニ唾液タンパク質を発現させることができる。さらに、本発明によるマダニベクターワクチン開発に使用することができる、他の多くの候補マダニ唾液タンパク質がある(Francischetti et al., Insect Biochem. Mol. Biol. 35:1142-1161, 2005)。これらの免疫原の1つまたは複数をs-PIV-TBEにおいて発現させることができる。しかしながら、d-PIV-TBEの挿入能力が大きいので、d-PIV-TBEが選択されてもよい。PIV-TBEに加えて、例えば、ライム病および別のフラビウイルス疾患、例えば、西ナイルウイルスを防ぐために、他のPIVワクチンをベクターとして使用することができる。これらの免疫原の発現は細胞培養において評価することができ、免疫原性/防御は、(例えば、Gipson et al., Vaccine 21:3875-3884, 2003; Labuda et al., Pathog. 2(e27):0251-0259, 2006に記載の)利用可能な動物モデルにおいて調べることができる。多価ワクチン候補を作る目的で、ライム病およびマダニ免疫原に加えて、他の病原体の免疫原も同様に発現させることができる。本発明において使用することができる例示的なマダニ唾液免疫原には、以下:

が含まれる。TBE関連PIVおよびLAVに関するさらなる詳細を、下記の実施例2に示した。
【0059】
さらに、本発明は、フラビウイルス(ベクターエンベロープタンパク質と明記される)および非フラビウイルス病原体(発現免疫決定基と明記される)の両方に対して防御免疫を誘発する二重作用を有するワクチンを含む、他の非フラビウイルス病原体に対するPIVベクターワクチンおよびLAVベクターワクチンを提供する。これらは、前記のPIV-TBE-ライム病-マダニベクターの例と似ている。前記のように、このような二重作用ワクチンは、免疫原、例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生生物の病原体に由来する免疫原、ならびに癌およびアレルギーに関連する免疫原を発現させることにより広範囲の病原体に対して開発することができる。具体的で非限定的な例として、本発明者らは、本明細書において、一成分および二成分PIVベクターの中の様々な欠失の代わりに、または様々な欠失と組み合わせて、狂犬病ウイルスGタンパク質または完全長RSV Fタンパク質を発現させることによって構築されたPIVベクター狂犬病ワクチン候補およびPIVベクター呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン候補の設計および生物学的特性について述べる(下記の実施例3を参照されたい)。
【0060】
下記の実施例において証明されたように、s-PIV構築物は、比較的短いΔC欠失と挿入が組み合わされるので、(ライム病作用物質OspAタンパク質およびマダニ唾液タンパク質に似た)比較的短い外来免疫原を安定して送達するのに有利に用いられる場合がある。二成分PIVベクターは、このようなベクターの中の挿入が、例えば、大きなΔprM-E、ΔC-prM-E、および/またはΔNS1欠失と組み合わされるので、比較的大きな免疫原、例えば、狂犬病Gタンパク質およびRSV Fを安定して発現させるのに有利に用いられる場合がある。d-PIV成分のいくつか、例えば、ΔC-prM-E欠失を含有する下記のPIV-RSV F構築物が個々に製造され、ワクチンとして使用することができる。この場合、ワクチンは、主に、発現タンパク質に対して免疫応答(例えば、中和抗体)を誘導するが、フラビウイルスベクターウイルス病原体に対して免疫応答(例えば、中和抗体)を誘導しない。本発明の他の例において、ベクターおよびインサート成分の両方に対して免疫が誘導されることによって、二重免疫が得られる。さらに、PIVベクターは挿入能が大きく、二成分ゲノムを使用する選択肢があるので、例えば、d-PIVの2つの成分において2種類の非フラビウイルス病原体に由来する外来免疫原を発現させることによって、同時にいくつかの非フラビウイルス病原体を標的とする機会を提供する。
【0061】
前記の外来免疫原の例として、RSV Fタンパク質、狂犬病Gタンパク質、ライム病防御免疫原、およびマダニ唾液タンパク質に加えて、それぞれの疾患を標的とするために、例えば、インフルエンザウイルスA型およびB型免疫原を含む他の外来免疫原を発現させることができる。これらの例において、ウイルス粒子タンパク質のいくつかの短いエピトープおよび/または遺伝子全体、例えば、インフルエンザAのM2、HA、およびNA遺伝子、ならびに/またはインフルエンザBのNBまたはBM2遺伝子を使用することができる。M2、NB、およびBM2のさらに短い断片、例えば、M2の細胞外断片であるM2eに対応する断片も使用することができる。さらに、HA0(23アミノ酸長、HAの切断部位に対応する)と特定されたエピトープを含むHA遺伝子断片を使用することができる。本発明において使用することができるインフルエンザ関連配列の具体例には、

が含まれる。
【0062】
本発明において使用することができる、さらなるM2e配列には、インフルエンザBのBM2タンパク質の細胞外ドメインに由来する配列(コンセンサスMLEPFQ、例えば、LEPFQILSISGC)、およびH5N1トリインフルエンザに由来するM2eペプチド

が含まれる。
【0063】
本発明のベクターにおいて送達することができる病原体免疫原の他の例には、HIVに由来するコドン最適化SIVまたはHIV gag(55kDa)、gp120、gp160、SIV mac239-rev/tat/nef遺伝子または類似体、および他のHIV免疫原;HPVウイルスに由来する免疫原、例えば、HPV16、HPV18など、例えば、HPV様粒子に自己集合するカプシドタンパク質L1、カプシドタンパク質L2またはその免疫優性部分(例えば、アミノ酸1-200、1-88、または17-36)、一緒に融合した哺乳動物細胞の形質転換および不死化に関与し、適切に変異したE6およびE7タンパク質(2つの遺伝子が融合するとE6E7Rbと呼ばれる融合タンパク質が作り出される。E6E7Rbの線維芽細胞形質転換能は約1/10であり、2残基でE7成分が変異すると、結果として生じた融合タンパク質変異体は形質転換を誘導できなくなる)が含まれる(Boursnell et al., Vaccine 14:1485-1494, 1996)。他の免疫原には、ワクチン標的として使用することができる、HCV、CMV、HSV2、ウイルス、マラリア寄生生物、結核の原因となる結核菌、C.ディフィシル(C. difficile)、および当技術分野において公知の他の院内感染、ならびに真菌病原体、癌、およびアレルギーに関連するタンパク質が含まれる。
【0064】
本発明の外来免疫原インサートは様々なやり方で改変することができる。例えば、発現レベルを高めるために、およびヌクレオチド配列中の長い反復を排除して、PIVベクターのRNAゲノム内のインサートの安定性を高めるために、コドン最適化が用いられる。タンパク質と、当技術分野において周知の免疫賦活性部分、例えば、TLRアゴニスト、刺激サイトカイン、補体成分、熱ショックタンパク質などとのキメラ化によって、免疫原性を高めることができる(例えば、「Immunopotentiators in Modern Vaccines」 Schijns and O’Hagan Eds., 2006, Elsevier Academic Press: Amsterdam, Bostonに概説される)。
【0065】
狂犬病および他のフラビウイルス疾患に対する二重ワクチンの構築に関して、対応する地域におけるヒトおよび獣医学での使用のために、他の組み合わせ、例えば、TBE+狂犬病、YF+狂犬病などが関心対象となることがあり、従って、同様に作製することができる。発現構築物の可能性のある設計は、本明細書に記載のものに限定されない。例えば、欠失および挿入を改変してもよく、遺伝因子を再編成してもよく、または他の遺伝因子(例えば、非フラビウイルス、非狂犬病分泌シグナル、細胞内輸送決定基、免疫賦活部分、例えば、サイトカイン、TLRアゴニスト、例えば、フラジェリン、多量体化成分、例えば、ロイシンジッパー、および血液中のタンパク質循環の期間を延ばすペプチドの含有または融合)を用いて、抗原提示を容易にし、免疫原性を高めることができる。さらに、このような設計は、他のフラビウイルスのベクターゲノムをベースとするs-PIVおよびd-PIVワクチン候補、ならびに、例えば、本明細書の他の場所に記載の病原体を含むが、これに限定されない他の病原体の免疫原の発現に適用することができる。
【0066】
本発明のPIVおよびLAVベクターの他の例には、組み合わせワクチン、例えば、DEN+チクングニアウイルス(CHIKV)およびYF+CHIKVが含まれる。アルファウイルスであるCHIKVは、アフリカ、東南アジア、インド亜大陸、およびアイスランド、ならびに太平洋諸島信託統治領における風土病であり、YFおよびDEN1-4と生態的/地理的地位を共有している。CHIKVは、患者の大半において、主に、重篤な疼痛(関節炎、DENに似た他の症状)に関連する重篤な疾患および持続性の後遺症を引き起こす(Simon et al., Med. Clin. North Am. 92:1323-1343, 2008; Seneviratne et al., J. Travel Med. 14:320-325, 2007)。本発明のPIVおよびLAVベクターの他の例には、アフリカにおいて同時流行(co-circulate)するYF+エボラまたはDEN+エボラが含まれる。
【0067】
前記の非フラビウイルス病原体の免疫原は、CMVの糖タンパク質Bまたはpp65/IE1融合タンパク質(Reap et al., Vaccine 25(42):7441-7449, 2007;およびこの中の参考文献)、数種類のTBタンパク質(Skeiky et al., Nat. Rev. Microbiol. 4(6):469-476, 2006に概説される)、マラリア寄生生物抗原、例えば、RTS、S(赤血球前スポロゾイト周囲タンパク質、CSP)、ならびにその他(例えば、Li et al., Vaccine 25(14):2567-2574, 2007に概説される)、CHIKVエンベロープタンパク質E1およびE2(もしくはC-E2-E1、E2-E1カセット)、VLPを形成するHCV構造タンパク質C-E1-E2(Ezelle et al., J. Virol. 76(23):12325-12334, 2002)、またはT細胞応答を誘導する他のタンパク質、エボラウイルス糖タンパク質GP(Yang et al., Virology 377(2):255-264, 2008)を含んでもよく、これらの配列は当技術分野において周知である。
【0068】
前記の免疫原に加えて、本明細書に記載のベクターは、例えば、dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、ヒト単純ヘルペスウイルス8型、ヒトサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス);ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス、パピローマウイルス(例えば、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、BPV1、BPV2、BPV3、BPV4、BPV5、およびBPV6(In Papillomavirus and Human Cancer, edited by H. Pfister (CRC Press, Inc. 1990)); Lancaster et al., Cancer Metast. Rev. pp. 6653-6664, 1987; Pfister et al., Adv. Cancer Res. 48:113-147, 1987));dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス);(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、トガウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス);(-)ssRNAウイルス(例えば、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス、パラインフルエンザウイルス、ラブドウイルス、狂犬病ウイルス);ssRNA-RTウイルス(例えば、レトロウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV));およびdsDNA-RTウイルス(例えば、ヘパドナウイルス、B型肝炎)を含む、1つもしくは複数のウイルス(例えば、ウイルス標的抗原)に由来する1つまたは複数の免疫原を含んでもよく、または1種もしくは複数のウイルスに対する免疫応答を誘導する1つまたは複数の免疫原を含んでもよい。免疫原はまた、前記で列挙していないが、当業者に利用可能な他のウイルスに由来してもよい。
【0069】
HIVに関して、任意のHIV分離株より免疫原が選択されてもよい。当技術分野において周知のように、HIV分離株は、現在、別個の遺伝子サブタイプに分類されている。HIV-1は、少なくとも10個のサブタイプ(A、B、C、D、E、F、G、H、J、およびK)を含むことが知られている。HIV-2は、少なくとも5個のサブタイプ(A、B、C、D、およびE)を含むことが知られている。サブタイプBは、世界中の男性同性愛者および静脈内薬物使用者におけるHIV流行と関連づけられてきた。ほとんどのHIV-1免疫原、実験室に適応された分離株、試薬およびマッピングされたエピトープはサブタイプBに属する。新規のHIV感染の発生率が高い地域であるサハラ以南のアフリカ、インド、および中国では、HIV-1サブタイプBは感染のごくわずかしか占めず、サブタイプHIV-1Cが、最もよく見られる感染サブタイプのようである。従って、ある特定の態様では、HIV-1サブタイプBおよび/またはCに由来する免疫原を選択することが望ましい場合がある。1つの免疫組成物において複数のHIVサブタイプ(例えば、HIV-1サブタイプBおよびC、HIV-2サブタイプAおよびB、またはHIV-1およびHIV-2サブタイプの組み合わせ)に由来する免疫原を含むことが望ましい場合がある。適切なHIV免疫原には、例えば、ENV、GAG、POL、NEF、ならびにその変種、誘導体、および融合タンパク質が含まれる。
【0070】
免疫原はまた、例えば、バチルス属(Bacillus)の種(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis))、ボルデテラ属(Bordetella)の種(例えば、百日咳(Bordetella pertussis))、ボレリア属(Borrelia)の種(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ)、ブルセラ属(Brucella)の種(例えば、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucella canis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis))、カンピロバクター属(Campylobacter)の種(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni))、クラミジア属(Chlamydia)の種(例えば、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis))、クロストリジウム属(Clostridium)の種(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani))、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種(例えば、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae))、エンテロコッカス属(Enterococcus)の種(例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・ファエカム(enterococcus faecum))、エシェリキア属(Escherichia)の種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、フランシセラ属(Francisella)の種(例えば、野兎病菌(Francisella tularensis))、ヘモフィルス属(Haemophilus)の種(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza))、ヘリコバクター属(Helicobacter)の種(例えば、ピロリ菌(Helicobacter pylori))、レジオネラ属(Legionella)の種(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、レプトスピラ属(Leptospira)の種(例えば、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans))、リステリア属(Listeria)の種(例えば、リステリア菌(Listeria monocytogenes))、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)の種(例えば、らい菌(Mycobacterium leprae)、結核菌)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)の種(例えば、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae))、ナイセリア属(Neisseria)の種(例えば、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhea)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、シュードモナス属(Pseudomonas)の種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、リケッチア属(Rickettsia)の種(例えば、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii))、サルモネラ属(Salmonella)の種(例えば、チフス菌(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィヌリウム(Salmonella typhinurium))、赤痢菌属(Shigella)の種(例えば、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei))、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)の種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(例えば、米国特許第7,473,762号))、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種(例えば、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、トレポネーマ属(Treponema)の種(例えば、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum))、ビブリオ属(Vibrio)の種(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae))、およびエルシニア属(Yersinia)の種(ペスト菌(Yersinia pestis))を含む、1つまたは複数の細菌種(例えば、細菌標的抗原)に由来してもよく、1つまたは複数の細菌種に対する免疫応答を誘導してもよい。免疫原はまた、前記で列挙していないが、当業者に利用可能な他の細菌種に由来してもよく、前記で列挙していないが、当業者に利用可能な他の細菌種に対する免疫応答を誘導してもよい。
【0071】
免疫原はまた、例えば、鉤虫属(Ancylostoma)の種(例えば、十二指腸虫(A. duodenale))、アニサキス属(Anisakis)の種、回虫(Ascaris lumbricoides)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、条虫綱(Cestoda)の種、トコジラミ科(Cimicidae)の種、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)、ディクロコエリウム・ホスペス(Dicrocoelium hospes)、広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)、ドラクンクルス属(Dracunculus)の種、エキノコックス属(Echinococcus)の種(例えば、単包条虫(E. granulosus)、多包条虫(E. multilocularis))、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、ファスキオラ属(Fasciola)の種(例えば、肝蛭(F. hepatica)、F.マグナ(F. magna)、巨大肝蛭(F. gigantica)、F.ジャクソニ(F. jacksoni))、肥大吸虫(Fasciolopsis buski)、ジアルジア属(Giardia)の種(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia))、顎口虫属(Gnathostoma)の種、膜様条虫属(Hymenolepis)の種(例えば、小型条虫(H. nana)、縮小条虫(H. diminuta))、リーシュマニア属(Leishmania)の種、ロア糸状虫(Loa loa)、メトロキス亜科(Metorchis)の種(M.コンジャンクタス(M. conjunctus)、M.アルビダス(M. albidus))、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、ヒツジバエ科(Oestroidea)の種(例えば、ウマバエ(botfly))、オンコセルカ科(Onchocercidae)の種、オピストルキス属(Opisthorchis)の種(例えば、タイ肝吸虫(O. viverrini)、ネコ肝吸虫(O. felineus)、O.グアヤキイレンシス(O. guayaquilensis)、およびO.ノベルカ(O. noverca))、プラスモディウム属(Plasmodium)の種(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum))、プロトファシオラ・ロブスタ(Protofasciola robusta)、パラファシオロプシス・ファシオモルファエ(Parafasciolopsis fasciomorphae)、ウエステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)、シストソーマ属(Schistosoma)の種(例えば、マンソン住血吸虫(S. mansoni)、日本住血吸虫(S. japonicum)、メコン住血吸虫(S. mekongi)、ビルハルツ住血吸虫(S. haematobium))、スピロメトラ・エリナセイエウロパエイ(Spirometra erinaceieuropaei)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、テニア属(Taenia)の種(例えば、無鉤条虫(T. saginata)、有鉤条虫(T. solium))、トキソカラ属(Toxocara)の種(例えば、イヌ回虫(T. canis)、ネコ回虫(T. cati))、トキソプラズマ属(Toxoplasma)の種(例えば、トキソプラズマ原虫(T. gondii))、トリコビルハルジア・レゲンチ(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、ツツガムシ科(Trombiculidae)の種、トリパノソーマ属(Trypanosoma)の種、スナノミ(Tunga penetrans)、および/またはバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)を含む、1つまたは複数の寄生生物に由来してもよく(例えば、寄生生物標的抗原)、1つまたは複数の寄生生物に対する免疫応答を誘導してもよい。免疫原はまた、前記で列挙していないが、当業者に利用可能な他の寄生生物に由来してもよく、前記で列挙していないが、当業者に利用可能な他の寄生生物に対する免疫応答を誘導してもよい。
【0072】
免疫原はまた腫瘍標的抗原(例えば、腫瘍標的抗原)に由来してもよく、腫瘍標的抗原に対する免疫応答を誘導してもよい。腫瘍標的抗原(TA)という用語は、腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)の両方を含んでもよく、癌細胞が抗原の供給源である。TAは、腫瘍細胞の表面上で、正常細胞上で観察されるものより多量に発現する抗原でもよく、胎児発生中に正常細胞上で発現する抗原でもよい。TSAは、典型的には、腫瘍細胞に特有にあり、正常細胞上で発現しない抗原である。TAは、典型的には、発現パターン、機能、または遺伝子起源に従って5つのカテゴリー:癌精巣(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY-ESO-1);メラノサイト分化抗原(例えば、Melan A/MART-1、チロシナーゼ、gp100);変異抗原(例えば、MUM-1、p53、CDK-4);過剰発現「自己」抗原(例えば、HER-2/neu、p53);およびウイルス抗原(例えば、HPV、EBV)に分類される。適切なTAには、例えば、gp100(Cox et al., Science 264:716-719, 1994)、MART-1/Melan A(Kawakami et al., J. Exp. Med., 180:347-352, 1994)、gp75(TRP-1)(Wang et al., J. Exp. Med., 186:1131-1140, 1996)、チロシナーゼ(Wolfel et al., Eur. J. Immunol., 24:759-764, 1994)、NY-ESO-1(WO98/14464;WO99/18206)、黒色腫プロテオグリカン(Hellstrom et al., J. Immunol., 130:1467-1472, 1983)、MAGEファミリー抗原(e.gl、MAGE-1、2、3、4、6、および12; Van der Bruggen et al., Science 254:1643-1647, 1991;米国特許第6,235,525号)、BAGEファミリー抗原(Boel et al., Immunity 2:167-175, 1995)、GAGEファミリー抗原(例えば、GAGE-1,2; Van den Eynde et al., J. Exp. Med. 182:689-698, 1995;米国特許第6,013,765号)、RAGEファミリー抗原(例えば、RAGE-1; Gaugler et al., Immunogenetics 44:323-330, 1996;米国特許第5,939,526号)、N-アセチルグルコサミン転移酵素-V(Guilloux et al., J. Exp. Med. 183:1173-1183, 1996)、p15(Robbins et al., J. lmmunol. 154:5944-5950, 1995)、β-カテニン(Robbins et al., J. Exp. Med., 183:1185-1192, 1996)、MUM-1(Coulie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:7976-7980, 1995)、サイクリン依存性キナーゼ-4(CDK4)(Wolfel et al., Science 269:1281-1284, 1995)、p21-ras(Fossum et al., Int. J. Cancer 56:40-45, 1994)、BCR-abl(Bocchia et al., Blood 85:2680-2684, 1995)、p53(Theobald et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:11993-11997, 1995)、p185 HER2/neu(erb-B1; Fisk et al., J. Exp. Med., 181:2109-2117, 1995)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)(Harris et al., Breast Cancer Res. Treat, 29:1-2, 1994)、癌胎児抗原(CEA)(Kwong et al., J. Natl. Cancer Inst., 85:982-990, 1995)米国特許第5,756,103号;同第5,274,087号;同第5,571,710号;同第6,071,716号;同第5,698,530号;同第6,045,802号;EP263933;EP346710;およびEP784483;癌関連変異ムチン(carcinoma-associated mutated mucin)(例えば、MUC-1遺伝子産物;Jerome et al., J. Immunol., 151:1654-1662, 1993);EBVのEBNA遺伝子産物(例えば、EBNA-1; Rickinson et al., Cancer Surveys 13:53-80, 1992);ヒトパピローマウイルスのE7、E6タンパク質(Ressing et al., J. Immunol. 154:5934-5943, 1995);前立腺特異的抗原(PSA; Xue et al., The Prostate 30:73-78, 1997);前立腺特異的膜抗原(PSMA; Israeli et al., Cancer Res. 54:1807-1811, 1994);イディオタイプエピトープもしくは抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプもしくはT細胞受容体イディオタイプ(Chen et al., J. Immunol. 153:4775-4787, 1994);KSA(米国特許第5,348,887号)、キネシン2(Dietz, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 275(3):731-738, 2000)、HIP-55、TGFβ-1抗アポトーシス因子(Toomey et al., Br. J. Biomed. Sci. 58(3):177-183、2001)、腫瘍タンパク質D52(Bryne et al., Genomics 35:523-532, 1996)、H1FT、NY-BR-1(WO01/47959)、NY-BR-62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、およびNY-BR-96 (Scanlan, M. Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens, in Cancer Vaccines 2000, Cancer Research Institute, New York, NY)、ならびに/または膵臓癌抗原(例えば、米国特許第7,473,531号のSEQ ID NOs: 1-288)が含まれる。免疫原はまた、前記で列挙していないが、当業者に利用可能なTAに由来してもよく、前記で列挙していないが、当業者に利用可能なTAに対する免疫応答を誘導してもよい。
【0073】
前記で列挙した特定の免疫原配列に加えて、本発明はまた、配列の類似体の使用を含む。このような類似体には、例えば、参照配列またはその断片と少なくとも80%、90%、95%、または99%同一の配列が含まれる。類似体はまた、例えば、配列の1つまたは複数の免疫原性エピトープを含む参照配列断片を含む。さらに、類似体は、例えば、片側または両側に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11〜20個などのアミノ酸まで、配列の短縮または延長(例えば、さらなる/反復性の免疫優性/ヘルパーエピトープの挿入)を含む。短縮によって、例えば、公知の構造/免疫ドメインの中にある、またはドメイン間にある免疫学的に重要でない配列または介在配列が取り除かれてもよい。または、望ましくないドメイン全体が欠失されてもよい。このような改変は、21〜30個、31〜50個、51〜100個、101〜400個などの範囲のアミノ酸でもよい。この範囲はまた、例えば、20〜400個、30〜100個、および50〜100個のアミノ酸を含む。
【0074】
カクテル
本発明はまた、2種類またはそれ以上の、本明細書に記載のPIVおよび/またはPIVベクターの混合物を含む組成物を含む。前記のように、このような混合物またはカクテルの使用は、複数の種類の免疫原および/または病原体に対する免疫の誘導が望ましい場合に特に有利な場合がある。これは、例えば、ワクチンレシピエントが居住する地域に固有にあり得る異なるフラビウイルスのワクチン接種において有用な場合がある。これはまた、同じ標的に対する複数の種類の免疫原を投与する状況において有用な場合がある。
【0075】
本発明に含まれるPIVカクテルの非限定的な例は、PIV-JE+PIV-DENおよびPIV-YF+PIV-DENを含むものである。これらの例は両方とも、一方または両方の成分のPIVが前記の一成分PIVでもよく、二成分PIVでもよい。さらに、PIV-DENの場合、PIVは、デング血清型1-4からなる群より選択される1種類だけのデング血清型の配列を含んでもよく、カクテルは、2種類、3種類、または4種類全ての血清型からの配列を発現するPIVを含んでもよい。さらに、本明細書に記載のTBE/ボレリア・ブルグドルフェリ/マダニ唾液タンパク質(例えば、64TRP、Isac、Salp20)ワクチンは、1種類のPIVまたは生弱毒化フラビウイルスの中に異なる免疫原を含むことをベースとしてもよく、それぞれ1種類または複数の種類の免疫原を含むPIV(またはLAV)の混合物をベースとしてもよい。本発明のカクテルはそれ自体で処方されてもよく、投与の直前に混合されてもよい。
【0076】
使用、製剤、および投与
本発明は、PIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAV、ならびに対応する核酸分子、薬学的組成物またはワクチン組成物、ならびにこれらを使用する方法および調製する方法を含む。本発明のPIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAVは、例えば、本明細書に記載のように、TBEもしくは他のフラビウイルスおよび/または別の発現された免疫原に対する免疫応答を誘導するためのワクチン接種方法において使用することができる。これらの方法は予防的なものでもよく、この場合、TBEもしくは別のフラビウイルスおよび/または他の発現された免疫原が得られた病原体によって引き起こされる感染または疾患が発症するリスクがあるが、これらに感染していない対象(例えば、ヒト対象または他の哺乳動物対象)において行われる。前記方法はまた治療的なものでもよく、関連する病原体の1つまたは複数に既に感染している対象において行われる。さらに、ウイルスおよびベクターは、個々に、または互いにもしくは他のワクチンと組み合わせて使用することができる。本発明の方法により治療される対象には、ヒト、ならびに非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、およびヤギなどの家畜、ならびにイヌおよびネコを含む家畜)が含まれる。
【0077】
本発明のPIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAVは、当技術分野において標準的な方法を用いて処方することができる。ワクチン調製において使用するための非常に多くの薬学的に許容される溶液が周知であり、本発明において使用するように当業者によって容易に合わせられる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (18th edition), ed. A. Gennaro, 1990, Mack Publishing Co., Easton, PAを参照されたい)。2つの具体的な例では、PIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAVは、7.5%ラクトースおよび2.5%ヒト血清アルブミンを含有する最小必須培地アール塩(MEME)、または10%ソルビトールを含有するMEMEに溶解して処方される。しかしながら、PIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAVは、単に、生理学的に許容される溶液、例えば、滅菌食塩水または滅菌緩衝食塩水で希釈されてもよい。
【0078】
本発明のPIVベクター、PIV、LAVベクター、およびLAVは、当技術分野において周知の方法を用いて投与することができ、投与しようとするウイルスおよびベクターの適量は当業者によって容易に決定することができる。投与しようとするウイルスの適量であると確かめられるものは、例えば、ウイルスを投与しようとする対象の大きさおよび身体全体の健康などの要因を考慮することによって確かめることができる。例えば、本発明の生弱毒化ウイルスの場合、ウイルスは、0.1〜1.0mlの用量体積で、102〜108、例えば、103〜107の感染単位(例えば、プラーク形成単位または組織培養感染用量)を含有する滅菌水溶液として処方することができる。PIVは、類似の用量および類似の体積で投与することができる。しかしながら、これらの欠損構築物はウイルス様プラークを形成しない傾向があるので、PIV力価は、通常、例えば、フォーカスの免疫染色によって求められるフォーカス形成単位で測定される。用量は102〜108FFUの範囲でもよく、0.1〜1.0mlの体積で投与されてもよい。
【0079】
本発明のウイルスおよびベクターは全て、例えば、皮内経路、皮下経路、筋肉内経路、腹腔内経路、または経口経路によって投与することができる。具体的な例では、樹状細胞が、例えば、マイクロニードルまたはマイクロアブレージョン装置を用いて、皮内投与または経皮投与の標的とされる。さらに、本発明のワクチンは単回投与で投与されてもよく、任意で、投与は、初回抗原刺激投与に続いて、当業者により適切だと確かめられた時に、追加免疫投与、例えば、2〜6ヶ月後に投与される追加免疫投与を伴ってもよい。任意で、PIVワクチンは、当業者に公知の方法を用いたDNA免疫化またはRNA免疫化を介して投与されてもよい(Chang et al., Nat. Biotechnol. 26:571-577, 2008; Kofler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:1951-1956, 2004)。
【0080】
任意で、本発明のウイルスおよびベクターの投与において、当業者に公知のアジュバントを使用することができる。ウイルスの免疫原性を増強するのに使用することができるアジュバントには、例えば、リポソーム製剤、合成アジュバント(例えば、QS21)、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA、ポリホスファジン(polyphosphazine)、CpGオリゴヌクレオチド、または細胞表面上もしくは細胞内の核膜上にあるtoll様受容体(TLR)分子を活性化することによって機能するように見える他の分子が含まれる。これらのアジュバントは、典型的には、不活化ワクチンに対する免疫応答の増強に用いられるが、生ワクチンまたは複製欠損ワクチンと共に使用することもできる。生ワクチンまたは複製欠損ワクチンの場合、TLRのアゴニストまたはアンタゴニストが有用な場合がある。TLRアゴニストを発現するようにワクチン候補を設計することができる。粘膜経路、例えば、経口経路を介して送達されるウイルスの場合、粘膜アジュバント、例えば、大腸菌の熱不安定性毒素(LT)またはLTの変異誘導体をアジュバントとして使用することができる。さらに、アジュバント活性を有するサイトカインをコードする遺伝子をワクチン候補に挿入することができる。従って、免疫応答を増強するワクチンを生成するために、または細胞応答、体液応答、もしくは粘膜応答により特異的に向かうように免疫を調節するために、望ましいサイトカイン、例えば、GM-CSF、IL-2、IL-12、IL-13、IL-5などをコードする遺伝子を、外来免疫原遺伝子と一緒に挿入することができる(例えば、「Immunopotentiators in Modern Vaccines」, Schijns and O’Hagan Eds., 2006, Elsevier Academic Press: Amsterdam, Bostonなどに概説されている)。任意で、適切な毒素由来アジュバントの層を含有するパッチを注射部位に適用することができる。毒素は、さらに強い免疫応答につながる、リンパ球を誘引する局所炎症を促進する。
【実施例】
【0081】
本発明に関するさらなる詳細を以下の実施例に示した。実施例では、WN、JE、およびYFウイルスをベースとするPIV(例えば、WO2007/098267およびWO2008/137163を参照されたい)を試験した実験が述べられている。第一に、本発明者らは、感受性授乳期マウス神経毒性モデルにおいて、利用可能なLAV対照(YF 17D、YF/JE LAV、およびYF/WN LAV)と比較して、これらの構築物が大幅に弱毒化されていることを証明した(全ての試験用量において死亡率0)。本発明者らは、このモデルにおいてd-PIV構築物が無毒性であり、従って、二成分PIVがインビボで無秩序に(無制限に)蔓延せず、臨床徴候を引き起こすことができないことを初めて証明した。第二に、本発明者らは、PIVおよびLAVの免疫原性および効力を比較し、(例えば、PIV-WNおよびYF/WN LAVワクチンペアについて観察されたように)PIVワクチンがLAVに匹敵する免疫応答を誘導することができ、等しく有効であることを証明した。調べたペアの1つでは、YF 17D LAVはPIV-YFより免疫原性がかなり高かった。従って、VLPの産生は、同じように設計された異なるPIV構築物間で異なる可能性がある。具体的には、本発明者らは、PIV-YFがPIV-WN(WN VLP)と比較して多量のYF VLPを作製せず、最適以下のPIV構築物におけるC/prM接合部で遺伝子組換えを行うことによって、VLPの高産生が実現可能であると提案する。具体的には、C/prM接合部は、ウイルスエンベロープの形成およびウイルスタンパク質の合成を組織化する、フラビウイルスポリタンパク質における重要な位置である(Yamshchikov and Compans, Virology 192:38-51, 1993; Amberg and Rice, J. Virol. 73:8083-8094, 1999; Stocks and Lobigs, J. Virol. 72:2141-2149, 1998)。本発明者らは、(全ウイルスにおけるウイルス粒子の産生とは対照的に)接合部でのウイルスプロテアーゼおよびシグナラーゼ切断の非結合によって、またはprMシグナルの代わりに強力な異種シグナルペプチド(tPAなど)を用いることによって、またはprMシグナルを変異誘発することによって、PIV感染細胞におけるVLPの分泌を増やすことができると提案する。フラビウイルスのC/prM接合部におけるシグナラーゼ切断の効率は、例えば、SignalP 3.0オンラインプログラムによって予測されるように低い(Stocks and Lobigs, J. Virol. 72:2141-2149, 1998)。(例えば、出願WO2008/100464に記載のように)SignalP 3.0を用いて、切断部位の近くにある特定のアミノ酸置換を分析し、その後に、選択された変異をPIVゲノムに組み込み、PIV子孫を回収し、VLP分泌を測定することによって、より効率的な切断効率が実現可能であると予想される。非フラビウイルスシグナルは当技術分野において標準的な方法によって挿入される。ウイルスプロテアーゼおよびシグナラーゼ切断間の非結合は、任意の非保存的変異(例えば、YF 17D Cの中のRRSから、RRAもしくはGRSもしくはRSSなどへの非保存的変異)によって、またはその3残基の部位全体もしくは一部の欠失によってウイルス切断部位を除去することによって実現可能である。必要に応じて、自己プロテアーゼなどのエレメントまたは終結コドンの後にIRESを用いることによって、外来タンパク質シグナルの遊離N末端を形成することができる。または、(Cタンパク質配列が不必要な構築物、例えば、ΔC PIVにおいて)CのネイティブAUG開始コドンを除去してもよく、AUGを外来遺伝子の前に配置してもよい。ベクターシグナルの最適化は、ランダム変異誘発によって、例えば、合成ランダム配列を挿入した後に、VLP分泌が増加した生存可能なPIV変種を特定することによって行うことができる。
【0082】
本発明者らはまた、ハムスターにおいてPIV構築物がIP経路により投与された時の免疫原性が皮下経路と比較してかなり高いことを発見した。本発明者らは、腹部に豊富にあるが、皮膚下にある組織には豊富にないリンパ組織内の抗原提示細胞を良好に標的化したことにより、このことが起こった可能性が最も高いと結論付けた。これらの観察に基づいて、本発明者らは、皮膚接種、例えば、皮膚マイクロアブレージョンまたマイクロニードルを用いた皮内注射によって、皮膚に豊富にある樹状細胞にPIVを効率的に標的化できると結論付けた(Dean et al., Hum Vaccin. 1:106-111, 2005)。
【0083】
さらに、本発明者らは、異なるPIV、例えば、本明細書に記載のPIVからなる混合物すなわちカクテル(例えば、JE+DENおよびYF+DEN)を投与する実現可能性を示す実験を行った。カクテルを投与するためには、同時投与された成分間の干渉が無く、バランスのとれた免疫応答が誘導されることを確認することが重要である。数種類のPIV混合物を用いてげっ歯類を免疫化し、免疫応答を、個々に投与されたPIV構築物と比較した。混合物において干渉は観察されず、従って、カクテルPIVワクチンは実現可能である。このような製剤は、異なるフラビウイルスが同時流行する地域において特に重要な場合がある。これはまた、非フラビウイルス病原体に対する、PIVをベースとする数種類のワクチンを同時投与するのに使用することもできる。
【0084】
さらに、本発明者らは、PIVを少なくとも2回投与した後に、パッケージングエンベロープに対して中和抗体応答が誘導されない(従って、感染細胞から分泌されたVLPに対して抗体が誘発されない)ことを証明した。このことは、個々にパッケージングされたd-PIVのヘルパー(ΔprM-E)成分を用いて(図2を参照されたい)、または異種パッケージングエンベロープに対する(例えば、トランスでWN特異的C-prM-Eタンパク質を供給する、ヘルパー細胞においてPIV-JEをパッケージングするのに用いられるWNエンベロープに対する)中和抗体を測定することによって証明された。後者の観察は、前記のように、ユニバーサルヘルパーパッケージング細胞株の中で製造された異なるPIVワクチンを連続して使用すること、および同じ個体において異なる組換えPIVベクターワクチンを連続して使用することを裏付けている。さらに、本発明者らは、PIV構築物がインビトロで高収率で安定増殖することができ、基質細胞における長期間の継代後に、全ウイルスを回復させる組換えが起こらないという以前の観察を裏付けた(Mason et al., Virology 351:432-443, 2006; Shustov et al., J. Virol. 21:11737-11748, 2007)。
【0085】
本発明のこれらのおよび他の局面を、下記の実施例においてさらに説明する。
【0086】
実施例1.偽感染性ウイルスプラットフォーム開発研究
授乳期マウス神経毒性(NV)モデルにおける弱毒化
下記の研究において使用した材料は、表1および表1で引用された参考文献に記載されている。これらは、s-PIV-WN(wt WNウイルスNY99株配列をベースとする)、s-PIV-JE、s-PIV-WN/JE(wt WNウイルスバックボーンおよびwt JEウイルスNakayama株に由来するprM-E遺伝子をベースとする)、s-PIV-YF/WN(YF 17DバックボーンおよびWNウイルスに由来するprM-E遺伝子)、ならびにs-PIV-YF(YF 17D配列をベースとする)を含む。さらなる材料は、d-PIV-YF(YF d-PIV、通常のBHK 細胞において増殖させた(Shustov et al., J. Virol. 21:11737-11748, 2007)、および二成分d-PIV-WN(通常のVero細胞において増殖させた;Suzuki et al., J. Virol. 82:6942-6951, 2008)を含む。
【0087】
これらのPIVプロトタイプの弱毒化を、高感受性5日齢ICRマウスを用いた授乳期マウスNV試験(IC接種)において、LAV YF 17D、キメラYF/JEウイルス、およびキメラYF/WNウイルスと比較した(キメラウイルスは、黄熱病カプシドおよび非構造配列、ならびにJEまたはWN prM-E配列を含む)。PIV構築物を与えた動物はいずれも臨床徴候を示さず、死亡しなかったのに対して、LAVを接種した動物では死亡が観察された(表2)。YF 17Dウイルスは、全ての年齢のマウスに神経毒性があるのに対して、キメラワクチンは成体マウスには神経毒性がないが、高感受性の授乳期マウスでは用量依存性の死亡を引き起こすことがある(Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999; Arroyo et al., J. Virol. 78:12497-12507, 2004)。従って、1 PFU YF 17Dと少ない用量が与えられた授乳期マウスの90%〜100%が死亡した。YF/JEおよびYF/WN LAVは、予想通り、これよりかなり高い用量(それぞれ、>2 log10PFUおよび3 log10PFU)で部分的な死亡を引き起こし、死亡した動物の平均生存期間(AST)は長かった。従って、PIV構築物は、この感受性モデルにおいて完全に無毒であった(神経毒性は、認可されたYF 17Dワクチンの少なくとも1/20,000〜1/200,000である)。
【0088】
YF d-PIVおよびWN d-PIVは死亡も臨床徴候も引き起こさなかった。従って、理論的には、これらの成分の両方に同時感染した細胞から脳組織内に蔓延することができる二成分PIV変種は疾患を引き起こさなかった。さらに、本発明者らは、この実験において、接種後6日目に屠殺したさらなる動物の脳内のd-PIVを力価測定によって検出しようと試みたが、何も検出されなかった(4 log10FFUのYF d-PIVを与えた10匹のマウスおよび4 log10FFUのWN d-PIVを与えた11匹のマウスからの脳組織をホモジナイズし、力価測定に使用した)。従って、d-PIVは、全ウイルスに特有の感染の蔓延を引き起こさなかった。YF/JE LAVは、臨床徴候が無いのにもかかわらず、IC経路により接種された成体ICRマウスの脳内で複製することが示されており、ピーク力価は6日目で約6 log10PFU/gであった(Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999)。細胞へのd-PIV成分の同時感染は、明らかに、全ウイルス感染より非効率的なプロセスである。データから、インビボでのd-PIV複製は、自然免疫応答(および老齢の動物では適応応答)により素早く抑制されることが分かる。
【0089】
マウスおよびハムスターにおける免疫原性/効力
前記のPIVプロトタイプの免疫原性/効力とキメラLAV対応物およびYF 17Dの免疫原性/効力を、マウスおよびシリアンハムスターにおいて比較した。大まかな実験計画を図3に示した。(マウス、IP免疫化)。ハムスターにおいて実験を同様に行った(±数日、以下に示した用量でSC接種またはIP接種)。(s-PIV-WNおよび-YF、YF/WN LAV、およびYF 17D群については)3.5週齢ICRマウスまたは(s-PIV-JEおよびYF/JE LAV群については)C57/BL6マウスを、段階的な用量のPIV構築物(4〜6 log10FFU/用量)またはキメラLAVおよびYF 17D LAV対照(4 log10PFU)でIP免疫化した。選択したPIV-WN、-JE、および-YF群を、21日目に、5 log10FFUの対応する構築物で追加免疫した(表3)。YF/WNもしくは/JE LAVまたはYF 17Dウイルスに対する標準的なPRNT50によって、中和抗体応答が動物血清中で確かめられた。PIV-WNは、YF/WN LAV対照群と比較した、20日目および34日目の免疫化動物からの血清プール中で確かめられたPRNT50力価により証明されたように、追加免疫に関係なく全ての群において非常に高いWN特異的中和抗体応答を誘導した。従って、PIV-WNおよびYF/WN LAVによる動物免疫化は、35日目のwt WNウイルス(IP、270 LD50)による致死性抗原投与を防いだが、モック免疫化動物では保護は認められなかった(表3)。WN中和抗体が個々のマウスからの血清中で測定された場合、免疫応答の高い均一性が観察された(図4)。従って、1回PIVワクチンは、対応するLAVと同程度の免疫原性および有効性があり得る。PIV-JEも高免疫原性であったのに対して(黒色マウス)、PIV-YFの免疫原性はYF 17D対照と比較して著しく低かった(ICRマウス)。だが、wt YF Asibi株ウイルス(500 LD50)を用いた重度の致死性IC抗原投与後に、PIV-YF免疫化動物の用量依存性保護が観察された(が、モック免疫化動物では観察されなかった)(表3)。このことは、1:10と低い中和抗体力価がフラビウイルス感染を防ぐという知識と一致している。
【0090】
YF 17D対照ウイルスは高免疫原性であった(例えば、34日目にPRNT50力価1:1,280)。従って、細胞に感染し、インビボで効率的に複製することができ、そのエンベロープは強力な免疫原である。従って、PIV-YFの低い免疫原性が、細胞に感染できず、インビボで感染細胞において効率的に複製できなかったことによるものだという可能性は低い。本発明者らは、PIV-YF感染細胞におけるYF特異的VLPの産生が低レベルであったために、(例えば、PIV-WNと比較して)PIV-YFの免疫原性が低かった可能性が最も高いと考えている(これに対して、PIV-WN感染細胞ではVLP分泌が多い)。前記のように、本発明者らは、例えば、C/prM接合部での適切な改変によって、例えば、この接合部で生じる2つのプロテアーゼ切断(ウイルスプロテアーゼ切断およびシグナラーゼ切断)を非結合にすることによって、ならびに/またはprMのYFシグナルの代わりに強力な異種シグナル[例えば、狂犬病ウイルスGタンパク質シグナルもしくは真核生物組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)シグナル(Malin et al., Microbes and Infection, 2:1677-1685, 2000)]を使用することによって、PIV-YFの免疫原性を大幅に増強できると提案する。
【0091】
このモデルにおけるPIV構築物の免疫原性とLAV対照の免疫原性を比較するために、約4.5週齢シリアンハムスターにおいて類似実験を行った。動物を、段階的な用量の試験物品によりSC免疫化した(表4)。PIV-WNは高免疫原性であり、例えば、38日目(抗原投与前)のWN特異的PRNT50力価は、5 log10FFU用量を与えた群、6 log10FFU用量を与えた群、および6(初回刺激)+5(追加免疫) log10FFU用量を与えた群において、それぞれ、1:320、1:640、および1:1280であった。これは、YF/WN LAV 4 log10PFU対照(1:2560)と比較していくらか少なかった。PIV-JEおよび-YFは、YF/JE LAVおよびYF 17D対照と比較して低い力価であるが、検出可能な特異的中和抗体応答を誘導した。PIV-WNおよびYF/WNで免疫化した動物は全て、死亡および病的状態(例えば、抗原投与後の体重減少)が無いこと、ならびに抗原投与後WNウイルスウイルス血症が無いか、またはかなり減少したことから証明されたように、wt WNウイルスを用いた致死性抗原投与からしっかりと保護された。モック免疫化動物は保護されなかった(表4)。PIV-JEおよび-WNは、用量依存的に、それぞれの抗原投与から動物を保護した。この実験における保護効力を図5にさらに示した。例えば、モック免疫化動物では、高い抗原投与後YFウイルス(ハムスター適応Asibi株)ウイルス血症が観察され、3日目に>8 log10PFU/mlの力価でピークに達した(左上パネル)。動物は全て体重が減少し、4匹のうち1匹が死亡した(右上パネル)。対照的に、PIV-YF(2回投与;比較的低い中和力価にもかかわらず)またはYF 17Dで免疫化したハムスターでは、ウイルス血症は大幅に低下したか、または無かった。これらの動物はいずれも体重が減少しなかった。同様に、PIV-WNまたはYF/WN LAVで免疫化した動物は、モック対照とは対照的に、抗原投与後WNウイルスのウイルス血症および体重減少/死亡に関して大幅にまたは完全に保護された(下パネルを比較のこと)。従って、PIVの高い免疫原性/効力が第2の動物モデルにおいて証明された。
【0092】
別のハムスター実験において、PIV構築物をIP経路により2回投与して、動物を免疫化した。表5は、PIV-WN、-YF/WN、-WN/JE、および-YFについて、1回目の投与後(20〜21日目)および2回目の投与後(34〜38日目)の、前記の実験(SC接種)においてハムスターのプール血清中で確かめられた(各ワクチンに特異的な)中和免疫応答と、IP免疫化後の中和免疫応答を比較している。1回目の投与後および2回目の投与後の両方で、免疫化経路のはっきりとした効果が観察された。例えば、1回目の投与後のPIV-WNについて、SC免疫化によって、1:40のWN特異的PRNT50力価が得られたのに対して、IP接種によって、さらに高い力価1:320が得られた(2回目の投与後の力価はほぼ同じであった)。他の構築物について、1回目の投与後および2回目の投与後の両方で、さらに明白な効果が観察された。興味深いことに、IP経路によるPIV-YF/WNの免疫原性は非常に高かった(力価、1回目のIP投与後1:320対SC投与後1:20、2回目の投与後1:1,280対SC投与後1:160)。同様に、PIV-JEの免疫原性も非常に高かった(例えば、2回のIP投与後のJE特異的力価1:640)。従って、PIVワクチンの使用について重要な考慮すべき事項は、リンパ系細胞、具体的には、抗原提示細胞(皮膚下にある組織とは対照的に腹部に豊富にある)を良好に標的化することである。ヒトにおいて、皮膚の樹状細胞を効率的に標的化して、免疫応答の大きさを増やすことは、皮内送達によって実現可能であり、従って、本発明者らは、ヒトをPIVで免疫化するための経路として皮内送達を提案する。
【0093】
前記の実験において、本発明者らはまた、(PIV構築物によりコードされ、感染細胞により分泌されたVLPに対する応答とは対照的に)パッケージングエンベロープに対して中和抗体応答が誘導されたかどうかも確かめた。WN特異的中和抗体は、ΔC-prM-E欠失を含有し、従って、VLPをコードしないが、BHK-CprME(WN)ヘルパー細胞においてWNエンベロープにパッケージングされた5 log10FFUのWN d-PIVの第二の成分で免疫化された動物において、PRNT50によって検出されなかった。YF特異的中和活性は、YFエンベロープにパッケージングされた4 log10FFUのYF d-PIVの第二の成分で免疫化された動物からの血清中で見出されなかった。YF特異的中和応答は、YFエンベロープにパッケージングされたPIV-YF/WNを2回投与することによって誘導されず、同様に、WN特異的応答も、WNエンベロープにパッケージングされたPIV-JEを2回投与することによって誘導されなかった。パッケージングエンベロープに対する中和応答が無いために、本発明に従って、異なるPIVワクチンを1種類の(ユニバーサルな)製造用ヘルパー細胞株において製造することが可能になる、または同じベクターをベースとする異なる組換えワクチンを用いて1個体を免疫化することが可能になる。
【0094】
PIVカクテル
PIVは、インビボで1回複製する(任意で数回複製するが、限定的である)ので、本発明者らは、混合物(カクテル)の中で個々の構築物間で干渉が生じることなく、異なるPIVワクチンの混合物を投与できると考えた。PIVワクチンをカクテル製剤において使用できるかどうか解明するために、混合物として与えられた数種類のPIV構築物に対するマウスおよびハムスターでの免疫応答を、個々に与えられた同じ構築物と比較した。両動物モデルにおいて類似の結果が得られた。マウス実験の結果を表6に示した。PIV-JE+PIV-WN混合物またはPIV-JEのみを1回または2回投与した動物からの血清プールにおいて、類似の抗JE中和抗体力価が観察された(それぞれ、1回投与および2回投与について、1:20対1:80および1:640対1:160)。同様に、PIV-JE+PIV-WN混合物およびPIV-WNのみに対するWN特異的力価は類似していた(それぞれ、1回投与および2回投与について、1:320対1:640および1:5、120対1:5,120)。PIV-JEまたは-WNによって、交差特異的応答はほとんどまたは全く誘導されなかった。結果は、個々の動物からの血清中のPRNT50力価を測定することによっても確認された。従って、PIVワクチンをカクテルとして効率的に投与して、2種類またはそれ以上のフラビウイルス病原体に対する免疫を誘導できることは明らかである。さらに、前記のように、非フラビウイルスPIVワクチン間で、または任意のフラビウイルスワクチンと非フラビウイルスPIVワクチンの間で、様々なカクテルを作ることができる。
【0095】
インビトロ研究
異なるPIVプロトタイプを、s-PIVについてはヘルパーBHK細胞において、またはd-PIVについては通常のVero細胞において10回連続継代した。それぞれの継代の後に採取した試料を、免疫染色によってVero細胞において力価測定した。構築物は高力価まで増殖し、全ウイルスを回復させる組換えは観察されなかった。例えば、組換えが起こることなく、PIV-WNは、一貫して、BHK-CprME(WN)ヘルパー細胞(WNウイルスC-prM-Eタンパク質を発現するVEEレプリコンを含有する)において、7〜8 log10FFU/mlの力価まで増殖し、WN d-PIVは、Vero細胞において8 log10FFU/mlを超える力価まで増殖した。
【0096】
実施例2.PIV-TBE
PIV-TBEワクチン候補は、完全に、wt TBEウイルスもしくは血清学的に密接に関連するランガット(LGT)ウイルス(天然弱毒化ウイルス、例えば、wt TP-21株もしくはその経験的に弱毒化された変種、E5株)からの配列をベースとして、またはYF 17Dまたは他のフラビウイルス、例えば、WNウイルスに由来するバックボーン(カプシドおよび非構造配列)、ならびにTBE、LGT、もしくはTBE血清型群からの他の血清学的に関連するフラビウイルスに由来するprM-Eエンベロープタンパク質遺伝子を含有するキメラ配列をベースとして組み立てることができる。YF/TBE LAV候補は、他のキメラLAVワクチンと同様に、YF 17Dに由来するバックボーン、およびTBEまたは関連ウイルス(例えば、LGTのE5株)に由来するprM-E遺伝子をベースとして構築された。
【0097】
PIV-TBEおよびYF/TBE LAVワクチンプロトタイプの構築は、逆遺伝学分野において標準的な方法を用いて、それぞれ、適切な遺伝因子をPIV-WN用プラスミド(Mason et al., Virology 351:432-443, 2006; Suzuki et al., J. Virol. 82:6942-6951, 2008)、またはキメラLAV用プラスミド(例えば、pBSA-AR1、YF/JE LAVの感染性クローンのシングルプラスミドバージョン;WO2008/036146)にクローニングすることによって行った。最初に、ヒトゲノムにおける優先コドン使用頻度に一致させ、8ntより長いヌクレオチド配列反復を排除してインサートの高い遺伝的安定性を保証するために、TBEウイルスHypr株のprM-E配列(GenBankアクセッション番号U39292)およびLGT E5株のprM-E配列(GenBankアクセッション番号AF253420)をコンピュータによりコドン最適化した(必要だと確かめられれば、nt配列反復をさらに短縮することができる)。これらの遺伝子を化学合成し、対応するprM-E遺伝子の代わりにPIV-WN用プラスミドおよびYF/JE LAV用プラスミドにクローニングした。結果として生じたプラスミドをインビトロ転写し、適切な細胞(キメラウイルスについてはVero、PIVについてはヘルパーBHK細胞)をRNA転写物でトランスフェクトして、ウイルス/PIV試料を作製した。
【0098】
YF/TBE LAV構築物
TBE Hypr(プラスミドp42、p45、およびp59)またはLGT E5(プラスミドP43)prM-E遺伝子を含有するYF/TBE構築物において、最初に、2種類のタイプのC/prM接合部を調べた(図6を参照されたい;C/prM接合部のみを配列付表1に示した。5’UTR-C-prM-E-NS1領域開始をカバーする完全な5’末端配列を配列付表2に示した)。p42に由来するYF 17D/Hyprキメラは、prMタンパク質のハイブリッドYF 17D/Hyprシグナルペプチドを含有したのに対して、p45に由来するYF 17D/Hyprキメラは、prMのハイブリッドYF 17D/WNシグナルペプチドを含有した(配列付表1)。前者のキメラウイルスは、P0(トランスフェクション直後)およびP1(Vero細胞における次の継代)において、7.9 log10PFU/mlまで非常に高い力価を生じた。これは、後者のウイルスと比較して0.5 log10倍高かった。さらに、前者のキメラウイルスは、Vero細胞においてかなり大きなプラークを形成した(図6)。従って、prMシグナルペプチドにTBE特異的残基を使用すると、WN特異的残基を含有するシグナルより大きな増殖利点が得られた。p43由来YF 17D/LGTキメラにはp42由来ウイルスと同じprMシグナルがあり、これも、P0およびP1継代で非常に高い力価(8.1 log10PFU/mlまで)を生じ、大きなプラークを形成した。p42由来ウイルスの誘導体もプラスミドp59から産生され、プラスミドp59は、YF/WN LAVワクチンウイルスの状況で以前に特徴付けられた強力な弱毒化変異、具体的には、YF 17D特異的Cタンパク質における3つのアミノ酸欠失(PSR、α-ヘリックスIの始めにある残基40〜42;WO2006/116182)を含有していた。予想通り、p59ウイルスは、親p42由来キメラと比較して、低い力価(P0およびP1それぞれで、5.6および6.5 log10PFU/ml)まで増殖し、小さなプラークを形成した(別の力価測定実験において確かめられ、図6に示さなかった)。YF/TBE LAVプロトタイプの増殖特性のこれらの初期観察、およびインビトロでの複製とプラーク形態の相関関係が増殖曲線実験において確かめられた(図8)。
【0099】
PIV-TBE構築物
PIV-WN/TBE変種を構築し、パッケージングされたPIV試料を、プラスミドp39およびp40から得た(図7;C/prM接合部配列については配列付表1、完全な5’UTR-ΔC-prM-E-NS1配列開始については配列付表3)。これらは、それぞれ、完全なHyprまたはWN prMシグナルを含有していた。両PIVとも、BHK-CprME(WN)またはBHK-C(WN)ヘルパー細胞において首尾良く回収および増殖された(Mason et al., Virology 351:432-443, 2006; Widman et al., Vaccine 26:2762-2771, 2008)。p39変種のP0およびP1試料力価は、p40変種より0.2〜1.0 log10倍高かった。さらに、p39変種に感染したVero細胞は、ポリクローナルTBE特異的抗体を用いた免疫蛍光アッセイにおいて、p40と比較して明るく染色された。このことは、複製効率が高かったことを示している(図7)。p39候補の複製速度がp40候補より速いことが増殖曲線実験において確認された(図8)。後者の実験において、両候補ともBHK-CprME(WN)と比較してBHK-C(WN)ヘルパー細胞において良好に増殖するように見え、p39変種は、5日目で約7 log10PFU/mlの力価に達した(ピーク力価に達していなかったことに留意のこと)。PIVおよびキメラLAVワクチン候補の複製速度に及ぼすprMシグナルの影響の発見、ならびに最も効率的に複製するおよび免疫原性が最も高い(前記を参照されたい)構築物を作製するための異なるシグナルの一対一の比較が、本発明者らのアプローチの他と一線を画す特徴である。前記のように、本発明はまた、適切な変異を含む他のフラビウイルスシグナルの使用、例えば、prMシグナルの前にあるCのC末端にあるウイルスプロテアーゼ切断部位の変異または欠失による、C/prM接合部でのウイルスプロテアーゼとシグナラーゼ切断の非結合、prMシグナルの代わりとなる強力な非フラビウイルスシグナル(例えば、tPAシグナルなど)の使用、ならびにシグナラーゼ切断部位の下流にある配列の最適化を含む。
【0100】
完全に、wt TBE(Hypr株)およびLGTウイルス(TP21野生型株または弱毒化E5株)をベースとする、およびキメラYF 17Dバックボーン/prM-E(TBEまたはLGT)配列をベースとする他のPIV-TBE変種もまた本発明に含まれる。トランス相補のために適切なC、C-prM-Eなどのタンパク質(例えば、TBE特異的)を供給するヘルパー細胞は、安定したDNAトランスフェクションによって、または適切なベクター、例えば、アルファウイルスレプリコン、例えば、VEE TC-83株をベースとするアルファウイルスレプリコンとレプリコン含有細胞の抗生物質選択を用いることによって構築することができる。Vero細胞およびBHK21細胞を本発明の実施において使用することができる。前者は、ヒトワクチン製造用に認可された基質である。ヒトワクチンおよび/または獣医学ワクチンの製造に許容可能な他の任意の細胞株も使用することができる。s-PIV構築物に加えて、d-PIV構築物も組み立てることができる。ワクチンおよび環境の安全性をさらに確かめるために、縮重コドンの使用ならびに5’および3’CSエレメントにおける相補変異を含む適切な改変を用いて、生存可能なウイルスを理論的にもたらし得る組換えの機会を最小限にすることができる。構築後に、全てのワクチン候補を、製造性/安定性についてはインビトロで、弱毒化および免疫原性/効力についてはインビボで、利用可能な前臨床動物モデル、例えば、TBEおよびYFワクチンの開発および品質管理において用いられる前臨床動物モデルにおいて評価することができる。
【0101】
マウスにおけるPIV-TBEおよびYF/TBE LAV構築物の神経毒性および神経浸潤性
若年成体ICRマウス(約3.5週齢)に、神経毒性を測定するためにIC経路によって、または神経浸潤性(および後の免疫原性/効力)を測定するためにIP経路によって、段階的な用量のPIV-TBEおよびYF/TBE LAV候補を接種した。モック接種動物と同様に、両経路によって5 log10FFUのPIV-Hypr(p39およびp40)変種を与えた動物は生存し、病気の徴候を示さなかった(表7)。従って、PIV-TBEワクチンは完全に無毒性である。YF 17D対照(1〜3 log10PFU)をIC接種したマウスは用量依存性の死亡を示したのに対して、IP(5 log10PFU)接種した動物は全て生存した。これは、YF 17Dウイルスが神経浸潤性ではないという知識と一致する。段階的なIC用量(2〜4 log10PFU)のYF/TBE LAVプロトタイプp42、p45、p43、およびp59を与えた動物は全て死亡した(瀕死の動物は人道的に安楽死させた)。例えば、YF/TBE LAV候補について試験した最低用量である2 log10PFU用量での完全な死亡率および短いASTにより証明されたように、これらの変種の弱毒化はYF 17Dより弱いように見える。神経毒性の無い表現型であるPIV-TBE、毒性のある表現型であるYF/TBE LAV、および毒性が中間の表現型であるYF 17Dを、IC接種後のマウスの生存曲線を示す図9にも示した。p43(LGT prM-E遺伝子)およびp59(YF/Hypr LAVのdC2欠失変種)の神経毒性は、対応する用量についての大きなAST値により証明されたように、p42およびp45 YF/Hypr LAV構築物より低いことに留意すべきである(表7)。さらに、p43およびp59候補は非神経浸潤性であるのに対して、p42およびp45はIP接種後に部分的な死亡を引き起こした(5 log10PFU/用量)(表7;図10)。しかしながら、wt TBEウイルスと比較して、例えば、非常に低いIC(LD50約0.1PFU)用量およびIP(LD5010 PFU)用量で、マウスに対して一様に高毒性のwt TBE Hyprウイルスと比較して、YF/TBE LAV構築物は全て大幅に弱毒化していたことに留意すべきである(Wallner et al., J. Gen. Virol. 77:1035-1042, 1996; Mandl et al., J. Virol. 72:2132-2140, 1998; Mandl et al., J. Gen. Virol. 78:1049-1057, 1997)。
【0102】
マウスにおけるPIV-TBEおよびYF/TBE LAV構築物の免疫原性/効力
前記のPIV-TBEもしくはYF/TBE LAV変種、またはヒトホルマリン不活化TBEワクチン対照(1:30のヒト用量)を1回IP投与または2回IP投与して免疫化したマウスにおけるTBE特異的中和抗体応答を測定した。動物に高IP用量(500PFU)のwt Hypr TBEウイルスを抗原投与した。抗原投与後の病的状態(例えば、重量減少)および死亡率をモニタリングした。
【0103】
マウスにおけるPIV-TBEおよびYF/TBE LAV構築物の免疫原性/効力
前記のPIV-TBEもしくはYF/TBE LAV変種(表7の実験から)、またはヒトホルマリン不活化TBEワクチン対照(1:20のヒト用量;1回投与または2回投与)、またはYF 17Dおよびモック対照を1回IP投与または2回IP投与して免疫化したマウスにおけるTBE特異的中和抗体応答を、20日目に、wt TBE Hyprウイルスに対するPRNT50によって測定した(表8;指示した試験物品の2回目の投与は14日目に行った)。[力価は、個々の血清において、またはほとんどの場合、2匹の動物からのプール血清において、またはYF 17Dおよびモック負の対照については4匹の動物からのプール血清において確かめた]。各群について個々の試験試料における力価ならびにGMTを表8に示した。試験試料における力価は、各群において、例えば、PIVで免疫化した群においてほぼ同じであり、動物における免疫応答の高い均一性を示している。予想通り、負の対照群においてTBE特異的中和抗体は検出されなかった(YF 17Dおよびモック;GMT<1:10)。従って、これらの群の動物は、免疫化後21日目の、高いIP用量(500PFU)のwt Hypr TBEウイルスを用いた抗原投与から保護されなかった。部分的な観察(抗原投与後9日目;観察は継続中)からの死亡率を表8に示し、病的状態を示す平均的な抗原投与後の体重の変化を図11に示した。不活化ワクチン対照において中和抗体が検出され、2回投与後に特に高かった(GMT 1:1,496)。2回投与群における動物は、死亡または体重減少が無い点で完全に保護された(だが、1回投与群では動物は保護されなかった)。PIV-Hypr p39を1回投与および2回投与した動物は非常に高い抗体価を有し(GMT 1:665および1:10,584)、しっかりと保護された。このことは、s-PIV-TBE欠損ワクチンによって強い防御免疫を誘導できることを証明している。YF/Hypr p42キメラ(表7を参照されたい)で免疫化された、生き残った2匹の動物も高い抗体価を有し(GMT1:6,085)、保護された(表8;図11)。興味深いことに、PIV-Hypr p40およびYF/Hypr p45の免疫原性は低かった(それぞれ、1回投与および2回投与についてGMT 1:15および1:153、ならびに1:68)。前記のように、これらは、prMシグナルにおいてWN特異的配列を含有したのに対して、高免疫原性PIV-Hypr p39およびYF/Hypr p42構築物はTBE特異的シグナル配列を含有した。前記と一致して、この結果は、高レベル複製/VLP分泌を実現するために、正しいprMシグナル、例えば、TBE特異的シグナルを選択することが重要であることを証明しており、インビボでのこの実験において、TBE特異的シグナルによって劇的に異なる免疫応答が得られた。YF/LGT p43およびYF/Hypr dC2 p59キメラの免疫原性は、それぞれ、(LGT、抗原投与TBEウイルスとは異なる)異種エンベロープを用いたために、およびdC2欠失の高い弱毒化効果のために、予想できたように比較的低かった。
【0104】
実施例3.外来遺伝子発現
下記の組換えPIV構築物の例において、(例えば、標的ワクチン接種宿主において効率的に発現するように)長いnt配列反復を排除してインサートの安定性を高めるために、関心対象の遺伝子をコドン最適化し(8nt長、必要に応じて反復をさらに短縮することができる)、次いで、化学合成を行った。当技術分野において周知の標準的な分子生物学法を用いて、遺伝子をPIV-WNベクタープラスミドにクローニングし、インビトロ転写および適切なヘルパー(s-PIVの場合)または通常の(d-PIVの場合)細胞のトランスフェクションの後に、パッケージングされたPIVを回収した。
【0105】
WN s-PIVおよびd-PIVにおける狂犬病ウイルスGタンパク質の発現
ラブドウイルス科である狂犬病ウイルスは、重要なヒト病原体および獣医学病原体である。いくつかの(死菌)ワクチンが利用可能であるのにもかかわらず、(例えば、安価な抗原投与前予防ワクチンとして)獣医学およびヒトに使用するための改良ワクチンが依然として必要とされている。狂犬病ウイルス糖タンパク質Gは、ウイルスが細胞に侵入するのを媒介し、主要な免疫原である。これは、獣医学ワクチンを開発する目的で他のベクターにおいて発現されている(Pastoret and Brochier, Epidemio. Infect. 116:235-240, 1996; Li et al., Virology 356:147-154, 2006)。
【0106】
完全長狂犬病ウイルスGタンパク質(最初のパスツール(Pasteur)ウイルス分離株,GenBankアクセッション番号NC_001542)をコドン最適化し、化学合成し、PIV-WNベクターのΔC、ΔprM-E、およびΔC-prM-E欠失に隣接して挿入した(図12)。構築物の配列を配列付表4に示した。構築物の大まかな設計を図13に示した。それ自身のシグナルペプチドを含有する全Gタンパク質を、ΔC欠失のある状態で (ΔCおよびΔC-prM-E構築物)、またはΔC欠失が無く(ΔprM-E)、prMシグナルから数個の残基を付けた状態で、WN Cタンパク質の下流にインフレームで挿入した。翻訳中にウイルスポリタンパク質からGのC末端を切断するために、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己プロテアーゼをGの膜貫通C末端アンカーの下流に配置した。FMDV 2Aエレメントの後ろに、ΔC構築物ではprMのWN特異的シグナルおよびprM-E-NS1-5遺伝子、またはΔprM-EおよびΔC-prM-E構築物ではNS1およびNS1-5遺伝子のシグナルを配置した。
【0107】
PIVベクター欠失を相補する[トランス相補のためのWNウイルス構造タンパク質を発現するベネズエラウマ脳炎ウイルス(TC-83株)レプリコンを含有する]ヘルパーBHK細胞のトランスフェクションによって、パッケージングされたWN(ΔC)-狂犬病G、WN(ΔprME)-狂犬病G、およびWN(ΔCprME)-狂犬病G PIVを産生させた。BHK-C(WN)および/またはBHK-C-prM-E(WN)ヘルパー細胞ならびに通常のBHK細胞のトランスフェクション/感染によって、3種類の構築物について、狂犬病Gタンパク質の効率的な複製および発現が、抗狂犬病Gモノクローナル抗体(RabG-Mab)を用いた免疫染色および免疫蛍光アッセイ(IFA)によって証明された(図14)。力価を、Vero細胞において、Mabまたは抗WNウイルスポリクローナル抗体を用いた免疫染色によって確かめた。インビトロRNA転写物によるトランスフェクション後の、BHK-CprME(WN)細胞における構築物の増殖曲線を図14、下パネルに示した。PIVは、約6〜>7 log10FFU/mlの力価まで効率的に増殖した。重要なことに、RabG-MabおよびWN抗体染色によって、ほぼ同一の力価が検出された。このことは、インサートの遺伝的安定性の最初の証拠であった。固定したが透過処理していないPIV感染Vero細胞において、RabG-Mab染色によって強い膜染色が観察された。このことは、この産物が細胞表面に効率的に送達されたことを証明している(図15)。後者は、発現されたGの免疫原性が高くなる主な必要条件であると知られている。図16においてWN(ΔC)-狂犬病G PIVについて図示したように、個々のパッケージングされたPIVはヘルパーBHK細胞への感染後に蔓延できるが、通常の細胞では蔓延することができない。ネイティブなBHK細胞では蔓延しないという事実は、組換えRNAゲノムが、PIV感染細胞によって産生された場合、Gタンパク質を含有する膜小胞に非特異的にパッケージングできないことを証明している。別のラブドウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGタンパク質を用いて同一の結果が得られ、VSV Gタンパク質を発現するセムリキ森林ウイルス(SFV)レプリコンの非特異的パッケージングが以前に観察されたこととは反対である(Rolls et al., Cell 79:497-506, 1994)。後者が望ましい安全性特徴である[または、非特異的パッケージングによって、インビボで限定的なPIVの蔓延が生じ、潜在的には抗狂犬病免疫応答を増強することができる。後者は、このようなPIVが安全だと証明されれば有益な特徴であるかもしれない]。3種類のPIVにおける狂犬病Gインサートの安定性は、高いまたは低いMOI(0.1または0.001FFU/細胞)で、ヘルパーBHK-CprME(WN)細胞において連続継代することによって証明された。それぞれの継代で、細胞上清を採取し、通常の細胞(例えば、Vero細胞)において、総PIV力価を確かめるためには抗WNポリクローナル抗体、またはG遺伝子を含有する遺伝子の力価を確かめるためには抗狂犬病Gモノクローナル抗体による免疫染色を用いて力価測定した(MOI 0.1については図17に示した;類似の結果をMOI 0.001で得た)。WN(ΔC)-狂犬病G PIVは5継代にわたって安定していたが、インサート含有PIVの力価は6継代で低下し始めた。このことはインサートの不安定性を示している。このことは、この構築物内には、大きなG遺伝子インサート(約1500nt)と小さなΔC欠失(約200nt)が組み合われており、組換えRNAゲノムの全サイズがかなり大きかったので予想することができた。対照的に、WN(ΔprME)-狂犬病GおよびWN(ΔCprME)-狂犬病G PIVでは、インサートはさらに大きな欠失(約2000nt)と組み合わされている。従って、これらの構築物は、調べた10継代全てにわたってインサートを安定して維持した(図17)。さらに、図17から、一部の継代では、3種類全てのPIVについて、8 log10FFU/mlと高い力価またはそれより高い力価が得られたことが分かる。このことは、PIVが高収率で容易に増殖できることをさらに証明している。
【0108】
個々にインビボで接種された後に、WN(ΔC)-狂犬病G s-PIVは、狂犬病ウイルスおよびWNウイルスの両方に対して強力な中和抗体免疫応答ならびにT細胞応答を誘導すると予想された。WN(ΔprME)-狂犬病GおよびWN(ΔCprME)-狂犬病G PIVは、WN prM-E遺伝子をコードしていないので狂犬病に対してのみ体液性免疫応答を誘導する。d-PIV製剤において、WN(ΔC)-狂犬病G s-PIV構築物をWN(ΔprME)-狂犬病G構築物とも同時接種して(図12を参照されたい)、発現されるGタンパク質の用量を増やし、限定的な蔓延のために両病原体に対する免疫を増強することができる。蔓延の一例として、Vero細胞における、s-PIV試料、WN(ΔprME)-狂犬病G、およびd-PIV試料WN(ΔprME)狂犬病G+WN(ΔC)PIV(後者は狂犬病Gタンパク質をコードしなかった)の力価測定結果を図18に示した。ナイーブVero細胞にs-PIVを感染させると、RabG-Mabで染色可能な個々の細胞しか得られなかった(または細胞分裂のために小さなクラスターが形成した)。対照的に、d-PIV試料感染後には、2種類のPIV型による同時感染の産物である大きなフォーカス(foci)が観察された(図18、右パネル)。
【0109】
WN(ΔCprME)-狂犬病G構築物もまた、C-prM-Eをトランスで供給するヘルパーゲノムと共に同時接種されれば、d-PIV製剤において使用することができる(図12を参照されたい)。例えば、ヘルパーゲノムは、トランス相補が可能であると知られている、NSタンパク質の1つ、例えば、NS1、NS3、またはNS5の欠失を含有するWNウイルスゲノムでもよい(Khromykh et al., J. Virol. 73:10272-10280, 1999; Khromykh et al., J. Virol. 74:3253-3263, 2000)。本発明者らは、WN-ΔNS1ゲノム(配列を配列付表4に示した)を構築し、免疫染色によって、WN(ΔprME)-狂犬病GまたはWN(ΔCprME)-狂犬病G構築物との同時感染およびインビトロでの蔓延の証拠を得た。このようなd-PIVの場合、発現される狂犬病Gタンパク質の量を増やして、抗狂犬病免疫応答を高めるために、狂犬病Gタンパク質は、ヘルパーゲノム、例えば、WN-ΔNS1ゲノムにおいても挿入および発現させることができる。どのdPIVバージョンも同様に、ある免疫原がある病原体に由来してもよく(例えば、狂犬病G)、他の免疫原が第二の病原体に由来してもよく、結果として、ワクチンの3つの抗原特異性が得られる。前記のように、他の例では、ΔNS1欠失を、ΔNS3および/またはΔNS5欠失/変異で置換してもよく、ΔNS3および/またはΔN5欠失/変異と併用してもよい。
【0110】
WN s-PIVおよびd-PIVにおけるRSV Fタンパク質の発現
パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のメンバーである呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、世界中で、小児における重篤な気道疾患の主因である(Collins and Crowe, Respiratory Syncytial Virus and Metapneumovirus, In: Knipe et al. Eds., Fields Virology, 5th ed., Philadelphia: Wolters Kluwer/Lippincott Williams and Wilkins, 2007:1601-1646)。ウイルスの融合タンパク質Fは、安全で有効なワクチンを開発するためのリード(lead)ウイルス抗原である。以前にホルマリン不活化ワクチン候補で観察された、RSV感染のワクチン接種後増悪を回避するために、Fに対するバランスのとれたTh1/Th2応答が必要とされる。これは、高親和性抗体誘導の必須条件である、さらに良好なTLR刺激によって実現可能であり(Delgado et al., Nat. Med. 15:34-41, 2009)、強いウイルスベースベクターに入れたFを送達することによって実現可能なはずである。本発明者らは、黄熱病ウイルスベースキメラLAVベクターが、インビボで、インフルエンザ抗原に対して強力で、バランスのとれたTh1/Th2応答を誘導できることを以前に証明している(WO2008/036146)。本発明において、黄熱病ウイルスベースキメラLAVおよびPIVベクターは両方とも、最適な免疫応答プロファイルを誘導するためにRSV Fを送達するのに用いられる。本明細書に記載の他のLAVおよびPIVベクターもまた、この目的に使用することができる。
【0111】
ウイルスのA2株(GenBankアクセッション番号P03420)の完全長RSV Fタンパク質を前記のようにコドン最適化し、合成し、狂犬病Gタンパク質について図12および図13に示した挿入スキームを用いて、分子生物学の標準的な方法を適用することによって、PIV-WN s-PIV用およびd-PIV用のプラスミドにクローニングした。挿入および周囲の遺伝因子の正確な配列を配列付表5に示した。結果として生じたWN(ΔC)-RSV F、WN(ΔprME)-RSV F、およびWN(ΔCprME)-RSV F PIV構築物のインビトロRNA転写物を用いて、ヘルパーBHK-CprME(WN)細胞をトランスフェクトした。最初に、図19のWN(ΔprME)-RSV F構築物について図示されたように、抗RSV F Mabを用いたトランスフェクト細胞の免疫染色によって、RSV Fタンパク質の効率的な複製および発現が証明された。トランスフェクト細胞に由来する上清中に、パッケージングされたPIVが存在することが、Vero細胞における免疫染色による力価測定によって確かめられた(7 log10 FFU/mlと高い力価)。さらに、改変された完全長Fタンパク質遺伝子を含有する類似の構築物を使用することができる。具体的には、改変されたFタンパク質では、FのN末端ネイティブシグナルペプチドが、狂犬病ウイルスGタンパク質に由来するシグナルペプチドで置換されている。この改変は、異種シグナルを用いることによってPIVのFタンパク質の合成および/または複製の速度を上げることができるかどうかを解明することを目的としている。
【0112】
(表1)プラットフォーム開発研究において用いられたPIVプロトタイプ構築物

【0113】
(表2)安全性:授乳期マウス神経毒性1

1単回投与、IC接種、ICR 5日齢マウス。段階的log用量を投与した。
2死亡したマウスのAST;na、該当なし。
【0114】
(表3)マウスにおいて高免疫原性かつ有効なPIV1

1IP免疫化(d0初回刺激、d21選択された群において追加免疫);d35抗原投与:wt WN NY99、3 log10PFU IP、270 LD50; wt YF Asibi、3 log10PFU IC、500 LD50;N/D、未決定。
【0115】
(表4)PIVはハムスターにおいて免疫原性があり、抗原投与から保護する1

1シリアンハムスター、SC接種(d0、d21選択された群);抗原投与(d39):wt WN NY385/99 6 log10 PFU IP、wt JE Nakayama 5.8 log10PFU IC、またはハムスター適応YF Asibi 7 log10 PFU IP (McArthur et al., J. Virol. 77:1462-1468, 2003; McArthur et al., Virus Res. 110:65-71, 2005)。
【0116】
(表5)PIVによるハムスターの免疫化:SC経路およびIP経路の比較

【0117】
(表6)PIVカクテルに対する免疫応答(マウス)1

1C57/BL6、0日目および21日目にIP接種;プール血清のPRNT力価。
【0118】
(表7)成体ICRマウスにおけるPIV-TBEおよびYF/TBEワクチン構築物の神経毒性(IC接種)および神経浸潤性(IP接種)

1死亡したマウスのAST
【0119】
(表8)IP免疫化マウスにおける中和抗体力価(PRNT50)(wt TBEウイルスHyprに対して求めた)、および抗原投与からの保護(抗原投与後観察、9日目)

1括弧内の数字は、それぞれの試験プール血清試料におけるマウスの数に対応する。
29日目の死亡率を示した。
【0120】
(表9)キメラTBE LAV候補の弱毒化に使用することができる公表された弱毒Eタンパク質変異の例

【0121】
参考文献:Hasegawa et al., Virology 191(1):158-165; Schlesinger et al., J. Gen. Virol. 1996, 77 (Pt 6):1277-1285, 1996; Labuda et al., Virus Res. 31(3):305-315, 1994; Wu et al., Virus Res. 51(2):173-181, 1997; Holzmann et al., J. Gen. Virol. 78 (Pt 1):31-37, 1997; Bray et al., J. Virol. 72(2):1647-1651, 1998; Guirakhoo et al., Virology 194(1):219-223, 1993; Pletnev et al., J. Virol. 67(8):4956-4963, 1993; Kawano et al., J. Virol. 67(11):6567-6575, 1993; Jennings et al., J. Infect. Dis. 169(3):512-518, 1994; Mandl et al., J. Virol. 63(2):564-571, 1989; Chambers et al., J. Virol. 75(22):10912-10922, 2001; Cecilia et al., Virology 181(1):70-77, 1991; Jiang et al., J. Gen. Virol. 74 (Pt 5):931-935, 1993; Gao et al., J. Gen. Virol. 75 (Pt 3):609-614, 1994; Holzmann et al., J. Virol. 64(10):5156-5159, 1990; Hiramatsu et al., Virology 224(2):437-445, 1996; Lobigs et al., Virology 176(2):587-595, 1990; Campbell et al., Virology 269(1):225-237, 2000; Gritsun et al., J. Gen. Virol. 82(Pt 7):1667-1675, 2001。
【0122】
配列付表1

【0123】
配列付表2











【0124】
配列付表3






【0125】
配列付表4
狂犬病ウイルスGタンパク質を発現するWN PIV構築物











【0126】
配列付表5










【0127】
他の態様
本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、および特許はその全体が、それぞれ個々の刊行物、特許出願、または特許が参照として組み入れられるように詳細かつ個々に示されるのと同じ程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【0128】
説明された本発明のウイルス、ベクター、組成物、および方法の様々な変更および変化が、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を特定の態様と共に説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明は、このような特定の態様に過度に限定されるべきでないことが理解されるはずである。実際に、医学、薬理学の当業者、または関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための説明された態様の様々な変更が本発明の範囲内にあると意図される。本明細書における単数形、例えば、「1つの(a)」および「その(the)」は、特に文脈によって反対のことが示されていない限り、対応する複数形を示していることを排除しない。同様に、複数の用語の使用は、対応する単数形を示していることを排除しない。他の態様は以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列における1つまたは複数の欠失または変異と、(ii)1つまたは複数の異種の病原体、癌、またはアレルギー関連免疫原をコードする配列とを含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項2】
1つまたは複数の欠失または変異が、フラビウイルスゲノムのカプシド(C)配列の中にある、請求項1記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項3】
1つまたは複数の欠失または変異が、フラビウイルスゲノムのプレ膜(prM)および/またはエンベロープ(E)配列の中にある、請求項1記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項4】
1つまたは複数の欠失または変異が、フラビウイルスゲノムのカプシド(C)、プレ膜(prM)、およびエンベロープ(E)配列の中にある、請求項1記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項5】
1つまたは複数の欠失または変異が、フラビウイルスゲノムの非構造タンパク質1(NS1)配列の中にある、請求項1記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項6】
異種免疫原が、狂犬病ウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、マダニ、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、サル免疫不全症ウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、マラリア寄生生物、および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群より選択される病原体に由来する、請求項1〜5のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項7】
異種免疫原が、狂犬病ウイルスGタンパク質免疫原またはその免疫原性断片を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項8】
異種免疫原が、ボレリア・ブルグドルフェリOspA免疫原またはその免疫原性断片を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項9】
異種免疫原が、64TRP、Isac、およびSalp20、またはその免疫原性断片からなる群より選択されるマダニ唾液タンパク質を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項10】
異種免疫原が、インフルエンザウイルスM2、ヘマグルチニン(HA)、もしくはノイラミニダーゼ(NA)エピトープ、またはその免疫原性断片を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項11】
異種免疫原が、コドン最適化HIV gag、tat/nef、もしくはgp120タンパク質、またはその免疫原性断片を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項12】
異種免疫原が、HPV16もしくはHPV18カプシドタンパク質L1もしくはL2、またはその免疫原性断片を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項13】
異種免疫原が、呼吸器合胞体ウイルスFまたはG糖タンパク質を含む、請求項6記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項14】
フラビウイルスゲノムが、プレ膜(prM)および/またはエンベロープ(E)タンパク質をコードする配列を含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項15】
フラビウイルスゲノムが、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ランガットウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、およびセントルイス脳炎ウイルスならびにそのキメラのゲノムより選択される、請求項1〜14のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項16】
キメラが、第一のフラビウイルスのプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)配列と、第二の異なるフラビウイルスのカプシド(C)および非構造配列とを含む、請求項15記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項17】
第一のフラビウイルスがダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスである、請求項16記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項18】
第二の異なるフラビウイルスが黄熱病ウイルスまたは西ナイルウイルスまたはランガットウイルスである、請求項16または17記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項19】
ゲノムが、該ゲノムのフラビウイルスと同じフラビウイルスまたは異なるフラビウイルスに由来するプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)配列を含む粒子内にパッケージングされる、請求項1〜18のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項20】
異種免疫原をコードする配列が、1種もしくは複数のタンパク質の1つもしくは複数の欠失または変異の代わりに、または1種もしくは複数のタンパク質の1つもしくは複数の欠失または変異と組み合わせて挿入される、請求項1〜19のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項21】
異種免疫原をコードする配列が、フラビウイルスゲノムにある、エンベロープ(E)タンパク質をコードする配列の中に挿入されるか、非構造1(NS1)タンパク質をコードする配列の中に挿入されるか、プレ膜(prM)タンパク質をコードする配列の中に挿入されるか、エンベロープ(E)タンパク質をコードする配列と非構造タンパク質1(NS1)をコードする配列の間の遺伝子間に挿入されるか、非構造タンパク質2B(NS2B)をコードする配列と非構造タンパク質3(NS3)をコードする配列の間の遺伝子間に挿入されるか、またはフラビウイルスゲノムの3’非翻訳領域にバイシストロニック挿入として挿入される、請求項1〜20のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項記載の第一の複製欠損偽感染性フラビウイルスと、カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列における1つまたは複数の欠失または変異を含むゲノムを含む第二の異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスとを含む組成物であって、第二の異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスにおいて1つまたは複数の欠失または変異が生じる配列によってコードされる1つまたは複数のタンパク質が、第一の複製欠損偽感染性フラビウイルスにおいて1つまたは複数の欠失または変異が生じる配列によってコードされる1つまたは複数のタンパク質と異なる、組成物。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか一項記載の1種もしくは複数の複製欠損偽感染性フラビウイルスおよび/または請求項22記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象において免疫原に対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項24】
対象が、病原体に感染するリスクまたは癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有するリスクがあるが、病原体に感染していない、または癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有さない、請求項23記載の方法。
【請求項25】
対象が病原体に感染しているか、または癌もしくはアレルギー関連免疫原に関連する疾患もしくは状態を有する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
免疫原が、狂犬病ウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ、マダニ、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、サル免疫不全症ウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、マラリア寄生生物、および結核菌からなる群より選択される病原体に由来する、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
免疫原の供給源に加えて、フラビウイルスゲノムによりコードされるタンパク質に対する免疫応答を誘導するための方法である、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
対象が、フラビウイルスのプレ膜および/またはエンベロープタンパク質をコードする配列を含む偽感染性フラビウイルスのゲノムに対応するフラビウイルスに感染するリスクがあるが、該フラビウイルスに感染していない、請求項27記載の方法。
【請求項29】
対象が、フラビウイルスのプレ膜および/またはエンベロープタンパク質をコードする配列を含む偽感染性フラビウイルスのゲノムに対応するフラビウイルスに感染している、請求項27記載の方法。
【請求項30】
プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列が、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている黄熱病ウイルスを含む、生弱毒化キメラフラビウイルスであって、キメラフラビウイルスのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質との間のシグナル配列が、黄熱病ウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列とダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列とのハイブリッド、またはその変種を含む、生弱毒化キメラフラビウイルス。
【請求項31】
キメラフラビウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列が、アミノ末端領域に黄熱病ウイルス配列を含み、かつカルボキシ末端領域にダニ媒介脳炎またはランガットウイルス配列を含む、請求項30記載の生弱毒化キメラフラビウイルス。
【請求項32】
プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列が、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている西ナイルウイルスを含む、生弱毒化キメラフラビウイルスであって、キメラフラビウイルスのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質との間のシグナル配列が、ダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列、またはその変種を含む、生弱毒化キメラフラビウイルス。
【請求項33】
請求項1〜21のいずれか一項記載の偽感染性フラビウイルス、請求項22記載の組成物、または請求項30〜32のいずれか一項記載の生弱毒化フラビウイルス、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項34】
アジュバントをさらに含む、請求項33記載の薬学的組成物。
【請求項35】
非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、または非構造タンパク質5(NS5)をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項36】
請求項1〜21もしくは35のいずれか一項記載の偽感染性フラビウイルスのゲノム、または請求項30〜32のいずれか一項記載の生弱毒化フラビウイルスのゲノムに対応する核酸分子。
【請求項37】
請求項36記載の核酸分子を、複製欠損偽感染性フラビウイルスのフラビウイルスゲノムから欠失した任意の配列に対応するタンパク質を発現する細胞に導入する工程を含む、請求項1〜21または35のいずれか一項記載の複製欠損偽感染性フラビウイルスを作る方法。
【請求項38】
タンパク質が、細胞内において、第二の異なる複製欠損偽感染性フラビウイルスのゲノムから発現される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
タンパク質がレプリコンから発現される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
レプリコンがアルファウイルスレプリコンである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
アルファウイルスがベネズエラウマ脳炎ウイルスである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
2つまたはそれ以上の複製欠損偽感染性フラビウイルスを含む組成物であって、該複製欠損偽感染性フラビウイルスのうち2つが、以下:
(a)日本脳炎ウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、およびデングウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス;
(b)黄熱病ウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、およびデングウイルス配列を含むゲノムを含む複製欠損偽感染性フラビウイルス;ならびに
(c)ダニ媒介脳炎ウイルス配列もしくはランガットウイルス配列を含むゲノムおよびボレリア・ブルグドルフェリ免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、ならびにダニ媒介脳炎ウイルス配列もしくはランガットウイルス配列を含むゲノムおよびマダニ唾液タンパク質免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルス、またはダニ媒介脳炎ウイルス配列もしくはランガットウイルス配列を含むゲノムならびにボレリア・ブルグドルフェリ免疫原およびマダニ唾液タンパク質免疫原をコードする挿入配列を含む複製欠損偽感染性フラビウイルス
からなる群より選択される、組成物。
【請求項43】
請求項30〜32のいずれか一項記載の生弱毒化キメラフラビウイルスを含む、薬学的組成物。
【請求項44】
請求項43記載の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象においてダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項45】
対象が、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染していないが、ダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染するリスクがある、請求項44記載の方法。
【請求項46】
対象がダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスに感染している、請求項44記載の方法。
【請求項47】
カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスであって、該フラビウイルスゲノムが、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列がダニ媒介脳炎ウイルスまたはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている黄熱病ウイルス配列を含み、かつ該フラビウイルスゲノムのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質との間のシグナル配列をコードする配列が、黄熱病ウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列とダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列とのハイブリッド、またはその変種を含む、複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項48】
フラビウイルスゲノムのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列が、5’領域に黄熱病ウイルス配列を含み、かつ3’領域にダニ媒介脳炎配列またはランガットウイルス配列を含む、請求項47記載の複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項49】
カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスであって、該フラビウイルスゲノムが、プレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列がダニ媒介脳炎またはランガットウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質をコードする配列で置換されている西ナイルウイルス配列を含み、かつ該フラビウイルスゲノムのカプシドタンパク質とプレ膜タンパク質との間のシグナル配列をコードする配列が、ダニ媒介脳炎もしくはランガットウイルスのカプシド/プレ膜シグナル配列をコードする配列、またはその変種を含む、複製欠損偽感染性フラビウイルス。
【請求項50】
カプシド(C)、プレ膜(prM)、エンベロープ(E)、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質3(NS3)、および非構造タンパク質5(NS5)からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において1つまたは複数の欠失または変異を含むフラビウイルスゲノムを含む、複製欠損偽感染性フラビウイルスであって、該フラビウイルスゲノムにおける任意のカプシド(C)および非構造(NS)タンパク質がランガットウイルスに由来し、かつ任意のプレ膜(prM)およびエンベロープ(E)タンパク質がダニ媒介脳炎ウイルスに由来する、複製欠損偽感染性フラビウイルス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−516040(P2011−516040A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550707(P2010−550707)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/001666
【国際公開番号】WO2009/114207
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】