説明

褥瘡治療における創傷被覆材の使用



創傷からの浸出液を吸収するゲルクッション構造を形成する褥瘡治療用創傷被覆材の製造のための、ゲル形成繊維を含む吸収層の使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、褥瘡、とりわけ足部における踵の褥瘡の治療における創傷被覆材の使用に関する。
【0002】
褥瘡は、床ずれ、褥瘡性潰瘍または栄養障害性潰瘍としても知られ、仙骨、坐骨、大転子および踵の組織に生じる。褥瘡は、例えば、ベッド、車いす、ギプス被覆材または添え木のような外部オブジェクトに対して、長く続く圧迫下に付されている骨ばった隆起を覆っている組織の虚血性壊死および潰瘍を特徴とする。踵の褥瘡は、とりわけ高齢者、整形外科患者および糖尿病患者のような特定の患者群に一般的であることが知られている。
【0003】
これまでに、これらの患者群の治療に含まれるものとして、褥瘡の形成防止または圧力を軽減する装置およびマットの使用による当該褥瘡の治療に試されてきた。しかしながら、該圧迫の軽減が、褥瘡の治療における創傷被覆材の選択によって得られうることは、ほとんど注目されていなかった。すなわち、創傷被覆材の選択は、圧迫の結果として生じる創傷ではない、該創傷によってのみ決定づけられてきた。
【0004】
驚くべきことに、創傷の治療に使用する公知の特定の創傷被覆材が、とりわけ褥瘡の治療に有効であることを見出した。
【0005】
従って、該発明は、褥瘡の治療に使用する該創傷からの浸出液の吸収において、ゲルクッション構造を形成する創傷被覆材製品におけるゲル形成繊維を含む、吸収層の使用を提供する。
【0006】
とりわけ、吸収された浸出液を圧迫下に吸収および保持することができる吸収層が本発明の使用に好適であることを見出した。特に、本発明に使用するための繊維は、創傷の浸出液の取り込みによって、湿って、滑りやすく、最終的にゲルを形成するようになる吸湿性繊維が好ましい。該吸収層は、アルギン酸、ビスコース、修飾されたセルロース、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンおよびその共重合体、ペクチン、キトサン繊維、ヒアルロン酸繊維または他の多糖類繊維もしくはゴムから誘導される繊維のゲル形成繊維の繊維層を含みうる。好ましくは、本発明に使用する該ゲル形成繊維は、1996年英国薬局方の自由膨張試験によって測定され、少なくとも15g/gの水の吸収があり、より好ましくは、25g/gから60g/gの間がよい。最も好ましくは、例えば、アクゾノーベル社による、WO93/12275またはWO94/16746、もしくは、E.R.スクイブアンドサンズ社によるWO94/17227に記載されている修飾されたセルロースのような高吸収性のゲル形成繊維である。該繊維に関して、高吸収性とは、1996年英国薬局方の自由膨張試験によって測定され、少なくとも25g/gの脱イオン水を吸収することができることを意味する。
【0007】
該吸収層に使用されるゲル形成繊維は、上記成分を混合またはブレンドして、複合層を形成するようにしてもよく、または上記成分のいずれかの混合物から作られた繊維であってもよい。
【0008】
該創傷被覆材は、粘着性または非粘着性であり得る。
【0009】
粘着性のものでは、該創傷被覆材が粘着層を含んでいてもよい。該粘着層は、該吸収層をカバーするように広がっていてもよく、あるいは該創傷被覆材の創傷接触表面を形成するようにしてもよい。別法として、あるいはそれに加えて、該粘着層は、該吸収層の周りに粘着性エッジを形成してもよい。該吸収層は、粘着層の上に「島(island)」を形成しうる。
【0010】
該被覆材の粘着層は、皮膚に対して該被覆材を粘着しうる。好ましくは、該粘着層が該創傷の接触表面を形成するなら、該粘着層は、開口されるのが好ましい。使用する際に、浸出液を吸収するとき、該開口部は該吸収層をキルティングされたゲルクッション構造を形成させる。
【0011】
粘着層自体が、該創傷に対する被覆材の粘着性を最も有用に維持しながら、浸出液および腫れを吸収することができることを見出した。好ましくは、該粘着性の組成物は、1またはそれ以上の水溶性ハイドロコロイド、および例えば、参照によって本明細書に引用されるEP−B−92999に記載された、1またはそれ以上の低分子量のポリイソブチレンの均一ブレンドを含む。該水溶性ハイドロコロイドは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、ゼラチン、グアーガム、ロカストビーンガム、インドゴムおよびその混合物から選択されうる。該ポリイソブチレンは、36000〜58000フローリー(Florey)の粘度平均分子量を有する低分子量ポリイソブチレンから選択されうる。
【0012】
または、該粘着性の組成物は、1またはそれ以上のハイドロコロイド、1またはそれ以上の低分子量のポリイソブチレンと1またはそれ以上のスチレンブロック共重合体、鉱油、ブチルゴム、粘着付与剤および少量の任意の成分を均一にブレンドすることを含みうる。上で挙げた成分量の具体的な範囲の選択によって、粘着性の組成物は、皮膚に対して良好な粘着性および伸縮性を有するように製造され得る。当該組成物およびその製造法は、参照によって本明細書に引用される、EP−B−130061において開示されている。
【0013】
浸出液の吸収により膨張して、ゲルクッション構造を形成する吸収層を含む創傷被覆材を用いると、該被覆材の浸出液の作用によって、創傷に対する圧力の影響が軽減されることを見出した。
【0014】
この事は、褥瘡を本発明の使用または方法によって治療すると、それらにかかる圧力が軽減することとなり、それが褥瘡の治療を助けるという利点をもたらす。
【0015】
本発明の好ましい態様を、添付の図面を引用して例示する。
【0016】
該発明の好ましい態様は、以下の実施例で説明される。
【0017】
実施例1
多層の被覆材は、WO93/12275で記載されるような布地およびゲル形成繊維をブレンドすることによって製造され、例えば、開綿および梳綿機によって混合して50/50混合比のConvaTecのような繊維性被覆材製品であるAQUACEL(登録商標)として販売される。次いで、該ブレンドされた繊維は、約100g/m2の正確な密度で交互に折られて、針でパンチして、最終的に不織布の吸収層は、適当な伸張性のある強さ、少なくとも4N/cmを提供する。該吸収層は、例えば、不織布およびポリウレタンの泡状/フィルム状の薄板からなる伝播層であるBSFのようなOCD等の高い側方のウィッキング能力を有するビスコース/ポリエステルネットを含む拡散層と混合する。該層は、拡散層が該吸収層および該伝播層の間に位置して、該三層を加熱および圧力により薄板状にして被覆材を形成するように配置した。そのような被覆材は、ブリストルマイヤーズスクイブカンパニーによるWO00/41661に記載される。
【0018】
該被覆材は、該吸収層を覆う粘着層も含む。該粘着層は該創傷の接触表面を形成し、貫通孔も設けられている。
【0019】
該被覆材を踵の褥瘡の模擬実験する装置に置いた。該装置は、部分圧の読み取りを分析するソフトを備え付けたコンピューターに伝達される多数の圧力センサーおよび該マットおよびベッドに横たわる患者に想定される位置で、接する義足を有する圧力マットを含む。該足は、当該状況における実際の足が体験する該力を仮定するために足首におもりを使用し、装着した。創傷被覆材は、該足の踵に適用され、塩化ナトリウムカルシウム溶液を創傷からの標準的な浸出液および速度を想定して、シリンジポンプを用いて該被覆材に注ぎ込んだ。該圧力マットおよびソフトウェアによって、該試験の3時間行った圧力分布の変化を記録した。該結果は、該足のみの圧力マップに対して補正される、液体を該被覆材に注ぎ込まれる前の該初期の圧力測定からの除去圧のパーセントとして計算した。
【0020】
図1は、該被覆材が浸出液を吸収するような該踵が体験する該クッション効果の結果として、圧力の再分配および軽減することがあることをグラフで示す。
【0021】
実施例2
また、図1には、同一の測定装置および治療法で、市販の泡状の被覆材を付すことによって、得られる結果も示す。該市販の泡状の被覆材は、例えば、スミスアンドネフュー社のアレヴィン(Allevyn)であり、非粘着性の創傷に接する層、柔軟な吸収発泡層および外側のフィルム層からなる被覆材である。この被覆材および本発明で使用される被覆材の主な違いは、該アレヴィン被覆材が、圧迫下で浸出液をその吸収層が発泡体となっており、それは吸収剤ではあるが保持はしない泡であること、および該創傷に接する層が非粘着性であることである。
【0022】
図1から明らかなように、吸収および保持力のある吸収層からなる被覆材を付けた足にもたらされる圧力軽減%が、模擬創傷に該被覆材を70分間曝した後、急速に増加する。しかしながら、発泡被覆材は、圧力軽減を全く示さない。
【0023】
これらの結果は、褥瘡の治療のための被覆材を選択するとき、ヘルスケアの専門家は、本発明の使用におけるクッション効果を与える被覆材を選択するべきであることを示唆する。
【0024】
実施例3
図2は、浸出液の吸収後の本発明の使用における、実施例1の該被覆材の該創傷の接着表面を示す。浸出液の吸収ならびに該吸収および開口部の粘着層の結果として生じる膨張によって引き起こされる該キルティング効果は、明らかに目に見える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1に記載された創傷モデルによって、測定された時間に対する圧力軽減のグラフである。
【図2】図2は、浸出液の吸収後、該創傷被覆材における該創傷接触層の外観である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷からの浸出液を吸収するゲルクッション構造を形成する褥瘡治療用創傷被覆材の製造のための、ゲル形成繊維を含む吸収層の使用。
【請求項2】
該吸収層が、圧迫下に創傷から出る浸出液を吸収および保持することができることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項3】
該吸収層が、アルギン酸、ビスコース、修飾されたセルロース、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンおよびその共重合体、ペクチン、キトサン繊維、ヒアルロン酸繊維、または他の多糖類繊維、もしくはゴムから誘導される繊維のゲル形成繊維を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2の使用。
【請求項4】
該創傷被覆材が、粘着層を含むことを特徴とする、前記のいずれかの請求項の使用。
【請求項5】
該粘着層が、該吸収層を覆うことを特徴とする、請求項4の使用。
【請求項6】
該粘着層が、該吸収層の周縁に粘着性を形成することを特徴とする、請求項4または請求項5の使用。
【請求項7】
該粘着層が、該創傷被覆材の該創傷接触表面を形成することを特徴とする、請求項5の使用。
【請求項8】
該粘着層が、開口されることを特徴とする、請求項7の使用。
【請求項9】
該創傷被覆材が、浸出液を吸収するとき、キルティングされたゲルクッション構造を形成することを特徴とする、請求項8の使用。
【請求項10】
該粘着層が、該創傷に対する該被覆材の粘着性を維持しながら、浸出液および腫れを吸収することができることを特徴とする、請求項5から9のいずれかの使用。
【請求項11】
該粘着層が、1またはそれ以上の水溶性ハイドロコロイドおよび1またはそれ以上の低分子量のポリイソブチレンの均一ブレンドを含むことを特徴とする、請求項5から10のいずれかの使用。
【請求項12】
ゲル形成繊維を含む吸収層を有する創傷被覆材を褥瘡に適用し、該ゲル形成繊維を該褥瘡からの浸出液を吸収して、ゲルクッション構造を形成するように配列することを特徴とする褥瘡の治療方法。
【請求項13】
該吸収層が、圧迫下に創傷または褥瘡から出る浸出液を吸収および保持することができることを特徴とする、請求項12の方法。
【請求項14】
該吸収層が、アルギン酸、ビスコース、修飾されたセルロース、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンおよびその共重合体、ペクチン、キトサン繊維、ヒアルロン酸繊維または他の多糖類繊維もしくはゴムから誘導される繊維のゲル形成繊維を含むことを特徴とする、請求項12または請求項13の方法。
【請求項15】
該創傷被覆材が粘着層を含むことを特徴とする、請求項12から14のいずれかの方法。
【請求項16】
該粘着層が、該吸収層を覆うことを特徴とする、請求項15の方法。
【請求項17】
該粘着層が、該吸収層の周縁に粘着性を形成することを特徴とする、請求項15または請求項16の方法。
【請求項18】
該粘着層が、該創傷被覆材の該創傷接着表面を形成することを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項19】
該粘着層が、開口されることを特徴とする、請求項18の方法。
【請求項20】
該創傷被覆材が、浸出液を吸収するとき、キルティングされたゲルクッション構造を形成することを特徴とする、請求項19の方法。
【請求項21】
該粘着層が、該創傷に対する該被覆材の粘着性を維持しながら、浸出液および腫れを吸収することができることを特徴とする、請求項15から20のいずれかの方法。
【請求項22】
該粘着層が、1またはそれ以上の水溶性ハイドロコロイドおよび1またはそれ以上の低分子量のポリイソブチレンとの均一ブレンドを含むことを特徴とする、請求項15から21のいずれかの方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−525836(P2006−525836A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506231(P2006−506231)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001982
【国際公開番号】WO2004/098668
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】