説明

見積支援システム、見積支援方法、及び、プログラム

【課題】多数の見積リスク要因の設定、操作等を容易に行い、リアルタイムに見積の検討を繰り返し行うことを可能にすること。
【解決手段】入力手段11−1、11−2、…、11−nは、ユーザが手にとって直線移動、曲線移動、回転移動等の操作が可能なパックを用い、入力検出手段13は、パックの位置、移動量、回転量等の動きを検出し、ホストコンピュータ5に送信する。ホストコンピュータ5は、入力手段11の位置と動きから、見積に必要なリスク要因のパラメータを決定し、見積結果等を計算する。ホストコンピュータ5によって計算された見積結果等の映像は出力装置7によって入力検出手段13上に投影され、入力検出手段13と入力手段11を用いて、見積結果が検討される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェア開発や製品開発作業等に対する見積作業を支援する見積支援システム、見積支援方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品やソフトウェアなどの開発作業に関する見積作業を支援する様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ソフトウェアの規模、開発工数、開発コストという一連の見積作業全体を作業者入力を促すことで支援する方法が記載されている。また、特許文献2には、開発費の見積基準データベースとの比較により、ソフトウェア開発における間接費用を比較的容易に見積もることが可能な見積システムが記載されている。また、特許文献3には、製品開発における設計、製造作業の生産性変化に対し、日程計画立案時に必要な作業工数見積を高精度に保つためのプロジェクト管理システムが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−263320号公報
【特許文献2】特開2007−11697号公報
【特許文献3】特開2002−109173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソフトウェア等の開発には、開発工数やコストの他にも様々な見積を決定する要因(以下、「見積リスク要因」或いは「リスク」とする)が存在し、それらのリスク要因の全てを考慮して見積が検討されなければならないが、特許文献1から特許文献3に記載された技術をはじめとする従来技術には、多種多様な見積リスク要因を容易に操作するのに必ずしも適したユーザインタフェースが見積作業に提供されておらず、見積作業が煩雑になるといった問題があった。
また、見積作業は、さまざまな立場やケース(見積リスク要因のパラメータを変更する)における見積を検討する必要があるが、従来技術では、複数のリスク要因のパラメータを変化させて、様々なケースに対してリアルタイムに繰り返し見積を検討するのに適さないという問題があった。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、タンジブルユーザインタフェース(TUI)を用いて、多数の見積リスク要因の設定、操作等を容易に行い、リアルタイムに見積の検討を繰り返し行うことが可能な見積支援システム、見積支援方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために本発明は、複数のリスク要因を考慮した見積を支援し、入力手段と、前記入力手段の位置と移動量を検出する入力検出手段と、前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から前記リスク要因を特定し、選択する選択リスク判断手段と、前記選択リスク判断手段によって選択されたリスク要因に関して、前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の移動量からリスク変動量を算出するリスク算出手段と、前記リスク算出手段によって算出されたリスク変動量を用いて、見積を算出する見積算出手段と、前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明では、入力手段と、その入力手段の位置と移動量を検出する入力検出手段としてタンジブルユーザインタフェースを利用する。例えば、入力手段として、ユーザが手にとって移動可能なパックを利用し、入力検出手段は、そのパックの位置や移動量を検出するセンステーブル等である。ここで、移動量とは、直線移動、曲線移動、回転移動等の動きによる移動量を示す。また、出力手段は、ビデオプロジェクタ等であり、算出した見積結果を入力検出手段上に出力し、更に入力手段はその出力に沿って移動を行い、その位置や移動量がまた入力検出手段によって検出されることになる。
このように、本発明によれば、ユーザは複数の見積のリスク要因に関して、そのパラメータを容易に変更することが可能であり、その変更を考慮した見積の検討をリアルタイムに行うことができる。
【0007】
また、本発明は、前記リスク要因と、前記リスク要因に対応した対策案を記憶する事例記憶手段を更に有し、前記リスク算出手段は、前記選択リスク判断手段によって選択されたリスク要因に対応する対策案を、前記事例記憶手段から読み出し、読み出した対策案を考慮して見積を算出することを特徴とする。
また、前記入力手段は識別番号を有し、前記入力検出手段は、前記識別番号ごとに入力手段の位置と移動量を検出し、前記選択リスク判断手段は、前記識別番号ごとに入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から前記リスク要因を特定し、選択し、前記リスク算出手段は、前記選択されたリスク要因に関して、前記識別番号ごとの前記入力手段の移動量からリスク変動量を算出し、前記見積算出手段は、算出されたリスク変動量を用いて、前記識別番号ごとに見積を算出し、前記出力手段は、前記識別番号ごとに、前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力することを特徴とする。
こうして、複数のユーザによる見積の検討を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多数の見積リスク要因の設定、操作等を容易に行い、リアルタイムに見積の検討を繰り返し行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明に係る見積支援システム及び見積支援方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明および添付図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0010】
図1は、見積支援システムのブロック構成図である。図2は、見積支援システムのハードウェア構成の一例を示す図である。見積支援システム1は、大きく分けて、タンジブルユーザインタフェース(TUI)3、ホストコンピュータ5、出力装置7から構成される。
タンジブルユーザインタフェース3は、1或いは複数の入力手段11−1、11−2、…、11−n、入力検出手段13から構成される。入力検出手段13は、送信部21とセンシング部23とを有する。
【0011】
図2に示すように、入力手段11−1、11−2、…、11−nは、ユーザが手にとって直線移動、曲線移動、回転移動等の操作が可能なパックを用いる。入力手段であるパックには、コイルが内蔵されている。入力検出手段13であるテーブルには、センシング部23として、パックに内蔵されたコイルの位置と回転角を検出する格子状アンテナ等が設けられ、パックの位置、移動量を検出する。移動量とは直線移動、曲線移動、回転移動等の動きである。入力手段11が複数ある場合には、各入力手段に識別番号(ID)を付すことによりそれぞれの入力手段の状態を検出することが可能である。送信部21は、センシング部23によって検出されたパックの位置と移動量等をホストコンピュータ5に送信する。
【0012】
出力装置7は、データ出力手段51を有する。データ出力手段51は、受信部53、表示部55を有する。出力手段7は、例えば、ビデオプロジェクタ等である。受信部53は、ホストコンピュータ5から送信されたデータを受信し、表示部55に伝達し、図2に示すように、表示部55はデータを基に、入力検出手段13上に映像等を投影する。ユーザが入力検出手段13上に投影された映像上のグラフィックアイコン等に入力手段11等を移動させると、入力検出手段13は入力手段11の動きを検出し、ホストコンピュータ5に送信する。ホストコンピュータ5で、入力手段11の位置や移動量に対する様々な処理が行われ、その結果を出力装置7に送信すると、出力装置7はその結果に基づいて、入力検出手段13上に表示を行う。
【0013】
次に、ホストコンピュータ5について説明する。ホストコンピュータ5は、受信部31、選択リスク判断部32、条件判定部33、リスクチェック項目選択手段34、リスク計算手段35、コスト計算手段36、関連事例選択手段37、出力データ生成手段38、送信部39、リスク要因データベース41、チェック項目データベース43、事例データベース45等から構成される。
受信部31は、TUI3からの入力を受信する。選択リスク判断部32は、受信部31から送信されたデータ、例えば、入力手段11であるパックの識別番号(IDp)やその位置座標(Xp,Yp)等を基に、リスク要因データベース41を参照して該当するリスク要因を特定する。この位置座標は、例えば、入力検出手段13上の位置を表す座標である。
【0014】
リスク要因データベース41は、見積において検討するべき項目であるリスク要因、例えば、要求仕様、納期、コスト等の項目と、その位置座標(検出位置座標)とを記憶する。
条件判定部33は、入力手段11から入力された操作等から、ユーザが要求する操作が、「パラメータ調整」であるのか、「リスクチェック」であるのか、「事例参照」であるのかの判定を行う。
【0015】
リスクチェック項目選択手段34は、ユーザから「リスクチェック」操作が要求された場合、入力手段11の位置や移動量等からリスク項目を特定し、チェック項目データベース43から当該リスク項目のチェック項目等を読み出して、次に表示するサブメニューを決定する。
チェック項目データベース43は、各リスク要因に関連するチェック項目を階層的に記憶する。
【0016】
リスク計算手段35は、入力手段11の移動量等によりリスク要因ごとに設定されたパラメータを下に見積(コスト)を計算する。例えば、「(リスク係数×規模×生産性)」を基本とし、リスク要因ごとに重み係数を用意し、その重み和としてリスク係数を求め、コストを計算する方法などがある。
関連事例選択手段37は、条件判定部33によって「事例参照」と判定された場合、参照要求されたリスク要因に対応する事例を事例データベース45から読み出す。
【0017】
事例データベース45は、各リスク要因に関連した成功事例、失敗事例、それによって導かれた対策案等を記憶する。
出力データ生成手段38は、コスト計算手段36によって計算されたコスト、或いは、関連事例選択手段37によって読み出された事例等を出力装置7に出力するためのデータを生成する。
送信部39は、出力データ生成手段38によって作成されたデータを出力装置7に送信する。
【0018】
次に、見積支援システム1の動作について説明する。図3は、見積支援システム1の動作を示すフローチャートである。
出力装置7は、入力検出手段13の表面上に初期状態の映像を投影する(ステップS301)。
タンジブルユーザインタフェース3は、入力検出手段13の表面での入力手段11の移動を受け付ける(ステップS311)。センシング部23は、入力手段11の位置座標(Xp,Yp)と入力手段11が複数ある場合はその識別番号IDpを認識し(ステップS312)、送信部21は、センシング部23によって認識された入力手段11の位置座標と識別番号をホストコンピュータ5に送信する(ステップS313)。
【0019】
図4は、出力装置7によって入力検出手段13上に表示された画像の一例を示す図である。例えば、初期状態において、図4に示すリスクレーダーチャート71が、出力装置7によって入力検出手段13に投影されたとする。いま、入力手段11aであるパックがユーザによって移動され、グラフィックアイコンの位置R1に置かれたとする。センシング部23は、入力手段11aの識別番号と位置R1の位置座標を認識し、送信部21に送信する。送信部21は、入力手段11aの識別番号と位置R1の位置座標をホストコンピュータ5に送信する。
【0020】
次に、ホストコンピュータ5の受信部31は、入力手段11の位置座標(Xp,Yp)と識別番号IDpを受信し(ステップS321)、選択リスク判断部32に送信する。選択リスク判断部32は、受信した位置座標(Xp,Yp)に対し、リスク要因データベース41を参照して、リスク要因データベース41で定義された検出位置座標(X,Y)と比較することにより、当該リスク要因を特定する(ステップS322)。
【0021】
図5は、リスク要因データベース41のデータ定義の一例を示す図である。
図5に示すように、それぞれのリスク名称にはリスクID(ID)と位置座標(X,Y)が定義される。例えば、リスクIDが「01」は、リスク名称Nが「要求仕様」であり、その位置座標(X,Y)は(10,50)である。図4において、ユーザが入力手段11aであるパックを操作し、パックを置いた位置R1が図5に示す位置座標(X,Y)であった場合、即ち、認識されたパックの位置座標(Xp,Yp)がリスク要因「要求仕様」で定義された位置座標(10,50)と等しかった場合、選択リスク判断部32は、ユーザが入力手段11aを用いて「要求仕様」というリスク要因を選択したことと判断する。
【0022】
次に、条件判定部33は、入力手段11の動かし方(移動量)から、そのリスク要因に対してユーザが(1)パラメータ調整、(2)リスクチェック、(3)事例参照のうちのいずれの操作を要求しているのかを判定する(ステップS323)。例えば、条件判定部33には、グラフィックアイコンである位置R1上で入力手段11であるパックを置き、(a)その場所でパックを回転した場合は(1)と判断、(b)決められた時間だけそのままの状態である場合は(2)と判断、(c)パックを平行移動、或いは、パックに設けられたボタン等がクリックされた場合は(3)と判断するといった条件が予め決められており、実際の入力手段11の動かし方により操作を判定する。このパックの動かし方、そしてそれに対応する操作等の取り決めは、見積のケースに合わせて随時決めることが可能である。
【0023】
ステップS323において、例えば、入力手段11がその場所で移動回転され、条件判定部33によって(1)パラメータ調整であると判断された場合、リスク計算手段35は、位置座標の変化量ΔXp,ΔYpからリスク変動量(リスク要因のパラメータの変動量)ΔRを計算する(ステップS341)。例えば、図4に示すレーダーチャート71において、認識されたリスク要因の軸上に沿って入力手段11aを移動させ停止することにより、その認識されたリスク要因のパラメータの値や変化量を入力することが可能である。
【0024】
コスト計算手段36は、リスク計算手段35によって計算されたリスク変動量ΔRを考慮して、コストCを計算する(ステップS342)。出力データ生成手段38は、計算されたコストCをもとに表示するグラフィックデータを生成し、送信部39はそのグラフィックデータを出力装置7に送信する(ステップS343)。出力装置7の受信部53がホストコンピュータ5からデータを受信し、表示部55はデータを基に映像を入力検出手段13に再度投影する(ステップS361)。
【0025】
また、ステップS323において、例えば、入力手段11が決められた時間だけ位置R1に置かれたままの状態で、条件判定部33によって(2)リスクチェックであると判断された場合、リスクチェック項目選択手段34は、位置座標の変化量ΔXp,ΔYpからユーザのチェックを判定し、リスク変動量ΔRを計算すると共に、チェック項目データベース43を参照して、次に表示するサブメニューを決定する(ステップS331)。
【0026】
図6は、チェック項目データベース43のデータ定義の一例を示す図である。図6に示すように、各リスク要因にはサブカテゴリが定義され、そのサブカテゴリの項目ごとに更にチェック項目が階層的に定義される。例えば、リスク要因「要求仕様」に対しては、サブカテゴリとして名称Nsが「機能要件」、「業務フロー」、「保守条件」が定義され、それぞれに識別番号IDsと位置座標(Xs,Ys)が定義される。ここで、位置座標(Xs,Ys)は入力検出手段13上にサブメニューを表示するための座標、即ち、その位置座標に入力手段11がおかれた場合、そのメニューが選択されることになる。
【0027】
また、サブカテゴリの名称が「機能要件」に対して、チェック項目識別番号IDcや、チェック項目Ncとして、「要求範囲が明確か?」や「仕様変更の可能性があるか?」、及び位置座標(Xc,Yc)が定義される。ここで、位置座標(Xc,Yc)は入力検出手段13上にチェック項目に関するサブメニューを表示するための座標である。
【0028】
例えば、図4に示すリスクレーダーチャート71において、ユーザが入力手段11aをグラフィックアイコンの位置R1に置いたままにした場合、条件判定部33はリスクチェックであると判断し、リスクチェック項目選択手段34は、図6に示すチェック項目データベース43のサブカテゴリを参照する。出力データ生成手段38は、サブカテゴリの名称Nsや位置座標(Xs,Ys)からサブメニュー73を表示するためのデータを生成し、出力装置7に送信する。出力装置7は、入力検出手段13上にサブメニュー73を投影する。
【0029】
ユーザがサブメニュー73上の「機能要件」の上に入力手段11aを移動させ、置いたままにした場合、条件判定部33は、「機能条件」が選択されたと判断し、リスクチェック項目選択手段34は、図6に示すチェック項目データベース43のサブカテゴリ「機能要件」に対して定義されたチェック項目Ncとその位置座標(Xc,Yc)を参照する。出力データ生成手段38は、チェック項目Ncとその位置座標(Xc,Yc)からサブメニュー75を表示するためのデータを生成し、出力装置7に送信する。出力装置7は、入力検出手段13上にサブメニュー75を投影する。
【0030】
表示されたサブメニュー75の各チェック項目に対して、ユーザによる入力手段11aの操作により入力手段の変化量ΔXp,ΔYpが入力されると、リスク計算手段35は、各チェック項目に対するリスク変動量ΔRを計算する。
【0031】
次に、図3に示すステップS323において、例えば、入力手段11が平行移動、或いは、入力手段に設けられたボタン等がクリックされ、(3)事例参照と判断された場合、関連事例選択手段37は、変化量ΔXp,ΔYpから事例データベース45を参照して、適切な事例を選択する(ステップS351)。
図7は、事例データベース45に定義されたデータの一例を示す図である。図7に示すように、事例データベース45はリスク要因の識別番号IDと名称Nに対して1以上の対策案の識別番号IDとその対策案の内容N、及びその位置座標(X,Y)を記憶する。ここで、位置座標(X,Y)は入力検出手段13上に内容Nを表示するための座標、即ち、その位置座標に入力手段11がおかれた場合、それが選択されることになる。
【0032】
こうして関連事例選択手段37によって選択された事例に関するデータを基に、出力データ生成手段38は、選択事例IDを表示するためのグラフィックデータを生成し、送信部39はこのデータを出力装置7に送信する(ステップS352)。出力装置7の受信部53はホストコンピュータ5からデータを受信し、表示部55はそのデータを基に入力検出手段13上に映像を投影する(ステップS361)。
【0033】
尚、上記のホストコンピュータ5の処理は、ホストコンピュータ5に記憶されたアプリケーションプログラムによって実現される。このプログラムは、記憶媒体に記憶して流通することも可能であり、また、ネットワークを介して流通させることも可能である。
【0034】
図8、図9は、本見積支援システム1の応用例を示す図である。
図8に示す応用例は、事例データベース45に記憶された関連事例や対策案に従って、リスク要因のパラメータを変化させ、コストを再検討する例である。図8に示すリスクレーダーチャートからリスク要因「人的資源」の影響が大きいことが判明した場合、ユーザは入力手段11を「人的資源」のグラフィックアイコンに合わせ、例えば、入力手段をそのままの状態にするなど決められた操作を行うことにより関連事例の対策案の表示を要求する。
【0035】
ホストコンピュータ5は、出力装置7に対して、リスク中項目のサブメニューを表示させる。さらに、ユーザが入力手段11をサブメニューの「業務有識者」のグラフィックアイコンに合わせてそのままの状態にすると、ホストコンピュータ5は「業務有識者」に関するデータを出力装置7に表示させる。例えば、入力手段11を「対策案を見る」というメニュー上に移動させ、動かすことにより、ホストコンピュータ5が「対策案を見る」というメニューが選択されたと判定すると、ホストコンピュータ5は事例データベース45を参照して出力装置7に対策案を表示させると共に、その対策案を適用することによって、リスクがどのように改善されるかといった調整結果を算出し、出力装置7に表示させることが可能である。
このように、本システムを用いれば、結果や関連事例の対策案を参照しつつ、その場でリスク要因のパラメータを変化させコストを再計算し、繰り返し検討することが可能であり、その操作も入力手段11を入力検出手段13上を移動させることで容易に行える。
【0036】
また、図9に示す応用例は、現在検討中のプロジェクト(本PJ)のリスクレーダーチャート83と過去の成功プロジェクト(過去PJ)のリスクレーダーチャート85とを比較し、リスク要因のパラメータ変更を行った場合の見積のオーバーヘッドの算出を検討する応用例である。
例えば、ホストコンピュータ5は、リスク要因「人的資源」において、本PJに過去PJの対象業務経験者率を適用した場合の見積を算出し、その結果を出力装置7に出力させる。
図9に示す応用例におけるメニュー選択等の操作指示は全て入力手段11に対するユーザの操作によって容易に行われ、様々なリスク要因に対する様々な角度からの見積検討を容易に行うことが可能である。
【0037】
また、本見積支援システム1は、複数のユーザが複数の入力手段11を用いて見積を検討する場合にも応用できる。
複数のユーザのそれぞれに対応した入力手段11を入力手段11の識別番号IDpで識別し、入力手段11の識別番号IDpごとに出力表示方法を変えて表示させることも可能である。
例えば、ソフトウェアのベンダーとユーザとのそれぞれに識別番号IDpの異なる入力手段11を対応させ、それぞれの入力手段11の操作によりパラメータ等を入力し、ホストコンピュータ5は、ベンダー側とユーザ側それぞれの見積を算出し、両者の見積結果とパラメータをレーダーチャートに出力させることができ、両者の見積を比較検討することが可能となる。
【0038】
例えば、見積結果から影響の大きいリスク要因に入力手段11を合わせ、入力手段11をレーダーチャートの軸上に動かすことによって、その移動量ΔXp、ΔYpが認識され、リスク計算手段35はリスク変動量ΔRを算出し、コスト計算手段36はそのΔRを考慮して、コスト(見積)を再計算し、再計算された結果は、出力装置7によって入力検出手段13上に表示される。この操作を繰り返すことにより、様々なリスク要因のパラメータを変化させて検討することが可能となる。また、同じ見積式の計算を用いた場合でも、ベンダーとユーザとで入力したパラメータが異なれば見積が異なり、両者のどのリスク要因が見積に影響しているかを検討することができる。
【0039】
また、見積に関して、経験者が新人等に教育を行う場合においても本システムが利用可能である。例えば、経験者と新人にそれぞれ異なる識別番号IDpを有する入力手段11を与え、入力手段11を用いて新人が入力したパラメータに対する見積を表示し、更に、経験者が入力したパラメータに対する見積を表示し、その違い等を検討することにより、見積に関する知識を新人が得ることが可能となる。
このように、本システムを用いれば、入力検出手段13となるテーブルを複数のユーザで共有し、入力手段11を用いてパラメータを入力することで、複数のユーザ間で様々なケースの見積結果やパラメータをリアルタイムに容易に検討することが可能である。
【0040】
尚、本実施の形態では、入力検出手段13上に表示されたグラフィックアイコンやメニューの認識には位置座標が用いられたが、例えば、グラフィックアイコンやメニューの検出位置座標にある程度範囲を持たせたり、検出範囲を矩形範囲等で決めることも可能である。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る見積支援システム及び見積支援方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
このように、本発明によれば、複数のリスク要因のパラメータ変更などの各種操作をタンジブルユーザインタフェースを用いて行うことで、複数のリスク要因に関して検討を要する見積を容易に行うことが可能である。また、タンジブルユーザインタフェースの入力手段を複数設けることによって、さまざまな立場からの見積を検討することが可能であり、その見積結果を共有することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】見積支援システム1のブロック構成図
【図2】見積支援システム1のハードウェア構成例を示す図
【図3】見積支援システム1の動作を示すフローチャート
【図4】入力検出手段13上への表示例を示す図
【図5】リスク要因データベースの定義例を示す図
【図6】チェック項目データベースの定義例を示す図
【図7】事例データベースの定義例を示す図
【図8】見積支援システム1の応用例を示す図
【図9】見積支援システム1の応用例を示す図
【符号の説明】
【0044】
1………見積支援システム
3………タンジブルユーザインタフェース
5………ホストコンピュータ
7………出力装置
11、11−1、11−2、…、11−n、11a………入力手段
13………入力検出手段
31………受信部
32………選択リスク判断部
33………条件判定部
34………リスクチェック項目選択手段
35………リスク計算手段
36………コスト計算手段
37………関連事例選択手段
38………出力データ生成手段
39………送信部
41………リスク要因データベース
43………チェック項目データベース
45………事例データベース
51………データ出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリスク要因を考慮した見積を支援する見積支援システムであって、
入力手段と、
前記入力手段の位置と移動量を検出する入力検出手段と、
前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から前記リスク要因を特定し、選択する選択リスク判断手段と、
前記選択リスク判断手段によって選択されたリスク要因に関して、前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の移動量からリスク変動量を算出するリスク算出手段と、
前記リスク算出手段によって算出されたリスク変動量を用いて、見積を算出する見積算出手段と、
前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする見積支援システム。
【請求項2】
前記リスク要因と、前記リスク要因に対応した対策案を記憶する事例記憶手段を更に有し、
前記リスク算出手段は、前記選択リスク判断手段によって選択されたリスク要因に対応する対策案を、前記事例記憶手段から読み出し、読み出した対策案を考慮して見積を算出することを特徴とする請求項1記載の見積支援システム。
【請求項3】
前記入力手段は識別番号を有し、
前記入力検出手段は、前記識別番号ごとに入力手段の位置と移動量を検出し、
前記選択リスク判断手段は、前記識別番号ごとに入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から前記リスク要因を特定し、選択し、
前記リスク算出手段は、前記選択されたリスク要因に関して、前記識別番号ごとの前記入力手段の移動量からリスク変動量を算出し、
前記見積算出手段は、算出されたリスク変動量を用いて、前記識別番号ごとに見積を算出し、
前記出力手段は、前記識別番号ごとに、前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力することを特徴とする請求項1または請求項2記載の見積支援システム。
【請求項4】
複数のリスク要因を考慮した見積を支援する見積支援方法であって、
入力手段を入力検出手段上で移動するステップと、
前記入力手段の、前記入力検出手段上における位置と移動量を検出するステップと、
前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から前記リスク要因を特定し、選択するステップと、
前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の移動量から、前記選択されたリスク要因のリスク変動量を算出するステップと、
前記リスク算出手段によって算出されたリスク変動量を用いて、見積を算出するステップと、
前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力するステップと、
を有することを特徴とする見積支援方法。
【請求項5】
コンピュータを、
入力手段と、
前記入力手段の位置と移動量を検出する入力検出手段と、
前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の位置から見積のリスク要因を特定し、選択する選択リスク判断手段と、
前記選択リスク判断手段によって選択されたリスク要因に関して、前記入力検出手段によって検出された前記入力手段の移動量からリスク変動量を算出するリスク算出手段と、
前記リスク算出手段によって算出されたリスク変動量を用いて、見積を算出する見積算出手段と、
前記見積算出手段による算出結果を、前記入力検出手段上に出力する出力手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−93277(P2009−93277A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261098(P2007−261098)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(397065480)エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 (187)
【Fターム(参考)】