説明

視神経脊髄炎用マーカー

【課題】 視神経脊髄炎(NMO)および関連疾患の診断および治療。
【解決手段】 本発明は、視神経脊髄炎(NMO)および関連疾患の診断用および治療用の、方法および材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは神経学的疾患に、そしてより詳しくは視神経脊髄炎、再発性脊髄炎または視神経炎、およびアジアの視神経脊髄型多発性硬化症(MS)用の自己抗体マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
視神経脊髄炎(NMO)は神経学的疾患であり、西洋諸国ではドヴィック症候群と、そしてアジアでは視神経脊髄型多発性硬化症とも呼びならわされている。NMOは、多発性硬化症(MS)の深刻な変形型と見なされており、アジアで発生するMS症例の30%の原因である。北米では、非白人は、古典的MSを患う患者の頻度よりも高頻度のNMOを患う患者を示す。NMOに特徴的な炎症性脱髄病変は、選択的にかつ繰り返し視神経および脊髄を冒し、このことにより失明および麻痺症の両方を引き起こす。
【発明の開示】
【0003】
視神経脊髄炎(NMO)を患っている患者およびアジアの視神経脊髄型のMSを患っている患者の、血清および脳脊髄液中から、特異的マーカーが同定された。NMO特異的抗体が存在することは、NMOをMSと識別するために利用可能であり、また、全ての臨床診断基準が満たされる前の早期段階でNMOを診断するために利用可能であり、NMOに適当な免疫抑制もしくは免疫調節療法の早期開始が正当化される。
【0004】
ある態様において、本発明は、個体からの生物学的サンプル中のNMO特異的自己抗体の存在または不在を検知する方法を提供する。この方法には、生物学的サンプルをNMO抗原性ポリペプチドもしくはその断片と接触させ(NMO抗原性ポリペプチドはアクアポリン-4であるかもしくはアストロサイトのジストロフィンタンパク質複合体と相互作用するタンパク質である)、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドによるNMO特異的自己抗体への結合の存在または不在を検知することが含まれる。ある実施形態において、NMO抗原性ポリペプチドは、組換え発現されたNMO抗原性ポリペプチドである。別の実施形態においては、NMO特異的ポリペプチドは、脳、脊髄、視神経、腎臓および胃からなる群より選択される固形組織中に在る。
【0005】
一例として、生物学的サンプル中のNMO特異的自己抗体の存在は、個体における、視力障害、脱力、麻痺、痙攣または異常もしくは疼痛性感覚、ならびに/あるいは膀胱および/または腸制御の喪失と関連しうる。さらに、NMO特異的自己抗体の存在は、一般に個体中のNMOと関連している。代表的な生物学的サンプルは、血液、血清、血漿および脳脊髄液からなる群より選択される。
【0006】
他の態様において、本発明は、個体からの生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在または不在を検知する方法を提供する。このような方法には、生物学的サンプルを抗NMO抗原抗体と接触させること(NMO抗原はアクアポリン-4である)、および抗NMO抗原抗体の生物学的サンプルへの結合を検知すること(結合は生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在を示す)が含まれる。一般に、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在は、その個体におけるNMOを示唆する。そのような個体は、部分的に盲目または全盲である可能性がある。代表的な生物学的サンプルとしては、血液、血清、血漿、脳脊髄液、脳生検、および脊髄生検が挙げられる。
【0007】
他の態様において、本発明は、NMO抗原性ポリペプチド、および、個体中の抗NMO抗原自己抗体を検出するために該NMO抗原性ポリペプチドを使用するための説明書、を含む製品を提供する。NMO抗原性ポリペプチドはアクアポリン-4である。このような製品は、個体におけるNMOを診断するために使用可能である。ある実施形態において、製品は、NMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有するモノクローナル抗体をさらに含んでもよい。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、NMOを患っている個体の治療方法を提供する。この方法には、個体から体液を取り出すこと(体液はアクアポリン-4に結合する1種以上の自己抗体を含む)、体液から自己抗体の大部分を除去すること、被験者に体液を戻すこと、が含まれる。
【0009】
さらに他の態様において、本発明は、個体にNMO抗原性ポリペプチドを投与することにより、NMOを患っている個体を治療する方法を提供する。NMO抗原性ポリペプチドはアクアポリン-4である。一般に、投与は、経口、静脈内、および非経口投与などの方法により行われる。
【0010】
他の態様において、本発明は、個体にNMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸を投与することにより、NMOを患っている個体を治療する方法を提供する。NMO抗原性ポリペプチドは、アクアポリン-4である。
【0011】
特に断らない限り、本明細書において用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載する方法および材料と類似のまたは同等の方法および材料が使用可能であるが、以下に適当な方法および材料を記載する。さらに、材料、方法および実施例は、例示にすぎず、限定的であることを意図したものではない。本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許その他の文献は、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。争いが生じた場合には、本明細書が、定義を含め優先する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の1以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記載に記述する。本発明の他の構成、目的および効果は、図面および詳細な説明、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。図面中の同種の参照記号は、同種の要素を表す。
【0013】
視神経脊髄炎(NMO)およびアジアの視神経脊髄型MS(本明細書ではNMOを、NMOおよびアジアの視神経脊髄型MSの両方をいうために同義的に用いる)を患っている患者の血清および脳脊髄液中から、特異的IgG自己抗体マーカーが同定された。さらに、この自己抗体は、脊髄、視神経、および、より稀には脳幹または脳の他の領域に関連する多様な炎症性疾患のスペクトルを有する患者において見出されることがある。こうした炎症性疾患はこれまでNMOに関連するとは認識されていなかった。
【0014】
NMO特異的抗体が存在するということは、NMO特異的抗体は、全ての臨床診断基準が満たされる前のNMOの早期段階でこの疾患を診断するために利用可能であることを意味し、このことからNMOに適当な免疫抑制療法の早期開始が正当化され、さらにはNMOをMSと識別するために利用可能であることを意味する。NMO特異的抗体の検出はまた、疾患の進行および治療に対する反応をモニターするための定量可能なバイオマーカーを提供することができる。免疫染色のパターンはまた、NMOに関連する疾患を分類するために使用することができ、こうした疾患としては多発性硬化症、単独視神経炎、全身性エリテマトーデスの特定の脊髄症および「視神経-脊髄」随伴症、ならびにシェーグレン症候群の変形型が挙げられる。さらに、NMOと関連する抗体の同定は、NMO病変の病因を調査するため、および、NMO用の可能性のある新規療法を試験するための、動物モデル開発のための有用なIgGツール(例えば、NMO特異的抗体の受動伝達により、または、NMO抗原性ポリペプチドもしくはそのような抗原性ポリペプチドをコードするDNAワクチンを用いた能動免疫法)を提供する。
【0015】
NMO抗原性ポリペプチドおよびNMO特異的抗体
本発明は、NMO抗原性ポリペプチドを用いて、個体におけるNMO特異的自己抗体の検出方法を提供する。本発明の方法を用いる可能性がある個体は、典型的には、視力障害および/または刺痛、麻痺、脱力、四肢痙攣、膀胱および/または腸制御の喪失、あるいは原因未知の他の神経学的症状を示す。本発明の方法は、異常な神経学的症状と、個体中のNMO特異的自己抗体の存在との間の関連性に基づく。
【0016】
NMO抗原性ポリペプチドは、1以上のエピトープサイトを含む。T細胞活性化および抑制に関連するNMO抗原性ポリペプチドのエピトープもまた、本発明により提供される。結合エピトープ、例えばMHC-IおよびMHC-II結合エピトープを予測するためのコンピューターアルゴリズムが利用可能である。例えばワールドワイドウェブ上のbimas.dcrt.nih.gov:80/molbio/hla bind/(Parkerら, J. Immunol., 152:163 (1994); Southwood ら, J. Immunol., 160:3363 (1998))を参照されたい。「特徴的」という用語は、この文脈において、合理的保証を伴って、エピトープサイトが血清中でNMO特異的抗体の免疫学的検出を可能にすることを意味する。通常は、エピトープサイトが他の非常に密接な抗原(例えばポリペプチドのファミリーの他のメンバー)とは、抗原的に異なることが望ましい。代表的抗原性断片としては、例えば膜結合タンパク質の細胞外ドメインが挙げられる。
【0017】
NMO抗原性ポリペプチドは、核酸を発現する細胞(例えばトランスフェクトされた宿主細胞)から取得してもよく、またはポリペプチドは合成されたものでもよい。NMO抗原性ポリペプチドまたはその断片をコードするDNA分子は、それ自身が天然または合成されたものであってもよく、天然遺伝子は慣用技術でヒト組織から取得可能である。
【0018】
NMO抗原性ポリペプチドは、実質的に純粋な形態で取得することができる。ポリペプチドに関して、「精製された」とは、ポリペプチドであって成分の混合物中の主要成分を構成するもの、例えば重量に基づき、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上のものを言う。精製ポリペプチドは典型的にはそのポリペプチドを産生する生物から精製することにより得るが、化学合成もまた可能である。ポリペプチドは慣用のタンパク質精製法により精製することができ、こうした精製法としてはアフィニティークロマトグラフィーまたは免疫吸着アフィニティーカラム法が挙げられる。
【0019】
本発明のNMO抗原性ポリペプチドは、NMO特異的自己抗体の検出のために、改変してまたは改変せずに使用することができる。しばしばポリペプチドは、検出可能なシグナルを与える第2の物質とポリペプチドを共有結合または非共有結合により結合させることで標識する。広範な種類の標識および結合技術が当技術分野で知られており、科学文献および特許文献の両方で詳細に報告されている。いくつかの標識は、放射性同位体、酵素、基質、コファクター、阻害剤、蛍光剤、化学発光剤、磁性粒子などを含む。
【0020】
上述のようにして調製されたNMO抗原性ポリペプチドは、生物学的サンプル(例えば血清および脳脊髄液由来のもの)中のNMO特異的自己抗体を検出するための種々の免疫学的手法に使用することができる。サンプルの性質によって、免疫測定法および免疫細胞化学的染色法のいずれか、または両方を用いてもよい。酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、および放射免疫測定法は、当技術分野では慣用法であり、血清中のNMO特異的自己抗体の存在を検出するために使用することができる。
【0021】
さらに本発明は、1以上のNMO抗原性ポリペプチドを含むキットを提供する。このキットは、検出可能なシグナルを与える第2の物質をさらに含むものであってもよい。キットには典型的には、NMO抗原性ポリペプチドを使用するため、および/または本発明の方法を実施する(すなわち生物学的サンプル中のNMO特異的自己抗体を検出すること)ための説明書も含まれる。
【0022】
本発明はまた、個体からの生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの検出方法を提供する。この方法は、異常レベルもしくは異常パターンのNMO抗原性ポリペプチドの発現の存在、その後産生されるNMO特異的自己抗体、および個体に結果として生じるNMOの間の関連性について説明する。この検査は、失明などといった神経学的症状を患っている個体、および、MSまたはNMOを患っているのではないかと疑われる個体に最も広く適用可能である。ポリペプチドの検出は典型的には、本明細書中で抗NMO抗原抗体と呼ばれる抗体を用いて行うが、こう呼ぶのは、そのような動物由来のもしくは組換え的に製造された抗体を、個体の免疫系により産生されたNMO特異的自己抗体と区別するためである。本発明はまた、抗体を提供するが、この抗体の一例としてはNMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0023】
一旦、十分な量のNMO抗原性ポリペプチドが得られたならば、NMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有するモノクローナルまたはポリクローナル抗NMO抗原抗体を、当業者によく知られた技術により製造することができる。本明細書において用いる、NMO抗原性ポリペプチドに対する「特異的結合親和性」を有する抗NMO抗原抗体とは、NMO抗原性ポリペプチドに結合するものの、他のポリペプチド、例えばポリペプチドのファミリーの他のメンバーに結合しない抗体と定義される。本明細書において用いる「抗NMO抗原抗体」とは、あらゆるクラス、すなわちIgG、IgA、IgM、IgEまたは他の既知のクラスの完全体抗体のことを指し、また、所望の特異的結合親和性を有する完全体抗体の一部分またはフラグメント(例えばFabもしくは(Fab)2フラグメント)、遺伝子操作された単鎖Fv分子、またはキメラ分子、例えばある抗体(例えばマウス起源)の結合特異性と、別の抗体(例えばヒト起源)の残りの部分を含んでなる抗体も含まれる。
【0024】
本発明の抗NMO抗原抗体は、NMO抗原性ポリペプチドの検出のために、改変してまたは改変せずに使用することができる。抗NMO抗原抗体は直接または間接的に標識可能であり、放射性同位体、酵素、基質、コファクター、阻害剤、蛍光剤、化学発光剤、および磁性粒子を含む広範な種類の標識、ならびに結合技術が知られており科学文献および特許文献の両方で詳細に報告されている。
【0025】
上述のようにして調製された抗NMO抗原抗体は、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドを検出するための種々の免疫学的手法に用いることができる。本明細書において用いる「生物学的サンプル」は、一般に個体からのサンプルである。生物学的サンプルの非限定的例としては、血液、血清、血漿または脳脊髄液が挙げられる。さらに、固形組織、例えば脊髄または脳生検組織を使用してもよい。タンパク質結合アッセイにおける抗体の使用はよく確立されている。サンプルの性質によって、免疫測定法(例えば放射免疫測定法)および/または免疫組織化学/免疫細胞化学染色法を用いることができる。液相免疫測定(例えば競合阻害放射免疫測定)または固相免疫測定(例えば抗原捕捉(antigen-capture)もしくはウェスタンブロット解析など)もまた、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの検出に使用することができる。さらに、酵素免疫測定法(ELISA)は当技術分野では日常的に実施されており、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在を検出するために用いてもよい。
【0026】
多数の競合および非競合タンパク質結合アッセイが科学文献および特許文献に記載されており、そのようなアッセイの多くは市販されている。血清のような生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在を検出する上記のような競合アッセイの一例は、NMO抗原性ポリペプチド(標識または未標識)を抗NMO抗原抗体(標識または未標識)および生物学的サンプルと接触させる工程を含む。NMO抗原性ポリペプチドは、例えば固体表面に付着されていてもよい。既知量のNMO抗原性ポリペプチドおよび標識済み抗NMO抗原抗体を用いて標準結合曲線を生成することにより、生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの相対量を測定することができる。
【0027】
さらに本発明は、NMO抗原性ポリペプチドまたはその断片に対する結合親和性を有する抗NMO抗原抗体を含むキットを提供する。このキットはまた、結合コントロールとして、もしくは標準化定量曲線を作成するために使用するNMO抗原性ポリペプチドまたはその断片を含んでもよい。このキットはさらに、検出可能な標識を与える第2の物質を含んでもよい。キットには典型的に、抗NMO抗原抗体を使用するための、および/または本発明の方法(すなわち生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドを検出すること)を実施するための説明書が含まれる。
【0028】
本発明はまた、検出可能なマーカーにコンジュゲートされたNMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有する抗NMO抗原抗体を提供する。適当な検出可能マーカーとしては、限定するものではないが、酵素、放射性同位体、色素およびビオチンが挙げられる。本発明はさらに、造影物質にコンジュゲートされたNMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有する抗NMO抗原抗体を提供する。適当な造影物質としては、限定するものではないが、32P、99Tc、111In、および131Iなどの放射性同位体が挙げられる。
【0029】
NMOの治療方法
本発明はさらに、NMOを患っている個体の治療方法を提供する。NMOの治療はNMO特異的免疫機構の結果生じる個体における神経学的症状を変更することを要する。NMOを患っている患者の治療方法としては、限定するものではないが、アフェレーシス、およびT細胞受容体に基づく免疫療法が挙げられる。
【0030】
アフェレーシス(すなわち個体から血液を採り、血液から成分を除去し、血液または1以上の成分が除去された血液をその個体に戻すプロセス)用の方法および体外システムは、当技術分野で知られている(例えば米国特許第4,708,713号、第5,258,503号、第5,386,734号および第6,409,696号を参照されたい)。本発明は、個体の体液からNMO特異的自己抗体を除去する方法を提供する。この方法は、個体から体液を採り、その流体からNMO特異的自己抗体の大部分を除去し、個体にその流体を戻すことに関する。除去される抗体はどのクラスのものであってもよく、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、IgM、IgD、IgAまたはIgE抗体であってもよい。
【0031】
本明細書において用いる「大部分(を除去)」とは、除去の前に体液中に存在したNMO特異的自己抗体の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%またはさらには100%)を除去することを意味する。体液は、血漿または他の体液、例えばリンパ液もしくは脳脊髄液であってもよい。本発明の方法に従って、NMOを患っている個体からNMO特異的自己抗体を除去すると、結果として症状が緩和される。
【0032】
NMO特異的自己抗体の除去は、一般的には、体液をNMO抗原性ポリペプチドと接触させることにより行う。NMO抗原性ポリペプチドは固体の支持体に結合されていてもよい。このような固体の支持体は、限定するものではないが、メンブレン、繊維、球状粒子、もしくは顆粒であってもよく、水に溶けない、好ましくは多孔性、生体適合性の材料(例えばアガロース、デキストランおよびポリアクリルアミドなどの有機ポリマー)、または無機多孔性材料(例えば多孔質ガラスもしくは多孔性シリカゲル)で作られたものであってもよい。このような材料は、NMO抗原性ポリペプチドの結合に適当であるかまたは結合に適合させる(例えば適当な化学基で誘導体化する)ことができる。
【0033】
体液が血液の場合には、血漿および/または白血球細胞を赤血球細胞(例えばエリスロサイト)から分離することができ、白血球細胞を伴ってまたは白血球細胞を伴わずに、赤血球細胞を個体に戻すことができる。通常、血液細胞は、個体の元の血漿ではなく人工の血漿とともに個体に戻される。この「置換流体」(例えば生理食塩水)は、流体を採取した後に個体に投与することができる。あるいはまた、NMO特異的自己抗体をアフェレーシスの過程で血漿から選択的に除去し、血液細胞をNMO特異的自己抗体が除去された血漿と混合し、その後個体に混合物として再注入することもできる。
【0034】
システムは連続的なものであってもよく、そのシステムでは、例えば血液を血管(例えば動脈または静脈)から吸引し、NMO抗原性ポリペプチドで誘導体化された固体の支持体に通し、被験者の血管内へと直接ポンプで戻す。不連続のシステムでは、血漿を固体の支持体に通す前に、血漿から血液細胞を分離してもよい。
【0035】
当技術分野では、T細胞受容体治療の手法が知られている。例えば、米国特許第5,614,192号、Matsumoto ら, 2000, J. Immunol., 164:2248-54、およびMackay, 2000, British Med. J., 321:93-6を参照されたい。NMO特異的自己抗体の産生を誘導し維持する原因である、NMO抗原受容体または他のT細胞集団上の他のマーカーにより提示される抗原に対する特異的結合親和性を有するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体は、1種以上の病原性T細胞を除去または抑制するために利用可能である。T細胞受容体のCDR3スペクトルタイプ化は、自己免疫疾患に関連するT細胞受容体を特定するために使用することができる(Matsumotoら, 上記、およびJambouら, 2003, J. Clin. Invest., 112:254-74)。さらにT細胞の活性化は、サイトカイン、またはサイトカインに対する特異的結合親和性を有する抗体を投与することにより個体中で抑制することができる。例えばTH1型免疫応答を低減させるためには、インターロイキン(IL)-4、IL-10もしくはIL-13などといったサイトカイン、または、IL-12もしくはインターフェロン(IFN)-γなどといったサイトカインに対して特異的な抗体を個体に投与してもよい。同様に、TH2型免疫応答を抑制するためには、IL-12もしくはIFN-γなどといったサイトカイン、または、IL-4、IL-10もしくはIL-13に対して特異的な抗体を個体に投与してもよい。
【0036】
さらに、本発明の治療法には、個体に有効量の医薬組成物(例えばNMO抗原性ポリペプチド、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドのような核酸もしくはNMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸)を投与することが含まれる。有効量とは、個体におけるNMO抗原性ポリペプチドにより媒介される免疫応答を逸らせ、逸らせることにより個体における神経学的疾患を変更するNMO抗原性ポリペプチドの量である。本明細書において用いる、神経学的疾患を「変更する」とは、1種以上の症状の重症度を低減させること、全ての症状を解消すること、または1種〜全ての症状のレベルの低減を言うことができる。
【0037】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、標的となる核酸に特異的にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより標的核酸の発現を変更することは、一般に「アンチセンス技術」という。アンチセンス技術に関して、本明細書において用いる「ハイブリダイゼーション」という用語は、標的核酸とアンチセンスオリゴヌクレオチドの相補領域の間の水素結合を指し、これはワトソン-クリック型、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型水素結合であってもよい。「特異的にハイブリダイズ可能」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的核酸の間で安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な程度の相補性または正確な対形成を示すために用いられる。当技術分野では、特異的にハイブリダイズ可能であるためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列が必ずしも標的核酸の配列と100%相補的である必要はない、と理解されている。
【0038】
アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、標的核酸の正常な機能を妨害し得る。標的DNA核酸については、アンチセンス技術は、複製および転写を撹乱することができる。標的RNA核酸については、アンチセンス技術は、例えば、タンパク質翻訳が行われる場所へのRNAの移動、1以上のmRNA種を生じるRNAスプライシング、RNAの触媒活性、およびRNAからのタンパク質の翻訳を撹乱することができる。標的核酸の機能をこのように妨害することの全体としての効果は、NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸の場合については、NMOに関連する疾患の症状を変更することである。本発明の文脈において、アンチセンス技術は、NMO抗原性ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を低減させる(例えば転写の抑制に起因して)ため、および/またはNMO抗原性ポリペプチドの細胞性のレベルを低減させる(例えば翻訳の抑制に起因して)ために使用することができる。
【0039】
アンチセンスオリゴヌクレオチド用の好適な標的部位としては、標的遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始コドンまたは終止コドンを含んだ領域が挙げられてきた。さらに、アンチセンス技術においてオープンリーディングフレームは効果的に標的とされ、5'および3'非翻訳領域も同様である。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、イントロン領域およびイントロン-エキソン連結部位を上手く標的としてきた。さらに、標的遺伝子の異なる領域にそれぞれが特異的にハイブリダイズする、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドが使用可能である。
【0040】
本発明の方法に有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)は、一般に長さにして約10〜約50ヌクレオチド(例えば、長さにして12〜40、14〜30、または15〜25ヌクレオチド)であるが、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、NMOと関連する症状を変更できるならばこれより長くても短くてもよい。本明細書において用いるアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、天然に生じる核酸塩基、糖、およびヌクレオシド(骨格)間の共有結合体で構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに、改変された骨格(例えば修飾された糖部分)または非天然のヌクレオシド間結合を含んだオリゴヌクレオチドが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしてはまた、ペプチド核酸(PNA)またはキメラオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドアナログも挙げられる。さらに、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの作用、細胞分配もしくは細胞吸収を増強する1以上の部分またはコンジュゲート体に化学結合させることにより改変することができる。例えば米国特許第5,218,105号および第5,214,136号を参照されたい。
【0041】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがNMO抗原性ポリペプチドの発現および/または産生を抑制する能力は、例えば治療の前後の個体中のmRNAレベルまたはタンパク質レベルを測定することにより評価することができる。組織または生物学的サンプル中のmRNAレベルまたはタンパク質レベルを測定する方法は当技術分野でよく知られている。
【0042】
NMO抗原性ポリペプチドはまた、NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸を適当に発現するベクターを個体に投与することにより、in vivo送達することができる。生物学的に有用なタンパク質(例えばNMO抗原性ポリペプチド)をコードする核酸を個体に送達するためのベクターは、当技術分野で知られている。現行のウイルスに基づく核酸送達ベクターは、典型的には動物ウイルス、例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、およびウシ乳頭腫ウイルスから誘導される。核酸送達用ベクターは、通常そのウイルスの天然の親和性および病原性が変更または除去されるように遺伝的に改変されている。ウイルスのゲノムはまた、ウイルスの感染力を増大させるよう、そして例えば生物学的に有用なタンパク質をコードする核酸のパッケージ化に適するよう改変することができる。さらに、非ウイルス性ベクター、および核酸送達のためのそのようなベクターの使用方法は当業者に知られている。
【0043】
本明細書において用いる「投与」とは、本発明の組成物(例えば、NMO抗原性ポリペプチド、NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸の一部分に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはNMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸)を患者に送達する方法を言う。このような方法は当業者によく知られており、限定するものではないが、経口、経鼻、静脈内、筋内、腹腔内、皮下、髄腔内、皮内、または局所投与が挙げられる。投与経路は種々の要因、例えば治療の目的などに依存し得る。本発明の組成物は、連続的にまたは断続的に投与してもよい。治療用組成物を製剤化する方法、およびその後投与する方法は、当業者によく知られている。例えば、Remington, 2000, The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, Gennaro & Gennaro,編, Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい。投与される用量は、投与の形態および製剤化の形態を含む、多くの要因に依存する。典型的には、単一用量中の量は、疾患の症状を悪化させることなく、個体中のNMO抗原性ポリペプチドまたはNMO特異的自己抗体のレベルを効果的に減少させる量である。
【0044】
また、本発明の範囲内のNMO抗原性ポリペプチドはさらに、個体へのin vivo投与用の製薬上許容可能な担体を含有してもよく、そのような担体の例としては、限定するものではないが、滅菌された水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例としては、限定するものではないが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注入可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール、食塩水および緩衝溶液が挙げられる。製薬上許容可能な担体としてはまた、生理学的に許容可能な水性ビヒクル(例えば生理食塩水または人工脳脊髄液)、または特定の投与経路に適当な他の既知の担体が含まれ得る。NMO抗原性ポリペプチドとともに追加の化合物が含まれてもよく、化合物としては例えばステロイド、ムコ多糖加水分解剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、拡張剤、血管収縮剤、またはこれらの組み合わせが挙げられる。保存料、香味料、および他の添加物、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどもまた、存在してもよい。
【0045】
脳に組成物を送達する方法は当技術分野で既知である。例えば、本発明の組成物は、脳特異的または神経細胞特異的受容体を認識するリガンド(例えば、抗体または抗体フラグメント)を結合させることにより改変することができる。さらに、血液脳関門を越える分子の輸送を増強する方法は既知であり、これらは受動拡散を利用する(例えば、電磁場、一酸化窒素ドナー、またはカプリン酸ナトリウムを使用)か、または受容体媒介エンドサイトーシス(一例として、ウイルス粒子を例えば、抗トランスフェリン抗体またはプトレッシンに連結すること)を利用する。NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸配列を含むウイルスベクターの発現はまた、脳特異的もしくは神経細胞特異的プロモーターおよび/または転写調節因子を用いて標的化することができる(例えば、米国特許第5,976,872号または第6,066,726号を参照されたい)。NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸を、アストロサイト足突起特異的に発現させるために特に有用なプロモーターは、アストロサイト分化のマーカーである、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)である。
【0046】
本発明はまた、患者においてNMO抗原性ポリペプチドを発現している細胞を造影する方法を提供する。この方法は、NMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有し、造影物質(例えば32P、99Tc、111In、または131I)で標識された有効量の抗NMO抗原抗体を患者に投与し、該抗体を細胞から放出されたかまたは細胞内でアクセス可能なNMO抗原性ポリペプチドに結合させ、このことにより形成される複合体を検出することを含む。当業者にはよく知られている通り、適当量の抗NMO抗原抗体とは、細胞を造影するのに有効な任意の量であり、例えば、約0.1 mCi〜約50.0 mCiである。さらに、有効量の抗NMO抗原抗体は、約0.01mg〜約100mgの量であってもよい。造影物質を投与する適当な方法は上述の通りであり、造影物質は上述の通り標的化する(例えば脳へ)ことができる。造影方法は用いる造影物質に依存し、当業者に広く知られている。
【0047】
本発明はまた、個体中のNMO抗原性ポリペプチドに特異的なTリンパ球を数えるかまたは単離する方法を提供する。この方法は、例えば、個体の免疫応答をモニターするため、または、NMO抗原性ポリペプチドに特異的な細胞傷害性T細胞を用いた免疫療法のために使用することができる。この方法は、リンパ球を含有する生物学的サンプルを、同一のNMO抗原性ポリペプチド断片を提示している四量体可溶性クラスIもしくはクラスIIの主要組織適合複合体(MHC)と接触させることを含む。アビジンやビオチンといったリンカー分子は、NMO抗原性ポリペプチド-MHC四量体複合体を生じるために用いられるが、この複合体はその後、NMO抗原性ポリペプチド-MHC四量体複合体を認識するT細胞が数えられるかまたは単離される(例えば、FACS分析を用いて)ように、指示薬分子で標識することができる。例えば、Schwartz, 1998, New England J. Med., 339:1076-8およびそこに含まれる引用文献を参照されたい。
【0048】
核酸および構築物
本明細書に開示した実験的証拠は、NMO抗原性ポリペプチドがアクアポリン-4であると示唆している。「アクアポリン-4」という用語は、アクアポリンファミリーのあるメンバーのことを指す。アクアポリンファミリーには10種類の既知のメンバーが存在する。アクアポリン-4は、中枢神経系における毛細管に接触するアストロサイト足突起膜で、ならびに腎臓末端集合管および胃上皮細胞の側底膜で発現される。ヒトアクアポリン-4ポリペプチドをコードする核酸配列の例は、GenBank登録番号U63622およびU63623に示されている。代表的なヒトアクアポリン-4ポリペプチドの推定アミノ酸配列は、GenBank登録番号AAG17964、AAB26957、AAB26958およびI39178に示されている。他の生物(例えばマウス(Mus musculus)、ウシ(Bos Taurus)、ラット(Rattus norvegicus)、およびヒツジ(Ovis aries))由来のアクアポリン-4をコードする核酸配列およびアミノ酸配列は、「aquaporin-4」を検索単語として用いてGenBankデータベース(ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov)を検索することにより見つけることができる。
【0049】
本明細書において用いる核酸は、RNAまたはDNAのことを言う。本明細書において核酸に関して用いられる、「単離された」とは、(i)ヒトアクアポリン-4ポリペプチドの一部または全部をコードする核酸配列であるものの、ヒトゲノムにおけるアクアポリン-4をコードする核酸配列の片方または両方の隣に通常繋がっているコード配列を有しない核酸配列、あるいは(ii)結果的に得られる分子が天然に生じるどのようなベクターまたはゲノムDNAとも同一にならないように、ベクターへとまたは生物のゲノムDNAへと組み入れられる核酸を言う。
【0050】
別の態様において、本発明には、ヒトアクアポリン-4核酸およびポリペプチドの断片が含まれる。本明細書において用いられる断片とは、アクアポリン-4配列全体よりも短い核酸またはポリペプチドに対応する核酸またはポリペプチドを言う。核酸断片には、長さにして約100ヌクレオチドの断片、および長さにして数百ヌクレオチドのGenBank登録番号U63622もしくはU63623の断片が含まれてもよく、または長さにして約10〜50ヌクレオチドのGenBank登録番号U63622もしくはU63623の断片が含まれていてもよい。本発明が提供する断片としては、例えば、GenBank登録番号U63622またはU63623のヌクレオチド166〜266、283〜306、404〜1104、575〜925、648〜698、712〜747、および891〜906が挙げられる。こうした断片は、例えば、アクアポリン-4抗原性ポリペプチド断片をコードしてもよく、またはハイブリダイゼーション用プローブもしくは増幅用プライマーとしての有用性を備え得る。
【0051】
図2は、ヒトアクアポリン-4核酸配列内の種々の制限酵素切断部位の相対的位置を示すが、これらは一例として、種々組み合わせて、有用な核酸断片を作成するために使用することができる切断部位を明確にする。ヒトアクアポリン-4ポリペプチドのヌクレオチド配列を与えられたならば、既知の手段(例えば制限酵素消化、ポリメラーゼ連鎖反応)により事実上どのような核酸断片も作成可能であり、所望ならば対応するポリペプチド断片を生成するよう発現させることが可能である。あるいはまた、ヒトアクアポリン-4ポリペプチドを切断(例えばタンパク質分解的に)して直接ポリペプチド断片を生成させることもできる。
【0052】
ヒトアクアポリン-4核酸または核酸断片は、GenBank登録番号U63622またはU63623に示される配列から逸脱した配列であってもよい。例えば、核酸配列は、GenBank登録番号U63622およびU63623に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するものであってもよい。いくつかの実施形態においては、核酸配列は、GenBank登録番号U63622およびU63623の配列に対して少なくとも85%配列同一性、90%配列同一性、95%配列同一性、または少なくとも99%配列同一性を有するものであってもよい。例えば、アクアポリン-4の変異型の核酸配列については、GenBank登録番号BC022286、NM_004028、およびNM_001650を参照されたい。
【0053】
パーセント配列同一性は、アラインされた核酸またはポリペプチド配列中のマッチする位置の数を求め、マッチした位置の数をアラインされたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数でそれぞれ割り、100を掛けることにより計算する。マッチする位置とは、アラインされた配列の同じ位置に、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が出現する位置を言う。アラインされたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数とは、第2の配列をアラインするのに必要なアクアポリン-4ヌクレオチドまたはアミノ酸の最も小さい数のことを指し、非アクアポリン-4配列、例えばアクアポリン-4に融合された配列、とのアライメント(例えば強制アライメント)は含まれない。アラインされたヌクレオチドまたはアミノ酸の総数は、アクアポリン-4配列全体に対応してもよく、または、本明細書中に定義したような全長アクアポリン-4配列の断片に対応してもよい。
【0054】
配列は、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.govで入手可能なBLAST(基本的局所アライメント検索ツール)プログラムに組み込まれているアルゴリズムのような、Altschulらが記載したアルゴリズム(1997, Nucleic Acids Res., 25:3389〜3402)を用いてアラインしてもよい。BLAST検索またはアライメントは、Altschulらのアルゴリズムを用いて、アクアポリン-4核酸分子と他のあらゆる配列もしくはその一部分との間のパーセント配列同一性を決定するために実行してもよい。BLASTNは核酸配列をアラインし核酸配列間の同一性を比較するために使用されるプログラムであり、一方BLASTPはアミノ酸配列をアラインしアミノ酸配列間の同一性を比較するために使用されるプログラムである。アクアポリン-4配列と他の配列の間のパーセント同一性を計算するためにBLASTプログラムを利用するときは、それぞれプログラムのデフォルトパラメータを使用する。
【0055】
ヒトアクアポリン-4ポリペプチドをコードする核酸は、例えば、ヒト細胞系から作製されたcDNAライブラリーから取得してもよく、または他の手段により得てもよいが、他の手段としては、限定するものではないがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。PCRとは、標的核酸が増幅される手法または技術を言う。PCRは、DNAおよびRNA由来の特定の配列を増幅するために使用することができ、こうした配列には全ゲノムDNAまたは全細胞RNA由来の配列が含まれる。種々のPCR手法が、例えばPCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach & Dveksler, 編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995などに記載されている。一般に、対象とする領域の末端またはそれ以降の部分からの配列情報を、増幅すべきテンプレートの逆鎖と、配列が同一または類似するオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために使用する。
【0056】
ヒトアクアポリン-4核酸は、例えば種々のハイブリダイゼーション技術により検出することができる。核酸分子の間のハイブリダイゼーションは、Sambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; 第7.37〜7.57章、第9.47〜9.57章、第11.7〜11.8章、および第11.45〜11.57章)に詳細に検討されている。
【0057】
約100ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドプローブについては、Sambrookらは、適当なサザンブロット条件を第11.45〜11.46章に開示している。長さにして100ヌクレオチド未満の配列と第2の配列の間のTmは、第11.46章に提示されている式を用いて計算することができる。Sambrookらはさらに、約100ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドプローブを用いたサザンブロット用の、プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション条件を開示している(第9.47〜9.52章を参照されたい)。100ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションは、一般にTmよりも15〜25℃低い温度で行われる。長さにして100ヌクレオチドよりも長い配列と第2の配列の間のTmは、Sambrookらの第9.50〜9.51章に提示されている式を用いて計算することができる。さらに、Sambrookらは、約100ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドでプローブされたサザンブロットを洗浄するためには、第9.54章に示された条件を推奨している。
【0058】
核酸を含んだメンブレンをプレハイブリダイズおよびハイブリダイズさせる条件のみならず、過剰なおよび非特異的に結合したプローブを除去するために核酸を含んだメンブレンを洗浄する条件は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに重要な役割を果たしうる。このようなハイブリダイゼーションは、適当な場合には、中程度または高度にストリンジェントな条件下で行うことができる。このような条件は、例えばSambrookらの第11.45〜11.46章に記載されている。例えば、洗浄条件は、洗浄溶液中の塩濃度を減少させることにより、および/または洗浄を行う温度を上昇させることにより、よりストリンジェントにすることができる。さらに、ハイブリダイゼーションの量の分析は、例えば、標識されたオリゴヌクレオチドプローブの比活性、プローブがハイブリダイズするテンプレート核酸上のプローブ結合部位の数、およびオートラジオグラフもしくは他の検出媒体の曝露の量の影響をうけ得る。
【0059】
プローブ核酸分子による固定化された標的核酸へのハイブリダイゼーションを調べるために、どのような数のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を用いることも可能であるが、より重要なことは同一のハイブリダイゼーション、洗浄および曝露条件下でのプローブによる標的核酸へのハイブリダイゼーションを調べることであると、当業者には容易に理解されるであろう。好ましくは、標的核酸は同じメンブレン上のものである。
【0060】
第1の核酸へのハイブリダイゼーションが第2の核酸へのハイブリダイゼーションよりも少なくとも5倍(例えば、少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍または100倍)大きいならば、核酸分子は第2の標的核酸ではなく、第1の標的核酸にハイブリダイズすると判断される。ハイブリダイゼーションの量は、メンブレン上で直接定量するか、または例えばPhosphorImagerもしくはDensitometer (Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を用いたオートラジオグラフから定量することができる。
【0061】
本発明はさらに、ヒトアクアポリン-4核酸(例えば、GenBank登録番号U63622およびU63623を参照)またはその相補物、アクアポリン-4核酸断片またはその相補物、ならびに、アクアポリン-4核酸またはそれから生成された断片(もしくはその相補物)に少なくとも80%の配列同一性を示す核酸を含有するベクターを含む。
【0062】
本発明の使用に適当なクローニングベクターは市販されており、当業者に日常的に使用されている。本発明のベクターはさらに、ヒトアクアポリン-4核酸配列に機能的に連結された発現に必要な因子を含んでもよい。「発現に必要な因子」としては、プロモーター配列があげられ、また、さらにヒトアクアポリン-4核酸配列の発現を調節する、調節因子、例えばエンハンサー配列、応答因子、もしくは誘導性因子が挙げられる。本明細書において用いる「機能的に連結された」とは、ヒトアクアポリン-4核酸の発現を指令するかまたは調節できるように、構築物中でヒトアクアポリン-4核酸配列に対してプロモーターおよび/または他の調節因子を配置することを言う。このような構築物は市販されており(例えば、発現ベクターなど)、そして/さもなくば当技術分野で慣用の組換えDNA技術の手法により作製される。発現系の選択はいくつかの要素に依存するが、そうした要素としては、限定するものではないが、複製効率、選択性、誘導性、標的化、所望の発現レベル、回収の容易性、および宿主が翻訳後修飾を行う能力などが挙げられる。
【0063】
本明細書において用いる「宿主」または「宿主細胞」という用語は、大腸菌(E. coli)のような原核生物のみならず、酵母、昆虫、植物および動物細胞のような真核生物をも含むことを意図する。動物細胞としては、例えばCOS細胞およびHeLa細胞が挙げられる。宿主細胞は、当業者に広く知られている技術、例えばリン酸カルシウムまたは酢酸リチウム沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、および粒子衝突法などを用いてDNA分子(例えばベクター)で形質転換または形質導入してもよい。本発明のベクターを含有する宿主細胞は、例えば、ベクターを増殖させるため、ヒトアクアポリン-4核酸(例えばDNA、RNA、アンチセンスRNA)を産生させるため、またはヒトアクアポリン-4ポリペプチドもしくはその断片を発現させるためなどといった目的のために使用することができる。
【0064】
本発明の別の態様において、アクアポリン-4ポリペプチドの製造方法を提供する。アクアポリン-4ポリペプチドの製造方法としては、限定するものではないが、アクアポリン-4の発現を許容する条件下でアクアポリン-4発現ベクターを含有する宿主細胞を培養し、アクアポリン-4ポリペプチドを回収すること、が挙げられる。細菌の培養方法、および発現したポリペプチドの回収方法は当業者によく知られている。
【0065】
さらに、本発明の核酸は、例えばサザンブロットもしくはノーザンブロット解析(すなわちハイブリダイゼーション)、PCR、またはin situハイブリダイゼーション解析などの方法により検出することができる。アクアポリン-4タンパク質は、典型的には、形質導入された細胞系においては免疫細胞化学法により、あるいは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法の後の、クマシーブルー染色またはヒトアクアポリン-4ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有する抗体(モノクローナルもしくはポリクローナル)を用いたウェスタンブロット解析により検出される。
【実施例】
【0066】
本発明を以下の実施例にさらに詳述するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
実施例1 血清予備吸着
非特異的染色を最小化するために、各患者の血清を肝臓抗原で予備吸着したが、予備吸着は、1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)590μL中に希釈した前記患者血清10μLと市販モルモット組織粉末(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)40mgとを混合することにより行った。室温で1時間穏やかに撹拌した後、不溶残渣を遠心分離(20800×gで10分間)で除去した。その後新鮮な肝臓粉末(40mg)を直ちに血清上清に加え、本処理をさらに2回繰り返すことで、合計3回連続の吸着を行った。
【0068】
実施例2 基質調製
3箇所の正常哺乳動物組織(例えばマウス脳(小脳および中脳の両方)、胃および腎臓)の冷凍混成塊を、8-ウェル顕微鏡用スライドの個々のウェル上へと低温切開(厚さ4ミクロン)した。これらのスライドは、カスタム製品として購入(MeDiCa, Encinitas, CAより)されたものであり、乾燥剤を含有する個々の密封パケットに−70℃で貯蔵した。使用するために開封する前に、各パケットを室温で平衡化した。各切片標本に冷却界面活性剤(PBS中の1%CHAPS)を加え、4分後に吸引した。冷却PBSで3回洗浄(各洗浄は振とう器で5分間行った)した後、冷却10%リン酸緩衝ホルマリンを加え、4分後に吸引した。冷却PBS中でさらに3回、5分間の洗浄を行った後、10%標準ヤギ血清を含有するPBSを(室温で)加え、60分後に吸引した。
【0069】
実施例3 免疫染色法
吸着済みの希釈された患者血清およびコントロール血清(容量40μL)を、上述の処理を施した組織切片標本を含有するウェルに個別に加えた。室温で40分後、各ウェルを冷却PBSで十分に洗浄した。ヒトIgGに特異的な、市販の蛍光色素コンジュゲートIgG(例えば、Southern Biotechnology Assoc., Inc., Birmingham, ALの蛍光色素化されたヤギ抗ヒトIgG)を、その後適当な希釈率で加える。室温で35分後、ウェルを冷却PBSで十分に洗浄し、カバーガラス(♯1厚み)を、退色防止試薬を含む封入剤を用いて各スライドに被せた。スライドを、組織に結合したIgGの特徴的NMOパターンについて、蛍光顕微鏡検査(20×対物レンズ)により評価した。
【0070】
中枢神経系(CNS)においてNMO抗原は、小脳皮質、中脳および脊髄中の毛細管の管外側表面上に局在化されており、視神経においてNMO抗原は、軸索カラム中の毛細管の領域では軟膜およびアストロサイト突起と重なっていた。CNS組織の最適処理された切片標本では、免疫蛍光共焦点顕微鏡検査からNMO抗原が血液脳関門の構成要素であることが示唆された。免疫反応性は、アストロサイト-軟膜接合部のグリア境界膜に固有であり、この免疫反応性は、白質および灰白質の微細血管へフィルヒョーロバン腔(Virchow-Robin space)内へと延長されていた。所定の特異性を有するアフィニティー精製された抗体を用いた二重免疫染色からは、血液脳関門の構成要素であり水銀非感受性水チャネルタンパク質であるアクアポリン-4と、NMO抗原の共局在性(co-localization)が明らかになった。NMO抗原は、脾実質もしくは肝実質の切片標本では検出することができないものの、アクアポリン-4と同様に、NMO抗原は腎臓の遠位集合管の側底膜、および深部の胃粘膜上皮の基底成分と目立って重なっていた。
【0071】
競合阻害免疫蛍光測定においてNMO-IgGの限界希釈法を用いることにより、分画遠心法で組織残屑および細胞核を除去した後にホモジェナイズしたラット脳から調製した粗膜画分における免疫反応性が実証された。この画分はNMO-IgG免疫蛍光パターンを強く抑制した。細胞質ゾル画分はNMO-IgGの反応性を吸収しなかった。粗膜画分の免疫反応性は、非イオン性界面活性剤であるCHAPSの2%溶液での抽出に耐性を示した。この観察は、10%リン酸緩衝ホルマリン中で4分間固定する前または後に、組織切片標本を1%CHAPSで4分間処理することが、組織形態を保存し、NMOと臨床診断された患者の70%の血清中のIgGへのNMOエピトープの接触可能性(accessibility)を向上させる、という知見につながった。
【0072】
特定の理論に束縛されるものではないが、NMO抗原が界面活性剤抽出に耐性であるということは、ジストロフィンタンパク質複合体の構成要素であるスキャフォールディングアダプタータンパク質(scaffolding adapter protein)α-シントロフィンのPDZ-ドメインに、アクアポリン-4の細胞質C末端が繋がれているであろうと提唱されている(Neelyら, PNAS 98:14108, 2001)ことと一致する。血液脳関門のジストロフィンタンパク質複合体の他の構成要素もまた、NMO自己抗体の妥当な標的である可能性がある(Neely ら,上記)。
【0073】
実施例4 免疫組織化学染色結果の解釈
表1は、それぞれの表示された組織について評価した固有の特徴部分を示す。
【表1】

【0074】
各特徴部分の染色強度は、正規のスコアシートで等級付けした(図1)が、これには以下のスコア体系を用いた。
陰性:−または±/−
かすかな陽性、両義の可能性あり:±
明らかな陽性、強い強度:±/+、+または2+
【0075】
陽性の結果であるためには、腎臓の遠位集合管および小脳または中脳の軟膜または微細血管に対して、最低でも「±」のスコアが割り当てられることが必要とされる。
【0076】
NMO-IgG解釈を妨害する可能性のある、あらゆる細胞核、細胞質、細胞膜または細胞外マトリクス染色の存在および強度を記す。特に、表2に示す組織の染色を、検査した各組織切片標本について記す。
【表2】

【0077】
実施例5 臨床応用
臨床、造影および脊髄液診断基準によって、「明らかな」NMO、アジアの視神経脊髄型のMS、または古典的MSと分類された患者、およびコントロール患者からの血清を、CNS組織に選択的に結合する可能性のある自己抗体について分析した。本明細書に記載する実験は、NMOと多発性硬化症(MS)の古典的形態を区別する血清陽性反応の値を実証する。血清(番号は試験時に割り当てた)は、種々の等級のストリンジェンシーの診断基準を用いて明らかなNMOを罹患している患者(n=45)、古典的MSを罹患している患者(n=19)、MNO(両側性視神経炎または単発性もしくは再発性の縦方向伸長性脊髄炎の発病、それぞれ陰性脳MRIと関連する、すなわち「明らかな」NMO分類用のストリンジェントな診断基準を満たさない)の高いリスクを有すると見なされる患者(n=35)、および最終的にはMSと診断されるものの当初は視神経炎もしくは脊髄炎を示した患者(n=22)からのものであった。間接的免疫蛍光測定を、マウス脳、胃および腎臓の標準的混成基質について行ったが、血清は実施例1に上述した通り肝臓抽出物で予備吸着した。
【0078】
NMOを罹患している患者45人中33人の患者(73%)のIgGが、小脳皮質および中脳全体に渡る微細血管、ならびに軟膜および軟膜下「メッシュ」(中脳で顕著)と重なる独特の染色パターン(「NMO-IgG」)を生じた。この微細血管パターンは、腸粘膜、腎臓または肝臓では観察されず、NMO-IgGはどのようなコントロール疾患群にも見られなかった。NMOの高いリスクを有する患者35人中16人(46%)からの血清は、NMO-IgGについて特徴的な染色パターンを示した。古典的MSを罹患していると診断された患者19人はいずれもNMO-IgGの検出可能な染色パターンを示さず、一方、視神経炎/脊髄炎を示す患者22人中2人(9%)からの血清は、NMO-IgGを保有した。
【0079】
さらに、NMO-IgGは、奉仕目的(service basis)で腫瘍随伴性自己抗体ブラインドテストのためにMayo Clinic’s Neuroimmunology Laboratoryに血清が提出された8万5千人中の患者14人から偶然に発見された。その後集められたこれらの患者の病歴からは、3人がNMO診断のための臨床診断基準を満たし、9人はNMOの高いリスクを有すると分類され(7人は縦方向伸長性脊髄炎を罹患しており、2人は再発性視神経炎を罹患していた)、1人は新発の脊髄症を罹患しており、1人は分類されていないステロイド-応答性CNS炎症性疾患を有することが明らかになった。
【0080】
これらの結果は、NMO-IgG自己抗体が、NMOの最初の特異的生物学的マーカーであり、NMOをMSから区別することができることを示した。
【0081】
実施例6 ウェスタンブロット
組換えラットアクアポリン-4(C末端残基249〜323位、Alamone Labs, Jerusalem, Israel)を含有するGST融合タンパク質を、β-メルカプトエタノールを含有する標準ラエムリSDSバッファー中の10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、NMO患者血清およびポジティブコントロールとしての免疫化ウサギ血清を用いてウェスタンブロットを行ったが、これは患者のIgGが38kDaのGST-アクアポリン-4融合タンパク質に結合するか否かを判別するためであった。ブロットをヒト血清(1:50希釈)と接触させたが、ヒト血清は、NMO患者4人、正常なヒト3人、コントロール脊髄炎患者1人、古典的MSを罹患している患者2人、および他の神経精神病学的疾患を罹患している患者3人の血清などであった。NMO患者4人および免疫化ウサギからの血清は38kDaアクアポリン-4融合タンパク質と結合したが、コントロール患者もしくは他の疾患を示している患者からの血清はいずれも38kDaアクアポリン-4融合タンパク質に結合しなかった。
【0082】
他の実施形態
本発明は、本明細書の発明の詳細な説明に関連して記載されたが、上述の記載は本発明を例証することを意図したものであって、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図したものではない、と理解されたい。他の態様、効果および変法は、特許請求の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】個体からの血清と接触させた組織の免疫組織化学的染色パターンおよび強度を評価するために用いるスコアシート。
【図2−1】ヒトアクアポリン-4核酸の制限酵素地図。
【図2−2】ヒトアクアポリン-4核酸の制限酵素地図。
【図2−3】ヒトアクアポリン-4核酸の制限酵素地図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体からの生物学的サンプル中のNMO特異的自己抗体の存在または不在を検知する方法であって、
生物学的サンプルをNMO抗原性ポリペプチドアクアポリン-4もしくはその断片と接触させ、
生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドによるNMO特異的自己抗体への結合の存在または不在を検知する、
工程を含む前記方法。
【請求項2】
生物学的サンプル中のNMO特異的自己抗体の存在が、個体における、視力障害、脱力、麻痺、痙攣または異常もしくは疼痛性感覚、ならびに/あるいは膀胱および/または腸制御の喪失と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NMO特異的自己抗体の存在が、個体のNMOと関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
NMO抗原性ポリペプチドが、組換え発現されたNMO抗原性ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
NMO特異的ポリペプチドが、脳、脊髄、視神経、腎臓および胃からなる群より選択される固形組織中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプルが、血液、血清、血漿および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
個体からの生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在または不在を検知する方法であって、
生物学的サンプルをNMO抗原アクアポリン-4に対する抗NMO抗原抗体と接触させ、
抗NMO抗原抗体の生物学的サンプルへの結合を検知する工程を含んでなり、
結合が生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在を示すものである、前記方法。
【請求項8】
生物学的サンプル中のNMO抗原性ポリペプチドの存在が、個体のNMOを示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
個体が部分的にまたは完全に盲目である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
生物学的サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液、脳生検、および脊髄生検からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
NMO抗原性ポリペプチド、および、個体中の抗NMO抗原自己抗体を検出するために該NMO抗原性ポリペプチドを使用するための説明書、を含む製品であって、該NMO抗原性ポリペプチドがアクアポリン-4である前記製品。
【請求項12】
製品が個体のNMOを診断するために使用される、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
NMO抗原性ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有するモノクローナル抗体をさらに含む、請求項11に記載の製品。
【請求項14】
NMOを患っている個体を治療する方法であって、
個体から体液を取り出し、体液はアクアポリン-4に結合する1種以上の自己抗体を含むものであり、
体液から前記自己抗体の大部分を除去し、
被験者に体液を戻す
工程を含む前記方法。
【請求項15】
NMOを患っている個体を治療する方法であって、
個体にNMO抗原性ポリペプチドを投与し、NMO抗原性ポリペプチドがアクアポリン-4である、
工程を含む前記方法。
【請求項16】
投与が、経口、静脈内、および非経口からなる群より選択される方法によるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
NMOを患っている個体を治療する方法であって、
個体に、NMO抗原性ポリペプチドをコードする核酸を投与し、NMO抗原性ポリペプチドがアクアポリン-4である、
工程を含む前記方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【公表番号】特表2007−518068(P2007−518068A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541455(P2006−541455)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039710
【国際公開番号】WO2005/051178
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(598091963)マヨ ファウンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ (17)
【Fターム(参考)】