説明

視覚情報表示装置、視覚情報表示方法、そのプログラム及び記録媒体

【課題】高速眼球運動を利用した視覚情報の提示を各観察者に対して独立に行う。
【解決手段】高速眼球運動検出装置10の検出部11が、観察者の高速眼球運動を検出し、送信部14が、この検出結果を示す高速眼球運動情報を出力する。視覚情報表示装置20の入力部が、高速眼球運動情報の入力を受け付け、制御部22が、上記の高速眼球運動情報を用い、発光部24での情報表示を制御する。発光部24は、この制御に従い、観察者の高速眼球運動に伴う光点の残像を利用して情報の表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚情報を表示する視覚情報表示装置、視覚情報表示方法、そのプログラム及び記録媒体に関し、特に、高速眼球運動を利用した視覚情報表示を行う視覚情報表示装置、視覚情報表示方法、そのプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(眼球運動を利用した情報提示装置及び情報提示方法)には、サッカードと呼ばれる人間の高速眼球運動を利用し、一列の光点から2次元画像を提示する手法及び装置が開示されている。この手法及び装置は、2箇所の発光部をそれぞれ注視点及び視標として、一方の発光部から他方の発光部への高速眼球運動を誘発すると共に、この高速眼球運動に併せて発光部を発光させて情報を提示するものである。
【特許文献1】特開2003−255861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の手法及び装置は、2箇所の発光部を用いて高速眼球運動を誘発する構成をとるため、複数の観察者がこの発光部を観察していた場合、これらの観察者には、ほぼ同じタイミングで高速眼球運動が生じることになる。ここで、特許文献1の手法及び装置によって提示される情報は、高速眼球運動を生じている観察者のみが観察可能なものである。すなわち、同じタイミングで複数の観察者に高速眼球運動が生じていた場合、これらすべての観察者が提示された情報を観察することになる。つまり、特許文献1の手法及び装置の場合、複数の観察者間で独立な(各人異なった)視覚情報を提示することはできない。
【0004】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、高速眼球運動を利用した視覚情報の提示を、各観察者に対して独立に行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明では、観察者の高速眼球運動を検出し、視覚情報表示装置の制御部が、この検出結果を示す高速眼球運動情報を用いて、発光部での情報表示を制御する。発光部は、この制御に従い、観察者の高速眼球運動に伴う光点の残像を利用して情報を表示する。
ここで、本発明では、検出された高速眼球運動情報を用いて発光部での情報提示を制御するため、高速眼球運動単位、すなわち観察者単位で、発光部の情報提示を制御することができる。これにより、各観察者に対して独立な視覚情報を提示することができる。
【0006】
また、本発明において好ましくは、視覚情報表示装置の制御部は、高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに、発光部に情報を表示させる。これにより、高速眼球運動単位、すなわち観察者単位で、発光部の情報提示を制御することができ、各観察者に対して独立な視覚情報を提示することができる。
また、本発明において好ましくは、入力部は、複数の観察者の高速眼球運動に対応する高速眼球運動情報の入力を受け付け、高速眼球運動情報は、それぞれに対応する観察者を示す識別情報を有し、制御部は、受け取った高速眼球運動情報が有する識別情報が示す観察者に対応する情報を発光部に表示させる。これにより、各観察者に対して独立な視覚情報を提示することができる。
【0007】
また、本発明において好ましくは、入力部は、複数の観察者の高速眼球運動に対応する高速眼球運動情報の入力を受け付け、高速眼球運動情報は、それぞれに対応する観察者に提示する表示情報を有し、制御部は、受け取った高速眼球運動情報が有する表示情報が示す情報を発光部に表示させる。このようにしても、各観察者に対して独立な視覚情報を提示することができる。
また、本発明において好ましくは、発光部は、地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点を有する。人間の日常生活では、地面と鉛直方向の高速眼球引運動が発生する頻度よりも、地面と平行方向の高速眼球運動が発生する頻度のほうが高い。また、観察者は、高速眼球引運動の方向が発光部の光点列と鉛直である場合に、最も良好に表示情報を認識できる。そのため、発光部を、地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点によって構成することにより、観察者に、高い確率で良好な表示情報を認識させることができる。なお、「鉛直方向」とは、地面に対して90°ちょうどの方向のみを意味するのではなく、上述のような原理により、高い確率で観察者に良好な表示情報を認識させることができる「略鉛直方向」をも含む概念である。
【0008】
さらに、この場合に好ましくは、高速眼球運動情報は、観察者に対して水平方向の高速眼球運動が検出されたことを示す高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに、地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点を有する発光部に情報を表示させる。これにより、観察者に確実に良好な表示情報を認識させることができる。なお、「水平方向」とは、地面と完全に平行な方向に限定する意味ではなく、上述のような原理により、観察者に確実に良好な表示情報を認識させることができる「略水平方向」をも含む概念である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明では、検出した高速眼球運動情報を用いて発光部での情報提示を制御しているため、高速眼球運動単位、すなわち観察者単位で、発光部の情報提示を制御することができる。その結果、高速眼球運動を利用した視覚情報の提示を、各観察者に対して独立に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔原理〕
まず、本発明の実施の形態の原理について説明する。
本発明の実施の形態では、観察者の高速眼球運動を誘発するのではなく、自然に生じた観察者の高速眼球運動(サッカード)を検出し、この検出をトリガにして発光パターンが順次変化する光点列の発光を開始する。ここで、この観察者の眼球は高速眼球運動を行っているため、この観察者の網膜に映る光点列の像は、パターンを順次変化させながら網膜上を移動するものとなる。そして、網膜に映った像は、しばらくの間、残像として認識されるのであるから、この観察者は、この網膜に映る光点列の軌跡を2次元画像として知覚でき、所定の視覚情報を得ることができる。
【0011】
これに対し、これと同じ光点列を観察しているが高速眼球運動を行っていない観察者の網膜には、位置を変えることなく発光パターンのみが順次変化する光点列の像が映し出される。この場合、この観察者は、光点列の像を2次元画像として知覚できない。すなわち、高速眼球運動を行っていない観察者は視覚情報を得ることができない。実質的には、光点列の発光開始のトリガとなった高速眼球運動が検出された観察者以外は、視覚情報を得ることができない。
以上の原理により、高速眼球運動を利用した視覚情報の提示を、観察者毎に独立に行うことができる。また、観察者の高速眼球運動を検出したことをトリガに光点列の発光を開始するため、常に観察者の高速眼球運動のタイミングと光点列の発光を開始するタイミングとを一致させることができ、安定した品質の視覚情報を提示できる。さらに、光点列が特定の観察者への視覚情報提示のために占有される時間は、その観察者の高速眼球運動が終了するまでの極めて短い間のみである。このように、一人の観察者が光点列を占有する時間が短いため、1つの光点列を用い、時分割で複数の観察者に視覚情報を提示することも容易である。
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
まず、本発明における第1の実施の形態について説明する。
本形態は、上述のような光点列を具備する視覚情報表示装置を用い、複数人それぞれに必要な情報を独立に取得させるものである。
図1は、本形態における視覚情報表示システム1の構成を例示したブロック図である。
図1に例示するように、本形態の視覚情報表示システム1は、特定の観察者の高速眼球運動を検出する高速眼球運動検出装置10と、高速眼球運動が検出された観察者に視覚情報を提示する視覚情報表示装置20とを有している。なお、説明の簡略化のため、図1では1つの高速眼球運動検出装置10のみを示しているが、本形態の場合、視覚情報の提示を行う観察者の数だけ高速眼球運動検出装置10が必要となる。各観察者の高速眼球運動を検出するためである。
【0013】
<高速眼球運動検出装置10の構成>
図1に例示するように、この例の高速眼球運動検出装置10は、観察者の高速眼球運動を検出する検出部11と、検出部での検出結果を示す高速眼球運動情報(サッカード情報)を生成する高速眼球運動情報生成部12と、高速眼球運動を検出する観察者を特定するための識別情報101を格納する識別情報メモリ13と、高速眼球運動情報を視覚情報表示装置20に送信出力する送信部14(「出力部」に相当)と、高速眼球運動検出装置10を制御する制御部15とを有している。
【0014】
ここで、検出部11は、例えば、カメラを利用して眼球運動を検出する装置(「日本視覚学会偏,”視覚情報処理ハンドブック”,朝倉書店,2000.」,「Y. Ebisawa, "Improved video-based eye-gaze detection method", IEEE Trans. On Instrumentation and Measurement, 47:948-955, 1998.」,「Nac corp., "Eye Mark Recorder", http://www.eyemark.jp/」 等参照)や、特殊コンタクトを利用して眼球運動を検出する装置(「Robinson, D. A. "A method of measuring eye movement using a scleral search coil in a magnetic field", IEEE trance. on Bio-Medical Electrics, 137-145, 1963.」等参照)等である。また、EOG(electro-oculography)を利用して眼球運動を検出する装置を検出部11として用いてもよい。ここで、EOGとは、眼球の動きで変化する生体電気信号を意味する。例えば、眼球運動に伴う網膜の表と裏の間の電位差の変化を示す信号がEOGに相当する。
【0015】
[EOGを利用して高速眼球運動を検出する検出部の具体例]
両目の間及び両目の左右外側に電極を貼り付けておき、目が左右に動いた場合に生じる電極間の電位差を高速眼球運動の検出信号として用いることができる。図2(a)(b)は、このようにEOGを利用して高速眼球運動を検出する検出部11の構成を例示した図である。
図2(a)に例示するように、EOGを利用して高速眼球運動を検出する検出部11は、2つの信号電極11a,11bと、1つの不間電極11cと、計装増幅器11dと、ハイパスフィルタ11eと、ノッチフィルタ11fと、増幅・オフセット調整部11gと、AD変換部11haを具備する検出処理部11hと、を有している。
【0016】
図2(b)に例示するように、2つの信号電極11a,11bは、それぞれ、観察者103の右目103aの右(観察者103からみて右)外側近傍及び左目103bの左(観察者103からみて左)外側近傍に貼り付けられる。また、不間電極11cは、右目103aと左目103bとの間に貼り付けられる。なお、図2に例示する検出部11は、観察者103からみて左右方向の高速眼球運動のみを検出するものであるため、右目103a及び左目103bの(観察者103からみた)左右の位置に信号電極11a,11b及び不間電極11cを貼り付ける構成となっているが、上下方向の高速眼球運動を検出する場合には、右目103a及び左目103bの(観察者103からみた)上下の位置に、電極を貼り付ける必要がある。
【0017】
信号電極11a,11b及び不間電極11cで検出された信号電極11aと不間電極11cとの電位差、及び信号電極11bと不間電極11cとの電位差を、それぞれ示す信号は計装増幅器11dに入力され、そこで増幅(増幅率約40〜60dB)される。次に、これらの増幅信号から、高速眼球運動に伴って発生する高周波のサッカード信号のみを取り出すため、これらの信号をハイパスフィルタ11e(カットオフ周波数約1Hz)に入力させ、サッカード信号よりも低い周波数を除去する。さらに、ハイパスフィルタ11eからの出力信号をノッチフィルタ11f(カットオフ周波数約50Hz)に入力させ、信号の中に多く含まれる電力線からの電磁波ノイズを除去する。そして、ノッチフィルタ11fからの出力信号を増幅・オフセット調整部11gに入力させ、AD変換部11haにフルスケールで入力されるように増幅(増幅率20〜40dB程度)とオフセット(出力レンジ0〜5V)の調整を行う。増幅・オフセット調整部11gからの出力信号は、検出処理部11hのAD変換部11haでデジタル信号に変換された後、検出処理部11hで微分処理され、その微分結果が所定の閾値を越えたときに、検出処理部11hは高速眼球運動を検出した旨の検出情報を出力する([EOGを利用して高速眼球運動を検出する検出部の具体例]の説明終わり)。
【0018】
また、高速眼球運動情報生成部12及び制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に所定のプログラムが読み込まれることにより構成される。また、識別情報メモリ13は、RAM(Random Access Memory)等である。また、送信部14は、無線LANカード等の無線通信器である。
<視覚情報表示装置20の構成>
図1に例示するように、視覚情報表示装置20は、高速眼球運動検出装置10から送信された高速眼球運動情報の受信入力を受け付ける受信部21(「入力部」に相当)と、視覚情報の表示を行う発光部24と、受信部21から受け取った高速眼球運動情報を用い、発光部24に情報を表示させるか否かを制御する制御部22と、観察者の識別情報とその観察者に提示する表示情報とを対応付けた表示内容表102を格納する表示内容表メモリ23とを有している。ここで、本形態の発光部24は、地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点24aを有する。発光部24は、観察者の高速眼球運動に伴う光点24aの残像を利用して視覚情報を提示する。なお、本形態の発光部24は、地面と鉛直方向に一列に配列された複数の光点24aを有するものとするが、光点24aの配置はこれに限定されず、複数の光点24aを2次元的に配列した構成としてもよい。また、本形態では、A〜Lの12個の光点24aを具備する発光部24を例示するが、光点24aの数はこれに限定されない。また、本形態の「表示情報」は、視覚情報の表示を開始してからの時間と光点24aの発光パターン(どの光点24aを点灯させ、どの光点24aを消灯するか)との組合せを示す情報である。また、視覚情報の時間軸の幅は、高速眼球運動の継続時間以下とする。
【0019】
ここで、受信部21は、無線LANカード等の無線通信器である。また、制御部22は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることにより構成される。また、表示内容表メモリ23は、RAM等である。さらに、発光部24は、電球や発光ダイオード等の光点24aを備えた装置である。
<視覚情報表示処理>
次に、本形態の視覚情報表示処理について説明する。
図4は、本形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【0020】
以下、この図に沿って本形態の視覚情報表示処理を説明する。
まず、高速眼球運動検出装置10の制御部15は、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたか否かを判断する(ステップS1)。ここで、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されていないと判断された場合、制御部15は、観察者の高速眼球運動が検出されるまでステップS1の判断処理を繰り返す。一方、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたと判断された場合、制御部15は、検出部11で検出された検出情報を高速眼球運動情報生成部12に送る。これを受け取った高速眼球運動情報生成部12は、受け取った検出情報と識別情報メモリ13から読み込んだ識別情報101とを用い、観察者の高速眼球運動の検出結果を示す高速眼球運動情報を生成する(ステップS2)。
【0021】
図3(a)(b)は、本形態の高速眼球運動情報生成部12が生成する高速眼球運動情報110,120の例示である。図3(a)の例は、識別情報111と検出情報112とを有するの高速眼球運動情報110の例であり、図3(b)の例は、識別情報111と検出情報112と高速眼球運動の速度情報とを有するの高速眼球運動情報120の例である。なお、高速眼球運動の速度は、例えば、検出情報112を元に算出される。
生成された高速眼球運動情報は、送信部14から送信され(ステップS3)、視覚情報表示装置20の受信部21で受信される(ステップS4)。受信部21で受信された高速眼球運動情報は、制御部22に送られ、制御部22は、受け取った高速眼球運動情報を用い、発光部24に情報を表示させるか否かを制御する。この例の制御部22は、高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに発光部24に情報を表示させる。発光部24に情報を表示させる場合、制御部22は、受け取った高速眼球運動情報が有する識別情報を検索キーとして表示内容表メモリ23の表示内容表102を検索し、この検索キーに対応する表示情報(表示内容を示す情報)を抽出する(ステップS5)。制御部22は、抽出した表示情報を発光部24に送り、発光部24は、光点24aの発光パターンを順次変化させることにより、表示情報によって特定される視覚情報の提示を行う(ステップS6)。なお、高速眼球運動情報が速度情報を有している場合、この速度情報が示す速度に応じて光点24aの発光パターンを順次変化させる。すなわち、この速度情報が示す速度が速ければ速いほど、光点24aの発光パターンの変化速度を速くする。これにより、高速眼球運動が検出された観察者に最適な2次元画像を提示することができる。
【0022】
表示情報によって特定される視覚情報の提示が終了するとステップS1の処理に戻る。
なお、上記では、1人の観察者に対応する処理のみを示したが、観察者が複数存在する場合には、観察者ごとに図4に示したのとと同じ処理が実行される。また、本形態の場合、高速眼球運動検出装置10は、観察者ごとに相違し、視覚情報表示装置20は、各観察者に共用される。
[発光部24の光点24aの発光パターン制御と観察者に提示される視覚情報との関係]
次に、発光部24の光点24aの発光パターン制御と観察者に提示される視覚情報との関係について説明する。
【0023】
図5は、ステップS6で行なわれる制御部22による発光部24の制御内容を説明するための図である。また、図6(a)(b)は、図5の制御内容に応じた光点24aの表示を観察者103−1,103−2がどのように知覚するかを説明するための概念図である。
ここで、図5の横軸は時間を示し、縦軸はA〜Lの各光点24aの点灯有無を示す。なお、図5における白丸は対応する光点24aを消灯させることを示し、黒丸は対応する光点24aを点灯させることを示す。例えば、図5における時間t2では、A〜F及びJ〜Kの光点24aを点灯させ、G〜Iの光点24aを消灯させる。図5の例では、視覚情報表示装置20の制御部22は、時間t1に観察者103−1に対応する高速眼球運動情報のみを受信部21から受け取り、時間t3に観察者103−2に対応する高速眼球運動情報のみを受信部21から受け取っている。また、図6(a)は、時間t1において、観察者103−1,103−2が光点24aの表示をどのように知覚するかを示しており、図6(b)は、時間t3において、観察者103−1,103−2が光点24aの表示をどのように知覚するかを示している。また、観察者103−1が高速眼球運動検出装置10−1を利用し、観察者103−2が高速眼球運動検出装置10−1を利用し、視覚情報表示装置20は、観察者103−1,103−2で共用されるものとする。
【0024】
[時間t1から開始される処理]
制御部22は、時間t1に観察者103−1に対応する高速眼球運動情報を受け取ると、この高速眼球運動情報の識別情報に対応する表示情報を、上述のように表示内容表メモリ23から抽出する。前述のように、本形態の表示情報は、視覚情報の表示を開始してからの時間と点灯させる光点24aとの組合せを特定する情報である。制御部22は、この表示情報を用いて発光部24の光点24aの点灯・消灯を制御する。図5の例の場合、制御部22は、この表示情報に従い、時間t1でA〜L全ての光点24aを点灯させ、時間t1+Δ1でAの光点24aを消灯させてB〜Lの光点24aを点灯させ、時間t1+Δ2でA〜C,K,Lの光点24aを消灯させてD〜Jの光点24aを点灯させるといった処理を、順次、時間t1+Δnまで行っていく。なお、前述のように、視覚情報の時間軸の幅は高速眼球運動の継続時間以下であるため、Δnは高速眼球運動の継続時間以下となる。
【0025】
ここで、時間t1は、観察者103−1の高速眼球運動が開始された時間とほぼ等しい(信号処理や伝送に伴う誤差はあるが)。また、時間t1から時間t1+Δnまでの間は、観察者103−1の高速眼球運動が継続している。そのため、時間t1から時間t1+Δnまでの間、観察者103−1の網膜に映る光点24aの列の像が、パターンを順次変化させながら網膜上を移動することになる。そして、網膜に映った像は、しばらくの間、残像として認識されるのであるから、この観察者103−1は、この網膜に映る光点24aの列の軌跡を2次元画像として知覚でき、観察者103−1は、図6(a)に示すような視覚情報(この例では「魚の絵」)を得ることができる。
【0026】
これに対し、時間t1では、観察者103−2に対応する高速眼球運動が制御部22に入力されておらず、観察者103−2には高速眼球運動が生じていない。同じ光点24aの列を観察しているが高速眼球運動を行っていない観察者103−2の網膜には、位置を変えることなく発光パターンのみが順次変化する光点24aの列の像が映し出される。この場合、この観察者103−2は、光点24aの列の像を光点列としか知覚できず、それが示す2次元画像を認識できない。
[時間t3から開始される処理]
制御部22は、時間t3に観察者103−2に対応する高速眼球運動情報を受け取ると、この高速眼球運動情報の識別情報に対応する表示情報を、前述のように表示内容表メモリ23から抽出し、この表示情報を用いて発光部24の光点24aの点灯・消灯を制御する。図5の例の場合、制御部22は、この表示情報に従い、時間t3でA〜L全ての光点24aを消灯させ、時間t3+Δ1でA,E〜I,Lの光点24aを消灯させてB〜D,J,Kの光点24aを点灯させ、時間t3+Δ2でA,D〜G,Jの光点24aを消灯させてB,C,H,I,K,Lの光点24aを点灯させるといった処理を、順次、時間t3+Δmまで行っていく。なお、前述のように、視覚情報の時間軸の幅は高速眼球運動の継続時間以下であるため、Δmは高速眼球運動の継続時間以下となる。
【0027】
ここで、時間t3は、観察者103−2の高速眼球運動が開始された時間とほぼ等しい。また、時間t3から時間t3+Δmまでの間は、観察者103−2の高速眼球運動が継続している。そのため、時間t3から時間t3+Δmまでの間、観察者103−2の網膜に映る光点24aの列の像がパターンを順次変化させながら網膜上を移動し、観察者103−2は、この網膜に映る光点24aの列の軌跡を2次元画像として知覚できる。これにより、観察者103−2は、図6(b)に示すような視覚情報(この例では「人の顔」)を得ることができる。
【0028】
これに対し、時間t3では、観察者103−1に対応する高速眼球運動が制御部22に入力されておらず、観察者103−1には高速眼球運動が生じていない。そのため、観察者103−1は、この視覚情報を得ることができない。
<本形態の特徴>
以上のように、本形態では、視覚情報表示装置20の受信部21で、高速眼球運動検出装置10で検出された観察者の高速眼球運動の検出結果を示す高速眼球運動情報を視覚情報表示装置20で受信したことをトリガに、発光部24において、高速眼球運動に伴う光点の残像を利用した情報提示を行うこととした。これにより、高速眼球運動単位、すなわち観察者単位で、発光部の情報提示を制御することが可能となる。また、高速眼球運動をトリガとして情報提示を行うため、常に最適なタイミングで、高速眼球運動に伴う光点の残像を利用した情報提示を行うことができる。
【0029】
また、本形態では、複数の観察者それぞれに別個の高速眼球運動検出装置10を対応させ、各高速眼球運動検出装置10が対応する観察者の高速眼球運動の検出することとした。そして、各高速眼球運動検出装置10は、対応する観察者の高速眼球運動の検出結果と、その観察者を示す識別情報とを有する高速眼球運動情報を生成し、視覚情報表示装置20の制御部22は、受け取った高速眼球運動情報が有する識別情報が示す観察者に対応する情報を発光部24に表示させることとした。これにより、観察者間で独立な視覚情報を提示することができる。
【0030】
また、発光部24を、地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点24aを有する構成とした場合、観察者に、高い確率で良好な表示情報を認識させることが可能となる。人間の日常生活では、地面と鉛直方向の高速眼球引運動が発生する頻度よりも、地面と平行方向の高速眼球運動が発生する頻度のほうが高いからである。
さらに、検出部11が観察者に対して水平方向の高速眼球運動のみを検出できる構成とすれば、発光部24は、観察者に対して水平方向の高速眼球運動が生じている場合にのみ視覚情報を表示することになるため、観察者に確実に良好な表示情報を認識させることができる。
【0031】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明における第2の実施の形態について説明する。
本形態は、第1の実施の形態の変形例である。第1の実施の形態との主な相違点は、第1の実施の形態では、高速眼球運動情報に対応する観察者の識別情報を含ませていたとことを、第2の実施の形態では、高速眼球運動情報に表示情報そのものを含ませる点である。これにより、視覚情報表示装置での表示内容表の管理が不要となる。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、第1の実施の形態と共通する事項については説明を省略する。
【0032】
図7は、本形態における視覚情報表示システム200の構成を例示したブロック図である。なお、図7において第1の実施の形態と共通する部分については、図1と同じ符号を用いた。
図7に例示するように、本形態の視覚情報表示システム200は、特定の観察者の高速眼球運動を検出する高速眼球運動検出装置210と、高速眼球運動が検出された観察者に視覚情報を提示する視覚情報表示装置220とを有している。なお、視覚情報の提示を行う観察者の数だけ高速眼球運動検出装置210が必要となるのは、第1の実施の形態と同様である。
【0033】
<高速眼球運動検出装置210の構成>
図7に例示するように、この例の高速眼球運動検出装置210は、検出部11と、高速眼球運動情報生成部12と、視覚情報表示装置220で表示する視覚情報を特定するための表示情報131を格納する表示情報メモリ213と、送信部14(「出力部」に相当)と、制御部15とを有している。なお、表示情報の定義は、第1の実施の形態と同じである。
<視覚情報表示装置220の構成>
図7に例示するように、視覚情報表示装置220は、受信部21(「入力部」に相当)と、発光部24aを具備する発光部24と、制御部22とを有している。
【0034】
<視覚情報表示処理>
次に、本形態の視覚情報表示処理について説明する。
図9は、本形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
以下、この図に沿って本形態の視覚情報表示処理を説明する。
まず、高速眼球運動検出装置210の制御部15は、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたか否かを判断する(ステップS11)。ここで、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されていないと判断された場合、制御部15は、観察者の高速眼球運動が検出されるまでステップS11の判断処理を繰り返す。一方、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたと判断された場合、制御部15は、検出部11で検出された検出情報を高速眼球運動情報生成部12に送る。これを受け取った高速眼球運動情報生成部12は、受け取った検出情報と表示情報メモリ213から読み込んだ表示情報131とを用い、観察者の高速眼球運動の検出結果を示す高速眼球運動情報を生成する(ステップS12)。
【0035】
図8は、本形態の高速眼球運動情報生成部12が生成する高速眼球運動情報130の例示である。このように、本形態の高速眼球運動情報130は、表示情報132と検出情報112とを具備している。
生成された高速眼球運動情報は、送信部14から送信され(ステップS13)、視覚情報表示装置20の受信部21で受信される(ステップS14)。受信部21で受信された高速眼球運動情報は、制御部22に送られ、制御部22は、受け取った高速眼球運動情報を用い、発光部24に情報を表示させるか否かを制御する。この例の制御部22は、高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに発光部24に情報を表示させる。発光部24に情報を表示させる場合、制御部22は、受け取った高速眼球運動情報が有する表示情報を発光部24に送り、発光部24は、光点24aの発光パターンを順次変化させることにより、表示情報によって特定される視覚情報の提示を行う(ステップS15)。
【0036】
表示情報によって特定される視覚情報の提示が終了するとステップS11の処理に戻る。
以上のような構成としても第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明における第3の実施の形態について説明する。
本形態も第1の実施の形態の変形例である。第1の実施の形態との主な相違点は、高速眼球運動検出装置が観察者の高速眼球運動の方向を検証し、その方向が観察者からみて水平方向から所定各以内にある場合にのみ、高速眼球運動情報を視覚情報表示装置に送る点である。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、第1の実施の形態と共通する事項については説明を省略する。
【0037】
<構成>
本形態の構成は第1の実施の形態と同様である。また、本形態の検出部11は、観察者からみて上下左右の高速眼球運動を検出できるものであり、本形態の発光部24は、地面と鉛直方向に一列に配列された複数の光点24aを有する(図1)。
<視覚情報表示処理>
次に、本形態の視覚情報表示処理について説明する。
図10は、本形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【0038】
以下、この図に沿って本形態の視覚情報表示処理を説明する。
まず、高速眼球運動検出装置10の制御部15(図1)は、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたか否かを判断する(ステップS21)。ここで、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されていないと判断された場合、制御部15は、観察者の高速眼球運動が検出されるまでステップS21の判断処理を繰り返す。一方、観察者の高速眼球運動が検出部11で検出されたと判断された場合、制御部15は、検出部11で検出された検出情報を制御部15及び高速眼球運動情報生成部12に送る。本形態の検出情報には、検出した高速眼球運動の運動方向に関する情報も含まれている。
【0039】
次に、制御部15は、検出された高速眼球運動の運動方向が、観察者からみた水平方向から所定角以内にあるか否かを検証する(ステップS22)。ここで、制御部15は、高速眼球運動の運動方向が水平方向から所定角以内にないと判断すれば、処理をステップS21の処理に戻し、高速眼球運動の運動方向が水平方向から所定角以内にあると判断すれば、ステップS23以降の処理を実行させる。なお、ステップS23〜S27の処理は、第1の実施の形態のステップS2〜S6の処理を同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
<本形態の特徴>
このような構成とした場合、発光部24は、観察者に対して水平方向の高速眼球運動が生じている場合にのみ、地面と鉛直方向に一列に配列された複数の光点24aを有する発光部24に視覚情報を表示することになる。その結果、観察者に確実に良好な表示情報を認識させることができる。
なお、本形態では、高速眼球運動の運動方向が水平方向か否かを高速眼球運動検出装置10で判断することとしたが、視覚情報表示装置20において、受け取った高速眼球運動情報が示す高速眼球運動の運動方向が水平方向か否かを判断し、水平方向であると判断した場合にのみ視覚情報を表示する構成としてもよい。
【0041】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明における第4の実施の形態について説明する。
本形態も第1の実施の形態の変形例である。第1の実施の形態との主な相違点は、観察者毎に別個の高速眼球運動検出装置で各観察者の高速眼球運動を検出するのではなく、各観察者で共用される1個の検出部で、各観察者の高速眼球運動を検出するものである。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、第1の実施の形態と共通する事項については説明を省略する。
【0042】
<構成>
図11は、本形態の視覚情報表示装置300の構成を例示したブロック図である。なお、図11において第1の実施の形態と共通する部分については、図1と同じ符号を付した。
図11に例示するように、本形態の視覚情報表示装置300は、複数の観察者の高速眼球運動を検出可能な検出部311と、高速眼球運動情報を生成する高速眼球運動情報生成部312と、高速眼球運動情報が入力される入力部321と、制御部322と、観察者の範囲情報と当該観察者に提示する視覚情報を特定する表示情報とを対応付けた表示内容表152を格納する表示内容表メモリ323と、複数の光点24aを具備する発光部24とを有する。なお、「表示情報」の定義は第1の実施の形態と同じである。
【0043】
本形態の検出部311は、例えば、高速カメラを用いて撮影した観察者の高速眼球運動を検出する装置である(「Bjorn W., Komuro T., Namiki A., Ishikawa M. "Development of High Speed Eye Tracking System Using the "Vision Chip"" proc of 2005 JSME Conf. on Robotics and Macaronis, 2005」「渡邊淳司,安藤英由樹,関口大陸,前田太郎,舘 ▲すすむ▼,”網膜再帰反射を利用した遠隔サッカード検出手法の研究”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol. 9, No. 1, pp.105-113, 2004.」等参照)。また、この検出部311は、高速眼球運動を検出する観察者の近傍に配置され、高速眼球運動だけではなく、その高速眼球運動が検出された位置をも検出するものである。
【0044】
また、表示内容表152が有する範囲情報は、例えば、座標点によって特定される範囲を示す情報であり、この範囲は、例えば、検出部311での検出可能範囲を複数に区分した際の一部である。
<視覚情報表示処理>
次に、本形態の視覚情報表示処理について説明する。
図12は、本形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
以下、この図に沿って本形態の視覚情報表示処理を説明する。
【0045】
まず、視覚情報表示装置300の制御部322は、何れかの観察者の高速眼球運動が検出部311で検出されたか否かを判断する(ステップS31)。ここで、何れかの観察者の高速眼球運動が検出部311で検出されていないと判断された場合、制御部322は、観察者の高速眼球運動が検出されるまでステップS31の判断処理を繰り返す。一方、何れかの観察者の高速眼球運動が検出部311で検出されたと判断された場合、制御部322は、検出部311で検出された検出情報を高速眼球運動情報生成部312に送る。なお、本形態の検出情報には、高速眼球情報が検出された位置を示す位置情報も含まれている。
【0046】
この検出情報を受け取った高速眼球運動情報生成部312は、受け取った検出情報を用い、観察者の高速眼球運動の検出結果を示す高速眼球運動情報を生成する(ステップS32)。なお、本形態の高速眼球運動情報には、検出情報が含まれている。生成された高速眼球運動情報は、入力部321に入力され(ステップS33)、そこから制御部322に送られる。
制御部322は、受け取った高速眼球運動情報が具備する検出情報から位置情報を抽出し、この位置情報を検索キーとして、表示内容表メモリ323の表示内容表152を検索し、検索キーに対応する表示情報を抽出する。例えば、制御部322は、検索キーが示す位置が含まれる範囲に対応する範囲情報に表示内容表152で対応付けられている表示情報を抽出する。
【0047】
制御部322は、抽出した表示情報を発光部24に送り、発光部24は、光点24aの発光パターンを順次変化させることにより、表示情報によって特定される視覚情報の提示を行う(ステップS35)。
[発光部24の光点24aの発光パターン制御と観察者に提示される視覚情報との関係]
次に、発光部24の光点24aの発光パターン制御と観察者に提示される視覚情報との関係について説明する。なお、制御部322によるステップS35での発光部24の制御内容は、第1の実施の形態のステップS6と同じ(図5)であるとして説明する。
【0048】
図13(a)(b)は、この制御内容に応じた光点24aの表示を観察者103−1,103−2がどのように知覚するかを説明するための概念図である。なお、検出部311は、観察者103−1の高速眼球運動を、位置αにおける高速眼球運動として検出し、観察者103−2の高速眼球運動を、位置βにおける高速眼球運動として検出するものとする。
[時間t1から開始される処理]
制御部22は、時間t1に位置αを示す位置情報を具備する高速眼球運動情報を受け取ると、この位置情報に対応する表示情報を、表示内容表メモリ323から抽出する。制御部322は、この表示情報を用いて発光部24の光点24aの点灯・消灯を制御する。そして、位置αで高速眼球運動が検出された観察者103−1は、第1の実施の形態と同様に、網膜に映る光点24aの列の軌跡を2次元画像として知覚し、図13(a)に示すような視覚情報(この例では「魚の絵」)を得ることができる。
【0049】
これに対し、時間t1では、観察者103−2には高速眼球運動が生じていない。この場合、103−2の網膜には、位置を変えることなく発光パターンのみが順次変化する光点24aの列の像が映し出される、この観察者103−2は、光点24aの列の像が示す2次元画像を認識できない。
[時間t3から開始される処理]
制御部322は、時間t3に位置βを示す位置情報を具備する高速眼球運動情報を受け取ると、この位置情報に対応する表示情報を、表示内容表メモリ323から抽出する。
【0050】
制御部322は、この表示情報を用いて発光部24の光点24aの点灯・消灯を制御する。そして、位置βで高速眼球運動が検出された観察者103−2は、第1の実施の形態と同様に、網膜に映る光点24aの列の軌跡を2次元画像として知覚し、図13(b)に示すような視覚情報(この例では「人の顔」)を得ることができる。
これに対し、時間t3では、観察者103−1には高速眼球運動が生じていない。そのため、観察者103−1は、この視覚情報を得ることができない。
<本形態の特徴>
このように、複数の観察者の高速眼球運動を1つの検出部311で検出する構成としても第1と実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記の各実施の形態では、「表示情報」を「視覚情報の表示を開始してからの時間と光点24aの発光パターンとの組合せを示す情報」と定義したが、光点24aの光パターンとの組合せと、その組合せの表示順序とを示す情報を「表示情報」としてもよい。また、検出部で高速眼球運動の方向を検出し、その検出方向と略垂直方向の光点列を制御し情報提示を行う構成としてもよい。また、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0052】
その他、上述の実施の形態を組み合わせて実施することとしてもよく、また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
また、上述の構成をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよいが、具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0053】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0054】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の産業上の利用分野としては、例えば、街頭テレビのような共有型視覚提示装置から各個人に異なった情報を提供するシステム等を例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、第1の実施の形態における視覚情報表示システムの構成を例示したブロック図である。
【図2】図2(a)(b)は、EOGを利用して高速眼球運動を検出する検出部の構成を例示した図である。
【図3】図3(a)(b)は、第1の実施の形態の高速眼球運動情報生成部が生成する高速眼球運動情報の例示である。
【図4】図4は、第1の実施の形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、ステップS6で行なわれる制御部による発光部の制御内容を説明するための図である。
【図6】図6(a)(b)は、図5の制御内容に応じた光点の表示を観察者がどのように知覚するかを説明するための概念図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態における視覚情報表示システムの構成を例示したブロック図である。
【図8】図8は、第2の実施の形態の高速眼球運動情報生成部が生成する高速眼球運動情報の例示である。
【図9】図9は、第2の実施の形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、第3の実施の形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、第4の実施の形態の視覚情報表示装置の構成を例示したブロック図である。
【図12】図12は、第4の実施の形態の視覚情報表示処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13(a)(b)は、光点の表示を観察者がどのように知覚するかを説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0057】
1,200 視覚情報表示システム
10,210 高速眼球運動検出装置
20,220,300 視覚情報表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速眼球運動を利用して視覚情報の表示を行う視覚情報表示装置であって、
観察者の高速眼球運動の検出結果を示す高速眼球運動情報の入力を受け付ける入力部と、
観察者の高速眼球運動に伴う光点の残像を利用して情報の表示を行う発光部と、
上記入力部から受け取った上記高速眼球運動情報を用い、上記発光部での情報表示を制御する制御部と、
を有することを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の視覚情報表示装置であって、
上記高速眼球運動情報は、
観察者の高速眼球運動が検出された際に上記入力部に入力され、
上記制御部は、
上記高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに、上記発光部に情報を表示させる、
ことを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の視覚情報表示装置であって、
上記入力部は、
複数の観察者の高速眼球運動に対応する上記高速眼球運動情報の入力を受け付け、
上記高速眼球運動情報は、
それぞれに対応する観察者を示す識別情報を有し、
上記制御部は、
受け取った上記高速眼球運動情報が有する上記識別情報が示す観察者に対応する情報を上記発光部に表示させる、
ことを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の視覚情報表示装置であって、
上記入力部は、
複数の観察者の高速眼球運動に対応する上記高速眼球運動情報の入力を受け付け、
上記高速眼球運動情報は、
それぞれに対応する観察者に提示する表示情報を有し、
上記制御部は、
受け取った上記高速眼球運動情報が有する上記表示情報が示す情報を上記発光部に表示させる、
ことを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の視覚情報表示装置であって、
上記発光部は、
地面と鉛直方向に列状に配列された複数の光点を有する、
ことを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項6】
請求個5に記載の視覚情報表示装置であって、
上記制御部は、
観察者に対して水平方向の高速眼球運動が検出されたことを示す上記高速眼球運動情報を受け取ったことをトリガに、上記発光部に情報を表示させる、
ことを特徴とする視覚情報表示装置。
【請求項7】
高速眼球運動検出装置の検出部が、観察者の高速眼球運動を検出する過程と、
高速眼球運動検出装置の出力部が、上記検出部での検出結果を示す高速眼球運動情報を出力する過程と、
視覚情報表示装置の入力部が、上記高速眼球運動情報の入力を受け付ける過程と、
視覚情報表示装置の制御部が、上記入力部から受け取った上記高速眼球運動情報を用い、発光部での情報表示を制御する過程と、
視覚情報表示装置の発光部が、上記制御部の制御に従い、観察者の高速眼球運動に伴う光点の残像を利用して情報の表示を行う過程と、
を有することを特徴とする視覚情報表示方法。
【請求項8】
請求項1から6の何れかに記載の視覚情報表示装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−132994(P2007−132994A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323481(P2005−323481)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】