説明

視覚障害者支援システム及び視覚障害者支援方法

【課題】 視覚障害者であっても、自らの所望する場所に介護者の助けを借りること無しに、移動することを可能にすることができ、更には、視覚障害者自らが所望する物品を介護者の助けを借りること無く自らが移動して該物品を取得することを可能にする視覚障害者支援システム及び視覚障害者支援方法の提供。
【解決手段】 空間を識別するための空間識別信号を発信する複数の空間識別子と、視覚障害者に装着される誘導装置と、視覚障害者の誘導を制御する制御装置とからなる視覚障害者支援システムであって、前記誘導装置が、前記視覚障害者が所望する目標空間情報と初期空間を認識するための空間識別信号を送信し、前記制御装置は、空間識別信号及び目標空間情報を受信し、経路情報を算出する経路算出手段と、前記経路算出手段に於いて算出された経路情報を前記誘導装置へ送信する制御側送信手段を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者支援システム及び視覚障害者支援方法に関し、より詳しくは、視覚障害者であっても、自らの所望する場所に介護者の助けを借りること無しに、移動することを可能にすることができ、更には、視覚障害者自らが所望する物品を介護者の助けを借りること無く自らが移動して該物品を取得することを可能にする視覚障害者支援システム及び視覚障害者支援方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚に障害を有する者や弱視者等の視覚障害者は、健常者や介護者による手助けを借りて屋外及び屋内を移動していた。また、健常者や介護者の手助けがない場合には、盲導犬、白い杖や黄色い標識等を使用することによって、障害物や危険の存在を認知することにより、これら障害物や危険を回避して安全に歩行していた。
しかしながら、上記の如き盲導犬、白い杖や黄色い標識を利用して視覚障害者の支援を行うことは、視覚障害者にとって十分な支援を行うことのできるものでなかった。
【0003】
このような問題点から、視覚障害者に対して、十分な視覚補助を行うことのできる視覚補助装置が多数創出されている。
例えば、特許文献1には、屋外、屋内にてカメラによる画像認識から移動を可能にするために、カメラの画像をセンサー或いは音声でリアルタイムに知らせることで、視覚障害者の視覚補助を行う視覚支援装置が開示されている。
また、特許文献2には、視覚障害者が歩行に際して障害物となり得る物体を認識してその存在を報知するナビゲーション或いは更に行き先や現在位置に関する情報を周囲の文字情報に基づいて認識してその意味内容を視覚障害者に報知するプランニングを可能ならしめる視覚支援装置やその方法が開示されている。
また、特許文献3には、視覚障害者の前方に広がる3次元空間を設定し、この3次元空間内に存在する様々な物体の距離や動き等を視覚障害者に通知する視覚支援装置が開示されている。
【0004】
これら特許文献1乃至3に開示される視覚支援装置や方法は、視覚障害者の前方に広がる景色を2次元空間の画像情報として認識し、この画像情報を画像認識技術により視覚障害者にとって障害物や危険を認識し、視覚障害者に通知する構成を有している。
しかしながら、これらに開示される技術は、画像認識の技術に大きく依存しており、画像認識が上手く作動しない場合や効果的に作動しない場合には、視覚障害者の補助を行うことができないという問題点を有していた。
特に、上記する如き視覚補助装置は、屋内や室内で使用される場合に於いて、屋内(室内)背景や、物品の形状や色彩の複雑さと多種多様さとから、物品を確実に識別することができないという問題を有していた。
このため、上記の如き視覚補助装置を使用した場合に、屋外ではその効果を奏することができたとしても、屋内や室内では十分に効果を奏することができなかった。
このため、屋外及び屋内であっても、視覚障害者が確実に物品を識別することのできる視覚補助装置の創出が求められていた。
【0005】
また、視覚障害者を介護する介護者にとって最も大きな負担は、屋内に於いて視覚障害者の介護を行う場合に一日中視覚障害者に付き添いその介護を行わなければならないことである。
実際、視覚障害者は屋内の狭い場所では、盲導犬、白い杖や黄色い標識は十分な効果を奏することができないため、視覚障害者が何か簡単な用事で部屋を移動する場合には、必ず介護者の助力を必要としていた。このため、介護者は視覚障害者のために時間を費やさなければならず、介護者自らの時間が全くも持てず、介護者が介護に疲れ果ててしまう問題を有していた。
【0006】
一方、視覚障害者も、屋内に於いて簡単な用事を行うため屋内を移動する場合には、介護者の手を煩わせず、自らの力で屋内を移動したいと節に願っているが、上記するような特許文献1乃至3に開示される発明では、屋内の背景や物品の形状や色彩の複雑さから、屋内の実生活レベルでは十分機能を果たすことができなかった。
【0007】
このような問題点から、介護者の介護負担を軽減し、視覚障害者の日常生活、特に、屋内や室内に於ける視覚障害者の移動を支援し、更には、日常生活レベルで使用される物品の識別を確実に行うことのできる視覚障害者支援システム及び視覚障害者支援方法の創出が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−324389号公報
【特許文献2】特開2001−318594号公報
【特許文献3】特開2002−65721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、視覚障害者が介護者の助力を必要とせず、視覚障害者が自らの意思によって所望する場所へ移動することができるとともに、視覚障害者が所望する物品の位置を確実に認識することができる視覚障害者支援システム及びその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、複数の空間毎に設けられ、該空間を識別するための空間識別信号を発信する複数の空間識別子と、視覚障害者に装着され、該視覚障害者が所望する目標空間又は物品の存在する目標空間へ誘導する誘導装置と、前記誘導装置が行う視覚障害者の誘導を制御する制御装置とからなる視覚障害者の所望する前記空間への誘導を支援する視覚障害者支援システムであって、前記誘導装置は、前記視覚障害者が所望する目標空間情報を入力する入力手段と、前記入力手段に於いて目標空間情報が入力された際に於いて、前記視覚障害者が存在する初期空間を認識するために前記空間識別子からの空間識別信号を受信する空間情報受信手段と、前記目標空間情報と前記空間識別信号を前記制御装置へ送信する誘導側送信手段と、前記制御装置からの誘導情報を受信する誘導側受信手段と、前記誘導側受信手段に於いて受信した誘導情報を前記視覚障害者へ通知する通知手段を有し、前記制御装置は、2つの空間位置から特定される複数の経路情報が記憶される記憶手段と、前記誘導側送信手段に於ける空間識別信号及び目標空間情報を受信する制御側受信手段と、前記制御側受信手段に於ける空間識別信号から初期空間位置を特定するとともに、前記制御側受信手段から入力される目標空間情報から目標空間位置を特定する位置特定手段と、前記位置特定手段に於いて特定された2箇所の空間位置から前記記憶手段に記憶される経路情報を算出する経路算出手段と、前記経路算出手段に於いて算出された経路情報を前記誘導装置へ送信する制御側送信手段を有していることを特徴とする視覚障害者支援システムを提供する。
請求項2記載の発明は、前記視覚障害者支援システムは、更に、前記誘導装置が、前記視覚障害者が所望する物品を目標物品情報として入力する入力手段と、前記入力手段に於いて目標物品情報が入力された際に於いて、前記視覚障害者が存在する初期空間を認識するために前記空間識別子からの空間識別信号を受信する空間情報受信手段と、前記制御装置が、物品情報と、前記物品情報に対応する物品が存在する空間位置情報を複数記憶する記憶手段と、前記入力手段に於いて目標物品情報が入力された場合に、前記記憶手段に於いて、該目標物品が存在する空間位置情報を検出し、検出された空間位置情報を、前記位置特定手段の目標空間位置とする空間位置検出手段を有することを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システムを提供する。
請求項3記載の発明は、前記視覚障害者支援システムが、更に、所定物品毎に付与され、所定形状及び/又は所定色彩を有する物品識別子が設けられ、前記誘導装置が、前記視覚障害者の視野方向の映像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段に於いて作成される画像情報を送信する画像送信手段を有し、前記制御装置が、前記物品識別子に対応する物品情報が複数記憶される記憶手段と、前記画像送信手段からの画像情報を受信する画像受信手段と、前記画像情報から前記物品識別子を認識し、前記記憶手段に於いて、該物品識別子に対応する物品情報を検出し、物品を認識する物品認識手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の視覚障害者支援システムを提供する。
請求項4記載の発明は、前記制御装置が、更に、前記物品認識手段に於いて、前記視覚障害者が入力する目標物品を識別した場合に、該目標物品の存在を示す存在情報を前記誘導装置へ送信する制御側送信手段を有することを特徴とする請求項3に記載の視覚障害者支援システムを提供する。
請求項5記載の発明は、前記空間識別子が、ICタグであることを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システムを提供する。
請求項6記載の発明は、前記入力手段が、目標空間情報及び/又は目標物品情報を音声により入力し、前記通知手段が音声により前記誘導情報を出力することを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システムを提供する。
請求項7記載の発明は、前記物品識別子が、一次元コード又は二次元コードであることを特徴とする請求項3記載の視覚障害者支援システムを提供する。
【0011】
請求項8記載の発明は、視覚障害者に装着される誘導装置と、前記誘導装置を制御する制御装置を有し、視覚障害者の所望する空間又は物品の存在空間への誘導を支援する視覚障害者支援方法であって、複数の空間を認識するための空間識別信号を発信する空間識別子が空間毎に配され、前記誘導装置が、前記空間識別信号から、前記視覚障害者の現在の初期空間を認識し、前記制御装置が、前記視覚障害者の所望する空間又は物品が存在する目標空間を特定し、前記制御装置が、前記初期空間から目標空間へ移動するための経路を算出し、前記誘導装置が、前記視覚障害者を前記経路に沿って前記目標空間まで誘導することを特徴とする視覚障害者支援方法を提供する。
請求項9記載の発明は、前記物品が存在する空間位置が予め設定され、前記視覚障害者が物品を選択した場合に、前記制御装置が選択された物品が存在する空間位置を特定し、前記制御装置が、前記空間位置を目標空間として認識させることを特徴とする請求項8記載の視覚障害者支援方法を提供する。
請求項10記載の発明は、所定形状及び/又は所定色彩を有する物品識別子が物品毎に付与され、前記誘導装置が、前記視覚障害者が該視覚障害者の視野方向を撮影する撮影手段を装着し、前記制御手段が、前記撮影手段により撮影された画像情報から前記物品識別子を利用して物品を認識し、前記制御装置が、前記視覚障害者へ認識された物品を通知することを特徴とする請求項9記載の視覚障害者支援方法を提供する。
請求項11記載の発明は、前記制御装置が前記物品を認識した場合に、前記制御装置が、前記視覚障害者が選択した物品の存在位置を通知することを特徴とする請求項9記載の視覚障害者支援方法を提供する。
これらの発明を提供することによって、上記課題を悉く解決する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によって、所定空間毎に空間識別信号を発信する空間識別子が設定されているので、視覚障害者が現在存在する空間を容易に認識させることができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
このため、本視覚障害者支援システムは、視覚障害者の現在の空間位置を認識し、この空間位置から視覚障害者の所望する空間への移動を誘導する誘導情報を容易に提供することができる。
つまり、本視覚障害者支援システムを利用することにより、視覚障害者は自ら所望する空間(部屋)への移動を極めて容易に行うことができる。
特に、本視覚障害者支援システムは、屋内に於いて上記の如き効果を効果的に奏することができるので、視覚障害者の日常生活に於ける自立を促すことができるとともに、視覚障害者の介護を行う介護者の負担を極めて軽減することができる。
請求項2記載の発明によって、視覚障害者が所望する物品の存在位置を空間位置として入力することができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
このため、視覚障害者が、自らの所望する物品を探すことなく、物品の存在する空間(空間位置)を認識することができる。
請求項3記載の発明によって、物品の形状及び/又は色彩が施された物品識別子が付与されているので、撮影手段により撮影された画像情報から確実に物品を識別することができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
請求項4記載の発明によって、視覚障害者が所望する物品の存在位置を視覚障害者に適切に通知することができるので、視覚障害者は確実に所望する物品を取得することができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
請求項5記載の発明によって、ICタグを利用することによって、極めて効果的に空間位置の認識を行うことができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
請求項6記載の発明によって、入力手段が音声入力を行うことができるとともに通知手段が音声出力により動作することになるので、障害者にとって極めて簡便に使用することができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
請求項7記載の発明によって、物品識別子に一次元コード又は二次元コードを採用することによって、確実に画像認識処理を行うことができ、確実に物品を判断することができる視覚障害者支援システムを提供することができる。
【0013】
請求項8記載の発明によって、所定空間毎に空間識別信号を発信する空間識別子が設定されているので、視覚障害者が現在存在する空間を容易に認識させることができる視覚障害者支援方法を提供することができる。
このため、本視覚障害者支援方法は、視覚障害者の現在の空間位置を認識し、この空間位置から視覚障害者の所望する空間への移動を誘導する誘導情報を容易に提供することができる。
つまり、本視覚障害者支援方法を利用することにより、視覚障害者は自ら所望する空間(部屋)への移動を極めて容易に行うことができる。
特に、本視覚障害者支援方法は、屋内に於いて上記の如き効果を効果的に奏することができるので、視覚障害者の日常生活に於ける自立を促すことができるとともに、視覚障害者の介護を行う介護者の負担を極めて軽減することができる。
請求項7記載の発明によって、視覚障害者が所望する物品の存在位置を空間位置として入力することができる視覚障害者支援方法を提供することができる。
このため、視覚障害者が、自らの所望する物品を探すことなく、物品に位置を認識することができる。
請求項9記載の発明によって、物品に形状及び/又は色彩が施された物品識別子が付与されているので、撮影された画像情報から確実に物品を識別することができる視覚障害者支援方法を提供することができる。
請求項10記載の発明によって、視覚障害者が所望する物品の存在位置を視覚障害者に適切に通知することができるので、視覚障害者は確実に所望する物品を取得することができる視覚障害者支援方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係る視覚障害者支援システム(1)の構成について説明する。
図1は、本発明に係る視覚障害者支援システムの概略構成図である。本発明の視覚障害者支援システム(1)は、空間識別子(2)、物品識別子(3)、誘導装置(4)と制御装置(5)を備えてなる。
【0015】
空間識別子(2)は、屋内の複数の空間(部屋)毎に設けられ、この空間を識別するための空間識別信号を発信する。
この空間識別子(2)は、1つの部屋に少なくとも1つ設けられており、複数個設けることも可能である。また、複数個設ける場合は、1つの部屋に於ける更に詳細な空間位置を情報として空間識別信号に格納させることができる。
例えば、図2では、部屋(A)には2つの空間識別子(2)が設けられており、どちらの空間識別子(2)も部屋(A)の空間識別信号を有しているが、更に、部屋(A)の窓側と入り口側という空間位置情報を併せ持たせることができる。また、部屋(A)内部に存在する大きな家具(特有の家具や電気製品)等にこの空間識別子(2)を付与することもできる。例えば、図2では、部屋(B)の右下にTV(21)が備えられており、このTV(21)に空間識別子(2)が付与されている。このように空間識別子(2)が付与される特有の家具や電気製品は、特に限定されず、日常生活で使用する頻度の高いものに付与されていることが好ましく、例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッド等を列挙することができる。
尚、この空間識別子(2)の空間識別信号は、この信号自体に空間位置を特定する情報を格納させてもよいが、識別情報のみを格納し、後述する制御装置(5)に於いて識別情報から記憶される空間位置を照会することによって、空間位置を特定することもできる。
【0016】
この空間識別子(2)は、ICタグが使用されており、特に、無線ICタグ(RFIDタグ)を利用することが好ましい。
このように無線ICタグを採用することにより、障害者が本システム(1)を使用する際に、後述する誘導装置(4)を利用して障害者の位置確認を確認する場合に簡単に位置情報を取得することができるからである。尚、このICタグは、電源(電池)を内蔵するアクティブタグ(Active tag)であってもよいし、電源を内蔵しないパッシブタグ(Passive tag)であってもよいが、ICタグ自体の電波を送信する送信距離を考慮した場合、数十mの送信距離を持つアクティブタグが好ましい。
【0017】
この空間識別子(2)は、空間識別信号を絶えず発信するよう設定してもよいし、誘導装置(4)によって空間識別信号の送信を促された場合に始めて発信するよう設定してもよい。
【0018】
物品識別子(3)は、所定物品毎に付与され、この所定物品を識別するための所定形状及び/又は所定色彩を有する。図3には、物品識別子が付与される物品を例示する。
この物品識別子(3)は、裏面に粘着層を有するシール部材が形成され、表面に所定形状及び/又は所定色彩が表示され、物品の表面に貼着されている。
この物品識別子(3)は、日常生活に於いて使用される日常物品に付与されている。この日常生活に於いて使用する日常物品は、コップ、茶碗、急須や箸等の生活必需品は勿論、椅子や机等の家具類、テレビや冷蔵庫等の電気製品、扉や窓等の建築物に固定されている物品も含んでいる。
この物品識別子(3)は、一つの物品識別子(3)に対して一つの物品が対応するように設定されている。この対応のさせ方は、上記の如き一対一の対応をさせれば、特に限定されるものではなく、あらゆる対応が可能である。
この物品識別子(3)が有する形状及び/又は色彩によって、貼着されている物品を後述する制御装置(5)が判断することになる。尚、物品識別子(3)の形状やその色彩は、使用種類が増加すればするほど識別可能な物品数が増加することになるが、後述する制御装置(5)に於いて画像認識技術を使用する際に確実に識別することができる形状又は色彩を利用する。物品識別子(3)に於いて使用される形状は、特に限定されず、多角形、円形、楕円形等の形状は勿論、二次元平面内に於いて表現することのできる形状であれば特に限定されない。
尚、この物品識別子(3)の形状は、物品識別子(3)自体を所定の形状に形成してもよいし、物品識別子(3)の表面に印刷等により表示してもよい。
【0019】
物品識別子(3)は、上記の如きあらゆる形状を採用することができるが、その表面に一次元コードや二次元コードを採用することもできる。
このように一次元又は二次元コードを採用することによって、上記の如き形状や色彩を使用する場合よりも多種多様な識別を行うことができるようになり、識別することのできる物品数を増加させることができるからである。
尚、上記する如く、特有の家具や電気機器の場合は、空間識別子(2)と物品識別子(3)のいずれか又は両方付与することもできる。
【0020】
誘導装置(4)は、視覚障害者に装着され、視覚障害者が所望する目標空間又は物品の存在する目標空間へ、視覚障害者を誘導する。
図4は、誘導装置を装着した様子を示し、図5は誘導装置の構成を示すブロック線図である。
この誘導装置(4)は、入力手段(41)、空間情報送信手段(42)、空間情報受信手段(43)、誘導側送信手段(44)、撮影手段(45)、画像送信手段(46)、誘導側受信手段(47)、と通知手段(48)を有している。
【0021】
入力手段(41)は、視覚障害者(A)が所望する目標空間情報及び/又は目標物品情報を入力する。この入力手段(41)は、視覚障害者が目標空間情報や目標物品情報を入力することができれば、特に限定されるものではないが、音声を利用して入力することが好ましい。このため、入力手段(41)は、集音マイクを採用することが好ましい。
このように、視覚障害者が音声を発することで目標空間情報や目標物品情報を入力することができるように構成することによって、極めて簡便に入力作業を行うことができる。
尚、この目標空間情報は、視覚障害者が移動したいと所望する部屋(空間)である目標空間の情報であり、目標物品情報は、視覚障害者が所望する物品(目標物品)の情報である。
この目標空間情報の入力方法としては、部屋毎に符号等を付与して、視覚障害者がこの符号を音声として発することもできるが、「寝室」、「リビング」や「風呂場」等というように具体的な部屋の名称を発して入力することが好ましい。
また、目標物品情報の入力方法も、視覚障害者が所望する物品の名称を具体的に音声にして発することによって入力することが好ましい。この場合であれば、「コップ」、「エアコンのリモコン(エアー・コンディショナーのリモートコントローラ)」や「牛乳」等というように具体的な物品の名称を発して入力されることになる。
【0022】
空間情報送信手段(42)は、上記の如き空間識別子(2)からの空間識別信号の送信を促す信号を送信する。
この空間情報送信手段(42)の動作は、視覚障害者に起因する操作(例えば、動作スイッチを起動させること)によって動作が行われることになるが、視覚障害者が入力手段(41)に於いて目標空間情報又は目標物品情報が入力されると、空間識別子(2)へ空間識別信号の送信を促す信号を送信するように設定されることが好ましい。このように設定されることによって、視覚障害者が目標情報を入力すると同時に視覚障害者の現在位置を認知するための空間識別情報を容易に得ることができるからである。
尚、この空間情報送信手段(42)は、空間識別子(2)が絶えず空間識別信号を発信している場合には必要ではない。
【0023】
空間情報受信手段(43)は、誘導前の視覚障害者が存在する空間を認識するために、空間識別子(2)からの空間識別信号を受信する。
この空間情報受信手段(43)は、上記の如き空間情報送信手段(42)を備える場合には、空間情報送信手段(42)の動作後、空間識別信号を受信することができるように、空間情報受信手段(43)の動作を設定しておけばよく、空間識別子(2)が絶えず空間識別信号を発信している場合には、入力手段(41)に於いて目標情報(目標空間情報及び/又は目標物品情報)が入力されると、空間識別信号を受信するように設定される。
【0024】
この空間情報受信手段(43)は、連続的に空間識別子(2)からの空間識別信号を受信することができるように設定することもできる。
このように連続的に受信することができるように設定することによって、視覚障害者が所望の移動を行う際に、現在移動中の空間位置を把握することができ、このことによって、目標空間位置に到達するまでの移動中の場所を知ることができるからである。
【0025】
誘導側送信手段(44)は、目標空間情報及び/又は目標物品情報と、空間識別信号を制御装置(5)へ送信する。この誘導側送信手段(44)は、空間情報受信手段(43)に於いて受信する空間識別子(2)からの空間識別信号を、誘導が終了されるまで絶えず送信し続けることが好ましい。
この誘導側送信手段(44)が行う送信は、目標空間情報や目標物品情報を制御装置(5)に有線方式又は無線方式を採用することができ、特に限定されるものではないが、後述する制御装置(5)は十分な容量を有する記憶手段を有することが好ましいため、視覚障害者の動作の邪魔にならないためにも無線方式を採用することが好ましい。
【0026】
撮影手段(45)は、図4で示す如く、視覚障害者(A)の視野方向の映像を撮影する。
この撮影手段(45)は、映像を撮影して、撮影した映像を画像情報として作成することのできる撮影装置であれば特に限定されるものではなく、CCDカメラ(Charge-Coupled Device camera)等を例示することができる。撮影手段(45)が撮影して作成される画像情報は、後述する制御手段(5)に於いて画像認識技術が利用されることになるので、撮影手段(45)の解像度は高ければ高いほど好ましい。
撮影手段(45)は、視覚障害者の視覚機能としての役割を果たすことから、視覚障害者の視線の高さと同じか略同じ位置になるように配されることが好ましい。
尚、図4で示される撮影手段(45)は、視覚障害者の視線と略同じ高さになるように配置されている。
【0027】
画像送信手段(46)は、撮影手段(45)に於いて作成される画像情報を制御装置(5)へ送信する。
この画像送信手段(46)は、上記する如く、誘導側送信手段(44)と同様の機能を有しており、制御装置(5)へ送信する情報が異なっている。尚、この画像送信手段(46)も無線方式で制御装置(5)へ画像情報を送信することが好ましい。
【0028】
撮影手段(45)や画像送信手段(46)が行う動作は、視覚障害者によって動作開始を制御することができるように、動作スイッチ(図示せず)を設けておくことが好ましい。動作スイッチを設けることによって、視覚障害者は、自らが所望する場合に撮影手段(45)を起動し、画像送信手段(46)により画像情報を制御装置(5)へ送信することができるからである。
【0029】
誘導側受信手段(47)は、制御装置(5)からの誘導情報を受信する。
尚、この誘導側受信手段(47)は絶えず制御装置(5)からの情報を受信することができるように待機しておくことが好ましい。
この誘導側受信手段(47)は、受信した誘導情報を通知手段(48)へ転送する。
【0030】
通知手段(48)は、誘導側受信手段(47)に於いて受信した誘導情報を視覚障害者(A)へ通知する。
この通知手段(48)は、視覚障害者に誘導情報を通知することができれば、特に限定されるものではないが、音声により誘導情報を出力する構成とすることが好ましい。
通知手段(48)は、図4で示す如く、視覚障害者(A)の耳に直接配されるイヤフォン型の音声出力装置であることが好ましい。
通知手段(48)が、イヤフォン型の音声出力装置とすることによって、視覚障害者にとって極めて効果的に通知することができるからである。
【0031】
この誘導装置(4)は、図4で示される如く、通知手段(48)として片耳に備えられる音声出力装置を備え、入力手段(41)として視覚障害者(A)の口元前方に配される集音マイクを備え、撮影手段(45)として該片耳の上方且つ視覚障害者(A)の視線の高さと略同じ高さに位置し、視覚障害者(A)の視野方向を撮影するCCDカメラを備えている。また、図4で示される誘導装置(4)は、入力手段(41)、撮影手段(45)と通知手段(48)を一体型として構成される無線インカムとして形成され、視覚障害者(A)をハンズフリーの状態にすることができる。
このように、誘導装置(4)に無線インカム構造を採用することによって、視覚障害者(A)は入力と出力に於いて煩わしい作業を行うことなく、本システム(1)を利用することができる。
尚、図4で示される無線インカムでは、無線用アンテナ(49)を備えている。
【0032】
制御装置(5)は、誘導装置(4)から送信される情報を元にして、視覚障害者の所望する目標空間又は目標物品へと誘導するための誘導情報を作成し、誘導装置(4)への返送を行う。図6は、制御装置の構成を示すブロック線図である。
この制御装置(5)は、記憶手段(51)、制御側受信手段(52)、位置特定手段(53)、空間位置検出手段(54)、経路算出手段(55)、画像受信手段(56)、物品認識手段(57)と制御側送信手段(58)を備えてなる。
この制御装置(5)は、誘導装置(4)と無線又は有線通信を行うように設定されるが、無線通信を利用して誘導装置(4)とデータ通信を行うことが好ましい。
【0033】
記憶手段(51)は、本システム(1)に於いて使用される物品情報と空間情報が記憶されている。
この記憶手段(51)に記憶される空間情報は、空間識別信号に対応する空間(部屋)の情報と、選択される2つの空間(移動元から移動先)の経路を、移動するために誘導する情報(経路情報)が格納されている。この選択される2つの空間は、空間識別子(2)が付与される空間に於ける全ての組み合わせ(移動元と移動先が入れ替わる場合も異なる場合とする)である。
この経路情報は、実際に視覚障害者が移動した場合に想定される情報で構成されていることが好ましい。具体的には、図2に於いて部屋(A)から部屋(C)に移動するための経路情報であれば、「先ず、部屋(A)を出て、廊下(D)を真直ぐ約10歩直進して、そこで左を向き、正面の扉を開く」という経路情報を例示することができる。この経路情報は、詳細であれば詳細であるほど好ましい。
尚、この経路情報は、視覚障害者の実際の移動に則して提供することができるように、多段階に構成されていることが好ましい。
【0034】
記憶手段(51)は、更に、複数の物品情報と、この物品情報に対応する物品が存在する空間位置情報を複数記憶している。この記憶手段(51)に記憶される物品情報を利用することにより、物品が存在する空間位置を特定することができる。この物品情報は、上記する物品識別子(3)が付与されている物品全ての空間位置情報が記憶されている。この空間位置情報は、空間識別信号である。
具体的には、物品情報「牛乳」に対して、空間位置情報「部屋(A)及び部屋(A)の空間識別信号」が対応して記憶されている。
上記の如き記憶手段(51)に物品情報とこの物品情報が存在する空間情報(空間識別信号)が記憶されることにより、物品情報からこの物品が存在する空間位置を特定することができる。
【0035】
制御側受信手段(52)は、誘導側送信手段(44)から送信される空間識別信号と、目標空間情報又は目標物品情報を受信する。
制御側受信手段(52)が目標空間情報と空間識別信号を受信した場合には、位置特定手段(53)へ、目標空間情報と空間識別情報が送られる。一方で、制御側受信手段(52)が目標物品情報と空間識別情報を受信した場合には、空間位置検出手段(54)へ、目標物品情報と空間識別情報が送られる。
【0036】
位置特定手段(53)は、制御側受信手段(52)に於いて受信された空間識別信号から初期空間位置を特定するとともに、制御側受信手段(52)から入力される目標空間情報から目標空間位置を特定する。
この位置特定手段(53)によって、視覚障害者の現在の空間位置である移動元空間(移動元部屋)と、視覚障害者が所望する空間位置である移動先空間(移動先部屋)を特定するになる。
この位置特定手段(53)が移動元及び移動先の夫々の空間を決定し、後述する経路算出手段(55)へ、移動元及び移動先の空間情報を転送する。
【0037】
空間位置検出手段(54)は、制御側受信手段(52)が空間識別信号と目標物品情報を受信した場合に、視覚障害者が所望する物品(目標物品)の存在場所を特定するために、この目標物品情報を元に、記憶手段(51)からこの目標物品の存在する空間位置を特定する。
具体的な空間位置検出手段(54)が行う処理は、受け取った目標物品情報を基に、記憶手段(51)に格納される物品情報を検出し、この物品情報に付与される空間識別信号を検出することになる。
目標物品に関する空間識別信号が検出されると、位置特定手段(53)へ目標物品情報、検出された空間識別信号と制御側受信手段(52)が受信した空間識別信号が転送される。
尚、空間位置検出手段(54)がこれら3つの情報を位置特定手段(53)へ転送すると、位置特定手段(53)は、検出された空間識別信号を移動先の空間情報として、制御側受信手段(52)が受信した空間識別信号を移動元の空間情報として、経路算出手段(55)へ送ることになる。
【0038】
経路算出手段(55)は、位置特定手段(53)に於いて特定された移動元及び移動先の空間情報を基に、記憶手段(51)を利用して経路情報を算出する。
この経路算出手段(55)は、位置特定手段(53)により特定された移動元と移動先の空間情報を有しているので、記憶手段(51)に格納される移動元と移動先が形成する経路情報を検出することになる。
経路情報が検出されると、この経路算出手段(55)は、制御側送信手段(58)へこの経路情報を転送する。
【0039】
画像受信手段(56)は、誘導装置(4)の画像送信手段(46)から送信される撮影手段(45)が作成する画像情報を受信する。
画像受信手段(56)が画像情報を受信すると、物品認識手段(57)へ転送する。
【0040】
物品認識手段(57)は、受信した画像情報から物品識別子(3)を認識し、記憶手段(51)に於いて、物品識別子(3)に対応する物品情報を検出し、物品を認識する。
この物品認識手段(57)は、画像情報から画像認識技術を利用して撮影される画像情報内の物品の存在を検出する。
例えば、図7(a)に示される如く、視覚障害者が冷蔵庫(B)のドアを空け、撮影手段(45)により図7(b)で示される冷蔵庫内の画像情報を得たとする。この場合、この画像情報が画像送信手段(46)を介して、画像受信手段(56)に送られてくる。画像情報を物品認識手段(57)が受け取ると、この画像情報を基に画像認識が行われ、この画像情報から物品識別子(3)を検出する。この場合、3つの物品識別子(3)が検出される。物品識別子(3)が検出されると、この検出された物品識別子(3)が何の物品に付与されているのか認識するために、記憶手段(51)に格納される物品識別情報に付与される物品情報から認識することができる。尚、予め図7中、二重丸(31)は「オレンジジュース」、星型(32)は「牛乳」、二次元コード(33)は「バター」であるとする。
この場合、画像認識手段(57)は、これら3つの物品の存在を認識することになる。
【0041】
物品認識手段(57)は、上記の如く、受信した画像情報により物品を識別する。そして、認識した物品の存在位置を視覚障害者へ通知するために、この存在情報を制御側送信手段(58)へ転送する。
この場合の存在情報は、「オレンジジュースが上段左側にあります。」、「牛乳が上段右側にあります。」や「バターが中段にあります。」を例示することができる。
【0042】
視覚障害者が、目標物品を入力手段(41)により入力している場合には、目標物品がこの物品認識手段(57)により認識されると、目標物品の存在位置を存在情報として、制御側送信手段(58)へ転送することになる。
【0043】
制御側送信手段(58)は、経路算出手段(55)及び物品認識手段(57)からの経路情報及び存在情報を誘導装置(4)へ送信する。
尚、制御側受信手段(52)と制御側送信手段(58)は、誘導装置(4)と連続的に送受信を可能にするため、各空間(部屋)に設けられることが好ましい。また、制御側受信手段(52)及び制御側送信手段(58)は、無線アンテナを採用することができる。
以上が本発明の視覚障害者支援システム(1)の構成の説明である。
【0044】
次に、本視覚障害者支援システム(1)の動作を説明する。
図8は本発明の視覚障害者支援システム(1)の動作を示すフローチャートである。
尚、本システムを使用する場合には、空間(部屋)毎に空間識別子(2)を配置し、物品毎に物品識別子(3)を貼着し、これらの情報を記憶手段(51)に記憶させておく。
また、空間識別子(2)が配置される空間同士の移動経路である経路情報を記憶手段(51)に格納しておく。
尚、下記する本視覚障害者支援システム(1)の動作の例は、特に限定されるものではない。また、図2及び図7で示される場合の「家」と「冷蔵庫」を利用して説明する。
【0045】
視覚障害者が、自らの家に帰宅する。このとき、視覚障害者は「玄関(E)」に辿り着く。
視覚障害者は玄関に入り、先ず、自らが所望する場所である目標空間を決める。この場合、視覚障害者は、「台所(A)」に移動したいと考え、「台所(A)」を音声により発し、誘導装置(4)の入力手段(41)へ入力する(S1)。
【0046】
誘導装置(4)の入力手段(41)が音声情報である目標空間情報「台所(A)」を拾う(S2)。
誘導装置(4)の入力手段(41)が目標空間情報「台所(A)」を拾うと、誘導装置(4)は、視覚障害者の現在の空間位置情報を得るために、空間識別子(2)から空間識別信号を受信する(S3)。
尚、このとき、空間識別子(2)が絶えず連続的に空間識別信号を発信している。空間識別子(2)が絶えず空間識別信号を発信しない場合、誘導装置(4)の空間情報送信手段(42)の動作により、空間識別子(2)から空間識別信号が送信されるように促される。この空間情報送信手段(42)の動作によって、空間識別信号が空間識別子(2)から送信され、誘導装置(4)の空間情報受信手段(43)が空間情報信号を受信する。
【0047】
空間情報受信手段(43)に於いて空間識別信号が受信されると、誘導側送信手段(44)へこの空間識別信号と目標空間情報が転送される。
誘導側送信手段(44)が空間識別信号と目標空間情報を受け取ると、制御装置(5)へこの空間識別信号と目標空間情報を送信する(S4)。
【0048】
制御装置(5)は、誘導側送信手段(44)に於いて送信された空間識別信号と目標空間情報を、制御側受信手段(52)に於いて受信する(S5)。
空間識別信号と目標空間情報が受信されると、位置特定手段(53)にこれら空間識別信号及び目標空間信号が転送され、この位置特定手段(53)が、移動元と移動先の空間位置の特定を行う(S6)。
この場合、移動元の空間位置は「玄関(E)」であり、移動後の空間位置は「台所(A)」となる。
【0049】
位置特定手段(53)に於いて移動元及び移動先が決定されると、経路算出手段(55)にこの情報が転送される。
経路算出手段(55)は、位置特定手段(53)に於いて移動元及び移動先が特定されることにより、記憶手段(51)に記憶される経路情報から、移動元「玄関(E)」と移動先「台所(A)」の経路情報を検出する(S7)。
経路算出手段(55)が経路情報を算出すると、制御側送信手段(58)にこの経路情報が送られ、制御側送信手段(58)が誘導装置(4)へ経路情報を送信する(S8)。
【0050】
誘導側受信手段(47)は、制御装置(5)から送信される経路情報を受信する(S9)。
誘導装置(4)の誘導側受信手段(47)が経路情報を受け取ると、通知手段(48)に転送され、通知手段(48)はこの経路情報を音声出力して、視覚障害者に通知する。
この経路情報は、例えば、玄関(E)から台所(A)に移動する場合であれば、通知手段(48)であるイヤフォンから「廊下(D)を真っ直ぐ約10歩いてください。正面に扉があります。注意してください。扉を開けると台所(A)です。」という経路情報である誘導情報を音声出力することになる。
【0051】
また、視覚障害者は、上記の誘導情報に従って、扉まで到達すると、今度は、誘導装置(4)の撮影手段(45)を起動させる(S11)。
撮影手段(45)が起動すると、撮影手段(45)が画像情報を作成する(S12)。
画像送信手段(46)が画像情報を制御装置(5)へ送信する(S13)。
【0052】
制御装置(5)の画像受信手段(56)に於いて画像情報を受信する(S14)。
制御装置(5)は、画像情報を画像認識して、画像情報内に存在する物品識別子(3)を認識する(S15)。
この場合、扉のノブに物品識別子(3)が付与されているので、物品認識手段(57)により扉のノブの位置を認識し、この認識を情報として制御側送信手段(58)に於いて誘導装置(4)へ送信される(S16)。
【0053】
誘導装置(4)は、誘導側受信手段(47)に於いて認識情報を受信し、通知手段(48)であるイヤフォンに於いて、認識情報を音声出力する(S17)。
視覚障害者は、扉のノブの位置をこの認識情報に於いて知ることができ、扉のノブを回して、台所(A)の部屋へ入室することができる。
このようにして、視覚障害者は、経路情報に基づき、移動元の空間位置から移動先の空間位置へ移動することができる。この移動の途中であっても、撮影手段(45)を適宜起動させることによって、移動をより効果的に且つ安全に行うことができる。
【0054】
次に、視覚障害者が目標物品を所望する場合を説明する。図9は本発明の視覚障害者支援システムの他の動作を示すフローチャートである。
例えば、視覚障害者が外出先から戻り、のどが渇いたので「牛乳」を飲もうとする。
まず、視覚障害者は、玄関(E)に於いて、誘導装置(4)の入力手段(41)へ「牛乳」と音声で入力を行う(S21)。
誘導手段(4)は、入力手段(41)に於いて、目標物品情報として「牛乳」が入力される(S22)。
誘導装置(4)の入力手段(41)が目標物品情報「牛乳」を拾うと、誘導装置(4)は、視覚障害者の現在の空間位置情報を得るために、空間識別子(2)から空間識別信号を受信する(S23)。
尚、このとき、上記の如く、空間識別子(2)が絶えず連続的に空間識別信号を発信しており、発信していない場合には、誘導装置(4)の空間情報送信手段(42)の動作により、誘導装置(4)の空間情報受信手段(43)が空間情報信号を受信することになる。
【0055】
空間情報受信手段(43)に於いて空間識別信号が受信されると、誘導側送信手段(44)へこの空間識別信号と目標物品情報が転送される。
誘導側送信手段(44)が空間識別信号と目標物品情報を受け取ると、制御装置(5)へこの空間識別信号と目標物品情報を送信する(S24)。
【0056】
制御装置(5)は、誘導側送信手段(44)に於いて送信された空間識別信号と目標物品情報を、制御側受信手段(52)に於いて受信する(S25)。
空間識別信号と目標物品情報が受信されると、まず、空間位置検出手段(54)に於いて、目標物品情報がどこの空間に存在しているかを示す存在位置情報を、記憶手段(51)に格納される物品情報から検出する(S26)。
この場合、目標物品情報が「牛乳」であるので、目標空間情報は「台所(A)(又は冷蔵庫)」となる。
空間位置検出手段(54)が、記憶手段(51)から目標物品の存在位置を検出すると、この存在位置情報を位置特定手段(53)へ転送する。
位置特定手段(53)は、この存在位置情報を受け取ると、この存在位置情報を目標空間情報とし、空間識別信号及びこの目標空間情報から、この位置特定手段(53)が、移動元と移動先の空間位置の特定を行う(S27)。
この場合、移動元の空間位置は「玄関(E)」であり、移動後の空間位置は「台所(A)」となる。
【0057】
位置特定手段(53)に於いて移動元及び移動先が決定されると、経路算出手段(55)にこの情報が転送される。尚、これ以降は上記する説明と同様なので省略して説明する。
経路算出手段(55)は、位置特定手段(53)に於いて移動元及び移動先が特定されることにより、記憶手段(51)に記憶される経路情報から、移動元「玄関(E)」と移動先「台所(A)」の経路情報を検出し、制御側送信手段(58)が誘導装置(4)へこの経路情報を送信する(S28)。
【0058】
誘導側受信手段(47)は、制御装置(5)から送信される経路情報を受信し、通知手段(48)に転送され、通知手段(48)はこの経路情報を音声出力して、視覚障害者に通知する(S29)。
この経路情報は、例えば、玄関(E)から台所(A)に移動する場合であれば、通知手段(48)であるイヤフォンから「廊下(D)を真っ直ぐ約10歩いてください。正面に扉があります。注意してください。扉を開けると台所(A)です。」という経路情報である誘導情報を音声出力することになる。
尚、更に、「牛乳は台所(A)の冷蔵庫内にあります」という経路情報を付加しておくことが好ましい。
【0059】
この経路情報に沿って、視覚障害者は、台所(A)まで移動し、視覚障害者は冷蔵庫がある位置まで移動する(S30)。
そして、図7(a)で示される如く、冷蔵庫のドアを開放する(S31)。
ここで、視覚障害者は、撮影手段(45)を起動させる(S32)。
撮影手段(45)が起動すると、撮影手段(45)が図7(b)で示す如き画像情報を作成する(S33)。
そして、画像送信手段(46)が画像情報を制御装置(5)へ送信する(S34)。
【0060】
制御装置(5)の画像受信手段(56)に於いて画像情報を受信する(S35)。
制御装置(5)は、画像情報を画像認識して、画像情報内に存在する物品識別子(3)を認識する。このとき、視覚障害者は、目標物品情報として「牛乳」を入力しているので、「牛乳」の存在位置が認識され、この認識を情報として制御側送信手段(58)に於いて誘導装置(4)へ送信される(S36)。
【0061】
誘導装置(4)は、誘導側受信手段(47)に於いて認識情報を受信し、通知手段(48)であるイヤフォンに於いて、認識情報を音声出力する(S37)。
この場合であれば、通知手段(48)のイヤフォンから「牛乳は、上段右側にあります。」という存在情報を視覚障害者は受け取る。
そして、視覚障害者は、「牛乳」の位置を把握することができ(S38)、「牛乳」を手に入れることができる。
このようにして、視覚障害者は、所望する物品を容易に手に入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る視覚障害者支援システムの概略構成図である。
【図2】本発明に係る視覚障害者支援システムを利用する屋内を示す概略平面図である。
【図3】物品識別子が付与される物品を例示する。
【図4】誘導装置を装着した様子を示す。
【図5】誘導装置の構成を示すブロック線図である。
【図6】制御装置の構成を示すブロック線図である。
【図7】本発明を利用する冷蔵庫の様子を示す図であり、(a)は冷蔵庫の扉を開放した様子を示す図であり、(b)はその冷蔵庫の開放状態を画像情報として認識した場合の一例である。
【図8】本発明の視覚障害者支援システムの動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の視覚障害者支援システムの他の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1・・・・視覚障害者支援システム
2・・・・空間識別子
3・・・・物品識別子
4・・・・誘導装置
41・・・入力手段
42・・・空間情報送信手段
43・・・空間情報受信手段
44・・・誘導側送信手段
45・・・撮影手段
46・・・画像送信手段
47・・・誘導側受信手段
48・・・通知手段
5・・・・制御装置
51・・・記憶手段
52・・・制御側受信手段
53・・・位置特定手段
54・・・空間位置検出手段
55・・・経路算出手段
56・・・画像受信手段
57・・・物品認識手段
58・・・制御側送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間毎に設けられ、該空間を識別するための空間識別信号を発信する複数の空間識別子と、視覚障害者に装着され、該視覚障害者が所望する目標空間又は物品の存在する目標空間へ誘導する誘導装置と、前記誘導装置が行う視覚障害者の誘導を制御する制御装置とからなる視覚障害者の所望する前記空間への誘導を支援する視覚障害者支援システムであって、
前記誘導装置は、
前記視覚障害者が所望する目標空間情報を入力する入力手段と、
前記入力手段に於いて目標空間情報が入力された際に於いて、前記視覚障害者が存在する初期空間を認識するために前記空間識別子からの空間識別信号を受信する空間情報受信手段と、
前記目標空間情報と前記空間識別信号を前記制御装置へ送信する誘導側送信手段と、
前記制御装置からの誘導情報を受信する誘導側受信手段と、
前記誘導側受信手段に於いて受信した誘導情報を前記視覚障害者へ通知する通知手段を有し、
前記制御装置は、
2つの空間位置から特定される複数の経路情報が記憶される記憶手段と、
前記誘導側送信手段に於ける空間識別信号及び目標空間情報を受信する制御側受信手段と、
前記制御側受信手段に於ける空間識別信号から初期空間位置を特定するとともに、前記制御側受信手段から入力される目標空間情報から目標空間位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段に於いて特定された2箇所の空間位置から前記記憶手段に記憶される経路情報を算出する経路算出手段と、
前記経路算出手段に於いて算出された経路情報を前記誘導装置へ送信する制御側送信手段を有していることを特徴とする視覚障害者支援システム。
【請求項2】
前記視覚障害者支援システムは、更に、
前記誘導装置が、
前記視覚障害者が所望する物品を目標物品情報として入力する入力手段と、
前記入力手段に於いて目標物品情報が入力された際に於いて、前記視覚障害者が存在する初期空間を認識するために前記空間識別子からの空間識別信号を受信する空間情報受信手段と、
前記制御装置が、
物品情報と、前記物品情報に対応する物品が存在する空間位置情報を複数記憶する記憶手段と、
前記入力手段に於いて目標物品情報が入力された場合に、前記記憶手段に於いて、該目標物品が存在する空間位置情報を検出し、検出された空間位置情報を、前記位置特定手段の目標空間位置とする空間位置検出手段を有することを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システム。
【請求項3】
前記視覚障害者支援システムが、更に、
所定物品毎に付与され、所定形状及び/又は所定色彩を有する物品識別子が設けられ、
前記誘導装置が、
前記視覚障害者の視野方向の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段に於いて作成される画像情報を送信する画像送信手段を有し、
前記制御装置が、
前記物品識別子に対応する物品情報が複数記憶される記憶手段と、
前記画像送信手段からの画像情報を受信する画像受信手段と、
前記画像情報から前記物品識別子を認識し、前記記憶手段に於いて、該物品識別子に対応する物品情報を検出し、物品を認識する物品認識手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の視覚障害者支援システム。
【請求項4】
前記制御装置が、更に、
前記物品認識手段に於いて、前記視覚障害者が入力する目標物品を識別した場合に、該目標物品の存在を示す存在情報を前記誘導装置へ送信する制御側送信手段を有することを特徴とする請求項3に記載の視覚障害者支援システム。
【請求項5】
前記空間識別子が、ICタグであることを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システム。
【請求項6】
前記入力手段が、目標空間情報及び/又は目標物品情報を音声により入力し、前記通知手段が音声により前記誘導情報を出力することを特徴とする請求項1記載の視覚障害者支援システム。
【請求項7】
前記物品識別子が、一次元コード又は二次元コードであることを特徴とする請求項3記載の視覚障害者支援システム。
【請求項8】
視覚障害者に装着される誘導装置と、前記誘導装置を制御する制御装置を有し、視覚障害者の所望する空間又は物品の存在空間への誘導を支援する視覚障害者支援方法であって、
複数の空間を認識するための空間識別信号を発信する空間識別子が空間毎に配され、
前記誘導装置が、前記空間識別信号から、前記視覚障害者の現在の初期空間を認識し、
前記制御装置が、前記視覚障害者の所望する空間又は物品が存在する目標空間を特定し、
前記制御装置が、前記初期空間から目標空間へ移動するための経路を算出し、
前記誘導装置が、前記視覚障害者を前記経路に沿って前記目標空間まで誘導することを特徴とする視覚障害者支援方法。
【請求項9】
前記物品が存在する空間位置が予め設定され、
前記視覚障害者が物品を選択した場合に、前記制御装置が選択された物品が存在する空間位置を特定し、
前記制御装置が、前記空間位置を目標空間として認識させることを特徴とする請求項8記載の視覚障害者支援方法。
【請求項10】
所定形状及び/又は所定色彩を有する物品識別子が物品毎に付与され、
前記誘導装置が、前記視覚障害者が該視覚障害者の視野方向を撮影する撮影手段を装着し、
前記制御手段が、前記撮影手段により撮影された画像情報から前記物品識別子を利用して物品を認識し、
前記制御装置が、前記視覚障害者へ認識された物品を通知することを特徴とする請求項9記載の視覚障害者支援方法。
【請求項11】
前記制御装置が前記物品を認識した場合に、前記制御装置が、前記視覚障害者が選択した物品の存在位置を通知することを特徴とする請求項9記載の視覚障害者支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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