説明

視野角制限ディスプレイ

【課題】ディスプレイに表示される機密情報が他人から覗き見られるのを防止しつつ、利用者にとって見易い映像を保つことができる使い勝手のよい視野角制限ディスプレイを提供する。
【解決手段】単に表示体を積層して組み合わせるものではなく、2枚の表示体2,4に情報を種類別に分けて表示するようにし、このうち後面表示体4の機密情報12を効率よく引き出せるように中間に狭視野角フィルタ3を配設し、機密情報12のみを利用者に視認させるように制限して表示出力させ、非機密情報13は制限せずに表示出力させることで高セキュリティのディスプレイを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関の自動取引コーナに設置されるようなATM(現金自動預払機)、両替機等の端末に備えられるディスプレイに関し、さらに詳しくはディスプレイの覗き見防止技術を高めた視野角制限ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ATM等の端末を利用した自動取引では、取引確認等のために個人名や口座情報などの個人情報がディスプレイに表示されることがある。さらに、顧客が暗証番号を入力するとき、その暗証番号を入力させるためのキーパッド画像をディスプレイに表示させている。このような顧客の機密情報は、ATMを利用する当事者のみに視認させ、他人には見られるべきではない。
【0003】
しかし、顧客の後方からATMの画面を直接覗き見るショルダーハッキング行為に加え、近年、ATMの周辺にカメラを設置して顧客の個人情報を盗写するなどの不正な手法により、顧客の個人情報や暗証番号がATMを利用する当事者以外の他人によって盗まれるという被害が増加している。
【0004】
このような個人情報が盗まれるのを防止するため、画面の視野角を制限することが考えられる。実現例として、視野角を制限するシート状の狭視野角フィルタをディスプレイの表面に貼り付けることにより、ディスプレイに表示された映像の視野角を制限する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。例えば、狭視野角フィルタを画面全体に貼り付けて画面全体の映像の視野角を仮に一律に制限した場合の画面の見え方を図13に示す。
【0005】
顧客が画面に対して略直角に見た時の顧客の視野の中心が「振込先・振込元」情報12aの付近にある場合、その「振込先・振込元」情報12aの付近の視認性は良好であるが、この「振込先・振込元」情報12aから離れるにしたがって視認性は悪化することが認められる。
【0006】
また、画面全体を一度に視認することが困難であるため、顧客は画面全体に渡って視点を移動する必要があり、一時的な確認作業とはいえ同時に視認できない部分の情報を記憶しておく必要がある。このため、顧客に負担を強いることになり、見間違いが起きる可能性も高くなる。さらに、覗き見防止の観点から、画面全体の輝度を上げたり、視野角を拡大したりすることもできないことを表わしている。
【0007】
このように、全画面の視野角を一律に制限すると、顧客が正視している画面の正視部分から離れるにしたがって視認性が低下し、画面の周辺部分は顧客にとって見づらくなるという問題があった。
【0008】
特に、コンビニエンスストアや屋外などの明るい場所に設置された端末の画面は、周囲の光の映り込みによって画面の周辺部が見づらくなり、視認性が大幅に低下する。また、弱視者の場合は、よく見ようと画面を覗き込みがちになるため視野の中心部に対する周辺部の視野角が大きくなり、この場合も画面の周辺部分が見づらくなり、画面の視認性が大幅に低下する。
【0009】
ことに、図14に示すように、画面全体の映像の視野角を仮に一律に制限した場合において、利用者が暗証番号を入力するために暗証番号入力用キーパッド15の付近を画面に対して略直角に見た場合、その付近の視認性は良好である。ところが、それ以外の画面周辺部分の視認性は暗証番号入力用キーパッド15から離れるにしたがって見づらくなる。
【0010】
このように画面の視野角を制限して覗き見を防止させる方法では、画面の正視部分のみが見易く、画面の周辺部分は見づらいため、その周辺部分の視認性が低下し、これにより端末の操作性が犠牲になっていた。さらに、取引上、重要な情報が画面全体を使って表示された場合は、その全情報を確認するために顧客は画面と正視対応すべく画面の端から端へと視点を移動させなければならず不便が強いられていた。
【0011】
この対策の一例に、狭視野角フィルタをディスプレイの一部だけに貼り付けて、覗き見を防止させたい特定部分のみの映像の視野角を制限させることは可能である。
【0012】
ところが、狭視野角フィルタをディスプレイの一部だけに貼り付けて機密情報の表示を制限する際は、その狭視野角フィルタを貼り付ける貼付位置との関係を意識して画面上に表示する内容を構築する必要がある。このために画面に表示される文字の種類、大きさ、表示位置、飾りなどの表示内容のデザイン性に強く制限を受けることになり、実用性が低くなっていた。
【0013】
さらに、画面に表示される映像の視野角を制限するか否かを使用状況に応じて切り替える方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0014】
しかし、覗き見防止の観点からは、画面上の機密情報の視野角だけを制限すればよいにもかかわらず、機密情報以外の視野までも同時に制限してしまう。このため、利用者にとっては周辺部分の情報が見落とされやすく、利用者が画面全体の情報を把握するために何度も視点を移動させる必要があり、見間違えが発生しやすい問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−131202号公報
【特許文献2】特開2008−102459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこでこの発明は、ディスプレイに表示される機密情報が他人から覗き見られるのを防止しつつ、利用者にとって見易い映像を確保することができる使い勝手のよい視野角制限ディスプレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、背面側からの可視光を前面側に透過する特性を持ち、且つ外部からの第1の映像信号を表示する第1の表示体と、外部からの第2の映像信号を表示する第2の表示体と、透過する光の視野角を制限する狭視野角フィルタとを備え、前記第1の表示体を前記狭視野角フィルタの前面側に配置し、前記第2の表示体を前記狭視野角フィルタの後面側に配置して視野角制限ディスプレイを構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ディスプレイに表示される機密情報が他人から覗き見られるのを防止しつつ、利用者にとって見易い映像を保つことができる使い勝手のよい視野角制限ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】視野角制限ディスプレイの内部構造を示す要部分解斜視図。
【図2】視野角制限ディスプレイと外部制御部との配線接続状態を示す斜視図。
【図3】視野角制限ディスプレイに表示された振込取引確認画面の一例を示す表示図。
【図4】画面全体の映像を一度に視認できる場合の振込取引確認画面を正視したときの見え方の一例を示す表示図。
【図5】振込取引確認画面を斜め方向から見たときの見え方一例を示す表示図。
【図6】視野角制限ディスプレイの暗証番号入力画面を正視したときの見え方の一例を示す表示図。
【図7】覗き見防止処理通知LEDを設置した暗証番号入力画面を正視したときの見え方の一例を示す表示図。
【図8】覗き見防止処理通知LEDを設置した暗証番号入力画面を斜め方向から見たときの見え方の一例を示す表示図。
【図9】視野角制限ディスプレイに表示された他の金融機関の振込取引確認画面の一例を示す表示図。
【図10】データベースに記憶されている金融機関ごとの表示種別タイプを示すデータ構成図。
【図11】画面の正視位置に貼られた半透明のシェードシールを透過して暗証番号を視認した見え方の一例を示す表示図。
【図12】半透明のシェードシールが貼られた暗証番号入力画面を斜め方向から見たときの見え方の一例を示す表示図。
【図13】画面全体の映像を一度に視認できない場合の振込取引確認画面を正視したときの見え方の一例を示す表示図。
【図14】画面全体の映像を一度に視認できない場合の暗証番号入力画面を正視したときの見え方の一例を示す表示図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0021】
図1はATMの接客面に備えられる視野角制限ディスプレイ1を分解して示す斜視図である。
この視野角制限ディスプレイ1は、第1の表示体としての前面表示体2を狭視野角フィルタ3の前面側に配置し、第2の表示体としての後面表示体4を狭視野角フィルタ3の後面側に配置して、前面表示体2と後面表示体4との間に狭視野角フィルタ3を挟み込んだ3層構造を有し、この3層構造を長方形枠のディスプレイ筐体5に組み込んで構成している。
【0022】
このうち、前面表示体2は一対の透光性基板間に液晶を挟持した液晶セル2bと、液晶セル2bの表裏に設けられた前面偏向板2a及び後面偏向板2cとを積層して一体化した半透過型の透明液晶パネルで構成している。また、前面表示体2は視野角制限ディスプレイ1の前面に配置されて背面側からの可視光を前面側に透過する特性を持ち、且つ外部(図2における外部制御部6)から供給された前面映像信号を表示する。
【0023】
このように前面表示体2は、半透過型の透明液晶パネルで構成することができるので、視野角制限ディスプレイ1が設置されている場所の外光の反射を利用して該前面表示体2に表示された映像を前面の何れの位置からも利用者にはっきりと視認させることができる。
【0024】
さらに、前面表示体2の前面には、取引手順にしたがって画面上に直接タッチさせて入力操作させる図示しないタッチパネルを配設している。このタッチパネルは映像に対応して利用者がタッチ入力した特定位置の座標信号を受け付ける。
【0025】
このほか、前面表示体2の構成に際して、例えば透明有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス、電界発光)パネル等の十分に広い視野角を持つものを使用することもできる。この場合は、前面表示体2に表示された映像を広い視野角で前面方向に透過させることができる。
【0026】
狭視野角フィルタ3は、偏向フィルタ等で構成することができる。また、この狭視野角フィルタ3は内部に狭視野角層を構成するために1枚で構成してもよく、複数枚を重ね合わせて構成してもよい。
【0027】
これにより、後述する後面表示体4の映像を狭視野角フィルタ3の後面(図1では下方)から前面(図1では上方)へと透過させれば、所望の狭視野角の映像に制限して前面に表示できる。
【0028】
後面表示体4は、前面側から順に前面偏向板4aと、液晶セル4bと、後面偏向板4cと、拡散シート4dと、導光板4eと、反射シート4fとを積層して構成される。このうち、前面偏向板4aと、液晶セル4bと、後面偏向板4cとの3層は透過型の透明液晶パネルとして機能する。また、後面側の拡散シート4dと、導光板4eと、反射シート4fとの3層はバックライトとして機能する。
【0029】
このため、後面表示体4に表示された表示内容の映像はバックライトにより狭視野角フィルタ3の後方から前方に透過される。これにより、後面表示体4に表示される映像は狭視野角フィルタ3を透過し、さらに前面表示体2を透過して表示される。したがって、前面側で見る利用者からは前面表示体2と後面表示体4との積層された重合映像を視認することになる。
【0030】
図2は視野角制限ディスプレイ1と、この視野角制限ディスプレイ1を制御する外部制御部6とを接続した状態を示している。外部制御部6は一般的なパーソナルコンピュータで構成することができる。この外部制御部6は2系統の映像出力端子7,8を持ち、この外部制御部6と視野角制限ディスプレイ1との間をそれぞれ通信用のディスプレイケーブル9,10を用いて通信接続している。
【0031】
このうち、外部制御部6の前面映像出力端子7から出力された映像は、ディスプレイケーブル9を通して視野角制限ディスプレイ1の前面表示体2に入力され、また後面映像出力端子8から出力された映像は、ディスプレイケーブル10を通して視野角制限ディスプレイ1の後面表示体4に入力されてそれぞれ表示されるように構成されている。
【0032】
そして、外部制御部6の前面映像出力端子7から出力されて前面表示体2に表示される映像は、狭視野角フィルタ3を通さないため視野角が制限されない。一方、後面映像出力端子8から出力されて後面表示体4に表示される映像は、狭視野角フィルタ3を通すため視野角が制限される。
【0033】
このため、前面表示体2には狭視野角フィルタ3を通さない映像が表示されるので利用者から見て視野角の制限を受けない映像となり、この前面映像信号はそのまま表示されることとなる。したがって、前面表示体2には制限する必要のない汎用メッセージ等の非機密情報の映像を表示させる。
【0034】
一方、後面表示体4に表示した映像は狭視野角フィルタ3を透過させることになるため、利用者と正視対応する正視位置だけに機密情報を表示させる。
【0035】
このため、正視位置以外の他の位置から斜めに覗いても、その映像の視野に制限を受けて視認不能となり、後面表示体4には制限する必要のある例えば個人名、口座情報、暗証番号等の機密情報の映像を表示させることになる。これにより、利用者のみに機密情報を視認させることができる。したがって、この機密情報は仮に他人に覗き見されても正視できないため視認困難であり、正視位置以外からの機密情報の覗き見を無効にすることができる。
【0036】
さらに、視野角制限ディスプレイ1にあっては前面表示体2と後面表示体4はその間に狭視野角フィルタ3を介して積層した配置関係にあって、積層された重合映像を利用者に視認させることになる。このため、双方の表示体2,4に表示する情報を、表示が狭視野角フィルタ3により制限されない非機密情報と、表示が狭視野角フィルタ3により制限される機密情報とに分け、且つ表示位置を特定すれば、容易に所望の表示形態(図3参照)を構成することができる。
【0037】
次に、ATMに適用した視野角制限ディスプレイ1の見え方の一例を図3〜図5を参照して説明する。
図3は振込取引確認画面11の一例を示している。この振込取引確認画面11は振込先や振込元、振込金額といった利用者がそれまでに入力した内容を確認させるための画面である。
【0038】
このような振込取引確認画面11では第1の映像信号としての非機密情報13と、第2の映像信号としての機密情報12とが外部制御部6から出力されて振込取引確認画面11に表示される。例えば、個人名、口座番号等の「振込先・振込元」情報12aや「振込金額」情報12bなどの覗き見を防止する必要のある機密情報12と、「下記の内容をご確認ください」といった汎用メッセージ13aや罫線13bなどの覗き見を防止する必要のない非機密情報13とが混在して表示される。
【0039】
図4は視野角を制限したい機密情報12と視野角を制限させたくない非機密情報13とを表示させている振込取引確認画面11を利用者が見たときの画面の見え方を表わしている。
【0040】
この振込取引確認画面11を見る利用者には後面表示体4と前面表示体2とによって機密情報12及び非機密情報13の映像が重ね合わされた状態で同時に視認することになる。これにより、狭視野角フィルタ3を透過した機密情報12に対し、正視位置以外からの覗き見をなくすようにその映像の視野角だけを制限することができる。
【0041】
この際、利用者が画面を略直角に見た時の利用者の視野の中心が「振込先・振込元」情報12aなどの機密情報12にある場合、「振込先・振込元」情報12aの周辺の視認性は良好だが、その「振込先・振込元」情報12aから少し離れた場所(図4では下側)にある「振込金額」情報12bである機密情報12の映像は視野角が制限を受けるため視認性が悪くなる。
【0042】
ここで、図4において利用者が画面全体の情報を確認するためには、視点を視野中心の「振込先・振込元」情報12aの付近に置いた状態で画面全体の見える範囲を確認した後、視点をその下側の「振込金額」情報12bの辺りに移動するだけでよく、画面全体に渡って広く視点を移動させる必要もなくなり、利用者への負担も大幅に軽減される。結果として見間違いが起きる可能性が低減される。
【0043】
一方、視野中心の「振込先・振込元」情報12a及びその下側の「振込金額」情報12b以外の情報は視野角の制限を受けないため、視認性は視点の位置に影響されず良好である。この結果、画面全体の視認性が格段に向上する。
【0044】
図5は視野制限ディスプレイ1の振込取引確認画面11を斜め側方から見た様子を示しており、ここに表示される「振込先・振込元」情報12aと「振込金額」情報12bの機密情報12は、斜め方向から見ると、視野角に制限を受けるため、例えば斜め側方からでは見えなくなり、覗き見が防止されていることを表わしている。
【0045】
次に、ATMに適用した視野角制限ディスプレイ1に暗証番号入力画面14を表示した表示説明図を、図6〜図8を参照して説明する。
図6は暗証番号入力画面14の一例を示している。この暗証番号入力画面14は出金取引などで要求される個人認証用の暗証番号を利用者により画面上に直接タッチ入力させるための画面である。そして、この暗証番号入力画面14の前面に備えられているタッチパネルと併用して視野角制限ディスプレイ1が利用される。
【0046】
このため、利用者がタッチパネルにタッチして暗証番号を入力する際に、暗証番号入力用キーパッド15の映像の視野角を制限する。これにより、暗証番号入力用キーパッド15のタッチ入力されたキー部分の覗き見が防止される。
【0047】
ここでは、暗証番号入力用キーパッド15のタッチ入力部分が、その周囲より覗き見されないように映像の視野角を制限する必要のある機密情報12と、取引タイトル16や暗証番号の入力操作を途中で中断するための取消キー17など映像の視野角を制限する必要のない非機密情報13とが混在して表示されている。
【0048】
このように、機密情報として扱われる暗証番号入力用キーパッド15の映像を後面表示体4に表示させ、視野角を制限させたくない映像を前面表示体2に表示させると、暗証番号入力用キーパッド15の映像が視野角制限フィルタ3を通って視野角が制限を受けても、利用者が正視位置から見た暗証番号入力用キーパッド15の視認性は良好である。また、非機密情報の映像は視野角制限フィルタ3を通さないため視野角の制限を受けない。
【0049】
このことから、利用者からの画面の見え方はおよそ上述の図6に示す通り画面全体が明瞭に視認される。この結果、画面全体の映像を一律に制限するという既存の構成に比べ、この視野角制限ディスプレイ1によれば、画面全体に渡って視認性が良好となる。
【0050】
図7は覗き見防止対策が施されていることを示す覗き見防止処理通知LED18を備えた視野角制限ディスプレイ1の構成例を示している。この覗き見防止処理通知LED18は利用者に覗き見防止対策が施されていることを通知する通知手段であり、視野角制限ディスプレイ1の利用者が視認し易い位置、例えばディスプレイ筐体5の前面上部に設置され、外部制御部6の制御に基づいてこの覗き見防止処理通知LED18を点灯・消灯するように構成している。
【0051】
そして、この覗き見防止処理通知LED18の点灯制御は、視野角を制限する必要がない映像の場合は、外部制御部6が覗き見防止処理通知LED18を消灯し、後面表示体4への機密情報の表示がある場合は、外部制御部6が第2映像信号検知手段として機密情報を表示することを検知するとともに、視野角を制限する必要がある映像があるため覗き見防止処理通知LED18を点灯させて覗き見防止対策を実行していることを表示する。あるいは、視野角制限ディスプレイ1自身が、後面表示体4への入力信号の有無によって覗き見防止処理通知LED18を点灯・消灯するようにしてもよい。
【0052】
この視野角制限ディスプレイ1によれば、画面全体の映像の視認性が良好であるため利用者は視野角がほとんど制限されていないように見える。このような場合でも、視野角制限ディスプレイ1には覗き見防止処理通知LED18が点灯しているため、利用者は覗き見防止処理通知LED18を確認することで覗き見防止対策が取られていることが明確に分かる。これにより、利用者は安心して暗証番号を入力操作することができる。
【0053】
図8は図7における覗き見防止処理通知を施した場合において、視野角制限ディスプレイ1を斜め側方から覗き見た様子を示している。この際、暗証番号入力用キーパッド15の映像は視野角が制限を受けて見えなくなっていることを表わしている。
【0054】
さらに、コンビニエンスストアのATM、街の自動化コーナのATMのように複数の金融機関の取引形態に応じて利用可能な共用型ATMの場合、利用者が取引する金融機関独自の表示種別に対応して表示する必要がある。このような場合も、視野角制限ディスプレイ1には、その都度、金融機関が指定する表示形態で表示する表示種別切替手段としての外部制御部6が制御するように構成されている。
【0055】
ここで表示される表示種別は、視野角制限の内容や表示位置が異なるものであり、所望の表示形態となるように予め定められている。例えば、図9に示すように、振込取引確認画面11では、利用者が取引利用した際の取引カードのデータから取引先の金融機関名が特定され、その取引利用する金融機関独自の表示種別に切り替えて表示される。図3の振込取引確認画面11の表示例では振込元と振込先が上下に分けて表示されていたのに対し、図9の振込取引確認画面11の表示例では振込元と振込先を左右に分けて表示した場合を示している。
【0056】
このような表示種別が異なる場合でも、外部制御部6が金融機関別に応じた表示種別で表示するとともに、その表示種別に応じた視野角制限を施して表示データを出力させる。すなわち、表示種別ごとに機密情報12と非機密情報13との位置が異なるが、外部制御部6では表示種別が異なる度に、その画面の視野角を制限するか否かを選択して表示するように後面表示体4への出力を制御する。これにより、任意の位置のみを見易くしたり、斜め方向からの覗き見行為を見づらくしたりすることができる。
【0057】
図10は金融機関別の表示種別をATMデータベースに予め記憶しているデータ構成図であり、図9に示すように、共用型ATMが利用された際、外部制御部6は利用者が取引利用する度に、取引指定や読み取った媒体(キャッシュカード等)に対応する金融機関の表示種別タイプを選択し、この外部制御部6のATMデータベースに記憶されている表示種別タイプの表示出力で表示させる。
【0058】
このように構成された視野角制限ディスプレイ1の使用状態について次に説明する。
利用者がATMを利用して自動取引する際、その取引種別に応じて視野角制限ディスプレイ1には対応する取引案内画面が表示される。このとき、表示内容に機密情報12がなければ、外部制御部6は非機密情報13を前面表示体2に出力して非機密情報13のみを表示させることになる。
【0059】
一方、視野角制限ディスプレイ1に表示する表示内容に機密情報12が含まれていれば、その機密情報12を利用者との正視位置に対応するように後面表示体4に出力して表示させる。これにより、視野角制限ディスプレイ1には利用者と対応する画面中心の正視位置に機密情報12を表示させる。
【0060】
例えば、振込取引では図3に示すように、機密にしたい個人名、口座番号等の表示内容を表わす「振込先・振込元」情報12aや「振込金額」情報12bなどの機密情報12が正視位置に表示される。このほかにも、例えば出金取引では図6に示すように、個人認証用の暗証番号を利用者にタッチ入力させるための暗証番号入力画面14が正視位置に表示される。
【0061】
また、機密を要しない「下記の内容をご確認ください」といった汎用メッセージ13aや罫線13bなどの覗き見を防止する必要のない非機密情報13は狭視野角フィルタ3による表示制限を受けない。このため、非機密情報13は機密情報12の周辺などに混在して常に明瞭に表示される。
【0062】
これにより、正視位置の利用者には機密情報12を含む全ての表示情報を視認させるとともに、その周辺の非機密情報13をも明瞭に視認させることができる。したがって、この機密情報12は仮に他人に覗き見されても正視できないため視認困難であり、正視位置以外からの機密情報12の覗き見を無効にすることができる。
【0063】
さらに、画面の中心付近を見ている利用者はその画面の周辺が表示制限されていないので周辺部分が見づらくならない。このため、画面全体に渡って見易い表示画面を提供できることから利用者が取引した際に見落としたり、意図的に読み飛ばしたりすることもなくなり、利用者に高表示性能の表示画面を提供できる。
【0064】
このように重要な機密情報12だけを狭視野角にして表示する構成にした際は機密情報12と非機密情報13とが混在して表示された全画面を一目で全て視認することができ、画面の視認性を損なわない表示構成なので高セキュリティの確保を図りながらも画面のデザイン性を良好に保つことができる。
【0065】
また、狭視野角表示を行う内容や位置を任意に設定できるため金融機関ごとに表示種別を変えることや、ユーザ別に表示種別を変えることができる。また、同じ部位に視野角の制限表示と非制限表示ができるため画面デザインの自由度が上がる。
【0066】
図11は視野角制限ディスプレイ1の適切な視認位置を利用者に一目で知らせる視認位置案内手段を付加した表示図を示している。
この視認位置案内手段は正視位置となる画面部分に、視認位置案内手段としての半透明のシェード表示19を行ったものである。例えば、図11に示す暗証番号入力画面14では暗証番号入力用キーパッド15の上面全体を覆うように、視認を妨げない程度の透過性を有する半透明で長方形のシェード表示19を行う。
【0067】
これにより、シェード表示19が行われている位置が視野角制限されている利用者の正視位置となるため、正視位置からでないと視認できない。このため、利用者は取引開始時にシェード表示19の表示された位置が視認位置であることを一目で確認できる。よって、このシェード表示19が利用者と対応する接客対応位置となり、利用者に対する視認位置をガイドする視認位置案内手段としての役割を果たしている。
【0068】
図12はシェード表示19を行った暗証番号入力画面14を斜め側方から覗き見た様子を示している。この際、暗証番号入力用キーパッド15の映像は視野角が制限を受けて見えなくなっており、シェード表示19の位置のみ視認できる。したがって、シェード表示19の部分に暗証番号入力用キーパッド15が表示されており、視認角度が悪いと視認できていないことを利用者が認識できる。また、利用者はシェード表示19の存在により視野角制限ディスプレイ1には覗き見防止対策が施されていることを認識できる。
【0069】
なお、上述した視野角制限ディスプレイ1では、2系統の映像入力端子を持っており、それぞれへの入力が前面表示体2と後面表示体4へ表示される構成としたが、1系統の映像入力端子だけからなり、その入力が例えば座標で分離され、前面表示体2と後面表示体4へ表示されるように構成してもよい。
【0070】
また、図7及び図8では覗き見防止用に画面の一部、あるいは全体の映像の視野角が制限されていることを示すために一例として覗き見防止処理通知LED18を用いて説明したが、他の表示手段や音声案内等の通知手段であってもよい。
【0071】
上述のように、前面表示体と後面表示体とを単に組み合わせるものではなく、表示すべき情報を非機密情報と機密情報とに分け、これらを情報別に積層した2枚の表示体に分けて表示させ、このうち後面表示体に、機密にしたい情報を部分的に選択して引き出せるように中間に狭視野角フィルタを配設した構造である。このため、機密情報のみを正視位置の利用者に視認させるように制限して表示させることができ、汎用メッセージのような非機密情報は制限せずに常に明瞭に表示させることができる。これにより、常に利用者のみが全ての表示情報を的確に視認することができるというサービス性に優れ、しかも機密情報が盗まれるのを確実に防止することができるという高セキュリティのディスプレイを構築できる。
【0072】
なお、表示される映像の視野角を制限できる視野角制限ディスプレイ1を使用し、狭視野角フィルタ3を後面表示体4に備えない構成にしてもよい。
【0073】
この発明は上述の実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
ディスプレイを備えたATM、両替機、券売機などの自動取引する装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…視野角制限ディスプレイ
2…前面表示体
3…狭視野角フィルタ
4…後面表示体
6…外部制御部
12…機密情報
15…暗証番号入力用キーパッド
18…覗き見防止処理通知LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面側からの可視光を前面側に透過する特性を持ち、且つ外部からの第1の映像信号を表示する第1の表示体と、
外部からの第2の映像信号を表示する第2の表示体と、
透過する光の視野角を制限する狭視野角フィルタと、
を備え、
前記第1の表示体を前記狭視野角フィルタの前面側に配置し、
前記第2の表示体を前記狭視野角フィルタの後面側に配置して構成した
視野角制限ディスプレイ。
【請求項2】
前記表示体に表示される表示種別を、受け付けた情報に対応して切り替える表示種別切替手段を備えた
請求項1に記載の視野角制限ディスプレイ。
【請求項3】
前記第2の映像信号の有無を検知する第2映像信号検知手段を備え、
前記第2映像信号検知手段により前記第2の映像信号が入力されたことを検知したとき、前記第2の表示体に表示されている映像の視野角が制限されていることを利用者に通知する通知手段を備えた
請求項1または2に記載の視野角制限ディスプレイ。
【請求項4】
前記映像信号を表示するパネル面にタッチして入力させるタッチパネル入力部を備えた
請求項1、2または3に記載の視野角制限ディスプレイ。
【請求項5】
前記第1の表示体を半透過型の透明液晶パネルで構成した
請求項1〜4の何れか1項に記載の視野角制限ディスプレイ。
【請求項6】
前記第1の表示体を透明有機ELパネルで構成した
請求項1〜4の何れか1項に記載の視野角制限ディスプレイ。
【請求項7】
前記第2の表示体を、バックライトを備えた透過型の液晶パネルで構成した
請求項1〜6の何れか1項に記載の視野角制限ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−237612(P2011−237612A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109095(P2010−109095)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】