説明

親ダイ保護キャップ及びこれを使用した装填方法

【課題】親ダイへの装着を容易に行うことができる保護キャップを提供すると共に、機械装填を行う場合においても雷管の脚線又は導火管の損傷を十分に抑制することができる保護キャップ、保護キャップ付き親ダイ及び爆薬の装填方法を提供する。
【解決手段】保護キャップ付き親ダイ13は、開口部の内径(d)が親ダイ16の外径(D)以上で、かつ外径(d)が装薬孔径(t)以下である有底円筒状の保護キャップ15が、親ダイ16の雷管17側に被せて構成されている。保護キャップ付き親ダイ13は、雷管17に接続された脚線又は導火管18を保護する。保護キャップ15は、その開口部の内径(d)が底部の内径(d)より大きくなるように内周面をテーパ状に形成すると共に、保護キャップ15の底部の内径が親ダイの外径(D)に対して−5%から+10%の範囲にあることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルの発破掘削工事などにおいて、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬を手装填或いは装填パイプ又は装填ホースを介して装填する機械装填において、親ダイを装填するために用いられる保護キャップ、保護キャップ付き親ダイ及び爆薬の装填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、トンネルの発破掘削工事において、岩盤に穿孔された装薬孔に装填する雷管付き親ダイ(爆薬包)は、装着された雷管の脱落を防止するために、電気雷管では脚線で親ダイを縛る方法、導火管付き雷管では折り曲げた導火管部分を親ダイに粘着テープ等で固定する方法などが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、電気雷管の脚線や導火管付雷管の導火管が露出した状態であるために、これを装薬孔へ装填する際には、岩質、節理状態によっては荒れた装薬孔壁やズリ(爆砕された土砂)等と擦れて親ダイ先端部の脚線又は導火管が損傷を受け、内部の銅線が露出したり、導火管が損傷を受けて穴が開いたり、さらには脚線が装薬孔内で切断(断線)したり、導火管が切断したりして正常な発破を行うことができなくなる場合があった。特に、ANFOローダー等の爆薬を機械により装填する方法において装填パイプ又は装填ホースを介して装填を行う場合、特に装填パイプや装填ホースの先端部と孔壁やズリ等との間に脚線が挟まれることがあり、前記のような脚線の損傷又は断線が発生しやすくなる傾向があった。
【0004】
上記問題に対し、親ダイの引き裂き強度と脚線埋没度を特定の範囲とすることにより、装薬の際に親ダイ表面より脚線を突出させることがなく、発破孔内に散在するズリとの摩擦等で切れることや脚線の被覆樹脂が剥げ落ちることがない親ダイが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−360997号公報(第2頁〜第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この親ダイでは込め棒を使用した手装填においては有効であるものの、機械装填を行う場合にはその問題は満足できる程度にまで解決されていない。すなわち、装填パイプや装填ホースの先端部に親ダイを取り付けて、装薬孔内に装填する場合、装填パイプ又は装填ホースの先端部で脚線が孔壁部やズリとの間に挟み込まれるため、脚線の被覆及び導火管の損傷や断線の発生を依然として防止することができないという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、親ダイへの装着を容易に行うことができる保護キャップを提供すると共に、機械装填を行う場合においても雷管の脚線又は導火管の損傷を十分に抑制することができる保護キャップ、保護キャップ付き親ダイ及び爆薬の装填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、第1の発明の保護キャップ付き親ダイは、開口部の内径が親ダイの外径以上で、かつ外径が装薬孔径以下である有底筒状の保護キャップが、前記親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成され、前記保護キャップは、その開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の保護キャップは、第1の発明の保護キャップ付き親ダイに用いられる保護キャップであって、開口部の内径が親ダイの外径以上で、かつ外径が装薬孔径以下であり、雷管付き親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成され、前記保護キャップは、その開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の爆薬の装填方法は、爆薬を装薬孔へ機械装填する装填方法において、第1の発明の保護キャップ付き親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けて装薬孔へ装填すると共に、爆薬を装填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の保護キャップ付き親ダイにおいては、保護キャップが親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成されている。このため、保護キャップを用いることにより、機械装填を行う場合において損傷を受けやすい装薬孔への挿入側となる雷管の装着部近傍を保護し、かつ装填パイプ又は装填ホースの先端部と孔壁やズリにより脚線又は導火管が挟み込まれるのを防止できるため、雷管の脚線又は導火管の損傷を十分に抑制することができる。さらに、保護キャップは、その開口部の内径が親ダイの外径以上で、かつその外径が装薬孔径以下である有底筒状に形成されている。従って、親ダイへの保護キャップの装着を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、保護キャップはその開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されている。従って、親ダイへの保護キャップの装着を一層円滑に行うことができ、装着後には脱落し難くすることができる。
【0013】
第2の発明の保護キャップでは、開口部の内径が雷管付き親ダイの外径以上で、かつ外径が装薬孔径以下であり、雷管付き親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成され、前記保護キャップは、その開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されている。従って、係る保護キャップは親ダイに装着されて使用され、第1の発明の効果を発揮させることができる。
【0014】
第3の発明の爆薬の装填方法においては、親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けて装薬孔へ挿入し、爆薬を機械装填する装填方法において、保護キャップ付き親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けた状態で行うものである。親ダイには前記の効果を有する保護キャップが被せられていることから、機械装填を行う場合における雷管の脚線又は導火管の損傷を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】保護キャップ付き親ダイを装薬孔に装填する状態を模式的に示す要部断面図。
【図2】保護キャップを示す断面図。
【図3】保護キャップと装填パイプ又は装填ホースとの関係を示す断面図。
【図4】保護キャップにスリットを設けた保護キャップ付き親ダイを示す側面図。
【図5】保護キャップにスリット付き円孔を設けた保護キャップ付き親ダイを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は保護キャップ付き親ダイを装薬孔に装填する状態を模式的に示す要部断面図であり、この図1に示すように、岩盤11に穿孔された装薬孔12には、先端部に保護キャップ付き親ダイ13が取付けられた装填パイプ又は装填ホース14が挿入されている。保護キャップ15は、親ダイ16の雷管17側に被せて装着されている。親ダイ16の雷管17に接続されている脚線又は導火管18は、保護キャップ15と親ダイ16との間の隙間19を通り、保護キャップ15と装填パイプ又は装填ホース14の先端部との間の隙間20から外方へ取り出されている。つまり、脚線又は導火管18は、損傷を受けやすい、挿入側となる親ダイ16の先端部側において保護キャップ15により保護されている。なお、脚線又は導火管18の外径は、通常1〜3mm程度である。前記脚線は例えば銅線に絶縁被覆が施され、通電により点火薬を着火して雷管を起爆するもので、導火管は例えばプラスチックチューブ内に火薬が薄く塗布され、該火薬を着火し燃焼伝播して雷管を起爆するものである。
【0017】
保護キャップ15は有底円筒状に形成され、その内径〔開口部15c側の内径(d)及び底部15b側の内径(d)〕が親ダイ16の外径(D)以上で、かつ外径(d)が装薬孔径(t)以下に設定されている。装薬孔12は、所定の直径を有するビットにより岩盤11を削孔することによって形成されるため、装薬孔径(t)はビットの直径に相当する。但し、装薬孔12は岩盤の状態や節理等の影響を受け、均一な孔ではないため、多少の誤差が生ずる。装薬孔12への挿入の容易性及び脚線又は導火管18の損傷を避けるためには、保護キャップ15の外径(d)は装薬孔径(t)より5mm以上小さく設定することが好ましい。
【0018】
前記親ダイ16には爆薬が収容されるが、そのような爆薬としては、ダイナマイト、含水爆薬の紙又は合成樹脂によって包装されたカートリッジタイプの産業用爆薬が用いられる。保護キャップ15は有底筒状、通常有底円筒状に形成されるが、親ダイ16の雷管17側を保護できる有底筒状であれば、設計変更しても使用可能である。保護キャップ15の材質は樹脂などの軟質材料が好ましく、係る軟質材料としてはこの分野で通常用いられているゴムが最も好ましく、次いで樹脂が好ましい。ゴムとしては例えば各種の天然ゴム、合成ゴム等が用いられ、樹脂としてはポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂単体又はこれら複合材が用いられる。金属は、装薬孔12の孔壁やズリとの摩擦によって火花を発生させるおそれがあるため好ましくないが、そのようなおそれのない状態で一部に使用することもできる。
【0019】
軟質材料としての樹脂は、親ダイ16を装薬孔12に装填する際に加わる過度の力を吸収することができる。また、前記樹脂には必要に応じて、カーボンブラックや帯電防止剤を配合し、雷管17近傍における帯電を防止するように構成することもできる。これらの材料から保護キャップ15を製作する場合には、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、ディップ成形法等の成形法により常法に従って行われる。
【0020】
図2に示すように、保護キャップ15は、細長円筒状に形成された円筒部15aと、その一端に設けられた底部15bとより有底円筒状に形成されている。保護キャップ15は、親ダイ16への装着を容易にするために、その開口部15cの内径(d)が底部15bの内径(d)より大きくなるように内周面がテーパ部15dである。その場合、保護キャップ15の底部15bの内径(d)が親ダイ16の外径(D)に対して−5%から+10%の範囲に設定され、かつ保護キャップ15の開口部15cの内径(d)が親ダイ16の外径(D)よりも大きく設定される。すなわち、保護キャップ15の開口部15cの内径(d)>保護キャップ15の底部15bの内径(d)という関係式を満たすようになっている。このように構成することにより、保護キャップ15を親ダイ16へ装着しやすく、装着後には親ダイ16にしっかりと接触できるため保護キャップ15が容易に外れなくなる。保護キャップ15の底部15bの内径(d)が親ダイ16の外径(D)に対して−5%より小さい場合には、保護キャップ15を親ダイ16へ装着することが難しくなる。一方、+10%より大きい場合には、導火管付き雷管を使用したとしても隙間が大きくなり過ぎ、保護キャップ15を親ダイ16へ装着した後に保護キャップ15が親ダイ16から外れやすくなる。
【0021】
保護キャップ15の長さ(深さ)(L)は、保護キャップ15により親ダイ16を保護する機能を十分に発現させるために、親ダイ16の外径(D)の0.5〜3倍であることが好ましい。保護キャップ15の長さ(L)が親ダイ16の外径(D)の0.5倍未満である場合には、保護キャップ15が短くなり過ぎて親ダイ16から保護キャップ15が外れやすくなって好ましくない。その一方、3倍を超える場合には、保護キャップ15が長くなり過ぎて親ダイ16への保護キャップ15の取付けに手間を要する傾向を示す。
【0022】
また、保護キャップ15の外径(d)の最大部が装填パイプ又は装填ホース14の内径(s)よりも大きくなるように設計することが好ましい。具体的に説明すると、図3に示すように、保護キャップの外径(d)の最大値>装填パイプ又は装填ホース14の内径(s)の関係式を満足するようになっている。このような構成により、装填パイプ又は装填ホース14の先端に取り付けられた保護キャップ付き親ダイ13が装填パイプ又は装填ホース14内に入り込んで正常な装填作業を行うことができなくなる心配がないからである。
【0023】
さらに、図3に示すように、保護キャップ15の外径(d)の最大部が、装填パイプ又は装填ホース14の外径(s)よりも小さくなるように設計することが好ましい。すなわち、保護キャップ15の外径(d)の最大値≦装填パイプ又は装填ホース14の外径(s)の関係式が満たされるようになっている。このように構成することにより、装薬孔12内へ親ダイ16を装填する際に、装填パイプ又は装填ホース14から保護キャップ15の張り出しをなくすことができるため、装填作業を円滑に行うことができ、さらに親ダイ16に過度の負荷を与えることを回避することができる。
【0024】
加えて、保護キャップ15の開口部15c側が装填パイプ又は装填ホース14に円滑に装着されるように、保護キャップ15の開口部15cの外径(d)<装填パイプ又は装填ホースの先端部分の内径(s)の関係式を満たすように保護キャップ15の開口部15c側の外面に傾斜面15eを設けてもよい。この場合、保護キャップ15の開口部15cの外径(d)は、保護キャップ15の開口部15cの内径(d)に等しくなっている。このように構成することにより、装填パイプ又は装填ホース14への保護キャップ付き親ダイ13の取付けをより容易にすることができる。
【0025】
続いて、保護キャップ15の開口部15c側には、脚線又は導火管18を保護キャップ15の外方へ導くためのガイド部を設けることが望ましい。このガイド部の形状は脚線又は導火管18を外方へ導くことができればどのような形状であっても差し支えないが、例えば図4に示すようなガイド部としてのスリット21や、図5に示すようなガイド部としてのスリット付き円孔22とすることができる。図4に示すスリット21は、脚線又は導火管18が保護キャップ15の開口部15cの端縁から導入できる形状であれば、幅、切り込み深さは任意に設定することができる。例えば、保護キャップ15の材質がゴム等の弾性材質であれば、単なる切り込みだけでも十分に機能する。
【0026】
また、図5に示すスリット付き円孔22は、上記スリット21の先端部に円孔が開けられて形成されている。例えば、保護キャップ15の材質としてゴム等の弾性材を使用し、スリット21の切り込み幅は導入される脚線又は導火管18の直径よりも小さくし、円孔部の直径を導入される脚線又は導火管18の直径よりも大きく形成すればよい。この場合、スリット部への導入時はスリット部を押し広げるように導入して円孔部に導けば、脚線又は導火管18は保護キャップ15の端縁に戻されることがなく、外方へ導くことができ、その状態を保持することができる。
【0027】
このように構成することにより、装填パイプ又は装填ホース14の先端部と装薬孔12の孔壁間に脚線又は導火管18が挟み込まれることが回避でき、脚線又は導火管18の損傷をさらに抑制することができる。なお、図4及び図5の場合には、保護キャップ15は円筒部15aの内周にテーパ部15dが形成されていない有底円筒状に形成され、保護キャップ15の内周面に親ダイ16の外周面が密着されている。
【0028】
次に、保護キャップ付き親ダイ13の装薬孔12への装填方法について説明すると、まず前述した保護キャップ15を親ダイ16に装着し、保護キャップ付き親ダイ13を形成する。このとき、保護キャップ15は開口部の内径(d)が親ダイ16の外径(D)以上で、かつ外径(d)が装薬孔径(t)以下に設定されているため、親ダイ16への装着が容易であると共に、装薬孔12への挿入も容易に行われる。次いで、保護キャップ付き親ダイ13を装填パイプ又は装填ホース14の先端に取り付ける。このとき、保護キャップ15の外径(d)の最大部が装填パイプ又は装填ホース14の内径(s)よりも大きく形成され、かつ装填パイプ又は装填ホース14の外径(s)よりも小さく形成されることにより、装填パイプ又は装填ホース14の先端への保護キャップ付き親ダイ13の取り付けを円滑に行うことができる。その後、保護キャップ付き親ダイ13が取り付けられた装填パイプ又は装填ホース14が、装薬孔12へ挿入され、その孔底部に装薬された後、増ダイとなる爆薬が装薬孔12へ機械装填される。
【0029】
この場合の機械装填は、例えばANFO爆薬(硝安油剤爆薬)等の粒状爆薬を貯留ホッパーに入れ、これを装填パイプ又は装填ホース14を通して装薬孔12内に空気圧送する方式や、カートリッジタイプの爆薬を装填パイプ又は装填ホース14を介して装薬孔12内に空気圧送する方式や、流動性のあるバルク状の含水爆薬をモーノポンプ等のポンプを使用し、装填パイプ又は装填ホース14を介して装薬孔12内に直接装填する方式等により行われる。このように、装薬孔12への爆薬の装填は、機械装填により行うことが好ましいが、手装填により行うことも可能である。
【0030】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の保護キャップ付き親ダイ13においては、保護キャップ15が親ダイ16の雷管17側に被せて装着され、脚線又は導火管18を保護するように構成されている。親ダイ16を保護キャップ15で覆うことにより、機械装填を行う場合における脚線又は導火管18が装薬孔12の孔壁やズリ等に摺れて損傷を受けることを十分に抑制することができる。さらに、保護キャップ15は、その開口部の内径(d)が親ダイ16の外径(D)以上で、かつその外径(d)が装薬孔径(t)以下に設定されている。従って、親ダイ16への保護キャップ15の装着を容易に行うことができる。
【0031】
・ 前記保護キャップ15はその開口部15cの内径(d)が底部15bの内径(d)より大きくなるように内周面がテーパ部15dに形成される。同時に、保護キャップ15の底部15bの内径(d)が親ダイ16の外径(D)に対して−5%から+10%の範囲に設定される。この場合、親ダイ16への保護キャップ15の装着を一層円滑に行うことができる。
【0032】
・ 保護キャップ15の開口部15c側に前記脚線又は導火管18を保護キャップ15の外方へ導くためのスリット21、スリット付き円孔22等のガイド部が設けられることにより、脚線又は導火管18の損傷を効果的に抑制することができる。
【0033】
・ また、保護キャップ15では、開口部の内径(d)が親ダイ16の外径(D)以上で、かつ外径(d)が装薬孔径(t)以下であり、親ダイ16の雷管17側に被せて装着され、脚線又は導火管18を保護するように構成される。この場合、保護キャップ15は親ダイ16に装着されて使用され、上記保護キャップ付き親ダイ13の効果を発揮させることができる。
【0034】
・ 保護キャップ付き親ダイ13の装填方法においては、親ダイ16を装填パイプ又は装填ホース14の先端に取り付けて装薬孔12へ挿入し、爆薬を機械装填する装填方法において、保護キャップ付き親ダイ13を装填パイプ又は装填ホース14の先端に取り付けた状態で行うものである。この装填方法では、親ダイ16に前記の効果を有する保護キャップ15が被せられていることから、機械装填の際における脚線又は導火管18の損傷を抑制することができる。従って、この装填方法は、トンネルの発破掘削工事等の土木建設分野、採石、採鉱等の鉱工業分野、灌漑、開墾等の農林分野などにおいて好適に利用される。
【実施例】
【0035】
以下に、参考例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、脚線の損傷有無の測定は次の方法で行った。
(脚線の損傷有無の測定)
装填パイプ〔外径(s)が38mm、内径(s)が35mm〕の先端に電気雷管を備えた親ダイ(外径Dが30mm、質量150gの薬包を使用)16を取付け、切羽に削孔した装薬孔〔直径45mmのビットにて深さ1.5m削孔、装薬孔径(t)は実質上45mm〕12の最深部まで差し込み、雷管17付きの親ダイ16を装薬孔12に装填した。装填後には親ダイ16を回収し、親ダイ16に取付けられた電気雷管の導通測定及び脚線の目視観察により脚線の損傷有無の測定を行った。測定結果を次の2段階で評価した。
【0036】
○印:電気雷管の脚線被覆に損傷がない、又は損傷しているが内部の銅線が露出していない状態。
×印:脚線被覆が損傷して内部の銅線が露出している、又は脚線が切断された状態。
(参考例1)
保護キャップ15として、内径(d、d)の最小値が30mm、外径(d)の最大値が36mm、長さ(L)が50mmの天然ゴム製で、有底円筒状のものを使用した。そして、保護キャップ15を、電気雷管を備えた親ダイ16に装着してから、脚線の損傷有無の測定を行った。その結果、100回中の98本が○であり、残り2本が×であった(断線の発生はなく、また使用しても問題のない程度の損傷であった)。
(参考例2)
参考例1に記載の保護キャップ15の開口部15cに長さ10mmのガイド部としてのスリット21を設けた保護キャップ15を親ダイ16に装着し、装着後に脚線を前記スリット21から取出し、次いで前記脚線の損傷有無の測定を行った。その結果、100回中の100本が○であった。
(比較例1)
前記保護キャップ15を用いることなく、爆薬包に電気雷管を装着した後、装着側から5cmの位置で脚線による縛り部を形成して親ダイを作製した。そして、前記脚線の損傷有無の測定を行ったところ、100回中の52本が○であり、残り48本が×(3本が片方又は両方の銅線が切断状態)であった。
【0037】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 保護キャップ15の円筒部15aの内周面を凹凸状に形成し、親ダイ16の外周面との係合力を高めるように構成することもできる。
【0038】
・ 前記脚線又は導火管18を保護キャップ15の外方へ導くためのガイド部を複数箇所に設けることも可能である。
・ 前記スリット付き円孔22を、スリットのない円孔とすることも可能である。
【0039】
・ 保護キャップ15の円筒部15aや底部15bの内面に、脚線又は導火管18を案内する案内溝を形成することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0040】
・ 前記保護キャップは、有底円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイ。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、保護キャップの機能を向上させることができる。
【0041】
・ 前記保護キャップは、軟質材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイ。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、親ダイへの保護キャップの取付けを一層容易に行うことができる。
【0042】
・ 前記保護キャップの長さは、親ダイの外径の0.5〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイ。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、保護キャップにより親ダイを保護する機能を十分に発揮させることができる。
【0043】
・ 前記保護キャップの外径の最大部が装填パイプ又は装填ホースの内径よりも大きく形成され、かつ装填パイプ又は装填ホースの外径よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイ。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、保護キャップ付き親ダイの装薬孔への装填作業を円滑に行うことができると共に、親ダイに過度の負荷を与えることを回避することができる。
【0044】
・ 前記保護キャップの開口部側に前記脚線又は導火管を保護キャップの外方へ導くためのガイド部を設け、該ガイド部がスリット又は孔であることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイ。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、より損傷を受けやすい装薬孔への挿入側となる雷管の装着部近傍を保護し、かつ装填パイプ又は装填ホースの先端部と孔壁やズリにより脚線又は導火管が挟み込まれるのを防止できるため、雷管の脚線又は導火管の損傷を一層効果的に抑制することができる。さらに、ガイド部によって脚線又は導火管が装填パイプ又は装填ホースと保護キャップとの間に挟まれることも抑制することができる。加えて、ガイド部を容易に形成することができると共に、脚線又は導火管を保護キャップの外方へ容易に導くことができる。
【0045】
・ 親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けて装薬孔へ挿入し、爆薬を機械装填する装填方法において、請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けた状態で行うことを特徴とする保護キャップ付き親ダイの装填方法。この方法によれば、親ダイには前記の効果を有する保護キャップが被せられていることから、機械装填を行う場合における雷管の脚線又は導火管の損傷を十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
12…装薬孔、13…保護キャップ付き親ダイ、14…装填パイプ又は装填ホース、15…保護キャップ、15b…底部、15c…開口部、15d…テーパ部、16…親ダイ、17…雷管、18…脚線又は導火管、d1…保護キャップの開口部の内径、d2…保護キャップの底部の内径、d3…保護キャップの外径、D…親ダイの外径、t…装薬孔径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の内径が親ダイの外径以上で、かつ外径が装薬孔径以下である有底筒状の保護キャップが、前記親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成され、前記保護キャップは、その開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されていることを特徴とする保護キャップ付き親ダイ。
【請求項2】
請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイに用いられる保護キャップであって、開口部の内径が親ダイの外径以上で、かつ外径が装薬孔径以下であり、雷管付き親ダイの雷管側に被せて装着され、雷管に接続されている脚線又は導火管を保護するように構成され、前記保護キャップは、その開口部の内径が底部の内径より大きくなるように内周面がテーパ状に形成されると共に、保護キャップの底部の内径が親ダイの外径に対して−5%から+10%の範囲に設定されていることを特徴とする保護キャップ。
【請求項3】
爆薬を装薬孔へ機械装填する装填方法において、請求項1に記載の保護キャップ付き親ダイを装填パイプ又は装填ホースの先端に取り付けて装薬孔へ装填すると共に、爆薬を装填することを特徴とする爆薬の装填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174697(P2011−174697A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86175(P2011−86175)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2007−74499(P2007−74499)の分割
【原出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)