説明

親水性を高めるためのシリカコーティング

a)pHが7.5未満である、平均粒径が40nm以下のシリカナノ粒子の水性分散液、b)アルコキシシランオリゴマー、c)シランカップリング剤、及び、d)場合により金属β−ジケトン錯化剤を含むコーティング組成物を提供する。本組成物を使用してコーティングされた物品を調製することが可能であり、そのコーティングは厚さがほぼ均一であり、高い耐久性で基材に接着し、基材に親水性及び/又は反射防止表面特性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、特に熱可塑性又は熱硬化性プラスチック、架橋ポリマー塗料及びコーティング、並びにセラミック又はガラスなどの基材を処理するために使用することができるシリカナノ粒子コーティング組成物に関する。本コーティング組成物は、基材に親水性、ウォーターシーティング特性、自己乾燥特性、防汚性を与え、洗浄を容易にする目的で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
親水性又は水濡れ性の表面を有する物品は、多くの用途において望ましい。多くの環境において、埃、汚れ、油及び公害物質は、乾燥状態又は雨水に懸濁された状態から車両、道路標識、建物などの物体に付着しやすい一般的な汚染物質である。親水性の保護コーティングは、こうした汚染を低減又は防止して洗剤や石鹸を用いることなく容易に洗浄できる基材を与えることができる。更に、親水性表面は降雨又は水しぶきの形態の水を効率的に薄く広げることにより、こうした表面の洗浄及び乾燥を容易とするものである。これにより、汚れが妨げられ、個々の水滴の乾燥時における環境中の埃若しくは汚染物質又は硬水のミネラルの濃縮によって生じる水染みの形成が防止されることによって、より美的に好ましくきれいな表面が得られる。更に、親水性表面は、大気中の水分が凝結して曇りを生じる傾向を低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塗装された車両の仕上げを保護するために使用されるもののような一般的な表面保護剤は、通常、極めて疎水性の高い表面、すなわち、表面エネルギーが低く、水接触角が大きく、「水ビーディング」として知られる一般的に観察される挙動を示す表面を与える。これにより、水が薄く拡がって自己乾燥するのではなく、個別の水滴を形成する傾向が高まることによって水染みが形成されるため望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、pHが7.5未満である、平均粒径が40nm以下のシリカナノ粒子の水性分散液、アルコキシシランオリゴマー、シランカップリング剤、及び場合により金属β−ジケトン錯化剤を含むコーティング組成物を提供する。好ましくは、コーティング組成物はpKaが5未満、好ましくは2.5未満、最も好ましくは1未満の酸を加えることにより、pHが5未満である。
【0005】
本発明によれば、比較的耐久性があり、基材表面自体よりも汚染に対する耐性があり、容易に洗浄することができる保護コーティングが基材上に与えられる。本発明は一実施形態において、基材、好ましくは硬質基材と、基材上に成膜された単層よりも大きな厚さ(通常、厚さは15オングストロームよりも大きい)を有するコーティングとを含むコーティングされた物品の調製に使用するための方法及び組成物を提供するものである。コーティング材料は、通常、物品の外観及び光学特性に悪影響を及ぼさない量で存在する。
【0006】
本開示は更に、シリカナノ粒子含有コーティングを有する基材、特にポリマー基材、又は単層若しくは多層ポリマーコーティングを有する金属又はポリマー基材を含むコーティングされた物品を提供する。このコーティングは、架橋されたケイ酸塩マトリクス中で結合したシリカナノ粒子の連続的なコーティングを含み、粒子は40nm以下の平均一次粒径を有する。コーティングはほぼ均一な厚さを有し、基材に強固に接着される。
【0007】
親水性の表面処理は公知のものであるが、例えば車両及び道路表標識などの外面の環境で見られる過酷な条件ではその多くは充分に機能しない。更に、安全な塗布、乾燥、及び硬化を行うためには、こうした処理は、焼成、放射線又は他の能動的硬化活性化を行わずに室温で硬化することが望ましい。こうしたコーティングは、その目的と塗布方法に応じて揮発性有機成分含有量(VOC)が組成物の約20重量%よりも多い製品を禁止した環境規制(米国環境保護庁(EPA)連邦規則集第40巻51.100条(40 C.F.R.51.100)他)に適合するために、水性のものであることが望ましい。しかしながら、公知の環境硬化組成物、特にシロキサン化合物の凝集反応に基づいたものは水の存在下及びほとんどのpHの値で不安定であり、ゲルを形成するか沈殿する傾向があり、低品質のコーティングとなってしまう。
【0008】
一般的に、車両の塗装仕上げ、道路標識、及び他の外面用途などの処理しようとする基材は、疎水性又は表面エネルギーの低い表面を有している。有機溶媒の含有量が低い水性組成物のコーティングは、コーティング配合物が広がらずに疎水性表面を濡らすことができないために、疎水性表面上に用いることは困難である。水性コーティング配合物による適当な濡れを与え、配合物を広げるために界面活性剤又は湿潤剤を使用すると、乾燥したコーティングフィルムが曇り、基材への接着力が低下して耐久性が大幅に低下してしまう。
【0009】
親水性コーティング、特にシリカベースのコーティングの別の問題点は、コロイドシリカ及びコロイドシリカフィルムの表面の化学的性質、反応の化学的性質及び溶液の化学的性質が極めて複雑であることである。例えば、シリカ表面とイオンとの相互作用については広く研究が行われているにもかかわらず、完全な理解はなされていない(Iler,「The Chemistry of Silica」,John Wiley,1979,ページ665を参照)。こうした難点にもかかわらず、以下に述べる本発明によれば、耐久性が向上したシリカベースの水展開フィルムが提供されるものである。
【0010】
本願に述べるコーティング組成物は、疎水性基材、特にポリマー基材を容易に濡らし、基材上に広がりうるものである。乾燥したコーティングは、様々な基材、特にポリマー基材によく接着し、こうした基材に耐久性のある親水性表面を与えることができる。すなわち、コーティングされていない状態では水接触角が50°よりも大きくなるような基材であっても約50°未満の水接触角を示すコーティング表面を与えることができる。これらの組成物から得られるコーティングは、ガラス、ポリマー及び塗装基材といった基材に耐水性かつ機械的耐久性を有する親水性表面を更に与えることができる。更に、このコーティングは保護層を与えるとともに道路の埃、塵、油分及び他の汚れなどの有機及び無機汚染物質の洗浄による除去が可能であり、更に花粉などの特定の汚染物質の誘引性を抑制又は逆転させうるものである。コーティングの親水性により水が薄く広がってその上を覆った汚れや他の汚染物質を押しのけ、更に汚染物質の接着を妨げうる。
【0011】
本コーティングは更に、静電気が蓄積しやすいポリマーフィルム及びシート材料に防曇性及び帯電防止性を与え、フィルム及びシート材料などのポリマー材料に耐摩耗性及びスリップ性を与えることにより取り扱い性を向上させることができる。更に、こうしたコーティングは、こうした処理表面上で水が乾いた場合に見られる水染みを低減又は防止することができる。
【0012】
本発明の方法は少量の溶媒を含んでもよく、基材上にコーティングするために界面活性剤を必要としないため、有害性が低く、揮発性有機化合物(VOC)の使用に関する確立された規制の範囲内である。他の利点としては、より均一なコーティング、基材に対するより高い接着性、コーティングのより高い耐久性、より高い反射防止性及び高い透過性が挙げられ、汚染物質を洗い流すことができる洗浄が容易な親水性の表面が与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、pHが7.5未満(好ましくは5未満、より好ましくは4未満)である、平均粒径が40nm以下のシリカナノ粒子の水性分散液、アルコキシシランオリゴマー、シランカップリング剤、及び場合により金属β−ジカルボニル錯化剤を含むコーティング組成物を提供する。好ましくは、本組成物はpKaが5未満、好ましくは2.5未満、最も好ましくは1未満の酸によって酸性化されていることが好ましい。特定の実施形態では、コーティング組成物は、アルコキシシランオリゴマーとシランカップリング剤との反応生成物を含む。
【0014】
本開示は、基材にコーティングを施す方法であって、コーティング組成物で基材をコーティングする工程と、コーティングを乾燥させる工程とを含む方法を更に提供する。本コーティング組成物から得られるコーティングは、親水性コーティングを与えるうえで特に適している。こうしたコーティングにより、水又は水分が処理された基材表面を濡らし、基材表面上に広がる。このため、本コーティングにより、汚染物質をほとんど又はまったく擦らずに流水によって洗い流すことができる、洗浄が容易な、又は自己洗浄性の表面が与えられる。こうしたコーティングは、ガラス、塗装及び透明コーティング表面、並びに剛性又はポリマーシートなどの基材に親水性を与えることができる自動車、船舶及び家庭用の用途において望ましいものである。こうした用途には、自動車の車体パネル、フロントガラス、ボートの船体及びデッキの表面、可撓性及び剛性のポリマー製自動車及び船舶窓、陶磁器の表面、並びにカウンタートップが含まれる。
【0015】
本発明のコーティング組成物は、約7.5よりも低いpHの値で容易に調製して塗布することが可能であるが、より低いpH、特に約5よりも低いpH、好ましくは約4よりも低いpH、より好ましくは約3.5よりも低いpHのコーティング組成物は、疎水性の基材表面を濡らして基材表面上に広がることが見出されている。実質上水性である本コーティング配合物は、保存時に高い安定性、すなわち粒子の凝集及び曇りに対する耐性を示す。
【0016】
理論に拘泥せずに言えば、改質されていないシリカナノ粒子を、反応性のアルコキシシランオリゴマー、シランカップリング剤、及び場合により金属β−ジケトン錯化剤とともに含むコーティング組成物は、液体に懸濁した状態でほぼ直線状で部分的に網目状の構造を形成しうるものと考えられる。こうした構造は、疎水性表面を濡らして疎水性表面上に広がるコーティングの性質を同時にゲル化を引き起こすことなく高めることができる。
【0017】
しかしながら、こうしたその場での網目構造の形成によって、コーティング溶液中の沈殿粒子の凝集、ゲル化及び形成が引き起こされる可能性があり、これにより濡れ性が低下して、粒子で充填されたコーティングが形成されることから望ましくない。予期せざることに、pHの低い配合物を使用することによって、親水性を保ちながらも凝集体、ゲル、又は沈殿粒子の形成が抑制される傾向が認められた。得られるコーティングは、多くの実施形態において耐久性及び外観が向上する。特に、こうしたコーティングの多くの実施形態では、コーティングに内在する光学的干渉及びコーティング表面の不規則な高さによって生じる干渉縞又は虹効果として知られる光学的欠陥がない。これは、固形分が約1.5%未満の希釈溶液濃度においても観察される。
【0018】
本組成物において使用されるシリカナノ粒子は、平均粒径が40nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下であるサブミクロンサイズのシリカナノ粒子の水性又は水性有機溶媒混合物中への分散液である。平均粒径は、透過型電子顕微鏡によって測定することができる。
【0019】
特定の実施形態では、シリカナノ粒子は表面改質されないものである。他の実施形態では、表面改質されたナノ粒子によって分散液の安定性を高めることができる。表面改質は、改質剤の性質及び分子の大きさに応じて粒子間の立体効果及び/又は静電安定効果を高めることによって、粒子同士が互いに結合してより大きく不安定な凝集体を形成することを防止する。こうした場合、表面改質されたナノ粒子の使用は、溶液の低いpHと相乗的に作用することでより安定した分散配合物を与えるか、あるいは分散配合物が安定なpHの範囲を広げることができる。これにより、ほぼ中性のpHレベルで生成物を用いることが可能となり、使用者に対する刺激性又は危険性が低減される。
【0020】
20nm以下のより小さなナノ粒子は、酸性化された場合により良好なコーティングを一般に与える。より小さなナノ粒子は、干渉縞、曇り、及びコーティングの厚さの変動に関して向上した外観、コーティングされた基材への高い接着性又は耐久性、並びに水接触角がより小さい点で高い性能を有するコーティングを与える。更にナノ粒子は一般に、約150m/gよりも大きく、好ましくは200m/gよりも大きく、より好ましくは400m/gよりも大きな表面積を有する。粒子は、狭い粒度分布を有する、すなわち多分散度が2.0以下、好ましくは1.5以下であることが好ましい。
【0021】
水性媒質(ゾル)に加えられた無機シリカナノ粒子は、当該技術分野では周知のものであり、市販されている。水又は水性アルコール溶液中のシリカゾルは、LUDOX(イー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー社(E.I. du Pont de Nemours and Co.,Inc.)(米国デラウェア州ウィルミントン)により製造される)、NYACOL(ナイアコル社(Nyacol Co.)(マサチューセッツ州アッシュランド)より販売される)、又はNALCO(ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)米国イリノイ州ナパービルにより製造)などの商品名で市販されている。有用なシリカゾルの1つとして、平均粒径が5nm、pH 10.5、及び固形分が15重量%のシリカゾルとして販売されるNALCO 2326がある。他の市販のシリカナノ粒子としては、ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)より市販される「NALCO 1115」及び「NALCO 1130」、レメット社(Remet Corp.)(米国ニューヨーク州ウティカ)より市販される「Remasol SP30」、並びにイー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー社(E.I.du Pont de Nemours and Co.,Inc.)より市販される「LUDOX SM」が挙げられる。
【0022】
非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)を使用することも可能であり、これは液相が有機溶媒又は水性有機溶媒であるシリカゾル分散液である。本発明の実施においては、シリカゾルはその液相が水性溶媒又は水性有機溶媒と相溶性を有するようなものが選択される。しかしながら、ナトリウムで安定化させたシリカナノ粒子では、エタノールなどの有機溶媒で希釈するのに先立ってまず酸性化しなければならないことが観察されている。酸性化に先立って希釈を行うと均一性が低い、又は不均一なコーティングを生じる場合がある。アンモニウムで安定化させたナノ粒子では、一般に希釈及び酸性化をいずれの順序で行ってもよい。
【0023】
必要に応じて、より大きなシリカ粒子を、選択された基材上への組成物のコーティング性を不要に低下させず、かつ透過性及び/又は親水性を低下させない量で添加してもよい。こうしたコーティングでは、シリカ粒子の粒径は2峰性又は多峰性分布を有する。これらの更なるシリカ粒子は、一般に、40〜100nm、好ましくは50〜100nmの平均粒径を有し、40nm未満のシリカナノ粒子の重量に対して0.2:99.8〜99.8:0.2の比で用いることができる。より大きな粒子は、好ましくは1:9〜9:1の比で用いられる。一般に、組成物中のシリカ粒子の全重量(すなわち、40nm未満のシリカ粒子とそれよりも大きなシリカ粒子との合計)は、全固形物に対して約30〜95重量%、好ましくは50〜75重量%である。
【0024】
特定の実施形態では、シリカナノ粒子は表面改質剤によって表面改質することができる。表面改質されたシリカ粒子は、粒子の表面に結合した表面基を有する。表面基は粒子の疎水性又は親水性を改変するが、親水性であることが好ましい。表面基は統計学的に平均化された、ランダムに表面改質された粒子を与えるように選択することができる。特定の実施形態では、表面基は粒子の表面に単層、好ましくは連続的な単層が形成されるような充分な量で存在する。一般に、残留する非修飾のシラノール表面基を介してケイ酸塩マトリクスにナノ粒子が結合できるためには、存在する表面の官能基(すなわち、シラノール基)が完全に修飾されないことが望ましい。
【0025】
ナノ粒子の表面を改質するには、例えばナノ粒子に表面改質剤(例えば、粉末又はコロイド分散液の形態で)を加えて、表面改質剤をナノ粒子と反応させるなどの多くの方法がある。他の有用な表面改質方法は、例えば、米国特許第2,801,185号(アイラ(Iler))及び同第4,522,958号(ダス(Das)ら)に述べられている。表面修飾基は表面改質剤から誘導することができる。大まかに述べると、表面改質剤は式A−Bとして表わすことができ、式中、A基は粒子の表面(すなわち、シラノール基)に結合することが可能であり、B基は反応系中の他の要素(例えば、基材)と反応しない相溶化基である。相溶化基は、粒子の極性を比較的高く、比較的低く、又は比較的非極性とするように選択することができる。相溶化基は、酸基(カルボキシレート基、スルホネート基、及びホスホネート基など)、アンモニウム基若しくはポリ(オキシエチレン)基、又は水酸基などの非塩基性の親水性基であることが好ましい。
【0026】
このような、場合に応じて用いられる表面改質剤は、シリカナノ粒子の表面官能基(Si−OH基)の0〜100%、一般には1〜90%(存在する場合)が官能化されるような量で使用することができる。官能基の数は、所定量のナノ粒子を、利用可能な反応部位がすべて表面改質剤によって官能化されるように過剰量の表面改質剤と反応させることによって実験的に決定される。この結果から、より低い官能化率を計算することができる。一般に表面改質剤は、無機ナノ粒子の重量に対して同じ重量の表面改質剤の最大で2倍の重量が与えられるだけの充分な量で使用される。使用される場合、無機ナノ粒子に対する表面改質剤の重量比は2:1〜1:10であることが好ましい。表面改質されたシリカナノ粒子が望ましい場合、コーティング組成物に添加する前にナノ粒子を改質することが好ましい。
【0027】
コーティング組成物は、pKa(H0)が5未満、好ましくは2.5未満、最も好ましくは1未満の酸で所望のpHレベルにまで酸性化することができる。有用な酸としては有機及び無機酸のいずれもが含まれ、その例としては、蓚酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHOSOOHが挙げられる。最も好ましい酸としては、HCl、HNO、HSO、及びHPOが挙げられる特定の実施形態では、有機及び無機酸の混合物が与えられることが望ましい。特定の実施形態では、pKaが5よりも小さい(好ましくは2.5未満、最も好ましくは1未満)の酸と、pKaが5よりも大きい少量の他の酸との混合物を使用することもできる。pKaが5よりも大きい弱酸を使用した場合には、透過性、洗浄性及び/又は耐久性などの所望の性質を有する均一なコーティングが得られないことが分かっている。特に、弱酸を含むコーティング組成物、又は塩基性のコーティング組成物は、一般的にポリマー基材の表面上で液滴を形成する。
【0028】
多くの実施形態において、コーティング組成物はpHを5未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満とするだけの充分な酸を一般に含んでいる。特定の実施形態において、コーティング組成物のpHは、pHを5未満に低下させた後でpH 5〜7.5に調節することができることが分かっている。これにより、低いpHに対して感受性を有する材料をコーティングすることが可能となる。
【0029】
コーティング組成物は、アルコキシシランオリゴマーを更に含む。より詳細には、こうしたアルコキシシランオリゴマーは、1以上のテトラアルコキシシランと、場合により1以上のトリアルコキシシランと、場合により1以上のジアルコキシシランとの完全又は部分的に加水分解された縮合反応生成物である。こうしたアルコキシシランオリゴマーは、下記一般式で表わされる。
【0030】
【化1】

【0031】
[式中、
各Rは、個別にH、C〜Cのアルキル、又はアルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオン又はアンモニウムカチオンであり、
各Rは、C〜Cアルキルであり、
xは2〜100、好ましくは3〜15であり、
y及びzは0であってよく、
xはy+zよりも大きく、
x+y+zは2〜100、好ましくは3〜15である。]
上記のアルコキシシランオリゴマーに関し、Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムのカチオンから選択することができるが、組成物の配合の際に酸を添加することによりこうしたカチオンがR=Hに変換される点は理解されるであろう。更に、当業者であれば、こうしたアルコキシシランオリゴマーは、直鎖生成物と分枝鎖生成物との複雑な混合物である点も理解されるであろう。こうしたアルコキシシランオリゴマーは、式Si(O)(ORの単位セル(式中、各Rは個別にH、C〜Cアルキル、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はアンモニウムカチオンであり、oは0よりも大きく1.2よりも小さく、pは1.4よりも大きく4よりも小さい)によって表される点も理解されるであろう。
【0032】
式Iのアルコキシシランオリゴマーは一般に、トリアルコキシシランと、場合により1以上のテトラアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシランとの加水分解縮合によって調製することができる。その有用な方法が、それぞれ本願に援用する米国特許出願公開第2007/0051274号(サイトウ(Saito)ら)、米国特許第6,258,969号(サワイ(Sawai)ら)、及び同第6,599,976号(コバヤシ(Kobayashi)ら)に述べられている。式Iのオリゴマー性アルコキシシランは、テトラメトキシシランの部分加水分解/縮合生成物であるMKCシリケートMS51(商標)及びMKCシリケートMS56(商標)、並びにテトラブトキシシランの部分加水分解/縮合生成物であるMKCシリケートBTS(商標)として三菱化学株式会社より市販されており、テトラエトキシシランの部分加水分解/縮合生成物であるエチルシリケートES40(商標)は、コルコート株式会社(日本)より市販されている。当業者であれば、繰り返し単位の特性及び分子量といったオリゴマーの正確な性質は、本願に引用する商業的な例に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく大幅に変わりうる点は理解されるであろう。例えば、分子量のより大きい、又はより小さいアルコキシシランは、異なるテクスチャー及び表面エネルギーを有する表面上へのコーティングを改善しうるものであり、その際の正確なオリゴマーは、塗布性能及び乾燥したコーティングの特性を最適化するように選択される。
【0033】
オリゴマー性アルコキシシランは通常、全乾燥コーティング組成物の1〜55重量%、好ましくは全乾燥コーティング組成物の10〜45重量%の濃度で組成物に添加される。
【0034】
コーティング組成物は、下式のシランカップリング剤を更に含む。
【0035】
[(Y)−R−Si−(OR(R4−(b+d) II
[式中、
Yは、所定の基材の表面に結合又は会合しうる、例えばアルキル又はアリール基などの有機官能基又は非官能性ヒドロカルビル基から選択することが可能な非塩基性基であり、Rは、共有結合又は2価若しくは3価の炭化水素架橋基であり、Rは個別に、酸素、窒素及び/又は硫黄原子によって利用可能な位置が場合により置換された1〜8個の炭素原子を有するアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、
cは1又は2であり、bは1〜3であり、dは1又は2である。]好ましくはbは3であり、cは1であり、dは1であり、かつ(b+d)≦4である。
【0036】
式IIの非塩基性のY基は、例えば縮合、付加、又は置換反応により共有結合を形成することによって基材の表面と結合又は会合するか、あるいはイオン結合又はファンデルワールス力によって基材と会合しうるものである。より詳細には、Rは、共有結合、又は−O−、−C(O)、−S−、−SO−及び−NR−基(並びに−C(O)−O−などのこれらの組み合わせ)(ただしRは水素又はC〜Cのアルキル基)からなる群から選択される1〜5個の部分を場合により主鎖に含む、アルキレン、アリーレン及びこれらの組み合わせを含む、約1〜20個の炭素原子を有する2価若しくは3価の炭化水素架橋基である。別の実施形態では、Rは、式−(OCHCH−)(OCHCH(R))−のポリ(アルキレンオキシド)部分であり、式中、nは少なくとも5であり、mは0であってよく、好ましくは少なくとも1であり、n:mのモル比は少なくとも2:1(好ましくは少なくとも3:1)である。式IIの「c」が1である場合、Rは共有結合又は2価の炭化水素架橋基であり、「c」が2である場合、Rは3価の架橋基である点は理解されるであろう。好ましくは、Rは2価のアルキレンであり、cは1である。好ましくはRはC〜Cのアルキルであり、bは1〜3である。
【0037】
特定の実施形態では、Yは非塩基性の有機官能基Yであり、エポキシ基(グリシジルなど)、酸基、エステル基、水酸基及びメルカプト基から選択することができる。有用なエポキシ官能シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、及び(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン)が挙げられる。有用なメルカプト官能シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0038】
別の実施形態では、Yはエチレン性不飽和基Yであり、ビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、及び(メタ)アクリロイルなどのエチレン性不飽和重合性基から選択することができる。エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジエチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペンオキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくはYはビニル、アリル、ビニルオキシ、又はアリルオキシである。
【0039】
別の実施形態では、Yは、アルキル基及びアリール基から選択される非官能性のヒドロカルビル基Yである。有用な非官能性シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシランが挙げられる。
【0040】
シランカップリング剤は、例えば従来の方法によって製造するか、あるいは例えばジェレスト社(Gelest, Inc.)(米国ペンシルベニア州モリスビル)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials)(米国コネチカット州ウィルトン)及びユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ社(United Chemical Technologies, Inc.)(米国ペンシルベニア州ホーシャム)などの販売業者から購入することができる。更なる参照文献として、E.P.Pleuddeman,「Silane Coupling Agents」,Plenum Press:New York,1982,ページ20、並びにバン・オイジェー(Van Ooij)らに付与された米国特許第5,204,219号、ストフコ(Stofko)らに付与された米国特許第5,464,900号、及びビルカジ(Bilkadi)に付与された米国特許第5,639,546号、及び欧州特許出願第0,372,756 A2号も参照されたい。
【0041】
シランカップリング剤の量は、コーティング組成物の全添加固形分に対して一般的に0.25〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲である。
【0042】
コーティング組成物は、金属及び1,3−ジオキソプロピレン基を有する金属β−ジケトン錯化剤を更に含んでもよい。β−ジケトン錯化剤は、1以上のシリカナノ粒子、アルコキシシランオリゴマー、及びシランカップリング剤の間の結合の形成において加水分解触媒として機能するものと考えられ、シラノール基の脱プロトン化を促進することによって直鎖状分子の重縮合を促進しうる。更に、β−ジケトン錯化剤はゲル化を抑制することによって、コーティング組成物の安定性を高め、コーティング前の貯蔵寿命を延ばす。
【0043】
錯化剤中の金属の種類は特に限定されない。β−ジケトンリガンドとの錯体形成定数が大きな金属が、好ましくは用いられる。こうした金属錯化剤の例としては、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム(III)、トリス(エチルアセチルアセトナート)アルミニウム(III)、トリス(ジエチルマロネート)アルミニウム(III)、ビス(アセチルアセトナート)銅(II)、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム(IV)、トリス(アセチルアセトナート)クロム(III)、トリス(アセチルアセトナート)コバルト(III)、及びチタン(IV)オキソアセチルアセトナート[(CHCOCHCOCHTiO]などのβ−ジケトンの金属キレート化合物、並びにβ−ジケトンの希土類金属との金属キレート化合物が挙げられる。好ましくは、β−ジケトン錯化剤はアルミニウムβ−ジケトン錯化剤、より好ましくはアルミニウムアセチルアセトナートから選択される。
【0044】
β−ジケトン錯化剤は単独で、又は2種類以上のものを組み合わせて使用することができる。添加される錯化剤の量は好ましくは、コーティング組成物の全添加固形分に対して0〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、好ましくは約0.1〜5重量%である。
【0045】
コーティング組成物は有機溶媒を必要としないが、水溶性又は水混和性の有機溶媒を含んでもよい。組成物の全VOC含有量は、配合物の全重量の約20重量%未満、好ましくは約15重量%未満、より好ましくは約10重量%未満である必要がある。好ましくは、水溶性又は水混和性の有機溶媒は、ブタノール、イソプロパノール、エタノール及び/又はメタノール、並びにこれらの互いとの混合物又はVOCを除去した水溶性又は水混和性の有機溶媒との混合物などの、炭素原子数が約6未満の低分子量のアルコールである。既存の米国環境保護庁(EPA)の環境規制(EPA連邦規則集第40巻51.100条(40 C.F.R.51.100)他)に適合する量で添加された少量のこうした溶媒の使用によって、コーティング配合物の表面張力を低下させ、これらの配合物が疎水性表面を濡らして疎水性表面上に広がる性質を高めることができる。更に、特にアルコール溶媒は、アルコキシシラン及び/又はシランカップリング剤との平衡縮合反応に関与することによって貯蔵安定性を更に高めることができる。
【0046】
本開示の物品は、架橋されたシリカナノ粒子を含有するアルコキシシランオリゴマー/シランカップリング剤複合物を含む連続的なコーティングを有する基材である。粒子は40nm以下の平均一次粒径を有することが好ましい。「一次粒径」なる用語は、凝集していない1個のシリカ粒子の平均径のことを指す。平均粒径は、透過型電子顕微鏡によって測定することができる。ここで言うところの「連続的」なる用語は、コーティング組成物が塗布された領域に実質上不連続部分又は間隙が存在しないように基材の表面が覆われていることを指す。「網目」なる用語は、アルコキシシランオリゴマーがそれ自体の内部でシランカップリング剤により架橋するとともにナノ粒子表面と架橋した3次元的な架橋構造のことを指す。
【0047】
特定の実施形態では、本発明の物品は、平坦、湾曲又は複雑な形状を有するとともに架橋シリカナノ粒子含有複合物の連続的網目構造が形成された、実質上任意の構造の、透明〜不透明な、ポリマー、ガラス、セラミック又は金属製のものであってよい基材を有する。
【0048】
高い光透過率を実現するためにコーティングを透明な基材に塗布する場合、コーティングされた物品は、少なくとも400〜700nmの波長範囲にわたって、コーティングされる基材に応じて垂直な入射光線の透過率が少なくとも2%、最大で10%以上の全体の平均増加率を示すことが好ましい。透過率の増加は、スペクトルの紫外及び/又は赤外部分の波長においても見られる。光透過性基材の少なくとも一方の側面に塗布された好ましいコーティング組成物は、550nmで測定した基材の透過率を少なくとも5%、好ましくは10%増大させる。ポリマー基材には、ポリマーシート、フィルム、又は成形材料が含まれる。高い透過性が望ましい特定の実施形態では、基材は透明である。「透明」なる用語は、可視スペクトル(波長約400〜700nm)の入射光の少なくとも85%を透過することを意味する。透明な基材は、着色されていても無色のものでもよい。
【0049】
高い親水性が望ましい他の実施形態では、基材は最初は疎水性であってもよい。本組成物は、様々な基板に様々なコーティング法によって塗布することができる。本発明のコーティング組成物は、疎水性の基材表面で観察される望ましくない水染みを形成することなく、基材に親水性を与え、洗浄を大幅に容易とし、汚れ及び汚染物質を付着しにくくし、表面にウォーターシーティング特性及び自己乾燥特性を与えるうえで有用である。
【0050】
水又は水溶液の液滴の水接触角が50°よりも小さくなるような表面は、本願で述べる試験方法を用いることにより「親水性」と呼ばれる。疎水性の基材は、水接触角が50°よりも大きい。本願で述べるコーティングは、基材の親水性を少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°増大させうる。初めは疎水性であってもよいコーティングされた基材は、本コーティング組成物による処理後には、数週間〜数ヶ月にわたる外部環境への曝露後においても約50°よりも小さい、好ましくは約40°よりも小さい、より好ましくは30°よりも小さい水接触角を有することが望ましい。
【0051】
好適な基材としては、例えば、ガラス(例えば、窓並びにレンズ及びミラーなどの光学要素)、セラミック(例えば、セラミックタイル)、セメント、石材、塗装又はクリアコーティングされた表面(例えば、自動車の車体パネル、ボートの表面)、感圧接着剤によって裏打ちされ、表面に接着されたプラスチック保護フィルム、金属(例えば、建築用柱材)、紙(例えば、接着剤剥離ライナー)、ボール紙(例えば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
一般的に基材は材料のフィルム、シート、パネル又は板であり、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾用ガラスフレーム、自動車の窓及びフロントガラス、並びに外科用マスク及びフェースシールドなどの保護用アイウェアなどの物品の一部であってよい。コーティングは、必要に応じて物品の一部分のみを覆ってもよく、例えばフェースシールドの眼に直接隣接する部分のみをコーティングすることができる。基材は平板であっても、湾曲していても、所定の形状に形成されてもよい。コーティングされる物品はブロー成形、鋳造、押出し成形、又は射出成形によって製造することができる。
【0053】
本発明のコーティング組成物は、塗装又はクリアコーティングされた表面を有する自動車のパネルのコーティングに特に有用であり、その例としては、ポリアクリル−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,286,782号(ラム(Lamb)ら)に述べられるもの)、水酸基官能性アクリル−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,354,797号(アンダーソン(Anderson)ら)に述べられるもの)、ポリイソシアネート−カーボネート−メラミン組成物(例えば、米国特許第6,544,593号(ナガタ(Nagata)ら)に述べられるもの)、高固形分ポリシロキサン組成物(例えば、米国特許第6,428,898号(バルソッティ(Barsotti)ら)に述べられるもの)が挙げられる。クリアコートの例としては、ピー・ピー・ジー・インダストリーズ社(PPG Industries)(ペンシルベニア州ピッツバーグ)より販売されるCERAMICLEAR(商標)、及びデュポン社(DuPont)より販売されるウレタンアクリレートクリアーコートであるRK8014(商標)がある。
【0054】
更に、他の基材としてはこれらに限定されるものではないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンとのエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンコポリマー、フッ素化表面、酢酸エステル及び酪酸エステルなどのセルロースエステル、ガラス、セラミック、有機及び無機複合材の表面などが挙げられる(これらのブレンド及び積層体を含む)。
【0055】
基材は不透明、半透明、又は透明でありうる。組成物は、グラフィック及び標識に使用される可撓性フィルムなどの基材に親水性の、容易に洗浄可能な表面を与えることが分かっている。PETなどのポリエステル、又はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びPVC(ポリ塩化ビニル)などのポリオレフィンから形成される可撓性フィルムが特に好ましい。
【0056】
基材は、基材樹脂をフィルムに押出ししてから、押出ししたフィルムを場合により一軸又は二軸配向させるなどの従来のフィルム製造方法を用いてフィルムに形成することができる。こうしたグラフィック及び標識の用途で使用される基材は、化学的処理、空気若しくは窒素コロナのようなコロナ処理、プラズマ、火炎、又は化学線などを用いて基材とコーティング組成物との接着性を高めるための処理を行うことができる。必要に応じて、層間接着性を高めるために基材とコーティング組成物との間に任意の結合層を設けてもよい。基材の他方の側面にも上記に述べた処理を行って、基材と接着剤との接着性を高めることができる。基材には、当該技術分野では周知の単語又は記号などのグラフィックを付与することができる。また、平板な基材の両面をコーティングすることもできる。
【0057】
特定の実施形態では、コーティング組成物は高い洗浄性を与え、汚れ及び他の汚染物質を蓄積しにくくすることができる。特定の実施形態では、コーティング組成物によって、引っ掻き傷、摩耗及び溶媒などの要因による損傷から基材を保護する丈夫な耐摩耗層が更に与えられる。「洗浄可能な」とは、コーティング組成物が乾燥及び硬化させられると、流水又は水の噴射との接触によってその上を覆った汚染物質が容易に押しのけられることで容易に洗浄されるようなコーティングを与え、これによりコーティングから汚染物質のかなりの部分が除去されることを意味する。ウォーターシーティング効果によって、路上での水しぶき、雪、溶けかかった雪、及び雨水中の汚れが基材の表面を実質的に流れ落ち、これによって水が乾燥した後に付着する汚染物質の量が大幅に低減される。
【0058】
容易なコーティングを可能とするためには、低分子量のアルコール、特にC〜Cのアルコールを加えることによってコーティング組成物の表面張力を低下させることができる。しかしながら、特定の場合では、所望の性質を得るためにコーティングの親水性を高め、更に水溶液又は水性アルコール溶液から物品の均一なコーティングを確実に行うためには、通常は界面活性剤である湿潤剤を添加することが効果的である場合がある。湿潤剤は基材に対するコーティングの接着性を低下させることによって耐久性を低下させ、更に乾燥したコーティングに線条及び曇りを生じさせることから、湿潤剤の使用は一般的には望ましくない。
【0059】
ここで言うところの「界面活性剤」とは、同じ分子上に親水性(極性)部分と疎水性(非極性)部分とを有し、コーティング溶液の表面張力を低下させることが可能な分子のことを言う。有用な界面活性剤としては、本願に援用する米国特許第6,040,053号(ショルツ(Scholz)ら)に開示されるものがある。
【0060】
シリカナノ粒子の一般的な濃度(例えば、全コーティング組成物に対して約0.2〜15%)に対して、多くの界面活性剤はコーティングの反射防止性を維持するうえでコーティング組成物の約0.1重量%未満、好ましくは約0.003〜0.05重量%を構成する。特定の界面活性剤では、所望の性質を得るのに必要な濃度を上回る濃度ではまだらなコーティングとなる点には注意を要する。特に、界面活性剤は得られるコーティングの耐久性を低下させうることが観察されている。コーティング組成物は、活性剤も湿潤剤も一切含まないことが好ましい。
【0061】
得られるコーティングの均一性を高める目的で添加する場合には、コーティング組成物にアニオン性界面活性剤を加えることが好ましい。有用なアニオン性界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、(1)約C〜約C20のアルキル、アルキルアリール、及び/又はアルケニル基などの少なくとも1つの疎水性部分、(2)硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ポリオキシエチレン硫酸イオン、ポリオキシエチレンスルホン酸イオン、ポリオキシエチレンリン酸イオンなどの少なくとも1つのアニオン性基、及び/又は(3)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、三級アンモニウム塩などを含むこれらのアニオン性基の塩を有する分子構造を有するものが挙げられる。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な市販の例としては、ヘンケル社(Henkel Inc.)(デラウェア州ウィルミントン)よりTEXAPON L−100の商品名で、あるいはステパン・ケミカル社(Stepan Chemical Co.)(イリノイ州ノースフィールド)よりPOLYSTEP B−3の商品名で販売されるラウリル硫酸ナトリウム、ステパン・ケミカル社(Stepan Chemical Co.)(イリノイ州ノースフィールド)よりPOLYSTEP B−12の商品名で販売されるラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ヘンケル社(Henkel Inc.)(デラウェア州ウィルミントン)よりSTANDAPOL Aの商品名で販売されるラウリル硫酸アンモニウム、及びローヌ・プーラン社(Rhone-Poulenc,Inc.)(ニュージャージー州クランベリー)よりSIPONATE DS−10の商品名で販売されるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0062】
コーティング組成物が界面活性剤を含まない場合、あるいは高いコーティング均一性が望ましい場合には、防曇性が長持ちしないものなどの別の湿潤剤を添加すると、水溶液又は水性アルコール溶液からの物品の均一なコーティングを確実に行ううえで効果的である場合がある。有用な湿潤剤の例としては、ポリエトキシル化アルキルアルコール(例えば、クロダ・インターナショナル社(Croda International)(ニュージャージー州エジソン)より販売されるBrij(商標)30及びBrij(商標)35)、及びダウ・ケミカル・アンド・プラスティクス社(Dow Chemical and Plastics Co.)より販売されるTergitol(商標)TMN−6専用界面活性剤)、ポリエトキシル化アルキルフェノール(例えば、ユニオン・カーバイド・ケミカル・アンド・プラスティクス社(Union Carbide Chemical and Plastics Co.)より販売されるTriton(商標)X−100、ビー・エー・エス・エフ社(BASF Corp.)より販売されるIconol(商標)NP−70)、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(いずれもビー・エー・エス・エフ社(BASF Corp.)より販売されるTetronic(商標)1502ブロックコポリマー界面活性剤、Tetronic(商標)908ブロックコポリマー界面活性剤及びPluronic(商標)F38ブロックコポリマー界面活性剤)が挙げられる。添加される湿潤剤はいずれも、コーティングの反射防止性を損なわず、コーティングの曇りを増大させず、コーティングの外観を損ねることのない濃度で添加されなければならないことは言うまでもない。一般に湿潤剤は、シリカナノ粒子の量に応じてコーティング組成物の約0.1重量%未満、好ましくはコーティング組成物の約0.003〜0.05重量%の量で使用される。
【0063】
本組成物は、ブラシコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、ワイピングコーティング、カーテンコーティング、輪転グラビアコーティング、スプレーコーティング、又はディップコーティングなどの従来のコーティング法を用いて物品上にコーティングすることが好ましい。説明を分かりやすくかつ簡単にする便宜上、好ましい一方法では、適当な織布又は不織布の布地又はスポンジを使用してコーティング配合物をワイピングによって塗布する。こうした塗布材料は、付着させる組成物の量を調節して最終的なコーティングの厚さを調節するためには、本来、親水性であっても疎水性であってもよい。最終的な厚さ及び得られる外観を調節する別の方法では、任意の適当な方法でコーティングを塗布し、溶媒の一部を蒸発させた後、余分なコーティング液を流水で洗い流す。驚くべきことに、干渉縞又は粗面化を基本的に防止しつつ活性材料の薄層を基材表面上にそのように形成することができる。
【0064】
本発明のコーティングは、好ましくは20〜100オングストロームの範囲で変動する、より好ましくは変動が100オングストローム未満であるような均一な平均の厚さで塗布することによって、コーティングの眼に見える干渉による色の変化が防止される。好ましくは本発明のコーティングの厚さは少なくとも約20オングストロームであり、より好ましくは少なくとも約30オングストロームである。最適な平均の乾燥コーティング厚さは特定のコーティング組成物によって決まるが、原子間力顕微鏡及び/又は表面粗さ測定法によって推定されるコーティングの平均厚さは一般的に50〜1000オングストローム、好ましくは50〜500オングストローム、より好ましくは約250オングストローム未満である。この範囲を上回ると、コーティングの厚さの変動によって光学的干渉効果がもたらされ、乾燥したコーティングの眼に見える干渉縞(虹効果)が生じ、暗色の基材で特に目立つ。この範囲を下回ると、環境的摩耗に曝される多くのコーティングにおいて充分な耐久性を与えるうえでコーティングの厚さが不適切となりうる。
【0065】
コーティングの後、物品は通常、加熱、放射線、又は他の硬化法を用いることなく室温で乾燥させられる。より高い温度では乾燥プロセスの速度は大きくなるが、こうした温度は通常は実用的でも便利でもなく、基材の損傷を避けるために注意を払わなければならない。コーティング組成物を基材に塗布し乾燥させた後では、コーティングは、好ましくは約30〜95重量%(より好ましくは約50〜75重量%)のシリカナノ粒子、約1〜55重量%(より好ましくは約25〜50重量%)のアルコキシシランオリゴマー及び0.25〜35重量%の前記シランカップリング剤、及び0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の前記金属β−ジケトン錯化剤、及び場合により約0〜5重量%(より好ましくは0〜約2重量%)の界面活性剤、及び最大で約5重量%(好ましくは0〜2重量%)の湿潤剤を含む。
【0066】
多くの実施形態において、本発明のコーティング組成物は、液体の形で保存される場合には安定である。例えば、コーティング組成物はゲル化、不透明化せず、沈殿又は凝集した粒子も形成せず、顕著に劣化することもない。更に、多くの実施形態において、本願で述べる試験法を用いることによって物品に塗布されたコーティングは耐久性及び耐摩耗性に優れることが示され、干渉縞を生ずることがあっても顕著なものではない。
【実施例】
【0067】
材料
MKC MS51(商標)−三菱化学株式会社又は扶桑化学工業株式会社(大阪)より販売されるテトラメチルオルトシリケート(分子量約600)の部分縮合物。
【0068】
VTMOS−ハルズ・アメリカ社(Huls America)(ペンシルベニア州ブリストル)より販売されるビニルトリメトキシシラン。
【0069】
シリカナノ粒子分散液は、ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Company)(イリノイ州ナパービル)より、Nalco 1115(商標)(4nm)、2326(商標)(5nm)、1030(商標)(13nm)、及び1050(商標)として入手可能である。
【0070】
試験汚れ−スリー・エム社(3M Company)(ミネソタ州セントポール)より販売される3M Standard Carpet Dry Soil SPS−2001(商標)。
【0071】
アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chem.Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より販売されるアルミニウムアセチルアセトナート。
【0072】
Emcol 4500(商標)−ウィトコ・ケミカル社(Witco Chemical Co.)(ニューヨーク州)より販売されるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム。
【0073】
アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chem.Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より販売される0.1N HCl。
【0074】
試験パネル−エー・シー・ティー・テスト・パネルズ社(ACT Test Panels Inc.)(ミシガン州ヒルズデール)により作製及び供給される、DuPont Cormax(商標)6EP e−コート、DuPont 708DM730プライマー、DuPont 648DN027ブラックベースコート、及びDuPont RK8014(商標)クリアーコートでコーティングされたアルミニウム製試験パネル。
【0075】
調製及び試験方法
パネルのコーティング方法
各試験パネルを2つの方法のいずれかによってコーティングした。第1の方法は、水平に置いた試験パネルの塗装した表面にコーティング組成物を数滴垂らし、プラスチックピペットを用いてパネル表面全体にコーティングを広げるというものである。このコーティング工程の後、各パネルを30°〜垂直の角度に保持して余分なコーティング液を切る。第2の方法では、所望の織布又は不織布布地を用い、コーティング液を試験パネルの塗装された表面上に重なる円を描くようにしてワイピングにより塗布して均一にコーティングされた外観とする。各方法において、この後各パネルを周囲条件で24時間保存して配合物を硬化させる。
【0076】
コーティングの特性評価方法
コーティングの厚さ及び品質を、原子間力顕微鏡(AFM)及び表面粗さ測定法を用いて評価した。きれいな厚さ5ミル(0.127mm)のポリエステルフィルム上にコーティングすることにより、分析用のコーティングされた試料を調製した。試料はすべて、測定に先立って乾燥及び硬化させた。AFMの測定値は、Nanoscope Vコントローラを備えたデジタル・インスツルメンツ社(Digital Instruments)製Dimension 3100 SPMシステムを使用して得た。オリンパス社製OTESPA単結晶シリコンプローブをプローブとして使用した。これらのプローブの力定数(force constant)は約40N/Mであった。Nanoscope 5.12ソフトウェアを用いてデータ解析を行った。画像は、Nanoscope 5.12の1次平面フィッティングアルゴリズムを用いてxy平面に平面フィッティングした。
【0077】
表面粗さ測定法の測定値は、ビーコ・インスツルメンツ社(Veeco Instruments Inc.)(ニュージャージー州プレインビュー)より販売されるWyko NT3300光学プロファイロメーターを使用して得た。使用した設定値は、1x速度VSI、フル解像度、1%モジュレーション閾値、バックスキャン=10、スキャン長さ=10、1.0FOVで50x倍対物レンズを使用、とした。
【0078】
摩耗試験
摩耗試験については、ASTM D 2486−00「壁塗料の耐スクラブ性」(Scrub Resistance of Wall Paints)に述べられており、これは、37サイクル/分で動作する重さ450gの秤量したスポンジアセンブリを備えたビー・ワイ・ケー・ガードナー社(BYK Gardener)製摩耗度テスターを、O−Cell−O(商標)スポンジ(スリー・エム社(3M Company)より入手)を用い、4インチ×3インチ(10.2cm×7.6cm)の摩耗表面積で使用して行うものである。各試料パネルは、アルミニウム製の試験ベッドにコーティング面を上にして固定した。スポンジに脱イオン水を染み込ませ、コーティングしたパネル表面を所望のサイクル終了点まで円を描くように擦り洗いした。試験は5、10、又は20サイクルで行った。
【0079】
摩耗後のコーティングのウォーターシーティング性能を目視にて検査することにより表面摩耗度/磨損度を評価した。摩耗後に水によって濡れた表面積の割合(%)を推定し、表中に「非損傷部分率(%)」として示した。
【0080】
汚れ付着試験
コーティングした試料を、3M Standard Carpet試験汚れを水に加えた2重量%混合物に接触させることによって汚れ試験を行った。路上での水はね又は水しぶきの条件を再現するため、3M Body Schutz(商標)アプリケーターガン(スリー・エム社(3M Company)より販売されるもの、部品番号08997)を用いて20psig(137.8kPa)の加圧した汚れ混合物を2秒間パネルに噴射した。水/汚れ混合物は、32インチ×15インチ×10.5インチ(81.3cm×38.1cm×26.7cm)の水槽中で攪拌を続け、ノズルの先端はパネルから29インチ(73.7cm)離した。パネルを取り出し、50℃で5分間乾燥させた後、汚れ付着チャンバに戻した。このサイクルを全部で2回繰り返した。乾燥工程の後、パネルを33インチ×16インチ×14インチ(83.8cm×40.6cm×35.6cm)の別のきれいな水槽に入れ、ノズルの先端をパネルから32インチ(81.3cm)離して水道水を60psig(413.6kPa)の水圧で5秒間噴射した。試料に最終的な乾燥工程を行ってから目視にて評価した。更に、汚れ付着サイクルの前後のパネルの重量の変化を測定した。結果を表8に示す。
【0081】
接触角の測定
OmniSolv(登録商標)精製濾過水(イー・エム・サイエンス社(EM Science)(米国ニュージャージー州ギブズタウン)を用いて水接触角の測定を行った。使用した接触角分析器は、ベルメックス社(Velmex,Inc.)(米国ニューヨーク州ホルカム)の製造する水平位置決め装置(UniSlide(登録商標)シリーズA2500)に取り付けたビー・ワイ・ケー・ガードナー・サイエンティフィック社(BYK Gardener Scientific Corporation)(米国メリーランド州コロンビア(Olumbia))製ゴニオメーター顕微鏡を備えた特別仕様の手動式装置である。3M 414N TRI−M−ITEサンドペーパーのグレード220を用いて先端を平らに成形した針を取り付けた1ccの注射器(ヘンケ・サス・ウルフ社(Henke Sass Wolf GmbH))(ドイツ、トゥットリンゲン)のプランジャを、顕微鏡のシンブル、バレル及びスピンドル(No.263、エル・エス・スターレット社(L. S. Starrett)米国マサチューセッツ州アソール)を回転させて押し込むことにより、約0.5μLの体積の水滴を垂らした。水滴を小型の光源によって半透明の紙スクリーンの背後から照射した。注射器は2本のアームを有する支持台に取り付け、これをネジクランクによって下げ、支持台が調節可能なプラットフォーム上で静止する際に水滴を試験試料に付着させた。接触角装置の水平は円形のブルズアイ型水準器で監視し、レベルネジによって調節することが可能である。付着の約30秒後に付着水滴の接触角を測定し、少なくとも3つの別々の測定値の平均の値を報告した。
【0082】
これとは別に、水に浸漬した後のコーティング表面を観察することによって親水性を定性的に評価することができる。すなわち、親水性のコーティングは浸漬後には水の連続的なシートによって完全に濡れた状態となり、少なくとも5秒間にわたって濡れた状態に維持される。
【0083】
コーティング組成物の調製
反応性シラン成分の配合物(アルコキシシランオリゴマー、カップリング剤、及び使用される場合には錯化剤を含む)及びナノ粒子成分の配合物(各成分配合物は溶媒又は水に5重量%の成分を含む)を別々に調製した。
【0084】
反応性シラン成分は、MKC MS51アルコキシシランオリゴマーの10重量%イソプロパノール溶液の適当量を攪拌下で水とイソプロパノールの混合物に加えることによって調製した。次いで、攪拌下でシランカップリング剤の10重量%イソプロパノール溶液を、アルコキシシランオリゴマー混合物に加えた。最後に、アルミニウムアセチルアセトナートの3重量%メタノール溶液を、攪拌を継続しながら混合物に加えた。ナノ粒子成分は、市販の濃縮ゾルを脱イオン水に希釈することによって別々に調製した。表面改質されたナノ粒子を使用する実施形態では、やはりこうした粒子を希釈分散液から脱イオン水に加えた。
【0085】
表面改質されたシリカナノ粒子の調製
5nmのシリカナノ粒子の攪拌分散液(Nalco 2326、50.02g、固形分16.0%)に、3−(トリスヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸(6.15g、32.5%水溶液)及びイソプロパノール(56g)を加えることによって調製した。反応液を50℃に5時間加熱することによって固形分8.5%の表面改質粒子の分散液を得た。
【0086】
コーティング組成物の調製
コーティング組成物は、適量のナノ粒子マスターバッチ分散液を攪拌下でアルコキシシラン/カップリング剤/アルミニウムアセチルアセトナート混合物に直接加えることによって調製した。この混合物に、攪拌下で0.1規定のHClを急速に加えた。一部の実施例では、この混合物に界面活性剤又は湿潤剤を脱イオン水中の1重量%溶液又は分散液として加えた。以下の実施例では、Emcol(商標)4500アニオン性界面活性剤を使用した。最終混合物はいずれも、ネジ蓋付きのプラスチック容器で保存した。
【0087】
各溶液を、約2〜約10.5のpHの値の範囲で評価を行うように調製した。特に断らないかぎり、各溶液の反応性シリケートに対するナノ粒子の比は2:1(w/w)であった。各コーティング組成物を表1に示し、アルコキシシラン及び添加したナノ粒子の理論上の乾燥量を示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1の「反応性シラン」は、アルコキシシランオリゴマー、シランカップリング剤、及び金属β−ジケトン錯化剤を3:1:0.2の重量比で含む。
【0090】
(実施例1〜8)
以下の実施例では、各試験パネルを表1に示した組成物でコーティングした。コーティング及び硬化の後、各試験パネルに試験方法で述べた摩耗処理を20サイクル行い、維持された親水性について評価した。表2は、各コーティングの結果、並びにpH及び界面活性剤が親水性コーティングの耐久性に与えた影響を示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2より、pHの低い配合物は、界面活性剤が添加されていてもいなくても高い耐久性を示す傾向を示した。界面活性剤により耐久性は中程度となるかあるいは大幅に低下した。非官能化ナノ粒子複合物はスルホネートで改質されたナノ粒子で形成されたものよりも高い耐久性を示すことが分かる。
【0093】
(実施例9〜16及びC−1)
各溶液を周囲条件下で30日及び60日間熟成した。界面活性剤で改質された配合物は最初に性能が低かったことから、界面活性剤を含まない配合物のみを再びコーティングして、摩耗サイクル及び水接触角測定を行った。更なる比較を行う目的でコーティングしていない試験パネルも試験した(C−1)。その結果を表3に、コーティングの干渉縞の目視による評価とともに示す。「+」は、着色又は「虹状」の外観を呈することなくコーティングが透明であったことを示し、「o」は、ある程度の干渉縞のある透明なコーティングを示すのに対して、「−」は、粒子が眼に見え、着色/干渉縞が顕著なコーティングを示す。
【0094】
【表3】

【0095】
表3は、これらのナノ粒子/シリケートコーティングが、約30°よりも小さい水接触角に示されるように20サイクルの摩耗処理後にも高い親水性を維持していることを示す。各コーティング間の差は目視される外観において認められた。熟成期間が長いほど望ましくない粒子の欠陥及び干渉縞が増加した粒子が生じる傾向があった。しかしながら本発明の実施例9〜10及び13〜14では熟成後の配合物を塗布した際に粒子は認められず、水接触角は低く、干渉縞を生じなかった。
【0096】
(実施例17〜18)
以下の実施形態17及び18では、改質していないナノ粒子を含む複合物に基づいて低いpHと中性pHのコーティングの間の比較を行った。この場合、液体を含む各配合物を最大で6週間、120°F(50℃)で加熱して熟成を加速させた。熟成期間後、顕微鏡用のスライドグラス及び塗装された各試験パネルに各コーティングを塗布し、粒子及び干渉縞について目視による評価を行った。更に、コーティングした各試験パネルに5サイクルの摩耗処理を行ってコーティングの存在について評価を行った(非損傷部分率(%))。表4に粒子の存在を次のように評価した。「+」は目視できる粒子が認められなったことを示し、「o」はわずかな粒子が認められたことを示し、「−」は多数の粒子が認められたことを示す。
【0097】
【表4】

【0098】
表4の結果は、pHの低い組成物は、摩耗処理後の非損傷部分率(%)によって測定される耐久性が高く、粒子又は顕著な干渉縞のない良好な外観を呈したことを示す。これらのデータは、pHの低い配合物はpHの高い配合物と比較して保存及び熟成の面でより高い安定性を有することを示すものである。
【0099】
(実施例19〜30)
以下の実施例19〜30では、シリカナノ粒子の粒径及び組成物中のナノ粒子の量が異なるコーティング組成物を調製した。コーティング組成物は、低いpH(例えば2〜3)にまで酸性化してからコーティングした。周囲温度での24時間の硬化後、コーティングした各試験パネルに5及び10サイクルの摩耗試験を行ってから、接触角の測定、非損傷コーティング率(%)及び干渉縞の評価を行った。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
表5の結果は、組成物のナノ粒子含有量を増やすことによりコーティングの親水性が高くなる、すなわち水接触角が小さくなることを示している。しかしながら、コーティングの耐久性及び外観(干渉縞)はナノ粒子、特に大きなナノ粒子の量が増えるにしたがって低下した。アルコキシシランオリゴマーに対するナノ粒子の比を大きくすることによって耐久性のあるコーティングを与えるうえで利用可能な結合剤の量が減る一方で、この比が高いことにより、局所的な厚さの変動、恐らくは局所的に凝集した粒子、及び干渉縞を生じうる。平均直径がより小さいナノ粒子の方が、より大きな粒子と比較してすべての測定値について良好な性能を示すようである。
【0102】
(実施例31〜32及びC2〜C3)
実施例31〜32及びC2〜C3では、実施例1と同様の複数の組成物を調製し、酸の含有量を調節して異なる最終pHの配合物を得た。各配合物が疎水性の試験パネル表面を濡らして表面全体に広がる能力に対するpHの影響を、以下のようにして目視で調べた。実施例の配合物の液滴をパネル上に置いて初期の接触角の観察、すなわち液滴が自然に広がるか液滴の状態に保たれるかを調べた。次に、プラスチックピペットを用いて液滴を基材表面上に広げ、配合物が表面上に均一に広がった状態に保たれるか、凝集して濡れ性の低い液滴を形成するかを調べた。両方の試験に合格した配合物を濡れ性について「有」とした。結果を表6に示す。
【0103】
【表6】

【0104】
表6の結果は、pHが低い配合を有する改質されていないナノ粒子コーティング組成物は、基材表面を容易に濡らすことができることを示すものである。
【0105】
(実施例33〜34及びC−4)
調製物3及び7のコーティング組成物を1997年製ホンダアコードのボンネット及び屋根の表面の半分にコーティングした。各表面の残りの半分には、市販のカーワックス(3M Performance Finish、部品番号38112、スリー・エム社(3M Company)ミネソタ州セントポール)をコーティングした。材料はいずれも、マイクロファイバーディテーリングクロス(3M Detailing Cloth、部品番号06017、スリー・エム社(3M Company)ミネソタ州セントポール)によってワイピングによって塗布した。各試料を室温で乾燥させた後、自動車を通常の運転条件に2週間供した。ASTM D2457−08に従って、携帯型のビー・ワイ・ケー・ガードナー社(BYK Gardener)製マイクログラスメーターを使用して運転条件に供する前後の処理表面及びワックスコーティング表面上の角度20°の鏡面光沢度を評価した。更に、運転環境に供した後の水接触角を測定した。データを表7に示す。
【0106】
【表7】

【0107】
表7に示されるように、塗装仕上げの光沢のある外観はいずれの実施例のコーティングでも保たれており、市販のワックスコーティングによる従来の「ディープグロス」仕上げと比較して遜色のないものである。実験例の材料で処理した表面は、約30°よりも小さい水接触角によって示されるように高い親水性を示した。これに対して、ワックスでコーティングした表面はほぼ90°の接触角を示し、水が完全に水滴を形成することが観察された。更なる観察結果は、親水性効果が少なくとも3ヶ月の期間にわたって保たれることを示した。
【0108】
(実施例35及びC5〜C6)
固形分0.5%の調製物7を、ワイプオン法を用いてマイクロファイバーディテーリングクロス(3M Detailing Cloth、部品番号06017、スリー・エム社(3M Company)ミネソタ州セントポール)により試験パネルにコーティングした。別のパネルに市販のカーワックス(3M Performance Finish、部品番号38112、スリー・エム社(3M Company)ミネソタ州セントポール)をコーティングした。別のパネルにはコーティングを行わなかった。
【0109】
各パネルに上記に述べたような汚れ付着及び洗浄サイクルを行った後、各パネルを乾燥し、再び秤量して汚れの付着量を評価した。次いで各パネルをティッシュで拭い、ティッシュに移った汚れの量を目視で評価した。次に、各パネルを眼に見える残留汚れの存在について評価した。結果を表8にまとめた。
【0110】
【表8】

【0111】
コントロール及びワックスでコーティングしたパネルと比較して、調製物7でコーティングしたパネルでは汚れの蓄積は大幅に少なく、付着した汚れはより一層完全に拭き取られてよりきれいな表面となった。このことは、残留汚れがある場合、コーティングしていない、又はワックスコーティングを施したパネルと比較して、実施例35の材料の表面に対する残留汚れの結合は弱く、除去しやすいことを示唆するものである。
【0112】
(実施例36〜37)
AFM及び表面粗さ測定法による表面の分析結果を、調製物7でコーティングしたパネルについて下記のように比較した。各試料パネルを上記と同様、ワイピングによって調製した。コーティングの厚さ及び均一度を表9に示す。用語「Ra」が表面の高さの分散の算術平均、すなわち均一度を示すのに対して、「Rq」は、コーティングを除去した同じ表面の一部と比較した、表面のコーティングされた部分の表面粗さの二乗平均平方根の平均を示す。AFM及び表面粗さ測定法のいずれによっても、約10〜11nmのコーティング厚さの値が得られ、厚さの平均の偏差(Ra)は約4nmであった。当業者であれば明らかであるように、更なるコーティングの塗布、又はより高い若しくはより低い溶液濃度によるコーティングの塗布により、より厚い又はより薄い最終的な(乾燥)コーティングが得られる。
【0113】
【表9】

【0114】
【表10】

【0115】
各試料パネルに以下のようにして調製物番号25をコーティングした。3インチ×18インチ(7.6cm×30.5cm)の汚れのない白色に塗装した試験パネルを水平な表面上に平らに置き、1/8インチ(0.32cm)のテープストリップでパネルを長さ6インチ(15.2cm)の半部分に分割するようにマーキングした。スポンジを用いて試験パネルの半分が完全に液体で覆われるように調製物25を塗布した。液体を試験パネルの表面と30秒間、接触状態に保った後、普通の水道水の水流によって余分なコーティング材料を除去した。パネルを一方の縁部で支えるようにして乾燥させた。このコーティング法を「1X」とし、塗布及び洗浄の1回のサイクルを示す。この試験パネルを実施例38とした。
【0116】
同じ要領で、同様の試験パネル(実施例39)に調製物25をコーティング、洗浄し、乾燥した後、最初のコーティングの上から第2のコーティングの層を同じ方法で塗布した。塗布及び洗浄の2回のサイクルを「2X」とする。
【0117】
比較を行うため、試験パネルの半分を上記の実施例C−4と同様にワックスで処理した。このパネルをC−7とした。
【0118】
実施例の試験パネル38、39及びC−7を、各試験パネルをミネソタ州セントポールにおいて夏季を通じて真南に向けて60°の角度で置くことによって96日間の環境への曝露を行った。この曝露期間の後、各パネルを取り外して上記に述べたようにして目視による検査、光沢度の測定、及び静的接触角の測定を行った。結果を表11に示す。表11において、視認される汚れのカテゴリーは、表面上に視認される雨、結露などによる汚れた水染みの評価であり、「−」のスコアは多数の汚れの染みが認められ、「0」はわずかな汚れの染みが認められ、「+」は汚れの染みが認められないことを示す。最後に、比較を行うため、各試験パネルの未処理の半部分についてのデータも表11に示す。
【0119】
【表11】

【0120】
本発明によって処理した各試験パネルの部分に残った視認される汚れは、未処理部分又はワックスを塗布した表面と比較して大幅に少なかった。処理を行った各表面は、3ヶ月の屋外環境への曝露によっても親水性の特性を維持し、黄変の兆候はまったく見られず、環境中の水が水滴を形成して水又は汚れの染みを生じることもなかった。同様に、本発明のコーティングによって処理した各試験パネルの部分は、未処理又はワックスを塗布した比較用表面と比較して、96日間の屋外環境への曝露後に大幅に高い光沢度の値を示した。このことは、環境中の汚染物質の付着による汚れの蓄積を低減する本発明のコーティングの効果を示すものである。最後に、各試験パネルの処理部分について測定した水接触角は、本発明のコーティングでは大幅に小さく、親水性の特性を示す範囲であった。したがって、本発明のコーティングは、屋外環境の汚染及び紫外線への曝露に対する耐久性を有し、本発明のコーティング方法で塗布した後に余分な液体コーティングを洗い流した場合には極めて高い耐久性を有する曇り及び着色のないコーティングを形成することが可能であることが明らかである。
【0121】
やはり調製物25を用いて乗用車である2006年製ホンダシビックをコーティングした。その際、車体の半分をテープで分け、実施例C−4及びC−7と同様にワックスでコーティングし、残りの半分を各試験パネルについて上記に述べたのと同様に処理した。この試験では、ガラス、塗装及びゴムを含む車体の半分の全体を本発明のコーティングでコーティングした。簡単なスポンジを使用して車体表面の全領域を覆うように液体コーティングを塗り広げ、液体コーティングを表面と接触した状態で約60秒間放置し、余分なコーティングを普通のガーデンホースからの水流によって洗い流した。処理を行った車体の半分は、瞬間的なウォーターシーティングの形態の親水性の特性を直ちに示した。
【0122】
この自動車を、ミネソタ州セントポールにおいておおよそ4月からおおよそ7月までの4ヶ月の期間にわたって普通に運転した。この期間中、自動車は、本発明のコーティングで処理した半分において継続的かつ耐久性のある親水性の特性を示し、残りの半分において一般的なワックスによる水滴の形成が見られた。本発明のコーティングで処理した半分に付着した眼に見える汚れは極めて少なかった。驚くべきことに、同様の処理を行った窓ガラスは透明度が極めて高いクリアーな外観を呈し、視認される水染みや汚れの付着はまったく認められなかった。このため、窓はより見通しがよかった。
【0123】
最後に、実施例38と同様にして調製した試験パネルを前処理し、両面接着テープによって自動車の水平リアバンパーに接着し、極めて埃っぽい砂漠の条件下で4日間運転した。本発明のコーティングで処理したパネルの半分は、未処理又はワックス処理した部分と比較して、埃及び汚れの付着量が乾燥した埃及び汚れであっても大幅に少なかった。したがって、本発明のコーティングは、乾燥した埃及び汚れの付着量を低減するうえでも有用性を発揮するものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)pHが7.5未満である、平均粒径が40nm以下のシリカナノ粒子の水性分散液と、
b)アルコキシシランオリゴマーと、
c)シランカップリング剤と、
d)場合により、金属β−ジケトン錯化剤と、を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
1.30〜95重量%の前記シリカナノ粒子と、
2.1〜55重量%の前記アルコキシシランオリゴマーと、
3.0.25〜35重量%の前記シランカップリング剤と、
4.0〜10重量%の前記金属β−ジケトン錯化剤と、を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記アルコキシシランオリゴマーが下記式:
【化1】

[式中、
各Rは、個別にH、C〜Cのアルキル、アルカリ金属及びアルカリ土類金属又はアンモニウムであり、
各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、
xは2〜100であり、
y及びzは0であってよく、
xはy+zよりも大きく、
x+y+zは2〜100である。]で表わされる、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が下記式:
[(Y)−R−Si−(OR(R4−(b+d)
[式中、
Yは、所定の基材の表面に結合又は会合しうる非塩基性基であり、
は、共有結合又は2価若しくは3価の炭化水素架橋基であり、
は個別に、酸素、窒素及び/又は硫黄原子によって利用可能な位置が場合により置換された、1〜8個の炭素原子を有するアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、
cは1又は2であり、bは1〜3であり、dは1又は2であり、かつ(b+d)≦4である。]で表わされる、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記Yがエチレン性不飽和基Yである、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記Yが非塩基性の有機官能基Yであり、エポキシ基、酸基、エステル基、水酸基及びメルカプト基から選択することができる、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
Yが、アルキル基及びアリール基から選択される非官能性ヒドロカルビル基Yである、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記シリカナノ粒子の平均粒径が20nm以下である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記シリカナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記β−ジケトン錯化剤が、0.1〜5重量%の量で使用される、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
20重量%未満の水溶性又は水混和性の有機溶媒を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記シリカナノ粒子成分が、1〜90%の修飾基による表面被覆率を有する表面改質されたナノ粒子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
pHが4未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記組成物が、pKaが5未満の酸によって4未満のpHの値に酸性化されている、請求項13に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記酸が、シュウ酸、プロピオン酸、ギ酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHOSOOHから選択される、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記アルコキシシランオリゴマーが、式Si(O)(OR[式中、oは0よりも大きくかつ1.2未満であり、pは1.4よりも大きくかつ4未満である。]の単位セルによって表される単位セル式によって表される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記組成物が、前記アルコキシシランオリゴマー、前記シランカップリング剤、及び場合により前記金属β−ジケトン錯化剤の反応生成物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記シリカナノ粒子が表面改質されていない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
基材にコーティングを付与する方法であって、
基材を与える工程と、
基材をコーティング組成物と接触させる工程であって、前記コーティング組成物が、
a)pHが7.5未満である、平均粒径が40nm以下のシリカナノ粒子の水性分散液と、
b)アルコキシシランオリゴマーと、
c)シランカップリング剤と、
d)場合により、金属β−ジケトン錯化剤と、を含む、工程と、
乾燥を行ってシリカナノ粒子コーティングを与える工程と、を含む、方法。
【請求項20】
前記基材が、水接触角が50°よりも大きい疎水性基材である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水性分散液のpHが4未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記水性分散液が、pKaが5未満の酸によって4未満のpHに酸性化されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸が、シュウ酸、プロピオン酸、ギ酸、クエン酸、HPO、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHSOOHから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法によって調製された、親水性物品。
【請求項25】
コーティング後の前記基材の水接触角が50°よりも小さい、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記コーティング組成物のpHが4未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
乾燥に先立って余分な湿潤コーティング組成物を水で洗い流す工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載のコーティング組成物の乾燥したコーティングを有する基材を含む、コーティングされた物品。
【請求項29】
水接触角が50°よりも小さい、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項30】
前記コーティングの厚さが約1000オングストロームよりも小さい、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項31】
前記基材が、ガラス、セラミック、セメント、石材、塗装又はクリアコーティングされた表面、金属、紙、熱硬化性ポリマー、及び熱可塑性ポリマーである、請求項28に記載のコーティングされた物品。

【公表番号】特表2012−505295(P2012−505295A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531158(P2011−531158)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059913
【国際公開番号】WO2010/042672
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】