説明

親水性コーティング剤

【課題】常温での加工が可能であり、基材に、優れた親水性を付与することのできる、親水性コーティング剤を提供すること。
【解決手段】親水性コーティング剤として、オルガノシリカゾルと、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒とを含有させる。そのため、本発明の親水性コーティング剤は、基材表面に、優れた親水性を付与することのできるコーティング皮膜を形成することができる。その結果、コーティング皮膜により、たとえ基材に水滴が付着しても、その水滴の接触角を低減して、例えば、冷却ファンにおける水滴のブリッジの形成を防止し、熱交換率の低下を防止することができる。また、本発明の親水性コーティング剤により形成されるコーティング皮膜は、優れた耐久性を実現することができる。その結果、長期間にわたって、優れた基材の親水性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性コーティング剤、詳しくは、基材に親水性を付与する親水性コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種工業用途に用いられる基材において、その目的および用途に応じて、基材表面を親水化することが望まれている。
例えば、空調機などの熱交換器に用いられる基材(冷却ファン)には、水滴が付着しやすく、互いに隣接する冷却ファン間に、水滴によるブリッジが形成されて、冷却ファン間の隙間が遮られ、そのため、通気性の低下による熱交換率の低下を防止するために、冷却ファンを親水化する必要がある。
【0003】
例えば、こうような基材を親水化する塗料として、アルミナゾルと水溶性アクリル樹脂とポリエチレングリコールなどの溶媒とを含有する高親水性塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、例えば、アルミナ粒子とシリカゾルとこれらの分散あるいは溶解液体とを含有する車両外装用塗料が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−168381号公報
【特許文献2】特開2003−286418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した高親水性塗料や車両外装用塗料では、水溶性アクリル樹脂、アルミナゾルやアルミナ粒子を含有するため、これらを定着させるために加熱工程が必要であったり、また、水に長時間接触させると接触角が上昇する傾向があり、基材を十分に親水化することができないという不具合がある。
本発明の目的は、常温での加工が可能であり、基材に、優れた親水性を付与することのできる、親水性コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の親水性コーティング剤は、オルガノシリカゾルと、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒とを含有していることを特徴としている。
また、本発明の親水性コーティング剤では、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが下記一般式(1)で示されることが好適である。
【0006】
Si(OR4−m (1)
(一般式(1)中、Rは、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、mは0〜3の整数をそれぞれ示す。また、RおよびRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
また、本発明の親水性コーティング剤では、前記オルガノシリカゾルは、コロイダルシリカ粒子が、溶液中で互いに鎖状に連続していることが好適である。
【0007】
また、本発明の親水性コーティング剤では、親水性コーティング剤の配合割合は、親水性コーティング剤の総量100重量部に対して、前記オルガノシリカゾルが、20〜90重量部、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、0.1〜10重量部、前記触媒が、0.01〜1.5重量部であることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の親水性コーティング剤は、オルガノシリカゾルと湿気硬化性シリコーンオリゴマーと硬化触媒とを含有している。そのため、本発明の親水性コーティング剤によれば、基材表面に、優れた親水性を付与することのできるコーティング皮膜を形成することができる。その結果、コーティング皮膜により、たとえ基材に水滴が付着しても、その水滴の接触角を低減させて、例えば、冷却ファンにおける水滴のブリッジの形成を防止し、熱交換率の低下を防止することができる。
【0009】
また、本発明の親水性コーティング剤により形成されるコーティング皮膜は、優れた耐久性を実現することができる。その結果、長期間にわたって、優れた基材の親水性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の親水性コーティング剤は、オルガノシリカゾルと、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒とを含有している。
オルガノシリカゾルは、有機溶媒中に、コロイダルシリカ粒子を安定に分散させたコロイド溶液である。
オルガノシリカゾルに用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノn−プロピルエーテルなどのアルコール系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、例えば、ジメチルアセトアミド、キシレンなどが挙げられる。
【0011】
これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
コロイダルシリカの形状は、例えば、コロイド溶液中で、球状、または、互いに鎖状に連続する形状(いわゆる鎖状タイプ)などが挙げられる。好ましくは、コロイド溶液中で互いに鎖状に連続する形状である。このような鎖状タイプであれば、コーティング皮膜の親水性の度合いをより一層向上させることができ、また、優れたコーティング皮膜の耐久性を得ることができる。
【0012】
コロイダルシリカ粒子は、球状の場合には、その粒子径が、例えば、3〜70nm、好ましくは、10〜40nmであり、鎖状タイプの場合には、鎖を形成する各粒子の粒子径が、例えば、5〜40nm、好ましくは、8〜20nmである。
これらコロイダルシリカは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
このようなオルガノシリカゾルとしては、市販品として入手可能であり、例えば、日産化学工業社のカタログ(2002年11月版、第3頁および第4頁)に記載されているオルガノシリカゾルシリーズなどが挙げられる。
【0013】
より具体的には、メタノールシリカゾル、MA−ST−MS、IPA−ST、IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、EG−ST、NPC−ST−30、MEK−ST、MEK−ST−MS、MIBK−ST−MS、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST、DMAC−ST(以上、球状タイプ、日産化学工業社製)、IPA−ST−UP(鎖状タイプ、日産化学工業社製)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、IPA−ST、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP、さらに好ましくは、IPA−ST−UPが挙げられる。
【0014】
このようなオルガノシリカゾルにおける固形分(オルガノシリカゾルにおけるコロイダルシリカ粒子の重量%)は、例えば、5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%である。
これらオルガノシリカゾルは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
オルガノシリカゾルの配合割合は、親水性コーティング剤の総量100重量部に対して、20〜90重量部、好ましくは、30〜80重量部である。オルガノシリカゾルの配合割合が、上記範囲を超える場合には、均一な皮膜を得ることができない場合がある。また、オルガノシリカゾルの配合割合が、上記範囲に満たない場合には、十分な親水性能を得ることができない場合がある。
【0015】
本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、例えば、分子末端にアルコキシシリル基を有する低分子量のシリコーンアルコキシオリゴマーであって、後述する硬化触媒の存在下で、アルコキシシリル基の架橋により、常温で硬化するものが挙げられる。
このような湿気硬化性シリコーンオリゴマーとしては、例えば、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0016】
Si(OR4−m (1)
(一般式(1)中、Rは、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、mは0〜3の整数を示す。また、RおよびRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
としては、例えば、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0017】
において、非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0018】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリルなどの炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。
【0019】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、o、mまたはp−メチルベンジルなどの炭素数7または8のアラルキル基が挙げられる。
において、置換の1価の炭化水素基としては、上記した非置換の1価の炭化水素基の水素原子を、置換基で置換したものが挙げられ、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシルなどが挙げられる。これらの置換基は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、また、例えば、1〜3個置換していてもよい。
【0020】
のうち、好ましくは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。
としては、例えば、アルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0021】
また、RとRとは、各々独立し、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。
mは、例えば、0〜3の整数を示し、好ましくは、1または2を示す。
このようなアルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、または、これらの混合物などが挙げられる。
【0022】
アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記したアルコキシシラン化合物に水を加えて、触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせるとともに、縮合させることにより得られるものである。
また、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、下記の平均組成式(3)で示すこともできる。
【0023】
SiO(4−a−b)/2(OR (3)
(平均組成式(3)中、Rは、水素、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、aは、その平均値が0.40〜1.70の範囲内にある値を、bは、平均組成式(3)中におけるケイ素原子に結合したORの比率が5重量%以上になる値をそれぞれ示す。また、RまたはRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
なお、平均組成式(3)中、RおよびRとしては、上記した一般式(1)中のRおよびRと同様のものが挙げられる。
【0024】
湿気硬化性シリコーンオリゴマーの粘度は、例えば、0.1〜500mm/s<25℃>であり、好ましくは、0.5〜250mm2/s<25℃>である。
また、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、市販品として入手可能であり、例えば、KR−217、KR−500、X−40−2308、X−40−9238、x−40−9250(以上、信越化学工業社製)などが用いられる。
【0025】
これら湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合割合は、親水性コーティング剤の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部である。湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合割合が、上記範囲を超える場合には、初期の親水性能が低下する場合がある。また、湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合割合が、上記範囲に満たない場合には、皮膜の耐久性が低下する場合がある。
【0026】
本発明において、硬化触媒は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーを硬化させ得る触媒であれば、特に制限されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)などの有機アルミニウム化合物、例えば、ジルコニウム(アセチルアセトン)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトン)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機ジルコニウム化合物、例えば、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機チタニウム化合物などの有機金属化合物、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸類や、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類などの酸、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、エチレンジアミン、アルカノールアミンなどの有機塩基などのアルカリ、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノシラン、シラザン、アミン類などのアミノ化合物などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、鉱酸類が挙げられる。
【0027】
また、硬化触媒は、市販品として入手可能であり、例えば、D−20、DX−9740、DX−175(以上、信越化学工業社製)などが用いられる。これら硬化触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
また、本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、予め硬化触媒が含有されている湿気硬化性シリコーンオリゴマーの市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、KR−400(硬化触媒DX−9740;10重量%含有、信越化学工業社製)、X−40−175(硬化触媒DX−175;5重量%含有、信越化学工業社製)などが用いられる。これらの硬化触媒を予め含有した湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0028】
また、硬化触媒の配合割合は、親水性コーティング剤の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜1.5重量部、好ましくは、0.05〜1.0重量部である。
そして、本発明の親水性コーティング剤は、上記した各成分を溶剤などに配合することにより、適宜調製することができる。
溶剤としては、オルガノシリカゾル、湿気硬化性シリコーンオリゴマーおよび硬化触媒を、溶解または分散できるものであれば、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤、例えば、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。好ましくは、オルガノシリカゾルに用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0029】
また、溶剤の配合割合は、本発明の親水性コーティング剤の総重量に対して、各成分が配合された残余の重量部でよく、例えば、10〜90重量部、好ましくは、20〜60重量部である。
また、本発明の親水性コーティング剤には、その他に、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、艶出し剤または保護剤として一般に慣用されている、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、一般の顔料または染料および蛍光顔料などの着色剤、香料、界面活性剤などの添加剤を、必要に応じて適宜、配合することができる。
【0030】
そして、このようにして得られた本発明の親水性コーティング剤の用途は、親水性を要する基材、例えば、空調機の熱交換器に用いられる冷却ファンなどの基材表面の親水性コーティング剤として用いられる。
基材表面に対する塗布は、特に制限されず、例えば、本発明の親水性コーティング剤を、常温において、刷毛に含浸させて、その刷毛で、塗装面に塗る刷毛塗りなど、適宜公知の方法が用いられる。なお、塗布方法は、上記した刷毛塗り以外にも、例えば、スポンジ塗布、スプレーコーティングなど、その目的および用途により適宜選択することができる。
【0031】
このようにして、基材表面に塗布された親水性コーティング剤は、溶剤(オルガノシリカゾルに用いられる有機溶媒を含む。)が揮発するに伴なって、硬化触媒および空気中の水分が作用して湿気硬化性シリコーンオリゴマーが硬化し、基材表面にコロイダルシリカのシリカ粒子が分散されたコーティング皮膜が形成される。そして、このシリカ粒子を含むコーティング皮膜が、基材表面に、優れた親水性を付与することができる。
【0032】
その結果、このコーティング皮膜により、たとえ基材に水滴が付着しても、その水滴の接触角を低減させて、例えば、空調機に用いられる熱交換器の冷却ファン間における水によるブリッジの形成を防止し、熱交換率の低下を防止することができる。
さらに、このコーティング皮膜により、水滴の接触角を低減させるので、ファン表面における水に対する濡れ性が向上して、冷却ファンに付着する水滴が、ファン間から水飛び、つまり、水の飛散が生じることを防止することができる。
【0033】
また、本発明の親水性コーティング剤は、上記したように、加熱工程を必要とせず、常温において加工することができる。
また、本発明の親水性コーティング剤により形成されるコーティング皮膜は、優れた耐久性を実現することができる。その結果、長期間にわたって、優れた基材の親水性を維持することができ、長期にわたる耐久後においても、基材表面に優れた親水性を付与することができる。
【0034】
なお、本発明の親水性コーティング剤は、より具体的には、自動車用コーティング剤として、自動車に用いることができ、また、上記した基材のみならず、家庭用または産業用の各種製品についても、広く用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 2.0重量部
(粘度:1.2mm/s<25℃>、高硬度タイプ、R:メチル
硬化触媒DX−9740(有機アルミニウム化合物タイプ)10重量%含有
商品名:KR−400(信越化学工業社製))
オルガノシリカゾル 20.0重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜15nm (球状タイプ)
商品名:IPA−ST(日産化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール78.0重量部に順次添加し、均一分散させることにより、親水性コーティング剤を得た。
【0036】
実施例2
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 5重量部
(粘度:8mm/s<25℃>、低硬度タイプ、R:フェニル
商品名:KR−217(信越化学工業社製))
オルガノシリカゾル 30重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜15nm(球状タイプ)
商品名:IPA−ST(日産化学工業社製))
硬化触媒 0.25重量部 (有機チタニウム化合物タイプ
商品名:D−20(信越化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール64.75重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0037】
実施例3
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 3.0重量部
(粘度:160mm/s<25℃>、厚膜化可能タイプ、R:メチル
商品名X−40−9250(信越化学工業社製))
オルガノシリカゾル 40.0重量部
(固形分30重量% 粒子径40〜50nm(球状タイプ)
商品名:IPA−ST−L(日産化学工業社製))
硬化触媒 0.15重量部
(有機チタニウム化合物タイプ
商品名:DX−175(信越化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール56.85重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0038】
実施例4
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 5.0重量部
(粘度:4mm/s<25℃>、超高硬度タイプ、R:水素
商品名X−40−2308(信越化学工業社製))
オルガノシリカゾル 30.0重量部
(固形分30重量% 粒子径70〜100nm(球状タイプ)
商品名:IPA−ST−ZL(日産化学工業社製))
硬化触媒 0.25重量部
(有機チタニウム化合物タイプ
商品名:D−20(信越化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール64.75重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0039】
実施例5
湿気硬化性シリコーンオリゴマー 3.0重量部
(粘度:4mm/s<25℃>、超高硬度タイプ、R:水素
商品名X−40−2308(信越化学工業社製))
オルガノシリカゾル 70.0重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜20nm(鎖状タイプ)
商品名:IPA−ST−UP(日産化学工業社製))
硬化触媒 0.15重量部
(有機チタニウム化合物タイプ
商品名:D−20(信越化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール26.85重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0040】
比較例1
オルガノシリカゾル 50重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜15nm(球状タイプ)
商品名:IPA−ST(日産化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール50.00重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0041】
比較例2
アクリル・スチレン樹脂溶液 3.0重量部
(固形分46重量% TG(℃):21℃ 希釈溶媒:ターペン
商品名NISSETSU U−3367(日本カーバイト工業社製))
オルガノシリカゾル 30.0重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜15nm(球状タイプ)
商品名:IPA−ST(日産化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール67.0重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0042】
比較例3
炭化水素系樹脂溶液 5.0重量部
(数平均分子量(Mn):750 軟化点(℃):125℃の樹脂
商品名:アルコンP−125)
上記の樹脂をターぺンに固形分30重量%となるように、加熱溶解させたもの)
オルガノシリカゾル 60.0重量部
(固形分30重量% 粒子径10〜20nm(鎖状タイプ)
商品名:IPA−ST−UP(日産化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール35.0重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0043】
比較例4
アクリル系樹脂エマルジョン 5.0重量部
(固形分:30重量% TG(℃):7℃ エマルジョン樹脂
商品名:NIKASOL FX−003A)
アルミナゾル 60.0重量部
(固形分10重量% PH:2.5〜4.5
商品名:アルミナゾル−100(日産化学工業社製))
上記の成分をイソプロパノール35.0重量部に順次添加し、均一分散させることにより親水性コーティング剤を得た。
【0044】
(評価)
(サンプル作成)
5×5cmにカットしたアルミ板を用意し、各実施例及び各比較例で得られた、親水性コーティング剤を、用意したアルミ板に刷毛を用いて塗布した。塗布後、溶剤を乾燥させた後、さらに24時間放置することによりサンプルを作成した。
1) 初期の親水性の度合い
各実施例及び各比較例の親水性コーティング剤を用いて作成したサンプルの接触角を測定し、濡れ性を観察することにより、初期の親水性の度合いを評価した。なお、初期の親水性の度合いは、下記の基準により評価した。その結果を、表1に示す。
◎:水の接触角が10°未満であり、サンプル表面が水に非常によく濡れる状態
○:水の接触角が10°以上30°未満であり、サンプル表面が水によく濡れる状態
△:水の接触角が30°以上60°未満であり、サンプル表面が水を少しはじく状態
×:水の接触角が60°以上で、サンプル表面がよく水をはじく状態
2) コーティング皮膜の耐久性
洗剤を用いてサンプルの処理面を洗浄して、往復30回洗浄した後の処理面の接触角を測定し、濡れ性を観察することにより、コーティング皮膜の耐久性を評価した。なお、コーティング皮膜の耐久性は、下記の基準により評価した。その結果を、表1に示す。
◎:洗浄後の水の接触角が10°未満であり、処理面が水に非常によく濡れる状態
○:洗浄後の水の接触角が10°以上30°未満であり、処理面が水によく濡れる状態
△:洗浄後の水の接触角が30°以上60°未満であり、処理面が水を少しはじく状態(コーティング皮膜が少し劣化した状態)
×:洗浄後の水の接触角が60°以上で、処理面が水をはじくようになった状態(コーティング皮膜が劣化した状態)
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシリカゾルと、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒とを含有していることを特徴とする、親水性コーティング剤。
【請求項2】
前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが下記一般式(1)で示されることを特徴とする、請求項1に記載の親水性コーティング剤。
Si(OR4−m (1)
(一般式(1)中、Rは、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、mは0〜3の整数をそれぞれ示す。また、RおよびRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記オルガノシリカゾルは、コロイダルシリカ粒子が、溶液中で互いに鎖状に連続していることを特徴とする、請求項1または2に記載の親水性コーティング剤。
【請求項4】
親水性コーティング剤の配合割合は、親水性コーティング剤の総量100重量部に対して、前記オルガノシリカゾルが、20〜90重量部、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、0.1〜10重量部、前記触媒が、0.01〜1.5重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性コーティング剤。

【公開番号】特開2007−297600(P2007−297600A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79068(P2007−79068)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】