親水性基板のパッケージおよびイムノクロマト用試験具
【課題】親水性処理をした基板の親水性を維持するための方法およびパッケージを提供すること。特に、作製コストが比較的安価であり、また生産性にも優れている親水性基板のパッケージを提供すること。
【解決手段】親水性基板のパッケージは、親水性基板と、親水性基板が気密状態で収容
される袋と、を有する。親水性基板は、樹脂を成形してなる基板を有し、該袋 から取り
出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が低く維持される。好ましくは、親水性基板は、その表面から突出した複数の突起を有する。
【解決手段】親水性基板のパッケージは、親水性基板と、親水性基板が気密状態で収容
される袋と、を有する。親水性基板は、樹脂を成形してなる基板を有し、該袋 から取り
出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が低く維持される。好ましくは、親水性基板は、その表面から突出した複数の突起を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂よりなる複数の微小な突起を備えた親水性基板のパッケージおよびその製造方法に関し、さらにその親水性基板を用いたイムノクロマト用試験具および細胞培養基板に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の基板上に微小の突起(ピラーとも呼ばれる。)を複数設けることにより、複
数の突起による液体の毛細管現象を利用した装置が、特表 2005−532151号公
報(特許文献1)、特表2009−541737号公報(特許文献2)、特表2007−530938号公報(特許文献3)などに開示されている。
【0003】
これらの装置においては、血液などの液体を突起間に流すことができるので、突起のある領域に親水性処理、疎水性処理などの処理を施すことにより、液体の分析、分離などの分野で有用とされている。
【0004】
しかし、実際には、基板上に複数の突起を設けたことに起因する毛細管現象によって液体が流動することが証明されていない。
【0005】
例えば、特許文献1(特表2005−532151号公報)の段落0007では、「流体
に対して毛細管の材料の接触角が90°未満の場合、材料は親水性と考 えられる。流体
に対して毛細管材料の接触角が90°を超える場合、その材料は疎水性と考えられる。」と記載されており、このように基板表面を親水性とした場合であっても、材料の接触角が90°未満の場合には必ずしも液体を突起間に毛細管現象によって流動させることができない。
【0006】
上記特許文献3(特表2007−530938号公報)の段落0056では、「基板に、
親水性の処理又はコーティングが施される。それは、基板に対して、例 えば、ガスプラ
ズマ処理のような酸化処理を施したり、酸化シリコンのような親水性物質や、デキストラン、ポリエチレングリコール、ヘパリン、それらの誘導体のような親水性ポリマーや、洗浄剤や、ポリマーのような生物学的物質でコーティングしたりすることによって、行われる。」と記載されている。
【0007】
しかし、基板に親水性物質を施したり、親水性ポリマーをコーティングした場合には
、親水性基板の作製コストおよび生産性の点で好ましくない。さらに、基板 にガスプラ
ズマ処理のような酸化処理を施した場合には、親水性基板の作製コストおよび生産性の点では好ましいが、通常のガスプラズマ処理では基板に毛細管現象を付与することはできない。
【0008】
しかも、ガスプラズマ処理した基板表面の親水性は、時間の経過に伴って大きく低下するため、使用時には液体の十分な流動性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−532151号公報
【特許文献2】特表2009−541737号公報
【特許文献3】特表2007−530938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の点に着目してなされたものであり、本発明の目的は、基板表面の接触角を大きく低下させることによって基板上に設けた複数の突起による毛細管現象によって液体を流動させることができる親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、作製コストが比較的安価であり、また生産性にも優れている親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、親水性の持続期間が長い親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、親水性基板を用いたイムノクロマト用試験具、および、細胞培養基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は以下を提供する。
(項目1)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である親水性基板のパッケージ。
(項目2)
前記水接触角が、2〜15°である項目1に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目3)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後12日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目4)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後42日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目5)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が2〜15°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目6)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が10°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目7)
前記袋内に、脱酸素剤が前記親水性基板とともに封入される項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目8)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージ。
(項目9)
前記袋が酸素不透過性である項目1〜8のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目10)
前記親水性基板の表面が、赤外吸収スペクトルにおいて、3500/cm付近に吸収を有する
項目1〜9のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目11)
前記親水性基板の表面が親水性処理されている項目1〜10のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目12)
項目11に記載の親水性基板のパッケージであって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、親水性基板のパッケージ。
(項目13)
前記樹脂が、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、およびポリスチレンからなる群から選択される透明樹脂である項目1〜12のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目14)
該複数の突起は、所定の高さ(H)、直径(D)、及び相互間隔を有し、該突起の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μm〜1000μmである項目1〜13のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケー
ジ。
(項目15)
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°とする工程、および
該親水性処理された基板を袋内に封入する工程、
を包含する親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目16)
さらに、袋内に脱酸素剤を入れる工程、を包含する項目15に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目17)
前記袋が、酸素不透過性である項目15または16に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目18)
項目15〜17のいずれかに記載の親水性基板のパッケージの製造方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、製造方法。
(項目19)
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°以下とする工程、を包含する樹脂製基板を親水性にする方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法によって得られた親水性基板。
(項目22)
項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有し、該親水性基板の複数の突起間を検体が毛管現象により移動可能であるイムノクロマト用試験具。
(項目23)
脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える、該基板の表面の親水性を維持するための容器。
(項目24)
樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法。
(項目25)
項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有する、細胞培養基板。
(項目26)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後365日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の親水性基板のパッケージによれば、親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有し、該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、 該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後、および/または、パッケージを製造後12日間保存した後、および/または、パッケージを製造後21日間保存した後、および/または、パッケージを製造後42日間保存した後、および/または、パッケージを製造後365日間保存した後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下、好ましくは 2〜15°であるので、基板の表面状態および複数の突起の存在によって毛細管現象を生じさせ、親水性基板上で液体を容易に流動させることができる。そのため、液体を分析用装置内へ導入することが容易となる。また、親水性基板を袋内に封入するので、長期間にわたる親水性基板の親水性を維持することができる。
【0016】
本発明の親水性基板のパッケージの製造方法によれば、基板を親水性処理して、その表面の水接触角を20°以下、または、2〜15°、または、10°以下とすることができる。この時、基板表面には親水性に寄与する水酸基が形成されたことが例えばFT-IR分析
に より確認できる。そのため、親水性基板の生産性に優れており、また作製コストも比
較的安価である。パッケージは、親水性基板とともに脱酸素剤を含んでもよ い。例えば
、本発明において、親水性基板と、親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージが提供される。
【0017】
さらに、本発明のイムノクロマト用試験具、および、細胞培養基板は、上記親水性基板を用いるので、安価に作製でき、生産性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の親水性基板の断面図である。
【図2】図1に示す親水性基板の要部の斜視図である。
【図3】ABS樹脂からなる親水性基板の赤外吸収スペクトル(以下、FT−IRという。)を測定したスペクトル図である。
【図4】PCからなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図5】アクリル樹脂からなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図6】PSからなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図7】PMMA親水性基板の親水性の経時変化を示すグラフである。
【図8】Falcon製セルカルチャープレートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図9】Nunclon製組織培養フラスコのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図10】プラズマ処理したPCからなるシートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図11】コロナ処理したPCからなるシートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明の親水性基板のパッケージは、親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する。
【0021】
図1に示すように、該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板1と、該基板1の表面から突出した複数の突起2とを有する。そして、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である。
【0022】
(基板)
基板の形状は限定するものではないが、通常は矩形の板状である。基板1は、フィル
ムやシート状のものも含む。基板は樹脂を成形して形成される。樹脂として は、ポリエ
ステル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)、ポリアミド、PS(ポリスチレン)などの熱可塑性樹脂、生物分解性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを使用することができる。通常は、熱可塑性樹脂が使用される。特に、透明であり、成形性に 優れた非結晶性樹脂が好ましい。
【0023】
特に好ましい樹脂は、PC、ABS、PMMA(アクリル)、およびPSなどの透明樹脂である。
【0024】
該基板の表面から突出する複数の突起は、樹脂の成形によって形成することができる。該基板は金型を使用した溶融微細転写法によって形成することができる。あるいは、基板は、熱可塑性樹脂シートまたは紫外線硬化樹脂シートを用いて成型によって形成することもできる。
【0025】
(突起)
図1および図2に示すように、突起2は基体1表面から垂直方向に延びている。
突起の高さ、直径、隣接する突起間の間隔は、樹脂の種類、基板の親水性の程度(接触角)、使用目的などに応じて設定することができるが、典型的には、突起2の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μ
m〜1000μmが好ましい。
【0026】
本発明において、突起2の直径Dとは、突起の中間位置における相当直径である。な
お、相当直径という語を用いたのは、突起の断面が必ずしも円形ではなく、 楕円、多角
形、非対称形などの場合があるためで、本発明ではこれらを全て包含するために相当直径を用いる。アスペクト比(H/D)としては、4以上が好ましく、8から30がより好ましい
。しかし、構造的な強度の点から100以下が好ましい。突起部の形状は典型的には、略円柱形状である。突起表面に化学的又は生物学的処理をすることができる。
【0027】
(水接触角)
本発明において、袋から取り出した直後の親水性基板の表面の水接触角は20°以下である。好ましい水接触角は2〜15°であり、さらに好ましくは、2〜10°である。
【0028】
親水性基板の表面の水接触角が20°を越えると、従来技術で説明したように、血液等の液体の流動性が十分ではない。
【0029】
本発明では、水接触角は、JIS R3257(静滴法、簡易的にθ/2法などとも呼ばれる。)に準拠して測定した。
【0030】
親水性基板表面の水接触角(本明細書では単に接触角ともいう。)を20°以下とするには、次の条件で、該基板を親水性処理すればよい。
【0031】
なお、本明細書において、親水性処理とは、装置内に大気ガスまたはアルゴンなどの
ガスを入れ、真空中でガスを活性化させ基板表面に当てることで、基板表面 に水酸基を
増大させる方式である。使用するガス、電源方式(RF,DCなど)、真空の程度(高真空(10の-3乗Pa程度以上)〜低真空(1〜100Pa程度))を選択することによって、親水性
処理
条件を調節することができる。
【0032】
(親水性基板のパッケージの製造方法)
次に、親水性基板のパッケージの製造方法を説明する。
【0033】
上記のように樹脂を成形して、表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準
備する。次に、該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角 を20°以
下、または、2〜15°、または、10°以下とする。親水性処理の条件は、樹脂の種類に応じて、真空度、投入電力、処理時間を変更すればよい。
【0034】
一般には、電極と処理対象基板の距離がおよそ1〜300mmで、基板を公転して処理する
場合、投入電力は0.4〜3(KW)、処理時間は 1〜300(秒)、真空度は0.1〜
50(Pa)である。好ましくは、投入電力は1.6〜2(KW)、処理時間は60〜120(秒)、真空度は5〜20、特に10(Pa)である。
【0035】
以下の実施例および請求項では、公転で処理する場合を例に記載するが、基板を静止させて処理することも可能であり、その場合、処理時間は公転の場合のおおむね、1/5〜1/50にすればよい。
【0036】
このようにして、表面の水接触角が20°以下の、より好ましくは10°以下の親水性基板が得られる。
【0037】
次に、親水性処理された親水性基板を酸素不透過性の袋内に封入する。例えば、アル
ミ箔などの袋を用いることができる。袋内には空気を封入しても良いが、窒 素、アルゴ
ンなどの不活性気体を封入しても良く、あるいは真空密封しても良い。また、袋内に親水性基板とともに脱酸素剤を入れるのが好ましい。この封入工程によって、親水性基板表面
の水酸基が時間の経過によって減少することを抑制でき、長期間にわたる親水性を親水性基板に付与することができる。
【0038】
親水性基板を使用するときは、袋から親水性基板を取り出して使用する。
【0039】
(袋)
親水性基板を収容する袋としては、酸素不透過性の合成樹脂製袋あるいはアルミニウムなどの金属製袋、あるいはそれらを積層した袋を使用するのが好ましい。
【0040】
(基板表面の親水性を維持するための方法および容器)
本発明においては、基板表面の親水性を維持するための方法および容器が提供される。そのような容器は、脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える容器である。基板は、表面に複数の突起が設けられていてもよい。
【0041】
本発明においては、さらに、表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法が提供される。
【0042】
(イムノクロマト用試験具)
イムノクロマト用試験具は一般に、展開層の一部に固定化抗体が配置されるとともに、その抗体固定化部分よりも点着部寄りの位置に標識抗体が被検査液によって溶出可能な乾燥状態で保持された構成である。
【0043】
被検査液を点着部に必要量添加すると展開層を浸透していき、被検査液中に検査対象
物質が含まれているときには、その検査対象物質が標識抗体に結合しさらに 固定化抗体
に結合するので、抗体固定化部分の標識抗体を検出することで検査対象物質を検出することが可能である。標識抗体を構成する標識物の一例は金コロイド粒子であり、金コロイド粒子による呈色反応によって目視可能ともなるので、その呈色度合いより、被検査液中における検査対象物質の有無および濃度を検 出(測定)することができる。
【0044】
本発明のイムノクロマト用試験具では、試験具本体の一部または全部の表面に複数の突起が設けられた領域を形成することができる。それらの領域の水接触角が20°以下である。
【0045】
具体的には、複数の突起を有する領域A中を、毛管現象によって移動してきた抗原、
抗体および/または複合体は、領域Bに固定された抗体または抗原により捕 捉される。
標識物質を含んだ抗原、抗体および/または複合体が捕捉されると、領域Bに生じる呈色として確認することができる。ここで領域Bに生じる呈色の色調は、用いるイムノクロマト法(試薬の組合せ)と検体中の測定対象物質の濃度に依存する。例えば、検体中の抗原と試薬パッドCに保持されていた標識抗体 により形成された複合体を、反応領域におけ
る固定化抗体で捕捉する場合においては、検体中の測定対象物質の濃度が高いと、領域Bで捕捉される複合体が増加するため、強い色調の呈色を生じ、検体中の測定対象物質の濃度が低いと、領域Bで捕捉される複合体が減少するため、弱い色調の呈色を生じる。
【0046】
一方、例えば、検体中の抗原と、試薬パッドCに保持されていた標識抗原との競合反
応において、反応領域で標識抗原を固定化抗体により捕捉する場合において は、検体中
の測定対象物質の濃度が高いと、領域で捕捉される標識抗原が減少するため、弱い色調の呈色を生じ、検体中の測定対象物質の濃度が低いと、領域Bで捕捉される標識抗原が増加するため、強い色調の呈色を生じる。
【0047】
使用できるサンプルとしては、体液、環境流体、プロセス 流体がある。体液としては
、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、精液、胃液、痰、涙液等がある。環境流体としては、例えば、地上水、地下水、汚泥等がある。プロセス流体としては、例えば、ミルク、乳清、肉汁、栄養溶液、細胞培養媒体等がある。
【0048】
(細胞培養基板)
本発明の親水性基板、特に、表面に複数の突起が設けられた親水性基板は、細胞培養基板として用いることができる。
【0049】
細胞としては、ヒト及び又はヒト以外の動物の細胞及び又はそれらに由来する細胞が
挙げられる。ヒト以外の動物としては、特に限定されず、例えば、霊長類 (アカゲザル
など)、マウス、ラット、イヌなどが挙げられる。ヒトの生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点からは、ヒトの細胞又はそれに由来する細胞が好ましい。
【0050】
細胞の種類も、特に制限されず、肝細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、乳腺細胞、筋細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、骨細胞および免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。
【0051】
必要に応じて、本発明の基板上には、細胞の他に、細胞外マトリックスを含んでもよ
い。本発明において、細胞外マトリックスは、生体内で細胞の外の空間を充 填し、骨格
的役割、足場を提供する役割、及び又は、生体因子を保持する役割などの機能を果たす生体内物質を含んでもよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(親水性処理)
PCとABS樹脂基板を用いて、親水性処理条件と親水性の効果を測定した。親水性処理時間を60秒とし、装置内の真空度を10Paとした。
【0053】
PC基板は、三菱ガス化学(株)社製および社内成形品を用いた。
【0054】
ABS樹脂基板は、UMG ABS社製および社内成形品を用いた。
【0055】
親水性処理条件を5水準(投入電力を0.2kw、0.4kw、0.8kw、1.6kw、2.6kwの5水準:
処理時間および真空度は一定)で処理したサンプルを作製し、接触角の測定を、JIS R3257に準拠して測定したところ、いずれの樹脂基板でも、また、いずれの処理条件でも、接触角は10°以下であった。
【0056】
(実施例2)
実施例1の結果から、親水性処理の直後は基板の親水性が優れていることに注目し、その後基板表面を酸素の影響を受けない環境に保存すれば親水性を長期間、維持できると考え、以下の実験を実施した。
【0057】
図3は、ABS樹脂からなる基板を、親水性処理条件(投入電力:2.6kW×60秒)で
処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。スペクトル図から、特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じることがわかる。
【0058】
図4は、PC樹脂からなる基板を、上記と同じ親水性処理条件(投入電力:2.6kW×6
0秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。このスペクトル図からも、特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じることがわかる
。
【0059】
図5は、PMMA樹脂からなる基板を、上記とは異なる親水性処理条件(投入電力:1.62kW×120秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図であ
る。
【0060】
図6は、PSからなる基板を、上記と異なる親水性処理条件(投入電力:1.94kW×120
秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【0061】
これらのスペクトル図から、同一の特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じ
ることがわかる。FT−IR分析で、この波数に生じるピークは水酸基(−OH)の増大によることが知られている。従って、親水性処理により親水性が向上(接触角10°以下まで改善)することと、水酸基(-OH)が増大することを確認した。
【0062】
(比較例1)
Falcon製セルカルチャープレート(市販品:PS製)を用い、この製品のFT−IR分析の結果を図8に示す。
【0063】
さらに、該製品の水接触角の測定結果は次のとおりであった。
【0064】
接触角は、本体底面(内側)で39.6°、本体底面(外側)で49.2°、フタ(内側)で81.2°であった。これらの数値は本特許で実現される接触角に比べると格段に大きく、親水性として劣っている。
【0065】
図8から明らかなように、水酸基の存在が見られなかった。
【0066】
(比較例2)
Nunclon製組織培養フラスコ(市販品:PS製)を用い、この製品のFT−IR分析の
結果を図9に示す。さらに、該製品の水接触角の測定結果は次のとおりであった。
【0067】
接触角は、本体底面(内側)で45°、本体底面(外側)で52°であった。これらの数値は本特許で実現される接触角に比べると格段に大きく、親水性として劣っている。
【0068】
図9から明らかなように、この製品の表面からも、水酸基の存在が見られなかった。
【0069】
(比較例3)
PC、PMMA、PS、およびABSからなるサンプルについて、印刷前処理などで用いられる、一般的な親水化処理であるコロナ処理、プラズマ処理を実施した。
【0070】
コロナ処理およびプラズマ処理の条件は次のとおりである。
【0071】
コロナ処理条件:3DT社製の装置を使用し、10KV、5m/分を10回照射した。
【0072】
プラズマ処理条件:3DT社製の装置を使用し、20KV、5m/分を1回照射した。
【0073】
次に、処理直後のサンプルをアルミニウム箔の袋内に脱酸素剤(Z-30PK、三菱ガス化学(株)製)とともに密封保管した後、1日後、21日後に、袋から取り出したサンプルについて同様に水接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
また、処理直後のサンプルのFT−IR分析の結果を図10(プラズマ処理、PCシー
ト)、図11(コロナ処理、PCシート)に示す。
【0075】
(表1:他の方法の例)
【0076】
【表1】
これらはいずれも大気中で行う手法であり、接触角が10°以下のような数値には至らない。その場合のFT−IRも測定したが、−OH基の増大は観察されなかった。また、21日後には、親水性は大幅に劣化している。
【0077】
(実施例3)
PMMAからなる基板を、親水性処理条件(投入電力:2.6kW×60秒)で実施し、得
られた親水性基板の表面の接触角を測定した。
【0078】
サンプルの接触角は次の条件で放置した後に、それぞれのサンプルについて測定した。
【0079】
(1)親水性処理直後、(2)親水性処理後のサンプルを大気中保存した後、12日
、21日、42日、および、365日経過後、(3)親水性処理後のサンプルをアルミニウム箔の袋内に脱酸素剤(Z-30PK、三菱ガス化学(株)製)とともに密封保管(以下、エージレス保存ともいう。)して親水性基板のパッケージを得た後、大気中で、12日、21日、42日、および、365日経過後。
【0080】
なお、アルミ袋は(株)生産日本社のラミジップアルミ袋AL-Dを用いた。
【0081】
その結果を図7に示す。
【0082】
図7からもわかるように、42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は約47°、エージレス保存の基板の接触角は18.4°であった。そして、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は59.0°、エージレス保存の基板の接触角は18.4°であった。一方、未処理の基板の接触角は84.6°であった。以上のとおり、パッケージを製造後 365日(1年)間エージレス保存した後の親水性基板の表面の水接触角は20°以下 であり、エージレス保存のほうが大気中保存に比べて、基板表面の接触角が小さく 維持されていることがわかる。
【0083】
次に、ABS、PC、PSの各種樹脂について親水性効果があることを示す。上記の各樹脂について、PMMAと同様の実験を行った。
【0084】
その結果は次のとおりである。
ABS:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は56.4°、エージレス保存の基板の接触角は18.8°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は67.4°、エージレス保存の基板の接触角は18.8°であり、一方、未処理の基板の接触角は92.4°であった。
PC:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は54.6°、エージレス保存の基板の接触角は16.4°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は71.2°、エージレス保存の基板の接触角は19.0°であり、一方、未処理の基板の接触角は74.8°であった。
PS:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は26.6°、エージレス保存の基板の接触角は17.8°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は78.4°、エージレス保存の基板の接触角は19.4°であり、一方、未処理の基板の接触角は81.2°であった。
【0085】
上記PMMA以外の樹脂についても親水性処理の効果が得られること、およびエージレス保存により親水性が維持されることが確認できた。
【0086】
(実施例4)
次に、接触角と毛細管現象との関係を示す。
【0087】
毛細管において、送液開始のための圧力は、次の式1で表される。
【数1】
【0088】
γ;表面張力(水の場合、0.072N/m)
r:管の半径(血管を想定すると、γ=3μm)
θ:接触角
従って、ΔP(送液開始のための圧力)は、接触角によって次のように変化する。
接触角 ΔP
10° 0.73KPa(わずかな圧力で流れる)(85°の場合の1/60)
20° 2.92KPa(85°の場合の1/15)
30° 6.43KPa
40° 11.2KPa(20°の場合の3.8倍)(85°の場合の約1/4)
50° 17.1KPa
60° 24KPa
85° 43.8KPa(流れるためには大きな圧力が必要となる)
以上のことから、接触角が20°以下であれば、親水性基板上で液体を容易に流動させることができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、液体の分析、分離などの分野で有用である。また、親水性基板を用いてイムノクロマト用試験具に利用することもできる。
【0090】
さらに、本発明は、微小スケールで様々なサイズの核酸断片をはじめとする物質、例えば細胞、核酸断片、あるいは、アミノ酸・ペプチド・タンパク質などの有機分子、金属イオン、コロイド、ラテックスビーズなどを分離する際などに用いる分離装置としても好適である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂よりなる複数の微小な突起を備えた親水性基板のパッケージおよびその製造方法に関し、さらにその親水性基板を用いたイムノクロマト用試験具および細胞培養基板に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の基板上に微小の突起(ピラーとも呼ばれる。)を複数設けることにより、複
数の突起による液体の毛細管現象を利用した装置が、特表 2005−532151号公
報(特許文献1)、特表2009−541737号公報(特許文献2)、特表2007−530938号公報(特許文献3)などに開示されている。
【0003】
これらの装置においては、血液などの液体を突起間に流すことができるので、突起のある領域に親水性処理、疎水性処理などの処理を施すことにより、液体の分析、分離などの分野で有用とされている。
【0004】
しかし、実際には、基板上に複数の突起を設けたことに起因する毛細管現象によって液体が流動することが証明されていない。
【0005】
例えば、特許文献1(特表2005−532151号公報)の段落0007では、「流体
に対して毛細管の材料の接触角が90°未満の場合、材料は親水性と考 えられる。流体
に対して毛細管材料の接触角が90°を超える場合、その材料は疎水性と考えられる。」と記載されており、このように基板表面を親水性とした場合であっても、材料の接触角が90°未満の場合には必ずしも液体を突起間に毛細管現象によって流動させることができない。
【0006】
上記特許文献3(特表2007−530938号公報)の段落0056では、「基板に、
親水性の処理又はコーティングが施される。それは、基板に対して、例 えば、ガスプラ
ズマ処理のような酸化処理を施したり、酸化シリコンのような親水性物質や、デキストラン、ポリエチレングリコール、ヘパリン、それらの誘導体のような親水性ポリマーや、洗浄剤や、ポリマーのような生物学的物質でコーティングしたりすることによって、行われる。」と記載されている。
【0007】
しかし、基板に親水性物質を施したり、親水性ポリマーをコーティングした場合には
、親水性基板の作製コストおよび生産性の点で好ましくない。さらに、基板 にガスプラ
ズマ処理のような酸化処理を施した場合には、親水性基板の作製コストおよび生産性の点では好ましいが、通常のガスプラズマ処理では基板に毛細管現象を付与することはできない。
【0008】
しかも、ガスプラズマ処理した基板表面の親水性は、時間の経過に伴って大きく低下するため、使用時には液体の十分な流動性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−532151号公報
【特許文献2】特表2009−541737号公報
【特許文献3】特表2007−530938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の点に着目してなされたものであり、本発明の目的は、基板表面の接触角を大きく低下させることによって基板上に設けた複数の突起による毛細管現象によって液体を流動させることができる親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、作製コストが比較的安価であり、また生産性にも優れている親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、親水性の持続期間が長い親水性基板のパッケージを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、親水性基板を用いたイムノクロマト用試験具、および、細胞培養基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は以下を提供する。
(項目1)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である親水性基板のパッケージ。
(項目2)
前記水接触角が、2〜15°である項目1に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目3)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後12日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目4)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後42日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目5)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が2〜15°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目6)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が10°以下である、親水性基板のパッケージ。
(項目7)
前記袋内に、脱酸素剤が前記親水性基板とともに封入される項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目8)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージ。
(項目9)
前記袋が酸素不透過性である項目1〜8のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目10)
前記親水性基板の表面が、赤外吸収スペクトルにおいて、3500/cm付近に吸収を有する
項目1〜9のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目11)
前記親水性基板の表面が親水性処理されている項目1〜10のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目12)
項目11に記載の親水性基板のパッケージであって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、親水性基板のパッケージ。
(項目13)
前記樹脂が、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、およびポリスチレンからなる群から選択される透明樹脂である項目1〜12のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
(項目14)
該複数の突起は、所定の高さ(H)、直径(D)、及び相互間隔を有し、該突起の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μm〜1000μmである項目1〜13のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケー
ジ。
(項目15)
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°とする工程、および
該親水性処理された基板を袋内に封入する工程、
を包含する親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目16)
さらに、袋内に脱酸素剤を入れる工程、を包含する項目15に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目17)
前記袋が、酸素不透過性である項目15または16に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
(項目18)
項目15〜17のいずれかに記載の親水性基板のパッケージの製造方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、製造方法。
(項目19)
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°以下とする工程、を包含する樹脂製基板を親水性にする方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法によって得られた親水性基板。
(項目22)
項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有し、該親水性基板の複数の突起間を検体が毛管現象により移動可能であるイムノクロマト用試験具。
(項目23)
脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える、該基板の表面の親水性を維持するための容器。
(項目24)
樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法。
(項目25)
項目1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有する、細胞培養基板。
(項目26)
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後365日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の親水性基板のパッケージによれば、親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有し、該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、 該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後、および/または、パッケージを製造後12日間保存した後、および/または、パッケージを製造後21日間保存した後、および/または、パッケージを製造後42日間保存した後、および/または、パッケージを製造後365日間保存した後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下、好ましくは 2〜15°であるので、基板の表面状態および複数の突起の存在によって毛細管現象を生じさせ、親水性基板上で液体を容易に流動させることができる。そのため、液体を分析用装置内へ導入することが容易となる。また、親水性基板を袋内に封入するので、長期間にわたる親水性基板の親水性を維持することができる。
【0016】
本発明の親水性基板のパッケージの製造方法によれば、基板を親水性処理して、その表面の水接触角を20°以下、または、2〜15°、または、10°以下とすることができる。この時、基板表面には親水性に寄与する水酸基が形成されたことが例えばFT-IR分析
に より確認できる。そのため、親水性基板の生産性に優れており、また作製コストも比
較的安価である。パッケージは、親水性基板とともに脱酸素剤を含んでもよ い。例えば
、本発明において、親水性基板と、親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージが提供される。
【0017】
さらに、本発明のイムノクロマト用試験具、および、細胞培養基板は、上記親水性基板を用いるので、安価に作製でき、生産性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の親水性基板の断面図である。
【図2】図1に示す親水性基板の要部の斜視図である。
【図3】ABS樹脂からなる親水性基板の赤外吸収スペクトル(以下、FT−IRという。)を測定したスペクトル図である。
【図4】PCからなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図5】アクリル樹脂からなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図6】PSからなる親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図7】PMMA親水性基板の親水性の経時変化を示すグラフである。
【図8】Falcon製セルカルチャープレートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図9】Nunclon製組織培養フラスコのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図10】プラズマ処理したPCからなるシートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【図11】コロナ処理したPCからなるシートのFT−IRを測定したスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明の親水性基板のパッケージは、親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する。
【0021】
図1に示すように、該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板1と、該基板1の表面から突出した複数の突起2とを有する。そして、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である。
【0022】
(基板)
基板の形状は限定するものではないが、通常は矩形の板状である。基板1は、フィル
ムやシート状のものも含む。基板は樹脂を成形して形成される。樹脂として は、ポリエ
ステル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)、ポリアミド、PS(ポリスチレン)などの熱可塑性樹脂、生物分解性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを使用することができる。通常は、熱可塑性樹脂が使用される。特に、透明であり、成形性に 優れた非結晶性樹脂が好ましい。
【0023】
特に好ましい樹脂は、PC、ABS、PMMA(アクリル)、およびPSなどの透明樹脂である。
【0024】
該基板の表面から突出する複数の突起は、樹脂の成形によって形成することができる。該基板は金型を使用した溶融微細転写法によって形成することができる。あるいは、基板は、熱可塑性樹脂シートまたは紫外線硬化樹脂シートを用いて成型によって形成することもできる。
【0025】
(突起)
図1および図2に示すように、突起2は基体1表面から垂直方向に延びている。
突起の高さ、直径、隣接する突起間の間隔は、樹脂の種類、基板の親水性の程度(接触角)、使用目的などに応じて設定することができるが、典型的には、突起2の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μ
m〜1000μmが好ましい。
【0026】
本発明において、突起2の直径Dとは、突起の中間位置における相当直径である。な
お、相当直径という語を用いたのは、突起の断面が必ずしも円形ではなく、 楕円、多角
形、非対称形などの場合があるためで、本発明ではこれらを全て包含するために相当直径を用いる。アスペクト比(H/D)としては、4以上が好ましく、8から30がより好ましい
。しかし、構造的な強度の点から100以下が好ましい。突起部の形状は典型的には、略円柱形状である。突起表面に化学的又は生物学的処理をすることができる。
【0027】
(水接触角)
本発明において、袋から取り出した直後の親水性基板の表面の水接触角は20°以下である。好ましい水接触角は2〜15°であり、さらに好ましくは、2〜10°である。
【0028】
親水性基板の表面の水接触角が20°を越えると、従来技術で説明したように、血液等の液体の流動性が十分ではない。
【0029】
本発明では、水接触角は、JIS R3257(静滴法、簡易的にθ/2法などとも呼ばれる。)に準拠して測定した。
【0030】
親水性基板表面の水接触角(本明細書では単に接触角ともいう。)を20°以下とするには、次の条件で、該基板を親水性処理すればよい。
【0031】
なお、本明細書において、親水性処理とは、装置内に大気ガスまたはアルゴンなどの
ガスを入れ、真空中でガスを活性化させ基板表面に当てることで、基板表面 に水酸基を
増大させる方式である。使用するガス、電源方式(RF,DCなど)、真空の程度(高真空(10の-3乗Pa程度以上)〜低真空(1〜100Pa程度))を選択することによって、親水性
処理
条件を調節することができる。
【0032】
(親水性基板のパッケージの製造方法)
次に、親水性基板のパッケージの製造方法を説明する。
【0033】
上記のように樹脂を成形して、表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準
備する。次に、該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角 を20°以
下、または、2〜15°、または、10°以下とする。親水性処理の条件は、樹脂の種類に応じて、真空度、投入電力、処理時間を変更すればよい。
【0034】
一般には、電極と処理対象基板の距離がおよそ1〜300mmで、基板を公転して処理する
場合、投入電力は0.4〜3(KW)、処理時間は 1〜300(秒)、真空度は0.1〜
50(Pa)である。好ましくは、投入電力は1.6〜2(KW)、処理時間は60〜120(秒)、真空度は5〜20、特に10(Pa)である。
【0035】
以下の実施例および請求項では、公転で処理する場合を例に記載するが、基板を静止させて処理することも可能であり、その場合、処理時間は公転の場合のおおむね、1/5〜1/50にすればよい。
【0036】
このようにして、表面の水接触角が20°以下の、より好ましくは10°以下の親水性基板が得られる。
【0037】
次に、親水性処理された親水性基板を酸素不透過性の袋内に封入する。例えば、アル
ミ箔などの袋を用いることができる。袋内には空気を封入しても良いが、窒 素、アルゴ
ンなどの不活性気体を封入しても良く、あるいは真空密封しても良い。また、袋内に親水性基板とともに脱酸素剤を入れるのが好ましい。この封入工程によって、親水性基板表面
の水酸基が時間の経過によって減少することを抑制でき、長期間にわたる親水性を親水性基板に付与することができる。
【0038】
親水性基板を使用するときは、袋から親水性基板を取り出して使用する。
【0039】
(袋)
親水性基板を収容する袋としては、酸素不透過性の合成樹脂製袋あるいはアルミニウムなどの金属製袋、あるいはそれらを積層した袋を使用するのが好ましい。
【0040】
(基板表面の親水性を維持するための方法および容器)
本発明においては、基板表面の親水性を維持するための方法および容器が提供される。そのような容器は、脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える容器である。基板は、表面に複数の突起が設けられていてもよい。
【0041】
本発明においては、さらに、表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法が提供される。
【0042】
(イムノクロマト用試験具)
イムノクロマト用試験具は一般に、展開層の一部に固定化抗体が配置されるとともに、その抗体固定化部分よりも点着部寄りの位置に標識抗体が被検査液によって溶出可能な乾燥状態で保持された構成である。
【0043】
被検査液を点着部に必要量添加すると展開層を浸透していき、被検査液中に検査対象
物質が含まれているときには、その検査対象物質が標識抗体に結合しさらに 固定化抗体
に結合するので、抗体固定化部分の標識抗体を検出することで検査対象物質を検出することが可能である。標識抗体を構成する標識物の一例は金コロイド粒子であり、金コロイド粒子による呈色反応によって目視可能ともなるので、その呈色度合いより、被検査液中における検査対象物質の有無および濃度を検 出(測定)することができる。
【0044】
本発明のイムノクロマト用試験具では、試験具本体の一部または全部の表面に複数の突起が設けられた領域を形成することができる。それらの領域の水接触角が20°以下である。
【0045】
具体的には、複数の突起を有する領域A中を、毛管現象によって移動してきた抗原、
抗体および/または複合体は、領域Bに固定された抗体または抗原により捕 捉される。
標識物質を含んだ抗原、抗体および/または複合体が捕捉されると、領域Bに生じる呈色として確認することができる。ここで領域Bに生じる呈色の色調は、用いるイムノクロマト法(試薬の組合せ)と検体中の測定対象物質の濃度に依存する。例えば、検体中の抗原と試薬パッドCに保持されていた標識抗体 により形成された複合体を、反応領域におけ
る固定化抗体で捕捉する場合においては、検体中の測定対象物質の濃度が高いと、領域Bで捕捉される複合体が増加するため、強い色調の呈色を生じ、検体中の測定対象物質の濃度が低いと、領域Bで捕捉される複合体が減少するため、弱い色調の呈色を生じる。
【0046】
一方、例えば、検体中の抗原と、試薬パッドCに保持されていた標識抗原との競合反
応において、反応領域で標識抗原を固定化抗体により捕捉する場合において は、検体中
の測定対象物質の濃度が高いと、領域で捕捉される標識抗原が減少するため、弱い色調の呈色を生じ、検体中の測定対象物質の濃度が低いと、領域Bで捕捉される標識抗原が増加するため、強い色調の呈色を生じる。
【0047】
使用できるサンプルとしては、体液、環境流体、プロセス 流体がある。体液としては
、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、精液、胃液、痰、涙液等がある。環境流体としては、例えば、地上水、地下水、汚泥等がある。プロセス流体としては、例えば、ミルク、乳清、肉汁、栄養溶液、細胞培養媒体等がある。
【0048】
(細胞培養基板)
本発明の親水性基板、特に、表面に複数の突起が設けられた親水性基板は、細胞培養基板として用いることができる。
【0049】
細胞としては、ヒト及び又はヒト以外の動物の細胞及び又はそれらに由来する細胞が
挙げられる。ヒト以外の動物としては、特に限定されず、例えば、霊長類 (アカゲザル
など)、マウス、ラット、イヌなどが挙げられる。ヒトの生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点からは、ヒトの細胞又はそれに由来する細胞が好ましい。
【0050】
細胞の種類も、特に制限されず、肝細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、乳腺細胞、筋細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、骨細胞および免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。
【0051】
必要に応じて、本発明の基板上には、細胞の他に、細胞外マトリックスを含んでもよ
い。本発明において、細胞外マトリックスは、生体内で細胞の外の空間を充 填し、骨格
的役割、足場を提供する役割、及び又は、生体因子を保持する役割などの機能を果たす生体内物質を含んでもよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(親水性処理)
PCとABS樹脂基板を用いて、親水性処理条件と親水性の効果を測定した。親水性処理時間を60秒とし、装置内の真空度を10Paとした。
【0053】
PC基板は、三菱ガス化学(株)社製および社内成形品を用いた。
【0054】
ABS樹脂基板は、UMG ABS社製および社内成形品を用いた。
【0055】
親水性処理条件を5水準(投入電力を0.2kw、0.4kw、0.8kw、1.6kw、2.6kwの5水準:
処理時間および真空度は一定)で処理したサンプルを作製し、接触角の測定を、JIS R3257に準拠して測定したところ、いずれの樹脂基板でも、また、いずれの処理条件でも、接触角は10°以下であった。
【0056】
(実施例2)
実施例1の結果から、親水性処理の直後は基板の親水性が優れていることに注目し、その後基板表面を酸素の影響を受けない環境に保存すれば親水性を長期間、維持できると考え、以下の実験を実施した。
【0057】
図3は、ABS樹脂からなる基板を、親水性処理条件(投入電力:2.6kW×60秒)で
処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。スペクトル図から、特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じることがわかる。
【0058】
図4は、PC樹脂からなる基板を、上記と同じ親水性処理条件(投入電力:2.6kW×6
0秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。このスペクトル図からも、特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じることがわかる
。
【0059】
図5は、PMMA樹脂からなる基板を、上記とは異なる親水性処理条件(投入電力:1.62kW×120秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図であ
る。
【0060】
図6は、PSからなる基板を、上記と異なる親水性処理条件(投入電力:1.94kW×120
秒)で処理し、得られた親水性基板のFT−IRを測定したスペクトル図である。
【0061】
これらのスペクトル図から、同一の特定の波数(約3500/cm付近)に広いピークが生じ
ることがわかる。FT−IR分析で、この波数に生じるピークは水酸基(−OH)の増大によることが知られている。従って、親水性処理により親水性が向上(接触角10°以下まで改善)することと、水酸基(-OH)が増大することを確認した。
【0062】
(比較例1)
Falcon製セルカルチャープレート(市販品:PS製)を用い、この製品のFT−IR分析の結果を図8に示す。
【0063】
さらに、該製品の水接触角の測定結果は次のとおりであった。
【0064】
接触角は、本体底面(内側)で39.6°、本体底面(外側)で49.2°、フタ(内側)で81.2°であった。これらの数値は本特許で実現される接触角に比べると格段に大きく、親水性として劣っている。
【0065】
図8から明らかなように、水酸基の存在が見られなかった。
【0066】
(比較例2)
Nunclon製組織培養フラスコ(市販品:PS製)を用い、この製品のFT−IR分析の
結果を図9に示す。さらに、該製品の水接触角の測定結果は次のとおりであった。
【0067】
接触角は、本体底面(内側)で45°、本体底面(外側)で52°であった。これらの数値は本特許で実現される接触角に比べると格段に大きく、親水性として劣っている。
【0068】
図9から明らかなように、この製品の表面からも、水酸基の存在が見られなかった。
【0069】
(比較例3)
PC、PMMA、PS、およびABSからなるサンプルについて、印刷前処理などで用いられる、一般的な親水化処理であるコロナ処理、プラズマ処理を実施した。
【0070】
コロナ処理およびプラズマ処理の条件は次のとおりである。
【0071】
コロナ処理条件:3DT社製の装置を使用し、10KV、5m/分を10回照射した。
【0072】
プラズマ処理条件:3DT社製の装置を使用し、20KV、5m/分を1回照射した。
【0073】
次に、処理直後のサンプルをアルミニウム箔の袋内に脱酸素剤(Z-30PK、三菱ガス化学(株)製)とともに密封保管した後、1日後、21日後に、袋から取り出したサンプルについて同様に水接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
また、処理直後のサンプルのFT−IR分析の結果を図10(プラズマ処理、PCシー
ト)、図11(コロナ処理、PCシート)に示す。
【0075】
(表1:他の方法の例)
【0076】
【表1】
これらはいずれも大気中で行う手法であり、接触角が10°以下のような数値には至らない。その場合のFT−IRも測定したが、−OH基の増大は観察されなかった。また、21日後には、親水性は大幅に劣化している。
【0077】
(実施例3)
PMMAからなる基板を、親水性処理条件(投入電力:2.6kW×60秒)で実施し、得
られた親水性基板の表面の接触角を測定した。
【0078】
サンプルの接触角は次の条件で放置した後に、それぞれのサンプルについて測定した。
【0079】
(1)親水性処理直後、(2)親水性処理後のサンプルを大気中保存した後、12日
、21日、42日、および、365日経過後、(3)親水性処理後のサンプルをアルミニウム箔の袋内に脱酸素剤(Z-30PK、三菱ガス化学(株)製)とともに密封保管(以下、エージレス保存ともいう。)して親水性基板のパッケージを得た後、大気中で、12日、21日、42日、および、365日経過後。
【0080】
なお、アルミ袋は(株)生産日本社のラミジップアルミ袋AL-Dを用いた。
【0081】
その結果を図7に示す。
【0082】
図7からもわかるように、42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は約47°、エージレス保存の基板の接触角は18.4°であった。そして、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は59.0°、エージレス保存の基板の接触角は18.4°であった。一方、未処理の基板の接触角は84.6°であった。以上のとおり、パッケージを製造後 365日(1年)間エージレス保存した後の親水性基板の表面の水接触角は20°以下 であり、エージレス保存のほうが大気中保存に比べて、基板表面の接触角が小さく 維持されていることがわかる。
【0083】
次に、ABS、PC、PSの各種樹脂について親水性効果があることを示す。上記の各樹脂について、PMMAと同様の実験を行った。
【0084】
その結果は次のとおりである。
ABS:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は56.4°、エージレス保存の基板の接触角は18.8°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は67.4°、エージレス保存の基板の接触角は18.8°であり、一方、未処理の基板の接触角は92.4°であった。
PC:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は54.6°、エージレス保存の基板の接触角は16.4°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は71.2°、エージレス保存の基板の接触角は19.0°であり、一方、未処理の基板の接触角は74.8°であった。
PS:42日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は26.6°、エージレス保存の基板の接触角は17.8°であり、365日後の各放置条件での接触角を測定したところ、大気中保存の基板の接触角は78.4°、エージレス保存の基板の接触角は19.4°であり、一方、未処理の基板の接触角は81.2°であった。
【0085】
上記PMMA以外の樹脂についても親水性処理の効果が得られること、およびエージレス保存により親水性が維持されることが確認できた。
【0086】
(実施例4)
次に、接触角と毛細管現象との関係を示す。
【0087】
毛細管において、送液開始のための圧力は、次の式1で表される。
【数1】
【0088】
γ;表面張力(水の場合、0.072N/m)
r:管の半径(血管を想定すると、γ=3μm)
θ:接触角
従って、ΔP(送液開始のための圧力)は、接触角によって次のように変化する。
接触角 ΔP
10° 0.73KPa(わずかな圧力で流れる)(85°の場合の1/60)
20° 2.92KPa(85°の場合の1/15)
30° 6.43KPa
40° 11.2KPa(20°の場合の3.8倍)(85°の場合の約1/4)
50° 17.1KPa
60° 24KPa
85° 43.8KPa(流れるためには大きな圧力が必要となる)
以上のことから、接触角が20°以下であれば、親水性基板上で液体を容易に流動させることができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、液体の分析、分離などの分野で有用である。また、親水性基板を用いてイムノクロマト用試験具に利用することもできる。
【0090】
さらに、本発明は、微小スケールで様々なサイズの核酸断片をはじめとする物質、例えば細胞、核酸断片、あるいは、アミノ酸・ペプチド・タンパク質などの有機分子、金属イオン、コロイド、ラテックスビーズなどを分離する際などに用いる分離装置としても好適である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である親水性基板のパッケージ。
【請求項2】
前記水接触角が、2〜15°である請求項1に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項3】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後12日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項4】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後42日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項5】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が2〜15°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項6】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が10°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項7】
前記袋内に、脱酸素剤が前記親水性基板とともに封入される請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項8】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージ。
【請求項9】
前記袋が酸素不透過性である請求項1〜8のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項10】
前記親水性基板の表面が、赤外吸収スペクトルにおいて、3500/cm付近に吸収を有する
請求項1〜9のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項11】
前記親水性基板の表面が親水性処理されている請求項1〜10のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項12】
請求項11に記載の親水性基板のパッケージであって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、親水性基板のパッケージ。
【請求項13】
前記樹脂が、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、およびポリスチレンからなる群から選択される透明樹脂である請求項1〜12のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項14】
該複数の突起は、所定の高さ(H)、直径(D)、及び相互間隔を有し、該突起の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μm〜1000μmである請求項1〜13のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケ
ージ。
【請求項15】
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°とする工程、および
該親水性処理された基板を袋内に封入する工程、
を包含する親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項16】
さらに、袋内に脱酸素剤を入れる工程、を包含する請求項15に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項17】
前記袋が、酸素不透過性である請求項15または16に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載の親水性基板のパッケージの製造方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、製造方法。
【請求項19】
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°以下とする工程、を包含する樹脂製基板を親水性にする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって得られた親水性基板。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有し、該親水性基板の複数の突起間を検体が毛管現象により移動可能であるイムノクロマト用試験具。
【請求項23】
脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える、該基板の表面の親水性を維持するための容器。
【請求項24】
樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法。
【請求項25】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有する、細胞培養基板。
【請求項26】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後365日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項1】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、該袋から取り出した直後の該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である親水性基板のパッケージ。
【請求項2】
前記水接触角が、2〜15°である請求項1に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項3】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後12日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項4】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後42日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項5】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が2〜15°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項6】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、ここで、親水性基板の表面の水接触角が10°以下である、親水性基板のパッケージ。
【請求項7】
前記袋内に、脱酸素剤が前記親水性基板とともに封入される請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項8】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、脱酸素剤とを有する親水性基板のパッケージ。
【請求項9】
前記袋が酸素不透過性である請求項1〜8のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項10】
前記親水性基板の表面が、赤外吸収スペクトルにおいて、3500/cm付近に吸収を有する
請求項1〜9のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項11】
前記親水性基板の表面が親水性処理されている請求項1〜10のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項12】
請求項11に記載の親水性基板のパッケージであって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、親水性基板のパッケージ。
【請求項13】
前記樹脂が、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、およびポリスチレンからなる群から選択される透明樹脂である請求項1〜12のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケージ。
【請求項14】
該複数の突起は、所定の高さ(H)、直径(D)、及び相互間隔を有し、該突起の高さ(H)は10〜5000μm、突起の直径(D)は10nm〜500μm、突起間の間隔は0.1μm〜1000μmである請求項1〜13のいずれかの項に記載の親水性基板のパッケ
ージ。
【請求項15】
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°とする工程、および
該親水性処理された基板を袋内に封入する工程、
を包含する親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項16】
さらに、袋内に脱酸素剤を入れる工程、を包含する請求項15に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項17】
前記袋が、酸素不透過性である請求項15または16に記載の親水性基板のパッケージの製造方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載の親水性基板のパッケージの製造方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、製造方法。
【請求項19】
表面に複数の突起が設けられた樹脂よりなる基板を準備する工程、
該基板を親水性処理して、その親水性基板の表面の水接触角を2〜15°以下とする工程、を包含する樹脂製基板を親水性にする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
ここで、基板を公転させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1〜300(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)であり、
ここで、基板を静止させる場合の前記親水性処理の条件が、投入電力が0.4〜3(KW)、処理時間が1/50〜60(秒)、真空度が0.1〜50(Pa)である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって得られた親水性基板。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有し、該親水性基板の複数の突起間を検体が毛管現象により移動可能であるイムノクロマト用試験具。
【請求項23】
脱酸素剤を備え、かつ、表面が親水性である樹脂製基板を気密状態で収容し得る袋を備える、該基板の表面の親水性を維持するための容器。
【請求項24】
樹脂よりなる基板表面の親水性を維持するための方法であって、該基板を、気密状態で収容される袋内において、脱酸素剤とともに気密状態で配置する工程、を包含する方法。
【請求項25】
請求項1〜6のいずれかの項に記載の親水性基板を有する、細胞培養基板。
【請求項26】
親水性基板と、該親水性基板が気密状態で収容される袋と、を有する親水性基板のパッケージであって、
該親水性基板は、樹脂を成形してなる基板と、該基板の表面から突出した複数の突起とを有し、
ここで、該パッケージを製造後365日間保存した後に、該袋から取り出した該親水性基板の表面の水接触角が20°以下である、親水性基板のパッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2012−2806(P2012−2806A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112876(P2011−112876)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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