説明

親綱支持装置

【課題】 荷台の上方に親綱を張り渡すための親綱支持装置を提供する。
【解決手段】 保持台に保持された後方側親綱支柱36を荷台側面12bの外側まで引き出し、2本の伸縮支柱33,34を支柱本体32から前進限位置である突出位置まで引き伸ばし、支柱本体32を回転軸31を中心としてほぼ垂直となる起立位置まで回転させる。一方、前方側親綱支柱24の出没支柱22を前進限位置である突出位置まで引き伸ばす。伸縮支柱33の先端に設けられたフック35と出没支柱22の先端に設けられた回転ローラ23とにより親綱28を支持することにより、荷台の上方に親綱28を張り渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運送車両の荷台の上方に親綱を張り渡すために親綱を支持する親綱支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやトレーラなどの運送車両の荷台に荷物を積み込んだり積み込まれた荷物をシートで覆ったり荷台から荷物を積み下ろしたりするとき作業員が荷台に乗り込むことがあるので、作業員が荷台から足を踏み外して地上に転落するなどの事故を未然に防止する措置が必要となる。
【0003】
これまでに、荷台の上方に親綱を張り渡し、その親綱に連結される安全索つまり命綱を作業員が身に付けることによって、転落時の人体への衝撃を緩和する技術が知られている。たとえば、特許文献1には、ウィングボディ型の荷台の天井部に命綱が掛止される親綱(命綱掛止体)を設けるようにした技術が開示されている。特許文献2および特許文献3には、親綱の両端を支柱により支持することによって、平ボディ型やダンプ型のような天井部を持たず上空に向けて開口する荷台に親綱を張り渡すようにした技術が開示されている。
【0004】
他方、荷台の上方に親綱を張り渡すことなく、特許文献4に開示されるように、昇降自在および回転自在の水平アームを備える専用の墜落防止自動車を運送車両の荷台の脇に停車させ、その水平アームの先端から吊下されたワイヤロープを作業員が身に付けるようにした技術も知られている。
【0005】
運送車両の中には、荷台から積荷が落下するなどの事故を未然に防止するため、荷台の側面にアオリ板を組み付けるようにしたものがある。アオリ板は荷台に連結される下縁部を回転軸として開閉自在となっており、荷物の上げ下ろし作業の進捗状況に応じて、アオリ板の全部または一部が閉じられたり開かれたりするようになっている。また、運送車両の中には、複数のシート用フックを荷台の下端部に設けるようにしたものがあり、積荷をシートで覆うとともにシートの縁部に設けられた連結紐をシート用フックに脱着自在に取り付けることによって、積荷やシートの落下を防止しつつ風塵による汚れから積荷を保護することができるようになっている。
【特許文献1】実用新案登録第3096850号公報
【特許文献2】特開2003−93531号公報
【特許文献3】特開平11−291863号公報
【特許文献4】特開2002−104776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平ボディ型やダンプ型のような天井部を持たず上空に向けて開口する荷台に対しては、特許文献1に開示されるような技術では、親綱を張り渡すことができない。また、荷台の下端部にシート用フックが設けられている場合、特許文献2に開示されるような技術では、荷台の後部に設けられる支柱支持具および支柱が障害となってシート用フックにシートを取り付けることが出来ず、更に荷台の後部に支柱支持具が突設されることから車両の前後方向の寸法を大きくしてしまう。構内に荷物の積み上げ積み下ろし場所が複数ある場合、特許文献3に開示されるような技術では、その都度、支柱を組み立てて親綱を張り直す必要があって煩雑であり、更に、傾斜地や未整備地において親綱を張り渡す場合には、支柱を支持する平板を地面に安定的に設置することができず十分な安全性が確保できない。また、特許文献4に開示されるような技術では、新たに専用の車両を準備する必要がありコストが高くなるうえ、積荷の搬送先に移動させるのは煩雑であり、作業時にはその車両を停車させるためのスペースを確保する必要が生じる。
【0007】
その他、荷台の上方に親綱を張り渡す親綱支持装置をアオリ板の内側つまり荷台面上に設置することは荷物の積荷積載容積を減らしてしまう点で好ましくない。また、張力を加えて親綱を張り渡すようにしないと落下事故発生時の衝撃を十分に吸収することができず危険である。
【0008】
本発明の目的は、これらの課題を解決することが可能な親綱支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の親綱支持装置は、運送車両の荷台の上方で一端が支持され前記荷台の前後方向にわたって張り渡される親綱の他端を支持する親綱支持装置であって、前記荷台に固定され、先端に支柱本体がほぼ直角に固定された回転軸を軸方向に摺動自在かつ回転自在に支持する支持台と、前記親綱の他端に係合するフックが設けられ、前記支柱本体に突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着される伸縮支柱と、前記支持台に設けられ、前記支柱本体が前記荷台側面よりも外側となる支持位置でありかつ起立位置となった状態のもとで前記回転軸を固定する回転軸ロック手段と、前記伸縮支柱が突出位置となった状態のもとで前記伸縮支柱を前記支柱本体に固定する支柱ロック手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の親綱支持装置は、前記支柱本体と前記伸縮支柱との間に1つ若しくは複数の中間の伸縮支柱を突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着することを特徴とする。
【0011】
本発明の親綱支持装置は、前記回転軸ロック手段は、前記支持台に固定されたガイド筒体と、該ガイド筒体に軸方向に摺動自在に装着され、前記支柱本体が前記支持位置であって前記起立位置となった状態のもとで前記回転軸に形成されたロック孔に嵌合するロックピンとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の親綱支持装置は、前記支柱ロック手段は、前記伸縮支柱が前記突出位置となった状態のもとで前記伸縮支柱に形成されたロック孔に嵌合するロックピンを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の親綱支持装置は、前記支柱本体が前記荷台側面よりも内側となる退避位置になりかつ水平位置となった状態のもとで前記支柱本体を保持する保持台を前記荷台に装着することを特徴とする。
【0014】
本発明の親綱支持装置は、前記支持台を前記荷台の後部に車幅方向に固定し、前記支柱本体を前記荷台の側面アオリ板外面に沿って起立させることを特徴とする。
【0015】
本発明の親綱支持装置は、前記荷台の後部に前記支持台を固定する一方、前記荷台の前部に前方側支柱を固定し、他端が前記フックに係合される前記親綱の一端部を支持する出没支柱を、前記前方側支柱に突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着し、前記出没支柱が突出位置となった状態のもとで前記出没支柱を前記前方側支柱に固定する支柱ロック手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の親綱支持装置は、前記前方側支柱と前記出没支柱との間に1つ若しくは複数の中間の出没支柱を突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着することを特徴とする。
【0017】
本発明の親綱支持装置は、前記出没支柱の先端に前記親綱の一端部を支持する回転ローラを設け、前記親綱をその一端側から巻き取る巻取り機を車両に装着し、当該巻取り機により前記親綱に張力を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、天井部を持たず上空に向けて開口する荷台の上方に親綱を張り渡すことができ、作業員が親綱に連結される安全索を身に付けることによって、荷台からの転落事故を未然に防止することができる。
【0019】
本発明によれば、親綱支持装置は荷台の内側に配置されず荷台の外側から親綱を支持するので、荷物の積荷積載容積を減らすことがない。また、後方側親綱支柱は荷台の床下にコンパクトに収納することができ、アオリ板の開閉移動の障害となったり車両の前後方向の寸法を大きくしたりすることがない。さらに、支柱本体を起立させたとき後方側親綱支柱と荷台の側面との間にシートを差し込むことが可能な隙間が形成されるようにしているので、荷台の上方に張り渡される親綱に連結される命綱を身に付けた安全な状態で、シート用フックにシートを取り付ける作業を行うことができる。
【0020】
本発明によれば、親綱支持装置は荷台に装着されるので、荷物の上げ下ろし作業を行う場所が複数ある構内においては、荷台の上方に親綱を張り渡した状態で構内を走行することができる。傾斜地や未整備地においても親綱を安定的に張り渡すことができる。
【0021】
本発明によれば、中間の伸縮支柱を任意の本数とすることにより、収納位置における支柱本体の長さを任意の長さに設定することができ、車両のサイズによっては1本の伸縮支柱を支柱本体に収納するように構成することもできる。これと同様に、中間の出没支柱を任意の本数とすることもできる。伸縮支柱を収納位置に押し込んで後方側親綱支柱を最小長さとすることによって、フックに親綱を係合させる作業を足場のしっかりした地上で行うことができ安全である。これと同様に、出没支柱を収納位置に押し込んで前方側親綱支柱を最小長さとすることによって、出没支柱に親綱の一端部を支持させる作業を足場のしっかりした牽引車などの上で行うことができ安全である。
【0022】
本発明によれば、他端が後方側親綱支柱のフックに係合される親綱の一端を出没支柱の先端に設けられる回転ローラで支持するとともに、親綱をその一端側から巻き取ることによって、親綱に張力を加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の親綱支持装置が装着されたセミトレーラ型運送車両の荷台を概略的に示す左側面図であり、図2は図1の正面図である。
【0024】
セミトレーラ型運送車両10は、エンジンが搭載された牽引車11によりトレーラとも言われる荷台12を牽引する方式の運送車両である。荷台12の前部の床下にはキングピン13が装着されており、キングピン13を牽引車11に設けられたカプラ14に連結することにより荷台12を牽引することができる。荷台12の前端面12aにはシート受台15が固定される前壁体16が垂直に固定されており、荷台12の側面12bおよび後端面12cのそれぞれにはアオリ板17,18が開閉自在に組み付けられている。シート受台15には積荷を覆うためのシート(図示省略)が格納されている。
【0025】
前方側の親綱支持装置19は前壁体16に装着されており、図示する場合には車両前方に向けて水平に伸びる支持部材20が固定されており、その支持部材20の先端部にはほぼ垂直に伸びる前方側支柱21が固定されている。この前方側支柱21には1本の出没支柱22が軸方向に摺動自在に装着され、出没支柱22は前方側支柱21の内側に摺動自在に嵌合している。出没支柱22の先端には、親綱28の一端部を支持する回転ローラ23が取り付けられている。図示する場合には、相互に嵌合し合う前方側支柱21と出没支柱22とにより前方側親綱支柱24が構成されており、前方側支柱21内に出没支柱22を押し込むと出没支柱22は収納位置となって前方側親綱支柱24は最小長さとなる。一方、出没支柱22を突出限位置まで引き出すと突出位置となり、前方側親綱支柱24は最も伸長した最大長さとなる。このように、図示する前方側親綱支柱24は収納位置と突出位置との間で軸方向に一段階に伸縮するようになっている。
【0026】
前方側支柱21の先端部には、出没支柱22が前方側支柱21に対して前進限位置まで突出した状態のもとで出没支柱22の摺動を規制するために、ロック孔26が形成されるとともにこれに対応させて出没支柱22にロック孔が形成されており、これらのロック孔26にはロックピン27が貫通するようになっている。ロックピン27は、チェーンなどの紐状の部材により前方側親綱支柱24に取り付けられており、出没支柱22を突出位置まで引き出した状態のもとでロックピン27をロック孔26に貫通させることによって、出没支柱22を突出位置で固定することができる。このように、ロックピン27は支柱ロック手段を構成している。
【0027】
突出位置にある前方側の親綱支持装置19により支持される親綱28はその他端で後方側の親綱支持装置29により支持され、親綱28は荷台12の上方に車両の前後方向にわたって張り渡されることになる。
【0028】
図3は図1および図2に示された後方側の親綱支持装置29を拡大して示す斜視図である。親綱支持装置29は荷台12の後部に装着されており、図3に示されるように、荷台12の後部床下に車幅方向に沿って固定される支持台30を有している。この支持台30には回転軸31が軸方向に摺動自在かつ回転自在に支持され、回転軸31の先端には支柱本体32が回転軸31に対してほぼ直角となって固定されている。
【0029】
支柱本体32には2本の伸縮支柱33,34が軸方向に摺動自在に装着され、伸縮支柱33は伸縮支柱34の内側に摺動自在に嵌合し、伸縮支柱34は支柱本体32の内側に摺動自在に嵌合しており、伸縮支柱34は伸縮支柱33と支柱本体32との間に摺動自在に嵌合する中間の伸縮支柱となっている。伸縮支柱33の先端には、親綱28の他端が係合するリング状のフック35が取り付けられている。図示する場合には、相互に嵌合し合う支柱本体32と2本の伸縮支柱33,34とにより後方側親綱支柱36が構成されており、支柱本体32内に2本の伸縮支柱33,34を押し込むとこれらの伸縮支柱33,34は収納位置となって後方側親綱支柱36は最小長さとなる。一方、伸縮支柱33,34はそれぞれを突出限位置まで引き出すと突出位置となり、後方側親綱支柱36は最も伸長した最大長さとなる。このように、2本の伸縮支柱33,34はそれぞれが突出位置と収納位置との間で摺動自在に支柱本体32内に組み込まれており、図示する後方側親綱支柱36は収納位置と伸長位置との間で軸方向に2段階に伸縮するようになっている。
【0030】
図示する後方側の親綱支持装置29には中間の伸縮支柱34が1本設けられているが、複数本の中間の伸縮支柱を支柱本体32と先端の伸縮支柱33との間に装着するようにしても良く、中間の伸縮支柱34を省略しても良い。中間の伸縮支柱34を省略すると後方側親綱支柱36は支柱本体32と1本の伸縮支柱33とにより形成され1段階に伸縮することになり、中間の伸縮支柱を2本装着すると後方側親綱支柱36は3段階に伸縮することになる。これと同様に、前方側の親綱支持装置19についても、1つ若しくは複数本の中間の出没支柱を前方側支柱21と先端の出没支柱22との間に装着するようにしても良い。なお、前方側支柱21、出没支柱22、支柱本体32、および2本の伸縮支柱33,34のそれぞれは横断面が円形の丸パイプにより形成されているが、これらの全部または一部を横断面が四辺形の角パイプにより形成するようにしても良い。
【0031】
支柱本体32が固定された回転軸31は、支持台30に軸方向に摺動自在かつ回転自在に支持されており、回転軸31は水平位置と起立位置との間を約90度回転するとともに、支柱本体32が荷台12の側面12bよりも外側となる支持位置と内側となる退避位置との間を軸方向に移動する。
【0032】
図4は本発明の親綱支持装置の展開手順を示す一部切り欠き平面図であり、図4(A)は伸縮支柱33,34を支柱本体32内に収納位置とした状態のもとで支柱本体32を水平位置および退避位置とした状態を示し、図4(B)は支柱本体32を退避位置から支持位置に移動させた状態のもとで伸縮支柱33,34を収納位置から突出位置まで引き出した状態を示し、図4(C)は図4(B)の状態から支柱本体32を起立位置まで回転させた状態を示す。
【0033】
支持台30は円筒形状の部材により形成されており、支持台30に固定されたガイド筒体37には、支持台30に形成された貫通孔38から回転軸31を貫通するロックピン39が軸方向に往復動自在に装着され、このロックピン39は貫通孔38に対向してガイド筒体37に形成された保持孔40に嵌合するようになっている。一方、図4(C)に示すように、回転軸31が支持位置まで支持台30から引き出され、かつ支柱本体32が起立位置となる位置まで回転軸31が回転すると、貫通孔38および保持孔40と一致するように回転軸31にはロック孔41が形成されている。回転軸31にはこれが支持位置まで引き出されたときに支持台30の端面に当接するストッパ42が設けられている。
【0034】
したがって、回転軸31が図4(C)に示す位置となったときにロックピン39をロック孔41に貫通させると、支柱本体32は支持位置および起立位置となって固定されることになる。このように、ロックピン39およびロック孔41は、回転軸31を固定するための回転軸ロック手段を構成している。図示する場合には、回転軸31を図4(A)で示す位置に設定したときにロックピン39は後退した状態となっているが、回転軸31が図4(A)で示す位置となったときにロックピン39が貫通する貫通孔を回転軸31に形成しても良く、ロックピン39に前進方向のばね力を加えるようにして、回転軸31が図4(C)に示される位置となると自動的にロックピン39がばね力によりロック孔41内に入り込むようにしても良い。また、回転軸31は中空円筒部材により形成されているが、中実の円柱部材により形成するようにしても良い。
【0035】
荷台12には図3および図4に示すように、支柱本体32が水平位置となり、かつ荷台側面12bよりも内側となる退避位置となった状態のもとで支柱本体32を保持するL字状に折れ曲がった保持部材43aとその保持部材43aの先端部に固定される脱落防止部材43bとにより構成される保持台43が固定されている。この保持台43により後方側親綱支柱36は、荷台12に保持されて車両走行時には荷台12の外側には突き出すことなく保管状態となる。
【0036】
支柱本体32の先端部には、伸縮支柱34が支柱本体32に対して前進限位置まで突出した状態のもとで伸縮支柱34の摺動を規制するために、ロック孔44が形成されるとともにこれに対応させて伸縮支柱34にロック孔が形成されており、これらのロック孔44にはロックピン45が貫通するようになっている。同様に、伸縮支柱34の先端部には、伸縮支柱33が支柱本体32に対して前進限位置となるまで突出した状態のもとで伸縮支柱33の伸縮支柱34に対する摺動を規制するために、ロック孔44aが形成されるとともにこれに対応させて伸縮支柱33にはロック孔が形成されており、これらのロック孔44aにはロックピン45aが貫通するようになっている。
【0037】
それぞれのロックピン45,45aは、チェーンなどの紐状の部材により後方側親綱支柱36に取り付けられており、伸縮支柱33,34を突出位置まで引き出した状態のもとでロックピン45,45aをロック孔44,44aに貫通させることによって、伸縮支柱33,34を突出位置で固定することができる。このように、ロックピン45,45aは支柱ロック手段を構成している。
【0038】
伸縮支柱33の先端部にはロック孔44bが形成されており、伸縮支柱33,34を収納位置まで引き込ませてロック孔44bが他のロック孔44,44aと一致した状態のもとで、ロックピンをこれらに貫通させることにより、図4(A)に示すように、収納位置となった伸縮支柱33,34をロックピンにより固定することができる。
【0039】
伸縮支柱34の基端部には伸縮支柱34が突出位置となったときに支柱本体32に係合する図示しないストッパが設けられ、同様に伸縮支柱33の基端部には伸縮支柱33が突出位置となったときに伸縮支柱34に係合する図示しないストッパが設けられており、それぞれの伸縮支柱33,34は図4(B)に示す突出位置よりも突出移動しないように規制されている。
【0040】
次に、図4(A)に示されるように荷台12の床下に収納されている後方側の親綱支持装置29を用いて親綱28を荷台12の上方に張り渡すための装置展開手順の一例について説明すると、まず、保持台43に保持されて保管された状態の支柱本体32を、図4(B)に示されるようにストッパ42が支持台30に当接する支持位置にまで荷台側面12bの外側に引き出す。次いで、それぞれの伸縮支柱33,34を支柱本体32に対して前進限位置つまり突出位置にまで引き伸ばし、それぞれのロック孔44,44aにロックピン45,45aを挿入する。このようにしてそれぞれの伸縮支柱33,34を突出位置でロックして後方側親綱支柱36を伸長させた状態のもとで、支柱本体32を伸縮支柱33,34とともに水平位置からほぼ垂直状態となる起立位置まで回転させる。これにより、回転軸31に形成されたロック孔41はロックピン39と対向する位置となり、ガイド筒体37に設けられたロックピン39をロック孔41内に手作業により挿入する。このような展開操作によって、支柱本体32は図4(C)に示すように支持位置かつ起立位置で固定され、2本の伸縮支柱33,34は突出位置で固定されることになり、親綱支持装置29は図1および図2に示されるような起立した状態で固定される。なお、支柱本体32を支持位置かつ起立位置とした状態のもとで、伸縮支柱33,34を突出位置まで引き出すようにしても良い。
【0041】
親綱28の一端部を前方側の親綱支柱24の回転ローラ23で支持し、他端を伸縮支柱33の先端のフック35に係合することにより、親綱28は荷台12の上方に張り渡されることになる。支柱本体32を起立位置に回転させる前に親綱28をフック35に係合させるようにすることで、足場のしっかりした地上で安全に親綱28の係合作業を行うことができる。これと同様に、出没支柱22を突出位置に引き出す前に親綱28を回転ローラ23に掛け渡すようにすることで、足場のしっかりした牽引車11などの上で安全に作業を行うことができる。
【0042】
牽引車11には親綱28を巻き取る巻取り機46が装着されている。これにより、親綱28の他端をフック35に係合させるとともに親綱28の一端部を回転ローラ23に支持させた後、親綱28をその一端側から巻取り機46により巻き取ることによって、親綱28に張力を加えることができる。
【0043】
次に、親綱支持装置29を荷台12の床下に収納するための手順の一例について説明すると、まず、図4(C)に示すようにロック孔41に挿入されたロックピン39を引き抜いた状態のもとで図4(B)に示すように2本の伸縮支柱33,34が突出位置となった後方側親綱支柱36を水平状態にまでアオリ板17に沿って回転させる。次いで、ロック孔44,44aに挿入されたロックピン45,45aを引き抜いてそれぞれの伸縮支柱33,34を収納位置にまで押し込む。最後に、伸縮支柱33,34が収納された状態の支柱本体32を図4(A)に示す退避位置まで押し込んで支柱本体32を保持台43に保持する。これによって、親綱支持装置29は、図4(A)に示されるように荷台側面12bの内側にコンパクトに配置されるので、走行の妨げとなることもなく所定の車両寸法制限内に保管された状態となる。なお、伸縮支柱33,34を収納位置まで引き込ませてから支柱本体32を水平位置に回転させた後に退避位置に移動させるようにしても良い。
【0044】
図5は図1に示される運送車両の荷台に積み込まれた荷物をシートで覆った状態を示す背面図でありシートの一部は切り欠いて示されている。
【0045】
図5に示される場合にあっては、荷台12には複数の荷物47が積み込まれている。後方側の親綱支持装置29は支柱本体32を起立させた状態でも親綱支柱36と荷台12の側面との間にシート48を差し込むことが可能な隙間49が形成されるようになっている。したがって、作業員は、荷台12の上方に張り渡された親綱28に連結される命綱を身に付けた安全な状態で、これらの荷物47とアオリ板17とをシート48で覆うとともにシート48の縁部に設けられた連結紐50をシート用フック51に取り付ける作業を行うことができる。親綱支柱36はシート48の外側に配置されるので、シート48を取り付けたままの状態でも親綱支持装置29を荷台12の床下に収納することができる。
【0046】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、図示する装置では先端にフック35が設けられた伸縮支柱33と中間の伸縮支柱34の2本の伸縮支柱が支柱本体32内に収容されるようになっているが、1本の伸縮支柱33のみを設けるようにしても良く、中間の伸縮支柱34を複数本設けるようにしても良い。さらに、伸縮支柱33,34を収納位置で固定するためのロック孔を支柱本体32と伸縮支柱33,34のそれぞれに図示するロック孔とは別に形成するようにしても良い。
【0047】
後方側の親綱支持装置29は、荷台12後部の床下に1つ装着する場合に限られず、荷台12の床下に複数設けるようにしても良く、支柱本体32を荷台12の側面外方に突き出させることなく、荷台12の後方に突き出させるようにしても良い。フック35はリング状となっているが、親綱28の端部を係合可能なものであれば、いかなる形状のものであっても良い。
【0048】
前方側の親綱支持装置19に代えて、シート受台15または前壁体16にリング状のフックを設け、このフックに親綱28の一端を係合させるとともに他端を後方側の親綱支持装置29により支持させるようにしても良い。また、前方側の親綱支持装置19に代えて、親綱支持装置29を荷台12前部の床下にも装着して、荷台の前後に装着される一対の親綱支持装置29により親綱28を支持するようにしても良い。
【0049】
親綱支持装置19の回転ローラ23は、親綱28を巻取り自在に支持できるものであれば、いかなる形状のものであっても良い。また、本発明はセミトレーラ型の運送車両10に限られず、フルトレーラやトラックなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の親綱支持装置が装着されたセミトレーラ型運送車両の荷台を概略的に示す左側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1および図2に示された後方側の親綱支持装置を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の親綱支持装置の展開手順を示す一部切り欠き平面図であり、(A)は伸縮支柱を支柱本体内に収納位置とした状態のもとで支柱本体を水平位置および退避位置とした状態を示し、(B)は支柱本体を退避位置から支持位置に移動させた状態のもとで伸縮支柱を収納位置から突出位置まで引き出した状態を示し、(C)は同図(B)の状態から支柱本体を起立位置まで回転させた状態を示す。
【図5】図1に示される運送車両の荷台に積み込まれた荷物をシートで覆った状態を示す背面図でありシートの一部は切り欠いて示されている。
【符号の説明】
【0051】
10 セミトレーラ型運送車両
11 牽引車
12 荷台
12a 前端面
12b 側面
12c 後端面
13 キングピン
14 カプラ
15 シート受台
16 前壁体
17 アオリ板
18 フック
19 前方側の親綱支持装置
20 支持部材
21 前方側支柱
22 出没支柱
23 回転ローラ
24 前方側親綱支柱
26 ロック孔
27 ロックピン
28 親綱
29 後方側の親綱支持装置
30 支持台
31 回転軸
32 支柱本体
33 伸縮支柱
34 中間の伸縮支柱
35 フック
36 後方側親綱支柱
37 ガイド筒体
38 貫通孔
39 ロックピン
40 保持孔
41 ロック孔
42 ストッパ
43 保持台
43a 保持部材
43b 脱落防止部材
44 ロック孔
44a ロック孔
44b ロック孔
45 ロックピン
45a ロックピン
46 巻取り機
47 荷物
48 シート
49 隙間
50 連結紐
51 シート用フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運送車両の荷台の上方で一端が支持され前記荷台の前後方向にわたって張り渡される親綱の他端を支持する親綱支持装置であって、
前記荷台に固定され、先端に支柱本体がほぼ直角に固定された回転軸を軸方向に摺動自在かつ回転自在に支持する支持台と、
前記親綱の他端に係合するフックが設けられ、前記支柱本体に突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着される伸縮支柱と、
前記支持台に設けられ、前記支柱本体が前記荷台側面よりも外側となる支持位置でありかつ起立位置となった状態のもとで前記回転軸を固定する回転軸ロック手段と、
前記伸縮支柱が突出位置となった状態のもとで前記伸縮支柱を前記支柱本体に固定する支柱ロック手段とを有することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項2】
請求項1記載の親綱支持装置において、前記支柱本体と前記伸縮支柱との間に1つ若しくは複数の中間の伸縮支柱を突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の親綱支持装置において、前記回転軸ロック手段は、前記支持台に固定されたガイド筒体と、該ガイド筒体に軸方向に摺動自在に装着され、前記支柱本体が前記支持位置であって前記起立位置となった状態のもとで前記回転軸に形成されたロック孔に嵌合するロックピンとを有することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の親綱支持装置において、前記支柱ロック手段は、前記伸縮支柱が前記突出位置となった状態のもとで前記伸縮支柱に形成されたロック孔に嵌合するロックピンを有することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の親綱支持装置において、前記支柱本体が前記荷台側面よりも内側となる退避位置になりかつ水平位置となった状態のもとで前記支柱本体を保持する保持台を前記荷台に装着することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の親綱支持装置において、前記支持台を前記荷台の後部に車幅方向に固定し、前記支柱本体を前記荷台の側面アオリ板外面に沿って起立させることを特徴とする親綱支持装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の親綱支持装置において、前記荷台の後部に前記支持台を固定する一方、前記荷台の前部に前方側支柱を固定し、他端が前記フックに係合される前記親綱の一端部を支持する出没支柱を、前記前方側支柱に突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着し、前記出没支柱が突出位置となった状態のもとで前記出没支柱を前記前方側支柱に固定する支柱ロック手段を有することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項8】
請求項7記載の親綱支持装置において、前記前方側支柱と前記出没支柱との間に1つ若しくは複数の中間の出没支柱を突出位置と収納位置との間で軸方向に摺動自在に装着することを特徴とする親綱支持装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の親綱支持装置において、前記出没支柱の先端に前記親綱の一端部を支持する回転ローラを設け、前記親綱をその一端側から巻き取る巻取り機を車両に装着し、当該巻取り機により前記親綱に張力を加えることを特徴とする親綱支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−167263(P2006−167263A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365742(P2004−365742)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(502386433)王子物流株式会社 (1)
【出願人】(504464287)王子陸運株式会社 (1)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】