説明

観察機器システム

【課題】映像信号が通過する集積回路に不具合が生じた場合であっても、表示手段に映像を継続して表示することのできる観察機器システムを提供する。
【解決手段】観察機器システムは、映像信号を得る撮像手段と、前記映像信号が通過する複数の集積回路と、前記集積回路を通過した映像信号を表示する表示手段とを含み、複数の前記集積回路のうち少なくとも1つの集積回路を通過する映像信号の正常性を検査して検査結果を生成する検査手段を有し、前記映像信号の正常性が検査される前記集積回路は、入力された前記映像信号を演算処理して出力する信号処理部と、入力された前記映像信号を前記信号処理部を通過せずに迂回して当該集積回路から出力することのできるバイパス部とを有しており、前記検査結果に基づいて、前記映像信号を迂回させるか否かを判断して、前記映像信号の経路を切り替える切替手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察機器システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体を撮像して、被写体の映像を表示装置(ディスプレイ)に表示する観察機器システムとしては、例えば、内視鏡システム等の医療用観察機器システムが挙げられ、これらは、医療分野において手術や診察の際に広く利用されている。
【0003】
例えば、内視鏡システムでは、体腔内に内視鏡の細長い挿入部を挿入することによって、体腔内の臓器を撮像し、撮像によって得られた映像信号をモニタ等に映像を表示することができる。そして、術者は、例えば、表示された映像を観察しつつ、必要に応じて内視鏡システムの処置具の挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種処置を行う。
【0004】
このような医療用観察機器システムにおいては、一般に、撮像してデジタルの映像信号を得、この映像信号を複数の集積回路において加工し、加工された映像信号に対応する映像がモニタ等に表示される。
【0005】
ところで、このようなデジタルの映像信号を複数の集積回路に対して伝送する際において、各集積回路に不具合が生じると、映像信号が正確に伝送されない場合や映像信号が伝送されない場合がある。このような場合、表示装置に目的とする被写体の映像が正常に映らない、または全く映らないこととなる。手術等に用いられる医療用観察機器システムにおいては、このような問題が発生すると、被写体の観察ができなくなることにより、手術が停止したり、不本意に術部を損傷させたりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−34893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、撮像されて得られた映像信号が通過する集積回路に不具合が生じた場合であっても、表示手段に映像を継続して表示することのできる観察機器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、以下(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 被写体像を撮像して映像信号を得る撮像手段と、前記映像信号が通過する複数の集積回路と、前記集積回路を通過した映像信号を表示する表示手段とを含んで構成された観察機器システムであって、
複数の前記集積回路のうち少なくとも1つの集積回路を通過する映像信号の正常性を検査して検査結果を生成する検査手段を有し、
前記映像信号の正常性が検査される前記集積回路は、入力された前記映像信号を演算処理して出力する信号処理部と、入力された前記映像信号を前記信号処理部を通過せずに迂回して当該集積回路から出力することのできるバイパス部とを有しており、
さらに、前記検査結果に基づいて、前記映像信号を迂回させるか否かを判断して、前記映像信号の経路を切り替える切替手段を有すること特徴とする観察機器システム。
【0009】
これにより、撮像されて得られた映像信号が通過する集積回路に不具合が生じた場合であっても、表示手段に映像を継続して表示することのできる観察機器システムを提供することができる。
【0010】
(2) 前記映像信号の正常性が検査される集積回路は、前記映像信号が迂回している間に、前記信号処理部を再起動することができるように構成されている上記(1)に記載の観察機器システム。
【0011】
このように、信号処理部に不具合が生じた場合であっても、迅速に信号処理部の不具合の解消が行われる。この結果、バイパス部による映像信号の迂回の時間を少ないものとすることができ、集積回路の不具合による映像への影響をより少ないものとすることができる。
【0012】
(3) 前記表示手段は、前記映像信号が迂回している間に、注意を喚起する表示を行うことができるように構成されている上記(1)または(2)に記載の観察機器システム。
【0013】
このように、集積回路において不具合があった旨を術者に知らせることにより、術者は、表示手段に表示される映像について一定の処理が行われていないことを把握できる。このため、観察する術者は、表示手段に表示される映像の状態を把握することが容易となる。
【0014】
(4) 前記検査手段は、前記複数の集積回路のうち第1の集積回路を通過する前記映像信号と、前記複数の集積回路のうち前記第1の集積回路より後段に設けられた第2の集積回路を通過する前記映像信号とを比較することにより、前記第2の集積回路を通過する前記映像信号の正常性を検査する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の観察機器システム。
【0015】
これにより、検査用の信号を別に用意して観察を一旦停止して検査を行うことなく、撮像手段による観察を行いながら、各集積回路についての映像信号の伝送について検査を行うことができる。
【0016】
(5) 前記映像信号は、複数のデータと複数の前記データの間に設けられた空白のブランキングデータとを有するデジタルの信号であり、
検査手段は、所定の数列で構成された検査用パターンを生成し、前記第1の集積回路を通過する前記ブランキングデータに前記検査用パターンを書き込む検査用パターン書込手段と、前記第2の集積回路を通過する前記映像信号について、前記検査用パターンを用いて当該映像信号の正常性を検査して検査結果を生成する検査結果生成手段と、
前記ブランキングデータに前記検査結果を書き込む検査結果書込手段とを有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の観察機器システム。
【0017】
検査手段がこのような各手段を有していることにより、迅速かつ精度よく映像信号の正常性の検査が行われる。この結果、集積回路に不具合が生じている場合の対処が素早く行われることができ、モニタ装置に表示される映像がより途切れにくくなる。
【0018】
(6) 観察機器システムは、医療用観察機器システムである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の観察機器システム。
【0019】
これにより、医療用観察機器システムは、表示手段に観察される患部の映像を継続的に表示することができるため、映像が途切れることに起因した手術、診察の中断や、手術や診察に用いている器具の誤操作を防止することができる。
【0020】
(7) 前記医療用機器システムは、内視鏡システムである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の観察機器システム。
【0021】
内視鏡システムにおいては、体内に挿入部可撓管を挿入して体腔の観察を行い、必要に応じて体腔の手術等を行うため、表示手段に映像が表示されないことに起因する手術の中断や器具の誤操作は、患者に負担を強いる可能性があるが、本発明ではこのような問題が防止されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、撮像手段によって得られた映像についての映像信号の集積回路間の伝送を検査し、検査結果に基づいてバイパス部における映像信号500の経路を切り替えることにより、不具合が生じている集積回路の信号処理部を迂回させることができる。この結果、映像信号が伝送される集積回路に不具合が生じた場合であっても、映像信号がモニタ装置(表示手段)に入力され、映像が途切れることなく連続して表示される。
【0023】
特に、本発明を医療用観察機器システムに適用することにより、観察される患部の映像が継続的に表示されることができ、手術、診察が中断されることが防止されるとともに、術者の手術や診察に用いている器具による誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用された内視鏡システムの好適な実施形態を示す全体図である。
【図2】図1に示す内視鏡システムのブロック図である。
【図3】図1に示す内視鏡システムが備える複数の集積回路および各手段を示すブロック図である。
【図4】図1に示す内視鏡システムにおいて用いられる映像信号の一例を示す模式図である。
【図5】映像信号の伝送の検査が行われている際の図4に示す映像信号の一例を示す模式図である。
【図6】図1に示す内視鏡システムにおける映像信号の伝送の検査方法および集積回路の不具合の解消方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された内視鏡システムの好適な実施形態を示す全体図、図2は、図1に示す内視鏡システムのブロック図、図3は、図1に示す内視鏡システムが備える複数の集積回路および各手段を示すブロック図、図4は、図1に示す内視鏡システムにおいて用いられる映像信号の一例を示す模式図、図5は、映像信号の伝送の検査が行われている際の図4に示す映像信号の一例を示す模式図、図6は、図1に示す内視鏡システムにおける映像信号の伝送の検査方法および集積回路の不具合の解消方法を示すフローチャートである。なお、説明の便宜上、以下、図1中上側を「基端」、下側を「先端」として説明する。
【0026】
本実施形態では、観察機器システムとして、代表的に、医療用観察機器システム、特に内視鏡システムについて説明する。
【0027】
図1、図2に示すように、内視鏡システム1は、電子内視鏡100と、制御装置200と、モニタ装置(表示手段)300とを有している。
【0028】
図1に示す電子内視鏡100(以下、「内視鏡100」という)は、可撓性(柔軟性)を有する長尺物の挿入部可撓管110と、挿入部可撓管110の先端部に設けられた湾曲部120と、挿入部可撓管110の基端部に設けられ、術者が把持して内視鏡100全体を操作する操作部130と、操作部130に接続された接続部可撓管140と、接続部可撓管140の先端側に設けられたコネクタ部150とを備えている。
【0029】
挿入部可撓管110と接続部可撓管140は、それぞれ、中空部を有する管状の芯材の外周を外皮で被覆した内視鏡用可撓管である。
【0030】
挿入部可撓管110は、例えば、消化管のような生体の管腔内に挿入して使用される。また、操作部130には、その側面に操作ノブ131、132が設置されている。この操作ノブ131、132を操作すると、挿入部可撓管110内に配設されたワイヤ(図示せず)が牽引されて、湾曲部120が例えば4方向に湾曲し、その方向を変えることができる。
【0031】
湾曲部120の先端部には、観察部位に照明光を照射する照明部121および、観察部位における被写体像を撮像する撮像素子(撮像手段)122が設けられている。
【0032】
照明部121は、制御装置200に備えられた光源部230から発せられ、後述するライトガイド160を介して届く照明光を観察部位に照射する。
【0033】
撮像素子122は、CMOSイメージセンサ、CCD等の固体撮像素子であり、前記照明光により照明された観察部位からの反射光(被写体像)を受光し、撮像する。撮像素子122では、撮像された被写体像に応じたアナログの映像信号が出力される。この映像信号は、撮像素子122からコネクタ部150まで連続した配線(図示せず)を介して、コネクタ部150側に送信される。
【0034】
コネクタ部150は、光源用コネクタ151と、通信コネクタ152と、コントローラ153と、第1の信号処理回路154と、タイミングコントロール回路155と、撮像素子ドライバ156とを有している。
【0035】
光源用コネクタ151は、コネクタ部150の先端側に設けられており、制御装置200に接続される。そして、光源用コネクタ151が制御装置200と接続されることにより、ライトガイド160に照明光が入射される。
【0036】
通信コネクタ152は、コネクタ部150の先端側に設けられており、制御装置200に接続される。通信コネクタ152が制御装置200に接続されることにより、内視鏡100のコントローラ153と、制御装置200のシステムコントローラ210とが通信可能となり、また、内視鏡100の第1の信号処理回路154と、制御装置200の第2の信号処理回路220とが通信可能となる。通常、これらの通信には、それぞれ、対応する個別の配線が設けられている。すなわち、第1の信号処理回路154と第2の信号処理回路220とを接続する配線601および、コントローラ153と制御装置200のシステムコントローラ210とを接続する配線602がコネクタ部150と制御装置200との間に存在する。また、これらの配線601、602は、ひとつのケーブルにまとめられ、このケーブルが通信コネクタ152と、制御装置200とを接続している。
【0037】
なお、一般に、映像信号の伝送の正常性を検査するためには、通信コネクタ152と制御装置200との間に検査のための配線をさらに設け、制御装置200と内視鏡100との間で検査のための情報について通信することが考えられるが、本実施形態では、後述するような検査手段401により、配線を増設することなく検査を行うことができる。
【0038】
コントローラ153は、中央演算装置(Central processing unit)および主記憶装置を備えており(図示せず)、第1の信号処理回路154と、タイミングコントロール回路155とを制御する。また、コントローラ153は、後述する制御装置200のシステムコントローラ210と配線602を介して接続されることにより、システムコントローラ210、第1の信号処理回路154、および第2の信号処理回路220と協働して、後述する検査手段401および切替手段402とを構成する。
【0039】
第1の信号処理回路154は、集積回路を有する回路であり、コントローラ153からの指示に従い、撮像素子122から出力された映像信号に対して所定の信号処理を行なう。
【0040】
本実施形態では、第1の信号処理回路154は、1つの集積回路(集積回路LSI#1)を有している。集積回路LSI#1では、第1の信号処理回路154に入力されたアナログの映像信号がデジタルの映像信号に変換される(A/D変換される)。そして、信号処理を受けた映像信号は、配線601を介して第2の信号処理回路220へ送出される。
【0041】
また、図4に示すように、本実施形態では、変換後のデジタルの映像信号500は、ITU−R BT.656に準じたものである。すなわち、映像信号500は、映像データ501と、映像データの開始を示す開始フラグ502と、映像データの終了を示す終了フラグ503と、終了フラグ503と新たな開始フラグ502との間に設けられるブランキングデータ504とを有している。そして、映像信号500は、開始フラグ502、映像データ501、終了フラグ503、ブランキングデータ504が、この順序で繰り返し並んで構成されている。また、各データは、映像信号500において、1又は複数のタイムスロットを占有するように構成されている。
【0042】
また、第1の信号処理回路154では、後述するような検査手段401により、映像信号500の信号伝送についての検査が行われる。
【0043】
また、図3に示すように、第1の信号処理回路154に含まれる集積回路は、コントローラ153の中央演算装置と通信が可能である。
【0044】
図2に示すように、タイミングコントロール回路155は、コントローラ153から送られてくる制御信号に基づいて撮像素子ドライバ156に駆動信号を出力する。
【0045】
撮像素子ドライバ156は、タイミングコントロール回路155から入力された駆動信号に従って、撮像素子122での映像信号の読み出しを制御する。
【0046】
ライトガイド160は、光源用コネクタ151、および、コネクタ部150内、接続部可撓管140内、操作部130内、挿入部可撓管110内および湾曲部120内に連続して配設された光ファイバー束である。
【0047】
ライトガイド160は、後述する光源部230からの照明光が光源用コネクタ151側にある入射端161より入力されると、当該照明は、ライトガイド160内を通過して、湾曲部120の先端部側にあるライトガイド160の出射端(照明部)121から出射される。
【0048】
なお、このようなライトガイド160は、例えば、石英、多成分ガラス、プラスチック等により構成される光ファイバーが複数本束ねられて構成されている。
【0049】
制御装置200は、システムコントローラ210と、第2の信号処理回路220と、光源部230とを有している。
【0050】
システムコントローラ210は、中央演算装置(Central processing unit)および主記憶装置を備えており(図示せず)、制御装置200の動作を制御する。そして、第2の信号処理回路220および光源部230等の制御装置200の各部位に制御信号を出力する。
【0051】
第2の信号処理回路220は、複数の集積回路を有する回路であり、第1の信号処理回路154から入力された映像信号について、所定の信号処理、映像処理を行う。
【0052】
また、この信号処理は、システムコントローラ210から入力される制御信号に基づいて行われる。本実施形態では、第2の信号処理回路220は、n−1個の集積回路(集積回路LSI#2〜集積回路LSI#n)を有している。各集積回路は、映像信号の処理するための機能(ファンクション)を有する信号処理部411を有している。本実施形態では、例えば、集積回路LSI#2の信号処理部411は、ノイズリダクションの機能を有し、集積回路LSI#3の信号処理部411は、エンハンスの機能を有し、集積回路LSI#4(図示せず)の信号処理部411は、ゲインの機能を有し、集積回路LSI#5(図示せず)の信号処理部411は、ズームの機能を有し、集積回路LSI#6(図示せず)の信号処理部411は、色変換処理の機能を有し、集積回路LSI#7(図示せず)の信号処理部411は、キャラクタ挿入の機能を有し、集積回路LSI#nの信号処理部411は、映像信号についてデジタル−アナログ変換(D/A変換)を行い、所定のテレビジョン信号に変換する機能を有している。
【0053】
そして、各集積回路の信号処理部411において、これらの処理を受けた映像信号(テレビジョン信号)は、ケーブル603を介してモニタ装置300へ送出される。
【0054】
また、第2の信号処理回路220では、後述するような検査手段401により、映像信号500の伝送についての検査が行われる。
【0055】
また、第2の信号処理回路220の各集積回路のうち、少なくとも1以上の集積回路(例えば、LSI#2〜LSI#7)は、バイパス部412を有している。バイパス部412は、当該バイパス部412が設けられた集積回路内において、映像信号500を、信号処理部411を通過させずに迂回して集積回路から出力することができる。
【0056】
すなわち、集積回路がこのようなバイパス部412を有することにより、当該集積回路内において信号処理部411に不具合が生じた場合に、映像信号500について、信号処理部411から迂回して出力することが可能となる。このため、信号処理部411において映像信号500を通過させることが困難になったり、目的とする処理以外の演算処理が行われてしまったり、信号処理部411において短絡したりした場合であっても、映像信号500は、このような信号処理部411を有する集積回路を信号処理部411を介することなく通過することができる。この結果、モニタ装置300に送出される映像信号500が途切れることが防止され、モニタ装置300は、撮像手段122によって撮像された被写体の映像を途切れなく表示することができる。
【0057】
なお、集積回路LSI#nの信号処理部411は、映像信号についてデジタル−アナログ変換(D/A変換)を行い、所定のテレビジョン信号に変換する機能を有する。このような集積回路LSI#nの信号処理部411を映像信号500が通過しない場合には、モニタ装置300に映像が表示されない。このため、集積回路LSI#nの信号処理部411は、映像を表示するために必要不可欠な機能である。このため、集積回路LSI#nは、映像信号500について信号処理部411を迂回させることができないため、バイパス部を有しない。
【0058】
また、バイパス部412が、映像信号500について信号処理部411を迂回させるか否かは、後述する検査手段401が生成する検査結果506に基づき、切替手段402がバイパス部412内の映像信号500の経路を切替することにより決定される。
【0059】
また、各集積回路は、バイパス部412によって映像信号500が迂回している際に、信号処理部411を再起動できるように構成されている。このように、映像信号500が迂回している際に信号処理部411を再起動させることにより、信号処理部411に不具合が生じた場合であっても、迅速に信号処理部411の不具合の解消が行われる。この結果、バイパス部412による映像信号500の迂回の時間を少ないものとすることができ、集積回路の不具合による映像への影響をより少ないものとすることができる。なお、信号処理部411の再起動は、通常、後述する切替手段402の指示に従い行われる。
【0060】
また、第2の信号処理回路220に含まれる各集積回路は、システムコントローラ210との通信が可能である。
【0061】
光源部230は、ランプ制御部231と、ランプ232と、レンズ233とを有している。
【0062】
ランプ制御部231は、システムコントローラ210からの制御信号に基づいて、ランプ232への電力の供給またはその停止を行う。
【0063】
ランプ232は、ランプ制御部231から電力が供給されることにより、照明光を発する。ランプ232からの照明光は、レンズ233によって集光され、接続された内視鏡100のライトガイド160の入射端161に入射する。
【0064】
モニタ装置300は、表示手段であり、制御装置200から入力されたテレビジョン信号をモニタ装置300の図示しない画面上に、撮像素子122で撮像された被写体の動画または静止画等の内視鏡モニタ画像(映像)を表示する。
【0065】
また、モニタ装置300は、撮像された被写体の映像のみならず、観察に必要な各種情報等を表示できるように構成されている。
【0066】
特に、本実施形態では、モニタ装置300は、後述する迂回決定手段407に指示されることにより、バイパス部412により映像信号500が迂回している間に注意を喚起する表示を行ったり、集積回路に不具合があり解消しない場合、あるいは解消した場合に、これらの旨の表示を行ったりすることができるように構成されている。これにより、観察する術者は、モニタ装置300に表示される映像についての映像信号500の処理状態を把握することが容易となる。
【0067】
ところで、図3に示すように、以上のような内視鏡システム1は、システムコントローラ210と、コントローラ153と、各集積回路の一部で構成された検査手段401および切替手段402を有している。
【0068】
検査手段401は、第1の信号処理回路154および第2の信号処理回路220の各集積回路を通過する映像信号500について、正常性(不本意な破損、変更がないこと)を検査し、検査結果506を生成する(図5参照)。
【0069】
検査手段401は、検査用パターン書込手段403と検査結果生成手段404と検査結果書込手段405とを有している。検査手段401がこのような各手段を有していることにより、迅速かつ精度よく映像信号500の正常性の検査が行われる。この結果、集積回路に不具合が生じている場合の対処が素早く行われることができ、モニタ装置300に表示される映像がより途切れにくくなる。
【0070】
また、検査手段401は、下記に述べるように、映像信号500のブランキングデータ504を利用して映像信号500の伝送についての検査を行う。このため、検査を行うための信号を送信するための新たな配線を用意する必要がなく、内視鏡システム1の装置構成を簡略化することができる。特に、内視鏡システム1は、内視鏡100において細かな操作が要求されるが、装置構成が簡素化されることにより、ケーブルが細くなり、また、装置がコンパクトになるため、例えば、内視鏡100の操作性が向上する。また、映像信号500のブランキングデータ504を利用するため、例えば、映像信号500の伝送の検査のために観察を中止して、検査用の信号を用いて検査を行う必要がない。
【0071】
検査用パターン書込手段403は、所定の数列で構成された検査用パターン505を生成し、第1の集積回路LSI#1を通過する前記ブランキングデータに前記検査用パターン505を書き込む(図3中、G、図5(a))。
【0072】
検査用パターン505としては、特に限定されないが、本実施形態では、図5(a)に示すように、任意の数列からなるパターン本体(data bits)と、当該パターン本体についての誤り検出符号(check bits)とを含んで構成されている。これにより、比較的少ない計算量で検査を行うことができるため、検査を行うための中央演算装置および各集積回路の計算、データ転送等についての負荷が小さいものとなるとともに、高速で検査を行うことができる。
【0073】
また、通常、検査用パターン505は、映像データ501と比較して少ないデータ量となっている。
【0074】
パターン本体としては、上述したように、任意の数列であればよく、例えば、映像データ501の一部を含んで構成された数列、映像データ501の一部または全部を演算することによって得られる数列、ランダムに決定された数列等が挙げられる。
【0075】
また、誤り検出符号としては、パターン本体についての各種ブロック符号を用いることができ、例えば、垂直パリティチェック、水平パリティチェック等のパリティ符号;定比率符号;チェックサム;巡回冗長検査等の巡回符号;MD4、MD5、SHA−1等のハッシュ関数等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
検査結果生成手段404は、各集積回路を通過する前記映像信号500について、検査用パターン505を用いて映像信号500の正常性を検査し、検査結果506を生成する(図3中、C)。具体的には、検査結果生成手段404は、集積回路LSI#1を通過する映像信号500と、集積回路LSI#1より後段に設けられた各集積回路LSI#2〜LSI#nを通過する映像信号500とをそれぞれ比較することにより、各集積回路LSI#2〜LSI#nを通過する映像信号500の正常性を検査する。このように、映像信号500を比較することにより、検査用の信号を別に用意して観察を一旦停止して検査を行うことなく、撮像手段122による観察を行いながら、各集積回路についての映像信号500の伝送について検査を行うことができる。
【0077】
なお、検査結果生成手段404は、集積回路内のバイパス部412および信号処理部411よりも後段にある映像信号500(信号処理部411を通過した映像信号500または信号処理部411を迂回してバイパス部412のみを通過した映像信号500)について正常性の検査を行う。
【0078】
また、図3に示すように、本実施形態では、検査結果生成手段404により、集積回路として、第2の信号処理回路220に備えられる各集積回路(LSI#2〜LSI#n)について、それぞれ、映像信号500の正常性の検査が行われる。これにより、検査が行われた集積回路間での映像信号500の伝送が正常に行われたか否かを知ることができ、映像信号500の伝送に異常があった場合に、原因または異常がある部位(集積回路、配線等)を特定することがより容易となる。
【0079】
本実施形態では、検査結果生成手段404において、ある集積回路を通過する映像信号500が正常であるか否か(不本意な破損、変更が加えられていないか否か)の検査は、当該集積回路を通過する映像信号500の検査用パターン505が、検査用パターン書込手段403によって生成された検査用パターン505と同一であるか否かを判断することにより行なわれる。このように、映像信号500が正常であるか否かの判断に、データ量の多い映像データ501や、映像信号500そのものを用いる代わりに、映像信号500の一部である検査用パターン505を用いることにより、迅速に検査が行われる。
【0080】
より具体的には、検査結果生成手段404は、選択された集積回路を通過する映像信号500の検査用パターン505から、検査用パターンの誤り検出符号と同様の方法により、誤り検出符号を生成する。そして、検査結果生成手段404は、この検査結果生成手段404で生成された誤り検出符号と、検査用パターン505に備えられた誤り検出符号とを比較して同一であるか否かを判断する。
【0081】
そして、これらが同一であれば、検査が行われている集積回路を通過する映像信号500の検査用パターン505が、検査用パターン書込手段403で生成された検査用パターン505と同一であると判断でき、集積回路を通過する映像信号500は正常であると判断できる。一方、誤り検出符号同士が同一でなければ、検査が行われている集積回路を通過する映像信号500の検査用パターン505が、検査用パターン書込手段403で生成された検査用パターン505と異なると判断でき、集積回路を通過する映像信号500は正常でないと判断できる。
【0082】
検査結果生成手段404が生成する検査結果506としては、集積回路を通過する映像信号500が正常であるか否かの判断結果が含まれる。また、検査結果506には、上記の判断結果の情報に加えて、検査結果生成手段404で生成された誤り検出符号が含まれるものであってもよい。
【0083】
検査結果書込手段405は、検査結果生成手段404が生成した検査結果506を、ブランキングデータ504の未だに情報が書き込まれていないタイムスロットに書き込む(図3中、A、図5(b)、(c))。
【0084】
なお、書き込まれた検査結果506は、使用時以外はトランスペアレントされ、その後の他の集積回路において検査が行われる際には、検査結果書込手段405は、ブランキングデータ504の異なる場所(タイムスロット)に他の集積回路における検査結果506を書き込む。
【0085】
切替手段402は、得られた検査結果506を基に、映像信号500を各集積回路にある信号処理部411から迂回するか否かを判断し、バイパス部412における映像信号500の経路を切り替える。
【0086】
なお、映像信号500にある検査結果506は、最後に検査される集積回路において、切替手段402が取得する。
【0087】
切替手段402は、検査結果506を基に、映像信号500の伝送についての不具合の疑いのある集積回路を検出する不具合検出手段406と、検出された不具合の疑いのある集積回路について、映像信号500を信号処理部411から迂回させるか否かを決定する迂回決定手段407と、集積回路に不具合の疑いが生じた際に警告または注意を喚起する表示を行う警告手段408とを有する。
【0088】
不具合検出手段406は、上述したように、検査結果506を基に、映像信号500の伝送についての不具合の疑いのある集積回路を検出する。
【0089】
不具合検出手段406は、具体的には、下記のようにして映像信号500の伝送が正常でない、不具合の疑いのある集積回路を検出する。
【0090】
まず、検査結果506のある集積回路の部位において、映像信号500の伝送が正常であるとの結果が出ている場合、当該集積回路において、または映像信号500が当該集積回路を通過する以前の集積回路、配線(あるいは配線を有するケーブル)において、映像信号500の伝送が正常であると判断できる。そして、検査結果506の各集積回路の部位において、すべて、映像信号500の伝送が正常であるとの結果が出ている場合、映像信号500の通過経路のすべてにおいて、映像信号500の信号伝送が正常であると判断できる。
【0091】
一方、検査結果506のある集積回路の部位において、映像信号500の伝送が正常でないとの結果が出ている場合、当該集積回路において、または映像信号500が当該集積回路を通過する以前の集積回路、配線において、映像信号500の伝送に不具合の疑いがあるものと判断できる。
【0092】
なお、検査結果506のある集積回路の部位において、映像信号500の伝送が正常でないとの結果が出ている場合、当該集積回路を通過した映像信号500がその後に通過する他の集積回路においても、映像信号500の伝送が正常でないとの結果が出る。しかしながら、このような場合、映像信号500の伝送が正常でないとの結果が出ている集積回路のうち、最も早く映像信号500を通過した集積回路以前において、映像信号500の伝送に不具合の疑いがあると判断される。
【0093】
ところで、本実施形態では、映像信号500が伝送される集積回路毎に、検査手段401による検査が行われているため、隣接する集積回路間での信号の伝送が正常であるか否かを判断することができる。すなわち、検査結果506のある集積回路LSI#aの部位において映像信号500の伝送が正常であるとの結果がでており、検査結果506の当該集積回路LSI#aの次の集積回路LSI#a+1の部位において映像信号500の伝送が正常でないとの結果がでている場合には、集積回路LSI#a+1または、これらの集積回路間の配線において映像信号500の伝送に不具合の疑いがあるものと判断される。
【0094】
すなわち、複数の集積回路において検査が行われ、ある集積回路の検査結果506では、映像信号500の伝送が正常であるとの結果が出ており、その後の集積回路の検査結果506では、映像信号500の伝送が正常でないとの結果が出ている場合、前者の集積回路より先、かつ後者の集積回路以前の集積回路、配線、ケーブルにおいて、映像信号500の伝送に不具合の疑いがあるものと判断される。
【0095】
また、検査結果506が検査の目的であった、ある集積回路についての情報(検査結果)を有していない場合、検査手段401が当該集積回路以降の検査を行うことができなかったものと判断でき、当該集積回路または当該集積回路より前の集積回路、配線について不具合が発生していることが推測され、映像信号500が伝送されていないことが判断される。
【0096】
迂回決定手段407は、不具合検出手段406により不具合の疑いが検出された集積回路について、映像信号500を当該集積回路の信号処理部411を迂回させるか否かを決定する。そして、迂回決定手段407は、バイパス部412における映像信号500の経路を切り替えることにより、映像信号500について、当該集積回路の信号処理部411を迂回させる、または、迂回の解除を行う。
【0097】
不具合の疑いが検出された集積回路がバイパス部412を有する場合、通常、迂回決定手段407は、映像信号500について、バイパス部412を介して、信号処理部411を迂回させて集積回路から出力させる。また、このとき、迂回決定手段407は、後述する警告手段408と通信を行う。そして、警告手段408は、映像信号500に所定の処理が行われていない旨の注意を喚起する表示を組み込み、モニタ装置300にて術者や使用者に注意する。
【0098】
また、このように映像信号500が迂回して集積回路から出力されている際に、迂回決定手段407は、信号処理部411と通信して、信号処理部411を再起動させる。なお、迂回決定手段407は、信号処理部411の再起動の回数が所定以上の場合には、再起動を行わず、後述する警告手段408と通信を行う。そして、警告手段408は、映像信号500に所定の処理が行われていない旨および不具合が解消しない旨の注意を喚起する表示を組み込み、モニタ装置300にて術者や使用者に注意する。
【0099】
また、不具合の疑いが検出された集積回路について、不具合の状態がモニタ装置300の映像の出力において致命的である場合、迂回決定手段407は、迂回を行わず、集積回路の信号処理部411に映像信号500を通過させるようにバイパス部412の経路を設定する。
【0100】
不具合の疑いが検出された集積回路について、不具合の状態がモニタ装置300の映像の出力において致命的である場合としては、例えば、モニタ装置300に映像を表示するために必要不可欠な集積回路において不具合が生じた場合、不具合の疑いが検出された集積回路がバイパス部を有しない場合、不具合の疑いが検出された集積回路がバイパス部が作動しない場合、検査手段401によって検査を行うことができず、集積回路または配線が断線、故障している場合が挙げられる。
【0101】
また、モニタ装置300に映像を表示するために必要不可欠な集積回路としては、例えば、信号処理部411の機能が映像信号500のA/D変換であるもの(集積回路LSI#1)、信号処理部411の機能が映像信号500についてデジタル−アナログ変換(D/A変換)を行い、所定のテレビジョン信号に変換するものであるもの(集積回路LSI#n)、信号処理部411の機能が色変換機能であるもの(集積回路LSI#6)等が挙げられる。
【0102】
また、集積回路がバイパス部を有しない場合としては、本実施形態では、例えば、集積回路が集積回路LSI#1、LSI#nである場合が挙げられる。
【0103】
また、上記の致命的な不具合が生じた場合、迂回決定手段407は、後述する警告手段408と通信を行う。そして、警告手段408は、映像信号500に異常がある旨の警告の表示を組み込み、モニタ装置300にて術者や使用者に警告する。また、モニタ装置300において映像の表示自体が不可能である場合、警告手段408は、制御装置200にある警告ランプ(図示せず)を点灯させることにより、術者、使用者に不具合を知らせる。
【0104】
また、伝送線路に不具合が発生している場合は、正常にデータ伝送が出来ず、全く検査符号が一致しないことが考えられる。この場合、不具合の有る伝送路の前の集積回路の致命的な不具合として検出され、警告手段408により警告を行う。
【0105】
また、集積回路において不具合が解消された場合には、迂回決定手段407は、迂回を解除して、映像信号500が信号処理部411を通過するようにバイパス部412における映像信号500の経路を切り替える。また、警告手段408により警告、注意等の表示が行われている場合、迂回決定手段407は、警告手段408を介し、モニタ装置300におけるこれらの表示の解除および、不具合が解消された旨の表示を行う。
【0106】
警告手段408は、迂回決定手段407と通信を行い、迂回決定手段407の指示に従って、モニタ装置300に情報の表示を行うことができる。
【0107】
警告手段408は、例えば、集積回路において不具合等があった旨の注意を喚起する表示または不具合が解消された旨を術者や使用者に通知する表示を行う。このように、集積回路において不具合があった旨を術者に知らせることにより、術者は、モニタ装置300に表示される映像について一定の処理が行われていないことを把握できる。このため、観察する術者は、モニタ装置300に表示される映像の状態を把握することが容易となる。
【0108】
具体的には、警告手段408は、映像信号500に迂回決定手段407から受けた指示に対応する表示を組み込むことによってモニタ装置300に表示を行う。
【0109】
また、警告手段408は、制御装置200に設けられた警告ランプ(図示せず)を点灯させることにより、上記と同様な注意、通知の表示を行うことができる。
【0110】
以上のような内視鏡システム1は、例えば、以下のようにして映像信号500の信号伝送の検査および、集積回路に不具合が生じた場合の対処が可能である。
【0111】
また、このような信号伝送の検査は、例えば、内視鏡システム1の起動時や、内視鏡システム1において不具合が生じた場合、定期的な内視鏡システム1のメンテナンス時、内視鏡システム1の通常起動時おける定期的な映像信号500のチェックとして用いることができる。
【0112】
図6に示すように、まず、撮像手段122が作動している際において、検査手段401は、映像信号500の伝送の検査を開始する(S−1)。
【0113】
なお、検査手段401による映像信号500の伝送の検査は、一定時間おきに、繰り返し行われることができる。
【0114】
次に、検査手段401によって生成された検査結果506に基づいて、切替手段402は、不具合の疑いが検出された集積回路を判断する。この場合、集積回路そのものに不具合がある場合の他、前述したように、ケーブルまたは伝送経路に不具合がある場合も、その不具合のあるケーブルまたは伝送経路の前の集積回路の不具合と判断される。そして、前記不具合の状態がモニタ装置300の映像の出力において、致命的であるか否かを判断する(S−2)。
【0115】
不具合の状態が致命的である場合には、切替手段402は、映像信号500が信号処理部411を通過するようにバイパス部412の経路を設定する(現状を維持する)。また、切替手段402は、モニタ装置300に、不具合が生じている旨の表示を行う。また、モニタ装置300に表示を行うことができない場合、切替手段402は、制御装置200にある警告ランプ(図示せず)を点灯させることにより、術者、使用者に不具合を知らせ、集積回路の不具合の対処を終了する(S−10)。
【0116】
また、不具合の状態が致命的出ない場合は、切替手段402は、バイパス部412を用いて、映像信号500が信号処理部411を通過しないように迂回させる(S−3)。
【0117】
映像信号500の迂回が開始されると、切替手段402は、映像信号500に所定の処理が行われていない旨の注意の表示を組み込み、モニタ装置300にて術者や使用者に注意する(S−4)。
【0118】
映像信号500の迂回が開始されると、切替手段402は、不具合の疑いが検出された集積回路において、信号処理部411を再起動させる(S−5)。
【0119】
次に、切替手段402は、バイパス部412による迂回を解除する(S−6)。
次に、検査手段401は、各集積回路において再度の映像信号500の伝送について検査を行い、各集積回路の状態を検査する(S−7)。
【0120】
次に、検査手段401によって再度生成された検査結果506に基づいて、切替手段402は、前回不具合の疑いが検出された集積回路について、不具合が解消されたか否かを判断する(S−8)。
【0121】
不具合が解消されている場合、切替手段402は、バイパス部412による迂回を解除したままとし、モニタ装置300において行われていた注意の表示を解除する(S−9)。そして、映像信号500の信号伝送の検査および集積回路の不具合の対処を終了する。
【0122】
不具合が解消されていない場合、切替手段402は、信号処理部411の再起動の回数が所定回数以上であるか否かを判断する(S−11)。
【0123】
信号処理部411の再起動の回数が所定回数未満である場合、上述した(S−3)〜(S−8)のステップを再度行う。
【0124】
信号処理部411の再起動の回数が所定回数以上である場合、切替手段402は、バイパス部412による迂回を再度行い、さらに、モニタ装置300において行われている注意の表示を維持し(S−12)、映像信号500の信号伝送の検査および集積回路の不具合の対処を終了する。
【0125】
以上のような観察機器システム(内視鏡システム1)によれば、撮像手段122によって得られた映像についての映像信号500の集積回路間の伝送を検査手段401によって検査し、検査の結果、信号処理部411に不具合が生じている疑いのある集積回路を検出できる。また、不具合が生じている疑いのある集積回路についてバイパス部412を用いて、信号処理部411を迂回させることができる。この結果、映像信号500が伝送される集積回路に不具合が生じた場合であっても、映像信号500がモニタ装置(表示手段)300に入力され、映像が途切れることなく連続して表示される。また、映像信号500が信号処理部411を迂回している際に、信号処理部411が再起動されることにより、信号処理部411における不具合の解消が迅速に行われる。
【0126】
特に、従来の医療用観察機器システムにおいては、手術中や診察中において、モニタ装置に表示される映像が途切れると、手術や診察に使用している器具の位置が分からなくなる場合があり、このような場合、手術、診察が中断したり、器具の操作を誤って不本意に術部を損傷させたりする危険性がある。また、手術や診察が中断することによって患者に負担をかけてしまう危険性がある。
【0127】
上記に述べる不具合は、電気メスなどを併用する医療用観察機器システムにおいては、電気メス、レーザメスなどの併用による電気的な外来ノイズにより、発生する可能性がしばしばありうる。
【0128】
しかしながら、本発明を医療用観察機器システムに適用することにより、観察される患部の映像が継続的に表示されることができ、手術、診察が中断されることが防止されるとともに、術者の手術や診察に用いている器具による誤操作を防止することができる。特に、内視鏡システム1においては、体内に挿入部可撓管110を挿入して体腔の観察を行い、必要に応じて対空の手術等を行うため、このような手術の中断や器具の誤操作は、患者に負担を強いる可能性があるが、本発明ではこのような問題が防止されている。以上から、本発明は、医療用観察機器システム、特に内視鏡システムに適用されることにより、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0129】
また、映像信号500は、通常、データ量が多く、また連続して伝送されるものであるが、検査手段401が、映像信号500のブランキングデータ504に検査用パターン505および検査結果506を書き込むことにより、映像信号500を連続して伝送しつつ、集積回路についての信号伝送の検査を行うことができる。言い換えると、内視鏡システム1においては、手術や治療において、映像(動画)を止めることなく、集積回路についての信号伝送の検査を行うことができる。
【0130】
また、検査手段401が、映像信号500のブランキングデータ504に検査用パターン505および検査結果506を書き込むことにより、内視鏡システム1は、配線やケーブルを増加させることなく、信号の伝送が正常であるか否かを検査することができる。このため、内視鏡システム1は、配線基板の配線密度が増加することが防止され、また、ケーブルが増加することが防止される。
【0131】
特に、内視鏡システム1は、異なる複数の機器を有するため、配線が多くなりやすい。このため、複数の配線を複数のケーブルに分けて機器同士を接続した場合には、ケーブルの接続が複雑になりやすい。また、内視鏡100のコネクタ部150に接続するケーブルが配線の増加によって太くなりやすい。以上のような場合、内視鏡100の操作性が低下する場合も考えられる。しかしながら、上述したような検査手段401を用いることにより、配線を新たに設けなくても信号伝送の検査を行うことができるため、ケーブルが太くなる、あるいはケーブルの本数が増加することが防止され、内視鏡100の操作性を損なうことが防止される。特に、本実施形態における検査手段401は、上述したように内視鏡100の操作性がケーブルの増加等によって阻害されないため、内視鏡100の細かな操作が要求される内視鏡システム1に対して好適に行われる。
【0132】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0133】
例えば、前述した実施形態では、検査手段は、映像信号が通過する全ての集積回路について検査を行うものとしたが、本発明ではこれに限定されず、検査手段は少なくとも1つの集積回路について検査が行うものであればよい。例えば、検査手段は、複数の集積回路のうち、2つの集積回路につき1つの集積回路について検査を行う(1つ飛ばしで集積回路について検査を行う)ように構成されていてもよい。
【0134】
また、例えば、前述した実施形態では、検査手段は、映像信号のブランキングデータを利用して行うものとしたが、本発明では、これに限定されず、集積回路間における映像信号の伝送の検査を行うことができる方法であればよい。
【0135】
また、例えば、前述した実施形態では、集積回路は、それぞれ1つの信号処理部(機能ブロック)を有するものとして説明したが、これに限定されず、1つの集積回路に複数の信号処理部(機能ブロック)が備えられるものであってもよい。このような場合、1つの集積回路内にある信号処理部毎にバイパス部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 内視鏡システム
100 電子内視鏡(内視鏡)
110 挿入部可撓管
120 湾曲部
121 照明部
122 撮像素子
130 操作部
131、132 操作ノブ
140 接続部可撓管
150 コネクタ部
151 光源用コネクタ
152 通信コネクタ
153 コントローラ
154 第1の信号処理回路
155 タイミングコントロール回路
156 撮像素子ドライバ
160 ライトガイド
161 入射端
200 制御装置
210 システムコントローラ
220 第2の信号処理回路
230 光源部
231 ランプ制御部
232 ランプ
233 レンズ
300 モニタ装置
401 検査手段
402 切替手段
403 検査用パターン書込手段
404 検査結果生成手段
405 検査結果書込手段
406 不具合検出手段
407 迂回決定手段
408 警告手段
411 信号処理部
412 バイパス部
500 映像信号
501 映像データ
502 開始フラグ
503 終了フラグ
504 ブランキングデータ
505 検査用パターン
506 検査結果
601、602 配線
603 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像して映像信号を得る撮像手段と、前記映像信号が通過する複数の集積回路と、前記集積回路を通過した映像信号を表示する表示手段とを含んで構成された観察機器システムであって、
複数の前記集積回路のうち少なくとも1つの集積回路を通過する映像信号の正常性を検査して検査結果を生成する検査手段を有し、
前記映像信号の正常性が検査される前記集積回路は、入力された前記映像信号を演算処理して出力する信号処理部と、入力された前記映像信号を前記信号処理部を通過せずに迂回して当該集積回路から出力することのできるバイパス部とを有しており、
さらに、前記検査結果に基づいて、前記映像信号を迂回させるか否かを判断して、前記映像信号の経路を切り替える切替手段を有すること特徴とする観察機器システム。
【請求項2】
前記映像信号の正常性が検査される集積回路は、前記映像信号が迂回している間に、前記信号処理部を再起動することができるように構成されている請求項1に記載の観察機器システム。
【請求項3】
前記表示手段は、前記映像信号が迂回している間に、注意を喚起する表示を行うことができるように構成されている請求項1または2に記載の観察機器システム。
【請求項4】
前記検査手段は、前記複数の集積回路のうち第1の集積回路を通過する前記映像信号と、前記複数の集積回路のうち前記第1の集積回路より後段に設けられた第2の集積回路を通過する前記映像信号とを比較することにより、前記第2の集積回路を通過する前記映像信号の正常性を検査する請求項1ないし3のいずれかに記載の観察機器システム。
【請求項5】
前記映像信号は、複数のデータと複数の前記データの間に設けられた空白のブランキングデータとを有するデジタルの信号であり、
検査手段は、所定の数列で構成された検査用パターンを生成し、前記第1の集積回路を通過する前記ブランキングデータに前記検査用パターンを書き込む検査用パターン書込手段と、前記第2の集積回路を通過する前記映像信号について、前記検査用パターンを用いて当該映像信号の正常性を検査して検査結果を生成する検査結果生成手段と、
前記ブランキングデータに前記検査結果を書き込む検査結果書込手段とを有する請求項1ないし4のいずれかに記載の観察機器システム。
【請求項6】
観察機器システムは、医療用観察機器システムである請求項1ないし5のいずれかに記載の観察機器システム。
【請求項7】
前記医療用機器システムは、内視鏡システムである請求項1ないし6のいずれかに記載の観察機器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11021(P2012−11021A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150775(P2010−150775)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】