説明

観測用ブイのアンテナケース

【課題】製造コストが安くメインテナンスを容易に行うことができる観測用ブイのアンテナケースを提供する。
【解決手段】ブイの蓋に固定されるケース底板1と前記ケース底板1に締着されるケース上板2との間にシール材6、7を介装してアンテナ3を収容する空間3aを水密に形成する観測用ブイのアンテナケース3において、前記ケース底板1またはケース上板2の一方において前記シール材6、7の外側の位置に貫通ねじ穴1aを設け、前記貫通ねじ穴1aにボルト8をねじ込み、前記ボルト8の先端で前記ケース底板1またはケース上板2の他方を押してケース底板1とケース上板2を離間させることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は気象や地球環境のデータを観測するための観測用ブイのアンテナケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から海上の気象データや海中の温度等のデータを取得するデータ取得装置として、海上に浮かべるブイが使用されていた。これにより収集したデータは無線装置とアンテナで送信され、通信衛星を介して地上局に送られる。
【0003】
一般にこのアンテナは、ブイ内に組み込まれたり、ブイの外に設置する防水構造のアンテナケース内に配置されていた。また、ブイを一か所で用いる係留ブイの場合は、ブイを回収してメインテナンスを行い再利用されることが多い。このため、ブイの無線装置用アンテナも長期間使用される。そして、そのアンテナケースはアンテナの耐環境を考慮してアンテナ収容空間が一般的に完全密閉構造となっている。
【0004】
そのような、従来の観測用ブイのアンテナケースの例を図4おび図5により説明する。図4は従来の観測用ブイのアンテナケースを一部部材を透視して示す平面図、図5(a)は図4におけるA−A断面図、図5(b)は図4におけるA−A断面の他の状態を示す部分断面図である。
【0005】
図4,5に示すケース底板11はケース底板11のボルト貫通穴11a、11a…を貫通しケース上板12のねじ穴12a、12aにねじ込まれるボルトによってケース上板12に締着されて、ケース上板12と共に内部にアンテナ収容空間13aを有するアンテナケース13を構成する。ケース上板12とケース底板11はOリング6およびOリング7を挟みこんでおり、アンテナ収容空間13aは防水された空間となる。
【0006】
ケース底板11の取付用ねじ穴11c、11c…には図示していないブイの蓋の穴を貫通したボルトがねじ込まれアンテナケース13はブイの蓋に固定される。取付用ねじ穴11c、11c…の周囲にはシール材が挟みこまれ取付用ねじ穴11c、11c…の周囲の部分は防水構造となっている。アンテナ収容空間13a内に配置されたアンテナ4の給電点4aはケース底板11を貫通する防水コネクタ5およびコードを介してブイ内に配置された送受信機に接続される。
【0007】
定期点検時に、上記アンテナ収容空間13a内に配置されたアンテナ4が腐食していないかどうかを検査し、また、給電点4aの半田付け部分の腐食や防水コネクタ5の腐食等を検査するためにケース上板12をケース底板11から外す必要がある。その場合、ケース上板12をケース底板11に締着したボルトを外して、ケース上板12をケース底板11から離すことになる。
【0008】
しかしながら、実環境下で使用していると、温度変化や気圧変化によりアンテナ収容空間13a内の気圧が低くなる。このため、手で簡単に外すことができず、図5に示すように、板状の特殊工具14を矢印で示すようにケース上板12とケース底板11の合わせ目に差し込んでケース上板12とケース底板11を離すのであるが、防水性能を高めるために2重シール構造となっていり、ゴム弾性を有するOリングを用いているため、僅かな隙間ではアンテナ収容空間13a内の気圧を高めることができず、2人がかりの作業となり、かなりの重労働となっていた。
【0009】
特開平9−79874号公報に開示された防水筐体のコネクタ等の配置構造では、防水筐体に透明部材を配置した窓を設け、この透明部材の両側に赤外線発光素子と赤外線受光素子を対向配置し、赤外線発光素子と赤外線受光素子の間でシリアルデータを非接触で送受する。
【0010】
このような、このように非接触の送受方式を利用すると、蓋を開閉することなくデータ入出力作業を実行できるが、赤外線発光素子や赤外線受光素子等が必要となり、装置の製造コストが高くなるという問題があった。
【特許文献1】特開平9−79874号公報、段落0006、図1、図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造コストが安くメインテナンスを容易に行うことができる観測用ブイのアンテナケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の観測用ブイのアンテナケースは、ブイの蓋に固定されるケース底板と前記ケース底板に締着されるケース上板との間にシール材を介装してアンテナを収容する空間を水密に形成する観測用ブイのアンテナケースにおいて、前記ケース底板またはケース上板の一方において前記シール材の外側の位置に貫通ねじ穴を設け、前記貫通ねじ穴にボルトをねじ込み、前記ボルトの先端で前記ケース底板またはケース上板の他方を押してケース底板とケース上板を離間させることを可能としたものである。
【0013】
また、前記観測用ブイのアンテナケースにおいて、前記貫通ねじ穴を同一円周上等間隔に複数個設けたものである。
【0014】
また、前記観測用ブイのアンテナケースにおいて、前記ケース底板を貫通する防水コネクタを介して前記ブイ内に配置される送受信機と前記アンテナとが接続されるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の観測用ブイのアンテナケースによれば、製造コストが安くメインテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。図1はこの発明の実施例である観測用ブイのアンテナケースを一部部材を透視して示す平面図、図2(a)は図1におけるA−A断面図、図2(b)は図1におけるB−B断面を示す部分断面図、図3(a)は図1におけるB−B断面図、図3(b)は図1におけるB−B断面の他の状態を示す部分断面図である。
【0017】
図1〜3に示すケース底板1はケース底板1のボルト貫通穴1a、1a…を貫通しケース上板2のねじ穴2a、2aにねじ込まれるボルトによってケース上板2に締着されて、ケース上板2と共に内部にアンテナ収容空間3aを有するアンテナケース3を構成する。ケース上板2とケース底板1はOリング6およびOリング7を挟みこんでおり、アンテナ収容空間3aは防水された空間となる。
【0018】
ケース底板1の取付用ねじ穴1c、1c…には図示していないブイの蓋の穴を貫通したボルトがねじ込まれアンテナケース3はブイの蓋に固定される。取付用ねじ穴1c、1c…の周囲にはシール材が挟みこまれ取付用ねじ穴1c、1c…の周囲の部分は防水構造となっている。アンテナ収容空間3a内に配置されたアンテナ4の給電点4aはケース底板1を貫通する防水コネクタ5およびコードを介してブイ内に配置された送受信機に接続される。
【0019】
定期点検時に、上記アンテナ収容空間3a内に配置されたアンテナ4が腐食していないかどうかを検査し、また、給電点4aの半田付け部分の腐食や防水コネクタ5の腐食等を検査するためにケース上板2をケース底板1から外す。その場合、ケース上板2をケース底板1に締着したボルトを外して、ケース上板2をケース底板1から離すことになる。
【0020】
上記の構成は図4〜5で説明した従来例のアンテナケース13の構成と同じであるが、実施例のアンテナケース3ではケース底板1にケース底板1を貫通するねじ穴1bが同一円周上等間隔に4個設けられている。
【0021】
貫通ねじ穴1bに図2(b)に矢印で示すようにボルト8をねじ込む。ボルト8の長さは貫通ねじ穴1bの長さより長いので、ボルト8は図3(b)に示すように、その先端がケース上板2に当接してケース上板2をケース底板1から離すようになる。
【0022】
ボルト8の一度にねじ込む量を一定量とし、4個の貫通ねじ穴1b、1b…に4本のボルトを順次ねじ込むことによりケース上板2を大きく傾けることなく、ケース上板2の取外し作業を1人で楽に行える。
【0023】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、ケース上板2を取外すための貫通ねじ穴をケース底板1に設けるのではなく、ケース上板2に設けても良い。ケース上板2は電波の透過性を良くするために合成樹脂性とする場合にも、貫通ねじ穴の部分の厚さや貫通ねじ穴のピッチを大きくして十分の引き離す力を得ることができる。
【0024】
なお、貫通ねじ穴の位置はOリングの外側の位置に設けられるので防水性能に影響を及ぼすことはない。貫通ねじ穴の数は4個に限られず、作業を容易とすために適宜その数を変更してもよい。また、貫通ねじ穴の配置は必ずしも等間隔でなくてもよい。
【0025】
また、送受信機をアンテナケース内に配置してもよい。これにより、高周波信号の電通路が短くなり送受信の効率を高めることができる。そのために、アンテナケースが大きくなっても、この発明によると、アンテナケースを開くことが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施例である観測用ブイのアンテナケースを一部部材を透視して示す平面図である。
【図2】図2(a)は図1におけるA−A断面図、図2(b)は図1におけるB−B断面を示す部分断面図である。
【図3】図3(a)は図1におけるB−B断面図、図3(b)は図1におけるB−B断面の他の状態を示す部分断面図である。
【図4】従来の観測用ブイのアンテナケースを一部部材を透視して示す平面図である。
【図5】図5(a)は図4におけるA−A断面図、図5(b)は図4におけるA−A断面の他の状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ケース底板、1a ボルト貫通穴、1b 貫通ねじ穴、1c 取付用ねじ穴
2 ケース上板、2a ねじ穴
3 アンテナケース、3a アンテナ収容空間
4 アンテナ、4a 給電点
5 防水コネクタ
6 Oリング
7 Oリング
8 ボルト
11 ケース底板、11a ボルト貫通穴、11c 取付用ねじ穴
12 ケース上板、12a ねじ穴
13 アンテナケース、13a アンテナ収容空間
14 特殊工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブイの蓋に固定されるケース底板と前記ケース底板に締着されるケース上板との間にシール材を介装してアンテナを収容する空間を水密に形成する観測用ブイのアンテナケースにおいて、前記ケース底板またはケース上板の一方において前記シール材の外側の位置に貫通ねじ穴を設け、前記貫通ねじ穴にボルトをねじ込み、前記ボルトの先端で前記ケース底板またはケース上板の他方を押してケース底板とケース上板を離間させることを可能とした観測用ブイのアンテナケース。
【請求項2】
前記貫通ねじ穴は同一円周上等間隔に複数個設けられている請求項1の観測用ブイのアンテナケース。
【請求項3】
前記ケース底板を貫通する防水コネクタを介して前記ブイ内に配置される送受信機と前記アンテナとが接続される請求項1または2の観測用ブイのアンテナケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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