説明

角度センサ

【課題】検出対象であるステアリングシャフトの回転運動をマグネット(着磁部)の回転運動に変換する伝達機構の構造を簡素化することにより、部品点数の削減および製造コストの軽減を図り、かつ、設置レイアウトを改良することにより、異音の軽減および耐久性の向上を図った角度センサを提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置に搭載され、操舵角を検出する角度センサにおいて、ステアリングシャフトと一体に回転するように設けられた回転部材の外歯ギヤに噛合する角度センサギヤと、角度センサギヤが基端部に固定され、角度センサギヤと一体に回転する角度センサシャフトと、角度センサシャフトの先端部に固定され、角度センサギヤおよび角度センサシャフトと一体に回転するマグネットと、マグネットの磁界変化に基づいて操舵角を検出する角度センサ基板とを備え、ウォームホイールを収容するギヤボックスのカバー部材に搭載されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵補助トルクの発生源として電動モータを用いた電動パワーステアリング装置に関し、より詳細には、操舵機構の回転角(操舵角)を検出する角度センサのレイアウトの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイールの回転に応じて回転角度情報を生成する角度センサ(舵角センサ)が搭載されている(例えば特許文献1)。
【0003】
図4は、従来の角度センサが搭載された電動パワーステアリング装置のウォームホイールを示す要部断面図であり、図5は、従来の角度センサの内部構造を示す要部断面図である。
【0004】
図4において、ステアリングホイール(図示せず)に連結されたステアリングシャフト101の外周には、減速機構を構成するウォームホイール102が圧入固定されている。このウォームホイール102の側面には、略円管状の凹溝部103が形成され、該凹溝部103の外側内周面には、内歯ギヤ104が形成されている。そして、この内歯ギヤ104には、角度センサ105のセンサ棒106の先端に取り付けられたピニオン107が噛合している。
【0005】
角度センサ105は、図5に示すように、センサ棒106の基端側に形成されたセンサウォーム108に噛合するセンサホイール109を備え、ウォームホイール102からピニオン107およびセンサ棒106を介して、ステアリングシャフト101の回転をセンサホイール109に伝達するようになっている。また、センサホイール109の一側面には、N極磁石110とS極磁石111とからなる着磁部112が設けられ、各磁石110,111がステアリングシャフト101の回転と同期しつつ一定の周期で回転するようになっている。
【0006】
また、角度センサ105は、ケースの一部に固定され、着磁部112からの磁界変化を検出するための磁気抵抗素子部113を備え、該磁気抵抗素子部113によって得られた磁界変化に基づいて、ステアリングシャフト101の回転角(操舵角)を算出するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平2005−91137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の角度センサ105では、ウォームホイールの回転運動をピニオン107およびセンサウォーム108を介して直線運動に変換し、さらにその後、センサホイール109による回転運動に変換して着磁部(マグネット)112を回転させる構造になっていた。そのため、非常に変換効率が悪く、かつ、部品点数も多いことにより製造コストが嵩んでしまう、という問題があった。
【0009】
また、従来の角度センサ105のケースは、一般的に樹脂製(例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂材)であり、センサウォーム108とセンサホイール109の噛合いによって生じる異音(ギヤ噛合音)が外部に放射し易い構造になっていた。そのため、この樹脂製ケースに消音のためのリブや熱かしめを施す必要があり、これらの処理も製造コストを増加させる要因の一つになっていた。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検出対象であるステアリングシャフトの回転運動をマグネット(着磁部)の回転運動に変換する伝達機構の構造を簡素化することにより、部品点数の削減および製造コストの軽減を図り、かつ、設置レイアウトを改良することにより、異音の軽減および耐久性の向上を図った角度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、操舵角に応じて駆動する電動モータの回転力を、減速機構を介してステアリングシャフトに伝達することにより操舵補助が行われる電動パワーステアリング装置に搭載され、前記操舵角を検出する角度センサにおいて、前記ステアリングシャフトと一体に回転するように設けられた回転部材の外歯ギヤに噛合する角度センサギヤと、前記角度センサギヤが基端部に固定され、前記角度センサギヤと一体に回転する角度センサシャフトと、前記角度センサシャフトの先端部に固定され、前記角度センサギヤおよび前記角度センサシャフトと一体に回転するマグネットと、前記マグネットの磁界変化に基づいて前記操舵角を検出する角度センサ基板とを備え、前記減速機構を収容するギヤボックスのカバー部材に搭載されることにより、達成される。
【0012】
また、上記目的は、前記角度センサギヤと前記マグネットとが、前記ギヤボックスのカバー部材を介して前記角度センサシャフトの基端部と先端部とに配されることにより、効果的に達成される。
【0013】
また、上記目的は、前記角度センサ基板および前記マグネットが、前記ギヤボックスのカバー部材の外側面に形成された角度センサ凹部内に格納されることにより、効果的に達成される。
【0014】
さらに、上記目的は、前記角度センサギヤと前記回転部材の外歯ギヤとのギヤ比が、前記ステアリングシャフトの3回転が前記マグネットの1回転になるように設定されていることにより、効果的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る角度センサによると、従来の樹脂製ケースより剛性の高いギヤボックスのカバー部材に内蔵されるレイアウトにしたことにより、角度センサのケースがギヤボックスのカバー部材と共通化され、角度センサギヤや角度センサシャフトを支持する部分の剛性を向上させることができ、従来は角度センサの樹脂製ケースから放射されていた異音を軽減することができる。この結果、消音のためのリブや熱かしめを施す必要がなくなり、製造コストの軽減を図ることができる。
【0016】
また、検出対象であるステアリングシャフトの回転運動が、角度センサギヤおよび角度センサシャフトを介してマグネットに伝達される構造になっているので、従来の伝達機構より構造が簡素化され、部品点数および製造コストの軽減を図ることができる。
【0017】
さらに、角度センサギヤと回転部材の外歯ギヤとのギヤ比を、ステアリングシャフトの3回転がマグネットの1回転になるように設定することにより、ステアリングホイールの絶対角出力が可能になり、検出精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照にしながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す機構図である。同図において、電動パワーステアリング装置1の操舵機構は、先端部に取り付けられたステアリングホイール2の操舵操作に応じて回転するステアリングシャフト3と、該ステアリングシャフト3の他端部側にユニバーサルジョイント4,5を介して連結され、ステアリングシャフト2の回転運動をラック軸の直線運動に変換するラック・ピニオン機構6と、該ラック・ピニオン機構6のラック軸の動きを操向車輪に伝達するタイロッド7とから構成されている。
【0020】
また、電動パワーステアリング装置1のコラム部には、ステアリングホイール2を介してステアリングシャフト3に入力された操舵トルクを検出するトルクセンサ8と、操舵機構の回転角(操舵角)を検出する角度センサ9と、減速機構10を介してステアリングシャフト3に連結された操舵補助用の電動モータ11とが設けられている。
【0021】
電動モータ11の駆動は、制御回路などを搭載したコントロールユニット(ECU)12によって制御される。このコントロールユニット12には、バッテリ13から電力が供給されるとともに、イグニションキー14からイグニションキー信号が入力される。そして、コントロールユニット12は、トルクセンサ8で検出された操舵トルク値T、角度センサ9で検出された操舵角S、および車速センサ15で検出された車速Vなどに基づいて、操舵補助指令値Iの演算を行い、演算された操舵補助指令値Iに応じて電動モータ11に供給する駆動電流を制御する。
【0022】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置のコラム部を概略的に示す展開図である。同図において、ウォーム(図示せず)およびウォームホイール10aからなる減速機構10は、コラム部に設けられたギヤボックス16内に収容される。このギヤボックス16は、大別すると、電動モータ11が取り付けられるギヤボックス取付部16aと、電動モータ11の回転軸に連結されたウォームを回転自在に支持するウォーム収容部16bと、該ウォーム収容部16bに収容されたウォームに噛合するウォームホイール10aを収容するウォームホイール収容部16cとから構成されている。また、ウォームホイール収容部16cの開口は、カバー部材17がボルト締結などによって取り付けられることにより閉塞される。
【0023】
減速機構10を構成するウォームホイール10aは、ステアリングシャフト3の外周に嵌合固定され、ステアリングシャフト3と同軸に回転する。すなわち、電動モータ11による操舵補助力は、ウォームおよびウォームホイール10aからなる減速機構10を介して、ステアリングシャフト3に伝達される。
【0024】
また、ウォームホイール10aの先端側(図2右側)には、外周面に外歯ギヤ18aを有し、ステアリングシャフト3と一体に回転するように設けられた回転部材18が配されている。角度センサ9は、この回転部材18の外歯ギヤ18aに噛合し、回転部材18の回転に連動して回転する角度センサギヤ19と、該角度センサギヤ19の中心に形成された挿入孔に基端部(図2左側)が嵌合固定され、角度センサギヤ19と一体に回転する角度センサシャフト20と、該角度センサシャフト20の先端部(図2右側)の外周に固定され、角度センサギヤ19および角度センサシャフト20と一体に回転するマグネット(着磁部)21と、該マグネット21の磁界変化に基づいて操舵機構(ステアリングシャフト3)の回転角を検出する角度センサ基板22とを備えている。そして、これらの構成部品からなる角度センサ9は、ギヤボックス16のカバー部材17に搭載される。このカバー部材17は、ギヤボックス16と同様、比較的剛性の高い金属素材(例えば、JIS ADC12のアルミニウム合金材)などにより形成されている。
【0025】
また、カバー部材17の外側面には、マグネット21および角度センサ基板22を格納する角度センサ凹部17aが形成され、該角度センサ凹部17aの底面には、角度センサシャフト孔17bが穿設されている。マグネット21は、この角度センサシャフト孔17bに角度センサシャフト20の先端が挿通された後に、角度センサシャフト20の先端部に取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る角度センサ9では、角度センサギヤ19とマグネット21とがカバー部材17を介して角度センサシャフトの基端部と先端部とに配される構造になっている。角度センサ凹部17aの開口は、マグネット21およびセンサ基板22が格納された後にネジ締結などによって取り付けられる角度センサカバー23により閉塞される。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る角度センサ9は、従来の樹脂製ケースより剛性の高いカバー部材17に内蔵される構造になっているので、角度センサギヤ19や角度センサシャフト20を支持する部分の剛性を向上させることができる。これにより、従来は角度センサの樹脂製ケースから放射されていた異音を軽減することができるとともに、角度センサの耐久性の向上を図ることができる。
【0027】
また、ステアリングシャフト3が、カバー部材17の中心に穿設されたステアリングシャフト孔17cに挿通されるとともに、角度センサシャフト20が、カバー部材17の角度センサ凹部17aの底面に穿設された角度センサシャフト孔17bに挿通される構造により、ステアリングシャフト3と角度センサシャフト20の芯出しを1つのカバー部材17で共有させることができる。これにより、角度センサ9の組み立て作業を容易化することができ、製造コストおよび労力の軽減を図ることができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0029】
図3は、本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置のコラム部を概略的に示す展開図である。なお、同図において、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
本実施形態に係る角度センサ9´では、角度センサギヤ19´と回転部材18´の外歯ギヤ18a´とのギヤ比が、ステアリングシャフト3の3回転がマグネット21´の1回転になるように設定されている。これにより、上述した第1実施形態と同様の作用効果を得られることはもとより、操舵機構の絶対角出力が可能になり、検出精度の向上を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す機構図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置のコラム部を概略的に示す展開図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置のコラム部を概略的に示す展開図である。
【図4】従来の角度センサが搭載された電動パワーステアリング装置のウォームホイールを示す要部断面図である。
【図5】従来の角度センサの内部構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 電動パワーステアリング装置
3 ステアリングシャフト
9 角度センサ
10 減速機構
10a ウォームホイール
11 電動モータ
16 ギヤボックス
17 カバー部材
17a 角度センサ凹部
18 回転部材
18a 外歯ギヤ
19 角度センサギヤ
20 角度センサシャフト
21 マグネット(着磁部)
22 角度センサ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵角に応じて駆動する電動モータの回転力を、減速機構を介してステアリングシャフトに伝達することにより操舵補助が行われる電動パワーステアリング装置に搭載され、前記操舵角を検出する角度センサであって、
前記ステアリングシャフトと一体に回転するように設けられた回転部材の外歯ギヤに噛合する角度センサギヤと、
前記角度センサギヤが基端部に固定され、前記角度センサギヤと一体に回転する角度センサシャフトと、
前記角度センサシャフトの先端部に固定され、前記角度センサギヤおよび前記角度センサシャフトと一体に回転するマグネットと、
前記マグネットの磁界変化に基づいて前記操舵角を検出する角度センサ基板とを備え、
前記減速機構を収容するギヤボックスのカバー部材に搭載されることを特徴とする角度センサ。
【請求項2】
前記角度センサギヤと前記マグネットとは、前記ギヤボックスのカバー部材を介して前記角度センサシャフトの基端部と先端部とに配される請求項1に記載の角度センサ。
【請求項3】
前記角度センサ基板および前記マグネットは、前記ギヤボックスのカバー部材の外側面に形成された角度センサ凹部内に格納される請求項1または2に記載の角度センサ。
【請求項4】
前記角度センサギヤと前記回転部材の外歯ギヤとのギヤ比は、前記ステアリングシャフトの3回転が前記マグネットの1回転になるように設定されている請求項1ないし3の何れかに記載の角度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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