説明

角度検出器

【課題】本発明は、複数の角度検出器をタンデム状に結合し、各ロータコアの取付角度を互いに異ならせることにより、角度検出範囲を拡大することを目的とする。
【解決手段】本発明による角度検出器は、少なくとも一対の角度検出器(21,22)を回転軸(10)上に設け、各ロータコア(11,12)の取付角度を互いに異ならせ、各角度検出器(21,22)から出力される第1、第2出力電圧(E1,E2)を用いて直線性のよい広範囲の角度検出を行うことができる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度検出器に関し、特に、複数の角度検出器をタンデム状に結合し、各ロータコアの取付角度を互いに異ならせることにより角度検出範囲を拡大するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられいたこの種の角度検出器としては、特許文献1に開示されている回転角度検出装置を挙げることができるが、この場合、同一のセンサを使用し、レバー式の変速機を用いて検出範囲を取り換え、それに相応した電気信号を得る構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の角度検出器は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の回転角度検出装置においては、検出範囲を切り換えるために操作レバーを用いなければならず、自動車のシフトレバー用等の用途に限定され、本願のように、航空機のパイロットが操作するパイロットコントロール装置やアクチュエータ等の回転機後部の回転角度を検出する回転角度検出装置に用いることは困難であった。
【0005】
また、通常、2サイクル型の角度検出器は、直線性の良好な+/−40度以下の範囲で使用されており、1サイクル型の角度検出器でも、+/−80度以下の使用が可能であるが、2サイクル型よりも直線性が劣り、出力感度も低くなっていた。
また、角度検出範囲を広くしたい場合は、2サイクル型の角度変換器は、前述のように、直線性の良好な角度範囲が狭いために、採用することは不可で、この場合は、1サイクル型やレゾルバが採用されている。
しかし、この1サイクル型では直線性の劣化や感度の低下の課題があり、さらに、レゾルバを使用する場合では、構造が複雑でコストアップとなり、信号処理に高価なR/D変換器を必要とし、例えば、信頼性診断時に通常行われる和電圧検出が不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による角度検出器は、ケーシングに軸方向に沿って設けられ輪状をなすと共に、第1、第2チャンネルを形成するための第1、第2ステータコアと、前記ケーシング内に設けられ前記各ステータコアを貫通して回転自在に設けられた回転軸と、前記回転軸に固定されると共に前記各ステータコアの内側に対応して位置すると共に非円板状をなす第1、第2ロータコアと、前記各ステータコアの内壁に所定角度間隔で内方に突出して形成された第1〜第4磁極と、前記各磁極のうち互いに対向する第1、第3磁極に巻回された第1出力コイル及び第2、第4磁極に巻回された第2出力コイルと、を備え、前記第1、第2ロータコアのゼロ位置は互いに所定角度ずれており、前記第1チャンネルで得られる直線状に変化する第1、第2出力電圧と前記第2チャンネルで得られる直線状に変化する第1、第2出力電圧とを用いることにより、負角度から正角度まで連続して前記第1チャンネルの検出角度以上の角度範囲を検出する構成であり、また、前記チャンネル数は3チャンネル以上である構成であり、また、前記ロータコアは、円板の外周に一対の互いに平行な平面を形成している構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による角度検出器は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ケーシングに軸方向に沿って設けられ輪状をなすと共に、第1、第2チャンネルを形成するための第1、第2ステータコアと、前記ケーシング内に設けられ前記各ステータコアを貫通して回転自在に設けられた回転軸と、前記回転軸に固定されると共に前記各ステータコアの内側に対応して位置すると共に非円板状をなす第1、第2ロータコアと、前記各ステータコアの内壁に所定角度間隔で内方に突出して形成された第1〜第4磁極と、前記各磁極のうち互いに対向する第1、第3磁極に巻回された第1出力コイル及び第2、第4磁極に巻回された第2出力コイルと、を備え、 前記第1、第2ロータコアのゼロ位置は互いに所定角度ずれており、前記第1チャンネルの直線状に変化する第1チャンネル用検出角度と、前記第2チャンネルの直線状に変化する第2チャンネル用検出角度とを用いることにより、負角度から正角度まで連続して前記第1チャンネルの検出角度以上の角度を検出できるようにしたことにより、2サイクル型の角度検出器の秀れた性能である出力感度及び直線性をそのまま用いて簡単に検出範囲を広げることができる。
また、ステータコアとロータコアの組み合わせ数を増加すると共にゼロ位置をずらせて配置させることで、例えば、360度にわたる直線的な角度出力変化の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による角度検出器における一対のステータコア及びロータコアを示す構成図である。
【図2】図1のステータコアとロータコアの組み合わせを示す構成図である。
【図3】図1及び図2の第1、第2チャンネルの検出角度出力特性である。
【図4】図1及び図2の第1、第2チャンネルの差電圧(E−E)を電気的にオフセットして正、負角度の連続した出力信号として示す検出角度出力特性である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、複数の角度検出器をタンデム状に結合し、各ロータコアの取付角度を互いに異ならせることにより、角度検出範囲を拡大するようにした角度検出器を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による角度検出器の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、2サイクル型の第1チャンネル1CH及び第2チャンネル2CHからなるタンデム型の角度検出器であり、筒状のケーシング2内には互いに離間した状態で配設された輪状の第1ステータコア3及び第2ステータコア4が設けられている。
【0011】
前記第1、第2ステータコア3,4は、所定角度毎に形成された第1、第2、第3、第4磁極5,6,7,8が、内壁3aから内方に突出して配設されている。
前記各磁極5〜8のうち、第1、第3磁極5,7は互いに対向し、第2、第4磁極6,8は互いに対向している。
前記第1磁極5及び第3磁極7には、第1出力コイルVaが設けられ、第2磁極6及び第4磁極8には第2出力コイルVbが各々設けられている。
【0012】
前記第1及び第2出力コイルVa及びVbは、周知のレゾルバと同様に、巻線回路は開示していないが、励磁巻線と出力巻線によって構成され、常にこの励磁巻線により励磁した状態で、出力巻線から角度変化に応じた第1、第2出力電圧E,Eが出力されるように構成されている。
【0013】
前記各ステータコア3,4の内孔3A,4A内を貫通して前記ケーシング2の両端に位置する一対の軸受(図示せず)を介して回転自在に保持された回転軸10には、第1、第2ロータコア11,12が固定して設けられ、各ロータコア11,12は前記第1、第2ステータコア3,4に対応すると共にその各内孔3A,4A内で回転自在に配設されている。
【0014】
前記各ロータコア11,12は、図1及び図2に示されるように、円板の外周の一部を切欠き、一対の平面15が互いに平行となるように形成された非円板状の形状にて構成されており、各平面15の両側には所定角度範囲の円周面16が形成されている。
【0015】
前記各ロータコア11,12は、その長手径方向に沿うゼロ位置20が、互いに所定角度ずれており、本形態においては、互いに80度ずれて配設されている。
従って、図1及び図2に示されるように、第1ステータコア3と第1ロータコア11の組み合わせによって図2の第1チャンネル1CHの第1角度検出器21が構成され、第2ステータコア4と第2ロータコア12の組み合わせによって図2の第2チャンネル2CHの第2角度検出器22が構成されていると共に、図1のように、一対の第1、第2角度検出器21,22の組み合わせによってタンデム型の角度検出器1を構成している。
尚、各角度検出器21,22は、周知の2サイクル型角度検出器を構成している。
【0016】
次に、動作について説明する。図1及び図2の構成において、各出力コイルVa及びVbの各励磁巻線(図示せず)に対して、図示しない励磁電源から所定周波数の励磁信号を印加した状態で、図示しない飛行機のセレクタ等の被検出部材の回転によって回転軸10が回転すると、第1チャンネル1CHの第1角度検出器21側では、第1ロータコア11の回転角度の0度から80度(+/−40度)の位置検出が行われて図3の直線状に変化する第1チャンネル用の第1、第2出力電圧E,Eが得られ、第2チャンネル2CHの第2角度検出器22側では、第2ロータコア12の回転角度の80度から160度(+/−40度)の位置検出が行われて図3の直線状に変化する第2チャンネル用の第1、第2出力電圧E,Eが得られる。
【0017】
前述の第1、第2チャンネル1CH,2CHの差電圧(E−E)を電気的にオフセットすることにより、図4に示されるように、−80度から+80度、すなわち、負角度から正角度までの直線性の高い検出角度出力信号Eを得ることができる。
尚、前述の形態においては、一対の角度検出器21,22を用いた場合について述べたが、この角度検出器21,22の数を少なくとも3個以上とすることにより、+/−180度、すなわち、360度の角度検出を行うこともできる。
【符号の説明】
【0018】
1 角度検出器
2 ケーシング
3 第1ステータコア
4 第2ステータコア
5 第1磁極
6 第2磁極
7 第3磁極
8 第4磁極
10 回転軸
11 第1ロータコア
12 第2ロータコア
15 平面
16 円周面
20 ゼロ位置
21 第1角度検出器
22 第2角度検出器
Va 第1出力コイル
Vb 第2出力コイル
第1出力電圧
第2出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(2)に軸方向に沿って設けられ輪状をなすと共に、第1、第2チャンネル(1CH,2CH)を形成するための第1、第2ステータコア(3,4)と、前記ケーシング(2)内に設けられ前記各ステータコア(3,4)を貫通して回転自在に設けられた回転軸(10)と、前記回転軸(10)に固定されると共に前記各ステータコア(3,4)の内側に対応して位置すると共に非円板状をなす第1、第2ロータコア(11,12)と、前記各ステータコア(3,4)の内壁に所定角度間隔で内方に突出して形成された第1〜第4磁極(5〜8)と、前記各磁極(5〜8)のうち互いに対向する第1、第3磁極(5,7)に巻回された第1出力コイル(Va)及び第2、第4磁極(6,8)に巻回された第2出力コイル(Vb)と、を備え、
前記第1、第2ロータコア(11,12)のゼロ位置(20)は互いに所定角度ずれており、前記第1チャンネル(1CH)で得られる直線状に変化する第1、第2出力電圧(E1,E2)と前記第2チャンネル(2CH)で得られる直線状に変化する第1、第2出力電圧(E1,E2)とを用いることにより、負角度から正角度まで連続して前記第1チャンネル(1CH)の検出角度以上の角度範囲を検出することを特徴とする角度検出器。
【請求項2】
前記チャンネル数は3チャンネル以上であることを特徴とする請求項1記載の角度検出器。
【請求項3】
前記ロータコアは、円板の外周に一対の互いに平行な平面を形成して構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の角度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−75527(P2011−75527A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230386(P2009−230386)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】