説明

角度検出装置およびその偏心量推定方法

【課題】特殊な目盛盤を必要とせず、二次元平面で偏心する目盛盤の偏心量をも正確に測定することができる角度検出装置およびその偏心量推定方法を提供すること。
【解決手段】回転軸13に支持された目盛盤12と、目盛盤12の表面に近接されかつ目盛盤12の周方向に等間隔で配置された3個以上の検出器14とを有する角度検出装置において、目盛盤12を所定の初期位置から基準角度θ回転させた際の回転角度θを各検出器14で検出し、回転角度と基準角度との差から各検出器における角度誤差を測定し、回転中心Oaに対する各検出器の方向ベクトルPを90度回転させて接線方向ベクトルqを取得し、接線方向ベクトルqとの内積が角度誤差になる偏心ベクトルeを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度検出装置およびその偏心量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機構の回転角度を検出する角度検出装置としてロータリーエンコーダがある。
ロータリーエンコーダは、基本構成として、例えば外周部分に数百から数十万本の径方向の目盛線からなる目盛パターンが刻まれた円形の目盛盤と、この目盛盤の目盛パターン部分に近接して設置されて目盛盤の回転に伴って通り過ぎる目盛線を計数する測定器とを有する。このようなロータリーエンコーダでは、目盛盤を測定対象の回転部分に連動するように設置し、測定対象の回転に伴って検出器で通過した目盛数を計数することで、測定対象の回転角度を検出する。
【0003】
目盛盤の回転軸には、目盛盤を回転自在に支持するために例えば転がり軸受けが用いられる。転がり軸受の回転精度は数十μmであり、多くの場合、回転軸の中心は、検出器の理想的な回転中心を中心として、最大で回転精度を半径とする円周上を移動する挙動を示す。目盛盤と回転軸とを固定する際には、目盛盤の中心と回転軸の中心とが一致するように治具等を用いて高精度に調整される。従って、目盛盤の中心は回転軸の中心と同じ円周上を移動することになり、理想的な回転中心に対して偏心が生じる。
このような偏心が生じていると、角度検出にあたって検出器が読み取る目盛パターンの径方向位置がずれて見かけ上の目盛線の間隔が変化する等、検出する角度に誤差を生じる原因となる。
【0004】
従来、目盛盤の偏心誤差を除去する方法として、例えば特許文献1がある。
この方法では、目盛パターンの内側に目盛パターンのピッチと同じ間隔で多数の同心円状のパターンを形成した目盛盤を用いる。また、検出器として、目盛パターンを読み取る測定用検出器と、この検出器から90°回転した位置に同心円状のパターンを読み取るための補正用検出器との2つの検出器を配置する。そして、補正用検出器で同心円状のパターンを読み取り、測定用検出器による目盛パターンの読み取り信号に対して補正をかけることで、目盛パターンの読み取り信号から偏心の影響を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4433240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法では偏心を補正するために多数の同心円状のパターンを追加した特殊な目盛盤が必要になるという問題がある。
また、同心円状のパターンを読み取る検出器が1個しかないため、二次元平面で偏心する目盛盤の偏心量を正確に測定することはできないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、特殊な目盛盤を必要とせず、二次元平面で偏心する目盛盤の偏心量をも正確に測定することができる角度検出装置およびその偏心量推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の角度検出装置は、回転軸に支持された目盛盤と、前記目盛盤の表面に近接されかつ前記目盛盤の周方向に等間隔で配置された3個以上の検出器とを有する角度検出装置であって、前記目盛盤を所定の初期位置から基準角度回転させた際の回転角度を前記各検出器で検出し、前記回転角度と前記基準角度との差から前記各検出器における角度誤差を測定し、前記回転軸の回転中心に対する前記各検出器の方向ベクトルを90度回転させて接線方向ベクトルを取得し、前記接線方向ベクトルとの内積が前記角度誤差になる偏心ベクトルを演算する偏心量推定手段を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の角度検出装置の偏心量推定方法は、回転軸に支持された目盛盤と、前記目盛盤の表面に近接されかつ前記目盛盤の周方向に等間隔で配置された3個以上の検出器とを有する角度検出装置の偏心量推定方法であって、前記目盛盤を所定の初期位置から基準角度回転させた際の回転角度を前記各検出器で検出し、前記回転角度と前記基準角度との差から前記各検出器における角度誤差を測定し、前記回転軸の回転中心に対する前記各検出器の方向ベクトルを90度回転させて接線方向ベクトルを取得し、前記接線方向ベクトルとの内積が前記角度誤差になる前記偏心ベクトルを演算することを特徴とする。
【0010】
このような本発明は、回転中心の偏心が、各検出器で検出される回転角度に対してそれぞれ偏心ベクトルとして作用し、その結果角度誤差を生じることから、偏心ベクトルと各検出器での接線方向ベクトルとの内積が角度誤差に相当する、との知見に基づく。
このような本発明では、目盛盤を基準角度だけ回転させた際の各検出器に生じる角度誤差と、各検出器の方向ベクトルと、という実測可能な値に基づいて、検出器中心に対する回転中心の偏心を表す偏心ベクトルを演算することができる。その結果、得られた偏心ベクトルに基づいて、回転中心の偏心を補正等することができ、角度検出装置としての精度向上を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記初期位置から回転した際の偏心ベクトルの演算を異なる前記基準角度について複数回行い、得られた複数の偏心ベクトルから検出器中心を割り出し、前記検出器中心から前記初期位置に至る初期偏心ベクトルと前記偏心ベクトルの何れかとから前記検出器中心に対する前記回転軸の回転中心の偏心ベクトルを演算することが望ましい。
【0012】
このような本発明では、前項の偏心ベクトルの演算を繰り返すことで、前記検出器中心に対する前記回転軸の回転中心の偏心を検出して補正することができる。
【0013】
本発明において、前記基準角度は前記各検出器の検出角度の平均値とすることが望ましい。
この際、平均値は全ての検出器の検出角度から計算してもよいし、何れかの検出器の検出角度から計算してもよい。
このような本発明では、異なる位置の検出器の検出角度を平均することで、偏心の影響が少なくなり基準位置の近似値として利用できる。
【0014】
本発明において、前記基準角度は、前記回転軸に接続された他の角度検出装置により検出してもよい。
このような本発明では、追加的な構成が必要になるが、基準位置を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明の角度検出装置およびその偏心量推定方法によれば、特殊な目盛盤を用いなくても、二次元平面で偏心する目盛盤の偏心量をも正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】前記実施形態の回転中心における偏心がない状態を示す模式図である。
【図3】前記実施形態の回転中心における偏心がある状態を示す模式図である。
【図4】前記実施形態の回転中心における偏心量を示す模式図である。
【図5】前記実施形態における偏心量推定手順を示すフローチャートである。
【図6】前記実施形態の検出器の角度位置に応じた偏心ベクトルおよび接線方向ベクトルを示す模式図である。
【図7】前記実施形態における偏心ベクトル、検出器の方向ベクトルおよび接線方向ベクトルを示す模式図である。
【図8】前記実施形態における初期偏心ベクトルおよび複数の偏心ベクトルを示す模式図である。
【図9】前記実施形態における偏心の補正処理の手順を示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、角度検出装置10は、外周に沿って目盛パターン11が形成された円盤状の目盛盤12を有し、この目盛盤12は回転軸13により回転自在に支持されている。
目盛パターン11は目盛盤12の径方向に延びる微細な目盛線(図示省略)で構成されている。
【0018】
目盛パターン11に対向して検出器14が配置され、この検出器14は目盛盤12の回転に伴って検出器14を通過する目盛線に対応した正弦波状の検出信号を出力する。本実施形態の角度検出装置10では、検出部14が4個設置され、各々の出力は4系統の内挿分割器15およびカウンタ16を経て演算装置17に接続されている。カウンタ16には外部からラッチ信号および初期化信号16Aが入力され、それぞれ現在カウント数の読み取り処理およびカウンタのゼロリセット処理が行われる。
【0019】
演算装置17は、検出器14から内挿分割器15およびカウンタ16を経て入力される検出信号を処理し、回転軸13および目盛盤12の回転角度位置あるいは変化量、角速度等を取得する機能を有する。演算装置17は、指定されたプログラムに基づく処理を実行するコンピュータシステムにより構成され、図示しない入力装置からの外部操作を受けるとともに、出力装置に対して信号出力あるいは映像出力を行うことができる。
演算装置17は、本発明の偏心量推定手段として機能するものであり、後述する本発明の偏心ベクトル演算処理(図5参照)および偏心補正処理(図9参照)についても、演算装置17におけるプログラムによって実行される。
【0020】
このような角度検出装置10において、目盛盤12および回転軸13の回転中心においては、回転軸13が図示しない軸受機構を介して角度検出装置10の本体に支持され、回転軸13に目盛盤12が固定され、目盛盤12の表面に目盛パターン11が形成されている。一方、検出器14は角度検出装置10の本体に支持されている。
図2において、これらの構成が理想的である場合、回転軸13、目盛盤12、目盛パターン11の機械的中心は全て角度検出装置10の本体の回転中心Oiで一致する。そして、各検出器14はこの理想的な回転中心Oiから所定の検出半径Rdに沿って均等な角度位置に等間隔で配置される。
【0021】
しかし、実際には、図3に示すように、回転軸13の軸支による振れが発生し、回転軸13は理想的な回転中心に対して偏心した回転を行い、回転軸13の中心Os(機械的中心)は円形の軌跡Lsを描く。実際には、回転軸13の中心の偏心した軌跡Lsは完全な円形にはならず、図4に示すような波うったパターンとなる。なお、各図において、実際の偏心は、回転軸13の径に対して遙かに小さいが、ここでは説明のため模式的に強調表示している。
【0022】
図4において、回転軸13の中心Osが描く軌跡Lsを測定し、最小二乗法のあてはめにより仮想円Ls’を描き、その中心位置を回転軸13の回転中心Oa(動作上の中心)とすることができ、前述した仮想円Ls’の半径Rs’を回転中心Oaの偏心量として扱うことができる。
さらに、前述した回転軸13の中心(機械的中心)の回転中心Oa(動作上の中心)に対する振れの他、回転軸13と目盛盤12との固定の際の誤差や目盛盤12に対する目盛パターン11の形成の際の誤差により、検出器14で読み取るべき目盛パターン11の回転中心位置は、回転軸13の実際の回転中心に対して更に偏心する可能性がある。
このような偏心に対し、本発明に基づく偏心ベクトル演算処理ないし偏心補正処理により、これらを包括的な補正が可能となる。
【0023】
図5には、本発明に基づいて偏心ベクトルを演算する偏心ベクトル演算処理が示されている。
偏心ベクトル演算処理では、先ず目盛盤12を所定の初期位置へと移動させ、この初期位置でカウンタ16のリセットを行う(処理S11)。次に、所定の基準角度θまで目盛盤12を回転させる(処理S12)。
この位置で、各検出器14で検出される回転角度θ(検出器番号i=1〜4)を読み出し(処理S13)、基準角度θに対する角度誤差Δθを測定する(処理S14)。次に、回転中心Oaから各検出器14に至る方向ベクトルp(検出器番号i=1〜4)を測定し(処理S15)、ベクトル演算により接線方向ベクトルqを取得する(処理S16)。なお、処理S13,S14の前に処理S15,S16を行ってもよく、あるいは処理S13,S15を先に行い、処理S14,S16を後から行ってもよい。
こうして得られた接線方向ベクトルqおよび角度誤差Δθから偏心ベクトルeを演算する(処理S17)。
【0024】
このような偏心ベクトルeの演算は、以下に述べる原理に基づく。
処理S11において、目盛盤12を初期位置(任意の位置でよい)として、各検出器のカウンタをゼロに初期化する。ここで、初期位置でも回転軸13は偏心していると推測されるが、ここでは、初期位置においては偏心ベクトルがゼロである、と仮定して偏心ベクトルの基準位置として設定する。
【0025】
処理S12において、本実施例では、目盛盤12を回転させた後、基準位置θの実測値として、全て検出器14の測定角度θ〜θの平均値を用いる。具体的に、基準角度θは検出器の総数をnとし、検出器番号iの検出器14の検出角度θiとして次の式(1)で実測することができる。
【0026】
【数1】

(1)
【0027】
なお、基準位置θとしては、検出器14のうち2つ以上の検出角度θiの平均値を用いてもよく、何れかの検出器14の検出角度θiだけを用いてもよい。但し、使用する検出器14の数が多いほうが精度を高めるのに有効である。
処理S14において、目盛盤の偏心による基準角度θと検出器番号iの検出器14(以下、検出器iと称する)の測定角度の差Δθは次の式(2)となる。
【0028】
【数2】

(2)
【0029】
ここで、目盛盤12の目盛パターン11は、等間隔に目盛パターンが形成されているとすると、検出器iにおける角度誤差Δθは目盛盤12の偏心による誤差となる。
この角度誤差Δθは、偏心ベクトルeと検出器iの方向ベクトルpを90度回転させたベクトルとの内積になる。この点について、以下に詳述する。
【0030】
図6は、本実施形態と同様であるが、検出器14の数が3個の例である。
ここで、目盛盤12を反時計回りに回転させると、目盛盤中心は点Aから点Bへ移動し、偏心ベクトルは点Aから点Bに至るeとなる。検出器14は目盛パターン11の接線方向の変位を検出する。
一方、回転中心から検出器を見込む方向(円周上の法線方向)の変位に対しては偏心の影響はないとする。
【0031】
各検出器14の検出角度には、偏心によって、それぞれ角度誤差Δθ,Δθ,Δθが生じる。
偏心ベクトルeと検出器iの接線方向ベクトルqのなす角をφとすると、角度誤差Δθは偏心ベクトルeの接線方向ベクトルq方向の大きさ|e|cosφと接線方向ベクトルqの大きさ|q|との積となり、これは次の式(3)で求められる。
【0032】
【数3】

(3)
【0033】
すなわち、偏心による角度誤差Δθは偏心ベクトルeと検出器iの接線方向ベクトルqの内積になり、これは次の式(4)式で求められる。
【0034】
【数4】

(4)
【0035】
ここで、各検出器iの接線方向ベクトルqは、回転中心Oaから検出器iに至る方向ベクトルpと直交するベクトルとなる。この方向ベクトルpは、角度検出装置10の機械的構成から取得することができる。従って、方向ベクトルpをベクトル演算により90°回転させることで、接線方向ベクトルqに変換することができる。
このような90°回転のベクトル演算には、例えば2次元空間内でベクトルを反時計回り方向に90°回転する次の式(5)のような回転行列Tを用いることができる。
【0036】
【数5】

(5)
【0037】
このような回転行列Tを用いて、次の式(6)のように方向ベクトルpから接線方向ベクトルqが得られる。
【0038】
【数6】

(6)
【0039】
これらの偏心ベクトルe、方向ベクトルp、接線方向ベクトルqを行列表記して整理すると次の式(7)ないし式(8)となる。
【0040】
【数7】

(7)
【0041】
【数8】

(8)

【0042】
以上、検出器14が3個の例で説明したが、検出器14が4個以上の場合でも同様の関係が成立する。
さらに、検出器14がn個の場合、次の式(9)として、前述した式(8)を式(10)のように表すことができる。
【0043】
【数9】

(9)
【0044】
【数10】

(10)
【0045】
式(10)をeについて解くと次の式(11)のようになる。
【0046】
【数11】

(11)
【0047】
従って、角度誤差Δθと方向ベクトルpとを用いて、目盛盤12が角度θだけ回転したときの偏心ベクトルeが求められる。
【0048】
以上の偏心ベクトル演算処理についての説明では、初期位置の偏心ベクトルeがゼロであると仮定していた。しかし、実際には偏心ベクトルeがゼロではない。このため、実際に偏心ベクトルeを利用して補正を行うためには、後述する偏心補正処理(図8参照)を行うことが望ましい。
【0049】
図7において、本実施形態(検出器14が4つ)の場合でも、回転中心Oaから検出器iに至る方向ベクトルPと、基準角度θと、各検出器iの検出角度θの差である角度誤差Δθとは、それぞれ実測可能であり、これらから前述した偏心ベクトル演算処理(図5および図6参照)に基づいて偏心ベクトルeを求めることができる。
ここで、得られた偏心ベクトルeに対して、回転中心Oaから初期位置Pinitに至る初期偏心ベクトルeinitとすると、回転中心Oaから各検出器14の現在位置における正しい偏心ベクトルeestは次の式(12)で表すことができる。
【0050】
【数12】

(12)
【0051】
このような初期偏心ベクトルeinitは、次のようにして求めることができる。
図8に示すように、前述した偏心ベクトル演算処理を複数箇所P,P,Pで実行し、各箇所での初期位置Pinitからの偏心ベクトルeを求め、目盛盤12の中心の軌跡(図4の仮想円Ls’)を推定することにより、正しい回転中心Oaが求められる。
このように、回転中心Oaから初期位置Pinitへの初期偏心ベクトルeinitが求まれば、式(12)により任意の回転角度θでの正しい偏心ベクトルeestをリアルタイムに推定することができる。
【0052】
図9には、本発明に基づいて偏心を補正する偏心補正処理が示されている。
偏心補正処理では、先ず目盛盤12の初期位置Pinitを設定する。この初期位置は単に現在の位置としてもよい(処理S21)。
次に、基準角度θを設定し(処理S22)、前述した偏心ベクトル演算処理(図5参照)を実行する(処理S23)。これにより目盛盤12は初期位置(図8の初期位置Pinit)から基準角度θだけ回転した位置(図8のP1等)へ移動し、この位置における偏心ベクトルeが演算される。
【0053】
偏心ベクトル演算処理は、基準角度θを変えながら指定回数繰り返され(図8の位置P1〜P3等)、指定回数になったら繰り返しを終える(処理S24)。
繰り返しを終えたら、得られた各位置での偏心ベクトルから仮想円Ls’および回転中心Oaを検出する(処理S25)。
得られた回転中心Oaおよび初期位置Pinitから初期偏心ベクトルeinitを演算する(処理S26)。
このように初期偏心ベクトルeinitが得られれば、初期偏心ベクトルeinitと前述した各位置の偏心ベクトルeから各位置の正確な偏心ベクトルeestを演算することができ、この偏心ベクトルeestにより偏心に対する補正処理を行うことができる(処理S27)。
【0054】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
偏心補正処理において、回転中心Oaから初期位置Pinitへの偏心ベクトルeinitは初期位置を変更するまで有効であるため、初期偏心ベクトルeinitを取得する処理は、1日の作業開始時など初めに1回だけ行うようにしてもよい。
前記実施形態では、複数位置で偏心ベクトルを演算し、仮想円Ls’および回転中心Oaを取得したが、別途回転軸13あるいは目盛盤12に位置検出器(原点検出器)を付加し、初期化時の初期偏心量を計測し、適宜記憶しておき必要の都度記憶装置から取得してもよい。
【0055】
前記実施形態では、目盛盤12を初期位置から基準角度θだけ回転させるとしたが、適当な角度回転させた後で実測により基準角度θを求めてもよい。
本発明においては、各検出器14の検出角度θiと基準角度θの差を偏心による角度誤差Δθとして偏心ベクトルeを推定する。このため、基準角度θは偏心等の誤差が最小限になるようにすることが望ましい。例えば、角度検出装置10の全ての検出器14の検出角度θiの平均値を基準角度としてもよいし、既存の各種校正・補正方法(自己校正方法を含む)による校正・補正後の角度を基準角度としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、回転部分の角度位置、角速度などを検出するための角度検出装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…角度検出装置
11…目盛パターン
12…目盛盤
13…回転軸
14…検出器
15…内挿分割器
16…カウンタ
16A…ラッチ信号、初期化信号
17…偏心量推定手段として機能する演算装置
e…初期位置からの偏心ベクトル
est…回転中心からの偏心ベクトル
init…初期偏心ベクトル
Oa…回転中心
…方向ベクトル
…接線方向ベクトル
Δθ…角度誤差
θ…検出角度
θ…基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に支持された目盛盤と、前記目盛盤の表面に近接されかつ前記目盛盤の周方向に等間隔で配置された3個以上の検出器とを有する角度検出装置であって、
前記目盛盤を所定の初期位置から基準角度回転させた際の回転角度を前記各検出器で検出し、前記回転角度と前記基準角度との差から前記各検出器における角度誤差を測定し、前記回転軸の回転中心に対する前記各検出器の方向ベクトルを90度回転させて接線方向ベクトルを取得し、前記接線方向ベクトルとの内積が前記角度誤差になる偏心ベクトルを演算する偏心量推定手段を有することを特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
回転軸に支持された目盛盤と、前記目盛盤の表面に近接されかつ前記目盛盤の周方向に等間隔で配置された3個以上の検出器とを有する角度検出装置の偏心量推定方法であって、
前記目盛盤を所定の初期位置から基準角度回転させた際の回転角度を前記各検出器で検出し、前記回転角度と前記基準角度との差から前記各検出器における角度誤差を測定し、前記回転軸の回転中心に対する前記各検出器の方向ベクトルを90度回転させて接線方向ベクトルを取得し、前記接線方向ベクトルとの内積が前記角度誤差になる偏心ベクトルを演算することを特徴とする角度検出装置の偏心量推定方法。
【請求項3】
請求項2に記載した角度検出装置の偏心量推定方法において、
前記初期位置から回転した際の偏心ベクトルの演算を異なる前記基準角度について複数回行い、得られた複数の偏心ベクトルから検出器中心を割り出し、前記検出器中心から前記初期位置に至る初期偏心ベクトルと前記偏心ベクトルの何れかとから前記検出器中心に対する前記回転軸の回転中心の偏心ベクトルを演算することを特徴とする角度検出装置の偏心量推定方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載した角度検出装置の偏心量推定方法において、
前記基準角度は前記各検出器の検出角度の平均値とすることを特徴とする角度検出装置の偏心量推定方法。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載した角度検出装置の偏心量推定方法において、
前記基準角度は、前記回転軸に接続された他の角度検出装置により検出することを特徴とする角度検出装置の偏心量推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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