説明

角度調整装置

【課題】部品点数が少なく、また、構造が簡素であり、更に、組立分解が簡便であり、更に、装置がコンパクトな角度調整装置を提供する。
【解決手段】機器1を傾斜したい場合には、まず、作業者は、角度調整用脚4を孔2aから引き出す。次に、角度調整用脚を90゜回転させる。続いて、角度調整用脚を孔内に押し込む。すると、2本の短いスライド用溝4b1はそれぞれ2本の溝用レール2a1aにガイドされて、2個の壁ストッパ4b2がそれぞれ2個の受け側ストッパ 2a1bに当接するまで、角度調整用脚は孔内に進入する。したがって、機器1は傾斜する。機器を最初の角度位置に戻したい場合には、前述した操作と同様に操作する。ただし、2本の長いスライド用溝4a1の端部にそけぞれ形成されている2個の壁ストッパ4a2がそれぞれ2個の受け側ストッパ 2a1bに当接するので、角度調整用脚4は孔2a内に深く進入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受像機、キーボード又はプロジェクタ等の機器の画面又は操作面の角度を調整する角度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の第1の角度調整装置について、本出願前に頒布された刊行物を引用して説明する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図4に示されるように、テレビジョン受像機のキャビネット21には、角度調整脚22と、レバー23と、シャフト24と、係止部材25と、脚ホルダ26と、圧縮コイルスプリング27と、圧縮コイルスプリング28とから構成される角度調整装置が、設けられている。
【0004】
角度調整装置の各部について説明すると、角度調整脚22には、複数の鋸歯状のストッパ22aが形成され、角度調整脚22の大部分は、脚ホルダ26の内部に収納されている。脚ホルダ26の天面26aと角度調整脚22の上端面22bとの間には、圧縮コイルスプリング27が配置され、圧縮コイルスプリング27は角度調整脚22を下方に押し出すように付勢している。
【0005】
脚ホルダ26の中間部に略直角に連結されているシャフト保持部26bの内部には、ストッパ22aの形状に対応する係止部材25が収納されている。係止部材25は、シャフト24に固定され、圧縮コイルスプリング28に付勢されてストッパ22aを押圧係止している。シャフト24は、シャフト保持部26bの横蓋26cに開けられている孔26dを貫通し、圧縮コイルスプリング28の中空部を経て係止部材25と連結する。
【0006】
レバー23は、支点23aに回転可能に取り付けられ、全体が略L字型に形成され、その一方の端部は半円形に形成されてシャフト24と回動可能に連結され、その他方の端部はキャビネット21に開けられたスリット21aから外部に突出する。
【0007】
なお、脚ホルダ26は、一対のビス29,29によりキャビネット21に固定されている。
【0008】
前記角度調整装置を使用してテレビジョン受像機の角度調整を行う場合、まず、操作者の手指によってレバー23を支点23aを中心として左回転させると、シャフト24は矢印A方向に移動する。すると、係止部材25がストッパ22aから離脱するので、角度調整脚22は、圧縮コイルスプリング27の拡張力により脚ホルダ26から押し出される。
【0009】
次に、この状態でキャビネット21を所望の角度に位置するように調整し、所望の角度に位置したときに、レバー23から操作者の手指を離すと、係止部材25は圧縮コイルスプリング27の拡張力により再びストッパ22aに係止する。したがって、キャビネット21は、所望の角度に保持される。
【0010】
従来の第2の角度調整装置について、本出願前に頒布された刊行物を引用して説明する(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
図5と図6(A)〜(C)に示されるように、キーボードの本体31の底板32には、トラック状の孔32aが開けられている。孔32aの長手方向を方位角θ0とする。脚部33は、下方からトラック状の第1太軸部33a、細軸部33b、トラック状の第2太軸部33c、細軸部33b、トラック状の第3太軸部33dの順序で構成される。第3太軸部33dの頂部には、孔32aよりも大きいトラック状のストッパ33eが形成されている。2つの細軸部33bは、1本の細軸に設けられ、第1太軸部33a、第2太軸部33c及び第3太軸部33dは、1本の細軸に固定されている。
【0012】
図5の状態において、第1太軸部33aの方位角θ1は、孔32aの方位角θ0とは90゜相違する。第2太軸部33cの方位角θ2は、孔32aの方位角θ0と一致する。第3太軸部33dの方位角θ3は、第1太軸部33aの方位角θ1と一致する。
【0013】
各細軸部33bの長さは、底板32の厚さよりも長く、各細軸部33bの直径は、孔32aの短手方向の長さよりも小さい。
【0014】
キーボードの本体31の角度調整について説明する。
【0015】
図6(A)は、脚部33が本体31に収容されている状態である。底板32は基準面に接触しているから、底板32の角度は0゜である。
【0016】
図6(B)は、第1太軸部33aを本体31から引き出して、孔32aに当接するようにA−A軸を中心として回転した状態(すなわち、図5の状態)である。底板32は基準面に第1太軸部33aを介して支持されるから、底板32の角度は例えば5゜である。
【0017】
図6(C)は、第2太軸部33cを本体31から引き出して、孔32aに当接するようにA−A軸を中心として90゜回転した状態である。底板32は基準面に第1太軸部33aと細部軸33bと第2太軸部33cを介して支持されるから、底板32の角度は例えば10゜である。
【0018】
【特許文献1】実開昭61−136680号公報
【特許文献2】実開昭62−1238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来の第1の角度調整装置は、角度調整脚と、レバーと、シャフトと、係止部材と、脚ホルダと、2個の圧縮コイルスプリングとから構成される。したがって、部品点数が多く、また、構造が複雑であり、更に、組立分解が煩雑であり、更に、装置が大型になる。
【0020】
従来の第2の角度調整装置は、3個の太軸部と1本の細軸と底板とから構成され、また、太軸部の方位角を異なるように組み立てなければならない。したがって、構造が複雑であり、また、組立分解が煩雑である。
【0021】
そこで、本発明は、前記従来の2つの角度調整装置の欠点を改良し、部品点数が少なく、また、構造が簡素であり、更に、組立分解が簡便であり、更に、装置がコンパクトな角度調整装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、前記課題を解決するため、次の手段を採用する。構成の次に括弧を付けて実施例における部材部位の符号を記入する。
【0023】
1.角度調整用脚(4)が機器(1)の底部(2)に取り付けられる角度調整装置において、前記角度調整用脚は、柱形状体で、周面に長いスライド用溝(4a1)及びその端部に形成されている壁ストッパ(4a2)と、短いスライド用溝(4b1)及びその端部に形成されている壁ストッパ(4b2)とを有し、前記底部には、筒形状孔(2a)が形成され、前記筒形状孔は内面に溝用レール(2a1a)とその端部の受け側ストッパ(2a1b)とを有し、前記長いスライド用溝と前記短いスライド用溝とは、選択されて前記溝用レールにガイドされることが可能であり、前記2つの壁ストッパは、選択されて前記受け側ストッパと当接することが可能であり、角度を調整するとき、まず、前記角度調整用脚を前記筒形状孔から引き出し、次に、前記角度調整用脚を所定角度回転させ、続いて、前記角度調整用脚を前記筒形状孔内に押し込む角度調整装置。
【0024】
2.前記柱形状体は直方体であり、前記筒形状孔は4角筒である前記1記載の角度調整装置。
【0025】
3.前記柱形状体は多角柱であり、前記筒形状孔は多角筒である前記1記載の角度調整装置。
【0026】
4.前記柱形状体は円柱であり、前記筒形状孔は円筒である前記1記載の角度調整装置。
【0027】
5.前記筒形状孔の少なくとも片側には、手指挿入用の凹部(2b)が形成されている前記1記載の角度調整装置。
【0028】
6.前記角度調整用脚は平行な2本の前記長いスライド用溝と平行な2本の前記短いスライド用溝を有し、前記筒形状孔は平行な2本の前記溝用レールを有する前記1記載の角度調整装置。
【発明の効果】
【0029】
明細書の説明から明らかなように、本発明は、次の効果を奏する。
【0030】
1.角度調整用脚と機器の底部の孔とから構成されるので、部品点数が少なく、また、構造が簡素であり、製作が容易である。
【0031】
2.角度調整用脚の長いスライド用溝と短いスライド用溝とが、それぞれ筒形状孔の溝用レールにガイドされるので、機器の角度をスムーズに調整することができる。
【0032】
3.組立分解が簡易である。
【0033】
4.装置がコンパクトである。
【0034】
5.装置のコストが安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の一実施例の角度調整装置について説明する。
【実施例1】
【0036】
本発明の実施例1について図1〜図3を参照して説明する。
【0037】
図1(A)は、機器1の底部2を基準面11に平行に設置した状態を示す側面図である。ディスプレー面3は、基準面11に対して傾斜している。
【0038】
図1(B)は、角度調整用脚4を機器1の底部2から突出することによって、底部2を基準面11に対して傾斜するように設置した状態を示す側面図である。ディスプレー面3は、基準面11に対して一層傾斜している。
【0039】
図2は、機器1の底部2における要部の斜視図である。直方体形状の角度調整用脚4は、底部2に形成されている4角筒形状の孔2a(図3(A)参照)に挿入されている。孔2aの両側には、角度調整用脚4を孔2aから引き出すことと、孔2a内に押し込むことのために、作業者の2本の手指を挿入することができる一対の凹部2bが形成されている。孔2aは、通常、底部2の2箇所に形成されている。
【0040】
角度調整用脚4の下面には、機器1の基準面11に対するスリップを防止するために、ゴム足4dが取り付けられている。
【0041】
図3(A)は、機器1の底部2に形成されている孔2aの詳細図である。4角筒形状の孔2aにおける対向する2つの内面2a1には、それぞれ2本の溝用レール2a1aが形成されている。各溝用レール2a1aの端部は、受け側ストッパ2a1bの役割を果たす。
【0042】
2つの内面2a1の外側には、それぞれ凹部2bが形成されている。
【0043】
図3(B)は、下方側から見た角度調整用脚4の斜視図である。図3(C)は、上方側から見た角度調整用脚4の斜視図である。
【0044】
直方体形状の角度調整用脚4における対向する2つの外面4aには、それぞれ2本の長いスライド用溝4a1が平行に形成され、各スライド用溝4a1の端部は壁ストッパ4a2となる。他の対向する2つの外面4bには、それぞれ2本の短いスライド用溝4b1が平行に形成され、各スライド用溝4b1の端部は壁ストッパ4b2となる。
【0045】
角度調整用脚4の下面には、ゴム足貼付用凹部4cが形成され、ここにゴム足4dが取り付けられている。
【0046】
角度調整用脚4の内部は、中空状に形成されている。
【0047】
機器1の底部2の基準面11に対する傾斜角度を変える方法について説明する。
【0048】
図1(A)の状態において、ディスプレー面3を更に傾斜したい場合には、まず、作業者は、角度調整用脚4を孔2aから引き出す。次に、角度調整用脚4を90゜回転させる。続いて、角度調整用脚4を孔2a内に押し込む。すると、2本の短いスライド用溝4b1はそれぞれ2本の溝用レール2a1aにガイドされて、2個の壁ストッパ4b2がそれぞれ2個の受け側ストッパ 2a1bに当接するまで、角度調整用脚4は孔2a内に進入する。したがって、機器1は図1(B)に示される姿勢に到る。
【0049】
図1(B)の状態から図1(A)の状態に機器1の姿勢を変更したい場合には、まず、作業者は、角度調整用脚4を孔2aから引き出す。次に、角度調整用脚4を90゜回転させる。続いて、角度調整用脚4を孔2a内に押し込む。すると、2本の長いスライド用溝4a1はそれぞれ2本の溝用レール2a1aにガイドされて、2個の壁ストッパ4a2がそれぞれ2個の受け側ストッパ 2a1bに当接するまで、角度調整用脚4は孔2a内に進入する。したがって、機器1は、図1(A)に示される姿勢に到る。
【0050】
実施例1においては、角度調整用脚4は4角柱形状で、孔2aは4角筒形状であるが、それぞれ多角柱形状と多角筒形状に設計変更することができる。更に、それぞれ円柱形状と円筒形状に設計変更することができる。ただし、機器1の底部2の基準面11に対する傾斜角度を変える際、角度調整用脚4の回転角度の変更が必要な場合が生じる。
【0051】
また、角度調整用脚4の1つの外面に長いスライド用溝4a1を形成し、他の1つの外面に短いスライド用溝4b1を形成し、孔2aの1つの内面に溝用レール2a1aを形成するように、設計変更することができる。
【0052】
更に、凹部2bは底部2に一対形成されているが、単一でも、手指の先を角度調整用脚4の周面に係止することによって、角度調整用脚4を孔2aに対して出入させることができる。
【0053】
更に、角度調整用脚4の長いスライド用溝4a1及び短いスライド用溝4b1と孔2aの溝用レール2a1aとを、それぞれ1本に構成しても、角度調整用脚4は孔2aにガイドされる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1の角度調整装置が取り付けられている機器の側面図であり、(A)は同機器の底部が基準面に平行に設置された状態を示し、(B)は角度調整用脚が同底部から突出した状態を示す。
【図2】同底部における要部の斜視図である。
【図3】(A)は、同底部に形成されている孔の詳細図である。(B)は、下方側から見た同角度調整用脚の斜視図である。(C)は、上方側から見た同角度調整用脚の斜視図である。
【図4】従来の第1の角度調整装置が取り付けられているテレビジョン受像機のキャビネットの断面図である。
【図5】従来の第2の角度調整装置の斜視図である。
【図6】従来の第2の角度調整装置が取り付けられているキーボードの本体の側面図であり、同本体の角度の変化を順次(A),(B),(C)に示す。
【符号の説明】
【0055】
1 機器
2 底部
2a 孔
2a1 内面
2a1a 溝用レール
2a1b 受け側ストッパ
2b 凹部
3 ディスプレー面
4 角度調整用脚
4a 外面
4a1 スライド用溝
4a2 壁ストッパ
4b 外面
4b1 スライド用溝
4b2 壁ストッパ
4c ゴム足貼付用凹部
4d ゴム足
11 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度調整用脚が機器の底部に取り付けられる角度調整装置において、
前記角度調整用脚は、柱形状体で、周面に長いスライド用溝及びその端部に形成されている壁ストッパと、短いスライド用溝及びその端部に形成されている壁ストッパとを有し、
前記底部には、筒形状孔が形成され、前記筒形状孔は内面に溝用レールとその
端部の受け側ストッパとを有し、
前記長いスライド用溝と前記短いスライド用溝とは、選択されて前記溝用レールにガイドされることが可能であり、
前記2つの壁ストッパは、選択されて前記受け側ストッパと当接することが可能であり、
角度を調整するとき、まず、前記角度調整用脚を前記筒形状孔から引き出し、次に、前記角度調整用脚を所定角度回転させ、続いて、前記角度調整用脚を前記筒形状孔内に押し込むことを特徴とする角度調整装置。
【請求項2】
前記柱形状体は直方体であり、前記筒形状孔は4角筒であることを特徴とする請求項1記載の角度調整装置。
【請求項3】
前記柱形状体は多角柱であり、前記筒形状孔は多角筒であることを特徴とする請求項1記載の角度調整装置。
【請求項4】
前記柱形状体は円柱であり、前記筒形状孔は円筒であることを特徴とする請求項1記載の角度調整装置。
【請求項5】
前記筒形状孔の少なくとも片側には、手指挿入用の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の角度調整装置。
【請求項6】
前記角度調整用脚は平行な2本の前記長いスライド用溝と平行な2本の前記短いスライド用溝を有し、前記筒形状孔は平行な2本の前記溝用レールを有することを特徴とする請求項1記載の角度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−152393(P2009−152393A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328901(P2007−328901)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】