説明

解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラム

【課題】解析作業の工数を大きく低減させること。
【解決手段】製品の解析作業を支援する解析支援装置10は、解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成部11dと、解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新部11eと、モデルデータに基づいて作業進捗やデータの整合性を検証する検証部11kとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品の解析作業を支援する解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラムに関し、特に、解析作業の工数を大きく低減させることができる解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シミュレーション技術が発達し、実際に試作品を製作する前の設計段階で各種解析処理を実行して問題解決を行うことが可能になっている。例えば、情報処理装置では、演算性能の向上に伴って発熱が重大な問題となっているが、かかる発熱の問題も設計時に解析を行って解決することが可能になっている。
【0003】
このような設計段階における各種解析は、問題解決を早期に実現させ、品質向上や開発期間の短縮に有用である反面、設計者の負担を増加させる。そこで、特許文献1では、解析作業に要する設計者の工数を低減させるため、解析に用いたモデル等の情報を事例情報として蓄積し、任意の検索条件を指定して検索できるようにする技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−66132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1において開示されている技術は、事例情報の蓄積と公開を行うものであり、設計者に対して有用な情報を提供して、設計方針等のおおまかな作業の方向性が誤らないようにし、手戻り等の無駄な作業をなくすためには有効であったが、解析作業そのものの工数を低減させるものではなかった。すなわち、設計者は、特許文献1において開示されている技術を用いて設計方針等を決定した後は、従来どおりのやり方で解析データの作成等を行わなければならかなった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、解析作業の工数を大きく低減させることができる解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願の開示する解析支援装置は、一つの態様において、製品の解析作業を支援する解析支援装置であって、解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成手段と、解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新手段と、前記モデルデータを検証する検証手段とを備える。
【0008】
また、本願の開示する解析支援装置は、他の態様において、前記検証手段は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証する。
【0009】
また、本願の開示する解析支援装置は、他の態様において、前記モデルデータ生成手段は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、前記検証手段は、前記前記モデルデータ生成手段によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証する。
【0010】
なお、上記の解析支援装置の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも上述した課題を解決するために有効である。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラムの一つの態様によれば、解析に関する情報を一元管理し、解析作業の業況や情報の整合性を一括して検証することとしたので、解析作業の問題の早期発見と解決を実現することができ、もって、解析作業の工数を大きく低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る解析支援装置、解析支援方法および解析支援プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
まず、本実施例に係る解析支援装置10の動作環境について説明する。解析支援装置10は、熱解析に関する情報を一元管理して設計者の作業を支援する装置である。具体的には、解析支援装置10は、開発中の製品を構成する各種部品の熱解析を行うためのモデルデータを、部品階層を示す情報と対応付けて記憶し、新たに解析を行う部品のモデルデータの自動生成等を行う。
【0014】
図1は、本実施例に係る解析支援装置10を含むネットワークの一例を示す図である。同図に示す例では、解析支援装置10は、クライアント装置20a〜20m、ソルバ30a〜30n、ライブラリ装置40および設計支援装置50とネットワーク1を介して接続されている。ネットワーク1は、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネットである。
【0015】
クライアント装置20a〜20mは、熱設計を行う設計者が操作する端末装置であり、具体的には、パソコンやワークステーション等に相当する。ソルバ30a〜30nは、熱解析処理を実行する装置である。熱解析処理の内容は部品の種類に応じて異なり、ソルバ30a〜30nは、それぞれ異なる熱解析処理に対応し、異なる形式のデータを入力とし、異なる形式の解析結果を出力する。例えば、ソルバ30aは、LSI等の半導体チップをプラスチックやセラミックのケースで覆った部品であるパッケージの熱解析処理に対応した装置であり、ソルバ30bは、半導体チップの熱解析処理に対応した装置であり、ソルバ30nは、全ての部品を組み合わせた最終製品の熱解析処理に対応した装置である。
【0016】
ライブラリ装置40は、汎用的な部品の仕様に関する各種情報を部品毎に記憶する装置である。ここでいう汎用的な部品には、市販部品に加えて、ある製品のために設計されたものではあるが他の製品へも流用可能な部品が含まれる。設計支援装置50は、部品の設計を支援する装置であり、具体的には、CAD(Computer Aided Design)機能や、CAD機能によって作成された設計データを記憶する機能を有する。
【0017】
解析支援装置10は、必要に応じて、これらの装置にネットワーク1を介してアクセスして各種処理を実現する。なお、解析支援装置10がこれらの装置のいずれか、もしくは、全ての機能を併せもつように構成してもよい。なお、以下の説明では、クライアント装置20a〜20mに関して、いずれかを特定しない場合は、クライアント装置20と表記し、ソルバ30a〜30nに関して、いずれかを特定しない場合は、ソルバ30と表記することとする。
【0018】
次に、解析支援装置10によるモデルデータ管理の概要について説明する。図2−1〜2−3は、解析支援装置10によるモデルデータ管理の概要を示す図である。図2−1に示すように、解析支援装置10は、解析対象の製品を構成する部品の階層に関する情報をツリー構造のデータとして記憶する。同図に示した例では、解析支援装置10は、「B6」という部品番号をもつプリント基板(以下、「PCB(Printed Circuit Board)」という)の下層に「B6−1」という部品番号をもつ基板と、「B6−2」という部品番号をもつパッケージとが存在し、さらに、「B6−2」という部品番号をもつパッケージの下層に「B6−2−1」という部品番号をもつLSIと、「B6−2−2」という部品番号をもつ基板とが存在することを記憶している。
【0019】
また、解析支援装置10は、各階層の部品のうち、熱解析処理の対象となった部品と対応付けてモデルデータを記憶する。モデルデータは、熱解析処理を実行するための入力データである解析データと、熱解析処理の結果である解析結果データとを含むデータである。モデルデータの形式は、熱解析処理の種類毎に異なるが、特定のソルバに依存せず、ソルバを同種の熱解析処理を実行する他のベンダのものに置き換えても対応できるように設計される。
【0020】
図2−1の例では、部品番号「B6」のPCBと部品番号「B6−2−1」のLSIを対象として熱解析処理が実行されており、これらの部品に対応付けてそれぞれモデルデータが記憶されている。ここで、クライアント装置20aを操作する設計者が、新たに部品番号「B6−2」のパッケージの熱解析処理を開始するものとする。設計者がこのパッケージを解析する操作を開始すると、クライアント装置20aは、部品番号「B6−2」の部品の解析データ取得要求を解析支援装置10へ送信する(ステップS11)。
【0021】
解析データ取得要求を受信した解析支援装置10は、指定された部品のモデルデータが既に作成されていれば、その部品の熱解析処理を実行するソルバに対応する解析データの形式へモデルデータを変換し、変換後の解析データを要求元へ応答する。一方、この場合のように、指定された部品のモデルデータが作成されていない場合には、まず、モデルデータを初期生成する。
【0022】
モデルデータの初期作成は、他の階層のモデルデータや他の装置において記憶されている情報を利用して行われる。例えば、この例における部品番号「B6」のPCBのモデルデータのように上位階層のモデルデータが存在する場合には、解析支援装置10は、その上位階層のモデルデータから部品番号「B6−2」のパッケージに供給される風量等を解析条件として利用する。また、この例における部品番号「B6−2−1」のLSIのモデルデータのように下位階層のモデルデータが存在する場合には、解析支援装置10は、その下位階層のモデルデータから解析結果を取得し、熱源情報として利用する。
【0023】
また、解析支援装置10は、指定された部品やその下位階層の部品の形状、サイズ、材質等の設計情報を設計支援装置50から取得し、物理条件として利用する。また、解析支援装置10は、下位階層の部品のうち、熱解析処理のために熱源情報や熱抵抗情報が必要な部品であるにも関わらずモデルデータが存在しない部品があれば、ライブラリ装置40から熱源情報や熱抵抗情報を取得して利用する。そして、ライブラリ装置40にも情報が存在しない部品があれば、その部品の設計情報に基づいて、類似部品のモデルデータを他の製品のモデルデータ、もしくは、同一製品の他の開発フェーズのモデルデータの中から見つけ出し、そのモデルデータから熱源情報や熱抵抗情報を取得して利用する。
【0024】
その後、解析支援装置10は、取得した各種情報に基づいて、指定された部品の種別であるパッケージに対応した形式のモデルデータを初期生成し、部品番号「B6−2」のパッケージと対応付けて記憶する。そして、解析支援装置10は、初期生成したモデルデータを変換してパッケージの熱解析処理の入力データとなる解析データを生成し、要求元であるクライアント装置20aへ応答する(ステップS12)。
【0025】
続いて、クライアント装置20aは、応答された解析データをユーザインターフェース上に表示して不足する情報の入力等を設計者に行わせた後、解析データをソルバ30aへ送信して熱解析処理の実行を依頼する(ステップS13)。依頼を受けたソルバ30aは、送信された解析データを用いて熱解析処理を実行し、解析結果をクライアント装置20aへ応答する(ステップS14)。そして、クライアント装置20aは、ソルバ30aへ送信した解析データと、ソルバ30aから応答された解析結果を解析支援装置10へ送信して保存するように要求する(ステップS15)。
【0026】
保存を要求された解析支援装置10は、解析データと解析結果をモデルデータに反映させるとともに、解析データと解析結果の中にライブラリ装置40に登録すべき情報が含まれていればその情報を抽出してライブラリ装置に登録する。
【0027】
このように、解析支援装置10によるモデルデータ管理では、新たに部品の熱解析処理を行う場合に、上位階層や下位階層の部品のモデルデータ等を利用して熱解析処理の対象の部品のモデルデータが初期生成され、そのモデルデータから解析データが作成されるため、設計者が解析データを作成する工数が大きく低減されるとともに、他の階層の部品のモデルデータとの整合性が容易に確保される。
【0028】
また、解析支援装置10によるモデルデータ管理では、解析結果がモデルデータやライブラリ装置40内の部品情報として記憶されていき、他の部品の熱解析処理の実行時に利用されるので、熱解析処理が繰り返し実行されるにつれて、設計者の作業効率と解析精度が向上していく。
【0029】
次に、解析支援装置10の構成について説明する。図3は、解析支援装置10の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、解析支援装置10は、制御部11と、記憶部12とを有する。制御部11は、解析支援装置10を全体制御する制御部であり、ソルバアクセス部11aと、ライブラリ装置アクセス部11bと、設計支援装置アクセス部11cと、モデルデータ生成部11dと、モデルデータ更新部11eと、データ変換部11fと、アドバイスデータ生成部11gと、簡略化モデル生成部11hと、ライブラリ登録部11iと、発熱量集計部11jと、検証部11kとを有する。
【0030】
ソルバアクセス部11aは、ソルバ30a〜30nとの間での各種情報のやりとりを制御する制御部である。ライブラリ装置アクセス部11bは、ライブラリ装置40との間での各種情報のやりとりを制御する制御部である。設計支援装置アクセス部11cは、設計支援装置50との間での各種情報のやりとりを制御する制御部である。
【0031】
モデルデータ生成部11dは、モデルデータを初期生成する処理部である。モデルデータ更新部11eは、モデルデータを更新する処理部である。データ変換部11fは、モデルデータに関する各種変換処理を実行する処理部である。具体的には、データ変換部11fは、モデルデータを変換してソルバ固有形式のデータを生成するとともに、ソルバ固有形式のデータを変換してモデルデータに反映させる。
【0032】
アドバイスデータ生成部11gは、設計者の熱設計作業を支援するためのデータであるアドバイスデータを生成する処理部である。簡略化モデル生成部11hは、モデルデータを基にして、物理形状等を簡略化させた他のモデルデータを生成する処理部である。例えば、半導体チップの場合、ホットスポットの位置とその温度を正確に解析するため、細かくメッシュ分割して熱解析処理を行う必要があるが、その半導体チップを含む上位階層の部品の熱解析処理においては、細かくメッシュ分割して生成された半導体チップの熱解析結果は情報量が多すぎて処理を必要以上に複雑化させてしまう。そこで、簡略化モデル生成部11hは、上位階層の部品の熱解析処理のために、簡略化された下位階層のモデルデータ(以下、「簡略化モデル」という)を自動生成する。
【0033】
ライブラリ登録部11iは、ライブラリ装置40に登録すべき情報がモデルデータに含まれていた場合に、その情報をライブラリ装置40へ登録する処理部である。発熱量集計部11jは、解析対象の製品単位での発熱量を算出する処理部である。検証部11kは、解析作業の進捗状況の検証等の各種検証処理を実行する処理部である。
【0034】
記憶部12は、各種情報を記憶する記憶装置であり、製品マスタ12aと、部品種別マスタ12bと、部品階層データ12cと、動作モードデータ12dと、モデルデータ12eと、アドバイスDB12fとを記憶する。
【0035】
製品マスタ12aは、解析対象の製品に関する情報が登録されるマスタデータである。製品マスタ12aの一例を図4に示す。同図に示すように、製品マスタ12aは、製品番号、製品名、フェーズといった項目を有する。製品番号は、製品を識別するための識別番号が設定される項目であり、製品名は、製品の名称が設定される項目である。フェーズは、商品の開発フェーズを時系列に並べたリストが設定される項目である。
【0036】
例えば、図4に示した製品マスタ12aの2行目は、「B1」という製品番号で識別される製品が存在し、その製品の名称が「サーバB1」であり、その製品には「概要設計」と「プロト1」という開発フェーズがこれまでに存在していることを示している。
【0037】
部品種別マスタ12bは、部品の種別ごとの各種設定情報が登録されるマスタデータである。部品種別マスタ12bの一例を図5に示す。同図に示すように、部品種別マスタ12bは、部品種別、種別名、ソルバ、モデルデータ生成ルール、簡略化モデル生成ルール、データ変換ルール、ライブラリ登録、ライブラリ登録ルールといった項目を有する。
【0038】
部品種別は、部品の種別を識別するための識別番号が設定される項目であり、種別名は、部品の種別の名称が設定される項目である。ソルバは、その種別の部品の熱解析処理を実行するソルバを識別するための識別番号が設定される項目である。単独で熱解析処理の対象とならない種別の場合、ソルバの項目は空欄となる。
【0039】
モデルデータ生成ルールは、モデルデータの形式、初期生成時における項目毎のデータの取得元や初期値等が定義されたルールが設定される項目である。簡略化モデル生成ルールは、簡略化モデル生成部11hが簡略化モデルを生成するための手順等が定義されたルールが設定される項目である。簡略化の対象でない種別の場合、簡略化モデル生成ルールの項目は空欄となる。データ変換ルールは、解析データや解析結果の形式やモデルデータの項目との対応等が定義されたルールが設定される項目である。
【0040】
ライブラリ登録は、その種別の部品の情報をライブラリ装置40に登録する必要があるか否かを示すフラグが設定される項目であり、登録する必要がある場合は「Y」の値をとり、さもなければ「N」の値をとる。ライブラリ登録ルールは、ライブラリ装置40に情報を登録するための手順等が定義されたルールが設定される項目である。
【0041】
部品階層データ12cは、製品を構成する部品の階層をツリー構造で表すデータである。部品階層データ12cの一例を図6に示す。同図に示すように、部品階層データ12cは、製品番号、上位部品番号、部品番号、個数、解析期限といった項目を有し、製品番号毎に上位部品番号〜解析期限の組合せを複数登録できるように構成されている。
【0042】
製品番号は、製品を識別するための識別番号が設定される項目であり、製品マスタ12aの製品番号に対応する。上位部品番号は、当該の部品の上位階層の部品の部品番号が設定される項目であり、部品番号は、当該の部品の部品番号が設定される項目である。当該の部品が最上位の部品である場合、上位部品番号の項目は空欄となる。個数は、その階層における部品の個数が設定される項目であり、解析期限は、その部品の解析を完了させるべき期日が設定される項目である。
【0043】
図6に示した部品階層データ12cは、製品番号「B1」の製品の部品階層の最上位には、製品そのものに相当する部品番号「B1」の部品が存在し、部品番号「B1」の部品の直下には、部品番号「B2」の部品が8個と、部品番号「B3」の部品が11個と、部品番号「B4」の部品が6個存在することを示している。また、部品番号「B2」の部品の直下には、部品番号「B5」の部品と部品番号「B6」の部品が1つずつ存在し、部品番号「B6」の部品の直下には、部品番号「B6−1」の部品と部品番号「B6−2」の部品が1つずつ存在し、さらに、部品番号「B6−2」の部品の直下には、部品番号「B6−2−1」の部品と部品番号「B6−2−2」の部品が1つずつ存在することを示している。
【0044】
動作モードデータ12dは、動作モード毎の解析条件が登録されるデータであり、製品番号とフェーズの組合せごとに存在する。動作モードデータ12dの一例を図7に示す。同図に示した動作モードデータ12dは、製品番号「B1」の製品のフェーズ「プロト1」に対応するものである。同図に示すように、動作モードデータ12dは、動作モード毎に各部品の解析条件が登録される。
【0045】
図7に示した動作モードデータ12dは、9行のデータを含んでおり、解析対象の製品に9種類の動作モードが存在することを示している。またこの例における動作モードデータ12dの1行目は、「MODE01」という動作モード番号で識別される動作モードが存在し、この動作モードの名称が「ファン高速回転/計算処理」であり、この動作モードにおいては、部品番号「B3」のファンの風量は「15m^3/min」であり、部品番号「B6」のモジュール単体の消費電力は「50W」であり、部品番号「B7」のモジュール単体の消費電力は「10W」であり、部品番号「B8」の部品単体の消費電力は「5W」であり、装置全体の消費電力は「300W」であることを示している。
【0046】
モデルデータ12eは、部品の熱解析処理に必要な情報および解析結果を保持するデータであり、製品毎、フェーズ毎かつ部品毎に存在する。さらに、モデルデータ12eは、製品、フェーズおよび部品が同一であっても、簡略化されたものとそうでないものとの2種類のデータが存在することがある。
【0047】
モデルデータ12eの一例を図8に示す。同図に示すように、モデルデータ12eは、製品番号、部品番号、フェーズ、部品種別、簡略化フラグ、判定条件、物理条件、共通解析条件、動作モード別解析条件、解析結果、更新日時といった項目を有する。製品番号は、製品を識別するための識別番号が設定される項目であり、製品マスタ12aの製品番号に対応する。部品番号は、部品を識別するための識別番号が設定される項目であり、部品階層データ12cの部品番号に対応する。フェーズは、商品の開発フェーズを表すコードが設定される項目であり、製品マスタ12aのフェーズの項目の値のいずれか1つが設定される。
【0048】
部品種別は、部品の種別を識別するための識別番号が設定される項目であり、部品種別マスタ12bの部品種別に対応する。簡略化フラグは、そのモデルデータが簡略化モデル生成部11hによって生成された簡略化モデルであるか否かを示すフラグが設定される項目であり、簡略化モデルである場合は「Yes」の値をとり、さもなければ「No」の値をとる。図8に示したモデルデータ12eの製品番号〜簡略化フラグは、このモデルデータが、製品番号「B1」の製品のフェーズ「プロト1」における部品番号「B6−2」の部品に対応するものであり、この部品は部品種別「PKG」に分類される部品であり、簡略化モデルではないことを示している。
【0049】
判定条件は、解析結果の可否を判定する条件が設定される項目である。図8に示した判定条件は、風上空気温度(Ta:Ambient Temperature)が25℃のときに、半導体チップの表面温度(Tj:Junction Temperature)が85℃を超えないことが解析結果を良と判定する条件であることを示している。
【0050】
物理条件は、当該の部品や当該の部品に含まれる部品(部品階層における下位階層の部品)の材料、サイズ、配置等の物理的な仕様に関する情報が設定される項目である。この項目は、典型的には、ライブラリ装置40や設計支援装置50から取得された情報に基づいて値が設定される。図8に示した物理条件は、このモデルデータに対応する部品が「セラミックX」という材料からなり、24mm平方のサイズであることを示している。
【0051】
共通解析条件は、解析条件のうち、動作モードに依存しないものが設定される項目である。図8に示した共通解析条件は、このモデルデータに対応する熱解析処理では、部品を0.1mm平方にメッシュ分割することを示している。
【0052】
動作モード別解析条件は、解析条件のうち、動作モードに依存するものが設定される項目であり、対応する動作モードデータ12dに登録されている動作モードの数だけ存在する。すなわち、図7に示した動作モードデータに12dには、9種類の動作モードが登録されていたため、この例のモデルデータには9項目の動作モード別解析条件が存在し、それぞれが、対応する動作モードの解析情報を保持する。
【0053】
例えば、図8に示したモデルデータ12eの1番目の動作モード別解析条件は、この動作モード別解析条件が、動作モード番号「MODE01」の動作モードに対応したものであり、風上空気温度(Ta)が25℃のときに、半導体チップの表面温度(Tj)が75℃を超えないことが判定条件であり、このモードデータに対応する部品の風上風量が5m^3/minであり、下位階層の部品番号「B6−2−1」の部品の熱源情報として、「2007/12/20 15:37:43」に製品番号「B1」、フェーズ「プロト1」、部品番号「B6−2−1」のモデルデータから動作モード「MODE01」の解析結果を取得して利用することを示している。
【0054】
この例のように、判定条件は、動作モード毎に設定することもでき、動作モード毎に設定された判定条件は、動作モード別解析条件の外部で設定された判定条件よりも優先される。また、共通解析条件および動作モード別解析条件に設定される解析条件は、「type=“インターフェース”」という属性を含むことがある。この属性を含む解析条件は、上位階層のモデルデータと値が一致している必要がある。図8の例では、風量の解析条件がこの属性を含んでおり、風量が上位階層部品における当該部品の風上風量と一致している必要があることを示している。
【0055】
解析結果は、熱解析の結果が設定される項目であり、対応する動作モードデータ12dに登録されている動作モードの数だけ存在する。すなわち、図7に示した動作モードデータ12dには、9種類の動作モードが登録されていたため、この例のモデルデータには9つの解析結果の項目が存在し、それぞれが、対応する動作モードの解析結果を保持する。
【0056】
このように、解析支援装置10は、動作モード毎に解析条件や解析結果を保持することができるように構成されており、各階層の熱解析処理を動作モード毎に実行し、各動作モードの正確な解析結果を求めることができる。
【0057】
アドバイスDB12fは、アドバイスデータ生成部11gがアドバイスデータを生成するために必要な各種情報が格納されたデータベースである。
【0058】
次に、解析支援装置10の動作について説明する。図9は、解析支援装置10を用いた場合の解析の実行手順の概要を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、クライアント装置20が、設計者の指示に従って、解析対象の部品の検索要求を解析支援装置10へ送信する(ステップS101)。すると、解析支援装置10の制御部11は、指定された条件に合致する部品の情報を検索し(ステップS102)、検索結果をクライアント装置20へ応答する(ステップS103)。
【0059】
クライアント装置20は、検索結果を受信すると、解析対象選択画面を表示して検索結果を一覧表示し、解析対象の部品を設計者に選択させる(ステップS104)。そして、クライアント装置20は、選択された部品の解析データ取得要求を解析支援装置10へ送信する(ステップS105)。
【0060】
解析支援装置10は、解析データ取得要求を受信すると、後述する解析データ生成処理を実行して、要求された部品の解析データを生成し(ステップS106)、生成した解析データをクライアント装置20へ応答する(ステップS107)。このとき、解析支援装置10は、要求された部品に対応するモデルデータに含まれる判定条件もクライアント装置20へ送信する。
【0061】
クライアント装置20は、解析データを受信すると、後述する解析処理を実行して、解析データの編集やソルバへの熱解析処理の実行要求等を行う(ステップS108)。そして、解析結果が得られると、クライアント装置20は、解析データと解析結果を解析支援装置10へ送信して保存を要求する(ステップS109)。
【0062】
解析支援装置10は、保存要求を受信すると、送信された解析データと解析結果を対応するモデルデータに反映させるとともに(ステップS110)、後述する簡略化モデル生成処理を実行し(ステップS111)、さらに、ライブラリ登録処理を実行する(ステップS112)。
【0063】
図10は、解析データ生成処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、解析支援装置10が、解析データ取得要求を受信すると、モデルデータ生成部11dが、指定された部品に対応するモデルデータを検索する。なお、ここで検索対象となるのは簡略化モデル以外のモデルデータである。そして、該当するモデルデータが存在した場合は(ステップS201肯定)、データ変換部11fが、そのモデルデータの部品種別に対応するデータ変換ルールを部品種別マスタ12bから取得して、そのデータ変換ルールに従って、モデルデータを解析データへ変換する(ステップS215)。
【0064】
一方、該当するモデルデータが存在しなかった場合は(ステップS201否定)、モデルデータ生成部11dは、部品階層データ12cを参照して、指定された部品の上位階層の部品の部品番号と、下位階層の部品の部品番号を取得する(ステップS202)。そして、モデルデータ生成部11dは、設計支援装置アクセス部11cを介して設計支援装置50から当該の部品や下位階層の部品に関する設計情報を取得する(ステップS203)。
【0065】
続いて、モデルデータ生成部11dは、上位階層の部品に対応する同一製品、同一フェーズのモデルデータを参照し(ステップS204)、該当するモデルデータがあれば(ステップS205肯定)、上位階層のモデルデータから解析条件を取得する(ステップS206)。
【0066】
続いて、モデルデータ生成部11dは、下位階層の部品に対応する同一製品、同一フェーズのモデルデータを参照し(ステップS207)、該当するモデルデータがあれば(ステップS208肯定)、下位階層のモデルデータから解析結果と解析条件を取得する(ステップS209)。なお、ここでは、簡略化モデルが優先的に取得される。そして、情報を取得できなかった下位階層の部品があった場合は(ステップS210肯定)、モデルデータ生成部11dは、ライブラリ装置アクセス部11bを介して、ライブラリ装置40から、それらの部品の部品情報の取得を試みる(ステップS211)。
【0067】
そして、それでも情報を取得できなかった下位階層の部品があった場合は(ステップS212肯定)、モデルデータ生成部11dは、それらの部品と設計情報や解析条件が類似する部品のモデルデータを他製品もしくは他フェーズのモデルデータを検索し、検索したモデルデータから解析結果を取得する(ステップS213)。
【0068】
こうして情報を収集した後、モデルデータ生成部11dは、当該の部品の部品種別に対応するモデルデータ生成ルールを部品種別マスタ12bから取得して、そのモデルデータ生成ルールに従って、収集した各種情報を設定してモデルデータを初期生成する(ステップS214)。そして、データ変換部11fが、そのモデルデータの部品種別に対応するデータ変換ルールを部品種別マスタ12bから取得して、そのデータ変換ルールに従って、モデルデータを解析データへ変換する(ステップS215)。
【0069】
図11は、解析処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、クライアント装置20は、解析データを設計者に編集させ、不足している情報の捕捉等を行わせる(ステップS301)。そして、編集が完了すると、クライアント装置20は、解析データをソルバ30へ送信して熱解析処理の実行を要求する(ステップS302)。ソルバ30は、実行要求を受信すると、動作モード数分の熱解析処理を実行し(ステップS303)、解析結果をクライアント装置20へ応答する(ステップS304)。
【0070】
そして、クライアント装置20は、全ての動作モードの解析結果が判定条件を充足させるかを確認し(ステップS305)、充足させる場合は(ステップS306肯定)、解析処理を終了する。一方、全ての動作モードの解析結果が判定条件を充足させない場合は(ステップS306否定)、クライアント装置20は、解析結果を解析支援装置10へ送信してアドバイスデータを要求する(ステップS307)。
【0071】
解析支援装置10がアドバイスデータの要求を受信すると、アドバイスデータ生成部11gが、アドバイスDB12fを検索して、送信された解析結果に対応するアドバイスデータの生成ロジックを取得する(ステップS308)。そして、取得した生成ロジックに基づいてアドバイスデータを生成し(ステップS309)、生成したアドバイスデータをクライアント装置20へ応答する(ステップS310)。
【0072】
そして、クライアント装置20は、応答されたアドバイスデータをアドバイス表示画面に表示して設計者に内容を確認させ(ステップS311)、ステップS301へ戻って解析データの編集から処理を再開する。
【0073】
図12は、アドバイス表示画面の一例を示す図である。同図に示すアドバイス表示画面は、解析結果がパッケージのものであり、アドバイスDBに、部品種別がパッケージの部品用のアドバイスデータ生成ロジックとして以下の2種類のロジックが登録されている場合に表示される例を示している。
【0074】
第1のロジックは、解析結果における対象部品の風上空気温度(Ta)と半導体チップの表面温度(Tj)の差および対象部品の消費電力から対象部品の熱抵抗を算出し、算出した熱抵抗に基づいて、判定条件を充足させうる最大の消費電力である許容消費電力を算出するというものである。このロジックに基づいて生成されたアドバイスデータは、図12に示したアドバイス表示画面の上部に表示されている。
【0075】
第2のロジックは、現在使用することになっているヒートシンクの代替候補として、下記の条件に合うヒートシンクをライブラリ装置40から検索し、体積の小さいもの、すなわち、スペースの制約を受ける可能性が低いものから順に所定個数抽出するというものである。
Tj = (Rh+Rp)×P ≦ 判定上限温度
ここで、Rhは、ヒートシンクの熱抵抗であり、Rpは、解析結果として得られたパッケージ内部熱抵抗であり、Pは、対象部品の消費電力である。このロジックに基づいて生成されたアドバイスデータは、図12に示したアドバイス表示画面の中央部以降に表示されている。
【0076】
図13は、簡略化モデル生成処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、簡略化モデル生成部11hは、まず、保存を要求された解析データおよび解析結果に対応するモデルデータから部品種別を取得し(ステップS401)、部品種別に対応する簡略化モデル生成ルールを部品種別マスタ12bから取得する(ステップS402)。ここで、簡略化モデル生成ルールが存在しなかった場合(ステップS403否定)、簡略化モデル生成部11hは、簡略化モデルを生成することなく、簡略化モデル生成処理を終了する。
【0077】
一方、簡略化モデル生成ルールを取得できた場合は(ステップS403肯定)、簡略化モデル生成ルールに従って、簡略化されていない通常のモデルデータ等から簡略化モデルを生成する(ステップS404)。そして、生成した簡略化モデルから解析データを生成し(ステップS405)、解析データをソルバ30へ送信して熱解析処理の実行を要求する(ステップS406)。
【0078】
ソルバ30は、実行要求を受信すると、熱解析処理を実行し(ステップS407)、解析結果を簡略化モデル生成部11hへ応答する(ステップS408)。簡略化モデル生成部11hは、解析結果を受信すると、その解析結果を簡略化モデルに反映するようにモデルデータ更新部11eへ要求する(ステップS409)。
【0079】
ここで、簡略化モデル生成ルールの具体例について説明する。LSIの場合、通常のモデルデータは、図14−1のように、チップ表面が細かいグリッドにメッシュ分割され、グリッド毎に消費電力を設定して最大温度となるグリッド等が解析される。一方、LSIの簡略化モデル生成ルールは、例えば、図14−2のように、チップ表面を9等分割し、全体の消費電力が通常のモデルデータと同一であり、中央部の領域の温度が通常のモデルデータにおける最大温度と同一の温度となり、その他の領域の温度が均一になるような簡易モデルを生成する。このような簡易モデルを生成することにより、上位階層の熱解析処理を、精度を低下させることなく、効率よく行うことが可能になる。
【0080】
図15は、ライブラリ登録処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、ライブラリ登録部11iは、保存を要求された解析データおよび解析結果に対応するモデルデータから未取得の下位部品の情報を取得する(ステップS501)。そして、取得できた場合は(ステップS502肯定)、下位部品の部品種別に対応するライブラリ登録の項目の値と、ライブラリ登録ルールを部品種別マスタ12bから取得する。
【0081】
ここで、ライブラリ登録の項目の値が「N」の場合、すなわち、ステップS501で取得した情報がライブラリ装置40への登録を必要としない部品のものであった場合は(ステップS503否定)、ライブラリ登録部11iは、ステップS501へ戻って、保存を要求された解析データおよび解析結果に対応するモデルデータから他の未取得の下位部品の情報の取得を試みる。
【0082】
一方、ライブラリ登録の項目の値が「Y」の場合、すなわち、ステップS501で取得した情報がライブラリ装置40への登録を必要とする部品のものであった場合は(ステップS503肯定)、ライブラリ登録部11iは、ライブラリ装置40へアクセスしてその下位部品が既に登録されているかを確認する。ここで、登録済みであった場合は(ステップS504肯定)、ライブラリ登録部11iは、ステップS501へ戻って、保存を要求された解析データおよび解析結果に対応するモデルデータから他の未取得の下位部品の情報の取得を試みる。
【0083】
一方、下位部品が未登録であった場合は(ステップS504否定)、ライブラリ登録部11iは、ライブラリ登録ルールに従ってライブラリ装置40へ登録する登録データを生成し(ステップS505)、ライブラリ装置40へその登録データの登録を要求する(ステップS506)。そして、ライブラリ登録部11iは、ステップS501へ戻って、保存を要求された解析データおよび解析結果に対応するモデルデータから他の未取得の下位部品の情報の取得を試みる。
【0084】
こうして、モデルデータから未取得の下位部品の情報を取得していき、全ての下位部品の情報を取得し終えて取得可能な未取得の下位部品がなくなった場合は(ステップS502否定)、ライブラリ登録部11iは、ライブラリ登録処理を終了する。なお、ステップS505における登録データの作成処理においては、ライブラリ登録ルールに従って、解析処理等の様々な処理が実行される。例えば、下位部品がヒートシンクである場合、ライブラリ登録ルールに従って、複数の風量を複数パターン変更して熱抵抗の解析が行われ、解析結果が風量と対応付けて登録データに設定される。
【0085】
図16は、熱量集計処理の処理手順を示すフローチャートである。熱量集計処理とは、発熱量集計部11jによって実行される製品単位での熱量の算出処理である。同図に示すように、発熱量集計部11jは、解析対象の製品の製品番号とフェーズに対応する動作モードデータ12dから未選択の動作モードを1つ選択する(ステップS601)。
【0086】
そして、動作モードを選択できた場合は(ステップS602肯定)、発熱量集計部11jは、下位階層のモデルデータ内の同一の動作モードの情報等から製品単位のモデルデータを生成し(ステップS603)、モデルデータを解析データへ変換して(ステップS604)、解析データをソルバ30へ送信して熱解析処理の実行を要求する(ステップS605)。ここで、発熱量集計部11jは、下位階層のモデルデータが不足している場合、もしくは、下位階層のモデルデータに解析処理が完了していないものがある場合、図10に示した解析処理と同様に他製品のモデルデータもしくは同一製品の他フェーズのモデルデータから類似部品のモデルデータを取得して、そのモデルデータを代替として利用する。
【0087】
ソルバ30は、実行要求を受信すると、熱解析処理を実行し(ステップS606)、解析結果を発熱量集計部11jへ応答する(ステップS607)。発熱量集計部11jは、解析結果を受信すると、その解析結果をモデルデータに反映するようにモデルデータ更新部へ要求し(ステップS608)、ステップS601へ戻って、次の未選択の動作モードの選択を試みる。
【0088】
そして、全ての動作モードを選択し終えて選択可能な未選択の動作モードがなくなった場合は(ステップS602否定)、発熱量集計部11jは、発熱量を動作モード毎に集計し(ステップS609)、集計結果を出力する(ステップS610)。図17は、発熱量集計結果の一例を示す図である。同図に示すように、発熱量集計結果には、動作モード毎に製品単位の発熱量が出力される。
【0089】
図18は、検証処理の処理手順を示すフローチャートである。検証処理とは、解析作業の進捗状況等を検証するために検証部11kによって実行される処理である。同図に示すように、検証部11kは、検証対象の製品と同一の製品番号とフェーズを有する未選択の部品のモデルデータを選択する(ステップS701)。そして、モデルデータを選択できた場合は(ステップS702肯定)、検証部11kは、進捗の確認を行う(ステップS703)。具体的には、当該のモデルデータに対応する部品の解析期限を部品階層データ12cから取得し、現在時刻がその解析期限を超過しており、かつ、モデルデータ内の解析結果の少なくとも1つが未設定もしくは判定条件を満たしていなければ(ステップS704肯定)、遅延が発生しているものと判断して、そのモデルデータに関する情報とともに警告を出力する(ステップS705)。
【0090】
続いて、検証部11kは、上下階層のモデルデータにおいて境界条件の整合性が保たれていることの確認を行う(ステップS706)。具体的には、モデルデータ内の「type=“インターフェース”」という属性を含む解析条件が、上位階層の部品に対応するモデルデータ内の当該部品の解析条件と一致するかを確認し、不整合があれば(ステップS707肯定)、境界条件の不整合が生じているものと判断して、そのモデルデータに関する情報とともに警告を出力する(ステップS708)。
【0091】
そして、検証部11kは、ステップS701へ戻って、次の未選択のモデルデータの選択を試みる。こうして、全てのモデルデータを選択し終えて選択可能な未選択のモデルデータがなくなった場合は(ステップS702否定)、検証部11kは、処理を終了する。
【0092】
なお、図3に示した本実施例に係る解析支援装置10の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができる。例えば、解析支援装置10の制御部11の機能をソフトウェアとして実装し、これをコンピュータで実行することにより、解析支援装置10と同等の機能を実現することもできる。以下に、制御部11の機能をソフトウェアとして実装した解析支援プログラム1071を実行するコンピュータの一例を示す。
【0093】
図19は、解析支援プログラム1071を実行するコンピュータ1000を示す機能ブロック図である。このコンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置1020と、各種情報を表示するモニタ1030と、記録媒体からプログラム等を読み取る媒体読取り装置1040と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行うネットワークインターフェース装置1050と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1060と、ハードディスク装置1070とをバス1080で接続して構成される。
【0094】
そして、ハードディスク装置1070には、図3に示した制御部11と同様の機能を有する解析支援プログラム1071と、図3に示した記憶部12に記憶される各種データに対応する解析支援用データ1072とが記憶される。なお、解析支援用データ1072を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0095】
そして、CPU1010が解析支援プログラム1071をハードディスク装置1070から読み出してRAM1060に展開することにより、解析支援プログラム1071は、解析支援プロセス1061として機能するようになる。そして、解析支援プロセス1061は、解析支援用データ1072から読み出した情報等を適宜RAM1060上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0096】
なお、上記の解析支援プログラム1071は、必ずしもハードディスク装置1070に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0097】
なお、上記の実施例では、熱解析作業を支援するために本発明を用いる例を示したが、本発明は、係る用途に限定されるものではなく、構造解析や電磁波解析等の各種解析作業を支援するために利用することができる。
【0098】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0099】
(付記1)製品の解析作業を支援する解析支援装置であって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成手段と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新手段と、
前記モデルデータを検証する検証手段と
を備えたことを特徴とする解析支援装置。
【0100】
(付記2)前記検証手段は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする付記1に記載の解析支援装置。
【0101】
(付記3)前記モデルデータ生成手段は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証手段は、前記前記モデルデータ生成手段によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする付記1または2に記載の解析支援装置。
【0102】
(付記4)製品の解析作業を支援する解析支援方法であって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成工程と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新工程と、
前記モデルデータを検証する検証工程と
を含んだことを特徴とする解析支援方法。
【0103】
(付記5)前記検証工程は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする付記4に記載の解析支援方法。
【0104】
(付記6)前記モデルデータ生成工程は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証工程は、前記前記モデルデータ生成工程によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする付記4または5に記載の解析支援方法。
【0105】
(付記7)製品の解析作業を支援する解析支援プログラムであって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成手順と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新手順と、
前記モデルデータを検証する検証手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする解析支援プログラム。
【0106】
(付記8)前記検証手順は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする付記7に記載の解析支援プログラム。
【0107】
(付記9)前記モデルデータ生成手順は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証手順は、前記前記モデルデータ生成手順によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする付記7または8に記載の解析支援プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本実施例に係る解析支援装置を含むネットワークの一例を示す図である。
【図2−1】解析支援装置によるモデルデータ管理の概要を示す図である。
【図2−2】解析支援装置によるモデルデータ管理の概要を示す図である。
【図2−3】解析支援装置によるモデルデータ管理の概要を示す図である。
【図3】本実施例に係る解析支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】製品マスタの一例を示す図である。
【図5】部品種別マスタの一例を示す図である。
【図6】部品階層データの一例を示す図である。
【図7】動作モードデータの一例を示す図である。
【図8】モデルデータの一例を示す図である。
【図9】解析支援装置を用いた場合の解析の実行手順の概要を示すフローチャートである。
【図10】解析データ生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】解析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】アドバイス表示画面の一例を示す図である。
【図13】簡略化モデル生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14−1】通常の解析モデルの一例を示す図である。
【図14−2】簡略化モデルの解析モデルの一例を示す図である。
【図15】ライブラリ登録処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】発熱量集計処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】発熱量集計結果の一例を示す図である。
【図18】検証処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】解析支援プログラムを実行するコンピュータを示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0109】
1 ネットワーク
10 解析支援装置
11 制御部
11a ソルバアクセス部
11b ライブラリ装置アクセス部
11c 設計支援装置アクセス部
11d モデルデータ生成部
11e モデルデータ更新部
11f データ変換部
11g アドバイスデータ生成部
11h 簡略化モデル生成部
11i ライブラリ登録部
11j 発熱量集計部
11k 検証部
12 記憶部
12a 製品マスタ
12b 部品種別マスタ
12c 部品階層データ
12d 動作モードデータ
12e モデルデータ
12f アドバイスDB
20a〜20m クライアント装置
30a〜30n ソルバ
40 ライブラリ装置
50 設計支援装置
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 入力装置
1030 モニタ
1040 媒体読取り装置
1050 ネットワークインターフェース装置
1060 RAM
1061 解析支援プロセス
1070 ハードディスク装置
1071 解析支援プログラム
1072 解析支援用データ
1080 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の解析作業を支援する解析支援装置であって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成手段と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新手段と、
前記モデルデータを検証する検証手段と
を備えたことを特徴とする解析支援装置。
【請求項2】
前記検証手段は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする請求項1に記載の解析支援装置。
【請求項3】
前記モデルデータ生成手段は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証手段は、前記前記モデルデータ生成手段によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする請求項1または2に記載の解析支援装置。
【請求項4】
製品の解析作業を支援する解析支援方法であって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成工程と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新工程と、
前記モデルデータを検証する検証工程と
を含んだことを特徴とする解析支援方法。
【請求項5】
前記検証工程は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする請求項4に記載の解析支援方法。
【請求項6】
前記モデルデータ生成工程は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証工程は、前記前記モデルデータ生成工程によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする請求項4または5に記載の解析支援方法。
【請求項7】
製品の解析作業を支援する解析支援プログラムであって、
解析対象の製品を構成する部品の階層を表す部品階層データに対応付けて、解析対象の部品の解析モデルに関するデータであるモデルデータを生成するモデルデータ生成手順と、
解析処理の結果をモデルデータに反映させるモデルデータ更新手順と、
前記モデルデータを検証する検証手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする解析支援プログラム。
【請求項8】
前記検証手順は、部品毎に設定された解析期限内に解析が完了しているか否かを検証することを特徴とする請求項7に記載の解析支援プログラム。
【請求項9】
前記モデルデータ生成手順は、前記モデルデータを生成する場合に、他のモデルデータの項目と値が一致するべき項目にその旨を示す情報を付加し、
前記検証手順は、前記前記モデルデータ生成手順によって前記情報が付加された項目の値が対応する他のモデルデータの項目の値と一致するか否かを検証することを特徴とする請求項7または8に記載の解析支援プログラム。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−176052(P2009−176052A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14050(P2008−14050)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】