解析用モデル生成方法
【課題】一般的な構造を高周波帯まで精度よく表現できる3次元フルウェーブ解析によるS、Y、Zパラメータなどのネットワークパラメータに基づいたモデルであること。モデルの分割・合成を行っても、リターンパス不整合に基づく矛盾が起きないよう、GNDプレーンなどの信号リターンパスが明示的に分離されていること。以上の条件を満たす解析用モデル生成方法を提供する。
【解決手段】回路全体を、信号系、電源系、GND系の回路部に分割し、信号−電源間相互インピーダンスの調和平均を求め、その周波数応答関数をリターンパスとしてのGNDのモデルとして用いる。このGNDのモデルは、シミュレーション上で十分な制度を有するので、回路全体からリターンパスを分離することができる。
【解決手段】回路全体を、信号系、電源系、GND系の回路部に分割し、信号−電源間相互インピーダンスの調和平均を求め、その周波数応答関数をリターンパスとしてのGNDのモデルとして用いる。このGNDのモデルは、シミュレーション上で十分な制度を有するので、回路全体からリターンパスを分離することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析用モデル生成方法と、この解析用モデル生成方法を用いる解析用モデル生成装置とに係り、特に、電源系回路部、GND(GrouND:グランド)系回路部、信号系回路部を有する電気回路の解析用モデル生成方法と、この解析用モデル生成方法を用いる解析用モデル生成装置とに係る。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高速化・多信号化により、SSO(Simultaneous Switching Output:同時スイッチング出力)によるSSN(Simultaneous Switching Noise:同時スイッチングノイズ)が従前より問題となっている。
【0003】
SSNとは、多くの出力素子が同時にON/OFFすることにより、一度に大量の電流が電源・GNDに流れ、その電圧を大きく変動させる現象である。その結果として、出力信号波形が変調を受け、受信側でタイミングエラーや閾値エラーが起きてしまう。
【0004】
以前は、計算機や回路シミュレータの能力にも限界があり、SSOやSSNの発生時における波形を少ない計算量で予測するためには、特許文献1(特開2006−244325号公報)に開示されている方法が用いられていた。この方法では、先ず、簡易的に、電源系と信号系とを分けて計算する。その後、それぞれの計算結果を利用して、最終的な信号波形を予測する。
【0005】
例えば、特許文献1では、まず、I/O(In/Out)素子のスイッチング電流モデルを何らかの方法で作成する。次に、このモデルを使って、電源系のみの解析を行って電源電圧波形を求める。最後に、この電圧波形をI/O素子に与えて信号系だけの解析を行って出力波形を求める。
【0006】
しかしながら、電源系の解析に必要なI/O素子のスイッチング電流波形は、後で行う信号系の解析を行わなければ正確に求めることが出来ない。さらに、信号波形の計算を行うためには、電源系解析から得られるI/O動作時の電源電圧波形が必要である。つまり、別々に解析される波形が、いわゆる「鶏と卵」の関係となる。
【0007】
半導体素子の動作速度が十分に遅い間は、電源系と信号系を独立に解析してその結果を利用しあっても、それほど悪い近似にはならなかった。しかし、半導体デバイスの動作速度が上がってくると、つじつまが合わなくなる。
【0008】
この問題を解決するためには、基本的に、信号系と、電源系とを、同時に解析する必要がある。そのためには、例えば、特許文献2(米国特許第6564355号明細書)に開示された方法を使っても良い。この方法では、先ず、信号線とそのレファレンスである電源プレーン・GNDプレーンの双方を伝送線路モデルで記述して、同時出力動作の解析を行い、電源プレーン・GND上の電荷分布を計算する。次に、得られた電荷分布を使って、電源プレーン・GNDプレーン上の電圧波形を計算する。最後に、信号線路の電圧波形と、電源プレーン・GNDプレーン上の電圧波形を重ね合わせる。すなわち、信号のレファレンスが電源・GNDなので、電源プレーン・GNDプレーンの電圧波形を重ね合わせることになる。
【0009】
また、別の提案としては、特許文献3(特開2009−211333号公報)には、簡易的な方法が開示されている。この方法では、信号系のモデルと、電源系のモデルとを、仮定に基づいて作成する結合素子によって結合する。
【0010】
ところが、ここ数年になって、信号密度および信号速度のさらなる増大に伴って、信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉が問題視されつつある。このことは、例えば、非特許文献1(Myoung Joon Choi, Vishram S. Pandit, and Woong Hwan Ryu, “Controllable Parameters Identification for High Speed Channel through Signal−Power Integrity Combined Analysis”, Proceedings of 58th Electronic Components and Technology Conference, 658 (2008))や非特許文献2(Ryuichi Oikawa, “A Low−cost Wire−bonding Package Design with Package Built−in Three−dimensional Distributed Matching Circuit for over 5Gbps SerDes Applications”, Proceedings of 59th Electronic Components and Technology Conference, 1098 (2009))にも記されている。新たな問題として挙がってきたのは、電源ラインから信号ラインへのcommon modeノイズ伝播や、その反対の伝播信号による電源ラインへの直接ノイズ干渉などである。これらは、EMI(ElectroMagnetic Interference:電磁妨害)の原因となったり、信号−電源−信号と作用する正帰還系を構成することによってGbpsクラスの高速デバイスの動作不安定の原因となったりする。
【0011】
近年の高速メモリなどの同期型インターフェースの高速化は著しく、現在では転送速度が数Gbpsに達している。これは、かなり高速にSSOが発生することを意味する。また、同時に、周波数の上昇によって、信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉が増加することを意味する。
【0012】
SSO状態では、一度に大量の電流が同期して流れるので、信号伝送媒体内部において一度に同期して大きな相互作用が発生する。したがって、信号系と、電源系との両方を含んだ形で、例えば20GHzといった高周波領域までモデリングする必要が出てくる。加えて、高周波領域では電源・GNDを含むインターポーザなどの信号伝送媒体内部における3次元的な相互作用が急増するので、設計精度を上げようとするならば、3次元の電磁気相互作用をモデル化しなくてはならない。
【0013】
この目的を達成するためには、3次元のMaxwell方程式を、quasi−static近似を用いずに、直接解く必要がある。すなわち、いわゆるフルウェーブ電磁界解析が必要となる。しかしながら、LSI(Large Scale Integration)ダイにつながる全ての伝送媒体(電源供給源を含む)、すなわちインターポーザ、パッケージ、プリント基板の全てを一度に解析するためには、膨大な計算機リソースが必要となるため、おおよそ現実的ではない。
【0014】
そこで、例えば、回路全体を以下のように分割処理する。すなわち、高周波解析上クリティカルでない部分については、伝送路モデルやlumped(集中定数)モデルで近似する。高周波解析上クリティカルな箇所に対しては、3次元フルウェーブ電磁界解析を行う。最後に、得られた分割モデルをつなぎ合わせて全体のモデルを構成する。
【0015】
あるいは、伝送路やlumpedモデル近似で十分な精度が得られるかどうかが不明な場合には、回路全体を分割して、部分ごとに3次元フルウェーブ電磁界解析を行い、それぞれの結果をつなぎ合わせる、といった方法も取られる。
【0016】
ところが、この手続きの中で、3次元フルウェーブ電磁界解析モデルに特有の問題が発生する。通常のフルウェーブ電磁界解析では、ある小さな領域(「ポート」と呼ばれる)から電磁波を入射し、それに対する周波数応答を求める、という手続きが取られる。各ポートから電磁波を入射するには、電圧の基準点(「レファレンス」と呼ばれる)が必要である。このレファレンスは、ポートの直近にある導体が用いられる。もし、このレファレンスとなり得る導体が、ポートから十分近くに無い場合は、入射電磁波が広がっていることを意味する。すなわち、それは小さな領域から電磁波を入射したことにならない。これでは、所望の点から見た周波数応答を正しく計算できない。
【0017】
したがって、3次元フルウェーブ電磁界解析で得られたモデルは、信号に対しても、電源に対しても、明示的なレファレンスを持たない。なぜなら、得られるのはレファレンスに“対する”応答だからであるレファレンスたるGNDそのものの周波数応答は得られない。なお、通常、3次元フルウェーブ電磁解析のモデルは、S−parameterなどのネットワークパラメータの形で得られる。
【0018】
いまここで、計算機リソースの制限から、信号系のみと、電源系のみとを、GNDをレファレンスとしてそれぞれ独立に解いたとする。この2つのモデルを組み合わせて全体のモデルを構成し、SSO解析を行うと、GNDを2重に含んでしまう。
【0019】
図1は、同じ回路について異なる条件で信号電圧波形を求めた結果を示すグラフ群である。図1(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(c)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(d)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(a)〜図1(d)の各グラフは、それぞれのモデルにLSIの出力回路と接続してSSO解析を行い、信号電圧波形を求めた結果である。また、図1(a)〜図1(d)の各グラフにおいて、第1、第2の波形はそれぞれ異なるアイパターンであり、信号速度は1.6Gbpsである。
【0020】
図1(a)〜図1(d)を比較すると、モデルが正確であるかどうかで、出力信号波形がかなり異なることが分かる。また、信号波形を採取する場所・信号位置によってもかなり様子が異なることが分かる。
【0021】
ここで注意すべきは、信号系モデルと、電源系モデルとを独立に作成して単純合成した場合に、信号劣化が著しいことである。これこそが、GND(リターンパス)を正確にモデリングしていないことによる影響である。
【0022】
このまま設計すると、余分なマージンを課す必要が生じ、その結果、半導体部品だけでなく、システム全体としての製造コストを増加させてしまうことになる。
【0023】
したがって、例えば20GHz以上といった高周波特性を精度よく表現しつつも、GbpsデバイスのSSO/SSN解析を現実的な時間および計算機リソースで行える、回路のモデル化手段が必要とされる。より具体的には、モデルの分割・合成を行っても、リターンパス不整合に基づく矛盾が起きないモデル生成方法が必要である。
【0024】
基本的に、プリント配線板のような2次元のスタックアップ構成のモデルに限られてはしまうが、リターンパス不整合に基づく矛盾が発生しにくい方法が特許文献2に開示されているので説明する。
【0025】
図2Aは、特許文献2に開示されているSSO/SSNモデル化方法および信号波形の計算方法を示すフローチャートである。図2Bは、特許文献2に開示されている1信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。図2Cは、特許文献2に開示されている全信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。図2Dは、特許文献2に開示されている電源・GND系モデルの解析モデルの構成を示す回路図である。
【0026】
図2Aのフローチャートでは、最初に、信号線およびそのリターンパス(電源またはGND)を伝送路(transmission line)としてモデル化する。このとき、信号線直下にあるリターンパスも、信号線に沿った伝送路としてモデル化するのがポイントである。こうすることで、リターンパスが明示的にモデル中に現れるので、他のモデルと接続する際にリターンパス不整合による矛盾が発生しにくい。図2Bの回路図には、GNDの他にGND1が用意されていることに注目したい。
【0027】
次に、信号モデルを使って回路シミュレータでSSO解析を行うと、リターンパスである電源・GNDに誘起する電荷分布を信号線に沿って求めることが出来る。
【0028】
電源・GNDに誘起する電荷分布が求められたら、次に、その値を使って電源・GNDプレーンの解析を行う。電源・GNDプレーンもまた図2Dに示すように伝送路モデルを使ってメッシュ上に形成される。先に求めた電荷分布をこの伝送路メッシュに割り当てて電源ノイズの解析を行うと、SSO状態での電源・GNDプレーン上での電圧分布と電圧波形とが得られる。
【0029】
信号線は、電源・GNDをレファレンスとしているわけであるから、電源・GNDプレーン上での電圧分布および電圧波形を信号線の電圧波形に足し合わせれば、最終的に求めるSSO信号波形が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2006−244325号公報
【特許文献2】米国特許第6564355号明細書
【特許文献3】特開2009−211333号公報
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Myoung Joon Choi, Vishram S. Pandit, and Woong Hwan Ryu, “Controllable Parameters Identification for High Speed Channel through Signal−Power Integrity Combined Analysis”, Proceedings of 58th Electronic Components and Technology Conference, 658 (2008)
【非特許文献2】Ryuichi Oikawa, “A Low−cost Wire−bonding Package Design with Package Built−in Three−dimensional Distributed Matching Circuit for over 5Gbps SerDes Applications”, Proceedings of 59th Electronic Components and Technology Conference, 1098 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
特許文献2の方法では、リターンパスが明示的に生成されるため、モデルの分割・合成に伴うリターンパスの不整合に基づく矛盾が起きにくいという技術的要求が満たされている。しかし、前述のように、伝送線路モデルベースであるため、基本的にプリント配線板のような2次元構造の積み重ね、いわゆる2.5次元構造にしか適用できない。一般的な3次元構造に適用するのはきわめて困難である。また、伝送路メッシュベースであるため、10GHzを超える高周波解析には不向きである。
【0033】
しかるに、近年の半導体デバイスの出力信号速度・信号密度の上昇に伴い、パッケージ・インターポーザ、あるいはプリント配線板中の信号伝送媒体内部における3次元的な相互作用が高周波領域で急増している。また、信号伝送媒体内部における信号系および電源系の直接干渉が問題となっているのも前述の通りである。
【0034】
非特許文献1でも、特許文献2と類似する方法に基づいた解析が行われている。伝送路モデルに基づいた信号線と、電源・GNDプレーンの2時限電磁界解析を行うFDTD(Finite−Difference Time−Domain:時間領域差分)法に基づいた2.5次元の電磁界シミュレータを使用して信号伝送波形の計算を行っている。ただし、電磁界シミュレータの中で波形計算まで行わなくてはならないので、モデルだけを取り出すことは出来ない。3次元的な相互作用、ならびに、信号系および電源系の直接干渉のモデル化という点では、非特許文献1の方法も特許文献2の方法と同じ問題を抱えている。
【0035】
これらの問題を解決するには、以下の2つの条件が必要である。すなわち、
(1)一般的な構造を高周波帯まで精度よく表現できる3次元フルウェーブ解析によるS、Y、Zパラメータなどのネットワークパラメータに基づいたモデルであること。
(2)モデルの分割・合成を行っても、リターンパス不整合に基づく矛盾が起きないよう、GNDプレーンなどの信号リターンパスが明示的に分離されていること。
【課題を解決するための手段】
【0036】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0037】
本発明の解析用モデル生成装置は、信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する装置である。本発明の解析用モデル生成装置は、パラメータ取得部と、パラメータ変換部と、調和平均演算部と、周波数応答関数演算部と、リターンパス分離部と、モデルデータ生成部とを具備する。ここで、パラメータ取得部は、信号系回路および電源系回路のそれぞれについて、所定形式のパラメータを取得する。パラメータ変換部は、所定形式のパラメータをZパラメータに変換する。調和平均演算部は、解析の対称となる全ての、信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、Zパラメータに基づいて演算する。周波数応答関数演算部は、調和平均の周波数応答関数を演算する。リターンパス分離部は、Zパラメータから周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離する。モデルデータ生成部は、任意の回路の、リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成する。
【0038】
本発明の解析用モデル生成方法は、信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する方法である。本発明の解析用モデル生成方法は、(a)信号系回路および電源系回路をそれぞれモデル化した、所定形式のパラメータを取得するステップと、(b)所定形式のパラメータをZパラメータに変換するステップと、(c)解析の対称となる全ての、信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、Zパラメータに基づいて演算するステップと、(d)調和平均の周波数応答関数を演算するステップと、(e)Zパラメータから周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するステップと、(f)任意の回路の、リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、Gbps領域におけるSSO/SSN解析のため、3次元フルウェーブ解析によるネットワークパラメータからリターンパス(GND)を明示的に分離する手段を提供するものである。明示的なGNDを備えるので、モデル分割や他のモデルとの合成を、リターンパス不整合に基づく矛盾が生じないように行うことができる。また、3次元フルウェーブ解析によるネットワークパラメータを使用するため、信号伝送媒体内部における信号系および電源系の直正干渉効果も、高周波帯まで正確に取り入れることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、同じ回路について異なる条件で信号電圧波形を求めた結果を示すグラフ群である。図1(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(c)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(d)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、特許文献2に開示されているSSO/SSNモデル化方法および信号波形の計算方法を示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、特許文献2に開示されている1信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。
【図2C】図2Cは、特許文献2に開示されている全信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。
【図2D】図2Dは、特許文献2に開示されている電源・GND系モデルの解析モデルの構成を示す回路図である。
【図3】図3は、本発明の解析用モデル生成方法の各ステップを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法においてインピーダンスマトリクスからリターンパスを分離する原理を示す回路図群である。図4(a)は、もとのインピーダンスマトリクスを概略的に示す回路図である。図4(b)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まないインピーダンスマトリクスとの関係を概略的に示す回路図である。図4(c)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まない電源系モデルおよび信号系モデルとの関係を概略的に示す回路図である。
【図5】図5は、出力デバイスと、出力デバイスに接続された電源とを含む信号線路をモデル化した回路モデルを示す回路図群である。図5(a)は、全体の回路を分割した一部である分割モデルを示す回路図である。図5(b)は、図5(a)のモデルを、実効インピーダンスを用いた表現に変形したモデルを示す回路図である。図5(c)は、図5(b)のモデルに加えて複数の信号線路をも示す回路図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用した計算結果および従来技術との比較結果を示すグラフ群である。図6(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(c)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(d)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(e)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(f)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、インターポーザを3次元フルウェーブ解析した結果と、同じインターポーザのSパラメータをSPICE等価回路へ変換した結果との比較を示すグラフ群である。図7(a)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(b)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(c)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(d)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(e)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(f)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(g)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(h)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(i)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(j)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(k)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(l)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(m)は、インターポーザの半導体チップ実装面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(n)は、インターポーザの基板への接続面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。なお、図7(a)〜図7(n)において、実線のグラフは3次元フルウェーブ解析の結果を示し、破線のグラフはSPICE等価回路へ変換した結果を示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の構成を示すブロック図群である。図8(a)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の物理的な構成を示すブロック図である。図8(b)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付図面を参照して、本発明による解析用モデル生成方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0042】
(実施形態)
本発明の実施形態による解析用モデル生成方法では、解析対象である回路を、一旦、信号系回路部や電源系回路部などに分割する。そして、分割された回路部のそれぞれについて、シミュレーション用モデルを考える。これらのシミュレーション用モデルを、以下、分割モデルと呼ぶ。これらの分割モデルには、信号系回路部に対応する信号系モデルや、電源系回路部に対応する電源系モデルなどが含まれる。
【0043】
図3は、本発明の解析用モデル生成方法の各ステップを示すフローチャートである。図3のフローチャートは、第1〜第6のステップS1〜S6を具備している。第1〜第6のステップS1〜S6は、この順番に実行される。図3のフローチャートを開始すると、まず、第1のステップS1が実行される。
【0044】
第1のステップS1では、信号と電源を含む分割モデルのそれぞれについて、N−portネットワークパラメータを用意する。このパラメータは、Sパラメータ、Yパラメータ、ZパラメータまたはTパラメータなどが用いられる。また、このパラメータは、ベクトル型ネットワークアナライザなどを用いた測定値であることがより好ましいが、電磁界シミュレータで作成するなどした解析値であっても構わない。第1のステップS1の次には、第2のステップS2に進む。
【0045】
第2のステップS2では、N−portパラメータの解析値または測定値を、インピーダンスマトリクス形式のZパラメータに変換する。例えば、SパラメータからZパラメータに変換する場合は、以下の式1を用いればよいことが知られている。
Z=(I−S)−1(I+S) ……(1)
ここで、ZはZパラメータを表す行列、すなわちインピーダンスマトリクスであり、Iは単位行列であり、SはSパラメータを表す行列である。第2のステップS2の次には、第3のステップS3に進む。
【0046】
第3のステップS3では、信号−電源間相互インピーダンスの調和平均を求める。ここで、調和平均は、以下の式2を用いることで求められることが知られている。
ZG=n/(Σ(1/ZloopVSi)) ……(2)
ここで、ZGは信号−電源間相互インピーダンスの調和平均であり、nは信号系モデルおよび電源系モデルの総数であり、ZloopVSiは分割モデルのそれぞれにおける信号−電源間の相互インピーダンスである。
【0047】
なお、分割モデルの信号−電源間の相互インピーダンスは、入力端子−出力端子間のループインピーダンスであり、以下の式3のように定義されるものとする。
ZloopVSi=ZVinSi−ZVinSi’+ZVoutSi’−ZVoutSi ……(3)
ここで、添え字Vinは電源系の入力側ポートを示し、Siは信号系の入力側ポートを示し、添え字Voutは電源系の出力側ポートを示しSi’は信号系の出力側ポートを示す。ただし、「入力側」および「出力側」はあくまでも便宜上の名前であって、互いに反対側であること以外の意味を持たない。第3のステップS3の次には、第4のステップS4に進む。
【0048】
第4のステップS4では、第3のステップS3で得られた調和平均インピーダンスZGの周波数応答関数を生成する。ここで、リターンパスはレファレンスであるので、本来、それ自体の容量は意味をなさないことに注目する。ただし、他の回路部に対する容量であればその意味を持つことは言うまでもない。そこで、この調和平均インピーダンスZGを、容量を持たない形で、周波数の関数としてモデル化する。例えば、誘電損失は電源系モデルおよび信号系モデルに持たせることにして、表皮効果だけ考慮すると、調和平均インピーダンスは、以下の式4のように表される。
ZG(ω)=a+b+√ω+jcω ……(4)
ここで、ZG(ω)はリターンパスとしてのGNDのインピーダンスの周波数応答関数を示し、ωは角周波数を示し、a、b、cは任意の定数を示す。なお、定数a、b、cは、最小二乗法などのパラメータフィッティングで求めればよい。こうして得られた周波数関数ZG(ω)は、SSO/SSN解析におけるリターンパス、すなわちGNDのモデルに他ならない。第4のステップS4の次には、第5のステップS5に進む。
【0049】
第5のステップS5では、もとのインピーダンスマトリクスからZG(ω)を差し引くことで、リターンパスを分離する。図4は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法においてインピーダンスマトリクスからリターンパスを分離する原理を示す回路図群である。図4(a)は、もとのインピーダンスマトリクスを概略的に示す回路図である。図4(b)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まないインピーダンスマトリクスとの関係を概略的に示す回路図である。図4(c)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まない電源系モデルおよび信号系モデルとの関係を概略的に示す回路図である。
【0050】
図4(a)の回路図では、もとのインピーダンスマトリクスの一要素Zij(ω)を、二端子対回路として表している。ただし、入力端子の一方と、出力端子の一方とは、レファレンスとしてのGNDとして機能するので、短絡しており、要素Zin(ω)は実際には三端子素子として表されている。
【0051】
図4(b)の回路図では、図4(a)のインピーダンスマトリクスZij(ω)からZG(ω)を差し引いたZ’ij(ω)を表している。ここで、差し引かれたZG(ω)は、リターンパスの入力側端子におけるZGin(ω)と、リターンパスの出力側端子におけるZGout(ω)とに分解されて表されている。
【0052】
ZG(ω)の、ZGin(ω)およびZGout(ω)への分解は、以下の式5a〜5fのように行う。
ZG(ω)=ZGin(ω)+ZGout(ω) ……(5a)
ZGin(ω)=a1+b1√ω+jc1ω ……(5b)
ZGout(ω)=a2+b2√ω+jc2ω ……(5c)
a=a1+a2 ……(5d)
b=b1+b2 ……(5e)
c=c1+c2 ……(5f)
ここで、a、b、cは、図4で用いた定数である。
【0053】
信号伝送率、正確には挿入損失(insersion loss)は、伝送路に沿ったインピーダンスの積分値で決まる。したがって、ZG(ω)をどう分解するか、すなわちa1およびa2、b1およびb2、c1およびc2の比率は、任意に決めて構わない。言い換えれば、ZG(ω)の分解の仕方によって、入力側と出力側の信号反射比率は変わるが、その総量は変わらない。したがって、この分解はある意味で形式的な操作に過ぎない。
【0054】
入力側および出力側の分割比を求めるには、例えば、以下の式6のように行えばよい。
ZGin:ZGout=n/Σ(1/(ZVinSi−ZVinSi’)):n/Σ(1/(ZVoutSi’−ZVoutSi)) ……(6)
ここで、等号右側の、分割比を表す“:”記号の左側および右側は、式3の入力側および出力側のそれぞれの調和平均である。
【0055】
最終的に、インピーダンスマトリクスの分割式は、以下の式7a〜7cのように表される。
Z’ij(ω)=Zij(ω)−ZGin(ω) ……(7a)
Z’ij(ω)=Zij(ω)−ZGout(ω) ……(7b)
Z’ij(ω)=Zij(ω) ……(7c)
ここで、添え字i、jが入力側端子に対応する場合には式7aを用い、添え字i、jが出力側端子に対応する場合には式7bを用い、その他の場合には式7cを用いる。
【0056】
上記の式7a〜7cは、リターンパスとしてのGND以外のすべて、すなわち信号系モデルおよび電源系モデルを含んでいる。しかし、もとのインピーダンスマトリクスからGNDのインピーダンスを差し引く前に、GNDのインピーダンス以外にも電源のインピーダンスをも求めておくことも可能である。この場合、図4(c)のように、もとのインピーダンスマトリクスは、信号系、電源系、GNDの3種類に分解される。
【0057】
以上に説明したように、本発明によれば、GNDを明示的に持たないN−portパラメータから、リターンパスとしての明示的なGNDを分離することが出来る。第5のステップS5の次には、第6のステップS6に進む。
【0058】
第6のステップS6では、Zパラメータを、Sパラメータ、Yパラメータ、Tパラメータなど他のパラメータに変換し、または、LCRK等価回路を生成する。
【0059】
ここで、LCRK等価回路を求めるだけならば、入力側から出力側へ至る積分値だけが分かればよいので、GNDのモデルを入力側用と出力側用の2つに分解する必要がない。その場合は、入出力間のループインピーダンスで全てを表せば良い。具体的には、以下の式8a〜8cの計算を行う。
ZV=ZloopV−ZG ……(8a)
ZSij=ZloopSij−ZG ……(8b)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi)……(8c)
ここで、添え字Vは電源系を示し、添え字Sは信号系を示す。
【0060】
なお、ネットワークパラメータでは不都合がある場合には、これにYパラメータを加えてラダー分割するなどして、広帯域モデルを生成してもよい。第6のステップS6が完了すると、本発明による解析用モデル生成方法も完了する。
【0061】
次に、信号−電源間相互インピーダンスからSSO/SSN解析におけるリターンパスを求めることが出来る理由について説明する。
【0062】
図5は、出力デバイスと、出力デバイスに接続された電源とを含む信号線路をモデル化した回路モデルを示す回路図群である。図5(a)は、全体の回路を分割した一部である分割モデルを示す回路図である。
【0063】
図5(a)の回路モデルは、出力デバイスと、信号線路と、電源VDDと、GNDとしての電源VSSと、レファレンスとしての外部GNDとを具備している。
【0064】
図5(a)の回路モデルにおいて、信号線路は、出力デバイスの出力側端部に接続されている。電源VDDは、出力デバイスの電源側端部に接続されている。GNDとしての電源VSSは、出力デバイスのGND側端部に接続されている。
【0065】
図5(a)の分割モデルにおいて、信号線路が伝送する信号を、一般化して第i信号と呼ぶ。
【0066】
図5(a)の回路モデルには、3つの電流経路がある。第1の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、電源VDDおよび電源VSSを通る。第2の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、電源VDDおよび信号線路を通る。第3の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、信号線路およびGNDとしての電源VSSを通る。
【0067】
外部GNDからみると、1つの第i信号を司る回路の分割モデルは、3つの電流経路にそれぞれ対応する3つの自己インピーダンスZV0i、ZG0i、ZS0iと、3つの相互インピーダンスZVGi、ZVSi、ZSGiとを具備する。ここで、自己インピーダンスZV0iは、出力デバイスモデルの電源側端部に接続されている。自己インピーダンスZG0iは、出力デバイスモデルの出力側端部に接続されている。自己インピーダンスZS0iは、出力デバイスモデルのGND側端部に接続されている。相互インピーダンスZVGiは、出力デバイスモデルの電源側端部およびGND側端部に対応する。相互インピーダンスZVSiは、出力デバイスモデルの電源側端部および出力側端部に対応する。相互インピーダンスZSGiは、出力デバイスモデルの出力側端部およびGND側端部に対応する。
【0068】
ここで、3つの相互インピーダンスZVGi、ZVSi、ZSGiの分割比をそれぞれx、y、zとする。信号、電源、GNDのそれぞれの実効インピーダンスZVi、ZGi、ZSiは、以下の式9a〜9cのように表現できる。
ZVi=ZV0i−2xZVGi=ZV0i−2yZVSi ……(9a)
ZGi=ZG0i−2(1−x)ZVGi=ZG0i−2(1−z)ZSGi ……(9b)
ZSi=ZS0i−2(1−x)ZVGi=ZS0i−2zZSGi ……(9c)
【0069】
図5(b)は、図5(a)のモデルを、実効インピーダンスを用いた表現に変形したモデルを示す回路図である。
【0070】
数式を簡略化して説明を簡単にするために、式9a〜9cを含め、以降、入出力間のループインピーダンスで表現することにする。入出力間のループインピーダンスの定義は以下の式10のとおりである。
Zin−outij=Zij−Zij’+Zi’j’−Zi’j ……(10)
ここで、添え字i、j、i’、j’は、1〜N/2の整数であり、添え字i’は添え字iに対応するポートとは反対側のポートを示し、添え字j’は添え字jに対応するポートとは反対側のポートを示す。
【0071】
フルウェーブ電磁界解析で求められるインピーダンスは、GNDとしての電源VSSを規準にしたインピーダンスである。これを、肩添え字loopをつけて表記すると以下の式11a〜11cのようになる。
ZSi+ZGi=ZloopSi ……(11a)
ZVi+ZGi=ZloopVi ……(11b)
ZVi+ZSi=ZloopVi+ZloopSi−2ZloopVSi ……(11c)
【0072】
式11a〜11cを解くと、以下の式12が得られる。
ZGi=ZloopVSi (12)
【0073】
SSO/SSN解析を行うために、n本の信号線路に接続された出力デバイスモデルに同じ電源VDDおよび同じGNDとしての電源VSSを共有させる。図5(c)は、図5(b)のモデルに加えて複数の信号線路をも示す回路図である。このとき、リターン電流はインピーダンスの低いパスを優先的に流れるから、リターンパスとしての共通のGNDのインピーダンスは、n個のリターンパスインピーダンスの並列接続として捉えることが可能である。したがって、共通のGNDのインピーダンスは、以下の式13のように、調和平均で近似可能である。
ZG≒n/Σ(1/ZGi)=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(13)
ここで、ZGは、共通のGNDのインピーダンスを示す。
【0074】
以上をまとめると、以下の式14a〜14cが得られる。
ZV=ZloopV−ZG ……(14a)
ZSi=ZloopSi ……(14b)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(14c)
【0075】
さらに、複数の信号間の結合(クロストーク)を考慮に入れても、単に基準インピーダンスが加算されるだけであるから、同じ関係が成り立ち、以下の式14a14d14cとしてまとめることが出来る。
ZV=ZloopV−ZG ……(14a)
ZSij=ZloopSij ……(14d)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(14c)
すなわち、式8a〜8cが得られる。
【0076】
図6は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用した計算結果および従来技術との比較結果を示すグラフ群である。図6(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(c)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(d)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(e)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(f)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【0077】
図6(a)、図6(b)、図6(d)、図6(e)は、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)と同じである。本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を用いた図(c)、図6(f)が、厳密解である図6(a)、図6(d)によく一致していることがわかる。
【0078】
なお、前述のように、N−portネットワークパラメータを使用することで回路シミュレーションに不都合が生じる場合は、式8a〜8cに基づいてリターンパスとしてのGNDを明示的に含んだ形でLCRKのSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)等価回路などに変換することも可能である。
【0079】
図7は、インターポーザを3次元フルウェーブ解析した結果と、同じインターポーザのSパラメータをSPICE等価回路へ変換した結果との比較を示すグラフ群である。図7(a)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(b)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(c)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(d)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(e)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(f)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(g)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(h)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(i)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(j)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(k)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(l)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(m)は、インターポーザの半導体チップ実装面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(n)は、インターポーザの基板への接続面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。なお、図7(a)〜図7(n)において、実線のグラフは3次元フルウェーブ解析の結果を示し、破線のグラフはSPICE等価回路へ変換した結果を示す。
【0080】
図7の例では、SPICE等価回路はおおむね20GHzまでの周波数帯域でもとのSパラメータを再現できているので、そのままSパラメータの代わりとして使うことが出来る。一般的には、等価回路のモデリング帯域、すなわちもとのネットワークパラメータを十分によく再現できる周波数範囲、は信号速度などの条件に合わせて設定すればよい。
【0081】
本発明によれば、モデル化される対象の、2.5次元、3次元などといった構造にまったく依存せずに、リターンパスとしてのGNDを明示的に含むSSO/SSN解析用広帯域モデルが得られる。その結果得られるモデルは、他のモデルとの分割・合成を安全に行うことが可能である。
【0082】
また、電磁界シミュレータの直接出力結果あるいは実測値であるN−portネットワークパラメータをマトリクスのまま直接分解するので、原理的に最も広帯域かつ高精度である。信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉効果も、高周波帯まで正確に取り入れることが可能となる。
【0083】
本発明の実施形態によって得られたネットワークパラメータモデルは、必要に応じて、LCRKで構成されるSPICE等価回路に変換することも可能である。
【0084】
本発明の実施形態による解析用モデル生成方法のアルゴリズムに基づいて、コンピュータ上で実行可能なプログラムを生成することも可能である。このプログラムを、解析用モデル生成プログラムと呼ぶ。本発明の実施形態による解析用モデル生成プログラムを内蔵した装置は、SSO/SSN解析用モデルを自動的に生成するので、これを解析用モデル生成装置と呼ぶ。
【0085】
図8は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の構成を示すブロック図群である。図8(a)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の物理的な構成を示すブロック図である。図8(b)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0086】
図8(a)のブロック図において、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置は、バス11と、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15とを具備している。バス11は、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15に接続されている。バス11は、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15との間でデータを伝送する。入力部12は、外部からデータを入力する。出力部13は、データを外部へ出力する。CPU14は、入力されたデータに基づいて、解析用モデル生成プログラムを実行し、出力すべき解析用モデルデータを生成する。メモリ15は、入力されたデータと、解析用モデル生成プログラムと、生成された解析用モデルデータとを格納する。
【0087】
図8(b)のブロック図において、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置は、バス11と、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とを具備している。ここで、バス11と、入力部12と、出力部13とは、図8(a)と同じものである。また、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とは、図8(a)におけるCPU14およびメモリ15を機能別に分離して表したものである。
【0088】
バス11は、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とに接続されている。
【0089】
バス11は、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26との間でデータを伝送する。入力部12は、外部からデータを入力する。パラメータ取得部21は、図3のフローチャートの第1のステップS1を実行する。パラメータ変換部22は、図3のフローチャートの第2のステップS2を実行する。調和平均演算部23は、図3のフローチャートの第3のステップS3を実行する。周波数応答関数演算部24は、図3のフローチャートの第4のステップS4を実行する。リターンパス分離部25は、図3のフローチャートの第5のステップS5を実行する。モデルデータ生成部26は、図3のフローチャートの第6のステップS6を実行する。出力部13は、データを外部へ出力する。
【符号の説明】
【0090】
11 バス
12 入力部
13 出力部
14 CPU
15 メモリ
21 パラメータ取得部
22 パラメータ変換部
23 調和平均演算部
24 周波数応答関数演算部
25 リターンパス分離部
26 モデルデータ生成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析用モデル生成方法と、この解析用モデル生成方法を用いる解析用モデル生成装置とに係り、特に、電源系回路部、GND(GrouND:グランド)系回路部、信号系回路部を有する電気回路の解析用モデル生成方法と、この解析用モデル生成方法を用いる解析用モデル生成装置とに係る。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高速化・多信号化により、SSO(Simultaneous Switching Output:同時スイッチング出力)によるSSN(Simultaneous Switching Noise:同時スイッチングノイズ)が従前より問題となっている。
【0003】
SSNとは、多くの出力素子が同時にON/OFFすることにより、一度に大量の電流が電源・GNDに流れ、その電圧を大きく変動させる現象である。その結果として、出力信号波形が変調を受け、受信側でタイミングエラーや閾値エラーが起きてしまう。
【0004】
以前は、計算機や回路シミュレータの能力にも限界があり、SSOやSSNの発生時における波形を少ない計算量で予測するためには、特許文献1(特開2006−244325号公報)に開示されている方法が用いられていた。この方法では、先ず、簡易的に、電源系と信号系とを分けて計算する。その後、それぞれの計算結果を利用して、最終的な信号波形を予測する。
【0005】
例えば、特許文献1では、まず、I/O(In/Out)素子のスイッチング電流モデルを何らかの方法で作成する。次に、このモデルを使って、電源系のみの解析を行って電源電圧波形を求める。最後に、この電圧波形をI/O素子に与えて信号系だけの解析を行って出力波形を求める。
【0006】
しかしながら、電源系の解析に必要なI/O素子のスイッチング電流波形は、後で行う信号系の解析を行わなければ正確に求めることが出来ない。さらに、信号波形の計算を行うためには、電源系解析から得られるI/O動作時の電源電圧波形が必要である。つまり、別々に解析される波形が、いわゆる「鶏と卵」の関係となる。
【0007】
半導体素子の動作速度が十分に遅い間は、電源系と信号系を独立に解析してその結果を利用しあっても、それほど悪い近似にはならなかった。しかし、半導体デバイスの動作速度が上がってくると、つじつまが合わなくなる。
【0008】
この問題を解決するためには、基本的に、信号系と、電源系とを、同時に解析する必要がある。そのためには、例えば、特許文献2(米国特許第6564355号明細書)に開示された方法を使っても良い。この方法では、先ず、信号線とそのレファレンスである電源プレーン・GNDプレーンの双方を伝送線路モデルで記述して、同時出力動作の解析を行い、電源プレーン・GND上の電荷分布を計算する。次に、得られた電荷分布を使って、電源プレーン・GNDプレーン上の電圧波形を計算する。最後に、信号線路の電圧波形と、電源プレーン・GNDプレーン上の電圧波形を重ね合わせる。すなわち、信号のレファレンスが電源・GNDなので、電源プレーン・GNDプレーンの電圧波形を重ね合わせることになる。
【0009】
また、別の提案としては、特許文献3(特開2009−211333号公報)には、簡易的な方法が開示されている。この方法では、信号系のモデルと、電源系のモデルとを、仮定に基づいて作成する結合素子によって結合する。
【0010】
ところが、ここ数年になって、信号密度および信号速度のさらなる増大に伴って、信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉が問題視されつつある。このことは、例えば、非特許文献1(Myoung Joon Choi, Vishram S. Pandit, and Woong Hwan Ryu, “Controllable Parameters Identification for High Speed Channel through Signal−Power Integrity Combined Analysis”, Proceedings of 58th Electronic Components and Technology Conference, 658 (2008))や非特許文献2(Ryuichi Oikawa, “A Low−cost Wire−bonding Package Design with Package Built−in Three−dimensional Distributed Matching Circuit for over 5Gbps SerDes Applications”, Proceedings of 59th Electronic Components and Technology Conference, 1098 (2009))にも記されている。新たな問題として挙がってきたのは、電源ラインから信号ラインへのcommon modeノイズ伝播や、その反対の伝播信号による電源ラインへの直接ノイズ干渉などである。これらは、EMI(ElectroMagnetic Interference:電磁妨害)の原因となったり、信号−電源−信号と作用する正帰還系を構成することによってGbpsクラスの高速デバイスの動作不安定の原因となったりする。
【0011】
近年の高速メモリなどの同期型インターフェースの高速化は著しく、現在では転送速度が数Gbpsに達している。これは、かなり高速にSSOが発生することを意味する。また、同時に、周波数の上昇によって、信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉が増加することを意味する。
【0012】
SSO状態では、一度に大量の電流が同期して流れるので、信号伝送媒体内部において一度に同期して大きな相互作用が発生する。したがって、信号系と、電源系との両方を含んだ形で、例えば20GHzといった高周波領域までモデリングする必要が出てくる。加えて、高周波領域では電源・GNDを含むインターポーザなどの信号伝送媒体内部における3次元的な相互作用が急増するので、設計精度を上げようとするならば、3次元の電磁気相互作用をモデル化しなくてはならない。
【0013】
この目的を達成するためには、3次元のMaxwell方程式を、quasi−static近似を用いずに、直接解く必要がある。すなわち、いわゆるフルウェーブ電磁界解析が必要となる。しかしながら、LSI(Large Scale Integration)ダイにつながる全ての伝送媒体(電源供給源を含む)、すなわちインターポーザ、パッケージ、プリント基板の全てを一度に解析するためには、膨大な計算機リソースが必要となるため、おおよそ現実的ではない。
【0014】
そこで、例えば、回路全体を以下のように分割処理する。すなわち、高周波解析上クリティカルでない部分については、伝送路モデルやlumped(集中定数)モデルで近似する。高周波解析上クリティカルな箇所に対しては、3次元フルウェーブ電磁界解析を行う。最後に、得られた分割モデルをつなぎ合わせて全体のモデルを構成する。
【0015】
あるいは、伝送路やlumpedモデル近似で十分な精度が得られるかどうかが不明な場合には、回路全体を分割して、部分ごとに3次元フルウェーブ電磁界解析を行い、それぞれの結果をつなぎ合わせる、といった方法も取られる。
【0016】
ところが、この手続きの中で、3次元フルウェーブ電磁界解析モデルに特有の問題が発生する。通常のフルウェーブ電磁界解析では、ある小さな領域(「ポート」と呼ばれる)から電磁波を入射し、それに対する周波数応答を求める、という手続きが取られる。各ポートから電磁波を入射するには、電圧の基準点(「レファレンス」と呼ばれる)が必要である。このレファレンスは、ポートの直近にある導体が用いられる。もし、このレファレンスとなり得る導体が、ポートから十分近くに無い場合は、入射電磁波が広がっていることを意味する。すなわち、それは小さな領域から電磁波を入射したことにならない。これでは、所望の点から見た周波数応答を正しく計算できない。
【0017】
したがって、3次元フルウェーブ電磁界解析で得られたモデルは、信号に対しても、電源に対しても、明示的なレファレンスを持たない。なぜなら、得られるのはレファレンスに“対する”応答だからであるレファレンスたるGNDそのものの周波数応答は得られない。なお、通常、3次元フルウェーブ電磁解析のモデルは、S−parameterなどのネットワークパラメータの形で得られる。
【0018】
いまここで、計算機リソースの制限から、信号系のみと、電源系のみとを、GNDをレファレンスとしてそれぞれ独立に解いたとする。この2つのモデルを組み合わせて全体のモデルを構成し、SSO解析を行うと、GNDを2重に含んでしまう。
【0019】
図1は、同じ回路について異なる条件で信号電圧波形を求めた結果を示すグラフ群である。図1(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(c)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(d)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(a)〜図1(d)の各グラフは、それぞれのモデルにLSIの出力回路と接続してSSO解析を行い、信号電圧波形を求めた結果である。また、図1(a)〜図1(d)の各グラフにおいて、第1、第2の波形はそれぞれ異なるアイパターンであり、信号速度は1.6Gbpsである。
【0020】
図1(a)〜図1(d)を比較すると、モデルが正確であるかどうかで、出力信号波形がかなり異なることが分かる。また、信号波形を採取する場所・信号位置によってもかなり様子が異なることが分かる。
【0021】
ここで注意すべきは、信号系モデルと、電源系モデルとを独立に作成して単純合成した場合に、信号劣化が著しいことである。これこそが、GND(リターンパス)を正確にモデリングしていないことによる影響である。
【0022】
このまま設計すると、余分なマージンを課す必要が生じ、その結果、半導体部品だけでなく、システム全体としての製造コストを増加させてしまうことになる。
【0023】
したがって、例えば20GHz以上といった高周波特性を精度よく表現しつつも、GbpsデバイスのSSO/SSN解析を現実的な時間および計算機リソースで行える、回路のモデル化手段が必要とされる。より具体的には、モデルの分割・合成を行っても、リターンパス不整合に基づく矛盾が起きないモデル生成方法が必要である。
【0024】
基本的に、プリント配線板のような2次元のスタックアップ構成のモデルに限られてはしまうが、リターンパス不整合に基づく矛盾が発生しにくい方法が特許文献2に開示されているので説明する。
【0025】
図2Aは、特許文献2に開示されているSSO/SSNモデル化方法および信号波形の計算方法を示すフローチャートである。図2Bは、特許文献2に開示されている1信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。図2Cは、特許文献2に開示されている全信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。図2Dは、特許文献2に開示されている電源・GND系モデルの解析モデルの構成を示す回路図である。
【0026】
図2Aのフローチャートでは、最初に、信号線およびそのリターンパス(電源またはGND)を伝送路(transmission line)としてモデル化する。このとき、信号線直下にあるリターンパスも、信号線に沿った伝送路としてモデル化するのがポイントである。こうすることで、リターンパスが明示的にモデル中に現れるので、他のモデルと接続する際にリターンパス不整合による矛盾が発生しにくい。図2Bの回路図には、GNDの他にGND1が用意されていることに注目したい。
【0027】
次に、信号モデルを使って回路シミュレータでSSO解析を行うと、リターンパスである電源・GNDに誘起する電荷分布を信号線に沿って求めることが出来る。
【0028】
電源・GNDに誘起する電荷分布が求められたら、次に、その値を使って電源・GNDプレーンの解析を行う。電源・GNDプレーンもまた図2Dに示すように伝送路モデルを使ってメッシュ上に形成される。先に求めた電荷分布をこの伝送路メッシュに割り当てて電源ノイズの解析を行うと、SSO状態での電源・GNDプレーン上での電圧分布と電圧波形とが得られる。
【0029】
信号線は、電源・GNDをレファレンスとしているわけであるから、電源・GNDプレーン上での電圧分布および電圧波形を信号線の電圧波形に足し合わせれば、最終的に求めるSSO信号波形が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2006−244325号公報
【特許文献2】米国特許第6564355号明細書
【特許文献3】特開2009−211333号公報
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Myoung Joon Choi, Vishram S. Pandit, and Woong Hwan Ryu, “Controllable Parameters Identification for High Speed Channel through Signal−Power Integrity Combined Analysis”, Proceedings of 58th Electronic Components and Technology Conference, 658 (2008)
【非特許文献2】Ryuichi Oikawa, “A Low−cost Wire−bonding Package Design with Package Built−in Three−dimensional Distributed Matching Circuit for over 5Gbps SerDes Applications”, Proceedings of 59th Electronic Components and Technology Conference, 1098 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
特許文献2の方法では、リターンパスが明示的に生成されるため、モデルの分割・合成に伴うリターンパスの不整合に基づく矛盾が起きにくいという技術的要求が満たされている。しかし、前述のように、伝送線路モデルベースであるため、基本的にプリント配線板のような2次元構造の積み重ね、いわゆる2.5次元構造にしか適用できない。一般的な3次元構造に適用するのはきわめて困難である。また、伝送路メッシュベースであるため、10GHzを超える高周波解析には不向きである。
【0033】
しかるに、近年の半導体デバイスの出力信号速度・信号密度の上昇に伴い、パッケージ・インターポーザ、あるいはプリント配線板中の信号伝送媒体内部における3次元的な相互作用が高周波領域で急増している。また、信号伝送媒体内部における信号系および電源系の直接干渉が問題となっているのも前述の通りである。
【0034】
非特許文献1でも、特許文献2と類似する方法に基づいた解析が行われている。伝送路モデルに基づいた信号線と、電源・GNDプレーンの2時限電磁界解析を行うFDTD(Finite−Difference Time−Domain:時間領域差分)法に基づいた2.5次元の電磁界シミュレータを使用して信号伝送波形の計算を行っている。ただし、電磁界シミュレータの中で波形計算まで行わなくてはならないので、モデルだけを取り出すことは出来ない。3次元的な相互作用、ならびに、信号系および電源系の直接干渉のモデル化という点では、非特許文献1の方法も特許文献2の方法と同じ問題を抱えている。
【0035】
これらの問題を解決するには、以下の2つの条件が必要である。すなわち、
(1)一般的な構造を高周波帯まで精度よく表現できる3次元フルウェーブ解析によるS、Y、Zパラメータなどのネットワークパラメータに基づいたモデルであること。
(2)モデルの分割・合成を行っても、リターンパス不整合に基づく矛盾が起きないよう、GNDプレーンなどの信号リターンパスが明示的に分離されていること。
【課題を解決するための手段】
【0036】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0037】
本発明の解析用モデル生成装置は、信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する装置である。本発明の解析用モデル生成装置は、パラメータ取得部と、パラメータ変換部と、調和平均演算部と、周波数応答関数演算部と、リターンパス分離部と、モデルデータ生成部とを具備する。ここで、パラメータ取得部は、信号系回路および電源系回路のそれぞれについて、所定形式のパラメータを取得する。パラメータ変換部は、所定形式のパラメータをZパラメータに変換する。調和平均演算部は、解析の対称となる全ての、信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、Zパラメータに基づいて演算する。周波数応答関数演算部は、調和平均の周波数応答関数を演算する。リターンパス分離部は、Zパラメータから周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離する。モデルデータ生成部は、任意の回路の、リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成する。
【0038】
本発明の解析用モデル生成方法は、信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する方法である。本発明の解析用モデル生成方法は、(a)信号系回路および電源系回路をそれぞれモデル化した、所定形式のパラメータを取得するステップと、(b)所定形式のパラメータをZパラメータに変換するステップと、(c)解析の対称となる全ての、信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、Zパラメータに基づいて演算するステップと、(d)調和平均の周波数応答関数を演算するステップと、(e)Zパラメータから周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するステップと、(f)任意の回路の、リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、Gbps領域におけるSSO/SSN解析のため、3次元フルウェーブ解析によるネットワークパラメータからリターンパス(GND)を明示的に分離する手段を提供するものである。明示的なGNDを備えるので、モデル分割や他のモデルとの合成を、リターンパス不整合に基づく矛盾が生じないように行うことができる。また、3次元フルウェーブ解析によるネットワークパラメータを使用するため、信号伝送媒体内部における信号系および電源系の直正干渉効果も、高周波帯まで正確に取り入れることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、同じ回路について異なる条件で信号電圧波形を求めた結果を示すグラフ群である。図1(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(c)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図1(d)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルに第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、特許文献2に開示されているSSO/SSNモデル化方法および信号波形の計算方法を示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、特許文献2に開示されている1信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。
【図2C】図2Cは、特許文献2に開示されている全信号分の信号系の解析モデルの構成例を示す回路図である。
【図2D】図2Dは、特許文献2に開示されている電源・GND系モデルの解析モデルの構成を示す回路図である。
【図3】図3は、本発明の解析用モデル生成方法の各ステップを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法においてインピーダンスマトリクスからリターンパスを分離する原理を示す回路図群である。図4(a)は、もとのインピーダンスマトリクスを概略的に示す回路図である。図4(b)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まないインピーダンスマトリクスとの関係を概略的に示す回路図である。図4(c)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まない電源系モデルおよび信号系モデルとの関係を概略的に示す回路図である。
【図5】図5は、出力デバイスと、出力デバイスに接続された電源とを含む信号線路をモデル化した回路モデルを示す回路図群である。図5(a)は、全体の回路を分割した一部である分割モデルを示す回路図である。図5(b)は、図5(a)のモデルを、実効インピーダンスを用いた表現に変形したモデルを示す回路図である。図5(c)は、図5(b)のモデルに加えて複数の信号線路をも示す回路図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用した計算結果および従来技術との比較結果を示すグラフ群である。図6(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(c)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(d)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(e)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(f)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、インターポーザを3次元フルウェーブ解析した結果と、同じインターポーザのSパラメータをSPICE等価回路へ変換した結果との比較を示すグラフ群である。図7(a)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(b)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(c)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(d)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(e)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(f)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(g)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(h)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(i)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(j)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(k)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(l)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(m)は、インターポーザの半導体チップ実装面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(n)は、インターポーザの基板への接続面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。なお、図7(a)〜図7(n)において、実線のグラフは3次元フルウェーブ解析の結果を示し、破線のグラフはSPICE等価回路へ変換した結果を示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の構成を示すブロック図群である。図8(a)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の物理的な構成を示すブロック図である。図8(b)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付図面を参照して、本発明による解析用モデル生成方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0042】
(実施形態)
本発明の実施形態による解析用モデル生成方法では、解析対象である回路を、一旦、信号系回路部や電源系回路部などに分割する。そして、分割された回路部のそれぞれについて、シミュレーション用モデルを考える。これらのシミュレーション用モデルを、以下、分割モデルと呼ぶ。これらの分割モデルには、信号系回路部に対応する信号系モデルや、電源系回路部に対応する電源系モデルなどが含まれる。
【0043】
図3は、本発明の解析用モデル生成方法の各ステップを示すフローチャートである。図3のフローチャートは、第1〜第6のステップS1〜S6を具備している。第1〜第6のステップS1〜S6は、この順番に実行される。図3のフローチャートを開始すると、まず、第1のステップS1が実行される。
【0044】
第1のステップS1では、信号と電源を含む分割モデルのそれぞれについて、N−portネットワークパラメータを用意する。このパラメータは、Sパラメータ、Yパラメータ、ZパラメータまたはTパラメータなどが用いられる。また、このパラメータは、ベクトル型ネットワークアナライザなどを用いた測定値であることがより好ましいが、電磁界シミュレータで作成するなどした解析値であっても構わない。第1のステップS1の次には、第2のステップS2に進む。
【0045】
第2のステップS2では、N−portパラメータの解析値または測定値を、インピーダンスマトリクス形式のZパラメータに変換する。例えば、SパラメータからZパラメータに変換する場合は、以下の式1を用いればよいことが知られている。
Z=(I−S)−1(I+S) ……(1)
ここで、ZはZパラメータを表す行列、すなわちインピーダンスマトリクスであり、Iは単位行列であり、SはSパラメータを表す行列である。第2のステップS2の次には、第3のステップS3に進む。
【0046】
第3のステップS3では、信号−電源間相互インピーダンスの調和平均を求める。ここで、調和平均は、以下の式2を用いることで求められることが知られている。
ZG=n/(Σ(1/ZloopVSi)) ……(2)
ここで、ZGは信号−電源間相互インピーダンスの調和平均であり、nは信号系モデルおよび電源系モデルの総数であり、ZloopVSiは分割モデルのそれぞれにおける信号−電源間の相互インピーダンスである。
【0047】
なお、分割モデルの信号−電源間の相互インピーダンスは、入力端子−出力端子間のループインピーダンスであり、以下の式3のように定義されるものとする。
ZloopVSi=ZVinSi−ZVinSi’+ZVoutSi’−ZVoutSi ……(3)
ここで、添え字Vinは電源系の入力側ポートを示し、Siは信号系の入力側ポートを示し、添え字Voutは電源系の出力側ポートを示しSi’は信号系の出力側ポートを示す。ただし、「入力側」および「出力側」はあくまでも便宜上の名前であって、互いに反対側であること以外の意味を持たない。第3のステップS3の次には、第4のステップS4に進む。
【0048】
第4のステップS4では、第3のステップS3で得られた調和平均インピーダンスZGの周波数応答関数を生成する。ここで、リターンパスはレファレンスであるので、本来、それ自体の容量は意味をなさないことに注目する。ただし、他の回路部に対する容量であればその意味を持つことは言うまでもない。そこで、この調和平均インピーダンスZGを、容量を持たない形で、周波数の関数としてモデル化する。例えば、誘電損失は電源系モデルおよび信号系モデルに持たせることにして、表皮効果だけ考慮すると、調和平均インピーダンスは、以下の式4のように表される。
ZG(ω)=a+b+√ω+jcω ……(4)
ここで、ZG(ω)はリターンパスとしてのGNDのインピーダンスの周波数応答関数を示し、ωは角周波数を示し、a、b、cは任意の定数を示す。なお、定数a、b、cは、最小二乗法などのパラメータフィッティングで求めればよい。こうして得られた周波数関数ZG(ω)は、SSO/SSN解析におけるリターンパス、すなわちGNDのモデルに他ならない。第4のステップS4の次には、第5のステップS5に進む。
【0049】
第5のステップS5では、もとのインピーダンスマトリクスからZG(ω)を差し引くことで、リターンパスを分離する。図4は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法においてインピーダンスマトリクスからリターンパスを分離する原理を示す回路図群である。図4(a)は、もとのインピーダンスマトリクスを概略的に示す回路図である。図4(b)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まないインピーダンスマトリクスとの関係を概略的に示す回路図である。図4(c)は、図4(a)を変形して得られる、ZG(ω)と、ZG(ω)を含まない電源系モデルおよび信号系モデルとの関係を概略的に示す回路図である。
【0050】
図4(a)の回路図では、もとのインピーダンスマトリクスの一要素Zij(ω)を、二端子対回路として表している。ただし、入力端子の一方と、出力端子の一方とは、レファレンスとしてのGNDとして機能するので、短絡しており、要素Zin(ω)は実際には三端子素子として表されている。
【0051】
図4(b)の回路図では、図4(a)のインピーダンスマトリクスZij(ω)からZG(ω)を差し引いたZ’ij(ω)を表している。ここで、差し引かれたZG(ω)は、リターンパスの入力側端子におけるZGin(ω)と、リターンパスの出力側端子におけるZGout(ω)とに分解されて表されている。
【0052】
ZG(ω)の、ZGin(ω)およびZGout(ω)への分解は、以下の式5a〜5fのように行う。
ZG(ω)=ZGin(ω)+ZGout(ω) ……(5a)
ZGin(ω)=a1+b1√ω+jc1ω ……(5b)
ZGout(ω)=a2+b2√ω+jc2ω ……(5c)
a=a1+a2 ……(5d)
b=b1+b2 ……(5e)
c=c1+c2 ……(5f)
ここで、a、b、cは、図4で用いた定数である。
【0053】
信号伝送率、正確には挿入損失(insersion loss)は、伝送路に沿ったインピーダンスの積分値で決まる。したがって、ZG(ω)をどう分解するか、すなわちa1およびa2、b1およびb2、c1およびc2の比率は、任意に決めて構わない。言い換えれば、ZG(ω)の分解の仕方によって、入力側と出力側の信号反射比率は変わるが、その総量は変わらない。したがって、この分解はある意味で形式的な操作に過ぎない。
【0054】
入力側および出力側の分割比を求めるには、例えば、以下の式6のように行えばよい。
ZGin:ZGout=n/Σ(1/(ZVinSi−ZVinSi’)):n/Σ(1/(ZVoutSi’−ZVoutSi)) ……(6)
ここで、等号右側の、分割比を表す“:”記号の左側および右側は、式3の入力側および出力側のそれぞれの調和平均である。
【0055】
最終的に、インピーダンスマトリクスの分割式は、以下の式7a〜7cのように表される。
Z’ij(ω)=Zij(ω)−ZGin(ω) ……(7a)
Z’ij(ω)=Zij(ω)−ZGout(ω) ……(7b)
Z’ij(ω)=Zij(ω) ……(7c)
ここで、添え字i、jが入力側端子に対応する場合には式7aを用い、添え字i、jが出力側端子に対応する場合には式7bを用い、その他の場合には式7cを用いる。
【0056】
上記の式7a〜7cは、リターンパスとしてのGND以外のすべて、すなわち信号系モデルおよび電源系モデルを含んでいる。しかし、もとのインピーダンスマトリクスからGNDのインピーダンスを差し引く前に、GNDのインピーダンス以外にも電源のインピーダンスをも求めておくことも可能である。この場合、図4(c)のように、もとのインピーダンスマトリクスは、信号系、電源系、GNDの3種類に分解される。
【0057】
以上に説明したように、本発明によれば、GNDを明示的に持たないN−portパラメータから、リターンパスとしての明示的なGNDを分離することが出来る。第5のステップS5の次には、第6のステップS6に進む。
【0058】
第6のステップS6では、Zパラメータを、Sパラメータ、Yパラメータ、Tパラメータなど他のパラメータに変換し、または、LCRK等価回路を生成する。
【0059】
ここで、LCRK等価回路を求めるだけならば、入力側から出力側へ至る積分値だけが分かればよいので、GNDのモデルを入力側用と出力側用の2つに分解する必要がない。その場合は、入出力間のループインピーダンスで全てを表せば良い。具体的には、以下の式8a〜8cの計算を行う。
ZV=ZloopV−ZG ……(8a)
ZSij=ZloopSij−ZG ……(8b)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi)……(8c)
ここで、添え字Vは電源系を示し、添え字Sは信号系を示す。
【0060】
なお、ネットワークパラメータでは不都合がある場合には、これにYパラメータを加えてラダー分割するなどして、広帯域モデルを生成してもよい。第6のステップS6が完了すると、本発明による解析用モデル生成方法も完了する。
【0061】
次に、信号−電源間相互インピーダンスからSSO/SSN解析におけるリターンパスを求めることが出来る理由について説明する。
【0062】
図5は、出力デバイスと、出力デバイスに接続された電源とを含む信号線路をモデル化した回路モデルを示す回路図群である。図5(a)は、全体の回路を分割した一部である分割モデルを示す回路図である。
【0063】
図5(a)の回路モデルは、出力デバイスと、信号線路と、電源VDDと、GNDとしての電源VSSと、レファレンスとしての外部GNDとを具備している。
【0064】
図5(a)の回路モデルにおいて、信号線路は、出力デバイスの出力側端部に接続されている。電源VDDは、出力デバイスの電源側端部に接続されている。GNDとしての電源VSSは、出力デバイスのGND側端部に接続されている。
【0065】
図5(a)の分割モデルにおいて、信号線路が伝送する信号を、一般化して第i信号と呼ぶ。
【0066】
図5(a)の回路モデルには、3つの電流経路がある。第1の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、電源VDDおよび電源VSSを通る。第2の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、電源VDDおよび信号線路を通る。第3の電流経路は、出力デバイスモデルを介して、信号線路およびGNDとしての電源VSSを通る。
【0067】
外部GNDからみると、1つの第i信号を司る回路の分割モデルは、3つの電流経路にそれぞれ対応する3つの自己インピーダンスZV0i、ZG0i、ZS0iと、3つの相互インピーダンスZVGi、ZVSi、ZSGiとを具備する。ここで、自己インピーダンスZV0iは、出力デバイスモデルの電源側端部に接続されている。自己インピーダンスZG0iは、出力デバイスモデルの出力側端部に接続されている。自己インピーダンスZS0iは、出力デバイスモデルのGND側端部に接続されている。相互インピーダンスZVGiは、出力デバイスモデルの電源側端部およびGND側端部に対応する。相互インピーダンスZVSiは、出力デバイスモデルの電源側端部および出力側端部に対応する。相互インピーダンスZSGiは、出力デバイスモデルの出力側端部およびGND側端部に対応する。
【0068】
ここで、3つの相互インピーダンスZVGi、ZVSi、ZSGiの分割比をそれぞれx、y、zとする。信号、電源、GNDのそれぞれの実効インピーダンスZVi、ZGi、ZSiは、以下の式9a〜9cのように表現できる。
ZVi=ZV0i−2xZVGi=ZV0i−2yZVSi ……(9a)
ZGi=ZG0i−2(1−x)ZVGi=ZG0i−2(1−z)ZSGi ……(9b)
ZSi=ZS0i−2(1−x)ZVGi=ZS0i−2zZSGi ……(9c)
【0069】
図5(b)は、図5(a)のモデルを、実効インピーダンスを用いた表現に変形したモデルを示す回路図である。
【0070】
数式を簡略化して説明を簡単にするために、式9a〜9cを含め、以降、入出力間のループインピーダンスで表現することにする。入出力間のループインピーダンスの定義は以下の式10のとおりである。
Zin−outij=Zij−Zij’+Zi’j’−Zi’j ……(10)
ここで、添え字i、j、i’、j’は、1〜N/2の整数であり、添え字i’は添え字iに対応するポートとは反対側のポートを示し、添え字j’は添え字jに対応するポートとは反対側のポートを示す。
【0071】
フルウェーブ電磁界解析で求められるインピーダンスは、GNDとしての電源VSSを規準にしたインピーダンスである。これを、肩添え字loopをつけて表記すると以下の式11a〜11cのようになる。
ZSi+ZGi=ZloopSi ……(11a)
ZVi+ZGi=ZloopVi ……(11b)
ZVi+ZSi=ZloopVi+ZloopSi−2ZloopVSi ……(11c)
【0072】
式11a〜11cを解くと、以下の式12が得られる。
ZGi=ZloopVSi (12)
【0073】
SSO/SSN解析を行うために、n本の信号線路に接続された出力デバイスモデルに同じ電源VDDおよび同じGNDとしての電源VSSを共有させる。図5(c)は、図5(b)のモデルに加えて複数の信号線路をも示す回路図である。このとき、リターン電流はインピーダンスの低いパスを優先的に流れるから、リターンパスとしての共通のGNDのインピーダンスは、n個のリターンパスインピーダンスの並列接続として捉えることが可能である。したがって、共通のGNDのインピーダンスは、以下の式13のように、調和平均で近似可能である。
ZG≒n/Σ(1/ZGi)=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(13)
ここで、ZGは、共通のGNDのインピーダンスを示す。
【0074】
以上をまとめると、以下の式14a〜14cが得られる。
ZV=ZloopV−ZG ……(14a)
ZSi=ZloopSi ……(14b)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(14c)
【0075】
さらに、複数の信号間の結合(クロストーク)を考慮に入れても、単に基準インピーダンスが加算されるだけであるから、同じ関係が成り立ち、以下の式14a14d14cとしてまとめることが出来る。
ZV=ZloopV−ZG ……(14a)
ZSij=ZloopSij ……(14d)
ZG=n/Σ(1/ZloopVSi) ……(14c)
すなわち、式8a〜8cが得られる。
【0076】
図6は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用した計算結果および従来技術との比較結果を示すグラフ群である。図6(a)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(b)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(c)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第1の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(d)は、信号系および電源系を含んだ正確なインターポーザモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(e)は、信号系モデルおよび電源系モデルを独立に作成して単純合成したモデルで第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。図6(f)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を適用したモデルを作成して第2の出力端子を選んだ場合の結果を示すグラフである。
【0077】
図6(a)、図6(b)、図6(d)、図6(e)は、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)と同じである。本発明の実施形態による解析用モデル生成方法を用いた図(c)、図6(f)が、厳密解である図6(a)、図6(d)によく一致していることがわかる。
【0078】
なお、前述のように、N−portネットワークパラメータを使用することで回路シミュレーションに不都合が生じる場合は、式8a〜8cに基づいてリターンパスとしてのGNDを明示的に含んだ形でLCRKのSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)等価回路などに変換することも可能である。
【0079】
図7は、インターポーザを3次元フルウェーブ解析した結果と、同じインターポーザのSパラメータをSPICE等価回路へ変換した結果との比較を示すグラフ群である。図7(a)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(b)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(c)は、インターポーザの基板への接続面において第1の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(d)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(e)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(f)は、インターポーザの基板への接続面において第2の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(g)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(h)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(i)は、インターポーザの基板への接続面において第3の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(j)は、インターポーザの半導体チップ実装面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(k)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するリターンロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(l)は、インターポーザの基板への接続面において第4の信号に対応するインサーションロスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(m)は、インターポーザの半導体チップ実装面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。図7(n)は、インターポーザの基板への接続面において電源系のインピーダンスの周波数応答を比較した結果を示すグラフである。なお、図7(a)〜図7(n)において、実線のグラフは3次元フルウェーブ解析の結果を示し、破線のグラフはSPICE等価回路へ変換した結果を示す。
【0080】
図7の例では、SPICE等価回路はおおむね20GHzまでの周波数帯域でもとのSパラメータを再現できているので、そのままSパラメータの代わりとして使うことが出来る。一般的には、等価回路のモデリング帯域、すなわちもとのネットワークパラメータを十分によく再現できる周波数範囲、は信号速度などの条件に合わせて設定すればよい。
【0081】
本発明によれば、モデル化される対象の、2.5次元、3次元などといった構造にまったく依存せずに、リターンパスとしてのGNDを明示的に含むSSO/SSN解析用広帯域モデルが得られる。その結果得られるモデルは、他のモデルとの分割・合成を安全に行うことが可能である。
【0082】
また、電磁界シミュレータの直接出力結果あるいは実測値であるN−portネットワークパラメータをマトリクスのまま直接分解するので、原理的に最も広帯域かつ高精度である。信号伝送媒体内部における信号系と電源系との直接干渉効果も、高周波帯まで正確に取り入れることが可能となる。
【0083】
本発明の実施形態によって得られたネットワークパラメータモデルは、必要に応じて、LCRKで構成されるSPICE等価回路に変換することも可能である。
【0084】
本発明の実施形態による解析用モデル生成方法のアルゴリズムに基づいて、コンピュータ上で実行可能なプログラムを生成することも可能である。このプログラムを、解析用モデル生成プログラムと呼ぶ。本発明の実施形態による解析用モデル生成プログラムを内蔵した装置は、SSO/SSN解析用モデルを自動的に生成するので、これを解析用モデル生成装置と呼ぶ。
【0085】
図8は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の構成を示すブロック図群である。図8(a)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の物理的な構成を示すブロック図である。図8(b)は、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0086】
図8(a)のブロック図において、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置は、バス11と、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15とを具備している。バス11は、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15に接続されている。バス11は、入力部12と、出力部13と、CPU14と、メモリ15との間でデータを伝送する。入力部12は、外部からデータを入力する。出力部13は、データを外部へ出力する。CPU14は、入力されたデータに基づいて、解析用モデル生成プログラムを実行し、出力すべき解析用モデルデータを生成する。メモリ15は、入力されたデータと、解析用モデル生成プログラムと、生成された解析用モデルデータとを格納する。
【0087】
図8(b)のブロック図において、本発明の実施形態による解析用モデル生成装置は、バス11と、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とを具備している。ここで、バス11と、入力部12と、出力部13とは、図8(a)と同じものである。また、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とは、図8(a)におけるCPU14およびメモリ15を機能別に分離して表したものである。
【0088】
バス11は、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26とに接続されている。
【0089】
バス11は、入力部12と、出力部13と、パラメータ取得部21と、パラメータ変換部22と、調和平均演算部23と、周波数応答関数演算部24と、リターンパス分離部25と、モデルデータ生成部26との間でデータを伝送する。入力部12は、外部からデータを入力する。パラメータ取得部21は、図3のフローチャートの第1のステップS1を実行する。パラメータ変換部22は、図3のフローチャートの第2のステップS2を実行する。調和平均演算部23は、図3のフローチャートの第3のステップS3を実行する。周波数応答関数演算部24は、図3のフローチャートの第4のステップS4を実行する。リターンパス分離部25は、図3のフローチャートの第5のステップS5を実行する。モデルデータ生成部26は、図3のフローチャートの第6のステップS6を実行する。出力部13は、データを外部へ出力する。
【符号の説明】
【0090】
11 バス
12 入力部
13 出力部
14 CPU
15 メモリ
21 パラメータ取得部
22 パラメータ変換部
23 調和平均演算部
24 周波数応答関数演算部
25 リターンパス分離部
26 モデルデータ生成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する装置であって、
前記信号系回路および前記電源系回路のそれぞれについて、所定形式のパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記所定形式のパラメータをZパラメータに変換するパラメータ変換部と、
解析の対称となる全ての、前記信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、前記Zパラメータに基づいて演算する調和平均演算部と、
前記調和平均の周波数応答関数を演算する周波数応答関数演算部と、
前記Zパラメータから前記周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するリターンパス分離部と、
前記任意の回路の、前記リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するモデルデータ生成部と
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解析用モデル生成装置において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの実測値
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の解析用モデル生成装置において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの解析値
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項4】
信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する方法であって、
(a)前記信号系回路および前記電源系回路をそれぞれモデル化した、所定形式のパラメータを取得するステップと、
(b)前記所定形式のパラメータをZパラメータに変換するステップと、
(c)解析の対称となる全ての、前記信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、前記Zパラメータに基づいて演算するステップと、
(d)前記調和平均の周波数応答関数を演算するステップと、
(e)前記Zパラメータから前記周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するステップと、
(f)前記任意の回路の、前記リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するステップと
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の解析用モデル生成方法において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの実測値
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の解析用モデル生成方法において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの解析値
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項7】
請求項4〜5のいずれかに記載の解析用モデル生成方法において、
前記解析用モデル生成方法の各ステップをコンピュータで実行可能に具備する
解析用モデル生成プログラム。
【請求項1】
信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する装置であって、
前記信号系回路および前記電源系回路のそれぞれについて、所定形式のパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記所定形式のパラメータをZパラメータに変換するパラメータ変換部と、
解析の対称となる全ての、前記信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、前記Zパラメータに基づいて演算する調和平均演算部と、
前記調和平均の周波数応答関数を演算する周波数応答関数演算部と、
前記Zパラメータから前記周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するリターンパス分離部と、
前記任意の回路の、前記リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するモデルデータ生成部と
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解析用モデル生成装置において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの実測値
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の解析用モデル生成装置において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの解析値
を具備する
解析用モデル生成装置。
【請求項4】
信号系回路と、電源系回路とを含む任意の回路の解析用モデルを生成する方法であって、
(a)前記信号系回路および前記電源系回路をそれぞれモデル化した、所定形式のパラメータを取得するステップと、
(b)前記所定形式のパラメータをZパラメータに変換するステップと、
(c)解析の対称となる全ての、前記信号系回路および電源系回路の組み合わせに対応する相互インピーダンスの調和平均を、前記Zパラメータに基づいて演算するステップと、
(d)前記調和平均の周波数応答関数を演算するステップと、
(e)前記Zパラメータから前記周波数応答関数を差し引いてリターンパスのモデルを分離するステップと、
(f)前記任意の回路の、前記リターンパスのモデルが分離された解析用モデルを生成するステップと
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の解析用モデル生成方法において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの実測値
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の解析用モデル生成方法において、
前記所定形式のパラメータは、
前記任意の回路のN−portネットワークパラメータの解析値
を具備する
解析用モデル生成方法。
【請求項7】
請求項4〜5のいずれかに記載の解析用モデル生成方法において、
前記解析用モデル生成方法の各ステップをコンピュータで実行可能に具備する
解析用モデル生成プログラム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−175520(P2011−175520A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40002(P2010−40002)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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