説明

解析装置、解析プログラムおよび解析方法

【課題】粉体の挙動をシミュレートする際の粒子挙動計算において、その計算効率を従来よりも向上させる。
【解決手段】粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析装置において、前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段31a,31bと、解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段31a,31bの中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択する選択手段31cとを設け、前記選択手段31cが選択した計算手段31a,31bに前記粒子間相互作用力を求めさせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析装置、解析プログラムおよび解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術において用いられる現像プロセスは、現像剤を電磁気力で制御することによって成り立っている。そのため、現像プロセスにおける様々な事項(穂切りの最適化、トナー飛散対策、クリーニング等)の解析に際しては、現像剤を構成する粉体の挙動をシミュレートすることが必要となる。
【0003】
ここで、粉体は、固体の一つの存在形態で、「構成粒子間に適当な相互作用力が働く多数の固体粒子集合体」と定義される。つまり、現像剤を構成する粉体は、電気力、磁気力、粒子間衝突力等の粒子間相互作用力が複合的に影響しており、その挙動が非常に複雑で、いわゆる離散的性格が強いものとなる。したがって、粉体の挙動のシミュレーション法としては、運動状態にある粉体の微視的・巨視的諸量についての詳しい観察を可能とすべく、個々の構成粒子の運動をラグランジュ的に追跡する離散要素法が広く用いられている。
【0004】
具体的には、離散要素法の一例として、個別要素法(DEM)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。これは、粉体を構成している個々の粒子の運動方程式(ニュートンの第二法則)を解くことでその粒子の加速度αを求めるとともに、これを数値積分することで当該粒子の速度、変位、座標等を求め、このような計算を全粒子について所定の計算ステップ数分繰り返して行うことで粉体(粒子群)の挙動を計算するというものである。
【0005】
【非特許文献1】木山英郎・藤村尚著、「カンドルの離散剛要素法を用いた岩質粒状体の重力流動の解析」、土木学会論文報告集、333(1983)、P137-146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粉体の挙動をシミュレートする際の粒子挙動計算に対しては、系のサイズによって取り扱う粒子数が巨大になるため、計算効率の向上が求められている。特に、個別要素法による粒子挙動計算では、構成粒子の個々それぞれに対して運動方程式を考え、それを解くことによって構成粒子の運動を追跡しているために、粒子数が多くなると計算負荷が極めて多大になるからである。
【0007】
粒子挙動計算の効率を向上させるためには、粒子間に働く相互作用力を求める計算負荷を軽減させることが有効と考えられる。構成粒子個々の運動方程式を解くためには、各粒子間に働く相互作用力を特定する必要があるが、この相互作用力は粒子配置が変化する度に再計算が必要であり、そのため相互作用力の計算時間が粒子挙動計算中の大きな割合を占めるからである。
【0008】
ただし、粒子間に働く相互作用力を求める計算負荷は、解析の条件に大きく影響される。つまり、粒子数や場の分割数等の計算規模に応じて適切な計算アルゴリズムを選択しないと、その効率が低下してしまうおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、粉体の挙動をシミュレートする際の粒子挙動計算において、その計算効率を従来に比べて確実に向上させることができる解析装置、解析プログラムおよび解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
請求項1に係る発明は、粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析装置であって、前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段と、解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択して当該粒子間相互作用力を求めさせる選択手段とを備えることを特徴とする解析装置である。
請求項2に係る発明は、前記複数の計算手段が、少なくとも一つが粒子を含めた場を計算することで前記粒子間相互作用力を求めるものであり、他の少なくとも一つが粒子位置における他の粒子の影響を計算することで前記粒子間相互作用力を求めるものであることを特徴とする請求項1記載の解析装置である。
請求項3に係る発明は、前記選択手段が、場の離散化格子数が粒子数の二乗より少ない場合は粒子を含めた場を計算する計算手段を選択して前記粒子間相互作用力を求めさせ、他の場合には粒子位置における他の粒子の影響を計算する計算手段を選択して前記粒子間相互作用力を求めさせることを特徴とする請求項2記載の解析装置である。
請求項4に係る発明は、前記粒子間相互作用力が電磁気力であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の解析装置である。
請求項5に係る発明は、粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析するための解析プログラムであって、コンピュータを、前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段と、解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択して当該粒子間相互作用力を求めさせる選択手段として機能させることを特徴とする解析プログラムである。
請求項6に係る発明は、粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析方法であって、前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段を用意しておき、解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択し、選択した計算手段を用いて当該粒子間相互作用力を求めることを特徴とする解析方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、5、6に係る発明によれば、解析対象となる粒子の分布状態に応じて、粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ない計算手段を選択して粒子間相互作用力を求めるので、例えば粒子の分布状態が変化したときであっても動的に計算手段を選択することで計算負荷の軽減を図ることができ、結果として粒子挙動計算の効率を従来に比べて確実に向上させることができる。
請求項2に係る発明によれば、計算手段の少なくとも一つが粒子を含めた場を計算することで粒子間相互作用力を求めるものなので、例えば粒子が動くたびに計算領域についての計算を行い、その領域が粒子に与える作用力を求めることになる。また、他の少なくとも一つが粒子位置における他の粒子の影響を計算することで粒子間相互作用力を求めるものなので、例えば粒子が動くたびに粒子同士の位置関係から相互作用力を求めることになる。したがって、これらの計算手段を選択して適宜使い分けることで、粒子間相互作用力の計算に適切な計算アルゴリズムを選択することが可能となり、これにより計算効率の向上が図れるようになる。
請求項3に係る発明によれば、場の離散化格子数が粒子数の二乗より少ない場合は粒子を含めた場を計算する計算手段を選択し、他の場合には粒子位置における他の粒子の影響を計算する計算手段を選択するので、粒子個数や場の分割数等に応じて適切な計算アルゴリズムを選択することが可能となり、これにより計算効率の向上が図れるようになる。
請求項4に係る発明によれば、計算手段が求める粒子間相互作用力が電磁気力であることから、例えば電磁気力で制御される現像剤を構成する粉体の挙動解析に適用して好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明に係る解析装置、解析プログラムおよび解析方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る解析装置の機能構成例を示す説明図である。
【0014】
ここで例に挙げて説明する解析装置は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等の組み合わせにより実現されるコンピュータとしての機能を有してなるもので、個別要素法を用いて荷電粒子の挙動計算、さらに詳しくは電子写真技術の現像プロセスで用いられるトナーやキャリア等の運動計算を行うものである。
【0015】
そのために、解析装置は、図1(a)に示すように、データ入力部1と、モデル作成部2と、粒子挙動計算部3と、データ出力部4と、特性評価部5と、制御部6と、を備えている。
【0016】
データ入力部1は、粒子挙動計算に必要な情報を、外部装置や別途設けたキーボード等の入力装置から受け取るものであり、解析対象となるトナーやキャリアの物理特性(直径、堆積密度等)、機械特性(ヤング率、ポアソン比等)、電磁気特性(誘電率、導電率、電荷量等)等が入力される粒子特性入力部11と、粒子群が運動する領域の形状や物理特性、機械特性、電気特性等が入力される領域データ入力部1と、これらの他に計算の実行に必要な計算ステップ数、時間増分、データ出力方法等に関する情報が与えられる計算パラメータ入力部12とを有して構成されている。
【0017】
モデル作成部2は、粒子挙動計算のための数値データを生成するものであり、粒子データ生成部21および境界データ生成部22を有して構成されている。これらの各部21,22では、データ入力部1で与えられた諸情報を基に、解析対象となる粒子や領域に設定される境界個々の特性を決定するようになっている。
【0018】
粒子挙動計算部3は、モデル作成部2で生成された数値データを用いて、個々の粒子運動を求める演算を行うものである。演算は、例えば個別要素法によって行うことが考えられる。すなわち、粒子挙動計算部3では、外力計算部31と運動方程式解法部32とを有しており、以下に示す(1)式の運動方程式を解いて粒子群の挙動を決定するようになっている。
【0019】
【数1】

【0020】
さらに詳しくは、外力計算部31が、先ず、(1)式における外力fを決定する。外力としては、主に、粒子間の接触力、重力、付着力、遠心力、空気抵抗力等と、電磁界が作用している場合には電磁気力が付加される。そして、外力計算部31が外力を決定すれば、予め与えられている粒子の質量mから、その加速度αが求められるので、所定の時間増分に対して、加速度を数値積分することで、速度、変位、座標が求められる。このような計算を、運動方程式解法部32は、全粒子について、所定の計算ステップ数分繰り返して行うことで、粒子群の挙動を求めることになる。
【0021】
データ出力部4は、必要に応じて得られた計算結果を外部装置や別途設けたディスプレイ等の出力装置へ出力するものであり、各粒子の座標および速度の時間変化情報を出力する粒子座標・速度出力部41と、粒子の接触によって各境界に作用する荷重を出力する境界荷重出力部42とを有して構成されている。
【0022】
特性評価部5は、計算で求められた粒子や境界の状態等に基づいて、電子写真技術による現像プロセスを実行する画像形成装置としての性能に関連する諸特性を、演算によって求めるものである。このような特性演算としては、例えば、所定の空間内にある粒子の個数から密度を求めたり、粒子の平均移動速度を求めて流動状態の指標としたり、トナー、キャリアそれぞれの個数から場所ごとの混合比を求めたりする、というものが挙げられる。
【0023】
制御部6は、上述した各部1〜5における処理動作、すなわち解析装置全体の処理動作について、その制御を行うためのものである。
【0024】
ところで、本実施形態における解析装置は、外力計算部31が、図1(b)に示すように、複数の計算手段31a,31bと、選択手段31cとを備えている点に大きな特徴がある。
【0025】
複数の計算手段31a,31bは、いずれも、粒子間相互作用力、具体的には外力fのうちの電磁気力、さらに詳しくは電磁気力の一種である静電気力を求めるものである。ただし、それぞれが互いに異なる手法を用いて静電気力を求めるものとする。すなわち、一方の計算手段31aは、粒子を含めた場を計算することで、粒子間相互作用力である静電気力を求める。具体的には、有限要素法によって電界を計算し、各粒子位置の電界を算出することで、粒子に作用する静電気力を求める。以下、この計算手段31aを「電界計算手段」という。また、他方の計算手段31bは、他の粒子の影響を計算することで粒子間相互作用力である静電気力を求める。具体的には、粒子間に相互に働くクーロン力を算出することで、粒子に作用する静電気力を求める。以下、この計算手段31bを「クーロン力計算手段」という。
【0026】
選択手段31cは、外力計算部31が粒子間相互作用力である静電気力を求めるのにあたり、電界計算手段31aとクーロン力計算手段31bとのどちらを用いて当該静電気力を求めるか選択するものである。ただし、選択手段31cでは、詳細を後述するように、解析対象となる粒子の分布状態に応じて、計算負荷の少ないものを選択するようになっている。
【0027】
以上のような解析装置を構成する各部1〜6、11〜42および各手段31a〜31cとしての機能は、当該解析装置におけるコンピュータとしての機能が、所定プログラムを実行することによって実現されるものである。その場合に、当該所定プログラムは、解析装置内へのインストールに先立ち、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであっても、または有線若しくは無線による通信手段を介して配信されるものであってもよい。つまり、本実施形態で説明する解析装置は、その解析装置にインストール可能な解析プログラムによっても実現することが可能である。
【0028】
次に、以上のように構成された解析装置(解析プログラムによって実現される場合を含む)における処理動作例、すなわち本発明に係る解析方法について説明する。ただし、ここでは、粒子挙動計算部3による計算処理動作についてのみ説明する。他の処理動作(例えば、データ入力部1によるデータ入力処理動作や特性評価部5による特性演算処理動作)については、従来と同様にして行えばよいため、ここではその説明を省略する。
【0029】
図2は、粒子挙動計算部による計算処理動作例の概要を示すフローチャートである。図例のように、粒子挙動計算部3は、個々の粒子運動を求める演算にあたり、先ず、各粒子の位置座標情報等を基に、各粒子に作用する非相互作用力を非相互作用力計算手法によって計算し、それらの合力Fnを算出する(ステップ101、以下ステップを「S」と略す)。非相互作用力としては、相互作用力である静電気力以外の力、具体的には粒子間の接触力、重力、付着力、遠心力、空気抵抗力等が挙げられる。これらの非相互作用力を計算する手法については、公知の一般的な計算手法を用いて計算すればよい。
【0030】
合力Fnを算出したら、粒子挙動計算部3は、続いて、各粒子に作用する相互作用力である静電気力Feを計算する(S102)。静電気力Feの計算は、詳細を後述するように、電界計算手段31aとクーロン力計算手段31bとのいずれかを選択的に用いて行う。
【0031】
その後、粒子挙動計算部3は、公知の粒子座標更新手法を用いて粒子座標を更新し(S103)、所定の計算終了条件に達しているか否かの判断を行う(S104)。そして、所定の計算終了条件に達していなければ、次の時間ステップについて、再び上述した計算処理を行い(S101〜S104)、これを所定の計算終了条件に達するまで繰り返す。
【0032】
ここで、上述した一連の計算処理動作のうちの静電気力Feの計算処理(S102)について、さらに詳しく説明する。図3は、静電気力Feの計算手順の一具体例を示すフローチャートである。
【0033】
上述したように、粒子挙動計算部3は、所定の計算終了条件に達するまで各時間ステップについての計算処理を繰り返して行う。そのため、粒子挙動計算部3を構成する選択手段31cでは、静電気力Feの計算にあたり、先ず、当該計算のための境界条件を前ステップと比較して、境界条件に変化があるか否かを判断する(S201)。その結果、境界条件に変化がある場合には、選択手段31cは、詳細を後述する第一の計算手法により計算を行うことを決定する。一方、境界条件に変化がない場合には、選択手段31cは、さらに、計算領域内の粒子個数および有限要素の節点数を比較して、粒子個数の二乗が要素節点数よりも多ければ第一の計算手法を選択し、そうでない場合には詳細を後述する第二の計算手法を選択する。
【0034】
第一の計算手法では、電界計算手段31aを用いて静電気力Feを求める。すなわち、粒子を内包する有限要素の節点へ各粒子の粒子物性・電荷をマッピングする(S202)。そして、電界計算手段31aは、各粒子が内包される要素を検索し、要素の節点との距離に応じた重み付けにより分配する。領域内全ての粒子のマッピングを終了後、電界計算手段31aは、有限要素法によって領域内の電界を計算し、各粒子位置の電界Eを算出する(S203)。粒子iに作用する静電気力は、以下の(2)式で与えられる。
【0035】
【数2】

【0036】
このときの電界計算手段31aの計算負荷は、有限要素法で使用する行列解法に依存するが、反復法を使用する場合、前回ステップの解を使用することで計算負荷を大幅に減少することができる。その場合に、せいぜい数回の反復で計算が終了するならば、計算負荷は節点数に比例すると考えられる。
【0037】
第二の計算手法では、クーロン力計算手段31bを用いて静電気力Feを求める。すなわち、クーロン力計算手段31bにより、粒子間に相互に働くクーロン力を算出するのである。粒子iに他の粒子が与えるクーロン力は、以下の(3)式のようになる。
【0038】
【数3】

【0039】
クーロン力計算手段31bの計算負荷は、粒子数の二乗回の計算を行うため、粒子数の二乗に比例する。粒子にかかる力は、粒子間に働くクーロン力に外部電場の与える静電気力を加算して求める。外部電場は予め計算されたものを用いるため、外部電場に関する計算負荷はない。
【0040】
このように、電界計算手段31aを用いた第一の計算手法では、各時刻毎に粒子が存在する計算領域の格子に電荷を与え、全計算領域の電荷分布を更新した後に電界計算を行い、粒子に働く力は電界計算の結果から得られる粒子存在位置の電界から求められるので、計算領域の電界計算用格子の節点数をM、計算領域の粒子数Nとすると、計算量が計算格子の節点数Mのオーダーとなる。一方、クーロン力計算手段31bを用いた第二の計算手法では、粒子同士に相互に働く静電気力を計算して粒子に働く力を求め、相互に働く静電気力は粒子の電荷、粒子間距離から求められるので、N個の粒子各々に対し他のN−1個の粒子の相互作用力を計算するため、計算量が粒子数Nの二乗に比例したオーダーとなる。そこで、選択手段31cは、粒子に働く静電気力Feを求めるのにあたり、N2>Mであれば第一の計算手法を選択し、N2<Mであれば第二の計算手法を選択して計算するのである。換言すると、選択手段31cは、場の離散化格子数が粒子数の二乗より少ない場合は粒子を含めた場を計算する計算手段31aを選択し、他の場合には粒子位置における他の粒子の影響を計算する計算手段31bを選択する。
【0041】
したがって、本実施形態で説明したような計算処理を行えば、各計算ステップにおいて、第一または第二の計算手法から領域内の粒子分布に応じて計算負荷の少ない計算方法を動的に選択することになり、結果として良好な計算パフォーマンスを実現し得るようになる。
【0042】
以上のような計算手法の選択、すなわち当該計算に用いる計算手段31a,31bの選択は、粒子数・格子節点数等の指標から自動的に決定し、計算中に粒子数、格子点数が増減する場合には使用する計算方法を自動的に切り換え、これにより計算手段31a,31bの選択が時々刻々の粒子分布状態変化に応じて自動的に行われるようにすることが考えられる。また、計算領域を複数領域に分割し、各領域の粒子数と格子数の関係から、個別に計算手法を切り換えて計算することも考えられる。ただし、計算手段31a,31bの選択は、操作者が情報入力装置を操作して行うようにしても構わない。
【0043】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例について説明したが、本発明はその内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0044】
例えば、本実施形態では、複数の計算手段31a,31bとして、電界計算手段31aおよびクーロン力計算手段31bの二つを例に挙げているが、互いに異なる手法を用いて静電気力を求めるものであれば、外力計算部31は三つ以上の計算手段を備えていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、粒子間相互作用力が電磁気力であり、さらにはその電磁気力のうちの一つである静電気力を求める場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。すなわち、他の粒子間相互作用力についても全く同様に適用可能であり、本実施形態で説明したような電界中を運動する荷電粒子の例ではなく、磁界中を運動する磁性体粒子などについても、本発明を適用することで計算負荷を減少させることが可能である。さらには、複数種類の作用力(静電気力と磁気力との両方等)を計算する場合に適用することも考えられ、その場合には作用力毎に計算手段を選択することで計算負荷を減少させることができる。また、このことは並列化された計算処理においても同様であり、作用力毎に有利な並列計算手段を選択できるようにすることで計算負荷を適切に減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る解析装置の機能構成例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る解析装置の粒子挙動計算部による計算処理動作例の概要を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る解析装置における静電気力Feの計算手順の一具体例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1…データ入力部、2…モデル作成部、3…粒子挙動計算部、4…データ出力部、5…特性評価部、6…制御部、11…粒子特性入力部、12…領域データ入力部、13…計算パラメータ入力部、21…粒子データ生成部、22…境界データ生成部、31…外力計算部、31a…電界計算手段、31b…クーロン力計算手段、31c…選択手段、32…運動方程式解法部、41…粒子座標・速度出力部、42…境界荷重出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析装置であって、
前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段と、
解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択して当該粒子間相互作用力を求めさせる選択手段と
を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記複数の計算手段は、少なくとも一つが粒子を含めた場を計算することで前記粒子間相互作用力を求めるものであり、他の少なくとも一つが粒子位置における他の粒子の影響を計算することで前記粒子間相互作用力を求めるものであることを特徴とする請求項1記載の解析装置。
【請求項3】
前記選択手段は、場の離散化格子数が粒子数の二乗より少ない場合は粒子を含めた場を計算する計算手段を選択して前記粒子間相互作用力を求めさせ、他の場合には粒子位置における他の粒子の影響を計算する計算手段を選択して前記粒子間相互作用力を求めさせることを特徴とする請求項2記載の解析装置。
【請求項4】
前記粒子間相互作用力が電磁気力であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項5】
粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析するための解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段と、
解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択して当該粒子間相互作用力を求めさせる選択手段
として機能させることを特徴とする解析プログラム。
【請求項6】
粒子間相互作用力の影響下における複数粒子の挙動を解析する解析方法であって、
前記粒子間相互作用力を互いに異なる手法を用いて求める複数の計算手段を用意しておき、
解析対象となる粒子の分布状態に応じて前記複数の計算手段の中から前記粒子間相互作用力を求める計算負荷の少ないものを選択し、選択した計算手段を用いて当該粒子間相互作用力を求める
ことを特徴とする解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−123398(P2008−123398A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308717(P2006−308717)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】