説明

触媒の製造方法

触媒の支持体を硝酸コバルトに含浸させることによって形成されるコバルト触媒前駆体中の硝酸塩含量を低くする方法であって、該含浸させた支持体を空気中で焼成し、部分的に脱窒させること、その後、不活性ガス中に0.1〜10体積%の水素を含むガス混合物の存在下で、焼成された含浸させた支持体を250℃未満の温度に加熱することを含む前記方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法、具体的には、硝酸コバルトを含浸させた触媒の支持体からコバルト触媒を製造する方法に関する。
炭化水素の水素添加反応またはフィッシャー−トロプシュ合成に適した、担持されたコバルト触媒は、一般的に、可溶性コバルト化合物の「予備形成された」酸化支持体材料への含浸、または、支持体粉末または押出し物の存在下での溶液からのコバルト化合物の沈殿、それに続く空気中での加熱工程、続いて、使用前の、触媒前駆体中の得られたコバルト化合物を、典型的には水素を含むガスストリームを用いて元素または「ゼロ価」の形態に還元することによる触媒の活性化によって製造される。空気中で加熱することによって、少なくともいくらかのコバルト化合物が酸化コバルト(Co)に変換される。それに続く水素での還元によって、Coは一酸化コバルト(CoO)に変換され、触媒活性のコバルト金属が得られる。
【0002】
硝酸コバルトは製造が低コストで比較的簡単であるため、含浸方法は、硝酸コバルトに頼ることが一般的である。しかしながら、それに続く加工の際に、窒素酸化物(NO)ガスが環境へ放出されることを予防するために、触媒中に残留した硝酸塩(NO)レベルを極めて低いレベルにまで減少させることが必要である。一般的には、硝酸塩を含む触媒前駆体の焼成のためにNo低減技術、例えばNo洗浄(scrubbing)が提供されることから、このような技術は、通常、触媒還元装置には存在しない。その上、触媒前駆体を、系内で、例えば水素添加、または、フィッシャー−トロプシュ反応器で活性型に還元しようとする場合、No低減技術を導入することは一般的に実用的ではない。しかしながら、我々は、空気中で加熱する工程中に、触媒前駆体の硝酸塩含量を最終的な触媒前駆体において容認できるような低いレベルに減少させるために、前駆体を空気中で500℃を超える温度に加熱することが必要であることを見出した。このような高温で触媒前駆体を持続的に加熱することによって、その後還元された触媒の、得られたコバルトの表面領域を減少させることが見出された。この減少は、望ましくないスピネルまたはその他の複合酸化物の形成を引き起こす支持体−金属の増加した相互作用の結果と考えられる。例えば、空気中でアルミナに担持されたコバルト化合物を加熱することは、アルミン酸コバルトの形成を増加させる可能性がある。それに続く触媒の活性化において、アルミン酸コバルトは、水素での還元に対して酸化コバルトよりも高い耐性を有するため、還元時間の延長または温度増加が必要になる。これらはいずれも、得られた触媒においてコバルトの表面領域を減少させる可能性がある。コバルトの表面領域は触媒活性に比例することが見出されたため、より低い温度で、そして、硝酸塩レベルも低いレベルに減少させた触媒前駆体の製造方法が望ましい。
【0003】
我々は、これらの問題を克服する方法を開発した。
従って、本発明は、触媒の支持体を硝酸コバルトに含浸させることによって形成されたコバルト触媒前駆体中の硝酸塩含量を低くする方法を提供し、本方法は、含浸させた支持体を空気中で焼成し、部分的に脱窒させること、その後、不活性ガス中に0.1〜10体積%の水素を含むガス混合物の存在下で、焼成された含浸させた支持体を250℃未満の温度に加熱することを含む。
【0004】
本方法は、コバルトが、元素の形態または「ゼロ価」の金属の形態に還元されることなく、前駆体の硝酸塩含量を低いレベルに減少させる。本明細書において、「還元されることなく」とは、コバルトが実質的に金属の形態に還元されないことを意味し、すなわち、還元されるのは、コバルトの1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.05%未満である。その結果として、前駆体の扱いが安全になる。従って我々は、CoのCoOへの変換はなく、そして可能性の有るCoOの再酸化は回避されると考えている。
【0005】
本発明の方法は、含浸させた触媒の支持体上で行われる。コバルト触媒を生産するための含浸方法が周知であり、この方法は、一般的に、触媒の支持体を、硝酸コバルト(例えば硝酸コバルト(II)六水和物)の溶液と適切な濃度で併用することを含む。例えば、支持体材料の孔を充填するのに十分なコバルト溶液を触媒の支持体に添加することによる初期の湿潤技術(incipient wetness technique)を用いてもよい。あるいは、比較的大量のコバルト溶液を必要に応じて用いてもよい。水、アルコール、ケトンまたはこれらの混合物のような様々な溶媒を用いてもよいが、硝酸コバルト水溶液を用いて支持体を含浸させることが好ましい。含浸は、触媒前駆体中に望ましいコバルトレベルが達成されるように一回で行ってもよいし、または複数回で行ってもよい。
【0006】
支持体材料は、アルミナ、シリカ(合成シリカ、および、珪藻土のような天然に存在するシリカの形態の両方を含む)、アルミノケイ酸塩、チタニア、ジルコニア、炭素、またはその他の適切な支持体、例えば酸化亜鉛、を含んでもよい。支持体は、これらのうち1種またはそれより多くを含んでもよく、例えば支持体は、アルミノケイ酸塩、チタニアで被覆したシリカもしくはアルミナ、または、ジルコニアで被覆したシリカもしくはアルミナであり得る。好ましくは、本発明に係る好ましい触媒が遷移アルミナ支持体上のコバルト種を含むように、アルミナ支持体が提供され、最も好ましくは支持体は遷移アルミナである。適切な遷移アルミナは、ガンマアルミナ群(例えばエータアルミナ、または、カイアルミナ)であってよい。これらの材料は、水酸化アルミニウムを400〜750℃で焼成することによって形成してもよく、一般的には、150〜400m/gの範囲のBET表面領域を有する。または、デルタアルミナ群に属する遷移アルミナでもよく、このようなアルミナにはデルタおよびシータアルミナのような高温型が含まれ、これらは、ガンマ群のアルミナを約800℃より高い温度に加熱することによって形成することができる。デルタ群のアルミナは、一般的に、50〜150m/gの範囲のBET表面領域を有する。遷移アルミナは、1モルのAlあたり0.5モル未満の水を含むが、実際の水の量はそれらを加熱した温度に依存する。また、触媒の支持体は、アルファアルミナを含んでもよい。
【0007】
本発明の触媒は、具体的には、フィッシャー−トロプシュ(F−T)炭化水素合成での使用に適しており、既知のコバルトF−T触媒に使用するコバルト触媒にとって好ましい支持体が、本発明の触媒にも有利に用いることができる。
【0008】
支持体は、粉末の形態でもよいし、または、顆粒、タブレットまたは押出し物のような成形された単位の形態でもよい。成形された単位は、長い円柱、球体、ローブ形もしくは溝付きの円柱の形態でもよいし、または、不規則に成形された粒子の形態でもよく、これらはいずれも、触媒製造分野において既知である。または、支持体は、ハニカム支持体、モノリス等の構造上のコーティングの形態であってもよい。支持体材料そのものに、促進剤、安定剤、または、結合剤のようなその他の材料が含まれていてもよく、これらは、本発明のプロセスで使用する前に、例えば噴霧乾燥および/または焼成によって処理することが可能である。
【0009】
触媒の支持体に適した粉末は、一般的に、1〜200μmの範囲で表面の加重平均直径D[3,2]を有する。ある種の用途において、例えばスラリー反応での使用を目的とする触媒において、平均で1〜20μmの範囲、例えば1〜10μmの範囲の表面の加重平均直径D[3,2]を有する極めて微細な粒子を使用することが有利である。その他の用途に関して、例えば流動床で行われる反応のための触媒として、より大きい粒度、好ましくは50〜150μmの範囲の粒度を使用することが望ましい場合がある。表面−加重平均直径D[3,2]という用語は、ザウター(Sauter)の平均直径とも称され、これは、M.Alderliestenの論文“A Nomenclature for Mean Particle Diameters”;Anal. Proc,第21巻,1984年5月,167〜172頁によって定義されており、粒度解析から計算される。粒度解析は、例えばマルバーンのマスターサイザー(Malvern Mastersizer)を用いて、レーザー回折によって行うことができる。
【0010】
必要に応じて、焼成、および、水素/不活性ガス混合物での処理の前に、含浸させた支持体を乾燥させて溶媒を除去してもよい。予備乾燥工程は、20〜120℃、好ましくは95〜110℃で、空気中で、または、窒素のような不活性ガス下で、または、真空オーブン中で行うことができる。
【0011】
硝酸コバルトを含浸させた触媒前駆体を空気中で加熱して、部分的に脱窒させる。加熱工程(または、本明細書においては焼成と称する)によって含浸させた支持体に物理化学的な変化が引き起こされ、それによって、硝酸コバルトは、Noガスを発生させながら、少なくとも部分的に酸化コバルト(Co)に分解する。焼成温度は、好ましくは130〜500℃の範囲であるが、最大の焼成温度は、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、最も好ましくは300℃以下、特に250℃以下であり、コバルト−支持体の相互作用を最小化することができる。焼成時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは16時間以下、最も好ましくは8時間以下、特に6時間以下である。焼成は、最も好ましくは、250℃以下、2時間以下で行われる。
【0012】
焼成された含浸させた支持体のコバルト含量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。その上限は、40重量%であり得る。
含浸させた支持体に存在する硝酸塩の量は、実際に含浸させた硝酸コバルトの量に依存し、すなわち含浸させた支持体のコバルト含量に比例する。焼成工程は、含浸させた支持体から、元々存在する硝酸塩の好ましくは50%より多く、より好ましくは75%より多く、最も好ましくは90%より多くを除去する。例えば、焼成された含浸させた支持体のコバルト含量が、約20重量%である場合、我々は、水素を含むガスで処理する前の焼成された含浸させた支持体の残留した硝酸塩含量(NOの重量として示される)は1重量%より多く、焼成条件に応じて3〜7重量%の場合もあることを見出した。(還元した触媒中に20重量%のCoが存在する場合、焼成工程前の含浸させた支持体は、約30重量%のNOを含むようになると予想される)。本発明において、焼成は、触媒前駆体に好ましくは1〜10%の範囲、より好ましくは1〜5%の範囲の硝酸塩レベルが含まれるように行われる。残留した硝酸塩レベルが1重量%より多いことは、それに続く還元段階中に、具体的には、還元が水素添加反応器中に、または、フィッシャー−トロプシュ反応器中の系内で行われる場合、顕著な問題となる。
【0013】
硝酸塩含量を測定する方法は、デバルダ合金を用いたアンモニアへの還元、それに続く蒸留および滴定、または、水への溶解、ならびに較正されたイオン選択性電極を用いた測定を含む。好ましい方法は、較正されたイオン選択性電極による測定である。
【0014】
許容できるレベルまで硝酸塩レベルを減少させるために、焼成された含浸させた支持体を冷却した後、それらを、不活性ガス中に0.1〜10体積%の水素を含むガス混合物の存在下で、250℃未満、好ましくは225℃未満、特に200℃未満の温度に加熱し、さらに触媒の支持体を脱窒させる。好ましくは、焼成された含浸させた支持体を加熱する温度は、50℃より高温、より好ましくは100℃より高温、特に140℃以上である。不活性ガスは、適切であればどのような不活性ガスでもよく、例えば、窒素、ヘリウムおよびアルゴンであり、1種またはそれより多くの不活性ガスを用いてもよい。好ましくは、不活性ガスは窒素である。不活性ガス中の水素濃度は、0.1〜10体積%、好ましくは1〜5体積%である。脱窒工程中に、これらの限定範囲内で不活性ガス中の水素濃度を増加させたり、または、減少させたりすることができる。脱窒中のガス圧は、適切には1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10絶対barであり得る。ガス混合物の存在下で支持体を加熱する時間は、多数の要因に依存すると予想され、このような要因としては、コバルト(従って硝酸塩)含量が挙げられる。脱窒プロセスは、24時間以下、好ましくは16時間以下、より好ましくは8時間未満、特に6時間以下であり得る。最も好ましくは、触媒前駆体は、140〜225℃で1〜8時間、特に約200℃で1〜3時間で加熱する。好ましくは、ガス混合物のストリームは、焼成された含浸させた支持体の上を通り過ぎる、および/または、それらの中を通過する。水素/不活性ガスストリームの毎時のガス空間速度(GHSV)は、標準の温度及び圧力(NTP)で、50〜4000/時間であり得るが、好ましくは50〜1000/時間、より好ましくは100〜500/時間である。これらの条件下では、実質的に酸化コバルトの還元は起こらない。時期尚早の還元は、得られた触媒前駆体の取り扱いに関して問題となるため望ましくない。
【0015】
予備乾燥および/または脱窒は、処理装置の利用可能性、および/または、稼働の規模に応じて、バッチ式で行ってもよいし、または連続的に行ってもよい。
焼成された含浸させた支持体の水素を含むガスでの処理によってさらに、硝酸塩含量が、好ましくは50%より多く、より好ましくは75%より多く減少する。例えば、1重量%より多い硝酸塩含量を有する焼成された含浸させた支持体は、好ましくは、0.1〜10体積%の水素を含むガスで処理した後、0.5重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の残留した硝酸塩含量を有する。
【0016】
触媒前駆体は、コバルトに加えて、水素添加反応、および/または、フィッシャー−トロプシュ触媒作用において有用な1種またはそれより多くの適切な添加剤または促進剤をさらに含んでいてもよい。例えば、このような触媒は、物理特性を変更する添加剤、および/または、触媒の還元性、または、活性、または、選択性を促進する促進剤を1種またはそれより多く含んでもよい。適切な添加剤は、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、または、亜鉛(Zn)から選択される金属の化合物から選択される。適切な促進剤としては、ロジウム(Rh)、インジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、および、パラジウム(Pd)が挙げられる。好ましくは、Ni、Pt、Pd、Ir、ReまたはRuから選択される1種またはそれより多くの促進剤は、触媒前駆体中に含まれる。添加剤および/または促進剤は、酸、例えば過レニウム酸、クロロ白金酸、金属塩、例えば金属硝酸塩もしくは金属酢酸塩、または、適切な金属有機化合物、例えば金属アルコキシドもしくは金属アセチルアセトナートのような適切な化合物の使用によって触媒前駆体に包含されていてもよい。促進剤の典型的な量は、コバルトの金属重量の0.1〜10%である。必要に応じて、添加剤および/または促進剤の化合物は、適切な量で硝酸コバルト溶液に添加されてもよい。また、それらは、乾燥/脱窒の前に、または、その後に、触媒前駆体と組み合わされてもよい。
【0017】
触媒をフィッシャー−トロプシュ反応または水素添加反応にとって触媒的に活性な状態にするために、酸化コバルトの少なくとも一部が、金属に還元されていてもよい。還元は、好ましくは、水素を含むガスを用いて高温で行われる。
【0018】
還元工程の前に、必要に応じて、当業者既知の方法を用いて、触媒が目的とするプロセスに適した成形された単位に触媒前駆体を成形してもよい。
還元は、水素、合成ガス、または、水素と窒素またはその他の不活性ガスとの混合物などの水素を含むガスを、高温で酸化組成物の上を通過させることによって行ってもよく、例えば、水素を含むガスを、300〜600℃の範囲の温度で、1〜16時間、好ましくは1〜8時間で触媒前駆体の上を通過させることによって行ってもよい。好ましくは、還元ガスは、25体積%より多く、より好ましくは50体積%より多く、最も好ましくは75%より多く、特に90体積%より多くの水素を含む。還元は、雰囲気圧で行ってもよいし、または、高い圧力で行ってもよく、すなわち、還元ガスの圧力は、適切には1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10絶対barであり得る。還元が系内で行われる場合、それより高い、10絶対barを超える圧力がより適切な場合もある。
【0019】
還元状態の触媒は、空気中で自発的に酸素と反応して、望ましくない自己加熱や活性の損失が起こる可能性があるため、扱いが難しい可能性がある。その結果として、水素添加反応に適した還元した触媒は、還元した後、酸素を含むガス(空気、または、二酸化炭素および/または窒素中の酸素であることが多い)で不動態化されることが好ましい。フィッシャー−トロプシュ法に適した触媒にとって、不動態化は好ましくなく、好ましくは、還元した触媒は、還元した触媒粒子を適切なバリア被覆でカプセル化することによって保護される。フィッシャー−トロプシュ触媒のケースにおいて、これは、適切には、FT−炭化水素ワックスであり得る。または、触媒を酸化されているが還元されていない状態で提供して、系内で水素を含むガスを用いて還元してもよい。
【0020】
どの経路が選択されても、本発明の方法により得られた前駆体から製造されたコバルト触媒は、還元した金属1グラムあたり大きい金属表面領域を提供する。例えば、コバルト触媒前駆体が425℃で水素で還元された場合、150℃でのH化学吸着によって測定した際に、コバルト表面領域が、20m/g(コバルト)以上であることが好ましい。より好ましくは、コバルト表面領域は、30m/g(コバルト)以上、最も好ましくは40m/g(コバルト)以上である。好ましくは、水素添加および/またはフィッシャー−トロプシュ法において適切な触媒体積を達成するために、触媒のコバルト表面領域/g(触媒)は、10m/g(触媒)以上、より好ましくは15m/g(触媒)以上である。
【0021】
コバルト表面領域は、H化学吸着によって決定することができる。実施例で用いられる好ましい方法は以下の通りである;まず、約0.2〜0.5gのサンプル材料(例えば触媒前駆体)を脱気し、ヘリウムを流しながら10℃/分で140℃に加熱し、140℃で60分間維持することによって乾燥させる。続いて、脱気し乾燥させたサンプルを、3℃/分の速度で140℃〜425℃に、50ml/分で水素を流しながら加熱して、続いて425℃で6時間水素の流れを維持することによって還元する。この還元の後、サンプルを真空中で10℃/分で450℃に加熱し、これらの条件下で2時間保持する。続いてサンプルを150℃に冷却し、真空中でさらに30分間維持する。続いて、純粋な水素ガスを用いて150℃で化学吸着解析を行う。自動解析プログラムを用いて、水素の圧力が100mmHg〜760mmHgの範囲で完全な等温線を測定する。この解析を2回行う;第一解析では、取り込まれた水素の「総量」(すなわち、化学吸着した水素と、物理吸着した水素とを含む)を測定し、第一解析の直後に、サンプルを真空中(5mmHg未満)に30分間置く。続いて、この解析を繰り返して、物理吸着によって取り込まれた量を測定する。続いて、「すべての」取り込まれた量のデータに線形回帰を適用し、ゼロ圧力に外挿して、化学吸着したガスの体積(V)を計算する。
【0022】
続いて、以下の方程式を用いてコバルト表面領域を計算することができる;
Co表面領域=(6.023×1023×V×SF×A)/22414
上記式中、Vは、Hの取り込み量(ml/g)であり、
SFは化学量論の係数(CoへのHの化学吸着の場合は2と考えられる)であり、
Aは1個のコバルト原子が占有する領域(0.0662nmと考えられる)である。
【0023】
この方程式は、Micromeretics ASAP 2010 Chemi System V2.01,付録C,パート番号201−42808−01,1996年10月、のオペレーターマニュアルで説明されている。
【0024】
水素添加反応、および、炭化水素のフィッシャー−トロプシュ合成のために触媒を用いることができる。
典型的な水素添加反応は、アルデヒドおよびニトリルに水素添加して、それぞれアルコールおよびアミンにすること、および、環状芳香族化合物または不飽和炭化水素に水素添加することを含む。本発明の触媒は、具体的には、不飽和有機化合物の水素添加に適しており、具体的には油、脂肪、脂肪酸、およびニトリルのような脂肪酸誘導体の水素添加に適している。このような水素添加反応は、典型的には、上記化合物を、オートクレーブ中での加圧下で、周囲温度または高温で、コバルト触媒の存在下で水素を含むガスを用いて水素化することによって処理することによって、連続的に、またはバッチ式で行われ、例えば、水素添加は、80〜250℃、0.1〜5.0×10Paの範囲の圧力の水素で行うことができる。
【0025】
コバルト触媒を用いた炭化水素のフィッシャー−トロプシュ合成は十分に確立されている。フィッシャー−トロプシュ合成とは、一酸化炭素と水素との混合物を炭化水素に変換するものである。一酸化炭素および水素の混合物は、典型的には、水素:一酸化炭素比が1.7〜2.5:1の範囲の合成ガスである。この反応は、連続プロセスで行ってもよいし、または、バッチプロセスで行ってもよく、1種またはそれより多くの撹拌スラリー相反応器、気泡塔反応器、ループ型反応器、または、流動床反応器を用いて行ってもよい。このプロセスは、0.1〜10Mpaの範囲圧力、150〜350℃の範囲の温度で操作することができる。連続操作の場合の毎時のガス空間速度(GHSV)は、100〜25000/時間の範囲である。本発明の触媒は、それらの高いコバルト表面領域/g(触媒)のために特に有用である。
【0026】
ここで以下の実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
それぞれの実施例において、含浸させた支持体を以下のように製造した;ガンマアルミナ支持体(サソール・コンデア(Sasol Condea)製のプラロックス(Puralox)20/190)を、支持体100gあたり125.91gのCo(NO・6HO、0.91gのNHReO、および、29.4gの脱塩水を含む溶液を用いて含浸させ、湿潤したケークを形成した。これを、トレイ上で、オーブン中で110℃で4時間、床厚さ(bed depth)25mmで乾燥させた。
【0027】
各実施例において、硝酸塩(NO)含量を以下のように測定した;ビーカー中で、重量がわかっているサンプルを50mlの脱塩水と混合し、覆いをし、加熱して1分間沸騰させた。続いて、これを冷却し、10mlの2M硫酸アンモニウム溶液を添加した。続いて、これをメスフラスコで100mlにし、サンプルを10分間静置した。続いて、75mlを撹拌したビーカーにデカントして、硝酸イオン選択性電極を用いて伝導率を測定した。続いて、伝導率を、既知の硝酸塩レベルを用いて作製された検量線と相関させて、サンプルの硝酸塩含量を得る。
【0028】
この実施例において、上述した本方法に従って、触媒前駆体を水素を用いて425℃で還元し、それらのコバルト表面領域を150℃での水素の化学吸着によって決定した。
還元した触媒のコバルト含量はいずれも、20重量%であった。
【0029】
比較例1(本発明によらない)
乾燥させた材料を、空気中で150mmの床厚さで焼成した。焼成中の粉末の温度を、2時間かけて370℃に高め、続いて1.5時間かけて400℃に高め、その後、1.5時間かけて270℃に下げた。
【0030】
焼成された触媒前駆体のNO含量は、0.92重量%であった。還元された触媒前駆体のコバルト表面領域は、8.2m/g(還元した触媒)であった。
従って、焼成単独では低いコバルト表面領域の触媒が生じ、前駆体の硝酸塩含量は、それでもなお約1重量%であった。
【0031】
比較例2(本発明によらない)
乾燥させた材料を、空気中で50mmの床厚さで焼成した。焼成中の粉末の温度を、18分間かけて180℃に高め、続いて10分間かけて200℃に高め、続いて200℃で10分間保持し、その後、20分間かけて130℃に下げた。
【0032】
焼成された材料のNO含量は、1.8重量%であった。還元された焼成された材料のコバルト表面領域は、11.8m/g(還元した触媒)であった。この焼成された材料をさらに、酸化物1kgあたり0.4Nm/時間の空気(SV=400/時間)を用いた流動床を用いて空気中で焼成した。温度を、1.5時間かけて周囲温度から200℃に高め、200℃で2時間保持した。
【0033】
この焼成された触媒前駆体のNO含量は1.6重量%であり、還元された材料のコバルト表面領域は、11.6m/g(還元した触媒)でほとんど変化しなかった。従って、比較的低い温度での焼成は、二段階でも、触媒のコバルト表面領域を増加させるが、前駆体中の残留したNOのレベルは、触媒の還元の際に環境問題となる。
【0034】
実施例3(本発明による)
乾燥させた材料を50mmの床厚さで焼成した。焼成中の粉末の温度を、18分間かけて180℃に高め、続いて10分間かけて200℃に高め、続いて200℃で10分間保持し、その後20分間かけて130℃に下げた。
【0035】
焼成された材料のNO含量は、1.8重量%であった。還元された焼成された材料のコバルト表面領域は、11.8m/g(還元した触媒)であった。この焼成された材料をさらに、流動床中で、酸化物1kgあたり0.2Nm/時間の、窒素中5v/v%の水素(SV=200/時間)を用いて加熱した。温度を、1.5時間かけて周囲温度から200℃に高め、200℃で2時間保持した。
【0036】
本発明に従って製造されたこの材料を用いて製造された還元された触媒前駆体のコバルト表面領域は、11.7m/g(還元した触媒)であり、そして、触媒前駆体のNO含量は0.08重量%に著しく減少した。従って本発明は、コバルト表面領域を犠牲にすることなく触媒前駆体の硝酸塩含量を減少させることができる方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の支持体を硝酸コバルトに含浸させることによって形成されるコバルト触媒前駆体中の硝酸塩含量を低くする方法であって、該含浸させた支持体を空気中で焼成し、部分的に脱窒させること、その後、不活性ガス中に0.1〜10体積%の水素を含むガス混合物の存在下で、焼成された含浸させた支持体を250℃未満の温度に加熱すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記焼成が、130〜500℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最大の焼成温度が、400℃以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼成された含浸させた支持体が、50℃より高い温度に加熱される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスが窒素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガス中の水素濃度が、1〜5体積%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素を含むガス混合物の圧力が、1〜50絶対barである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼成された含浸させた支持体のコバルト含量が、5〜40重量%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒前駆体が、コバルトに加えて、水素添加反応、および/または、フィッシャー−トロプシュ触媒反応において有用な、1種またはそれより多くの適切な添加剤または促進剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法に従って触媒前駆体を製造する工程、および、
(ii)水素を含むガスのストリーム中、300〜600℃で、該触媒前駆体を還元する工程、
を含む、コバルト触媒の製造方法。

【公表番号】特表2008−540114(P2008−540114A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511799(P2008−511799)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050095
【国際公開番号】WO2006/123179
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】