説明

触媒の調製及びかかる触媒を使用する方法

Mo/ZSM−5触媒及びMo/MCM−22触媒を前処理する方法が与えられ、この方法はプロパンの存在下で500℃で触媒を加熱することを含む。メタンの非酸化的脱水素に使用されると、被処理触媒は、He、メタン又はHで前処理した触媒と比較して、ベンゼン収率及び触媒安定性の改善を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒、特にMo/ZSM−5触媒及びMo/MCM−22触媒、並びにかかる触媒を調製する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に石油の埋蔵量に限りがあるため、高級炭化水素の生成のための供給原料として天然ガス(主にメタンを含む)を利用することに多大な関心が持たれている。
【0003】
出発材料としてのメタンの使用に対する代替的なアプローチが幾つか探求されている。第1には、水蒸気改質によりメタンを合成気体(CO及びH)に変換した後、(例えばフィッシャー・トロプシュ法による)合成気体の触媒反応でメタノール又は炭化水素を生成する。このアプローチは化学的には実行可能であり得るが、かなりのエネルギー量が必要であり、この技術の商業化は普及されていない。
【0004】
第2に、酸化種の存在下でのメタンの芳香族化が、ベンゼン及び他の芳香族炭化水素を生成するのに利用されている。初めに酸化的な脱水素芳香族化に注目が集まったが、C2収率及び選択性に関する制限が商業的実施を妨げている。
【0005】
第3に、非酸化条件下でのメタンの芳香族化が研究された。このような非酸化条件では、ベンゼンの生成が対応する酸化プロセスよりもかなり熱力学的に好ましくなくなる。このため本来、このようなプロセスは商業化に魅力的であろう規模で行うのは難しい。モリブデン含有アルミノシリケート、特にMo/ZSM−5及びMo/MCM−22は、非酸化的環境でのベンゼンへのメタンの変換に最も有望な候補物質であることが分かっているが、これらには重大な欠点がある。特に、報告された結果(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、及び非特許文献13)はメタン変換率が低い。さらに、触媒安定性の低下(少なくとも部分的にはコークス形成によるものだと思われる)が、この技術の商業化が実現されなかったことを意味している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L. Wang, L. Tao, M. Xie, G. Xu, J. Huang, Y. Xu, Catal. Lett. 21 (1993) 35
【非特許文献2】Y. Xu, S. Liu, L. Wang, M. Xie, X. Guo, Catal. Lett. 30 (1995) 135
【非特許文献3】F. Solymosi, A. Erdohelyi, A. Szoke, Catal. Lett. 32 (1995) 43
【非特許文献4】S. Wong, Y. Xu, W. Liu, L. Wang, X. Guo, Appl. Catal. A 136 (1996) 7
【非特許文献5】L. Chen, L. Lin, Z. Xu, T. Zhang, X. Li, Catal. Lett. 39 (1996) 169
【非特許文献6】D. Wang, J. H. Lunsford, M. P. Rosynek, Top. Catal. 3 (1996) 289
【非特許文献7】L. Wang, Y. Xu, S. Wong, W. Cui. X. Guo, Appl. Catal. A 152 (1997) 173
【非特許文献8】S. Liu, Q. Dong, R. Ohnishi, M. Ichikawa, Chem. Commun., 1997, 1445
【非特許文献9】F. Solymosi, J. Cserenyi, A. Szoke, T. Bansagi, A. Uszko, J. Catal. 165 (1997) 150
【非特許文献10】D. Wang, J. H. Lunsford, M. P. Rosynek, J. Catal. 169 (1997) 347
【非特許文献11】Y. Shu, Y. Xu, S. Wang, L. Wang, X. Guo, J. Catal. 170 (1997) 11
【非特許文献12】S. Liu, L. Wang, R. Ohnishi, m. Ichikawa, J. Catal. 181 (1999) 175
【非特許文献13】Y. Xu, X. Bao, L. Lin, J. Catal. 216 (2003) 386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって現時点では、メタン脱水素芳香族化は、高級炭化水素の合成のための潜在的に有用な経路であるが、この技術には重大な問題が存在するため、商業化は構想されていない。特に、コークス形成による触媒の急速な脱活性化の抑制が、産業上の利用の前に取り組まなければならない課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、非酸化的なメタン脱水素芳香族化に使用する触媒の触媒安定性を改善する新規の方法を同定し、そうすることで石油に基づく方法の代わりとなる非酸化的なメタン脱水素芳香族化の開発に重要な貢献をもたらした。
【0009】
最も一般的には、本発明は、非酸化的なメタン脱水素芳香族化触媒を、触媒前駆体からプロパンの存在下で触媒前駆体を加熱することにより調製することを提案している。このことが本発明者らによって見出され、これにより触媒安定性の驚くべき改善がもたらされる。メタン供給原料の変換率の改善も、前処理の結果として得ることができる。実施の形態では、このような前処理をせずに調製される触媒と比較して、ベンゼンに対する選択性も改善する。
【0010】
第1の態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱することを含む、方法を提供する。
【0011】
プロパンを含む処理気体の存在下で触媒前駆体を加熱する工程は、本明細書中で「前処理工程」又は「前処理」と称される。プロパンの存在下で触媒前駆体を加熱することにより生成される生成物は、本明細書中で「触媒」と称される。前処理をしていない触媒に対して言及する場合、この触媒は「非処理触媒」と称される。
【0012】
そのため本発明は、前処理方法であって、その生成物がメタンの非酸化的な脱水素芳香族化を触媒するのに適合した触媒である、前処理方法を提供する。特に、前処理工程は、触媒の触媒脱活性化速度を、非処理(又は異なる処理気体、例えばヘリウムを使用する前処理)触媒と比較して低減することができるように触媒前駆体を変える。
【0013】
驚くべきことに本発明者らは、前処理工程が、アルミノシリケートの性質に関係なく上述の利点を提供することを見出している。このため例えば、本明細書中で論じられるように、モリブデン含有ZSM−5及びMCM−22の両方が前処理工程から利益を受ける。
【0014】
好適には触媒前駆体はアルミノシリケート上に担持したモリブデンを含む。代替的には、モリブデン及びアルミノシリケートは混合物として存在し得る。
【0015】
好ましくは、アルミノシリケートはゼオライトである。好ましくは、ゼオライトはフレームワークタイプがMFIであるゼオライト及びフレームワークタイプがMWWであるゼオライトから選択される。特に好ましくは、ゼオライトはZSM−5(フレームワークタイプMFI)及びMCM−22(フレームワークタイプMWW)である。
【0016】
好ましくは、触媒前駆体はMo/ZSM−5及びMo/MCM−22から選択される。
【0017】
アルミノシリケートのSi/2Al比が10〜100、好ましくは15〜50の範囲であるのが適している。
【0018】
好ましくは、触媒前駆体中のモリブデンの一部又は全てが酸化物の形態で存在する。好適には、触媒前駆体中のモリブデンイオンの総数に基づき、少なくとも半分、好ましくは実質的に全て、より好ましくは全てのモリブデンが酸化物の形態である。好ましい形態の酸化物はMoOである。実際、触媒前駆体は、MoOとアルミノシリケートとの混合物から、又はアルミノシリケート上に担持されたMoOから生成され得る。酸化モリブデンはMoO2−又はMo246−の形態であってもよい。
【0019】
特に好ましい触媒前駆体はMoO/ZSM−5及びMoO/MCM−22の一方又は両方を含む。
【0020】
好ましくは、触媒前駆体中のモリブデンの一部又は全てがMo6+として存在する。好適には、触媒前駆体中のモリブデンイオンの総数に基づき、少なくとも半分、好ましくは実質的に全て、より好ましくは全てのモリブデンがMo6+として存在する。
【0021】
他の実施の形態において、触媒前駆体は方法が再活性化方法であれば使用済み触媒である。好適には、使用済み触媒をメタン脱水素芳香族化反応に使用している。典型的には、このような触媒は、本明細書中で論じられるようにコークス沈着物を含む。
【0022】
モリブデンの量(触媒前駆体の総重量に対する割合で表す)は、好適には少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%及び最も好ましくは少なくとも10%である。
【0023】
モリブデンの特に好ましい量は、1%〜20%、より好ましくは2%〜15%、より好ましくは5%〜15%、より好ましくは10%〜15%、より好ましくは11%〜13%の範囲、及び最も好ましくは約12%である。
【0024】
触媒前駆体はプロモーターを含むのが好ましい。このようなプロモーターは好適には遷位金属を含み、好ましい例は、Ga、Zn、Nb、Zr、La、Co、Fe、Ce、Ag、Y、V、Sr、W、Yb、Sm、Ni、Ru、Rh、Pt、Cu、Au、Al、Ti、Pb、Re、Ir、Si、Sn及びPdの内の1つ又は複数である。特に好ましいプロモーターはGa、Zn、Zr、Fe、W、Cu及びPdである。
【0025】
プロモーターの量は、メタン変換及びベンゼンの選択性を最適にするために選択することができる。しかしながら、プロモーターは、少なくとも0.1%の量(触媒前駆体の総重量に対する割合で表す)で存在するのが好ましい。好適にはプロモーターは、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも0.8%及び最も好ましくは少なくとも1%の量で存在する。
【0026】
プロモーターの量に関する特に好ましい範囲は、0.5%〜10%、より好ましくは0.5%〜5%、より好ましくは0.8%〜4%、より好ましくは0.8%〜3.5%及び最も好ましくは1%〜3%である。
【0027】
1つ又は複数のプロモーターを使用することができる。例えば、2つ又は3つの異なるプロモーターを使用することができる。
【0028】
触媒前駆体の粒径、表面積及び他の特性を、通常通り、当業者(skilled reader)の一般常識に従って選択することができる。
【0029】
前処理工程は好適には、前処理により生成される触媒がメタン脱水素芳香族化、具体的に非酸化的な脱水素芳香族化に特に適するように、触媒前駆体の構造変化を引き起こす。実際、実施の形態の前処理方法で生成された触媒は、各触媒前駆体と比較して異なる物理的/化学的特徴を有する。例えば、前処理の結果として酸化モリブデンが変化する。特に、酸化モリブデンを前処理により還元するのが好ましい。酸化モリブデンの存在をXRDにより検出することができる。このため好適には、触媒前駆体において酸化モリブデンに起因するピークが実質的に低減し、好ましくは前処理後には見えなくなる。物理的/化学的特徴の変化が、非処理触媒と比較した、メタンの非酸化的な脱水素芳香族化における触媒性能の改善に関与すると考えられている。これに関して、本発明者らは、本発明に従って使用する場合、プロパンが酸化モリブデンを炭化モリブデンに変換するのに十分反応性であることを見出している。
【0030】
特に、触媒は好ましくは、本明細書中で開示の方法に従って測定されるように、少なくとも2%、より好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも3.5%、より好ましくは少なくとも4%、より好ましくは少なくとも4.2%、より好ましくは少なくとも4.5%、より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも5.2%、より好ましくは少なくとも5.5%、及びより好ましくは少なくとも6%のベンゼン収率を提供する。
【0031】
好適には、触媒は、前処理しなかった触媒前駆体と比較して安定性が改善している。好ましくは触媒の活性保持率(APR)は、本明細書中で開示の方法に従って測定されるように、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、及び最も好ましくは少なくとも80%である。
【0032】
好適には、前処理工程の期間は少なくとも10分間、好ましくは少なくとも20分間である。
【0033】
好ましくは、前処理工程の期間は200分間以下、より好ましくは100分間以下、より好ましくは70分間以下、より好ましくは60分間以下、より好ましくは50分間以下、及び最も好ましくは40分間以下である。
【0034】
前処理工程の特に好ましい期間は10分間〜100分間、より好ましくは20分間〜40分間及び最も好ましくは約30分間である。
【0035】
これらの短い前処理時間が、特に触媒を調製するのに必要とされるエネルギーの低減に関連して多大な経済的利益を与える。このため、本発明の前処理工程により、触媒安定性を維持又は改善しながら、メタン脱水素芳香族化触媒を前処理又は活性化する既知の方法と比較して調製時間を低減することが可能となる。
【0036】
好適には、前処理工程は、少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも400℃、より好ましくは少なくとも450℃、より好ましくは少なくとも475℃、より好ましくは少なくとも490℃及び最も好ましくは少なくとも500℃の温度で行う。
【0037】
好適には、前処理工程は、700℃未満、より好ましくは650℃未満、より好ましくは600℃未満、より好ましくは550℃未満、より好ましくは525℃未満、及び最も好ましくは510℃未満の温度で行う。本発明者らは、前処理温度が高くなれば、急速なコークス形成が起こり得ることを見出している。
【0038】
上記で言及された上限値及び下限値は、任意の組み合わせで範囲を与えるように組み合わせてもよい。前処理温度に関する特に好ましい範囲は少なくとも300℃〜700℃未満、より好ましくは少なくとも400℃〜700℃未満、より好ましくは450℃〜650℃、より好ましくは475℃〜600℃、より好ましくは475℃〜550℃、より好ましくは475℃〜525℃及び最も好ましくは490℃〜510℃である。約500℃の温度が特に好ましい。
【0039】
好適には、処理気体流を与えるように、処理気体を触媒前駆体に供給する。当業者は、反応器設計、触媒前駆体の量及び触媒前駆体の形態に基づき、処理気体に適切な流量を選択することができる。
【0040】
指針として、触媒前駆体が300mg入った固定床連続流式反応器において、流量が8ml/分の処理気体(100%プロパン)が良好な結果をもたらすことを見出した。
【0041】
好適には、少なくとも一部の前処理工程では、処理気体の圧力は0.05MPa〜5MPaの範囲、好ましくは0.1MPa〜1MPaの範囲である。約0.1MPaの圧力(大気圧)が特に好ましい。
【0042】
好適には、処理気体の圧力は、少なくとも半分の前処理工程、好ましくは実質的に全て、最も好ましくは全ての前処理工程に関して上記で言及された範囲、及び好適には上記で言及された好ましい範囲内である。
【0043】
前処理工程の開始時には、処理気体の圧力は、上記の範囲、及び好適には上記で言及された好ましい範囲内であることが好ましい。
【0044】
処理気体は、プロパンの他に1つ又は複数の気体を含み得る。
【0045】
プロパンと組み合わせて使用され得る他の気体としては、H、CH、He、Ar、C、C10、NH及びNから選択される1つ又は複数の気体が挙げられる。
【0046】
しかしながら、処理気体は、少なくとも50mol%のプロパンを含むのが好ましい。好ましくは、処理気体は、少なくとも75mol%、より好ましくは少なくとも85mol%、より好ましくは少なくとも95mol%及びより好ましくは少なくとも99mol%のプロパンを含む。特に好ましい実施の形態では、処理気体は、実質的にプロパンから成り、好ましくは本質的にプロパンから成り、及び最も好ましくはプロパンから成る。
【0047】
特に指定のない限り、処理気体の存在下での前処理は、任意の他の気体の非存在下での前処理を意味する。
【0048】
特に好ましい実施の形態において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0049】
さらにより好ましい実施の形態において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0050】
さらにより好ましい実施の形態において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0051】
さらにより好ましい実施の形態において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含み、Moが触媒前駆体の総重量に基づき少なくとも10wt%の量で存在する、方法を提供する。
【0052】
最も好ましい実施の形態において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で約500℃の温度で約30分間、加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化反応における本発明の態様のいずれかに従って調製される触媒の使用を提供する。
【0054】
好ましくは、前処理工程を連続流式反応器で行う。しかしながら、前処理をバッチ式又は半バッチ式反応器で行ってもよい。
【0055】
同様に、触媒を使用する、続くメタン脱水素芳香族化を連続流式反応器で行うのが好ましい。しかしながら、バッチ式又は半バッチ式反応器を使用することもできる。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、少なくとも一部の酸化モリブデンを還元するように、プロパンを含む処理気体の存在下で酸化モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0057】
好ましくは、前処理前の触媒前駆体(precursor catalyst)中の酸化モリブデンイオンの総数に基づき、少なくとも半分、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは実質的に全て、及び最も好ましくは全ての酸化モリブデンを還元する。
【0058】
好適には、前処理前の前駆体触媒中の酸化モリブデンイオンの総数に基づき、少なくとも一部、好ましくは少なくとも半分、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは実質的に全て、及び最も好ましくは全ての酸化モリブデンを炭化モリブデンへと還元する。
【0059】
好ましくは、炭化モリブデンはMoCを含む。好ましくは炭化モリブデンは、本質的にMoCから成り、より好ましくはMoCから成る。
【0060】
このため、本発明のこの態様において、プロパンを含む処理気体による触媒の調製が好適には還元型モリブデン種、好ましくは炭化モリブデン(具体的にMoC)を生成する。還元型モリブデン種、炭化モリブデン及びMoCの一部又は全てが触媒のメタン脱水素芳香族化活性に関与し得る。
【0061】
好ましくは、本発明の方法は、触媒を使用してメタン脱水素芳香族化を行うさらなる工程を含む。そのため、本発明は、本明細書中で記載のように、処理気体の存在下で触媒前駆体を加熱することにより触媒を調製する工程と、それから触媒を使用してメタン脱水素芳香族化を行う工程とを含むメタン脱水素芳香族化の方法を提供する。
【0062】
さらなる態様において、本発明は、本発明に従って調製される触媒の使用を含むメタン脱水素芳香族化の方法を提供する。
【0063】
触媒を使用して脱水素芳香族化を行う工程は、本明細書中で「反応工程」と称される。
【0064】
したがって好ましくは、この方法は、触媒を使用して脱水素芳香族化反応を行う反応工程を含む。
【0065】
好適には、反応工程は非酸化的、すなわち非酸化的なメタン脱水素芳香族化である。
【0066】
好適には、反応工程は、少なくとも600℃の温度でC1炭化水素〜C5炭化水素から選択される反応気体を触媒に供給することを含む。
【0067】
好ましくは、反応気体は、C1アルカン〜C5アルカンから選択される。より好ましくは、反応気体はメタンを含む。より好ましくは、反応気体は、実質的にメタンから成り、より好ましくは本質的にメタンから成り、最も好ましくはメタンから成る。
【0068】
反応気体は、気体の混合物、例えばC1炭化水素〜C5炭化水素の混合物及び/又はC1炭化水素〜C5炭化水素とHとの混合物を含み得る。
【0069】
したがって、本発明は好ましくは、(i)本明細書中で記載のように、触媒を調製するために、プロパンを触媒前駆体に供給する工程と、それから(ii)メタン脱水素芳香族化条件下でメタンを触媒に供給する工程とを含む方法を提供する。
【0070】
言い換えれば、前処理工程の後に反応工程が続くのが好ましい。
【0071】
好適には、反応工程は、約1気圧(およそ0.1MPa)で反応気体を供給することを含む。
【0072】
好ましくは、反応工程の温度は少なくとも650℃、より好ましくは少なくとも675℃、より好ましくは少なくとも690℃及び最も好ましくは少なくとも約700℃である。反応は、最大で約850℃、好ましくは最大で約825℃、及び最も好ましくは最大で約800℃までの温度で行い得る。特に好ましい温度範囲は、約675℃〜約825℃、より好ましくは約700℃〜約800℃である。
【0073】
実施の形態において、反応工程は、前処理工程と同じ反応容器で行う。このため、容器間で触媒を移動する必要はない。さらなる利点として、前処理後、わずか短時間で触媒を反応工程に使用することができ、それにより該前処理触媒の特性の改善を十分に生かすことができる。実際、中間工程を全く用いずに、反応工程を前処理工程後に行うことが好ましい。好ましくは、前処理工程及び反応工程を同じ連続流式反応器で行う。
【0074】
好適には、反応気体の供給が始まる前、又は始まった直後、処理気体の供給を停止する。好ましくは、反応気体はメタンを含み、実質的にプロパンの非存在下で、好ましくはプロパンの非存在下でメタンを触媒に供給する。
【0075】
好適には、反応工程は前処理工程より高い温度で行う。したがってこの方法は、前処理後に温度を上昇させる工程を含むのが好ましい。
【0076】
好ましくはこの方法は、反応工程後に、少なくとも300℃の温度でプロパンを含む処理気体を触媒に供給する、さらなる工程を含む。このようにして、触媒は、メタン脱水素芳香族化に使用した後に再活性化することができる。
【0077】
プロパンで触媒を再活性化するさらなる工程は本明細書中で「再活性化工程」と称される。
【0078】
好適には、反応工程と再活性化工程とを好ましくは少なくとも2回繰り返す。このようにして、触媒の有用寿命を増大することができる。好適にはこのことは、触媒の交換が必要になる頻度を減らすことを意味する。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒の活性を維持する方法であって、メタン脱水素芳香族化中に、プロパンを含む処理気体を触媒に供給する工程を含む、方法を提供する。
【0080】
この態様で使用される「活性の維持」とは、触媒のメタン脱水素芳香族化活性が、処理気体の非存在下で行われる反応と比較して、少なくとも一部、及び好ましくは大部分のメタン脱水素芳香族化反応中で高くなっていることを意味する。
【0081】
この態様において、触媒安定性を、メタン脱水素芳香族化を行うのと同時にプロパンを供給することにより改善することができる。このようにして、触媒の「in−situ」処理を達成することができる。そのため、処理気体と反応気体(メタン)との同時供給により、反応気体のみと比較して、反応中での触媒活性が改善され得る。
【0082】
関連態様において、第1の態様の方法は、使用済み触媒を再活性化するために使用済み触媒に対して適用することができる。この態様では、以下で論じられるように、触媒前駆体は使用済み触媒である。
【0083】
さらなる態様において、本発明は、使用済み触媒を再活性化する方法であって、使用済み触媒は、メタン脱水素芳香族化反応に使用したものであり、モリブデン及びアルミノシリケートを含み、この方法は、使用済み触媒を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0084】
典型的に、使用済み触媒は、その表面上の一部又は全てにコークス沈着物を含む。上述のように、触媒上でのコークスの形成又は集積は、メタン脱水素芳香族化での触媒の使用の後に起こり、このためコークス沈着物は使用済み触媒の特徴である。典型的には、使用済み触媒の触媒活性は未使用触媒よりも低い。具体的には、使用済み触媒は好適には、ベンゼン収率が未使用触媒よりも低いことを特徴とする。
【0085】
さらなる態様において、本発明は、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程に従って調製されたメタン脱水素芳香族化触媒を提供する。
【0086】
さらなる態様において、本発明は、モリブデン及びアルミノシリケートを含むメタン脱水素芳香族化触媒であって、触媒の活性保持率が、700℃でのメタン脱水素芳香族化の15.5時間後に測定されるベンゼン収率に基づき少なくとも40%であることを特徴とする、メタン脱水素芳香族化触媒を提供する。
【0087】
好ましくは、触媒の活性保持率は少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%及び最も好ましくは少なくとも80%である。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、モリブデン及びアルミノシリケートを含むメタン脱水素芳香族化触媒であって、700℃でのメタン脱水素芳香族化反応において、少なくとも3.5%のベンゼン収率を提供することを特徴とする、メタン脱水素芳香族化触媒を提供する。
【0089】
好ましくは触媒は、少なくとも4%、より好ましくは少なくとも4.5%、より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5.5%及び最も好ましくは少なくとも6%のベンゼン収率を提供する。
【0090】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、この方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程を含む、処理気体の使用を提供する。
【0091】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、この方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため触媒の触媒性のメタン脱水素芳香族化活性が、該処理気体を使用せずに調製した触媒と比較してより長期間維持される、処理気体の使用を提供する。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、この方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため続くメタン脱水素芳香族化反応で、該処理気体を使用せずに調製した触媒と比較して、触媒のコークス化が起こる速度が低減する、処理気体の使用を提供する。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、この方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため700℃でのメタン脱水素芳香族化の15.5時間後に測定されるとき、活性保持率が少なくとも40%である触媒が提供される、処理気体の使用を提供する。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、この方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため触媒が700℃でのメタン脱水素芳香族化反応において、少なくとも3.5%のベンゼン収率を提供する、処理気体の使用を提供する。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、モリブデン及びアルミノシリケートを含むメタン脱水素芳香族化触媒上に形成されるコークス沈着物を一部又は全て取り除く方法での処理気体の使用を提供する。
【0096】
本発明の態様のいずれか1つ又は複数を本発明の他の態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせてもよい。同様に、特徴のいずれか1つ又は複数、及びいずれかの態様の任意の特徴を、他の態様のいずれか1つに適用してもよい。このため、任意で好ましい特徴の本明細書中での考察を一部又は全ての態様に適用してもよい。特に、処理気体、温度、圧力、期間、及び触媒前駆体の組成に関する任意で好ましい特徴は、他の態様全てに適用される。さらに、プロセス、方法又は使用に関する任意で好ましい特徴を生成物、特に触媒に適用してもよく、逆に生成物、特に触媒に関する任意で好ましい特徴をプロセス、方法又は使用に適用してもよい。
定義
本明細書中で使用されるような「アルミノシリケート」という用語は、当業者によく知られており、アルミニウム、ケイ素及び酸素を含む天然及び/又は合成無機構造物に関する。同様に、本明細書中で使用されるような「ゼオライト」という用語は、当業者によく知られており、様々なカチオンに適応することができる「開放(open)」構造を有する天然及び合成アルミノシリケートに関する。
【0097】
「ゼオライトフレームワークタイプ」及び「フレームワークタイプ」という用語は、当業者によく知られており、ゼオライト構造を同定するために国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)(IZA)の構造委員会で適用された分類体系に関し、この分類体系はIUPACに承認されている。この分類体系は、170を超える異なるゼオライトフレームワークトポロジーのそれぞれに対して、フレームワークタイプコード(FTC)を割り当てている。
【0098】
フレームワークタイプコードに関する詳細な情報はIZAのウェブページ(www.iza-structure.org/)で見つけることができる。これらのフレームワークタイプコードの多くは、Ch. Baerlocher, W. M. Meier and D. H. Olson, Atlas of Zeolite Framework Types, 5th revised edition, Elsevier, Amsterdam, 2001に複写されている。
【0099】
本発明はフレームワークタイプMFI及びMWWに関し、この両方が当業者にとって既知である。
【0100】
同様に、ZSM−5及びMCM−22の好ましいゼオライト構造が、このようなゼオライトを調製する方法と同様、当業者にとって既知である。「ZSM−5」という用語は「HZSM−5」と区別なく用いられ、その両方がプロトン化形態のゼオライトを指す。同様に、「MCM−22」及び「HMCM−22」という用語も区別なく用いられる。
【0101】
本明細書中で使用されるような「脱水素芳香族化」及び「メタン脱水素芳香族化」という用語は、当業者によく知られており、C1炭化水素〜C5炭化水素及び/又はメタンを含む反応気体からの芳香族化合物、特にベンゼンの生成に関する。特に、当業者には、メタン脱水素芳香族化の場合、反応気体は、メタンの他に1つ又は複数の他の気体、例えばC1炭化水素〜C5炭化水素を含み得ることを理解されたい。
【0102】
本明細書中で使用されるような「Si/2Al比」という用語は、当業者によく知られており、アルミノシリケートにおけるケイ素イオンの数とアルミニウムイオンの2倍数との相対比に関する。
【0103】
本明細書中で使用されるような「非酸化的なメタン脱水素芳香族化」という用語は、当業者によく知られており、酸化種の非存在下で行われる、上記で論じられる反応に関する。実際、本明細書中でのメタン脱水素芳香族化に対する言及は、好ましい非酸化的なメタン脱水素芳香族化を含む。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下の方法を本発明の実施例で使用した。
(1)触媒調製
触媒前駆体を、適当なゼオライト(ZSM−5又はMCM−22)を算出量のモリブデン酸アンモニウム溶液に含浸させ、その後乾燥及び焼成することにより調製した。
(2)触媒前処理
前処理を、選択された前処理時間、及び選択された前処理温度で、大気圧で300mgの触媒を用いて、固定床反応器において行った。
(3)触媒試験
試験反応(メタン脱水素芳香族化)を、大気圧で300mgの触媒を用いて固定床反応器において行った。反応生成物を、ガスクロマトグラフィを使用して解析及び同定した。
【0105】
触媒の性能を、活性保持率(APR)及びベンゼン収率(BZ収率)を参照して測定した。
【0106】
APRを以下の通りに算出した:
APR(%)=稼動時(time on stream)(TOS)のBZ収率/最大BZ収率。
【0107】
本明細書中でのAPRに対する言及は、特に指定のない限り、15.5時間後に行った測定に基づくものとする。
【0108】
ベンゼン収率を以下の通りに産出した:
BZ収率=ベンゼン(生成)/メタン(供給)/6
【実施例】
【0109】
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6
アルミノシリケートZSM−5担体におけるSi/2Al比を、当業者に既知の技法に従って調整した。
【0110】
Mo/ZSM−5触媒前駆体を、モリブデン酸アンモニウム溶液への含浸、その後の乾燥及び焼成により、ZSM−5及びモリブデン前駆体から調製した。
【0111】
Pd、Zn及びGaの形態のプロモーターを、モリブデン酸アンモニウムの代わりに対応する金属塩、及びゼオライトZSM−5の代わりにMo修飾ゼオライトを使用したことを除いて、Mo/ZSM−5触媒を調製するのと同じ方法を使用して、触媒の一部に組み込んだ。プロモーターをアルミノシリケートに組み込むためのこの及び他の従来技法は当業者にとって既知である。
【0112】
前駆体触媒を、以下の通りに触媒A〜触媒Dとして指定した:
触媒A:12%Mo/ZSM−5(30)
触媒B:12%Mo−3%Ga/ZSM−5(30)
触媒C:12%Mo−3%Zn/ZSM−5(30)
触媒D:12%Mo−1%Pd/ZSM−5(30)。
【0113】
括弧内の数字は、ZSM−5担体のSi/2Al比を示す。
【0114】
実施例1〜実施例4では、それから触媒A〜触媒Dのそれぞれを、本発明に従って前処理方法にかけた。触媒(300mg)を連続流式反応器に入れ、500℃の前処理温度まで加熱し、プロパンを、流量8ml/分、0.1MPaの圧力で触媒に供給した。前処理を30分間行った。
【0115】
比較例1及び比較例2では、触媒Aを、7.5ml/分の流量でそれぞれ、メタン及びHにおいて500℃で30分間前処理にかけた。実施例1〜実施例5と同じ反応器を使用した。
【0116】
比較例3〜比較例6では、触媒A〜触媒Dのそれぞれを、10ml/分の流量でHeにおいて700℃で40分間前処理にかけた。実施例1〜実施例5と同じ反応器を使用した。
【0117】
それから、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6での各被前処理触媒を、メタン脱水素芳香族化活性に関して試験した。それぞれの被前処理触媒(300mg)に対して、メタンを、7.5ml/分の流量、及び0.1MPaの圧力で反応容器に供給した。反応温度は700℃であった。反応生成物を、既知の反応生成物に対して行った事前の測定を参照して、ガスクロマトグラフィを使用して検出及び定量化した。
【0118】
被前処理触媒の試験結果を以下の表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
実施例5及び実施例6、並びに比較例7〜比較例10
Mo/MCM−22触媒前駆体を、モリブデン酸アンモニウム溶液への含浸、その後の乾燥及び焼成により、MCM−22及びモリブデン前駆体から調製した。
アルミノシリケートMCM−22担体におけるSi/2Al比を、当業者に既知の技法に従って調整した。
【0121】
前駆体触媒を、以下の通りに触媒E及び触媒Fとして指定した:
触媒E:12%Mo/MCM−22(19)
触媒F:12%Mo/MCM−22(25)。
【0122】
括弧内の数字は、MCM−22担体のSi/2Al比を示す。
【0123】
実施例5及び実施例6では、触媒E及び触媒Fのそれぞれを、本発明に従って前処理方法にかけた。触媒(300mg)を連続流式反応器に入れ、500℃の前処理温度まで加熱し、プロパンを、流量8ml/分、0.1MPaの圧力で触媒に供給した。前処理を30分間行った。
【0124】
比較例7及び比較例8では、触媒Eを、7.5ml/分の流量でそれぞれ、メタン及びHにおいて500℃で30分間前処理にかけた。実施例5及び実施例6と同じ反応器を使用した。
【0125】
比較例9では、触媒Eを、10ml/分の流量でHeにおいて700℃で40分間前処理にかけた。実施例5及び実施例6と同じ反応器を使用した。
【0126】
比較例10では、触媒Fを、10ml/分の流量でHeにおいて700℃で40分間前処理にかけた。実施例5及び実施例6と同じ反応器を使用した。
【0127】
それから、実施例5及び実施例6、並びに比較例7〜比較例10での被前処理触媒を、メタン脱水素芳香族化活性に関して試験した。それぞれの被前処理触媒(300mg)に対して、メタンを、7.5ml/分の流量、及び0.1MPaの圧力で反応容器に供給した。反応温度は700℃であった。反応生成物を、既知の反応生成物に対して行った事前の測定を参照して、ガスクロマトグラフィを使用して検出及び定量化した。
【0128】
被前処理触媒の試験結果を以下の表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
この結果により、プロパン前処理がCH及びH前処理と比較してより高いベンゼン収率及びより良好な触媒安定性を与えることが示されている。このことは、プロモーターを用いる又は用いない触媒についても同様である。
【0131】
MCM−22担持触媒に対するプロモーターの効果は、ZSM−5担持触媒と同じ傾向を示す。
【0132】
さらにこの結果により、プロパンによる前処理がZSM−5アルミノシリケートとMCM−22アルミノシリケートとの両方に関して活性及び触媒安定性の改善を与えることが示されている。この驚くべき結果は、本発明の前処理工程が、アルミノシリケート触媒の構造に関係なくアルミノシリケート触媒に適用可能であることを示唆している。
【0133】
He前処理(700℃、40分)と比較して、プロパン前処理を、より高いベンゼン収率及び良好な触媒安定性を与えながら、より低い温度、及びより短期間(500℃、30分)で行うことができる。
【0134】
このため、プロパン前処理を使用して、触媒に関して高収率の芳香族炭化水素及び良好な触媒安定性を得ることができる。さらに、前処理温度の低下及び前処理時間の短縮の結果としてエネルギー節約が為され得る。
【0135】
メタン及びH前処理と比較して、同じ前処理条件下でプロパンを使用する場合のベンゼン収率及び触媒安定性はより良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記前処理工程を450℃〜650℃の範囲の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前処理工程を475℃〜525℃の範囲の温度で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理気体が本質的にプロパンから成る、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前処理工程の期間が10分間〜100分間である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前処理工程の期間が20分間〜40分間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒前駆体がアルミノシリケート上に担持したモリブデンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルミノシリケートがゼオライトである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゼオライトが、フレームワークタイプがMFIであるゼオライト及びフレームワークタイプがMWWであるゼオライトから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ゼオライトがZSM−5及びMCM−22から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒前駆体がMo/ZSM−5及びMo/MCM−22から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミノシリケートのSi/2Al比が10〜100の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒前駆体がZSM−5であり、Si/2Al比が15〜50の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒前駆体がMCM−22であり、Si/2Al比が15〜50の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記モリブデンの一部又は全てが酸化物の形態で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒前駆体中のモリブデンイオンの総数に基づき、少なくとも半分の前記モリブデンが酸化物の形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化モリブデンがMoOを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理気体の存在下で前記触媒前駆体を加熱する工程は、該触媒前駆体中の前記モリブデンの一部又は全てを還元することを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記モリブデンの一部又は全てを還元することがMoCを生成することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記モリブデンが少なくとも1%の量(前記触媒前駆体の総重量に対する割合で表す)で存在する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記モリブデンが少なくとも5%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒前駆体がGa、Zn、Nb、Zr、La、Co、Fe、Ce、Ag、Y、V、Sr、W、Yb、Sm、Ni、Ru、Rh、Pt、Cu、Au、Al、Ti、Pb、Re、Ir、Si、Sn及びPdから選択されるプロモーターを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記プロモーターがGa、Zn、Zr、Fe、W、Cu及びPdから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処理気体の圧力が0.05MPa〜5MPaの範囲である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記圧力が0.1MPa〜1MPaの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で加熱する工程を含む、方法。
【請求項27】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含む、方法。
【請求項28】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含む、方法。
【請求項29】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で450℃〜550℃の範囲の温度で約10分間〜50分間、加熱する工程を含み、Moが触媒前駆体の総重量に基づき少なくとも10wt%の量で存在する、方法。
【請求項30】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法であって、Mo/ZSM−5又はMo/MCM−22を含む触媒前駆体を、本質的にプロパンから成る処理気体の存在下で約500℃の温度で約30分間、加熱する工程を含む、方法。
【請求項31】
メタン脱水素芳香族化の方法であって、メタン脱水素芳香族化反応を、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法により調製した触媒を使用して行う反応工程を含む、方法。
【請求項32】
前記反応工程が675℃〜825℃の範囲の温度で前記触媒にメタンを供給することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記反応工程の後に、少なくとも300℃の温度でプロパンを含む処理気体を前記触媒に供給する再活性化工程を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記反応工程及び前記再活性化工程を繰り返す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
メタン脱水素芳香族化触媒の活性を維持する方法であって、メタン脱水素芳香族化中に、プロパンを含む処理気体を該触媒に供給する工程を含む、方法。
【請求項36】
使用済み触媒を再活性化する方法であって、該使用済み触媒は、メタン脱水素芳香族化反応に使用したものであり、モリブデン及びアルミノシリケートを含み、該方法は、該使用済み触媒を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程を含む、方法。
【請求項37】
モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程に従って調製されたメタン脱水素芳香族化触媒。
【請求項38】
前記触媒前駆体が、Mo/ZSM−5及びMo/MCM−22から選択され、該触媒前駆体を450℃〜650℃の範囲の温度で加熱する、請求項37に記載のメタン脱水素芳香族化触媒。
【請求項39】
請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法に従って調製されたメタン脱水素芳香族化触媒。
【請求項40】
モリブデン及びアルミノシリケートを含むメタン脱水素芳香族化触媒であって、該触媒の活性保持率が、700℃でのメタン脱水素芳香族化の15.5時間後に測定されるベンゼン収率に基づき少なくとも40%であることを特徴とする、メタン脱水素芳香族化触媒。
【請求項41】
モリブデン及びアルミノシリケートを含むメタン脱水素芳香族化触媒であって、700℃でのメタン脱水素芳香族化反応において、少なくとも3.5%のベンゼン収率を提供することを特徴とする、メタン脱水素芳香族化触媒。
【請求項42】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、該方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で少なくとも300℃の温度で加熱する工程を含む、処理気体の使用。
【請求項43】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、該方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため該触媒の触媒性のメタン脱水素芳香族化活性が、該処理気体を使用せずに調製した触媒と比較してより長期間維持される、処理気体の使用。
【請求項44】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、該方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため続くメタン脱水素芳香族化反応で、該処理気体を使用せずに調製した触媒と比較して、該触媒のコークス化が起こる速度が低減する、処理気体の使用。
【請求項45】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、該方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため700℃でのメタン脱水素芳香族化の15.5時間後に測定されたとき、活性保持率が少なくとも40%である該触媒が提供される、処理気体の使用。
【請求項46】
メタン脱水素芳香族化触媒を調製する方法での処理気体の使用であって、該方法が、モリブデン及びアルミノシリケートを含む触媒前駆体を、プロパンを含む該処理気体の存在下で加熱する工程を含み、このため該触媒が700℃でのメタン脱水素芳香族化反応において、少なくとも3.5%のベンゼン収率を提供する、処理気体の使用。
【請求項47】
メタン脱水素芳香族化反応における請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法により調製された触媒の使用。

【公表番号】特表2011−509823(P2011−509823A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543088(P2010−543088)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000018
【国際公開番号】WO2009/091336
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(508320734)エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】