説明

触媒層を用いた排水処理装置および排水処理方法

【課題】オゾンと多段に設けられた触媒層を用いて排水中の有機物を分解処理するのに際して、これらの触媒層における分解処理を効率的に行う。
【解決手段】主として排水中の有機物をオゾンによって分解処理する第1触媒層2と、この第1触媒層2から排出された排水中のオゾンを主として分解する第2触媒層3と、これら第1、第2触媒層2、3における排水の空塔速度を異なる速度に制御する制御手段Cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンと触媒を用いて排水中の有機物を分解処理する触媒を用いた排水処理装置および排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水中の有機物を分解する手段として、オゾン処理と酸化触媒処理を併用する技術が知られている。このような技術では、分解除去を効率的に行うために、例えば特許文献1、2などに記載されているように、反応塔内で触媒層を上下2段とし、下段の第1触媒層の下方においてオゾン含有ガスと排水を混合して、そのオゾン混合排水を上向流により第1触媒層に供給して有機物を分解処理し、さらにこうして有機物が分解されたオゾン混合排水をそのまま上段の第2触媒層に供給して、残留したオゾンを分解処理することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−157986号公報
【特許文献2】特開2001−321787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら特許文献1、2に記載された処理装置では、1つの反応塔の上下段に第1、第2触媒層を直列的に配設しているため、これらの触媒層における排水の空塔速度は等しくなり、例えば排水成分の変動が生じた場合などに下段の第1触媒層での処理量を多くしようとして空塔速度を高めると、第2触媒層における空塔速度も高められてしまい、残留したオゾンを十分に分解することができなくなるおそれがある。
【0005】
また、下段の第1触媒層から排出される排水中のオゾンは、その全量が上段の第2触媒層に供給されることになるため、第1触媒層の反応条件等によっては第2触媒層での負荷が大きくなるとともに、この第2触媒層に供給される排水に残留したオゾンを有効に利用することができなくなるおそれもあった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のようにオゾンと多段に設けられた触媒層を用いて排水中の有機物を分解処理するのに際して、これらの触媒層における分解処理を効率的に行うことが可能な触媒を用いた排水処理装置および排水処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の触媒層を用いた排水処理装置は、主として排水中の有機物をオゾンによって分解処理する第1触媒層と、この第1触媒層から排出された排水中のオゾンを主として分解する第2触媒層と、これら第1、第2触媒層における排水の空塔速度を異なる速度に制御する制御手段とを備えることを特徴とする。また、本発明の触媒層を用いた排水処理方法は、第1触媒層において主として排水中の有機物をオゾンにより分解処理するとともに、第2触媒層において上記第1触媒層から排出された排水中のオゾンを主として分解し、これら第1、第2触媒層における排水の空塔速度を制御手段によって異なる速度に制御することを特徴とする。
【0008】
従って、このような構成の触媒を用いた排水処理装置および排水処理方法によれば、こうして上記制御手段によって第1、第2触媒層における排水の空塔速度を異なる速度に制御することにより、排水成分の変動が生じた場合などにも、各触媒層に適した条件での排水の処理を図ることが可能となる。例えば、一つに、上記制御手段によって、上記第1触媒層における排水の空塔速度を、上記第2触媒層における排水の空塔速度よりも高い速度に制御することにより、主として排水中の有機物をオゾンによって分解処理するこの第1触媒層においては反応速度を高めて触媒の使用量を低減しながら処理量を増大させつつ、空塔速度の低い第2触媒層では残留オゾンを十分に分解することが可能となるとともに、この第2触媒層への負荷も軽減することができる。
【0009】
ここで、このように第1、第2触媒層における排水の空塔速度を異なる速度に制御する制御手段として、上記第1触媒層の一端部側から上記排水の一部を抜き出して他端部側に循環させる循環経路を設けることができる。こうして第1触媒層の排水の一部を抜き出して循環させることにより、第1触媒層における空塔速度を例えば上述のように高い速度に制御しつつ、この第1触媒層を通過して抜き出された排水中の残留オゾンを有効利用することができる一方で、この第1触媒層から第2触媒層に供給される排水の供給量は低減してその空塔速度を相対的に低く抑え、第2触媒層におけるより確実な残留オゾンの分解や負荷の軽減を図ることができる。
【0010】
なお、こうして上記制御手段を、第1触媒層の一端部側から上記排水の一部を抜き出して他端部側に循環させる循環経路とする場合には、第1に、この循環経路を、上記第1触媒層の上端部側から上記排水の一部を抜き出して下端部側に循環させるものとすることができる。この場合には、供給される排水中の有機物を第1触媒層においてオゾンにより確実に分解処理することができるとともに、第1触媒層における排水の流れが上向流となるため、排水中の固形物の触媒への付着が触媒層の下側で多くなり、逆洗を行うことによって容易に排出することが可能となる。
【0011】
一方、これとは逆に、第2に、上記循環経路を、上記第1触媒層の下端部側から上記排水の一部を抜き出して上端部側に循環させるものとすることもできる。この場合には、第1触媒層の排水の流れが下向流となるため、排水の流れによる触媒の浮き上がりを防止することが容易となる。
【0012】
なお、こうして制御手段として排水の循環経路を設ける場合において、この上記循環経路において抜き出された排水が再び供給される上記第1循環層の他端部側への接続部分には、上記排水に混合したオゾンを微細気泡化するマイクロバブル発生装置を備えることにより、微細気泡化されたオゾンと触媒との接触効率を向上させるとともに、排水中にオゾンを均一に分散させることができ、一層効率的な有機物の分解処理を促すことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、排水成分の変動が生じた場合などでも、第1、第2触媒層でそれぞれ好適な条件で排水の処理を図ることが可能となり、排水中の有機物の効率的な分解処理を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示す実施形態の変形例を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の触媒を用いた排水処理装置の第1の実施形態を示すものである。この図1において符号1で示すのは、鉛直縦方向に立設された筒状の反応器であり、本実施形態ではその断面積は縦方向に亙って略一定とされている。そして、この反応器1の内部には、その下段に第1触媒層2が反応器1の底面との間に間隔をあけて配設されるとともに、上段にはこの第1触媒層2との間と反応器1の上面(天井面)との間に間隔をあけて第2触媒層3が配設されている。
【0016】
これらの第1、第2触媒層2、3は、例えば酸化ニッケルを主成分とする粒状、ペレット状、あるいはハニカム状の酸化触媒を充填して、図示されない網状あるいは穴あき板状等の触媒押さえによって所定の層厚に保持したものであり、本実施形態では第1触媒層2の層厚が第2触媒層よりも厚くされるとともに、第1、第2触媒層2、3の触媒は同一種のものとされている。第1触媒層2は主として反応器1に供給される排水中の有機物の分解を該排水中に混合させられたオゾンによって行い、第2触媒層3はこうして有機物が分解された排水中の残留オゾンの分解を主として行う。
【0017】
このような反応器1に供給される排水は、例えば塩を含む有機物含有排水であって、排水供給源4から循環ポンプ5により反応器1に供給されるとともに、この排水供給源4から循環ポンプ5への排水の供給経路Aには、流量計6およびバルブ7を介してオゾン発生装置8が接続されており、このオゾン発生装置8によって発生させられたオゾンが排水と混合させられて反応器1に供給される。ここで、このオゾン発生装置8は、例えば放電式など公知の方式のものであって、20vol%以下の濃度のオゾンを発生させて上記排水に混合させる。
【0018】
また、こうしてオゾンが混合させられた排水の上記循環ポンプ5から反応器1への供給経路Aには、流量計9およびバルブ10を介して熱交換器11が配設されている。この熱交換器11は、冷却水供給源12からバルブ13を介して供給される冷却水によって、反応器1に供給される排水を冷却して温度調節するものであり、バルブ13は、後述する反応器1から返送させられて循環する排水の温度により制御される。
【0019】
さらに、この熱交換器11から反応器1への排水の供給経路Aには、マイクロバブル発生装置14が介装されている。このマイクロバブル発生装置14は、例えばオゾンが混合させられた排水の旋回流を発生させて衝突板に衝突させることにより、混合させられたオゾンの気泡を0.5μm〜30μm程度の直径に微細気泡化するものであり、こうして微細気泡化されたオゾンが混合させられた排水が反応器1に供給される。
【0020】
ここで、本第1の実施形態では、反応器1内において上記第1触媒層2の下端部側の上記底面との間隔部分に排水が供給されるように、排水の供給経路Aが接続されている。そして、この下端部側とは第1触媒層2を挟んで反対側の第1触媒層2の上端部側、すなわち第1触媒層2と第2触媒層3との間の間隙部分には、反応器1に排水の返送経路Bが接続されていて、反応器1に供給された排水の一部が抜き出し可能とされており、この返送経路Bは、上記排水供給源4から循環ポンプ5へ向かう排水の供給経路Aにおいて、オゾン発生装置8からのオゾンが排水に混合される位置の手前に接続されている。
【0021】
従って、本実施形態では、これら供給経路Aと返送経路Bとにより、第1触媒層2の一端部側(本実施形態では第1触媒層2の上端部側)から排水の一部を抜き出して他端部側(本実施形態では第1触媒層2の下端部側)に循環させる循環経路Cが形成されることになり、この循環経路Cによって、第1触媒層2と第2触媒層3における排水の空塔速度を異なる速度に制御する制御手段が構成される。ここで、上記熱交換器11のバルブ13は、この循環経路Cの返送経路Bに返送させられる排水の温度によって制御される。
【0022】
一方、反応器1内において上段の第2触媒層3の上端部側、すなわち第2触媒層3と反応器1の上面との間の間隙部分には排水経路Dが接続されていて、第2触媒層3によってオゾンが分解させられた排水が処理水として排出させられる。さらに、この第2触媒層3の上端部側の、上記排水経路Dとの接続位置よりもさらに上方(本実施形態では反応器1の上面)には排ガス経路Eが接続されていて、排ガス中に残留しているオゾンがオゾン分解槽15を介して分解処理されて排出される。
【0023】
このように構成された触媒を用いた排水処理装置、および該処理装置による本発明の触媒層を用いた排水処理方法では、主として排水中の有機物をオゾンによって分解処理する第1触媒層2と、この第1触媒層2から排出された排水中のオゾンを主として分解する第2触媒層3とにおける排水の空塔速度が、制御手段としての循環経路Cによって第1触媒層2の一端部(上端部)側から排水の一部を抜き出して他端部(下端部)側に循環させることにより、異なる速度に制御される。
【0024】
例えば、この循環経路Cの循環ポンプ5による反応器1への排水の供給量(循環量)を増大させた場合には、第1触媒層2における排水の空塔速度は高くなるが、この第1触媒層2において有機物が分解処理された排水の一部は返送経路Bから抜き出されて供給経路Aに循環させられるので、第2触媒層3の排水の空塔速度は第1触媒層2に対して低くなる。
【0025】
このため、主として有機物を分解処理する第1触媒層2では、反応速度を高めることができて効率的な分解を促すことができ、触媒使用量を低減しつつ排水の成分や排水処理量の増大にも対応することができる。その一方で、第2触媒層3においては、空塔速度が低くなることにより排水の滞留時間を例えば30分〜2時間程度と長く確保することができるので、排水中に残留したオゾンを確実に分解することができるとともに、第2触媒層3における触媒への負荷を軽減することができ、さらには第1触媒層2で分解しきれなかった有機物が排水中に残存していたとしても、この第2触媒層3で分解されたオゾンから発生する活性酸素によってこれを分解することが可能となる。なお、こうして第1触媒層2における空塔速度を第2触媒層3における空塔速度よりも高い速度とする場合には、第1触媒層2の空塔速度は100〜10000h−1程度の範囲に、また第2触媒層3の空塔速度は0.5〜10h−1程度の範囲に設定されるのが望ましい。
【0026】
このように、上記構成の排水処理装置によれば、第1、第2触媒層2、3における排水の空塔速度を制御手段によって異なる速度に制御することにより、処理する排水の成分や処理量に変動が生じた場合などにも、各触媒層に適した条件で確実な排水の処理を図ることが可能となる。
【0027】
特に、本実施形態では、この制御手段が、第1触媒層2において有機物が分解処理された排水を、この第1触媒層2の一端部側から返送経路Bに抜き出して循環させ、供給経路Aを経て再び第1触媒層2の他端部側から該第1触媒層2に供給する循環経路Cであるので、排水に供給されたオゾンを有効利用して、触媒とオゾンとの接触効率の向上を図ることができる。また、こうして第1触媒層2において有機物が分解処理された排水に、供給経路Aにおいてオゾン発生装置8からオゾンが供給されることで、排水中のオゾンの溶存率を高めることも期待でき、さらに効率的な有機物の分解を促すことができる。
【0028】
さらに、こうして制御手段を構成する循環経路Cが、本実施形態では第1触媒層2の上端部側から返送経路Bに抜き出した排水を、供給経路Aの循環ポンプ5によって循環させて第1触媒層2の下端部側から供給するようにされており、従って排水供給源4から供給された排水は、必ず第1触媒層2においてオゾンにより有機物が分解処理されて、一部が循環させられるとともに残りは第2触媒層3において処理されることになる。このため、この第2触媒層3における負荷を一層確実に軽減することができるとともに、オゾンもより有効に利用することが可能となる。また、第2触媒層3を設けることで、残留するほとんどのオゾンを分解してオゾン分解槽15の負荷を低減することが可能であり、場合によってはオゾン分解槽15を不要とすることができる。
【0029】
また、こうして第1触媒層2の下端部側から供給された排水が上端部側から抜き出されることで、第1触媒層2では排水が上向流を形成することになり、従って排水中に固形物が含有されていて第1触媒層2の触媒に付着を生じたとしても、主として第1触媒層2の下側の触媒に付着することになる。このため、こうして固形物の付着により第1触媒層2における有機物の分解効率が低下したときには、上記とは逆に返送経路Bから洗浄水を供給して供給経路Aから排出するように逆洗を行うことにより、第1触媒層2の下部に付着した固形物を容易に洗浄して除去することが可能となる。
【0030】
さらにまた、本実施形態では、排水の供給経路Aにマイクロバブル発生装置14が設けられており、第1触媒層2に供給される直前で排水中のオゾンの気泡が微細化されるので、この第1触媒層2の触媒とのオゾンの接触効率や接触面積を向上させるとともに、排水中に均一にオゾンを分散させることができて、より一層効率的で確実な有機物の分解処理を図ることができる。
【0031】
なお、上述のように第1触媒層2の下端部側に供給経路Aを接続するとともに上端部側に返送経路Bを接続し、排水が第1触媒層2で上向流を形成するように循環経路Aを構成する場合には、図2に示す第1の実施形態の変形例のように第1触媒層2および循環経路Aを複数段(図2では2段)に構成することも可能である。ここで、この図2に示す変形例や後述する図3に示す第2の実施形態において、図1に示した第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を配して説明を簡略化する。また、この図2に示す変形例では、流量計6、9やバルブ7、13などの一部要素の図示が略されている。
【0032】
この変形例では、反応器1の下段と中段とにそれぞれ第1触媒層2A、2Bが間隔をあけて配設されており、これらの第1触媒層2A、2Bの間と、中段の第1触媒層2Bと上段の第2触媒層3との間には、中央部に開口を有する仕切板1A、1Bが配設されている。そして、下段の第1触媒層2Aにおいては、その下端部側に排水の循環経路Cの供給経路Aが接続されるとともに、上端部側の上記仕切板1Aとの間には同循環経路Cの返送経路Bが接続されている。なお、仕切板1A、1Bに設けられる開口は、中央部に限定されることなく、複数の開口を設けても良い。
【0033】
一方、中段の第1触媒層2Bにおいては、その下端部側の上記仕切板1Aとの間に、この中段の第1触媒層2Bに排水を循環させる循環経路Cの供給経路Aが接続されるとともに、この第1触媒層2Bにより処理された排水の一部を抜き出して返送する返送経路Bは、該第1触媒層2Bとその上端部側の仕切板1Bとの間に接続されている。また、この中段の第1触媒層2Bの循環経路Cには、オゾン発生装置8は接続されているが、排水供給源4は接続されてはいない。
【0034】
このような第1の実施形態の変形例の触媒を用いた排水処理装置では、第1の実施形態そのものと同様の効果を得ることができる上、第1触媒層2が複数段であるため、これら第1触媒層2A、2Bの間でも排水の空塔速度を異なるものとすることができ、さらに効率的な有機物の分解処理を図ることができる。例えば、排水供給源4に接続された循環経路Cを有する下段の第1触媒層2Aでは空塔速度を高くして有機物の分解効率も高める一方、中段の第1触媒層2Bでは下段よりも空塔速度を低くして、触媒への負荷を軽減しつつ下段の第1触媒層2Aから仕切板1Aの開口を通って供給された排水中の有機物を完全に分解し、さらに上段の第2触媒層3で排水中に残留するオゾンを分解処理するように構成することができる。
【0035】
次に、図3に示す第2の実施形態では、第1の実施形態とは逆に、循環経路Cの返送経路Bが第1触媒層2の下端部側(第2の実施形態における第1触媒層2の一端部側)の反応器1底面に接続されるとともに、供給経路Aは第1触媒層2の上端部側(第2の実施形態における第1触媒層2の他端部側)に接続されていて、制御手段を構成する循環経路Cが、この第1触媒層2の下端部側から排水の一部を抜き出して上端部側に循環させるものされている。
【0036】
従って、この第2の実施形態において、オゾンが混合された排水は、循環ポンプ5によって供給経路Aから反応器1に供給されて、下向流を形成するように第1触媒層2と接触することにより有機物が分解され、その一部は返送経路Bから抜き出されて循環させられるとともに、残りは上段の第2触媒層3によって処理されて排水される。そして、この第2の実施形態でも、上記循環ポンプ5による排水の供給量(循環量)を増大させた場合には、第1触媒層2における排水の空塔速度は高くなる一方で、第2触媒層3における排水の空塔速度はこれに対して低くなるので、第1の実施形態と同様に排水の成分や処理量の変動に応じた効率的な処理を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のように第1触媒層2における排水の流れが下向流となる場合には、この第1触媒層2における触媒の浮き上がりを、第1触媒層2の上面に触媒押さえを設けることなく容易に防止することができる。このため、装置構造の簡略化を図ることができるとともに、オゾンを混合した排水を第1触媒層2において直接的に触媒に接触させることができて、有機物を効果的に分解することが可能となる。
【0038】
なお、これら第1の実施形態とその変形例、および第2の実施形態では、単一の反応器1の上段と下段、あるいは上中下段に第1、第2触媒層2(2A、2B)、3を配設した構成としているが、これら第1、第2触媒層は、第2触媒層が第1触媒層の下流側にあれば、別置きの異なる反応器に配設されて、これらの反応器を接続経路で接続した構成としてもよい。ただし、このような場合でも、ガス状のオゾンを、ガス溜まりを生じることなく第2触媒層の触媒に効率よく接触させるには、第2触媒層を配設した反応器は、第1触媒層を配設した反応器の上方に設置されるのが好ましい。
【0039】
また、上記実施形態および変形例では、上述のように第1、第2触媒層2、3における空塔速度を異なる速度とする制御手段として、第1触媒層2の一端部側から排水の一部を抜き出して他端部側に循環させる循環経路Cを備えた構成としているが、このような循環経路Cを設けずに、あるいは循環経路Cと併用して、反応器における第1、第2触媒層の断面積を異なる大きさとすることにより、これら第1、第2触媒層の排水の空塔速度を異なる速度とすることも可能である。
【0040】
例えば、第1触媒層の断面積を第2触媒層の断面積をよりも小さくすれば、上記実施形態およびその変形例と同様に第1触媒層における空塔速度を第2触媒層よりも高くすることができる。そして、このように触媒層の断面積を異なる大きさとした場合には、供給される排水の流量や排水の循環流量が少ない場合でも、第1、第2触媒層にある程度の空塔速度の差を設けることが可能となる。
【0041】
さらに、上記実施形態およびその変形例では、第1触媒層2における空塔速度を第2触媒層3よりも高くする場合について説明したが、例えば第1触媒層2においてオゾンの分解も含めた大半の処理が完了するような場合は、第2触媒層3における空塔速度を第1触媒層2よりも高くして、残留したオゾンの分解を効率的に行うようにしてもよい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例を挙げて、その効果について実証する。本実施例においては、上記第1の実施形態に基づく排水処理装置を用いて、フェノール2000mg/L(TOC(全有機炭素量)1530mg/L)を含有する排水の処理を行い、処理水のTOCおよびTOC分解率と排ガスのオゾン濃度を測定した。この結果を表1に示す。なお、このときの処理条件は、排水の供給量が5kg/h、オゾンガスの供給量は2.5NL/min、オゾンガス濃度は275g/Nm、循環経路Cにおける排水の循環量は3m/h、滞留時間は1hであり、また触媒は酸化ニッケルを主成分とする酸化触媒であって、第1触媒層2の容量は1.5L、第2触媒層3の容量は1Lであった。
【0043】
また、この実施例に対する比較例として、上記特許文献2に記載の排水処理装置の一形態例に基づく装置を用いて、実施例と同様の処理条件で排水の処理を行い、同じく処理水のTOCおよびTOC分解率と排ガスのオゾン濃度を測定した。この結果を表1に合わせて示す。ただし、制御手段としての排水の循環経路を有することのないこの比較例では、排水にオゾンを供給するのに、特許文献2に記載の通り反応器内の第1触媒層の下方に散気手段を設けてオゾンガスを供給するようにした。
【0044】
【表1】

【0045】
この表1の結果より、本発明の実施形態に基づく実施例では、同じ処理条件でも比較例と比べて、処理水中のTOCがより低減させられてTOC分解率が高く、その一方で処理後の排ガス中のオゾン濃度は低くなっている。これにより、本発明によれば、オゾンが排水中の有機物の分解に有効に利用されていることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1 反応器
2、2A、2B 第1触媒層
3 第2触媒層
4 排水供給源
5 循環ポンプ
8 オゾン発生装置
11 熱交換器
14 マイクロバブル発生装置
15 オゾン分解槽
A 排水の供給経路
B 排水の返送経路
C 排水の循環経路(制御手段)
D 排水経路
E 排ガス経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として排水中の有機物をオゾンによって分解処理する第1触媒層と、この第1触媒層から排出された排水中のオゾンを主として分解する第2触媒層と、これら第1、第2触媒層における排水の空塔速度を異なる速度に制御する制御手段とを備えることを特徴とする触媒を用いた排水処理装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記第1触媒層における排水の空塔速度を、上記第2触媒層における排水の空塔速度よりも高い速度に制御することを特徴とする請求項1に記載の触媒を用いた排水処理装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記第1触媒層の一端部側から上記排水の一部を抜き出して他端部側に循環させる循環経路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の触媒を用いた排水処理装置。
【請求項4】
上記循環経路は、上記第1触媒層の上端部側から上記排水の一部を抜き出して下端部側に循環させることを特徴とする請求項3に記載の触媒を用いた排水処理装置。
【請求項5】
上記循環経路は、上記第1触媒層の下端部側から上記排水の一部を抜き出して上端部側に循環させることを特徴とする請求項3に記載の触媒を用いた排水処理装置。
【請求項6】
上記循環経路における上記第1循環層の他端部側への接続部分には、上記排水に混合したオゾンを微細気泡化するマイクロバブル発生装置が備えられていることを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の触媒を用いた排水処理装置。
【請求項7】
第1触媒層において主として排水中の有機物をオゾンにより分解処理するとともに、第2触媒層において上記第1触媒層から排出された排水中のオゾンを主として分解し、これら第1、第2触媒層における排水の空塔速度を制御手段によって異なる速度に制御することを特徴とする触媒を用いた排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−78945(P2011−78945A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235556(P2009−235556)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(391018592)月島環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】