説明

触知性フィードバックを与えるCPRコーチングデバイス

患者への胸部圧迫を実行する救助者をコーチするシステム及び方法が与えられる。患者の胸に置かれるデバイスに圧迫力が印加される。そのデバイスは圧迫の加速度を測定し、その測定された加速度から変位が計算される。計算された変位に基づき、患者へのCPRの実行をコーチするため、そのデバイスにより触知性フィードバックが救助者に与えられる。例えば、圧迫深度が十分であること、及び圧迫が解放されるべきであることを救助者の手によって知覚されるようにする触知性インジケータが与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、心肺機能蘇生(CPR)コーチング及びトレーニングデバイスに関し、より詳細には、胸部圧迫のための深度を計算し、圧迫深度が十分であるとき、救助者に触知性フィードバックを与えるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心停止は、患者の心臓が生命を維持するための血流を提供することができない、生命を脅かす医学状態である。患者に血液の流れを取り戻させるため、心停止に苦しむ患者にCPRが適用されることができる。肺を酸素で満たすため患者の口に息を吹き込みつつ、患者の胸を圧迫することにより、救助者はCPRを実行する。CPRは、除細動治療といった他の形式の治療と組み合わされることができる。心停止の間、心臓の電気活動は、乱される(心室細動、VF)、高速すぎる(心室頻拍、VT)、欠落する(収縮不全)、又は血流を生み出さない正常又は低心拍で構成される(電気収縮解離)状態となる場合がある。VF又はVTに苦しむ患者に対して供給される除細動ショックは、同期化されていない又は高速の電気活動を停止させることができ、正常洞律動が回復することを可能にすることができる。除細動ショックが患者に供給される時間の間、血流を促進させるためCPRが実行される。
【0003】
研究によれば、高品質なCPRが実行されると、患者の生存率が、3倍から4倍に上昇することが分かった。CPRの品質は、胸部圧迫の品質に直接関連付けられる。その一部は、圧迫深度により決定される。即ち、良好な胸部圧迫は一般に、大人の胸部を4センチメートル押圧するものであり、子供であれば胸部を約2.5センチメートル押圧するものである。従来においても、CPRのため所望の圧迫深度を設定する多くのガイドラインが知られている。十分な深度の胸部圧迫を実行することを学ぶことは、従来はCPRトレーニングの一貫である。例えば、マネキンを用いた訓練状況において、圧迫深度が通常測定され、情報が参加者にフィードバックされる。マネキンに対して胸部圧迫を練習することで、参加者は、実際の人間の患者に対するのと同じ動作パターンを反復することができるであろうことが予想される。しかしながら、研究によれば、胸部圧迫を実行する動作パターンを反復する能力は、トレーニング直後でさえそれほど高くはなく、驚くことでもないが、時間と共に低下することが分かった。更に、人間の生体構造はその人毎に異なるので、患者は、胸部圧迫に対する異なった耐性度を持ち、胸部を十分に圧迫するのに異なったレベルの力を必要とする。結果として、マネキンに対するCPRトレーニングを介して正確な圧迫深度の胸部圧迫を実行することを学ぶことは、実現が困難である。
【0004】
十分な深度の胸部圧迫を伴うCPRを実行する際に救助者を補助するため、CPRに関する助言を救助者に提供する、CPRの間に使用されることができる種々のデバイスが開発されてきた。これらのデバイスは通常、患者の胸に配置され、続いて、患者の胸部を圧迫するため下向きの力を供給するとき、救助者の手がそのデバイスに置かれる。デバイスが胸の圧迫と共に動くので、そのデバイスは、十分な圧迫深度を決定するため、例えば加速度といった動き特性又は力を測定する。その測定に基づき、胸部圧迫が十分であるかに関して視覚的フィードバック、可聴的フィードバック又はその両方が救助者に与えられる。例えば、米国特許出願公開第2006/0019229号は、所定の値を超える力で胸部圧迫が実行されるとき音を放つデバイスを記載する。そのデバイスはオプションで、正確なペース配分のため、胸部圧迫の意図された頻度を示す音も放つ。別の例は、米国特許第6,306,107号であり、これは、加速度計、力作動スイッチ及び計算ユニットを含むデバイスを記載する。そのデバイスは、胸部圧迫の間の押圧距離、押圧持続時間又は押圧率といったパラメタを登録するためCPRの間患者の胸部に配置される。圧迫深度に関する視覚的なフィードバックが発光ダイオード(LED)により救助者に与えられるか、又は視覚的及び可聴的フィードバックの両方が、スクリーン及びラウドスピーカを持つ表示ユニットを用いて提供される。
【0005】
CPRコーチングは、除細動器にも同様に組み込まれている。例えば、米国特許第6,125,299号、米国特許第6,351,671号に記載されており、前述の米国特許第6,306,107号にも記載されている。'299及び'671特許は共に、患者の胸に配置され、胸部圧迫が印加される力センサを記載する。胸部圧迫の印加力を感じる力センサが除細動器に接続され、除細動器の音声プロンプトを用いて、「より強く」「より優しく」「より速く」「より遅く」押すよう救助者に助言する。'107特許は、前述されたように、力センサの代わりに、力ではなく胸部圧迫の深度を感じる加速度計を備える圧迫パッドを記載する。'107特許に述べられるアプローチが好ましい。なぜなら、CPRガイドラインは、印加力ではなく圧迫深度に関連するからである。印加力は、CPR圧迫に対する胸部耐性が異なることから、圧迫深度に常に相関するわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述されたように、従来のCPRコーチングデバイスは、視覚的及び可聴的フィードバックの形式で救助者にフィードバックを与える。しかしながら、いくつかの環境では、視覚的及び可聴的フィードバックを救助者が知覚することが困難な場合がある。例えば、混雑した室内又は往来の激しい通りの角といった騒音環境では、音声フィードバックが、環境背景ノイズにより書き消されてしまう場合がある。結果的に、救助者は、音声コーチプロンプトを聞くことができないことになる。視覚的フィードバックに関しては、視覚的フィードバックを表示するデバイスが、救助者から見えなくされる可能性がある。例えば、多くの人がいるとき、又は、表示デバイスが救助者に対して変な位置に配置されるときである。更に、リモート表示デバイスの場合には、救助者は、視覚的フィードバックを見るために、患者以外の他の方向を見ることを強制される場合がある。これは、胸部圧迫を実行することに集中しようとする救助者にとって気を散らす事となり得る。デバイスの本体に直接視覚的フィードバックを提供するCPRコーチングデバイスの例が存在する。このデバイスは、救助者の視線が、患者の同じ方向に注がれることを可能にする。しかしながら、コーチングデバイス本体に直接視覚的フィードバックを与えることは、救助者の手が視覚的フィードバックを覆うことを避けるような態様でCPRコーチングデバイスをつかませることを救助者に強制する。CPRコーチングデバイスは、救助者の手がCPRコーチングデバイスの上に配置されても視覚的フィードバックが観測されることを可能にする態様で、本体の範囲の一部を持つようデザインされることができる。しかしながら、その拡張された部分は、CPRコーチングデバイスをより大きなものとし、扱いをより困難にする可能性もある。
【0007】
従って、視覚的及び聴覚的形式以外の別の形式で助言フィードバックを救助者に与えるCPRコーチングデバイスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、患者へのCPRを実行する救助者を補助するシステムを提供する。このシステムは、胸部圧迫の実行の間救助者の手と上記患者の胸との間に配置されるよう構成されるデバイスを含む。そのデバイスは、上記胸部圧迫の間加速度を測定し、上記胸部圧迫の間の変位を計算する。上記計算された変位に基づき、上記デバイスは、上記胸部圧迫の深度が十分であることを示すため、ある変位深度で上記救助者に触知性フィードバックを提供する。
【0009】
本発明の別の側面は、CPRコーチングデバイスを提供する。このデバイスは、筐体と、上記デバイスの加速度を測定し、上記測定された加速度を示す出力信号を生成するよう構成される加速度計とを含む。上記加速度計に結合される計算回路が、上記測定された加速度から上記CPRコーチングデバイスに対する変位を計算し、上記計算回路に結合される制御回路が、上記計算された変位を変位範囲又は閾値と比較し、上記計算された変位が、上記変位範囲及び/又は閾値に合致する及び/又は超えることに応じて、動的制御信号を生成する。このデバイスは、上記制御信号を受信するよう上記制御回路に結合され、上記筐体に固定されるアクチュエータを更に含む。このアクチュエータは、上記動的制御信号に応じて、上記筐体に伝達される触知性感覚を生成するよう構成される。
【0010】
本発明の別の側面は、患者に胸部圧迫を実行する救助者に助言する方法を提供する。この方法は、胸部圧迫の加速度を測定するステップと、上記測定された加速度から変位値を計算するステップと、上記計算された変位が十分な深度の胸部圧迫に対応することを示す触知性インジケータを上記救助者に与えるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つの実施形態によるCPRコーチングデバイスの図である。
【図2】患者にCPRを実行するため本発明の実施形態によるCPRコーチングデバイスを用いる救助者を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるCPRコーチングデバイスに含まれる要素の簡略化されたブロック図である。
【図4】触知性及び視覚的形式のフィードバックを組み合わせた、本発明の別の実施形態によるCPRコーチングデバイスの図である。
【図5】除細動器に結合される本発明の別の実施形態によるCPRコーチングデバイスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の十分な理解を与えるため、特定の詳細が以下に説明される。しかしながら、当業者であれば、こうした特定の詳細無しに本発明が実行されることができることは明らかであろう。更に、本書に述べられる本発明の特定の実施形態は、例示を介して与えられるものであり、本発明の範囲をこうした特定の実施形態に限定するのに使用されるべきではない。他には、本発明を不必要にあいまいにすることを避けるため、既知の回路、制御信号、タイミングプロトコル及びソフトウェア処理は詳細には示されていない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態によるCPRコーチングデバイス100を示す。従来のCPRコーチングデバイスとは異なり、CPRコーチングデバイス100は、患者へのCPRの実行を助言するため救助者に触知性フィードバックを与える。例えば、CPRコーチングデバイス100において、胸部圧迫が深度において十分であるとき救助者に知らせるのに触知性フィードバックが使用される。従来のCPRコーチングデバイスと比べると、CPRコーチングデバイス100は、救助者に助言するのに可聴的及び視覚的フィードバックが効率的でない状況でさえ、救助者にフィードバックを与えることができる。以下より詳細に述べられるように、触知性フィードバックは、本発明の別の実施形態において、可聴的及び視覚的フィードバックと組み合わされることができる。
【0014】
使用時にCPRコーチングデバイス100の位置及び方向を示すため、患者の胴体を表すイラスト110が、CPRコーチングデバイス100の上部表面120に含まれる。図2に示されるように、患者210の胸骨に配置されるCPRコーチングデバイス100を用いて、救助者220は、片方の手の上に他方の手をおいて2つの手を用いる従来の態様で、胸部圧迫を適用する準備をする。しかしながら、患者210に直接手を載せる代わりに、救助者の手は、CPRコーチングデバイス100の上に置かれ、CPRコーチングデバイス100を介して患者210に胸部圧迫が適用される。前述されたような従来のCPRプロトコルを用いて救助者220により胸部圧迫が実行される。以下詳述されることになるが、CPRコーチングデバイス100により測定される圧迫深度が十分であるとき、圧迫が十分であり、圧迫が解放されるべきであることを伝える触知性フィードバックが救助者220に与えられる。
【0015】
図3は、本発明の実施形態によるCPRコーチングデバイス100に含まれる様々な要素を示す簡略化されたブロック図である。CPRコーチングデバイス100に含まれる加速度計302は、CPRコーチングデバイス100の加速度を検出及び測定する。加速度計302、結果としてCPRコーチングデバイス100が経験する加速度を示す出力信号ACCOUTを提供するよう、加速度計302は、CPRコーチングデバイス100において方向決めされて固定される。CPRコーチングデバイス100の使用の間、CPRコーチングデバイス100は、救助者220により胸部圧迫が適用されるとき移動する軸に沿って移動される。加速度計302は従来のものであり、現在利用可能な既知の加速度計デバイス及び回路を用いて実現されることができる。
【0016】
知られているように、移動軸に沿った加速は、加速度計302により生み出されるACCOUT信号を二重積分することにより、移動軸に沿った変位へと変換される(resolved)ことができる。加速度計302に結合される計算及び制御ユニット304は、ACCOUT信号を受信し、CPRコーチングデバイス100の変位を計算するため二重積分演算を実行する。ある実施形態では、二重積分を実行するためのアルゴリズムを実行するプロセッサが、計算及び制御ユニット304に含まれる。別の実施形態では、ACCOUT信号を二重積分するため、積分回路が計算及び制御ユニット304に含まれる。従来において知られる種々のアルゴリズム及び演算が、二重積分処理を実行するのに使用されることができ、結果として、簡略にするため、本書では議論されることはない。加速度測定からの変位の計算の例は、本書でも参照により含まれる、Myklebustらによる米国特許第6,306,107号に記載される。
【0017】
計算及び制御ユニット304は、胸部圧迫の所望の深度を表す変位閾値と計算された変位とを比較するよう更に動作可能である。計算及び制御ユニット304において、従来の制御回路が使用されることができる。計算された変位が変位閾値に到達することに応じて、計算及び制御ユニット304は、アクチュエータ306に動的制御信号CNTRLを与える。患者210に適用される圧迫が十分に深いとき救助者220により感じられる触知性フィードバックを作るため、アクチュエータ306は、CPRコーチングデバイス100の上部表面120に結合される。
【0018】
前述されたように、圧迫の深度が十分であり、次の圧迫のためその圧迫が解放されるべきであるとき、CPRコーチングデバイス100は、救助者220に触知性フィードバックを与える。さまざまな形式の触知性フィードバックが採用されることができる。例えば、本発明の1つの実施形態では、胸部圧迫が十分深いとき、アクチュエータ306が、CPRコーチングデバイス100の上部表面120を屈折させることができる。上部表面120の物理的屈折は、圧迫の間下向きの力を適用するとき救助者220の手により感じられる知覚可能な指示を与える。上部表面120が屈折する感覚は、圧迫が解放されるべきであること、及び胸が正常の位置に戻ることを可能にすべきであることの通知として機能する。触知的感覚を促進するよう、屈折は調整されることができる。例えば、アクチュエータ306は、圧迫深度が十分であるとき、上部表面120を素早く内側に解放することができる。触知性フィードバックに加えて可聴的フィードバックを与えることが望ましい場合、アクチュエータ306は、圧迫深度が十分であるとき可聴的クリック音を与えるため、クイックリリース感覚を備えるスナップドームデバイスを有することができる。CPRの間の救助者の圧迫力に応じて、そのスナップドームは、屈折し、触知性のクリック感覚を簡単に生み出すことができる。また、代替的に、所望の圧迫深度に到達したとき、そのスナップドームに隣接するソレノイドが、触知性の感覚を生み出すようそのスナップドームを打つ又は屈折させるよう命じられることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態において、CPRコーチングデバイス100の上部表面120を、例えば、アクチュエータ306により外側に屈折させることにより触知性フィードバックが与えられる。これは、上部表面120のゆるやかな突起感覚又は上昇感覚を与え、胸部圧迫を適用するとき救助者220の手により感じられることができる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、CPRコーチングデバイス100が、圧迫深度が十分であるとき、CPRコーチングデバイス100の上部表面120を通して伝達されるタッピング感覚を利用する。この実施形態では、計算及び制御ユニット304が、動的CNTRL信号を生成するとき、アクチュエータ306は、上部表面120の内部表面を打つよう動作可能である。救助者220の手を介してタッピングが検出され、タッピングは、患者の胸がその未圧迫の正常位置に戻ることができるよう、圧迫が解放されるべきであることを指示する。
【0021】
本発明の別の実施形態では、計算された変位が変位閾値に到達するとき、アクチュエータ306が、CPRコーチングデバイス100を振動させるよう動作可能である。この実施形態は、触知性フィードバックが上部表面を通して提供されないようなCPRコーチングデバイスの例であるが、適用される圧迫が十分深いことを救助者220に示すには十分効率的である。
【0022】
胸部圧迫が十分に深く、解放されるべきであることを救助者220に指示するための、本願に特に記載されていない他の形式の触知性フィードバックが同様に使用されることができる。種々の形式の触知性フィードバックが、複数の触知性フィードバック機構を持つCPRコーチングデバイスを与えるよう組み合わされることもできる。従来のデザイン及び処理の回路及び要素を用いて、種々の形式の触知性フィードバックが実現されることができる。結果的に、当業者であれば、本書に与えられる説明に基づき、本発明の実施形態を実現することができるであろうことを理解されたい。
【0023】
前述されたように、本発明の別の実施形態では、触知性フィードバックが他の形式のフィードバック、例えば、視覚的フィードバックと組み合わされることができる。図4は、視覚的フィードバックだけでなく、CPRコーチングデバイス100を参照して前述されたような、触知性フィードバックも提供するCPRコーチングデバイス400を示す。CPRコーチングデバイス400の視覚的フィードバックは、発光ダイオード(LED)といったアレイ状の光404とペーシングメータ420とにより与えられる。CPRコーチングデバイス400に含まれる計算及び制御ユニットは、計算及び制御ユニット304を参照して前述されたように、変位を計算し、触知性フィードバックを引き起こす動的CNTRL信号を生成するよう動作可能である。CPRコーチングデバイス400の計算及び制御ユニットは、次の胸部圧迫を適用する前に、救助者が圧迫の十分な解放を許可するかどうかを決定するため、計算された変位を解析するよう更に動作可能である。
【0024】
解析に基づき、圧迫が十分深いかどうか、及び解放が十分であるかどうかを示すため、プロセッサは、アレイ状の光404を制御する。例えば、患者210の胸に配置され、圧迫が印加されていないCPRコーチングデバイス400では、完全に解放された状態を示すため、部分410が点灯される。患者の胸が救助者220により圧迫されると、圧迫が十分に深いことを示す部分414が点灯されるまで、アレイ状の光404の更なる部分が、連続的に点灯される。圧迫が解放され、患者の胸が正常の位置に戻り始めると、その後その部分は消灯される。こうして、胸部圧迫が十分ではない場合、部分414は決して点灯されず、胸部圧迫をより深くする必要があることを示す。更に、圧迫が解放され、アレイ状の光404の部分が順次消灯するとき、次の圧迫が開始される前に、1つ以上の部分410が点灯していれば、救助者は、前の圧迫を十分に解放できていないことになる。胸部圧迫間の適切な解放を助言するよう、触知性フィードバックが再度使用されることができる。例えば、圧迫が適切な深度又は深度範囲に到達するとき、1回の音又は感覚の触知性フィードバックが与えられ、圧迫圧が必要なだけ完全に解放されるとき、別の触知性音又は感覚が与えられることできる。そのデバイスは、適切な深度が到達されるとき「クリック」音及び感覚を作り、圧迫が適切な程度まで解放されるとき「クラック」音及び感覚を作るであろう。更なる代替例は、胸部が余りに深く圧迫される場合、異常な音又は感覚与えることである。こうして、各胸部圧迫で反復的なシーケンスの「クリック」及び「クラック」感覚を供給するよう、救助者は助言される。
【0025】
図4に示される本発明の実施形態において、CPRコーチングデバイス400のプロセッサは、救助者220により適用される胸部圧迫の頻度を計算するよう更に動作可能である。計算された頻度は、圧迫のペースが適切であるかどうかを決定するためプロセッサにより使用される。ペーシングメータ420は、圧迫のペースの適切度に関する視覚的フィードバックを救助者に与える。ポインタ422は、圧迫のペースに相対的な方向における点に方向決めされる。ポインタ422が、(図4に示される)範囲424内に位置するとき、圧迫のペースは満足のいくものである。しかしながら、ポインタ422が、範囲424の外側に位置するとき、ポインタ422が範囲424のどちらの側に位置するかに基づき、圧迫のペースは増加又は減少されるべきである。
【0026】
CPRコーチングデバイス400において触知性フィードバックは視覚的フィードバックと組み合わされるが、可聴的フィードバックといった他の形式のフィードバックが、別の実施形態における触知性フィードバックと組み合わされることができる。
【0027】
CPRコーチングデバイスの以前の実施形態は、CPRを実行する救助者に助言する分離したデバイスとして説明された。図5は、ケーブル502を介して除細動器310に結合されるCPRコーチングデバイス500を示す。除細動器310は、自動体外式除細動器(AED)を表す。手動制御除細動器といった他のタイプの除細動器が同様に使用されることができる。AED310は、ケース内部の電気回路を保護し、素人のユーザをショックから守る起伏のある(rugged)ポリマケース312に格納される。電極パッドのペアが、電気リードを介してケース312に付けられる。電極パッドは、AED310の上部側におけるリセスに配置されるカートリッジ306にある。電極パッドの上のプラスチックカバーの除去を可能にするハンドル316を引き上げることにより、電極パッドは使用のためアクセスされる。ユーザインタフェースは、AED310の右側にある。小さなレディライト(ready light)318が、AEDが準備完了であるかをユーザに知らせる。この実施形態では、AEDが適切にセットアップされ、使用開始可能となった後、レディライトが点滅する。AEDが使用状態にあるとき、レディライトは常にオンとなる。AEDに注目する必要がある場合、レディライトはオフになるか、別の色で点滅する。
【0028】
レディライトの下には、オン/オフボタン320がある。AEDを使用するため電源オンにするのに、オン/オフボタンが押される。AEDの電源を切るためには、ユーザは、1秒以上にわたりオン/オフボタンを押し続ける。情報がユーザに利用可能なとき、情報ボタン322が点滅する。その利用可能な情報にアクセスするため、ユーザは情報ボタンを押す。AEDが、患者から心拍情報を取得しているとき、コーションライト(caution light)324が点滅する。ショックが必要になり、ショック供給の間誰も患者に触れるべきでないことを救助者及び第三者に警告するとき、コーションライトは連続的に発光する。心臓信号が取得される間の患者との対話は、検出されるECG信号に望ましくないアーチファクトをもたらす可能性がある。ショックが必要であることをAEDが救助者に通知した後、ショックを供給するためにショックボタン326が押される。AEDの側面にある赤外線ポート328は、AEDとコンピュータとの間でデータを転送するのに使用される。このデータポートは、患者が救助された後、医師が詳細な解析のためAEDイベントデータを自分のコンピュータにダウンロードしたい場合の通信のために利用される。スピーカ313は、患者を処置するためAEDの使用を通して救助者にガイドを提供するべく救助者に音声指示を提供する。警報機330は、電極パッドの交換又は新しいバッテリといったAEDに注意を払って欲しい状況のとき「音を出す」ものとして提供される。
【0029】
CPRコーチングデバイス500により測定及び計算される情報は、AED310により使用されることができる。例えば、患者にショックを供給する前に、AED310は、CPRコーチングデバイス500により提供される情報に基づき、CPRの実行が停止されたかを監視することができる。別の例は、AED310により取得されるECG信号から信号乱れをフィルタリングするため、CPRコーチングデバイスにより測定される圧迫の深度及び頻度に関する情報を提供することである。胸部圧迫は通常、ECG信号における信号乱れをもたらす。この乱れは、CPRの実行の間、AED310がECGを解析することを妨げる。胸部圧迫の効果をフィルタリングすることにより、CPRが実行されている間もECGが解析されることができる。本発明の別の実施形態では、CPRの品質の評価といった他の目的のため、AED310が、CPRコーチングデバイス500により測定及び計算された情報を利用することができる。結論として、本書に記載される特定の例は、本発明の範囲を限定するために意図されるものではない。CPRの品質が低いと推定される場合、例えば、AEDは、修正されたコーチング技術を実現することができるか、又はCPR供給間隔の長さが、例えば延長若しくは短縮されることができる。
【0030】
前述より、本発明の特定の実施形態が説明目的で本書において説明されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の修正がなされることができる点を理解されたい。例えば、触知性フィードバックは、本書では、十分な圧迫深度を示すものとして説明されてきた。しかしながら、別の実施形態では、触知性フィードバックは、CPRを実行する他の側面を示すのに使用される。例えば、圧迫の十分な解放を示すため、救助者に触知性フィードバックを与えるのに使用される。従って、本発明は、添付された請求項以外で限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPRコーチングデバイスであって、
筐体と、
前記CPRコーチングデバイスの加速度を測定し、前記測定された加速度を示す出力信号を生成するよう構成され、前記筐体に配置される加速度計と、
前記出力信号を受信するよう前記加速度計に結合され、前記測定された加速度から前記CPRコーチングデバイスに対する変位を計算するよう動作可能な計算回路と、
前記計算された変位を変位範囲又は閾値と比較し、前記計算された変位が、前記変位範囲又は閾値に合致する又は超えることに応じて、動的制御信号を生成するよう動作可能であり、前記計算回路に結合される制御回路と、
前記制御信号を受信するよう前記制御回路に結合され、前記動的制御信号に応じて、前記筐体に伝達される触知性感覚を生成するよう構成され、前記筐体に配置されるアクチュエータとを有する、CPRコーチングデバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータが、前記動的制御信号に応じて、前記筐体の一部の屈折を生み出すよう構成されるアクチュエータを有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項3】
前記アクチュエータが、胸部圧迫の解放に応じて触知性感覚を生成するよう更に構成されるアクチュエータを有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項4】
前記アクチュエータが、前記動的制御信号に応じて、前記筐体の一部における突出を生み出すよう構成されるアクチュエータを有する、請求項2に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータが、前記動的制御信号に応じて、振動するよう構成されるアクチュエータを有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項6】
前記アクチュエータが、前記動的制御信号に応じて、前記筐体の内部を打つよう構成されるアクチュエータを有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項7】
前記動的制御信号に応じて、十分な圧迫深度であることの可聴的なインジケータを生成するよう構成され、前記計算回路に結合される音声システムを更に有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項8】
前記動的制御信号に応じて、十分な圧迫深度であることの視覚的なインジケータを生成するよう構成され、前記計算回路に結合される視覚的フィードバックシステムを更に有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項9】
前記計算回路が、前記変位を計算するため前記加速度計の前記出力信号の二重積分を実行するよう構成されるプロセッサを有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項10】
測定された情報を送信するため除細動器に電気的に結合される電気ケーブルを更に有する、請求項1に記載のCPRコーチングデバイス。
【請求項11】
患者へのCPRを実行する救助者を補助するシステムであって、
患者への胸部圧迫の実行の間救助者の手と前記患者の胸との間に配置されるよう構成されるデバイスであって、前記胸部圧迫の間前記デバイスの加速度を測定し、前記胸部圧迫の間の前記デバイスの変位を計算するよう更に構成され、前記計算された変位に基づき、前記胸部圧迫の深度が十分であることを示すため、胸部圧迫に応じて前記救助者に触知性フィードバックを提供するよう構成されるデバイスを有する、システム。
【請求項12】
前記加速度を測定し、前記測定された加速度を示す信号を出力するよう構成される加速度計と、
前記触知性フィードバックを生成するよう構成されるアクチュエータと、
前記信号を受信するため前記加速度計に結合され、前記信号から前記変位を計算するよう動作可能であり、前記触知性フィードバックの生成を制御するため前記アクチュエータに更に結合されるプロセッサであって、前記計算された変位が十分な胸部圧迫深度を示すことに応じて、前記触知性フィードバックを生成するため前記アクチュエータを制御するよう動作可能であるプロセッサとを更に有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記胸部圧迫に対するペースの前記救助者に対するフィードバックを提供するよう構成されるデバイスを更に有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記胸部圧迫の解放を示すため前記救助者に触知性フィードバックを与えるよう構成されるデバイスを更に有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記胸部圧迫の深度が十分であることを示すため前記救助者に可聴的フィードバックを与えるよう構成されるデバイスを更に有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
患者に胸部圧迫を実行する救助者に助言する方法において、
胸部圧迫の加速度を測定するステップと、
前記測定された加速度から変位値を計算するステップと、
前記計算された変位が十分な深度の胸部圧迫に対応することを示す触知性の指示を前記救助者に対して提供するステップとを有する、方法。
【請求項17】
前記触知性の指示を提供するステップが、前記胸部圧迫の実行の間前記救助者と接触するデバイスの筐体の一部を屈折させるステップを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスの筐体の一部を屈折させるステップが、前記筐体の一部を内側に屈折させるステップを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胸部圧迫が解放されたことを示す触知性の指示を前記救助者に対して提供するステップを更に有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記触知性の指示を提供するステップが、前記胸部圧迫の実行の間前記救助者により握られるデバイスの筐体を振動させるステップを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記触知性の指示を提供するステップが、前記胸部圧迫の実行の間前記救助者に握られるデバイスの筐体の内側部分を打つステップを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記計算された変位が十分な深度の胸部圧迫に対応することを示す可聴性の指示を前記救助者に対して提供するステップを更に有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記計算された変位が十分な深度の胸部圧迫に対応することを示す視覚性の指示を前記救助者に対して提供するステップを更に有する、請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−545361(P2009−545361A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522394(P2009−522394)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052993
【国際公開番号】WO2008/015623
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】