説明

触覚フィードバックの制御装置

【課題】 ユーザの指の変位ゾーンが円形形状を呈している場合に、ユーザの指の全変位ゾーンにわたって、ユーザの指に一様な触覚フィードバックを伝達することができる、触覚フィードバックの制御装置を提供する。
【解決手段】 この制御装置は、ユーザの指の、円形形状の変位ゾーンにおいて、ユーザの指に触覚フィードバックを伝達するための支持板(3)と、この変位ゾーンにおいて、ユーザの指による圧力を検出するための、タッチ面を有する変位センサ(5)と、圧力が検出されたときに、支持板(3)に回転トルク(C)を印加して、ユーザの指の変位ゾーンの中心と同軸の回転軸(I)のまわりの、支持板(3)の回動運動によって、変位ゾーンに触覚フィードバックを発生させるための、支持板(3)に連結されている第1および第2のアクチュエータ(7a、7b)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに対して、例えばコマンドの変更または選択の後に、振動などの触覚フィードバックを伝達することができる支持板を有する、触覚フィードバックの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような制御装置は、ユーザの指の変位ゾーンにおいて、ユーザの指に触覚フィードバックを伝達するために、アクチュエータに連結された支持板を備えている。
【0003】
そのため、変位ゾーンにおいて、指の圧力が検出されると、アクチュエータは、支持板を並進振動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの指の変位ゾーンが円形形状を呈している制御装置の場合には、指の全変位ゾーンにわたる一様な触覚フィードバックを、ユーザが知覚することができなくなるという事態が発生し得る。
【0005】
したがって、本発明は、従来技術のこのような欠点の存在しない、触覚フィードバックの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、ユーザの指の、円形状の変位ゾーンにおいて、ユーザの指に触覚フィードバックを伝達するための支持板と、変位ゾーンにおいて、ユーザの指による圧力を検出するための、タッチ面を有する変位センサとを備えている、触覚フィードバックの制御装置を提供するものである。この制御装置は、圧力が検出されたときに、支持板に回転トルクを印加して、ユーザの指の変位ゾーンの中心と同軸の回転軸まわりの支持板の回動運動によって、変位ゾーンに触覚フィードバックを発生させるように、支持板に連結されている第1および第2のアクチュエータを備えている。
【0007】
したがって、ユーザによって得られる触感は、指の全変位ゾーンにわたって一様である。また、回転軸は、何らの物質的な軸を有しておらず、そのため、ノイズを抑制することができる。
【0008】
本発明の1つ以上の特徴、またはそれらの組み合わせによると、次のようになる。
− 支持板は、円形形状または環状形状を呈している。
− 第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとは、直径方向に対向し合うように配置されている。
− 支持板と、アクチュエータの可動部分との間の2つの連結部のうちの1つに、半径方向の並進移動を可能にする遊びが設けられている。
− 制御装置は、支持板と、第1および第2のアクチュエータの可動部分との間に、可塑性物質から成る連結手段を備えている。この可塑性物質のコンプライアンス(単位応力当たりのひずみ)は、支持板と、それぞれのアクチュエータの支持部との間の連結部の変形を吸収することができるほどに十分の大きさを有しており、支持板の回動時に、ノイズを制限することができる。
− 制御装置は、変位センサに接続されており、かつ変位センサから発せられる信号に基づいて、指の要素変位の方向を特定し、アクチュエータによって発生する振動効果の和が、要素変位の方向と同一の方向で、かつ実質的に反対の向きに、指によって知覚されるように、少なくとも一方のアクチュエータに対する少なくとも1つの制御パラメータを調整するように構成されている処理ユニットを備えている。
− 制御パラメータは、少なくとも一方のアクチュエータが、支持板を、要素変位の方向と同一の向きの方向に回転させるときより、反対の向きの方向に回転させるときに、より高速に移動するように調整される。
− 変位センサは、指の変位ゾーンにおいて、支持板に支持されている、タッチ面を有するセンサを有している。
− 制御装置は、FSRタイプの、タッチ面を有する圧力センサのような、タッチ面を有する圧力センサを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態による制御装置の概要図である。
【図2】第2の実施形態による制御装置の概要図である。
【図3a】図2の制御装置の作動状態を示す図である。
【図3b】図3aの作動状態に続く作動状態を示す図である。
【図3c】図3bの作動状態に続く作動状態を示す図である。
【図4】アクチュエータの移動の時間変化の一例を示すグラフである。
【図5】アクチュエータの移動の時間変化の別の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、以下の本発明の説明を読むことにより、本発明の他の利点および特徴が明らかになると思う。
【0011】
添付図面において、同等の部分には、同一の符号を付してある。
【0012】
本発明は、例えば自動車の制御パネル、タッチプレート、またはタッチスクリーンのための、例えばコマンドを変更または選択したユーザに、触覚フィードバックを伝達することができる、触覚フィードバックの制御装置に関する。
【0013】
図1に示すように、制御装置1は、ユーザの指の、円形状の変位ゾーンにおいて、ユーザの指に触覚フィードバックを伝達するための支持板3、この変位ゾーンにおいて、ユーザの指の圧力を検出するための、タッチ面を有する変位センサ5、および圧力が検出されたときに、指の変位ゾーンに触覚フィードバックを発生させるために、支持板3に連結されている第1および第2のアクチュエータ7aおよび7bを備えている。
【0014】
触覚フィードバックは、例えば正弦波制御信号、または、単一パルスまたは連続パルスを有する制御信号によって引き起こされる振動である。
【0015】
アクチュエータ7a、7bは、例えば固定部分と可動部分とを有している。可動部分は、固定部分の空隙内を、第1の位置と第2の位置(図示せず)との間で、例えば約200μmだけ並進移動することができる。
【0016】
可動部分は、例えば固定コイル内をスライドする可動磁石、または固定磁石のまわりをスライドする可動コイルである。可動部分と固定部分とは、電磁効果によって相互作用する。
【0017】
可動部分は、支持板3に連結されている。したがって、可動部分の移動により、支持板3の移動が引き起こされ、その結果、指の変位ゾーンにおいて、アクチュエータの移動D(方向D1、D2の)による、ユーザの指への触覚フィードバックが発生する。
【0018】
支持板3は、ユーザの指の、円形の変位ゾーンを内部に組み込むことができる円形状または環状を呈している。支持板3の寸法は、ユーザの指の変位ゾーンの寸法に合わせて調整されており、したがって、制御装置の嵩が抑制されている。
【0019】
変位センサ5は、指の変位ゾーンにおいて、支持板3によって支持されている、タッチ面を有するセンサを備えている。すなわち、英語で「フォースセンシングレジスタ」の頭字語であるFSR、すなわち感圧抵抗体を用いる技術による、タッチ面を有する圧力センサなどの、タッチ面を有する圧力センサが設けられている。
【0020】
このような圧力センサは、例えば導電層と抵抗層との間にはさまれた可撓性の半導電層を有している。FSR層に圧力または滑り動作を加えることによって、FSR層のオーム抵抗は低下する。したがって、適切な電圧を印加することによって、加えられた圧力、および/または圧力が加えられた箇所の位置を特定することができる。
【0021】
FSR技術の別の一コンセプトによれば、タッチ面を有する圧力センサは、弾性スペーサによって、空間的に互いに隔離されており、かつ対向し合う面上に、圧力センサに圧縮応力が印加されたときに電気的に接続することができる要素を支持している、2枚の可撓性の支持シートを備えている。
【0022】
アクチュエータ7a、7bは、圧力が検出されたときに、ユーザの指の変位ゾーンの中心と同軸の回転軸Iのまわりの支持板3の回動運動によって、変位ゾーンに触覚フィードバックを発生させるために、支持板3に回転トルクCを印加するように構成されている。
【0023】
この場合、回転軸Iは、何らの物質的な軸を有しておらず、したがって、ノイズを抑制することができる。
【0024】
図1に示す第1の実施形態によれば、アクチュエータ7a、7bは、支持板3に回転トルクCを印加するように、直交し合う2つの方向D1、D2に沿って、かつ適切な向きに、支持板3を並進駆動するように配置されている。
【0025】
図2に示す第2の実施形態によれば、アクチュエータ7a、7bは、支持板3に回転トルクCを印加するように、直径方向に対向し合っている。
【0026】
いずれの実施形態においても、回転軸Iは、支持板3の中心に形成されている。したがって、ユーザによって得られる触感は、指の全変位ゾーンにおいて一様である。
【0027】
図3a、図3b、図3cは、図2の実施形態の制御装置1の作動状態を示している。
【0028】
支持板3が回動することを妨げないように、支持板3と、アクチュエータ7a、7bの可動部分との間の2つの連結部のうちの1つ(図の場合には、アクチュエータ7bの方の連結部)に、半径方向の並進移動を可能にする遊びJが設けられている。
【0029】
例えば各アクチュエータ7a、7bの可動部分は、支持板3に連結された、例えばロッド形状の支持部10a、10bを有している。遊びJは、支持部10bと支持板3との間の、半径方向の相対的な並進移動を可能にしている。
【0030】
それに替えて、制御装置1において、支持板3と、アクチュエータ7a、7bの可動部分との間に、可塑性物質から成る連結手段を設けてもよい。
【0031】
例えば可塑性の支持部10a、10bを用いてもよい。この可塑性物質のコンプライアンスは、支持板3と、アクチュエータ7a、7bのそれぞれの支持部10a、10bとの間の連結部の変形を吸収することができるのに十分な大きさを有している。この実施形態によれば、支持板3の回動時に、ノイズを制限することができる。
【0032】
制御装置1の作動中に、支持板3は、回転軸Iのまわりに、第1の位置(図3a)と第2の位置(図3c)との間で回動する。図3bは、中間の位置を示している。
【0033】
図3aにおいては、アクチュエータ7a、7bの可動部分は、固定部分8a、8bに当接している。
【0034】
次に、図3bにおいては、支持板3に回転トルクを発生させるために、第1のアクチュエータ7aの可動部分は、方向D1に沿って並進移動しており、第2のアクチュエータ7bの可動部分は、方向D1に平行で、かつ反対の向きの方向D2に沿って並進移動している。
【0035】
次に、図3cにおいては、アクチュエータ7aの可動部分は、第2の位置において、固定部分8a、8bに当接している。
【0036】
制御信号は周期的である。制御信号を、パルスタイプの制御信号、または周波数が時間とともに変化する制御信号とすることもできる。
【0037】
第1の変形例によれば、制御信号のパラメータは、アクチュエータ7a、7bが、支持板3を時計回りの向きに回転させるときと、反時計回りの向きに回転させるときとで、同一の速度で移動するように調整される。
【0038】
図4は、第1の位置と第2の位置との間の、アクチュエータの移動S1aの時間変化を示すグラフである。
【0039】
アクチュエータは、第1の位置から第2の位置への第1の半周期T1と、第2の位置から第1の位置への第2の半周期T2とで、同一の速度で移動する。
【0040】
第1の半周期T1および第2の半周期T2は、制御装置1の共振周波数に対応するように選択されることが好ましい。
【0041】
第2の変形例によれば、制御装置1は、変位センサ5に接続された処理ユニット9を備えている。
【0042】
処理ユニット9は、変位センサ5から発せられる信号に基づいて、ユーザの指の要素変位の方向を特定し、アクチュエータによって発生する振動効果の和が、要素変位の方向に同一の方向で、かつ実質的に反対の向きに、ユーザの指によって感知されるように、少なくとも一方のアクチュエータに対する少なくとも1つの制御パラメータを調整するように構成されている。
【0043】
要素変位の方向は、例えば変位センサ5から発せられる、連続した2つの位置信号情報から導出される。
【0044】
アクチュエータに、このような特定の制御信号を印加することによって、ユーザによってよりよく知覚される逆の向きに、触覚フィードバックを発生させることができる。
【0045】
例えば制御信号のパラメータは、アクチュエータが、支持板3を要素変位の向きと同一の向きに回転させるときよりも、反対の向きに回転させるときに、より高速に移動するように調整される。
【0046】
図5は、第1の位置と第2の位置との間の、アクチュエータの移動S2aの時間変化を示すグラフの一例である。
【0047】
これらの2つの位置間のアクチュエータの往復運動の1周期において、アクチュエータは、第2の位置から第1の位置への第1の半周期T1において、相対的にはるかに高速に移動し、第1の位置から第2の位置への第2の半周期T2において、相対的にはるかに低速に移動する。
【0048】
アクチュエータのより高速の移動の方が、より低速の移動より、ユーザによって、より明瞭に知覚される。したがって、アクチュエータによって発生する振動効果の和は、ユーザの指の変位に対して反対の向きの、第2の位置から第1の位置への支持板3の移動において、ユーザによって、より明瞭に知覚される。
【0049】
したがって、タッチセンサ式の触覚フィードバックによって、例えばドロップダウンメニュー内のコマンドの変更または選択をユーザに通知するために、または例えば温度変化をユーザに通知するために、触覚フィードバックを発生させる平坦な表面を用いて、機械式のサムホイールを模することができる。
【0050】
回転軸Iのまわりの支持板3の回動運動による、触覚フィードバックの発生によって、ユーザは、ユーザの指の全変位ゾーンにおいて、均一に、触覚フィードバックを知覚することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 制御装置
3 支持板
5 変位センサ
7a、7b アクチュエータ
8a、8b 固定部分
9 処理ユニット
10a、10b 支持部
C 回転トルク
D1、D2 方向
I 回転軸
J 遊び
S1a、S2a アクチュエータの移動
T1 第1の半周期
T2 第2の半周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚フィードバックの制御装置であって、支持板(3)と、タッチ表面センサ(5)とを備え、前記支持板(3)は、ユーザの指が動く円形状のゾーンにおいて、ユーザの指に触覚フィードバックを伝達し、前記タッチ表面センサ(5)は、前記ゾーンにおいて、ユーザの指による圧力を検出する、触覚フィードバックの制御装置において、
第1および第2のアクチュエータ(7a、7b)を備え、前記第1および第2のアクチュエータ(7a、7b)は、前記支持板(3)に接続され、圧力が検出されたときに、前記ゾーンに触覚フィードバックを発生させるように、前記ゾーンの中心と同軸の回転軸(I)のまわりの前記支持板(3)の回動運動によって、前記支持板(3)に回転トルク(C)を印加するようになっていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記支持板(3)は、円形状または環状を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ(7a、7b)は、直径方向に対向し合うように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記支持板(3)とアクチュエータ(7b)の可動部分との間の2つの連結部のうちの1つに、半径方向の並進移動を可能にする遊びが設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記支持板(3)とアクチュエータ(7a、7b)の可動部分との間に、プラスチック材から成る連結手段が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
制御装置であって、処理ユニット(9)を備え、前記処理ユニット(9)は、前記センサ(5)に接続されており、前記センサ(5)から発せられた信号に基づいて、前記指の要素変位(dU)の方向を特定し、前記アクチュエータ(7)によって発生する振動効果の和が、一方向および同一の方向、および前記要素変位(dU)の方向と実質的に反対の方向に、前記指によって知覚されるように、少なくとも1つのアクチュエータ(7)の少なくとも1つの制御パラメータを調整するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御パラメータは、アクチュエータ(7)が、前記要素変位の方向と同一の向きの方向に移動するときより、反対の向きの方向に移動するときに、より高速に移動するように調整されることを特徴とする、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
移動センサ(5)は、前記指の変位ゾーンにおいて、前記支持板(3)に支持されている、タッチ表面センサを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項9】
FSRタイプのタッチ表面圧力センサのような、タッチ表面圧力センサを備えていることを特徴とする、請求項8に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528831(P2011−528831A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519152(P2011−519152)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059386
【国際公開番号】WO2010/010100
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505140568)
【Fターム(参考)】