説明

計算装置

【課題】共沸混合物等の蒸留を行う場合のシミュレーションを短時間で容易に行う
【解決手段】本発明のシミュレータ1では、リボイラのスチーム流量Sを原料混合物の供給流量Fで除した値と塔頂から流出する気体成分の組成との対応関係を示す数式Aを格納した記憶部5と、記憶部5から読み出した数式Aと、リボイラのスチーム流量S及び原料混合物の供給流量Fとに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成を算出する制御部3とを備えているので、共沸混合物等の蒸留を行う場合のシミュレーションを短時間で容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留塔の塔頂成分組成や塔底成分組成をシミュレートする計算装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、一般的な蒸留塔の構成について図6に基づいて説明する。図6は、一般的な蒸留塔101における反応プロセスの概略を説明する図である。図示のように、蒸留塔101の内部には、ガス成分と液体成分とを接触させるための複数の段102が鉛直方向に所定の間隔を空けて設けられている。また、図示のように、蒸留塔101の塔頂及び塔底からは、それぞれ塔頂成分及び塔底成分が排出されるようになっている。
【0003】
そして、塔底成分はリボイラ103によって加熱され、気体として蒸留塔へと戻されるようになっている。リボイラ103による加熱熱量を調節することによって、塔底成分の蒸留塔内への炊き戻し量を変動させることができ、これによって、塔底成分組成及び塔頂成分組成を変化させることができる。
【0004】
段102は、トレー状の構造を持ち一定量の液体成分を段102上に保持できるようになっており、一定量を超えて液体成分が供給された場合、該供給された液体成分は段102から溢れて下の段102へと流れ込むようになっている。また、段102の代わりに、充填物を用いる場合もある。
【0005】
図示のように、液体成分は、通常、塔頂付近から供給され、各段102を満たしつつ塔底へ向かって流れ、塔底から排出される。一方、ガス成分は、通常、塔底付近から供給され、各段102の液体成分と接触しながら塔頂へと上ってゆき、塔頂から排出される。
【0006】
なお、蒸留塔への液体成分及びガス成分の供給方法には、図6に示す例以外にも、例えば、ガス成分のみを蒸留塔に供給し、塔頂から排出されるガス成分を冷却・凝縮させて得られた液体成分を当該蒸留塔内に戻し、戻した液体成分と上記供給したガス成分とを気液接触される方法等が知られている。
【0007】
いずれの方法にせよ、蒸留塔では、各段102においてガス成分と液体成分とが接触して(気液接触)各成分の分配が行われ、塔頂及び塔底から、所望の成分組成の製品を得るようになっている。従来、このような蒸留塔における反応プロセスのシミュレーションでは、蒸留塔の各段について物質収支式及び熱収支式を立て、これらの数式を解くことによって行われていた。
【0008】
続いて、従来の蒸留塔シミュレーションでは、どのような計算が行われているかについて、より具体的に説明する。図6の例のように、蒸留塔は複数の段を備えているが、各段で完全な気液平衡を実現することは実際には難しいので、実際の段数に段効率を乗じた段数(理論段数)を用いて計算が行われる。
【0009】
例えば、実際の段数が25段、段効率が60%の蒸留塔の場合、(理論段数)=25×60/100=15段として計算が行われる。なお、充填物を用いる場合においても、トレー1段に相当する高さを1段として同様の計算が行われる。
【0010】
上述のように、蒸留塔のシミュレーションを行う場合、各段において、物質収支式、気液平衡計算、及び熱収支式を解く必要がある。物質収支式は、各段における物質の出入りを示す数式である。たとえば、j段におけるi成分の物質収支式は、下記の数式(11)で表される(下記の非特許文献1のP9参照)。
(i成分のj段への流入液量+i成分のj段への流入蒸気量)−(i成分のj段からの流出液量+i成分のj段からの流出蒸気量)=(i成分のj段における蓄積量)…数式(11)
次に、気液平衡計算について説明する。蒸留塔では、各段でガス成分と液体成分とが接触することから、ガス成分と液体成分とが平衡状態となり気液平衡が成立する。気液平衡においては各成分の液組成x、ガス組成y、温度T、及び圧力Pの間に一定の関係が成り立つ(非特許文献1のp42〜p60参照)。
【0011】
もう少し詳しく述べると、平衡状態は、液相の化学ポテンシャルと気相の化学ポテンシャルとが等しくなる状態であり、以下の式(12)で表すことができる。
λ*,l=φνP …数式(12)
なお、上記数式(12)において、λは液相活量係数、f*,lは液相i成分参照フガシティ、φνは気相i成分の混合状態フガシティ係数、Pは全圧である。
【0012】
また、平衡比Kiは下記の数式(13)で表されるので、この数式(13)と上記数式(2)とから、平衡比Kiは下記の数式(14)で表すことができる。
Ki=yi/xi …数式(13)
Ki=λ*,l/φνP …数式(14)
このような気液平衡式を(11)式と同時に解くことにより、物質収支計算を行うことができる。
【0013】
最後に、熱収支式について説明する。熱収支を考える際には、各段でのエンタルピーのバランス式を解く必要がある。エンタルピーのバランス式は、下記の数式(15)で表される。
(流入液エンタルピー)+(流入ガスエンタルピー)+(外部より供給される熱量Q)=(流出液エンタルピー)+(流出ガスエンタルピー) …(15)
なお、これらのエンタルピーは、物性ファイルから読み込む必要があり、段数分の計算を行う必要がある。熱量Qは、蒸留塔の塔底付近から供給されることが一般的であるが、蒸留塔の中段付近に供給される場合もある。
【0014】
以上のように、蒸留塔のシミュレーションを行うためには、数多くの数式を解く必要がある。ここでは、蒸留塔の各理論段について、物質収支、熱収支、平衡等の観点から成り立つ数式を連立させて解き、蒸留塔のシミュレーションを行う方法を厳密モデルのシミュレーションとよぶ。
【0015】
厳密モデルのシミュレーションについて図7に基づいて説明する。図7は、厳密モデルのシミュレーションの概要を示す図である。図示のように、厳密モデルのシミュレーションでは、例えば蒸留塔に供給する液体成分及びガス成分の温度、成分組成、流量、及び蒸留塔の塔内圧力等といった反応条件のパラメータを入力とする。
【0016】
そして、厳密モデルのシミュレーションでは、上記入力されたパラメータに基づいて、蒸留塔の各段で成り立つ物質収支式、熱収支式、及び気液平衡式を連立させて解く。その結果、蒸留塔の各段の成分組成が求まり、最終的には塔頂成分組成及び塔底成分組成が求まることになる。
【非特許文献1】河東準、「蒸留の理論と計算」、工学図書、昭和44年3月25日、初版第6刷p.9,p.42−65
【非特許文献2】「化学工学便覧 改訂6版」、丸善、平成13年4月25日第2刷発行p.531
【非特許文献3】大江修造、「蒸留工学」、講談社サイエンティフィック、1993年8月20日第4刷発行p.11−15,p.23−26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記のような厳密モデルのシミュレーションでは、共沸混合物等の特殊な物性を有する物質の蒸留を行う場合のシミュレーションを行うことが困難であるという問題を有している(非特許文献1、p61〜p65)。
【0018】
例えば、共沸混合物を沸騰させる場合、共沸混合物の液温は一定のまま、また組成が変わらない状態で沸騰するという他の物質とは大きく異なる状態が生じる。そのため、厳密モデルのシミュレーションでは、共沸混合物の状態を正確に把握することが困難であり、計算に多大な時間がかかってしまったり、計算が収束しなかったりする。
【0019】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、共沸混合物等の蒸留を行う場合のシミュレーションを短時間で容易に行うことができる計算装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の計算装置は、上記課題を解決するために、蒸留塔内に供給された原料混合物の液体成分を塔底から流出させ、熱源によって上記液体成分を加熱・蒸発させた気体を少なくとも含む気体成分を蒸留塔の塔頂から流出させる蒸留塔において、塔頂から流出する気体成分の組成及び塔底から流出する液体成分の組成の少なくとも一方を算出する計算装置であって、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を格納した記憶部と、上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出する成分組成演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の計算方法は、上記課題を解決するために、蒸留塔内に供給された原料混合物の液体成分を塔底から流出させ、熱源によって上記液体成分を加熱・蒸発させた気体を少なくとも含む気体成分を蒸留塔の塔頂から流出させる蒸留塔において、塔頂から流出する気体成分の組成及び塔底から流出する液体成分の組成の少なくとも一方を算出する計算装置による計算方法であって、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を記憶部から読み出すステップと、上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出するステップとを含むことを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、供給熱量を供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報が予め記憶部に格納されている。したがって、この成分組成情報に基づいて、供給熱量や供給流量の値に対して、塔頂から流出する気体成分の組成(塔頂成分組成)または塔底から流出する液体成分の組成(塔底成分組成)がどのような値になるのかをシミュレートすることができる。
【0023】
ところで、蒸留塔で、塔頂成分組成や塔底成分組成を所望の組成にする場合、供給熱量は、容易に増減させることができるので、供給熱量を変化させることによって塔頂成分組成や塔底成分組成を変化させることが多い。
【0024】
ここで、従来の厳密モデルによるシミュレーションでは、蒸留塔に供給される熱量によって、蒸留塔の各段の温度が変わるので、供給熱量が変わるたびに蒸留塔の各段について物質収支式及び熱収支式を解きなおす必要があった。そのため、従来の厳密モデルによるシミュレーションには、計算に非常に長い時間を要し、共沸混合物等の特殊な物性を持つ原料混合物のシミュレーションを行う場合には、さらに計算が複雑になるため、特に厳密モデルでのシミュレーションが困難であった。
【0025】
ここで、本発明の発明者らは、塔頂成分組成や塔底成分組成に対する影響の特に大きい因子として、蒸留塔への供給熱量と原料混合物の供給流量とをピックアップした。そして、様々な種類の原料混合物において、供給熱量を供給流量で除した値と塔頂成分組成や塔底成分組成との対応関係を示す成分組成情報を用いることで良好なシミュレーション結果が得られることを見出した。
【0026】
すなわち、上記構成では、蒸留塔の各段について物質収支式や熱収支式を解いて各段の温度等を求めることなく、塔頂成分組成や塔底成分組成を求めている。したがって、塔頂成分組成や塔底成分組成を求めるときの計算量を大幅に減らすことができると共に、予め記憶部に格納しておいた成分組成情報を用いることによって、共沸混合物等の特殊な物性をもつ原料混合物の塔頂成分組成や塔底成分組成も求めることができる。
【0027】
なお、成分組成情報は、例えば供給熱量や供給流量の値に対する塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を示すグラフや数式、対応テーブル等を用いることができ、これらの数式やグラフ、対応テーブルは実測値によって求めることができ、また、物理モデルをベースとした厳密シミュレーションモデル(厳密モデル)からの導出データによって求めることができる。
【0028】
また、上記記憶部には、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す流出流量情報が格納されており、上記記憶部から読み出した流出流量情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の流出流量または塔底から流出する液体成分の流出流量を算出し、該算出した流出流量と、上記成分組成演算手段が算出した成分組成とを積算して、上記蒸留塔の塔頂または塔底における各成分の流出流量を算出する流出流量演算手段を備えていることが好ましい。
【0029】
本発明の発明者らが検討した結果、塔頂から流出する気体成分の流出流量や塔底から流出する液体成分の流出流量についても、供給熱量を供給流量で除した値と原料混合物の塔頂または塔底からの流出流量との対応関係を示す流出流量情報を用いることで良好なシミュレーション結果が得られることを見出した。
【0030】
したがって、上記の構成によれば、成分組成を求めるときと同じく、供給熱量を供給流量で除した値に基づいて塔頂から流出する気体成分の流出流量や塔底から流出する液体成分の流出流量を求めることができる。
【0031】
なお、流出流量情報は、例えば供給熱量や供給流量の値に対する塔頂または塔底からの流出流量を示すグラフや数式、対応テーブル等を用いることができ、これらの数式やグラフ、対応テーブルは実測値によって求めることができ、また、物理モデルをベースとした厳密シミュレーションモデル(厳密モデル)からの導出データによって求めることができる。
【0032】
そして、上記算出した塔頂または塔底の成分組成と流出流量とを積算することによって、各成分の塔頂または塔底からの流出流量を求めることができる。すなわち、上記構成によれば、供給熱量及び供給流量をどのような値に設定した場合に、各成分の塔頂または塔底からの流出流量がどのような値となるかのシミュレーションも行うことができる。
【0033】
なお、上記計算装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを計算装置の各手段として動作させることにより、上記計算装置をコンピュータにて実現させる計算装置制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明に係る計算装置は、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を格納した記憶部と、上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出する成分組成演算手段とを備えている構成である。
【0035】
また、本発明の計算方法は、以上のように、塔頂から流出する気体成分の組成及び塔底から流出する液体成分の組成の少なくとも一方を算出する計算装置による計算方法であって、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を記憶部から読み出すステップと、上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出するステップとを含む構成である。
【0036】
したがって、従来の厳密モデルによるシミュレーションと比べて、成分組成を算出するために必要な演算量を大幅に減らすことができると共に、共沸混合物等の特殊な物性を有する原料混合物の蒸留を行う場合のシミュレーションを短時間で容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すると以下の通りである。まず、本発明のシミュレーション方法の概要について、図2に基づいて説明する。図示のように、本発明のシミュレーション方法は、蒸留塔に原料液体(原料混合物)を供給し、塔底から排出される液体をリボイラで蒸発させて蒸留塔に戻し、塔頂及び塔底から所望の組成の製品を得ることを想定している。
【0038】
ここでは、リボイラに高温のスチームを供給することで塔底から排出される液体を加熱することを想定している。したがって、リボイラから蒸留塔への供給熱量は、スチーム流量に比例する。そこで、ここではリボイラから蒸留塔への供給熱量をスチーム流量で表す。当然のことながら、原料液体の加熱方法は、スチームを用いる以外にもヒーターを用いる等、公知の方法を適宜使用することができる。
【0039】
なお、本発明のシミュレーション方法は、上記〔背景技術〕に示したような、気体成分及び液体成分の両方を供給する系や、気体成分のみを供給する系にも適用することもできるが、ここでは簡単のため、液体成分のみを供給する系について説明する。また、図2では、蒸留塔の高さ方向のほぼ中央位置から原料液体を供給する様子を示しているが、供給位置は特に限定されない。
【0040】
詳細については後述するが、本発明のシミュレーション方法では、蒸留塔内に供給される物質の単位供給流量に対して与えられる熱量が一定の場合、蒸留塔に供給した各物質の塔頂流出流量及び塔底流出流量が一定になることを利用している。
【0041】
例えば、スチーム流量をS(kg/hr)、熱源からの供給熱量をQ(J/hr)とすると、蒸留塔内に供給される物質の供給流量1kg/hrに対して与えられる熱量は、Q/F(J/kg)と表すことができる。ここで、熱源としてスチームを用いる場合、熱量Qは、スチーム流量Sおよび潜熱Hvの積(Q=Hv×S)で表すことができる。したがって、Q/Fは、(Hv×S)/Fと書き換えることができる。
【0042】
潜熱Hvは温度によって変化する値であるが、熱源であるスチームは、通常、温度および圧力の条件がほとんど変化しない。このため、この場合の潜熱Hvは、概ね一定であるとみなすことができる。したがって、熱源がスチームである場合、(Hv×S)/Fは、Hv×S/Fと書き換えることができる。つまり、蒸留塔内に供給される物質の供給流量1kg/hrに対して与えられる熱量を求めるときの変数部分が、S/Fとして簡略化される。
【0043】
このため、液体成分を流量Fで蒸留塔内に供給し、スチーム流量Sでこの液体成分を加熱した場合と、液体成分を流量2Fで蒸留塔内に供給し、スチーム流量2Sでこの液体成分を加熱した場合とでは、この変数部分が等しくなる。したがって、蒸留塔に供給した液体成分の塔頂流出流量及び塔底流出流量は上記2つの場合で同じになる。
【0044】
なお、熱源が電気ヒーター等の直接、熱量を供給するものである場合、潜熱Hvを考慮する必要がないため、蒸留塔内に供給される物質の供給流量1kg/hrに対して与えられる熱量は、Q/Fとなる。
【0045】
例えば、液体成分をF(mol/min)、気体成分をF(mol/min)で蒸留塔内に供給し、ヒーターによって蒸留塔をQ(J/min)で加熱した場合、この液体成分及び気体成分の単位供給流量に対して与えられる熱量は、Q/(F+F)と表すことができる。そして、Q/(F+F)が同じ値であれば、蒸留塔に供給した液体成分及び気体成分の塔頂流出流量及び塔底流出流量は同じになる。
【0046】
ただし、このように液体成分と気体成分との混合物を蒸留塔内に供給する場合、上記のような式で表すには、各成分の混合比や、蒸留塔内に供給される物質の温度が概ね一定であることが前提となる。
【0047】
このように、本発明のシミュレーション方法では、蒸留塔内に供給される物質の単位供給流量に対して与えられる熱量に基づいて、蒸留塔に供給した各物質の塔頂流出流量及び塔底流出流量を求める。なお、液体成分や気体成分の供給流量の単位は、上記の例に限られず、例えば単位時間当たりの供給重量や単位時間当たりの供給体積等を用いてもよい。
【0048】
図示のように、本発明のシミュレーション方法では、蒸留塔内に供給する原料液体の成分組成、供給流量、スチーム流量といった必要なパラメータを入力し、該入力されたパラメータを、所定の数式に代入することによって塔頂成分組成及び塔底成分組成を算出する。
【0049】
すなわち、本発明のシミュレーション方法は、図7に示す従来のシミュレーション方法と比べて、複雑で演算量が多い熱収支式計算や物質収支式計算、気液平衡計算の代わりに塔頂成分組成及び塔底成分組成を決定するための数式を用いる点が異なり、これにより原料液体が共沸混合物等の特殊な物性を有している場合でも、塔頂成分組成及び塔底成分組成を短時間で容易に求めることができる。
【0050】
続いて、本発明のシミュレーション方法の実施に好適なシミュレータの一例について説明する。まず、図1に基づいて本実施形態のシミュレータ(計算装置)1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態のシミュレータ1の要部構成を示すブロック図である。シミュレータ1は、図示のように、入力部2、制御部(成分組成演算手段/流出流量演算手段)3、表示・出力部4、及び記憶部5を備えている。
【0051】
入力部2は、シミュレータ1の操作入力を行うためのものであり、図示しない入力キーを備えている。制御部3は、シミュレータ1の動作を制御するものである。制御部3の詳細については後述する。記憶部5は、制御部3で使用されるプログラムやデータ等を記憶している。また、図示のように記憶部5には、パラメータ格納テーブル6と物質組合せ‐数式対応テーブル7とが格納されている。表示・出力部4は、制御部3の演算結果を表示・出力してシミュレータ1のユーザに提示するものであり、例えば液晶表示パネル等で構成することができる。
【0052】
シミュレータ1では、入力部2が蒸留塔内に供給する原料液体に含まれる物質の物質名や、原料液体の蒸留塔への供給流量等のパラメータの入力を受け付け、該入力されたパラメータに基づいて制御部3が所定の処理を行うことによって、上記入力したパラメータの条件下での塔頂成分組成及び塔底成分組成を表示・出力部4に出力する。
【0053】
シミュレータ1では、厳密モデルを用いる場合のように、熱収支式計算や物質収支式計算、気液平衡計算を行う必要がないので、従来のシミュレータと比べて、シミュレーション速度が格段に速くなっている。
【0054】
シミュレータ1におけるシミュレーション処理の詳細について図3に基づいて説明する。図3は、シミュレータ1におけるシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、制御部3は、シミュレーションの対象となる物質名、供給流量、成分組成、及びスチーム流量の入力をユーザに要求する(S11)。具体的には、制御部3は、物質名、供給流量、成分組成、及びスチーム流量の入力をユーザに促すメッセージを表示部・出力部4に表示させる。
【0056】
なお、物質名は、選択可能な物質名の一覧を表示部・出力部4に表示し、表示された物質名からシミュレーションを行う対象となる物質を選択するようになっている。また、物質名の一覧を表示しない構成としてもよく、例えば、ユーザがキーボード等から物質名を入力するようにしてもよい。
【0057】
そして、ユーザが入力した各種パラメータは、記憶部5のパラメータ格納テーブル6に格納される。パラメータ格納テーブル6の一例を下記の表1に示す。図示のように、パラメータ格納テーブル6には、物質名、成分組成(各物質の原料液体に占める割合)とが対応付けて格納されていると共に、原料液体の供給流量及びリボイラのスチーム流量が格納されている。なお、表1に記載の物質名及び数値は一例であり、この物質名及び数値に限定されない。
【0058】
【表1】

【0059】
続いて、制御部3は、パラメータの入力が全て終了したか否かを確認する(S12)。具体的には、制御部3がパラメータ格納テーブル6の物質名、成分組成、供給流量、及びスチーム流量の全項目が入力されたことを確認したときに、パラメータの入力が終了したと判断する。
【0060】
なお、パラメータの入力が終了したか否かを確認する方法は、この例に限られない。例えば、パラメータ格納テーブル6の全項目が入力された後、所定の時間後にパラメータの入力が終了したものと判断する構成としてもよい。この場合、ユーザが誤ったパラメータを入力してしまった場合に、誤ったパラメータを正しいパラメータに修正する時間があるので好ましい。また、パラメータの入力が終了したことを、入力部2を介して入力する構成としてもよい。
【0061】
制御部3は、パラメータの入力が終了したと判断すると(S12でYES)、選択された物質名の組合せに対応する数式を読み出す(S13)。具体的には、制御部3は、記憶部5の物質組合せ−数式対応テーブル7を参照して物質の組合せに応じた数式A及び数式Bの2つの数式を読み出す。
【0062】
物質組合せ−数式対応テーブル7について、下記の表2に基づいて説明する。表2は、物質組合せ−数式対応テーブル7の一例を示す表である。表2に示すように、「物質名1」に登録されている1つの物質に対し、その物質の組合せ候補である複数の「物質名2」が格納されている。
【0063】
そして、物質組合せ−数式対応テーブル7では、各組合せに数式A(成分組成情報)及び数式B(流出流量情報)が対応付けられている。すなわち、各組合せの原料液体を蒸留塔に供給した場合の塔頂成分組成がこの数式にて演算される。表2に示すように、数式は、物質名の組合せごとに固有の数式となっている。この数式f(S/F)及びg(S/F)の導出方法については後述する。
【0064】
【表2】

【0065】
次に、制御部3は、S13で読み出した数式Aを用いて塔頂における各物質の成分組成を算出する(S14)。具体的には、制御部3は、下記の数式(1)にS11で入力されたスチーム流量S及び供給流量Fを代入して物質名2の物質の組成を求めると共に、下記の数式(2)を用いて物質名1の物質の組成を求める。
(物質名2の組成)=f(S/F) …(1)
(物質名1の組成)=1−(物質名2の組成) …(2)
続いて、制御部3は、S13で読み出した数式Bを用いて塔頂流出流量を算出する(S15)。なお、塔頂流出流量とは、蒸留塔の塔頂から流出する気体の総流量を指す。具体的には、制御部3は、下記の数式(3)にS11で入力された供給流量F及びスチーム流量Sを代入して塔頂流出流量を求める。
(塔頂流出流量)=g(S/F) …(3)
次に、制御部3は、S14で算出した組成とS15で算出した塔頂流出流量とに基づいて各物質の塔頂からの流出流量を算出する(S16)。具体的には、制御部3は、下記の数式(4)及び(5)を用いて各物質の塔頂からの流出流量を算出する。
(物質名2の塔頂流量)=g(S/F)×f(S/F) …(4)
(物質名1の塔頂流量)=g(S/F)−(物質名2の塔頂流量) …(5)
そして、制御部3は、各物質の塔底からの流出流量を算出する(S17)。具体的には、制御部3は、下記の数式(6)及び(7)を用いて各物質の塔底からの流出流量を算出する。
(物質名2の塔底流量)=F×x−(物質名2の塔頂流量) …(6)
(物質名1の塔底流量)=F×y−(物質名1の塔頂流量) …(7)
最後に、制御部3は、上記算出した演算結果、すなわち原料液体に含まれる各物質の塔頂からの流出流量及び塔底からの流出流量を表示・出力部4に表示させ(S18)、シミュレーション処理を終了する。
【0066】
このように、シミュレータ1では、塔頂成分組成及び塔底成分組成を算出するために必要な数式の数が厳密モデルを用いたシミュレーションの場合と比べて格段に少なくなっている。その結果、シミュレータ1では、従来のシミュレータと比べて計算に要する時間が劇的に短くなっている。
【0067】
なお、図3のフローチャートでは、S14で塔頂成分組成を求めているが、塔底成分組成を求める構成としてもよい。また、図3のフローチャートでは、塔頂流量及び塔底流量を求めているが、流量を求める必要がない場合は、成分組成のみを求める構成としてもよく、この場合、S15〜S17を省略することができる。
【0068】
続いて、上記物質組合せ−数式対応テーブル7に記載の数式の導出方法について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は、数式f(S/F)及びg(S/F)を用いて塔頂成分組成、塔底成分組成、各物質の塔頂流量及び塔底流量求める方法を説明する図である。
【0069】
ここでは、A成分をx%、B成分をy%含む原料液体を流量Fで蒸留塔に供給する例について説明する。図示のように、蒸留塔に供給された液体は、リボイラによって加熱され、蒸発してガス成分となり、塔頂から流出するようになっており、リボイラのスチーム流量はSである。
【0070】
ここで、本発明では、塔頂から流出するA成分の組成をS/Fを変数とする数式f(S/F)を用いて求める。なお、数式f(S/F)は、実測値、あるいは厳密モデルを用いて導出した数式である。したがって、シミュレータ1でのシミュレーションは、数式f(S/F)を実測値や厳密モデルを用いて求めたときと同じの条件(温度、圧力等)であることが好ましい。(塔頂A成分組成)=f(S/F)で表されるグラフは、例えば図5(a)のようになる。
【0071】
図5(a)の例では、(S/F)が一定値を超えるまでは塔頂A成分組成が一定となっており、(S/F)が一定値を超えた後は(S/F)に比例して塔頂A成分組成が増加している。これは、共沸混合物に特有のグラフ形状である。すなわち、共沸状態では、蒸発するA成分量及びB成分量は等しいのでA成分組成が一定となっている。
【0072】
シミュレータ1では、物質組合せごとに予め実測値あるいは厳密モデルを用いて求めたグラフを数式化したものを物質組合せ−数式対応テーブル7に格納している。したがって、数式f(S/F)にスチーム流量Sと蒸留塔に供給する原料液体の供給流量Fとを代入することによって、塔頂A成分組成を求めることができる。
【0073】
なお、シミュレータ1では、塔頂成分組成の演算に数式を用いる例を示しているが、この例に限定されない。例えば、グラフを用いてもよいし、(S/F)と塔頂成分組成とを対応付けたテーブルを用いてもよい。
【0074】
このように、シミュレータ1では、(塔頂A成分組成)=f(S/F)で示される数式(数式(1))で1回の計算を行うことによって塔頂A成分組成を求めることができる。それゆえ、数多くの数式を説く必要がある厳密モデルのシミュレーションと比べて、シミュレーションに要する時間が劇的に短い。
【0075】
また、シミュレータ1は、厳密モデルで収束の悪い共沸混合物や、電解質のシミュレーションに好適であるが、共沸混合物や電解質に限らず、任意の物質組合せを扱うことができる。
【0076】
次に、蒸留塔に供給した溶液には、A成分とB成分との2種類のみが含まれており、A成分の組成がf(S/F)と表せるので、B成分の組成は1−f(S/F)と表すことができる。すなわち、塔頂におけるB成分の組成は、(塔頂B成分組成)=1−f(S/F)との数式(数式(2))で表すことができる。
【0077】
続いて、塔頂から気体として流出するA成分及びB成分の総流量である塔頂流出流量の求め方について説明する。塔頂流出流量は、S/Fを変数とする数式g(S/F)で求める。すなわち、(塔頂流出流量)=g(S/F)で表される数式(数式(3))にて塔頂流出流量を求める。なお、この数式は実測値あるいは厳密モデルから得られたグラフに基づいて導出した数式である。(塔頂流出流量)=g(S/F)で表されるグラフは、例えば図5(b)のようになる。
【0078】
図5(b)の例では、(S/F)が一定値を超えるまでは塔頂流出流量が一定となっており、(S/F)が一定値を超えた後は(S/F)に比例して塔頂流出流量が増加している。これは、共沸混合物に特有のグラフ形状である。すなわち、共沸状態では、A成分及びB成分が一定の割合で蒸発するので塔頂流出流量が一定となっている。
【0079】
塔頂流出流量がg(S/F)で表せることから、A成分の塔頂からの流量は、g(S/F)×f(S/F)との数式(数式(4))で表すことができ、同様に、B成分の塔頂からの流量は、g(S/F)−(A成分の塔頂からの流量)との数式(数式(5))で表すことができる。
【0080】
そして、供給流量Fのうち、x%がA成分であり、y%がB成分であるから、塔底からのA成分の流量は、F×x/100−(塔頂からのA成分の流量)との数式(数式(6))で表すことができ、同様に、塔底からのB成分の流量は、F×y/100−(塔頂からのB成分の流量)との数式(数式(7))で表すことができる。
【0081】
このようにして得られた数式(1)〜(7)を用いることで、A成分及びB成分の塔頂成分組成、塔底成分組成、塔頂流出流量、及び塔底流出流量を算出することができる。ここで、上記数式(1)〜(7)を用いて塔頂成分組成、塔底成分組成、塔頂流出流量、及び塔底流出流量を算出する具体例として、蒸留塔に原料液体としてHCl成分とHO成分とからなる塩酸水溶液を供給した場合の例について説明する。
【0082】
なお、ここでは、塩酸水溶液の供給流量が100kg/hrであり、スチーム流量が100kg/hrであり、塩酸水溶液のHClの組成は0.1であり、HOの組成が0.9である場合について考える。また、ここでは、(S/F)=1のとき、f(S/F)=0.2であり、g(S/F)=10kg/hrであることを想定している。
【0083】
この場合、上記数式(1)からHOの塔頂への分配率は、f(S/F)=0.2となり、数式(2)からHClの塔頂への分配率は、1−f(S/F)=0.8となる。また、数式(3)から、塔頂流出流量は、g(S/F)=10kg/hrとなるので、数式(4)によりHOの塔頂流量は、g(S/F)×f(S/F)=2kg/hrと求まる。そして、数式(5)によりHClの塔頂流量は、g(S/F)−2kg/hr=8kg/hrと求まる。
【0084】
また、数式(6)によりHClの塔底流量は、100kg/hr×0.1−8kg/hr=2kg/hrと求まる。そして、数式(7)によりHOの塔底流量は、100kg/hr×0.9−2kg/hr=88kg/hrと求まる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
最後に、シミュレータ1の各ブロック、特に制御部3は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0087】
すなわち、シミュレータ1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるシミュレータ1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記シミュレータ1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0088】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0089】
また、シミュレータ1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のシミュレータでは、蒸留塔のシミュレーションを行うことができるので、蒸留塔の運転支援に利用できる。また、シミュレータでは、パラメータを入力した後、迅速に塔頂成分組成及び塔底成分組成が出力されるので、蒸留塔の運転訓練に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、シミュレータの要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、本発明のシミュレーション方法の概要を示す図である。
【図3】上記シミュレータにおけるシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】数式f(S/F)及びg(S/F)を用いて塔頂成分組成、塔底成分組成、各物質の塔頂流量及び塔底流量求める方法を説明する図である。
【図5】同(a)はf(S/F)の一例を示す図であり、同図(b)はg(S/F)の一例を示す図である。
【図6】従来技術を示すものであり、一般的な蒸留塔における反応プロセスの概略を説明する図である。
【図7】従来技術を示すものであり、厳密モデルのシミュレーションの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 シミュレータ(計算装置)
2 入力部
3 制御部(成分組成演算手段/流出流量演算手段)
4 表示・出力部
5 記憶部
6 パラメータ格納テーブル
7 物質組合せ‐数式対応テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留塔内に供給された原料混合物の液体成分を塔底から流出させ、熱源によって上記液体成分を加熱・蒸発させた気体を少なくとも含む気体成分を蒸留塔の塔頂から流出させる蒸留塔において、塔頂から流出する気体成分の組成及び塔底から流出する液体成分の組成の少なくとも一方を算出する計算装置であって、
上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を格納した記憶部と、
上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出する成分組成演算手段とを備えていることを特徴とする計算装置。
【請求項2】
上記記憶部には、上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の流出流量または塔底から流出する液体成分の流出流量との対応関係を示す流出流量情報が格納されており、
上記記憶部から読み出した流出流量情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の流出流量または塔底から流出する液体成分の流出流量を算出し、該算出した流出流量と、上記成分組成演算手段が算出した成分組成とを積算して、上記蒸留塔の塔頂または塔底における各成分の流出流量を算出する流出流量演算手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の計算装置。
【請求項3】
蒸留塔内に供給された原料混合物の液体成分を塔底から流出させ、熱源によって上記液体成分を加熱・蒸発させた気体を少なくとも含む気体成分を蒸留塔の塔頂から流出させる蒸留塔において、塔頂から流出する気体成分の組成及び塔底から流出する液体成分の組成の少なくとも一方を算出する計算装置による計算方法であって、
上記熱源からの供給熱量を上記原料混合物の供給流量で除した値と塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成との対応関係を示す成分組成情報を記憶部から読み出すステップと、
上記記憶部から読み出した成分組成情報と、上記熱源からの供給熱量及び上記原料混合物の供給流量とに基づいて、塔頂から流出する気体成分の組成または塔底から流出する液体成分の組成を算出するステップとを含むことを特徴とする計算方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の計算装置における各手段としてコンピュータを機能させるための計算装置制御プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の計算装置制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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