説明

記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置

【課題】本発明は、記憶媒体に記憶されているデータのセキュリティーを考慮するとともに、前記記憶媒体の金属部材および樹脂部材を同時に分別してリサイクルすることができる記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置に関する。
【解決手段】前記記憶媒体は、前記記憶媒体層が樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われており、水中で爆破されることにより、前記記憶媒体層と樹脂部材とが別々に剥離される。剥離された記憶媒体層と樹脂部材は、処理液によって金属を溶出して、リサイクルが行なわれると同時に、記憶媒体のデータを消滅させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆った記憶媒体、たとえば、DVD、CD、CD−R、CD−W、MO、HDD等を爆薬により爆破することによって、前記記憶媒体層と樹脂部材を剥離して、前記記憶媒体のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層を構成する金属等および樹脂部材をリサイクルすることが可能な爆破の際に発生する衝撃波を用いた記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置に関するものである。すなわち、本発明は、前記記憶媒体に記憶されているデータのセキュリティーを考慮するとともに、前記記憶媒体層の金属部材および樹脂部材を同時に分別してリサイクルすることができる爆破を用いた記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスク状に積層された記憶媒体は、反射層、誘電層、記憶層からなる記憶媒体層と、前記記憶媒体層を保護する樹脂部材とからなるサンドイッチ状の3層構造になっているものが多い。前記記憶媒体は、コンピュータプログラム、音楽、映像等の著作権を有するデータ、企業情報、個人情報、発明や金融等に関する秘密情報が記憶されている。前記記憶媒体に記憶されているデータは、使用後廃棄される。
【0003】
たとえば、特開2003−25330号公報における光ディスクからのプラスチック回収方法は、光ディスクまたはその粗粉砕物を酸性溶液中で攪拌し、次いで、前記光ディスクまたは粗粉砕物を有機溶媒中で攪拌することにより、プラスチック基板から保護膜を溶解・分離し、プラスチック片を回収している。
【特許文献1】特開2003−25330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようなデータを記憶した記憶媒体は、そのままの形で廃棄される場合もあるが、多くはシュレッダーやカッターといった機械的な切断、あるいはドリルによる穿孔など物理的に破壊されて、データが読み出されないように加工した後、廃棄されている。前記廃棄方法は、不燃ゴミとしての埋めたて処分、あるいは、焼却処分がなされている。また、前記記憶媒体の一部は、溶鉱炉に投入するなどして金属の回収が行なわれている。しかし、前記処理方法は、重量比で大部分を占めている樹脂部材が燃焼され、炭酸ガスと水に分解されるので、完全なリサイクルとはいえないのが現状である。
【0005】
前記記憶媒体に含まれる金属分は、樹脂部材から分離され、再精錬によりリサイクルが行なわれるとともに、前記金属類が除去された樹脂部分が再生されて、リサイクルが行なわれるという、完全なリサイクルが行なわれていないのが現状である。完全な形のリサイクルの障害となるのは、金属および金属イオンを含む記憶媒体層が上下を記憶媒体の母体となる樹脂部材で挟み込まれ、両側から強固に相互を接着した構造であるので、無機酸が記憶媒体層の内部に深く浸透して、金属および金属イオンを抽出できないためである。前記記憶媒体は、酸化作用を伴うような強力な酸を使用すれば、樹脂部材を侵食し、金属および金属イオンの回収が可能であるが、同時に、樹脂部材が劣化してリサイクルできなくなるという問題がある。
【0006】
前記記憶媒体は、樹脂部材−記憶媒体層−樹脂部材の3層からなり、各層が強固に接着されているため、それぞれを分離することが容易でない。そこで、前記記憶媒体は、通常の機械的切断、破砕方法で、前記3層構造を保持したまま粉砕されている。前記破砕品は、溶鉱炉に投入して、金属を回収し、樹脂部材が燃料として、二酸化炭素と水に分解される。その結果、前記記憶媒体は、金属をリサイクルすることができるが、樹脂部材をリサイクルすることができない。
【0007】
前記記憶媒体は、酸などの溶液で金属を抽出する場合、樹脂は樹脂として、金属は金属として各々分離リサイクルできれば理想的である。しかし、機械的な破砕では非常に薄い記憶層に溶液がなかなか浸透しないという問題がある。また、重要なデータが記憶された記憶媒体は、保管用のコンテナから出して処理する際に、記憶されたデータが漏洩する恐れがある。前記溶鉱炉への投入、機械的破砕は、処理する際に、保管用のコンテナから出さざるをえないので、人為的な問題等で外部にデータが流出する危険がある。前記記憶媒体が保管されている保管庫は、そのまま溶鉱炉に投入することも可能であるが、盗難防止を考慮して強固に作製されているため、使い捨てにすると、非常にコストがかかる。
【0008】
以上のような課題を解決するために、本発明は、記憶媒体を処理箱内に収納し、爆薬の一部または全部を処理箱の中にセットして、爆破する際の爆発威力・衝撃波により記憶媒体層と樹脂部材が剥離する記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置を提供することを目的とする。また、本発明は、記憶媒体層と樹脂部材との密度の違い、衝撃波の速度の違い、衝撃波の伝播の違い、衝撃波の反射の違いに着目し、前記記憶媒体層と樹脂部材の3つの層に引き剥がすような力が作用し、前記記憶媒体層に沿って剥離されて、記憶媒体におけるデータの消去とリサイクルを同時に達成できる記憶媒体処理方法および記憶媒体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明)
第1発明の記憶媒体処理方法は、記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができるものであり、前記記憶媒体を積層状に重ねて収納されている処理箱内に爆薬を前記記憶媒体の積層方向にセットする処理と、前記爆薬を爆破させ、その際に発生する衝撃波を前記記憶媒体の面方向に進行するように発生させる処理と、前記処理箱内の回収物質を抽出する処理液を前記処理箱内に注入する処理と、前記処理箱内から樹脂部材を回収するとともに、前記処理液から金属を回収する処理とからなる。
【0010】
(第2発明)
第2発明の記憶媒体処理装置は、記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができるものであり、前記記憶媒体が積層状に積み重ねられて収納されている処理箱と、前記処理箱内で、前記記憶媒体の積層方向にセットされ、爆破された際に発生する衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行するように配置された爆薬と、前記爆薬を爆発させる起爆手段とから少なくとも構成されている。
【0011】
(第3発明)
第3発明の記憶媒体処理装置において、第2発明の爆薬は、前記処理箱内に積層状に重ねられている記憶媒体の上下部で、一部が突出していることを特徴とする。
【0012】
(第4発明)
第4発明の記憶媒体処理装置において、第3発明における爆薬の突出は、上下5mm以上であることを特徴とする。
【0013】
(第5発明)
第5発明の記憶媒体処理装置において、第2発明から第4発明の処理箱は、他の箱によって覆われて保護されていることを特徴とする。
【0014】
(第6発明)
第6発明の記憶媒体処理装置において、第2発明から第5発明の処理箱は、記憶媒体のセキュリティーを保持するための盗難防止、保管、管理用であり、前記保管状態のまま前記記憶媒体を爆破することができるものであることを特徴とする。
【0015】
(第7発明)
第7発明の記憶媒体処理装置は、記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができるものであり、前記記憶媒体が積層状に積み重ねられて収納されているとともに、周囲を容易に切断できない金網で囲まれて、一旦収納された記憶媒体が取り出せない保管籠と、前記保管籠を覆う処理箱と、前記処理箱内で、前記記憶媒体の積層方向にセットされ、爆破された際に発生する衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行するように配置された爆薬と、前記爆薬を爆発させる起爆手段とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0016】
(第8発明)
第8発明の記憶媒体処理装置において、第7発明の保管籠は、強固な金属製フレームまたは強固な合成樹脂製フレームに金属板または強固な合成樹脂製板を貼り付け、盗難防止機能を兼ね備えた構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、爆薬を記憶媒体の積層方向に仕掛けることで、衝撃波が記憶媒体層と樹脂部材を剥離するように働くため、データのセキュリティーと材料のリサイクルが同時にできる。前記衝撃波による記憶媒体層と樹脂部材の剥離は、前記樹脂部材を粉砕しないため、良質の樹脂を再生することができる。
【0018】
本発明によれば、爆薬・火工品の爆発した爆発威力が水または空気を介して作用するようにするとともに、処理箱の中または外で爆発させるので、処理箱から記憶媒体を取り出すことなく、データのセキュリティーが保持できる。前記処理箱に金網、孔の開いた鋼板を用いることで、爆薬・火工品の爆発した爆発威力が水または空気を介して、処理箱の内側または外側から作用するため、処理箱から記憶媒体を取り出すことなく爆発が可能である。また、前記処理箱は、記憶媒体を爆破する際の処理を行なうとともに、記憶媒体が外部に流出しないような保管箱であり、金属および樹脂を回収する回収箱でもある。
【0019】
本発明によれば、処理箱の強度と爆発威力を適宜調整することで、処理箱自身を爆発容器とし、水または空気を媒体とした爆風、爆力により、処理箱から記憶媒体を取り出すことなく記憶媒体層と樹脂部材との剥離が可能である。
【0020】
本発明によれば、記憶媒体が記憶媒体層と樹脂部材との密度・音速の違い等により衝撃波の作用の仕方が異なり、記憶媒体層の境界面に沿って剥離が生じ、酸などによる金属の分離、および樹脂部材の回収が極めて容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1発明)
第1発明の記憶媒体処理方法は、記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体を構成する記憶媒体層の金属および樹脂部材のリサイクル処理を行うことができるようにしている。前記記憶媒体は、前記記憶媒体層と前記樹脂部材とがサンドイッチ状に覆われており、水中または空気中で爆破されることにより、前記記憶媒体層と樹脂部材とが別々に剥離される。第1の処理は、処理箱内に前記記憶媒体を積層状に重ねて収納した後、必要に応じて、水が入れられるとともに、長細い爆薬が前記記憶媒体の積層方向にセットされる。第2の処理は、前記爆薬を爆破させて、その際に発生する衝撃波を前記記憶媒体の面方向に進行するようにする。前記爆薬の爆破は、前記記憶媒体層と樹脂部材を3枚におろしたように剥離される。前記衝撃波は、水中または空気中を伝わる大きな力が前記記憶媒体層と樹脂部材とで異なるため、互いに接する前記接着面がずれるように破壊されて、互いに剥離された状態になる。
【0022】
第3の処理は、前記爆薬を爆破させた後、金属等の回収物質を抽出する処理液、たとえば、硝酸、塩酸等の酸を前記処理箱内に注入する。前記処理液は、前記記憶媒体層に付着した金属を溶解する。第4の処理は、前記処理箱内から前記樹脂部材、たとえば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート等を原形状のまま回収するとともに、前記処理液から金属(たとえば、アルミニウム、銀等)、金属イオン等を回収する。本発明は、前記記憶媒体の積層方向と爆薬のセット方向により発生する衝撃波の進行によって、前記記憶媒体層と樹脂部材を剥離させることにより、記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と樹脂部材のリサイクルが容易にできるというものである。
【0023】
特に、樹脂部材は、破砕片のように細切れとならず、記憶媒体の大きさのままであるため、再生樹脂として好ましい状態になっている。前記記憶媒体は、DVD、CD−R、CD−W、MO、HDD等がある。また、前記衝撃波を発生させる爆薬は、たとえば、ダイナマイト、含水爆薬のような汎用産業用爆薬等を使用できる。本発明における処理箱内の記憶媒体は、積層状態にしたものを多数個配置することができる。また、爆薬は、前記記憶媒体のそれぞれの中心孔に配置したり、あるいは記憶媒体と記憶媒体との間に複数個配置することもできる。
【0024】
(第2発明)
第2発明の記憶媒体処理装置は、記憶媒体内のデータを除去することができると同時に、記憶媒体層の金属等と樹脂部材を回収できるようにしたものである。前記記憶媒体層を樹脂部材によりサンドイッチ状に覆われている記憶媒体は、爆破される際に、データが除去されると同時に、前記記憶媒体層と樹脂部材とがそれぞれ剥離される。前記処理を行う処理箱は、前記記憶媒体が積層状に積み重ねられて収納されているとともに、必要に応じて、水が満たされている。前記記憶媒体を剥離する爆薬は、前記処理箱内で、前記記憶媒体の積層方向にセットされ、爆破された際に、衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行するように発生して、前記記憶媒体層と樹脂部材とが剥離するように配置される。
【0025】
前記爆薬は、起爆手段によって爆発されて、前記記憶媒体層が樹脂部材から粉々にならずに剥離するように分けられる。前記起爆手段は、電気雷管、工業雷管と導火線、導火線付雷管がある。前記電気雷管、発破器、導火線付雷管は、専用の点火器を安全な位置において遠隔起爆する。前記処理箱は、鋼材や強化プラスチック等で作製され、密閉構造で、爆薬を内部または外部に配置することができる。さらに、爆薬を外部に配置する場合は、金網等衝撃波が外部から処理箱の内部に作用できる構造のものである。前記処理箱は、鋼材で作製した水槽、池、人口池等を使用することができる。
【0026】
(第3発明)
第3発明の記憶媒体処理装置において、長細い爆薬は、第2発明の処理箱内に積層状に積み重ねられている記憶媒体の上下部に一部が突出している。前記長細い爆薬の上下部における一部突出は、記憶媒体層と樹脂部材とが剥離される際に、好都合である。
【0027】
(第4発明)
第4発明の記憶媒体処理装置において、第3発明における爆薬の突出量は、本出願人が実験した結果、上下5mm以上とした場合、記憶媒体および樹脂部材が粉々にならず、剥離を上手に行うことができた。
【0028】
(第5発明)
第5発明の記憶媒体処理装置は、処理箱の破損あるいは水または処理液等の漏れを防ぐために二重になるように、もう一つの箱により保護されている。
【0029】
(第6発明)
第6発明の記憶媒体処理装置における処理箱は、記憶媒体のセキュリティーを保持するための盗難防止、保管、管理用として、一旦中に入れたら取り出すことができないような構造になっており、処理箱を開けることなく、前記保管状態のまま、前記記憶媒体を爆破することができるようになっている。したがって、前記処理箱は、データの保護と記憶媒体のリサイクルが同時に達成される。
【0030】
(第7発明)
第7発明の記憶媒体処理装置は、前記記憶媒体が外部に持ち出されないような金網で囲まれた保管籠である点、爆薬が前記保管籠の外で、前記保管籠を覆う処理箱内に配置されている点で第2発明と異なっている。前記構成とした第7発明は、第2発明と同様に、記憶媒体層と樹脂部材がそれぞれ剥離されることにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属および樹脂部材のリサイクル処理を行うことができる。前記保管籠は、容易に切断されないような太い針金または鋼材からなる。また、前記保管籠は、鋼板に多数の孔を開けたものでもよい。前記保管籠は、処理箱で覆われており、前記処理箱に爆薬が前記記憶媒体の積層方向にセットされる。前記爆薬は、爆破の際に発生した衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行し、記憶媒体層と樹脂部材が剥離する。
【0031】
(第8発明)
第8発明の記憶媒体処理装置は、第7発明の保管籠を強固な金属製フレームまたは強固な合成樹脂製フレームに金属板または強固な合成樹脂製板を貼り付けた構成としている。前記保管籠は、爆薬で簡単に破損しない程度の強度を有するとともに、盗難防止機能を兼ね備えた構造となっている。前記保管籠は、記憶媒体層の金属等、あるいは樹脂部材を回収した後、再度使用が可能であるとともに、前記記憶媒体の盗難防止機能として、内部を簡単に開けることができないような施錠装置が付けられている。
【実施例1】
【0032】
図1は記憶媒体を爆破する際のセット状態を説明するための一部断面を有する斜視図である。図1において、記憶媒体剥離装置11は、内部に積層された状態で積み重ねられている記憶媒体12を収納する保管箱14と、前記保管箱14を覆うように収納するタンク15と、前記記憶媒体12の中心孔121内に配置されている爆薬13と、前記爆薬13を爆破させる雷管131と、前記雷管131に接続された導火線132によって爆薬13を起爆する起爆装置133とから構成されている。前記爆薬13は、ひも状の導爆線で、爆発反応速度が6000m/sec以上のものを使用した。前記爆発時の衝撃波の伝播速度は、水中で1500m/sec以上、空気中で340m/sec以上である。
【0033】
前記保管箱14は、単に記憶媒体12を保管するだけでなく、記憶媒体12内のデータを破壊すると同時にリサイクルを行う場合、処理箱になる。また、前記保管箱14は、爆破処理の後、金属、たとえば、銀等を回収する際には回収箱となる。したがって、本明細書において、保管箱、処理箱、回収箱は、同じものであるが、その時々によって呼び名が変わっている。
【0034】
前記保管箱14は、積層された状態に積み重ねられる記憶媒体12を載置する記憶媒体載置手段141が設けられているとともに、前記記憶媒体12を処理する際に、水142を入れることができる。前記爆薬13は、たとえば、前記記憶媒体12の中心孔121の中に挿入され、下部が記憶媒体載置手段141の内部に入り、上部が爆薬固定手段134によって固定されると同時に突出している。前記爆薬13の上部には、雷管131が取り付けられている。前記雷管131は、導火線132を介して起爆装置133に接続されている。前記保管箱14は、タンク15の内部に設けられた処理箱固定手段151に固定されている。なお、前記保管箱14およびタンク15の蓋が省略されており、前記蓋には、導火線132が入る小さな孔が開けられている。また、前記爆薬固定手段134は、粘着テープのようなもの、あるいは接着剤の付いた樹脂部材等を使用することができる。
【0035】
前記記憶媒体12は、たとえば、直径120mmのDVD−Rを積み重ねた形で保管箱14に収納されている。前記保管箱14は、図示されていない蓋が自在に開けられないようになっており、前記記憶媒体12が取り出せない。前記爆薬13は、直径が8mm程度であるので、前記記憶媒体12の中心孔121が10mmから20mm程度のものが良い。爆薬13は、前記記憶媒体12の中心孔121から差込まれ、前記記憶媒体12の中央に設置されるように爆薬固定手段134によって固定される。前記記憶媒体12は、たとえば、10枚当たり、約20mmgの爆薬13が必要であった。前記爆薬13は、その端部が処理箱14の外に引き出され、6号瞬発電気雷管を取り付けて起爆装置133で遠隔起爆される。
【0036】
前記爆薬13は、本数が多いほど、爆発威力が増し、記憶媒体12の剥離が容易にできる。前記保管箱14は、必要に応じて、水が満たされたタンク15に沈めておくこともできる。前記タンク15内の水深は、保管箱14と爆薬13が隠れる程度以上必要である。前記保管箱14は、その内寸法が、130mm×130mm、高さ100mmの底付き箱とし、直径120mmのDVD−Rを50枚収納した。前記保管箱14の上部蓋部分には、直径15mmの孔を設けておき、長さ150mmの爆薬13を内部に差し込んだ。前記爆薬13の上部約40mm部分が保管箱14の外部に出るようにした。前記爆薬13の上部には、6 号瞬発電気雷管を取り付け、起爆装置133で遠隔起爆を行った。
【0037】
図2(イ)は記憶媒体を説明する図で、(ロ)は記憶媒体を記憶媒体層と樹脂部材とに剥離した状態を説明するための図である。記憶媒体12は、図2(イ)で示すように、内部に記憶媒体層123を有し、樹脂部材122、124で前記記憶媒体層123を覆っている。前記樹脂部材122は、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネートのような樹脂層にラベル等の印刷が施されている。前記樹脂部材124は、前記樹脂部材122とほぼ同じ部材で、基板としての厚みを有している。前記記憶媒体12は、前記爆薬13から発生した衝撃波によって記憶媒体層123と、樹脂部材122、124とに剥離される。
【0038】
図3(イ)は本発明の実施例で、積み重ねられた記憶媒体の中心孔に爆薬を仕掛けた状態を説明するものであり、(ロ)は爆薬の爆発による衝撃波の状態を説明するための図で、(ハ)は同じく平面図である。細長い棒状または紐状の爆薬13は、積み重ねられた記憶媒体12の中心孔121における略中心に爆薬固定手段134(図1参照)によって固定されている。また、前記爆薬13は、前記積み重ねられた記憶媒体12の下部および上部にa、bで示す突出部を有する。前記突出部a、bの大きさは、爆薬13の積み重ね状態で異なるが、5mm以上の時、記憶媒体層123と樹脂部材122、124との剥離状態が良好であった。
【0039】
図3(ロ)および(ハ)は前記爆薬13の爆発によって発生した衝撃波を示すものであり、(ロ)が爆薬13の断面方向、(ハ)が平面方向である。前記衝撃波は、図3に示すAからC方向に向かって進行している。たとえば、前記記憶媒体12は、外径が120mm、中心孔121の径が14mm、厚みが1.2mmのものを使用した。前記爆薬13は、紐状のものを使用し、この直径が約6mmで、1m当たり約10gであり、その時に発生した衝撃波の速度が6000m/secで、俵型の衝撃波となった。
【0040】
図4(イ)および(ロ)は衝撃波によって記憶媒体が記憶媒体層と樹脂部材に剥離される状態を説明するための図である。図4(イ)において、爆薬13は、衝撃波Aとなり、記憶媒体12の積層断面に当たる。図4(ロ)に示すように、記憶媒体層123と樹脂部材122、124とは、密度等が異なるため、衝撃波が記憶媒体層123で一番早く、樹脂部材122、124で遅い。すなわち、前記記憶媒体層123は、樹脂部材122、124より大きな圧力を受けることにより、記憶媒体層と樹脂部材の間で剥離が起こる。
【0041】
図5は保管箱内に積層された記憶媒体を複数箇所に置き、複数個の爆薬を配置した例を説明するための図である。図5において、保管箱14の内部には、たとえば、積層された記憶媒体51から56が6箇所に積まれている。前記記憶媒体51から56の間には、爆薬513から516が配置されている。前記爆薬513から516は、記憶媒体51から56の積層厚さより上部および下部において突出するようになっており、爆発によって発生する衝撃波で、記憶媒体層と樹脂部材とが剥離される。前記積み重ねられた記憶媒体51から56および爆薬513から516の配置は、前記記憶媒体の量および種類等によって、記憶媒体の内部および/または外部に置くことができ、その数も任意に選択できる。
【0042】
前記保管箱14は、内寸法が、500mm×500mm、高さ500mmの水槽に、前記と同様に爆薬13と電気雷管部分をいれ、水深が400mmになるように水を入れた。起爆装置133は、遠隔操作で電気雷管を起爆し、爆薬13の爆発威力で記憶媒体の記憶媒体層と樹脂部材を剥離した。前記剥離した記憶媒体層および樹脂部材は、保管箱14とともに水槽外に引き上げられ、前記保管箱14の内部に剥離された状態で回収された。剥離された状態で前記回収された記憶媒体層および樹脂部材は、酸により金属が分離回収し、残る樹脂部材の部分も酸が除去される。
【0043】
前記記憶媒体層の金属と樹脂部材は、金属または樹脂部材の原料となって再利用される。また、前記金属の回収に使用された酸は、回収する金属の種類に応じて、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、あるいは混合した酸など、何れも使用できる。金属を回収した後の残分は、樹脂部材であるので、酸を除去、水洗などの処理を行った後、再生プラスチックの原料とすることができる。あるいは前記樹脂部材は、固形燃料や別の物質の合成原料としても使用できる。
【実施例2】
【0044】
第2実施例は、図示されていないが、DVD−Rを積み重ねた形で収納した保管箱は、金属製のフレームに金属製の金網を貼り付けた籠のような構造である点で第1実施例と異なっている。前記保管箱における金網のピッチは、記憶媒体が金網の隙間から取り出せないように十分小さくする必要がある。前記金網を構成する針金は、容易に切断できないような太さのものとする。金網以外の材料としては、孔をたくさん開けた鋼板も使用できる。保管箱の周囲には、爆薬を配置する。爆薬は、TNT、RDX(Research Depertment X)のような高性能爆薬、ダイナマイト、含水爆薬のような産業用爆薬、適当な起爆用爆薬とともに硝安油剤爆薬を使用することもできる。たとえば、爆薬は、6号瞬発電気雷管を取り付けられ、起爆装置で遠隔起爆する。前記爆薬の爆発威力は、保管箱の金網面を介して記憶媒体に作用する。前記爆薬の量は、多いほど、爆発威力が増し、剥離の程度が大きくなる。前記保管箱は、水槽に沈める。その時の水深は、保管箱と電気雷管部分を含めた爆薬部分が隠れる程度以上必要である。
【実施例3】
【0045】
第3実施例は、図示されていないが、DVD−Rを積み重ねた形で収納した保管箱が強固な金属製のフレームに強固な金属板を貼り付けた盗難防止機能を兼ね備えた構造である点で第1実施例および第2実施例と異なっている。前記保管箱の構造は、内部での爆発に耐えるように十分な強度を有するものとする。必要に応じて、前記保管箱は、施錠・封印等を行えるような構造とする。金属以外の材料としては、強固な樹脂も使用できる。前記保管箱の内部には、上部の小さな孔等から爆薬を配置する。爆薬は、前記TNT、RDXのような高性能爆薬、ダイナマイト、含水爆薬のような産業用爆薬、適当な起爆用爆薬とともに硝安油剤爆薬を使用することもできる。爆薬には、6号瞬発電気雷管を取り付けて起爆装置で遠隔起爆する。前記爆薬の爆発威力は、保管箱内部で記憶媒体に作用する。第3実施例は、必ずしも内部を水で満たす必要はない。前記保管箱ごと水槽に沈めても良い。爆発威力は、保管箱で受けるので、水槽の構造を簡単にできる。
【0046】
図6は本発明の実施例で、記憶媒体の樹脂部材と記憶媒体層の金属等を回収する際のフローチャートである。図6において、記憶媒体は、積層状態に積み重ねられて、処理箱内にセットされる(ステップ61)。前記積み重ねられた記憶媒体の中心孔または側部に爆薬がセットされる(ステップ62)。前記処理箱内には、水が挿入される(ステップ63)。前記セットされている爆薬は、起爆装置によって爆破される(ステップ64)。前記爆薬の爆破により、記憶媒体は、記憶媒体層と樹脂部材とが剥離状態になった後、水抜きが行なわれる(ステップ65)。
【0047】
前記剥離状態の記憶媒体層と樹脂部材は、金属抽出用の処理液が前記処理箱内に挿入される(ステップ66)。前記処理液は、記憶媒体層および樹脂部材に付着した金属等を溶出し、略円盤状の樹脂部材を回収する(ステップ67)。前記金属等が溶出した処理液を回収(ステップ68)して、その中から金属部材が回収される(ステップ69)。なお、前記水は、処理箱の内部または外部とすることができる。また、前記水は、省略して、空気中で処理することもできる。
【0048】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本実施例に記載されている記憶媒体は、記憶媒体層と保護用の樹脂部材とがサンドイッチ状に構成されているものであれば、実施例に列記したもの以外であっても含まれることはいうまでもない。保管箱(処理箱、回収箱)の形状は、前記記憶媒体と爆薬を仕掛けることができれば、特に限定されるものではない。前記爆薬および起爆装置等は、公知または周知のものを任意に選択できる。
【0049】
本実施例は、記憶媒体の積層方向に衝撃波が進行する例を説明したが、前記衝撃波が前記記憶媒体に対して斜めにすることもできる。前記場合、前記記憶媒体層と樹脂部材は、衝撃波が斜めになるが、前記記憶媒体層と樹脂部材を伝播する伝播速度がそれぞれ異なるため、圧力が不均一となり、3枚に引き剥がされる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】記憶媒体を爆破する際のセット状態を説明するための一部断面を有する斜視図である。(実施例1)
【図2】(イ)は記憶媒体を説明する図で、(ロ)は記憶媒体を記憶媒体層と樹脂部材とに剥離した状態を説明するための図である。
【図3】(イ)は本発明の実施例で、積み重ねられた記憶媒体の中心孔に爆薬を仕掛けた状態を説明するものであり、(ロ)は爆薬の爆発による衝撃波の状態を説明するための図で、(ハ)は同じく平面図である。
【図4】(イ)および(ロ)は衝撃波によって記憶媒体が記憶媒体層と樹脂部材に剥離される状態を説明するための図である。
【図5】保管箱内に積層された記憶媒体を複数箇所に置き、複数個の爆薬を配置した例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例で、記憶媒体の樹脂部材と記憶媒体層の金属等を回収する際のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
11・・・記憶媒体剥離装置
12・・・記憶媒体
121・・・中心孔
122・・・樹脂部材
123・・・記憶媒体層
124・・・樹脂部材
13・・・爆薬
131・・・雷管
132・・・導火線
133・・・起爆装置
134・・・爆薬固定手段
14・・・保管箱(処理箱−回収箱)
141・・・記憶媒体載置手段
142・・・水
15・・・タンク
151・・・保管箱固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができる記憶媒体処理方法において、
前記記憶媒体を積層状に重ねて収納されている処理箱内に爆薬を前記記憶媒体の積層方向にセットする処理と、
前記爆薬を爆破させ、その際に発生する衝撃波を前記記憶媒体の面方向に進行するように発生させる処理と、
前記処理箱内の回収物質を抽出する処理液を前記処理箱内に注入する処理と、
前記処理箱内から樹脂部材を回収するとともに、前記処理液から金属を回収する処理と、
からなる記憶媒体処理方法。
【請求項2】
記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができる記憶媒体処理装置において、
前記記憶媒体が積層状に積み重ねられて収納される処理箱と、
前記処理箱内で、前記記憶媒体の積層方向にセットされ、爆破された際に発生する衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行するように配置された爆薬と、
前記爆薬を爆発させる起爆手段と、
から少なくとも構成されている記憶媒体処理装置。
【請求項3】
前記爆薬は、前記処理箱内に積層状に重ねられている記憶媒体の上下部で、一部が突出していることを特徴とする請求項2に記載された記憶媒体処理装置。
【請求項4】
前記爆薬の突出は、上下5mm以上であることを特徴とする請求項3に記載された記憶媒体処理装置。
【請求項5】
前記処理箱は、他の箱によって覆われて保護されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載された記憶媒体処理装置。
【請求項6】
前記処理箱は、記憶媒体のセキュリティーを保持するための盗難防止、保管、管理用であり、前記保管状態のまま前記記憶媒体を爆破することができるものであることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載された記憶媒体処理装置。
【請求項7】
記憶媒体層を樹脂部材によってサンドイッチ状に覆われている記憶媒体を爆破して、前記記憶媒体層と樹脂部材とを剥離することにより、前記記憶媒体内のデータを除去すると同時に、前記記憶媒体層の金属と前記樹脂部材のリサイクル処理を行うことができる記憶媒体処理装置において、
前記記憶媒体が積層状に積み重ねられて収納されているとともに、周囲を容易に切断できない金網で囲まれて、一旦収納された記憶媒体が取り出せない保管籠と、
前記保管籠を覆う処理箱と、
前記処理箱内で、前記記憶媒体の積層方向にセットされ、爆破された際に発生する衝撃波が前記記憶媒体の面方向に進行するように配置された爆薬と、
前記爆薬を爆発させる起爆手段と、
から少なくとも構成されていることを特徴とする記憶媒体処理装置。
【請求項8】
前記保管籠は、強固な金属製フレームまたは強固な合成樹脂製フレームに金属板または強固な合成樹脂製板を貼り付け、盗難防止機能を兼ね備えた構造であることを特徴とする請求項7に記載された記憶媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−289851(P2007−289851A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120323(P2006−120323)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(595079984)北海道日本油脂株式会社 (6)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】