説明

記録シート

【課題】 インクジェット方式のプリンターを用いた際に画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、しかも耐水性に優れ、記録後に野外などに展示した場合においても経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少ない記録シートの提供。
【解決手段】 この課題は、基材上にアンダーコート層を有し、該アンダーコート層上に非晶質シリカ、高分子接着剤及び架橋剤を含有するインク受容層を設けた記録シートにおいて、前記アンダーコート層が有機顔料、及び高分子接着剤を含有しそしてインク受容層の架橋剤がポリアミド系樹脂であることを特徴とする記録シートによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式に適した記録材料に関する。より詳細にはインクジェット記録方式において、画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ塗膜耐水性及び記録後の経時安定性に優れた記録シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターの性能、特にプリント速度、解像度、彩度などの向上によるインクジェットプリンターの用途拡大に伴い、従来の書類等のモノクロのオフィス文書からカラーを主に用いた広告物、特に購買宣伝広告としての用途が広まっている。インクジェット記録は印刷と違い、製版する必要がないため、少量での印刷が可能であり、コストも安くなるというメリットがある。
【0003】
被記録材に対しても吸収速度向上、吸収容量増加等、より高度な特性が要求されるようになり、インク受容層を表面に設けた塗工紙タイプの記録シートが開発されているが実用上の耐水性に問題があった。例えばフィルムの様な耐水性に優れた基材を使用しても、従来の方法で基材上にインク受容層を設けても、水滴などで濡れたインク受容層表面を指やペン等で擦ると、基材との界面からインク受容層剥がれるという塗膜耐水性不良が発生する。本発明と類似の構成で、下塗り層を設けたのものとして、例えば特許文献1が挙げられるが、下塗り層はインク受容層であり、塗膜耐水性を改良するには不十分であった。
【0004】
また、大判のポスターやPOPアート、製図用途に使用されることも多くなってきている。これら用途では、インクジェットの高鮮鋭性を生かせ、色彩性も優れていることから良好な画像を得ることが可能であり、フルカラー記録においてはドットのコントラストを際だたせるために白色度が高いこと宣伝効果が大きいものとなる。これらへの適用はパーソナルコンピュータレベルで、鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像を簡単に得ることが可能であるためであり、記録シートを多用する理由ともなっている。
【0005】
記録シートの白色度を高めるために、原紙上に蛍光染料あるいは蛍光顔料等の蛍光増白剤を配合したインク受理層を塗工する方法が一般的に行われている。この方法では十分高い白色度を得ることは可能である。例えば、本発明と類似の構成として、例えば特許文献 2が挙げられるが、インク受理層に含有される架橋剤成分によって経時で白紙部が黄色く着色する黄変現象が発生する。この黄変現象は、白紙部だけでなく画像部にも影響を及ぼし、経時での色再現性が得られていないのが実状である。
【特許文献1】特開平5−051470号公報
【特許文献2】特開2003−182208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の欠点を有さず、インクジェット方式のプリンターを用いた際に画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、しかも耐水性に優れ、記録後に野外などに展示した場合においても経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少ない記録シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、基材上にアンダーコート層を有し、アンダーコート層上に非晶質シリカ、水溶性高分子接着剤及び架橋剤を含有するインク受容層を設けた記録シートにおいて、前記アンダーコート層が有機顔料、及び水溶性樹脂を含有しそしてインク受容層の架橋剤がポリアミド系樹脂であることを特徴とする記録シートを見出した。
【発明の効果】
【0008】
この様な構成をとる本願発明の記録シートは、インクジェット方式のプリンターを用いて画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、しかも耐水性に優れ、記録後に野外などに展示した場合においても経時での白紙部の黄変、画像部の劣化が少ない記録シートの提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の一つの実施形態においては、アンダーコート層に含有される有機顔料、特にベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物および/または架橋ポリメタクリル酸重縮合物、の吸油量が50〜250ml/100gである。
【0011】
本発明の更に別の実施形態においては、アンダーコート層に含有される有機顔料がアンダーコート層総固形量の10〜80質量部である。
【0012】
本発明の他の実施形態においては、フィルムシートが空洞を有するポリオレフィン系フィルムである。
【0013】
基材として使用する空洞を有するポリオレフィン系フィルムは、プロピレン、エチレン、ブテン等の公知のオレフィンをモノマー成分とする単独重合体やそれら相互の共重合体、もしくはそれらを任意に混合して成るブレンドポリマーからなるポリオレフィン系フィルムの内部に空洞を有し、この空洞によって不透明化されたフィルムである。この空洞を有するポリオレフィン系フィルムは、耐水性に優れ、適度な強度と伸度を有すると共に、紙に類似した軽量性、クッション性を有する。
【0014】
アンダーコート層に含有される高分子接着剤としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、カチオン性基等の官能基含有変性重合体ラテックス、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂当の合成樹脂系の水性接着剤、無水マレイン酸共重合樹脂系、ポリメチルメタクリレート系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、ポリビニルブチラール系、アルキッド樹脂系等の合成樹脂系接着剤、及びそれらのブレンド等が適用可能である。これによってインク受容層と基材との密着性を向上させることが可能となる。
【0015】
高分子接着剤の含有量が多いと、アンダーコート層に粘着性が生じ、シート同士が接着するブロッキングという問題が生じる恐れもある。また高分子接着剤の含有量が少ないと、密着性が悪くなるので、必要とする塗膜耐水性が得られない可能性がある。
【0016】
アンダーコート層中には、滑り性の改善、表面凹凸形成によるインク受容層との密着性向上を目的に各種の有機顔料粒子を混合する。これらの有機顔料粒子としてはアクリル或いはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン−アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン−アクリル系、ポリスチレン−イソプレン系、メチルメタアクリレート−ブチルメタアクリレート系、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系などの樹脂粒子等が挙げられる。なかでもベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物および架橋ポリメタクリル酸重縮合物が有利であることが実証されている。
【0017】
アンダーコート層における有機粒子の吸油量が高いとアンダーコート層自体の耐水性が低下するので塗工面や記録シート断面から水が浸入し、基材とインク受容層との接着性が損なわれ、塗膜耐水性の良好なものが得られない場合があり、有機粒子の吸油量(JIS K5101)は50〜250ml/100gが望ましい。更に有機粒子は80〜240ml/g、特に100〜230ml/g、なかでも150〜220mL/gの吸油量であるのが好ましい。吸油量が50mL/gより少ないとインクを吸収する孔容積が不足するという問題があり、250mL/gより多いとアンダー層自体の塗膜耐水性が低下するという問題がある。
【0018】
アンダーコート層の総固形量を100質量部とした場合の顔料配合部数が80質量部以下使用するのが好ましく、より好ましくは、20〜70質量部の範囲である。顔料の含有量が80質量部より多い場合、密着性及び塗膜強度が低下する。一方、顔料の含有量が20質量部より少ない場合、シート同士の接着するブロッキングが発生する。
【0019】
なお、アンダーコート層に含有される有機顔料は、1次粒子径が0.5μm〜15.0μmのものを使用するのが好ましく、より好ましくは、1μm〜10μm、特に好ましくは2μm〜8μmのものを使用する(粒子径測定法:コールターカウンター法)。顔料粒子の1次粒子径が小さいと、吸油量が大きくなり、保水性の低いインク受容層を塗工した場合、アンダーコート層中にインク受容層が急激に吸収されることでアンダーコート層中の微細な気泡が塗工層表面に押し出され、乾燥後、光を乱反射してキラキラと光る微細球状になり塗工層外観を損なう。逆に粒径が大きいと、粒子径がアンダーコート層の膜厚に対して大きくなり、低吸油量の顔料粒子がアンダーコート層から突出して、インク受容層中に存在することになるので、インクジェット方式で印字した時の問題である、ドット抜けや滲み発生の原因となりやすい。
【0020】
アンダーコート層には必要に応じて、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、分散剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤などの助剤を添加することができる。
【0021】
基材上にアンダーコート層を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式などの塗工機によって設けることができる。本発明で得られるアンダーコート層の塗工量は、用途によって決定され、塗膜耐水性、記録特性、保存性等を満足させる限り不必要に多くする必要はなく、0.1〜10.0g/m2 の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0〜7.0g/m2 の範囲である。アンダーコート層の塗工量が少ないと、基材上に均一なアンダーコート層塗膜となり難い為、基材との密着性が弱くなり、塗工層に水分を含んだ状態で、強い力が掛かると基材とアンダーコート層の接着面からアンダーコート層が剥がれる塗膜耐水性不良が生じる恐れがある。一方、塗工量が多いと、密着性が上がる点は良いがカールなどの問題の発生やコストが高くなるという経済的な面からも実用性に劣る。
【0022】
インク受容層に用いられる顔料は特に限定しないが、多孔性でインクの吸収性が高く、且つ鮮明な発色を可能とする、高吸油量で、かつ高比表面積を有し、平均粒子径が1〜20μm、好ましくは3〜15μmの非晶質シリカが好ましい。前記非晶質シリカはその平均粒子径が1μmよりも小さい場合には、インク受容層中に十分な空隙が得られにくく、逆に20μmよりも大きい場合には、インク受容層表面に突起が発生し易くなり、後加工のラミネート時にインク受容層とラミネートフィルムの間に空隙が生じるなどのトラブル発生の原因になる。
【0023】
シートの使用目的、プリンターの要求性能に応じて前記非晶質シリカ以外の微粒子も併用することが可能である。これらの微粒子としては、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機系微粒子、アクリル或いはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン−アクリル系、スチレン−ブタジエン系、ポリスチレン−アクリル系、ポリスチレン−イソプレン系、メチルメタアクリレート−ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機系微粒子など、一般に紙塗工に用いられている微粒子が挙げられる。
【0024】
インク受容層に用いられる水溶性高分子接着剤としては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、カゼイン等の蛋白質、デンプンおよびその誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、カチオン性基等の官能基含有変性重合体ラテックス、メラミン樹脂等の熱硬化樹脂等の合成樹脂系の水性接着剤、ポリアクリルアミド系、ポリメチルメタクリレート系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、ポリビニルブチラール系、等の合成樹脂系などの水性高分子接着剤が、顔料との接着性が良く、かつインクの吸収性が良いため、好ましく用いられる。これらの水性高分子接着剤は、1種又は2種以上を使用できるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。また、水溶性高分子接着剤を用いると、インク受容層の耐水性が低下するので、架橋剤を併用して耐水性を向上させることができる。
【0025】
インク受容層の架橋剤としては、水溶性樹脂を硬化し水への溶解性を低下させるものであるが、グリオキザール系を構成成分とする架橋剤は経時によって白紙部を黄変させる為、グリオキザール系以外の成分を含有する公知の架橋剤、例えばメラミン樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート、イソバン、ほう砂、尿素系樹脂等も使用できるが、経時による白紙部の黄変が無いポリアミド系樹脂の使用が特に好ましい。
【0026】
インク受容層中に含有させる架橋剤(ポリアミド系樹脂)の添加量は、特に限定されるものではないが、インク受容層の総固形量を100質量部とした場合、架橋剤配合部数は3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部が好ましい。架橋剤(ポリアミド系樹脂)が3質量部未満では、インク受容層の耐水性が不足する。一方、50質量部を超えると、塗膜の強度が低下する。また、架橋剤の反応促進効果を有する触媒化合物を適宜添加してもよい。
【0027】
水系顔料インクに好適な記録シートを提供することが本発明の目的であるが、水系染料インクへの適合性を付与するために、カチオン系樹脂を用いることが好ましい。カチオン系樹脂をインク受容層中に配合することによって、染料インク中のアニオン性染料がカチオン性樹脂のカチオン基と錯体構造を形成し、染料インクのインク受容層への定着性が高まり、染料インクに対する印字適性が向上する。
【0028】
カチオン系樹脂としては公知のものが使用できる。例えば、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ポリビニルアミジン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物等のジシアン系カチオン樹脂、ジメチル−ジアリルアンモニウムクロライド、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン共重合物等が挙げられる。
【0029】
カチオン系樹脂を用いる場合の添加量は、特に限定されるものではないが、インク受容層の総固形量を100質量部とした場合、カチオン系樹脂配合部数は0.1〜40質量部、好ましくは2〜20質量部が好ましい。カチオン系樹脂0.1質量部以上でインク受容層のアニオン染料インク定着性が得られ、一方、40質量部を超えるとインク吸収能が低下するので好ましくない。
【0030】
インク受容層には必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、分散剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤などの助剤を添加することができる。
【0031】
基材上に設けたアンダーコート層上にインク受容層を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式などの塗工機によって設けることができる。本発明で得られるインク受容層の塗工量は、用途によって決定され、インク吸収性、記録特性、保存性、不透明度等を満足させるかぎり不必要に多くする必要はなく、3〜30g/m2 の範囲から適宜選択して用いられる。インク受容層の塗工量が3g/m2 未満ではインク吸収量及びインク吸収速度が不足し、画像が流れ出したり、画像がぼけたりすることがある。またインクの乾燥が遅くロールにインクが付着し、汚れる恐れもある。一方、塗工量30g/m2 より多いとインク受容層が厚いため基材との密着性が弱くなる上、経済的理由からも実用的ではない。
【0032】
実施例:
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、以下において部および%とあるのは、なお、実施例、比較例の質量部数はすべて固形分換算での数値で示すものとする。
【実施例1】
【0033】
空洞含有ポリオレフィン系フィルム基材上に組成1のアンダーコート層塗工液を乾燥後の塗工量で3g/m2 になるように塗工した。
【0034】
次いで、アンダーコート層上に、組成2のインク受容層塗工液を乾燥後の塗工量で25g/m2 になるように塗工して記録シートを得た。
組成1:アンダーコート層塗工液
ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物(吸油量90ml/100g) 40質量部
(エポスターMS、1次粒子径: 2μm、製造元 日本触媒)
エチレン酢酸ビニル共重合体 59質量部
助剤 1質量部
組成2:インク受容層用塗工液
非晶質シリカ 55質量部
ポリビニルアルコール 20質量部
ポリアミド系樹脂(架橋剤) 15質量部
カチオン性樹脂 5質量部
助剤 5質量部
【実施例2】
【0035】
アンダーコート層塗工液のベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物(吸油量90ml/100g)の代わりに架橋ポリメタクリル酸メチル(吸油量150mL/g)(商品名:MBP−8、一次粒子径:8μm、製造元:積水化成品工業)に変更したアンダーコート層塗工液を塗工した以外は実施例1と同様に記録シートを得た。
比較例1:
アンダーコート層を設けず、インク受容層を直接基材に塗工した以外は実施例1と同様にして記録シートを得た。
比較例2
アンダーコート層上に、架橋剤としてポリアミド系樹脂をグリオキザール系架橋剤に変更したインク受容層用塗工液を塗工した以外は実施例1と同様に記録シートを得た。
比較例3
アンダーコート層塗工液のベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物(吸油量90ml/100g)を尿素ホルムアルデヒド樹脂(吸油量500ml/100g、日本化成社製、商品名:サブミクロンフィラー、粒子径:一次粒子径0.3μm、二次粒子径4μm)に変更したアンダーコート層塗工液を塗工した以外は実施例1と同様に記録シートを得た。
比較例4
アンダーコート層塗工液のベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物の配合量40部を90部に変更し、エチレン酢酸ビニル共重合体の配合量59部を9部に変更した以外は実施例1と同様に記録シートを得た。
【0036】
得られた記録シートに関して、以下の評価を行ない、その結果を表1または表2に示す。
(0)白紙外観:
微少な突起物(微細な粒状物)が無く、実使用に問題ないものを○、微少な突起物があり、実使用に不安のあるものを△、実使用できないものを×として示した。
(1)発色性:
水性顔料インクを使用したプリンター(ローランド製、Hi−Fi Jet−Pro FJ−400)によって得られた記録シートに画像を出力し、発色性を評価した。
実使用に問題ないものを○、発色性が低く、実使用に不安のあるものを△、発色性が非常に低く、実使用できないものを×として示した。
(2)インク受容層耐水性(塗膜耐水性):
得られた記録シートを水に1分間浸漬後、塗工層表面を指で擦り、塗工層が剥がれるかどうかを官能評価した。塗工層が剥がれず耐水性に優れるものを○、塗工層が剥がれ、剥がれる傾向があり、実使用に不安のあるものを△、剥がれがひどく実使用できないものを×で示した。
(3)ブロッキング
インク受容層を塗工する前のアンダーコート層のみを塗工した状態のアンダーコート層塗工シートの塗工面に基材であるポリオレフィンフィルムの片面が接すように重ね合わせ、その上から、2Kg/cmの加重を24時間かけた後、アンダーコート層塗工シートと基材が接着しているかどうかを目視判定した。ブロッキングのないものを○、ブロッキングが認められ、実使用に不安のあるものを△、不良なものを×で示した。
(4)ISO白色度
実施例および比較例で作製した記録シートのインク受容層について、JIS P 8148:2001「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に従い、日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、ISO白色度を測定した。光源には、CIE標準光源C、2°視野を用いた。
(5)蛍光強度
実施例および比較例で作製した記録シートのインク受容層について、JIS P 8148に従い、日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、UVカットフィルターのある場合とない場合についてISO白色度を測定した。光源には、CIE標準光源C、2°視野を用いた。蛍光強度はUVカットフィルターを使用しない場合のISO白色度とUVカットフィルターを使用した場合のISO白色度の差として表現される。
(6)白紙黄変性
実施例および比較例で作製した記録シートのインク受容層について、キセノンアークフェードメーター、東洋精機社製アトラス・ウエザオメータCi 4000を用い、ブラックパネル温度40℃、相対湿度50%RHの環境下で60時間の光照射を行った。光照射後のISO白色度、蛍光強度、および光照射前後の白紙部の色差を測定した。色差は、JIS Z 8730:2002「色の表示方法−物体色の色差」のL***表色系(CIE1976)に従って光照射前後のサンプルの色を測定した結果を基に、下記数1で規定することができる。色差が大きいほど、色劣化が生じていることを示し、色差が2.0以下であれば実用上問題ないレベルと判断できる。
【0037】
【数1】

【0038】
ここで、△E*abは色差、△L*、△a*、△b*は、各々光照射前後のL*、a*、b*の差である。
【0039】
【表1】

【0040】
得られた記録シートの評価結果は表1に示す通りである。実施例1および2の記録シートは本発明に合致する物性値を有し、白紙外観、発色性、塗膜耐水性、ブロッキングに優れ、経時での黄変の少ない記録材料であった。表1の比較例1から分かるように、アンダーコート層を設けない場合には塗膜耐水性が実用に耐えない記録シートが得られた。受容層にグリオキサザールを用いた比較例2の場合には、発色性などの性能は優れているが色差が3.2と特に劣り、白紙黄変が大きく、実用に耐えない。従って、アンダーコート層上に非晶質シリカ、水溶性高分子接着剤及びポリアミド系樹脂である架橋剤を含有するインク受容層を設けた実施例1および2は発色性、塗膜耐水性に優れ、白紙黄変も少なく良好である。
【0041】
【表2】

【0042】
アンダーコート層が有機顔料、及び高分子接着剤を含有しそしてインク受容層の架橋剤がポリアミド系樹脂である場合であっても、吸油量50〜250ml/100gから外れる吸油量500ml/100gの有機顔料を含有するアンダーコート層を設けた比較例3の場合には、白色外観も発色性が不十分な記録シートが得られた。有機顔料の量がアンダーコート総固形分量の10〜80重量部から外れる90重量部である比較例4の場合には、白色外観も発色性も良好であるが塗膜耐水性が不十分な記録シートがえられた。従って、有機顔料の量および吸油量も白色外観、発色性および塗膜耐水性に影響を及ぼすことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にアンダーコート層を有し、該アンダーコート層上に非晶質シリカ、高分子接着剤及び架橋剤を含有するインク受容層を設けた記録シートにおいて、前記アンダーコート層が有機顔料、及び高分子接着剤を含有しそしてインク受容層の架橋剤がポリアミド系樹脂であることを特徴とする記録シート。
【請求項2】
前記アンダーコート層に含有される有機顔料の吸油量が50〜250ml/100gであることを特徴とする請求項1記載の記録シート。
【請求項3】
有機顔料がベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物および/または架橋ポリメタクリル酸メチルである、請求項1または2のいずれか一つに記載の記録シート。
【請求項4】
前記アンダーコート層に含有される有機顔料が該アンダーコート層総固形量の10〜80質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の記録シート。
【請求項5】
前記基材が空洞を有するポリオレフィン系フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の記録シート。

【公開番号】特開2007−175999(P2007−175999A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377024(P2005−377024)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】