説明

記録ヘッド及び情報記録再生装置

【課題】書き込みの信頼性が向上して高密度記録化を図ることができると共に、手間をかけることなく容易に製造できること。
【解決手段】スライダ60と、該スライダの流出端面60a側に配設され、一端側から入射された光束を磁気記録媒体の表面に対向する他端側に向けて集光しながら伝播させる伝播部を有する光伝播素子40と、スライダの流出端面側に配設されると共に、主磁極47及び補助磁極45を有し、両磁極の間に記録磁界を発生させる記録素子41と、を備え、主磁極と、伝播部のうちの少なくとも他端側部分40とは、スライダの流出端面に平行な同一面内に配置され、前記他端側部分における主磁極側の側面54a上には、伝播されてきた光束から近接場光を発生させる金属膜55が形成されている記録ヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を記録する記録ヘッド、及びこれを備えた情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の磁気記録媒体(以下、ディスクという)は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものがディスクとして採用され始めている。そのため、ディスクに情報を記録することが困難になっていた。
【0003】
そこで、上述した不具合を解消するために、光を集光したスポット光、若しくは、光を集光した近接場光を利用して磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間にディスクへの書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式の情報記録再生装置が提供されている。
特に、近接場光を利用する場合には、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域における光学情報を扱うことが可能となる。よって、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。
【0004】
ハイブリッド磁気記録方式による記録ヘッドとしては、各種のものが提供されているが、その1つとして近接場光を利用して加熱を行うヘッドが知られている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の記録ヘッドは、主に補助磁極と、主磁極と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる近接場光発生素子(散乱体)と、照射されたレーザ光を近接場光発生素子に集束させるレンズと、レーザ光を照射するレーザ光源と、を備えており、スライダの流出端面側からこの順に配設されている。
【0005】
このうち近接場光発生素子は、スライダを基準として見ると、ヘッドの走行方向(スライダの厚み方向)に沿って主磁極に並ぶように、該主磁極上に載置された状態で取り付けられている。これにより、主磁極と補助磁極との間に発生する記録磁界の近くに近接場光を発生させている。
【0006】
しかしながら、ヘッドの走行方向に沿って主磁極と近接場光発生素子とが並ぶように配置されているので、図17に示すように、磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とがヘッドの走行方向(矢印方向)にずれてしまい、両スポットSP1、SP2のスポット中心G1、G2を一致させることは困難であった。
【0007】
図18に示すように、上記磁場スポットSP1は記録磁界の磁場カーブC1が現れる範囲であり、磁場カーブC1のピーク位置(磁場が最も強くなる位置)がスポット中心G1となる。そして、この磁場スポットSP1は、主磁極が近接場光発生素子よりもスライダの流出端側に配置されているので、近接場光スポットSP2よりもスライダのリーディングエッジ寄りに現れる。
【0008】
一方、上記近接場光スポットSP2は、発生した近接場光による加熱によってディスクの保磁力を低下させる保磁力カーブC2が現れる範囲であり、保磁力カーブC2のピーク位置(近接場光による熱によって保磁力が最も低下する位置)がスポット中心G2となる。そして、この近接場光スポットSP2は、近接場光発生素子が主磁極よりもスライダの流出端側に配置されているので、磁場スポットSP1よりもスライダのトレイリングエッジ寄りに現れる。
【0009】
理想的には、上記磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とが互いに重なり、両スポットSP1、SP2のスポット中心G1、G2同士が一致していることが好ましい。こうすることで、保磁力が最も低下する位置に、最も強い磁場を印加できるので、確実且つ局所的な書き込みが可能になり、高密度記録化に繋げることができる。
しかしながら、実際には磁場と近接場光とを同時に発生させるような素子が存在しないので、主磁極と近接場光発生素子とを並ばせる構成となってしまい、両スポットSP1、SP2のスポット中心G1、G2を一致させることは難しい。
【0010】
従って、上記のように磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とがヘッドの走行方向にずれてしまうが、この場合には、ディスクの保磁力が最も低下した位置と磁場が最も強くなる位置とがヘッドの走行方向にずれてしまい、書き込み不良等が生じる恐れがあった。
そのため、この場合において確実な書き込みを行うためには、磁場スポットSP1及び近接場光スポットSP2の強度をそれぞれ大きくしてスポットサイズを広げる必要があるが、そうすると、書き込みの対象としている記録トラックの隣に位置する別の記録トラックやデータビット等を加熱してしまい、既に記録されているデータを誤消去したり、消費電力の増加を招いたりする等の問題を引き起こしてしまい易かった。
【0011】
また、スライダを基準として見たときに、近接場光発生素子上に主磁極が載置された状態で取り付けられ、やはりヘッドの走行方向に沿って主磁極と近接場光発生素子とが並ぶように配置されたヘッドも知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、この場合であっても図19及び図20に示すように、上記の場合とは逆に、保磁力カーブC2がリーディングエッジ寄りに現れ、磁場カーブC1がトレイリングエッジ寄りに現れるだけで、依然として磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とがヘッドの走行方向(矢印方向)にずれてしまうものであった。そのため、上記と同様の問題が残されている。
【0012】
そこで、上記特許文献1に記載の構成において、図18に示す保磁力カーブC2を磁場カーブC1側にできるだけシフトさせて、両スポットSP1、SP2のスポット中心G1、G2をヘッドの走行方向に沿って近づける工夫を施したヘッドが知られている(特許文献3参照)。
この特許文献3に記載のヘッドの主磁極には、磁気記録媒体に対向する対向面におけるトレイリングエッジ側に窪み部が形成されている。そして、この窪み部内に近接場光発生素子が配置されている。このように構成することで、磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とを、ヘッドの走行方向にできるだけ重ねるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4100133号公報
【特許文献2】特開2007−207349号公報
【特許文献3】特開2005−4901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、主磁極の対向面に窪み部を形成しているので、該窪み部を形成するための縁部によって主磁極の形状が変化してしまい、主磁極の対向面において2箇所の先鋭化部分がトレイリングエッジ側に現れてしまう。そのため、この2箇所の先鋭化部分に記録磁界が局所的にそれぞれ強く発生し易く、結果的に磁気記録媒体のトラック方向に磁場が広がってしまい易かった。そのため、書き込みの対象としている記録トラックの隣に位置する別の記録トラックやデータビット等に磁場を印加してしまい、やはりデータの誤消去を招き易かった。
【0015】
また、通常ヘッドを作製する場合には、スライダの流出端面上に、該スライダの厚み方向に沿って、フォトリソグラフィ技術を利用して記録素子や近接場光発生素子を順に積層していきながら作製する方法が一般的になされている。そのため、スライダの流出端面に平行な面内であれば、様々な形状にパターニングすることは容易である。
ところが、スライダの対向面は、スライダの流出端面に対して直交する面であるので、この面内で窪み部を形成するには切削加工等の追加工を行う必要があるうえ、技術的に難しいものであった。従って、製造が困難で且つ手間がかかるものであった。
【0016】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、書き込みの信頼性が向上して高密度記録化を図ることができると共に、手間をかけることなく容易に製造することができる記録ヘッド、及びこれを備えた情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る記録ヘッドは、一定方向に回転する磁気記録媒体の表面に、該磁気記録媒体の回転方向下流側に流出端面が向いた状態で対向配置されるスライダと、前記スライダの前記流出端面側に配設され、一端側から入射された光束を前記磁気記録媒体の表面に対向する他端側に向けて集光しながら伝播させる伝播部を有する光伝播素子と、前記スライダの前記流出端面側に配設されると共に、主磁極及び補助磁極を有し、両磁極の間に記録磁界を発生させる記録素子と、を備え、前記主磁極と、前記伝播部のうちの少なくとも他端側部分とは、前記スライダの流出端面に平行な同一面内に配置され、前記伝播部の前記他端側部分における前記主磁極側の側面上には、伝播されてきた前記光束から表面プラズモンの励起により近接場光を発生させる金属膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る記録ヘッドによれば、光伝播素子の伝播部を利用して、入射された光束を集光させながら他端側まで確実に伝播させることができると共に、金属膜を利用してこの伝播された光束から表面プラズモンを励起させて近接場光を発生させることができる。そのため、金属膜で発生された近接場光と、記録素子で発生された記録磁界とを協働させて、磁気記録媒体に各種の情報の書き込みを行える。
特に、主磁極と、伝播部のうちの少なくとも金属膜が形成される他端側部分とが、スライダの流出端面に平行な同一平面内に配置されているので、ヘッドの走行方向に直交する方向、即ち磁気記録媒体のトラック方向に沿って主磁極と伝播部の他端側部分とが並ぶように配置させることができる。従って、主磁極と金属膜とに関しても同様に上記トラック方向に沿って並ぶように配置させることができる。
【0019】
従って、記録磁界の磁場スポットと近接場光の近接場光スポットとをトラック方向に並ばせることができると共に、磁場スポットのスポット中心と近接場光のスポット中心とをヘッドの走行方向に対して一致させることが可能である。
通常、磁気記録媒体は、トラック方向に隣り合っている磁区同士の中心間距離の方がヘッドの走行方向に隣り合っている磁区同士の中心間距離よりも大きい。従って、ヘッドの走行方向に両スポットのスポット中心を一致させることで、トラック方向に隣接する別の記録トラックの磁区に極力影響を与えずに、対象とする記録トラックの磁区に対して加熱のピークと磁場のピークとを一致させた状態で加熱及び磁場の印加を行える。
【0020】
よって、書き込みの信頼性を向上することができ、高密度記録化を図ることができる。しかも、金属膜は、伝播部の他端側部分における主磁極側の側面上に形成されているので、磁場スポットと近接場光スポットとをトラック方向においても極力接近させることができる。この点においても、高密度記録化に繋げることができる。
【0021】
また、スライダの流出端面に平行な同一平面内での作り込みが行えるので、特別な手法を用いることなく、通常のフォトリソグラフ技術等の半導体製造技術を利用しながら製造を行うことが可能である。従って、容易に製造することができ、量産化が可能であるうえ、ヘッド自在の薄型化を図ることができる。
【0022】
(2)また、上記本発明に係る記録ヘッドにおいて、前記記録素子が、前記主磁極を支持する絶縁層を有し、該絶縁層には、前記伝播部の前記他端側部分を入り込ませて該他端側部分を前記主磁極と前記同一面内に配置させる段差部が形成され、前記金属膜が、前記主磁極と前記伝播部の他端側部分との間に位置する前記段差部内に形成されていても良い。
【0023】
この場合には、伝播部の他端側部分が入り込んでいる段差部を利用して金属膜を形成できるので、伝播部の他端側部分における主磁極側の側面上に、規定した長さの金属膜を容易に形成することが可能である。
従って、段差部のサイズを調整することで、必要最小限の長さの金属膜を形成することができる。そのため、磁気記録媒体の表面にできるだけ近いまで伝搬部を利用して効率良く光束を伝播させた後、金属膜に入射させて近接場光を発生させることができる。従って、光束の伝播損失を極力抑制でき、近接場光の発生効率を高めることができ、より光強度の強い近接場光で書き込みを行える。
【0024】
(3)また、上記本発明に係る記録ヘッドにおいて、前記伝播部が、前記一端側から前記磁気記録媒体の表面に向けて、伝播される前記光束の光軸に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形された第1伝播部と、該第1伝播部に連結されると共に、該連結部分から前記他端側まで前記断面積が一定となるように同一形状で延在した第2伝播部と、を有し、前記金属膜が、前記第2伝播部の側面上に形成されていても良い。
【0025】
この場合には、伝播部の他端側部分が同一形状で延在した第2伝播部とされており、この第2伝播部の主磁極側の側面上に金属膜が形成されているので、複雑に形状変化している側面上に金属膜を形成する場合とは異なり、容易且つ強固に金属膜を形成することが可能であり、金属膜の膜剥がれ等が生じ難い。従って、長期に亘って安定して近接場光を発生させることができ、書き込みの信頼性を向上することができる。
【0026】
(4)また、上記本発明に係る記録ヘッドにおいて、前記伝播部が、前記光軸に直交する断面が三角形状となるように形成されていても良い。
【0027】
この場合には、光束をより効率良く集光させながら伝播させ易く、光伝播効率を高めることができる。
【0028】
(5)また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明に係る記録ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記記録ヘッドを支持するサスペンションと、前記伝播部に前記光束を入射させる光源と、前記磁気記録媒体の外側に配置されたピボット軸と、該ピボット軸の回りを回転可能に形成されると共に、前記サスペンションを支持するアーム部を有するキャリッジと、を備えていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る情報記録再生装置によれば、上記記録ヘッドを備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る記録ヘッドによれば、手間をかけることなく容易に製造することが可能であるうえ、ヘッドの走行方向に磁場スポットのスポット中心と近接場光スポットのスポット中心とを一致させることができるので、書き込みの信頼性が向上して高密度記録化を図ることができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る情報記録再生装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すヘッドジンバルアセンブリの斜視図である。
【図3】図2に示すジンバルの平面図である。
【図4】図3に示すA−A線に沿った断面図である。
【図5】図4に示す記録ヘッド周辺を拡大した断面図である。
【図6】図5に示す記録ヘッドの流出端面側をさらに拡大した断面図である。
【図7】図6に示すB−B線に沿った断面図である。
【図8】主磁極周辺をディスク側から見た斜視図である。
【図9】図1に示すターミナル基板の平面図である。
【図10】ディスクへの書き込みを行う際の磁場スポットと近接場光スポットとの関係を示した図である。
【図11】ディスクへの書き込みを行う際の磁場カーブと保磁力カーブとの関係を示した図である。
【図12】記録ヘッドの変形例を示す図であって、図8に相当する斜視図である。
【図13】記録ヘッドの別の変形例を示す図であって、スポットサイズ変換器を取り外した状態においての図8に相当する斜視図である。
【図14】図13において、スポットサイズ変換器を取り付けた状態の斜視図である。
【図15】スポットサイズ変換器の変形例を示す斜視図である。
【図16】図15に示すスポットサイズ変換器を有する記録ヘッドの変形例を示す図であって、図8に相当する斜視図である。
【図17】従来のヘッドにおいて、ディスクへの書き込みを行う際の磁場スポットと近接場光スポットとの関係を示した図である。
【図18】従来のヘッドにおいて、ディスクへの書き込みを行う際の磁場カーブと保磁力カーブとの関係を示した図である。
【図19】従来の別のヘッドにおいて、ディスクへの書き込みを行う際の磁場スポットと近接場光スポットとの関係を示した図である。
【図20】従来の別のヘッドにおいて、ディスクへの書き込みを行う際の磁場カーブと保磁力カーブとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る情報記録再生装置の実施形態を、図1から図16を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、垂直記録層を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、垂直記録方式で書き込みを行う装置である。
【0033】
(情報記録再生装置)
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、キャリッジ11と、キャリッジ11の基端側から光電気複合配線33を介して光束L(図6参照)を供給するレーザ光源20と、キャリッジ11の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)12と、ヘッドジンバルアセンブリ12をディスク面D1(ディスクDの表面)に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを所定の方向に向けて回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をヘッドジンバルアセンブリ12の記録ヘッド2に対して供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0034】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料からなる上部開口部を有する箱型形状のものであり、上面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁において底部9aに対して鉛直方向に立設する周壁(不図示)とで構成されている。そして、周壁に囲まれた内側には、上述した各構成品を収容する凹部が形成される。
なお、図1においては、説明を分かりやすくするため、ハウジング9の周囲を取り囲む周壁を省略している。
【0035】
ハウジング9には、該ハウジング9の上部開口部を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。底部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0036】
ディスクDの外側で、底部9aの一つの隅角部には、上述したアクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、ピボット軸10を中心に水平面(XY方向)内で回動可能なキャリッジ11が取り付けられている。
このキャリッジ11は、基端部から先端部に向けて(ディスクD方向に向けて)延設されたアーム部14と、基端部を介してアーム部14を片持ち状に支持する基部15とが、削り出し加工等により一体形成されたものである。
基部15は、略直方体形状に形成されたものであり、ピボット軸10回りに回動可能に支持されている。つまり、基部15はピボット軸10を介してアクチュエータ6に連結されており、このピボット軸10がキャリッジ11の回転中心となっている。
【0037】
アーム部14は、基部15におけるアクチュエータ6が取り付けられた側面15aと反対側の側面(隅角部の反対側の側面)15bにおいて、基部15の上面の面方向(XY方向)と平行に延出する平板状のものであり、基部15の高さ方向(Z方向)に沿って3枚延出している。
具体的には、アーム部14は、基端部から先端部に向かうにしたがって先細るテーパ形状に形成されており、各アーム部14間に、ディスクDが挟み込まれるように配置されている。つまり、アーム部14とディスクDとが、交互に配置可能に構成されており、アクチュエータ6の駆動によってアーム部14がディスク面D1に平行な方向(XY方向)に移動可能になっている。
なお、キャリッジ11及びヘッドジンバルアセンブリ12は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。
【0038】
ヘッドジンバルアセンブリ12は、後述する記録ヘッド2にレーザ光源20からの光束Lを導いて近接場光S(図7参照)を発生させ、該近接場光Sを利用してディスクDに各種情報を記録再生させるものである。
図2から図5に示すように、本実施形態のヘッドジンバルアセンブリ12は、上記記録ヘッド2をディスクDから浮上させる機能を有しており、該記録ヘッド2と、金属性材料により薄い板状に形成され、ディスク面D1に平行なXY方向に移動可能なサスペンション3と、記録ヘッド2をディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態、即ち2軸を中心として捻れることができるようにサスペンション3の下面に固定させるジンバル手段16と、を備えている。
【0039】
記録ヘッド2は、ディスクDとサスペンション3との間に配置された状態で、サスペンション3の下面に後述するジンバル17を挟んで支持されている。
図5及び図6に示すように、この記録ヘッド2は、ディスク面D1から所定距離だけ浮上した状態でディスクDに対向配置され、ディスク面D1に対向する浮上面2aを有するスライダ60と、スライダ60の流出端面(先端面)60a側に配設された、スポットサイズ変換器(光伝播素子)40、記録素子41、再生素子42と、を備えている。
【0040】
なお、上記スライダ60は、該スライダ60からディスクDを見たときに、ディスクDの回転方向下流側に流出端面60aが位置するように、ディスクDに対向配置されている。また、この流出端面60aに対して向かい合う面は、ディスクDの回転方向上流側に位置する流入端面として機能する。よって、ディスクDの回転時、回転するディスクDによって発生した空気は、流入端面側から浮上面2aに沿って流れた後、流出端面60a側から抜けるようになっている。
なお、記録ヘッド2は、スライダ60の流出端面60a側が最もディスク面D1に近接した状態でディスクD上を浮上する。従って、スライダ60の流出端面60a側に上記各構成品が配置されていることで、これらを可能な限りディスク面D1に近づけることができ、ディスクDの保磁力を効率良く低下させてディスクDへの書き込みが容易とされている。
【0041】
ところで、本実施形態においては、スライダ60の流出端面60a側から順に、記録素子41、スポットサイズ変換器40、再生素子42が並ぶように配設されている。しかも、記録素子41の後述する主磁極47と、スポットサイズ変換器40の後述する伝播部50の第2伝播部54とは、スライダ60の流出端面60aに平行な同一面内に配置されている。この点は、後に詳細に説明する。
【0042】
スライダ60は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。また、スライダ60は、浮上面2aをディスクD側に向けた状態で、ジンバル17(図3参照)を介してサスペンション3(図3参照)の先端にぶら下がるように支持されている。
【0043】
再生素子42は、ディスクDから漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜である。この再生素子42には、後述する電気配線31を介して制御部5(図1参照)からバイアス電流が供給されている。これにより制御部5は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことが可能とされている。
【0044】
記録素子41は、スライダ60の流出端面60a側に位置する補助磁極45と、磁気回路46を介して補助磁極45に接続され、ディスクDに対して垂直な記録磁界を補助磁極45との間で発生させる主磁極47と、磁気回路46を中心として該磁気回路46の周囲を渦巻状に巻回されたコイル48と、を備えている。
【0045】
両磁極45、47及び磁気回路46は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル48は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、磁気回路46との間、両磁極45、47との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁層49によってモールドされている。つまり、両磁極45、47、磁気回路46及びコイル48は、絶縁層49によって支持された状態となっている。また、コイル48は情報に応じて変調された電流が制御部5から供給されるようになっている。
【0046】
ところで、上記コイル48は、図6から図8に示すように、ディスクDのトラック方向(X方向)に平行なスライダ60の横幅方向においてスライダ60の一方の側面側に寄った位置に形成されている。これに対して主磁極47及び補助磁極45は、コイル48よりもスライダ60の横幅方向中心線Cに近い位置にそれぞれ形成されると共に、絶縁層49を間にしてヘッドの走行方向(Y方向)に間隔を開けて向かい合うように形成されている。この際、主磁極47及び補助磁極45は、ディスクDに対向する端面がスライダ60の浮上面2aと面一となるように設計されている。
なお、図7においては、補助磁極45の図示を省略している。
【0047】
スポットサイズ変換器40は、一端側から入射された光束Lをディスク面D1に対向する他端側に向けて集光しながら伝播させる伝播部50と、該伝播部50を内部に閉じ込める図示しないクラッドと、で構成される略板状の素子であって、上記したように記録素子41よりもトレイリングエッジ側に位置するように記録素子41に隣接して固定されている。
【0048】
伝播部50は、スライダ60の流出端面60aに沿って延在しており、一端側がスライダ60の上方に向き、他端側がディスクDに向いた状態で、上記横幅方向中心線C上に配置されている。また、この伝播部50は、第1伝播部53及び第2伝播部54で一体的に構成されている。
【0049】
第1伝播部53は、一端側からディスクDに向かうにつれて、その長手方向(Z方向)に直交(伝播される光束Lの光軸に直交する)断面積、即ちスライダ60の流出端面60aに直交する面内における断面積が漸次減少するように絞り成形された部分であり、これにより光束Lを集光しながら伝播することが可能とされている。
第2伝播部54は、第1伝播部53に連結されると共に、この連結部分P(図7参照)から他端側まで上記断面積が一定となるように同一形状で延在している部分であり、伝播部50全体の他端側部分として機能する。
【0050】
なお、第1伝播部53及び第2伝播部54は、断面四角形状となるように形成されている。また、第2伝播部54の端面は、スライダ60の浮上面2aに対して面一となるように設計されている。
また、上記第1伝播部53及び第2伝播部54は、共にクラッドの屈折率よりも高い屈折率の材料からなり、クラッドとの屈折率の違いから光束Lを全反射条件で導くコアとされている。
図示しないクラッドは、コアである第1伝播部53及び第2伝播部54に密着して第1伝播部53を内部に閉じ込めている。この際、クラッドは、第2伝播部54の端面を覆うように形成されていても構わないし、露出させるように形成されていても構わない。
【0051】
なお、クラッド及びコアとして使用される材料の組み合わせの一例を記載すると、例えば、石英(SiO)でコアを形成し、フッ素をドープした石英でクラッドを形成する組み合わせが考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コアの屈折率が1.47となり、クラッドの屈折率が1.47未満となるので好ましい組み合わせである。また、ゲルマニウムをドープした石英でコアを形成し、石英(SiO)でクラッドを形成する組み合わせも考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コアの屈折率が1.47より大きくなり、クラッドの屈折率が1.47となるのでやはり好ましい組み合わせである。
【0052】
特に、コアとクラッドとの屈折率差が大きいほど、コア内に光束Lを閉じ込める力が大きくなるので、コアに酸化タンタル(Ta:波長が550nmのときに屈折率が2.16)を用い、クラッドに石英等を用いて、両者の屈折率差を大きくすることがより好ましい。また、赤外領域の光束Lを利用する場合には、赤外光に対して透明な材料であるシリコン(Si:屈折率が約4)でコアを形成することも有効である。
【0053】
ところで、上述した伝播部50のうち少なくとも第2伝播部54に関しては、図8に示すように、記録素子41の絶縁層49に主磁極47の厚みTだけ部分的に埋没されている。これにより、主磁極47と第2伝播部54とは、スライダ60の流出端面60aに平行な同一平面内で微小間隔を開けて並ぶように配置されている。
そして、第2伝播部54における主磁極47側の側面54a上には、第1伝播部53及び第2伝播部54によって伝播されてきた光束Lから表面プラズモンの励起により近接場光Sを発生させる金属膜(例えば金膜)55が上記微小隙間を埋めるように形成されている。
【0054】
なお、上記金属膜55は、クラッドを介することなく第2伝播部54の上記側面54a上に形成されている。そのため、金属膜55には第2伝播部54によって伝播されてきた光束Lが損失なく入射され、表面プラズモンの励起によって該金属膜55の端面側に近接場光Sが局所的に発生する。
【0055】
また、図2から図5に示すように、スライダ60の下面は、上述したようにディスク面D1に対向する浮上面2aとなっている。この浮上面2aは、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる面であり、ABS(AirBearing Surface)と呼ばれている。
具体的には、スライダ60をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ60をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ60を最適な状態で浮上させるように設計されている。
スライダ60は、この浮上面2aによってディスク面D1から浮上する力を受けていると共に、サスペンション3によってディスクD側に押さえ付けられる力を受けている。そしてスライダ60は、この両者の力のバランスによって、ディスク面D1から浮上している。
【0056】
図2及び図3に示すように、サスペンション3は、上面視略四角状に形成されたベースプレート22と、ベースプレート22の先端側にヒンジ板23を介して連結された平面視略三角状のロードビーム24と、で構成されている。
【0057】
ベースプレート22は、ステンレス等の厚みの薄い金属材料によって構成されており、基端側には厚さ方向に貫通する開口22aが形成されている。そして、この開口22aを介してベースプレート22がアーム部14の先端に固定されている。
ベースプレート22の下面には、ステンレス等の金属材料により構成されたシート状の上記ヒンジ板23が配置されている。このヒンジ板23は、ベースプレート22の下面の全面に亘って形成された平板状の板材であり、その先端部分はベースプレート22の先端からベースプレート22の長手方向に沿って延出する延出部23aとして形成されている。この延出部23aは、ヒンジ板23の幅方向両端部から2本延出しており、その先端部分にロードビーム24が連結されている。
【0058】
ロードビーム24は、ベースプレート22と同様にステンレス等の厚みの薄い金属材料によって形成されており、その基端がベースプレート22の先端との間に間隙を有した状態でヒンジ板23に連結されている。
これにより、サスペンション3は、ベースプレート22とロードビーム24との間を中心に屈曲して、ディスク面D1に垂直なZ方向に向けて撓み易くなっている。
【0059】
また、サスペンション3上には、フレクシャ25が設けられている。
このフレクシャ25は、ステンレス等の金属材料により形成されたシート状のものであり、シート状に形成されることで厚さ方向に撓み変形可能に構成されている。また、このフレクシャ25は、ロードビーム24の先端側に固定され、外形が上面視略五角形状に形成されたジンバル17と、ジンバル17より幅狭に形成され、ジンバル17の基端からサスペンション3上に沿って延在する支持体18とで構成されている。
【0060】
ジンバル17は、中間付近から先端にかけてディスク面D1に向けて厚さ方向に僅かながら反るように形成されている。そして、この反りが加わった先端側がロードビーム24に接触しないように、基端側から略中間付近にかけてロードビーム24に固定されている。また、この浮いた状態のジンバル17の先端側には、周囲がコ形状に刳り貫かれた切欠部26が形成されており、この切欠部26に囲まれた部分には連結部17aによって片持ち状に支持されたパッド部17bが形成されている。
つまり、このパッド部17bは、連結部17aによってジンバル17の先端側から基端側に向けて張出し形成されており、その周囲に切欠部26を備えている。
【0061】
これにより、パッド部17bはジンバル17の厚さ方向に撓みやすくなっており、このパッド部17bのみがサスペンション3の下面と平行になるように角度調整されている。そして、このパッド部17b上に上述した記録ヘッド2が載置固定されている。つまり、記録ヘッド2は、パッド部17bを介してロードビーム24にぶら下がった状態となっている。
【0062】
また、図3及び図4に示すように、ロードビーム24の先端には、パッド部17b及び記録ヘッド2の略中心に向かって突出する突起部19が形成されている。この突起部19の先端は、丸みを帯びた状態となっている。そして突起部19は、記録ヘッド2がディスクDから受ける風圧によりロードビーム24側に浮上したときに、パッド部17bの表面(上面)に点接触するようになっている。
つまり、突起部19は、ジンバル17のパッド部17bを介して、記録ヘッド2を支持すると共に、ディスク面D1に向けて(Z方向に向けて)記録ヘッド2に荷重を付与するようになっている。そして、突起部19とパッド部17bとの接触点(支持点)が、突起部19による記録ヘッド2の荷重点になっている。
なお、これら突起部19とパッド部17bを有するジンバル17とが、ジンバル手段16を構成している。
【0063】
図2に示す支持体18は、ジンバル17に一体形成されたシート状のものであり、サスペンション3上をアーム部14に向かって延設されている。つまり、支持体18は、サスペンション3が変形した際にサスペンション3の変形に追従するように構成されている。また、この支持体18は、アーム部14上から側面に回りこんで、キャリッジ11の基部15に至るまで引き回されている。
【0064】
図1及び図9に示すように、キャリッジ11の基部15における側面15cには、ターミナル基板30が配置されている。このターミナル基板30は、ハウジング9に設けられた制御部5と記録ヘッド2とを電気的に接続する際の中継点となるものであり、その表面には、各種制御回路(不図示)が形成されている。
制御部5とターミナル基板30とは、可撓性を有するフラットケーブル4により電気的に接続されている一方、ターミナル基板30と記録ヘッド2とは、電気配線31により接続されている。この電気配線31は、各キャリッジ11に設けられた記録ヘッド2に対応して3組設けられており、フラットケーブル4を介して制御部5から出力された信号が、電気配線31を介して記録ヘッド2に出力されるようになっている。
【0065】
ターミナル基板30上には、記録ヘッド2のスポットサイズ変換器40に向けて光束Lを供給する上記レーザ光源20が配置されている。レーザ光源20は、フラットケーブル4を介して制御部5から出力された信号を受信し、この信号に基づいて光束Lを出射するものであり、各アーム部14に設けられた記録ヘッド2に対応して基部15の高さ方向(Z方向)に沿って3個配列されている。各レーザ光源20の出射側には、出射された光束Lを記録ヘッド2まで導く光導波路32が接続されている。
【0066】
図2及び図3に示すように、光導波路32と電気配線31とは、レーザ光源20と記録ヘッド2との間において、その基端側から先端に至るまで一体的に形成された光電気複合配線33として構成されている。
この光電気複合配線33は、ターミナル基板30の表面からアーム部14の側面を通って、アーム部14上に引き回されている。具体的には、光電気複合配線33は、アーム部14及びサスペンション3上において、フレクシャ25の支持体18上に配置されており、該支持体18を間に挟んだ状態でサスペンション3の先端まで引き回されている。
【0067】
そして、光電気複合配線33は、サスペンション3の先端、即ちジンバル17の中間位置において電気配線31と光導波路32とに分岐している。
具体的には、光導波路32は、光電気複合配線33の先端側における分岐地点からジンバル17の長手方向に沿って延在しており、ジンバル17の切欠部26を跨いで記録ヘッド2の流入端側に直接接続されている。光導波路32は、光電気複合配線33の分岐地点においてジンバル17の下面から離間されており、分岐地点から記録ヘッド2の流入端側に向かうにつれ、パッド部17bとジンバル17との間を架け渡すように僅かながら浮いた状態で延在している。
つまり、ジンバル17の下面において、光導波路32は略直線的(曲率半径が略無限大)に延在した状態で、記録ヘッド2の幅方向(X方向)中央部から記録ヘッド2の流入端側に引き回されている。
【0068】
一方、上記分岐地点において、電気配線31はジンバル17の外周部分に向けて屈曲されており、ジンバル17の外周部分、つまり切欠部26の外側から引き回されている。そして、切欠部26の外側から引き回された電気配線31は、連結部17a上を通って記録ヘッド2の流出端面60a側に接続されている。即ち、電気配線31は、スライダ60の流出端面60a側に設けられた再生素子42と記録素子41とのそれぞれに対して、記録ヘッド2の外部から直接接続されている。
【0069】
なお、光導波路32の構成材料は、上記したスポットサイズ変換器40のコア及びクラッドと同様の材料を用いることも可能であるが、本実施形態では以下に示すような樹脂材料が好適に用いられている。
例えばPMMA(メタクリル酸メチル樹脂)により、厚さが3〜10μmでコア32aを形成し、フッ素含有重合体により、厚さが数十μmでクラッド32bを形成する組み合わせが考えられる。また、コア32a及びクラッド32bをともにエポキシ樹脂(例えば、コア屈折率1.522〜1.523、クラッド屈折率1.518〜1.519)で構成したり、フッ素化ポリイミドで構成したりすることも可能である。この場合、コア32aとクラッド32bとを構成する樹脂材料の配合等を調整して、両者の屈折率差を大きくすることが好ましい。例えば、フッ素化ポリイミドの場合、フッ素含有量を調整したり、放射光等のエネルギー照射によって、屈折率を制御したりすることができる。このように、光導波路32の構成材料に樹脂材料を用いることで、光電気複合配線33を半導体プロセスにより製造することが可能である。
【0070】
ところで、図6に示すように、光導波路32の先端面は斜めにカットされたミラー面35とされており、レーザ光源20によって導入された光束Lを、該光束Lの向きが略90度変わるように反射させている。これにより、ミラー面35で反射された光束Lが、記録ヘッド2のスポットサイズ変換器40を構成する伝播部50内に導入されるようになっている。なお、ミラー面35は、少なくともコア32aを含む領域にアルミ等からなる反射板を蒸着法等により形成するような構成としても構わない。
【0071】
(情報記録再生方法)
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する手順について説明する。
【0072】
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを所定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、ピボット軸10を回転中心としてキャリッジ11を回動させ、キャリッジ11を介してヘッドジンバルアセンブリ12をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に記録ヘッド2を位置させることができる。
【0073】
この際、記録ヘッド2は、サスペンション3によって支持されていると共に所定の力でディスクD側に押さえ付けられている。また、これと同時に記録ヘッド2は、浮上面2aを利用して、回転するディスクDによって生じる風圧の影響を受けて浮上する力を受けている。この両者の力のバランスによって、記録ヘッド2はディスクD上から離間した位置に浮上している。
しかも記録ヘッド2は、風圧を受けてサスペンション3側に押されるので、記録ヘッド2を固定するジンバル17のパッド部17bとサスペンション3に形成された突起部19とが、点接触した状態となる。そして、この浮上する力は、突起部19を介してサスペンション3に伝わり、該サスペンション3をディスク面D1に垂直なZ方向に向けて撓ませるように作用する。これにより、上記したように記録ヘッド2は浮上する。
【0074】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部5はレーザ光源20を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル48に供給して記録素子41を作動させる。
レーザ光源20が作動すると、光導波路32に光束Lを入射させる。すると、この光束Lは、光導波路32のコア32a内を先端側に向かって進んだ後、図6に示すように、ミラー面35で反射されてスポットサイズ変換器40の伝播部50内に導入される。伝播部50内に導入された光束Lは、ディスクD側に位置する他端側に向かって図示しないクラッドとの界面との間で反射を繰り返しながら、第1伝播部53及び第2伝播部54を順に伝播する。
【0075】
この際、第1伝播部53は一端側から他端側に向かうにしたがって絞り成形されているので、光束Lを徐々に集光しながら伝播させることができる。そのため光束Lは、徐々に絞り込まれて十分にスポットサイズが小さくなった状態で第2伝播部54内を伝播した後、金属膜55に入射する。これにより、金属膜55を利用してこの伝播された光束Lから表面プラズモンを励起させて近接場光Sを発生させることができ、外部に発することができる。すると、ディスクDはこの近接場光Sによって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0076】
一方、制御部5によってコイル48に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路46内に磁界を発生させるので、主磁極47と補助磁極45との間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。
【0077】
その結果、金属膜55で発生された近接場光Sと、記録素子41で発生された記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0078】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、再生素子42がディスクDから漏れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、再生素子42の電圧が変化する。これにより制御部5は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部5は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
上述したように、記録ヘッド2を利用してディスクDに対して各種の情報を記録再生することができる。
【0079】
特に、本実施形態の記録ヘッド2によれば、主磁極47と、金属膜55が形成されている第2伝播部54とが、スライダ60の流出端面60aに平行な同一面内に配置されているので、図8に示すように、ヘッドの走行方向(Y方向)に直交する方向、即ち、ディスクDのトラック方向(X方向)に沿って主磁極47と第2伝播部54とが並ぶように配置させることができる。従って、主磁極47と金属膜55とに関しても同様にディスクDのトラック方向(X方向)に沿って並ぶように配置させることができる。
【0080】
従って、図10に示すように、記録磁界の磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とをトラック方向(X方向)に並ばせることができると共に、磁場スポットSP1のスポット中心G1と近接場光Sのスポット中心G2とをヘッドの走行方向(Y方向)に対して一致させることができる。
従って、トラック方向(X方向)に隣接する別の記録トラックの磁区に極力影響を与えずに、図11に示すように、対象とする記録トラックの磁区に対して加熱のピーク(保磁力カーブC1のピーク)と磁場のピーク(磁場カーブC2のピーク)とをヘッドの走行方向(Y方向)一致させた状態で、加熱及び磁場の印加を局所的に行える。
【0081】
よって、書き込みの信頼性を向上することができ、高密度記録化を図ることができる。しかも、金属膜55は、第2伝播部54における主磁極47側の側面54a上に形成されているので、図10に示すように、磁場スポットSP1と近接場光スポットSP2とをトラック方向(X方向)においても極力接近させることができる。この点においても、高密度記録化に繋げることができる。
【0082】
更に、第2伝播部54は、図7及び図8に示すように、第1伝播部53との連結部分Pから端面に向かって同一形状で延在しているので、複雑に形状変化している側面54a上に金属膜55を形成する場合とは異なり、容易且つ強固に金属膜55を形成することが可能であり、金属膜55の膜剥がれ等が生じ難い。
従って、長期に亘って安定して近接場光Sを発生させることができ、書き込みの信頼性を向上することができる。
【0083】
また、スライダ60の流出端面60aに平行な同一平面内での作り込みが行えるので、上記記録ヘッド2を製造する場合には、特別な手法を用いることなく、通常のフォトリソグラフィ技術及びエッチング加工技術等の半導体技術を利用しながら従来通りの工程で製造を行うことができる。従って、容易に製造することができ、量産化が可能であるうえ、記録ヘッド2自体の薄型化を図ることができる。
【0084】
そして、本実施形態の情報記録再生装置1は、上述した記録ヘッド2を備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、スライダ60を浮上させた空気浮上タイプの情報記録再生装置1を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、ディスク面D1に対向配置されていればディスクDとスライダ60とが接触していても構わない。つまり、本発明の記録ヘッド2は、コンタクトスライダタイプのヘッドであっても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、アーム部14の片面側のみにヘッドジンバルアセンブリ12が設けられている構成について説明したが、各ディスクD間に差し入れられるアーム部14の両面に、各ディスクDに対向するようにそれぞれヘッドジンバルアセンブリ12を設けるような構成も可能である。
この場合には、アーム部14の両面側に設けられたヘッドジンバルアセンブリ12の各記録ヘッド2により、各記録ヘッド2に対向するディスク面D1の情報の記録再生を行うことができる。つまり、1つのアーム部14により2枚のディスクDの情報を記録再生することができるため、情報記録再生装置1の記録容量の増加及び装置の小型化を図ることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、スポットサイズ変換器40に光束Lを導入するレーザ光源20をキャリッジ11の基部15に取り付けられたターミナル基板30に配設させた構成としたが、この位置に限定されるものではない。例えば、スライダ60の上面に配設し、記録ヘッド2に一体的に搭載させても構わない。こうすることで、光導波路32をキャリッジ11から引き回す必要がないうえ、浮上時におけるスライダ60の動きが光導波路32によって阻害され難いので、より好ましい。
【0089】
また、上記実施形態において、図12に示すように、第2伝播部54における主磁極47側の側面54a上に形成される金属膜55を、主磁極47の厚みTに捕らわれずに第2伝播部54の厚みT1に相当する程度形成しても構わない。
但し、この場合には、ディスクDに向けて先細り形状となるように金属膜55を形成することが好ましい。こうすることで、ディスクDに対向する金属膜55の端面を極力小さくでき、近接場光Sをより局所的に強い光強度で発生させることが可能である。
しかも、図12に示すように、外形に角部が現れないように滑らかに湾曲しながら先細るように金属膜55を形成することが好ましい。こうすることで、励起された表面プラズモンを角部に阻害されることなくスムーズに端面まで伝播させることができ、より効率良く近接場光Sを発生させることができる。
【0090】
また、上記実施形態において、図13に示すように絶縁層49に段差部49aを形成し、図14に示すように、この段差部49a内に第2伝播部54が入り込むように該第2伝播部54を主磁極47と同一平面内に配置させ、且つ主磁極47と第2伝播部54と間に位置する段差部49a内に金属膜55を形成しても構わない。
【0091】
この場合には、第2伝播部54が入り込んでいる段差部49aを利用して金属膜55を形成できるので、第2伝播部54における主磁極47側の側面54a上に、規定した長さMの金属膜55を容易に形成することが可能である。従って、段差部49aのサイズを調整するだけで必要最小限の長さの金属膜55を形成することができる。そのため、ディスク面D1にできるだけ近い位置まで伝播部50を利用して効率良く光束Lを伝播させた後に、金属膜55に入射させて近接場光Sを発生させることができる。よって、光束Lの伝播損失を極力抑制でき、近接場光Sの発生効率を高めることができ、より光強度の高い近接場光Sで書き込みを行える。
【0092】
なお、この場合において、金属膜55を形成する場合の方法としては、例えば段差部49aに対して犠牲層を斜め成膜した後、金等を全体に成膜し、その後犠牲層をリフトオフすることで、図13に示すように、段差部49aの側面を利用して金属膜55を容易に形成することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態において、図15に示すように、スライダ60の流出端面60aに直交する断面が三角形状となるように伝播部50を形成しても構わない。
この場合には、光束Lをより効率良く集光させながら伝播させ易く、光伝播効率を高めることができる。また、図16に示すように、第2伝播部54の主磁極47側の側面54aが主磁極47に対して斜面となるので、より金属膜55を形成し易くなる。更に、第1伝播部53と第2伝播部54との連結部分P(図15参照)における結合効率を高め易くなる。
【符号の説明】
【0094】
L…光束
D…ディスク(磁気記録媒体)
D1…ディスク面(磁気記録媒体の表面)
1…情報記録再生装置
2…記録ヘッド
3…サスペンション
20…レーザ光源(光源)
10…ピボット軸
11…キャリッジ
14…アーム部
40…スポットサイズ変換器(光伝播素子)
41…記録素子
45…補助磁極
47…主磁極
49…絶縁層
49a…絶縁層の段差部
50…伝播部
53…第1伝播部
54…第2伝播部(伝播部の他端側部分)
55…金属膜
60…スライダ
60a…スライダの流出端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に回転する磁気記録媒体の表面に、該磁気記録媒体の回転方向下流側に流出端面が向いた状態で対向配置されるスライダと、
前記スライダの前記流出端面側に配設され、一端側から入射された光束を前記磁気記録媒体の表面に対向する他端側に向けて集光しながら伝播させる伝播部を有する光伝播素子と、
前記スライダの前記流出端面側に配設されると共に、主磁極及び補助磁極を有し、両磁極の間に記録磁界を発生させる記録素子と、を備え、
前記主磁極と、前記伝播部のうちの少なくとも他端側部分とは、前記スライダの流出端面に平行な同一面内に配置され、
前記伝播部の前記他端側部分における前記主磁極側の側面上には、伝播されてきた前記光束から表面プラズモンの励起により近接場光を発生させる金属膜が形成されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記記録素子は、前記主磁極を支持する絶縁層を有し、
該絶縁層には、前記伝播部の前記他端側部分を入り込ませて該他端側部分を前記主磁極と前記同一面内に配置させる段差部が形成され、
前記金属膜は、前記主磁極と前記伝播部の他端側部分との間に位置する前記段差部内に形成されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記録ヘッドにおいて、
前記伝播部は、
前記一端側から前記磁気記録媒体の表面に向けて、伝播される前記光束の光軸に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形された第1伝播部と、
該第1伝播部に連結されると共に、該連結部分から前記他端側まで前記断面積が一定となるように同一形状で延在した第2伝播部と、を有し、
前記金属膜は、前記第2伝播部の側面上に形成されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の記録ヘッドにおいて、
前記伝播部は、前記光軸に直交する断面が三角形状となるように形成されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記記録ヘッドを支持するサスペンションと、
前記伝播部に前記光束を入射させる光源と、
前記磁気記録媒体の外側に配置されたピボット軸と、
該ピボット軸の回りを回転可能に形成されると共に、前記サスペンションを支持するアーム部を有するキャリッジと、を備えていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−64261(P2012−64261A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205889(P2010−205889)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】