説明

記録媒体にカラー画像を出力する方法

【課題】記録媒体にカラー画像を出力する方法であって、不要な凹凸がなく、しかも、画質の良好なカラー画像が得られる方法を提供する。
【解決手段】記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出してカラー画像の各ドットの色を調整する工程105の前に、各ドットを形成するインクの総液滴数TDNが一定になるように記録媒体に下地用のインクを吐出する工程104を設ける。それにより、表面が平坦で滑らかなカラー画像であって、さらに品質の良いカラー画像が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にカラー画像を出力する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光硬化型あるいは熱硬化型といった樹脂性または反応性のインクを用いるインクジェット記録装置が知られている。光硬化型のインクを用いる場合、形成される画像が耐侯性に優れるなどのメリットがあるが、記録媒体に吸収されにくいため、記録媒体の表面に凹凸が生じる。
【0003】
特許文献1に、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現するとともに、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することが記載されている。引用文献1に記載されたインクジェット記録装置は、記録媒体に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッドと、透明インクを吐出する透明インク用ヘッドと、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶するROMと、吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数からカラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように透明インク用ヘッドを制御する制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、透明インクを付加することによりラミネートしたのと同様の仕上がりを実現でき、記録媒体の表面のカラーインクによる凹凸は透明インクにより吸収される。しかしながら、各ドットを形成するカラーインクの凹凸は存在し、カラーインクの凹凸が隣接するドット間の混色の要因になったり、透明インクによるラミネートの厚みの差が意図しない光の反射や屈折の要因となり、必ずしも意図する色合いや見え方が得られない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、記録媒体にカラー画像を出力する方法である。この方法は、以下の工程を有する。
・記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出してカラー画像の各ドットの色を調整すること(カラーインクを吐出する工程、色調整する工程)。
・上記の色を調整すること(色調整する工程)の前に、各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように記録媒体に下地用のインクを吐出すること(下地用のインクを吐出する工程)。
【0007】
この方法において、下地用のインクは、特に限定されないが、形成するカラー画像に影響を及ぼしにくいインク、例えば、透明インクや、白色などの無彩色のインク、淡い色のインクであることが好ましい。原色あるいは原色に近い色のインクを下地用のインクとして採用する場合は、色調整する工程において、下地用のインクによる色を考慮して色調整用のカラーインクを選択する必要がある。
【0008】
この方法によれば、記録媒体の上に厚みが所望のパターンとなるように形成されたカラー画像を得ることができる。典型的なパターンは、総液滴数を一定にすることであり、凹凸がない、または凹凸が抑制された平坦な面を持ったカラー画像が表面に出力(形成)された記録媒体を形成(製造、印刷)することができる。総液滴数をカラー画像の形状に合わせて変えたり、起伏を持たせるように変えることも可能であり、立体感のあるカラー画像を出力することも可能である。
【0009】
さらに、この方法によれば、カラー画像の色を調整するカラーインクが、たとえば平坦なカラー画像の表面に並列して存在する。このため、カラーインクの凹凸が隣接するドット間の混色の要因になったり、透明インクによるラミネートの厚みの差が意図しない光の反射や屈折の要因になったりすることを抑制できる。このため、さらに高品質なカラー画像を記録媒体に対し出力できる。
【0010】
下地用のインクを吐出する工程は、カラー画像に含まれる色の調整が不要なドットを、下地用のインクを総液滴数が所定のパターンになるように記録媒体に吐出することにより形成することを含むことが望ましい。カラー画像を形成する際に、カラーインクを塗布しない、色調整が不要な部分(箇所)の凹凸を含めて表面が平坦な、あるいは所望の厚さになったカラー画像を記録媒体に出力できる。さらに、先に塗布される下地用のインクにより形成される色の調整が不要な部分により、カラーインクを塗布する部分の輪郭が形成される。このため、カラーインクの広がりを抑制でき、いっそう輪郭が鮮明なカラー画像を記録媒体に出力できる。
【0011】
この方法において、総液滴数は、各ドットの色を調整するために要する最大液滴数以上であり、さらに、下地用のインクを吐出する工程の前に、総液滴数と各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を下地用のインクの吐出数として求めること(下地用のインクの吐出数を求める工程)を有することが望ましい。
【0012】
総液滴数は、各ドットの色を調整するために要する最大液滴数と同じであってもよい。総液滴数は、各ドットの色を調整するために要する最大液滴数よりも大きくてもよく、この場合、各ドットは、少なくとも一滴の下地用のインクが吐出されて形成される。すなわち、総液滴数は、少なくとも一滴の下地用のインクが吐出される液滴数であってもよい。少なくとも下地用インクを一層(一滴)塗布することにより、カラー画像に与える記録媒体の表面の影響を抑制できる。記録媒体が有彩色である場合には、白色などの無彩色の下地用のインクを塗布することによりその表面色がカラー画像に影響を与えることを抑制できる。また、記録媒体が透明である場合には、白色などの不透明あるいは半透明な下地用のインクを塗布することにより、透明な媒体の写りこみの影響を抑制できる。
【0013】
下地用のインクは不透明(遮光性のあるインク)であることが好ましい。また、有色透明または半透明な光硬化型のインク、例えば、UVインクのような樹脂性あるいは反応性のカラーインクを積層して多色が表現されるカラー画像においては、下地用のインクを不透明にすることにより隣接するドット(色)との間で混色(クロストーク)を抑制できる。
【0014】
総液滴数の所定のパターンは、総液滴数が一定であってもよく、さらに、カラー画像のエッジまたは周囲で総液滴数をカラー画像に向けて徐々に増加させることを含んでいてもよい。カラー画像のエッジまたはその周囲に顕著な段差が生ずるのを抑制できる。
【0015】
本発明の他の態様は、記録媒体に対してカラー画像を出力する装置である。この装置は、記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、第1のヘッドに先立って、各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように下地用のインクを吐出する第2のヘッド部とを有する。この装置によれば、表面にカラーインクが存在し、ドット単位の凹凸のない、あるいはドット単位の凹凸が抑制されたカラー画像を記録媒体に出力できる。
【0016】
下地用のインクの吐出数は、パーソナルコンピュータなどのホスト装置側で求めてもよい。また、この装置の制御ユニットが、総液滴数と各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を下地用のインクの吐出数として求める機能を含んでいてもよい。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、記録媒体に対してカラー画像を出力する装置である。この装置は、記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、第1のヘッドに先立って下地用のインクを吐出する第2のヘッド部と、第1および第2のヘッド部の動作を制御する制御ユニットとを有する。制御ユニットは、記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出してカラー画像の各ドットの色を調整する機能と、色を調整する前に、各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように記録媒体に下地用のインクを吐出する機能とを含む。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、記録媒体に対してカラー画像を出力する装置の制御方法である。出力する装置は、記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、第1のヘッド部に先立って、下地用のインクを吐出する第2のヘッド部とを含む。この制御方法は、以下の工程を含む。
・第2のヘッド部が、各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように記録媒体に下地用のインクを吐出すること。
・第1のヘッド部が、記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出してカラー画像の各ドットの色を調整すること。
【0019】
この制御方法、さらに、下地用のインクを吐出する工程の前に、総液滴数と各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を下地用のインクの吐出数として求め、第2のヘッド部の出力用のバッファに格納する工程を有することが望ましい。総液滴数は、少なくとも一滴の下地用のインクが吐出される液滴数であってもよい。また、総液滴数が一定になるように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンタおよびパーソナルコンピュータを含むシステムの概略構成を示す図。
【図2】プリンタの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図3】本実施形態の方法により形成された各ドットを模式的に示す図
【図4】図4(a)は記録媒体の上にカラー画像を形成した例を示し、図4(b)は透明なインクによりカバーした例を示す図。
【図5】本実施形態の別の方法により形成された各ドットを模式的に示す図。
【図6】本実施形態により形成されたカラー画像のエッジの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、カラー画像を記録媒体に出力(形成)するシステムの一例を示している。このシステム1は、ホスト装置となるパーソナルコンピュータ(以下、PCと記載する)20と、PC20から供給されるデータを記録媒体(メディア)90に出力(印刷)するプリンタ(カラー画像を出力する装置)10とを含む。このプリンタ10は、インクジェットプリンタであり、記録媒体90上を往復動するように設けられたヘッドユニット11と、ヘッドユニット11を支持するとともにこれを記録媒体90上において往復動させる駆動機構(不図示)とを有する。ヘッドユニット11は、往復動するシリアルタイプに限らず、ラインタイプ(ラインヘッド)であってもよい。
【0022】
プリンタ10は、さらに、記録媒体90をヘッドユニット11に対して送るための搬送装置(フィーダー)12と、これらを制御する制御装置(制御ユニット)13と、メモリ14とを含む。搬送装置12は、記録媒体90をヘッドユニット11に対して所定の姿勢、たとえば、水平に支持して搬送するための複数の搬送ローラ12aを備えている。搬送装置12は、ヘッドユニット11の動作に合わせて記録媒体90を搬送および停止させながら、記録媒体90を間欠的に搬送する。
【0023】
このプリンタ10のヘッドユニット11は、光硬化型のインク、例えば紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。このため、本例のプリンタ10は、さらに、ヘッドユニット11に対して記録媒体90の搬送方向の下流側に設置された紫外線照射装置(UV照射装置)15を含む。
【0024】
紫外線硬化型のインクとしては、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インク、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクなどを挙げることができる。光硬化型のインクは、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光、例えば電子線、X線、赤外線等で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とを含むものであってもよい。また、インクは、光硬化型のインクに限定されるものではなく、熱硬化型などの樹脂性または反応性のインクであってもよい。
【0025】
本例のプリンタ10でカラー画像を出力する対象となる記録媒体90は、普通紙、再生紙、光沢紙などの各種紙であってもよく、各種布地、各種不織布などの紙以外のシート状の部材であってもよく、さらに、樹脂、金属、ガラス等の材質からなるシート状およびシート状以外の形状の物体であってもよい。ただし、シート状以外の形状の物体を記録媒体として使用する場合は、その物体に対してヘッドユニット11が移動する機構を採用することが好ましい。本例のプリンタ10は光などにより硬化する樹脂性インクを用いるので、非吸収性の樹脂などの記録媒体に好適にカラー画像を形成できる。
【0026】
プリンタ10にカラー画像を形成するためのデータを供給するPC20は、プロセッサ、メモリ、入出力装置などの汎用のコンピュータを実現するためのハードウェア資源を含む。PC20には、OS21と、OS21の上で動作するアプリケーションプログラム22とがインストールされており、文書や画像などを含むコンテンツを見たり、作製したり、編集したりできるようになっている。PC20には、さらに、コンテンツをプリンタ10で印刷する際に、コンテンツに含まれる文字、画像などの多値のデータを印刷用のデータ(たとえば2値データ)29に変換する機能を含むプリンタドライバ23がインストールされている。PC20において、プリンタドライバ23は、ハードディスク、ROM(不図示)などの記録媒体に記録されたプログラムとして提供される。そして、プリンタドライバ23としての機能は、プロセッサ(不図示)がそのプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
プリンタ10のヘッドユニット11は、記録媒体90に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部(第1のヘッド)11aと、下地用のインクを吐出する第2のヘッド部(第2のヘッド)11bとを含む。第1のヘッド部11aは、複数色のカラーインクをそれぞれ吐出するインクジェット方式の複数のノズルを含む。典型的な第1のヘッド11aは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のUVカラーインクを記録媒体90に吐出する4種類のノズルを含む。なお、第1のヘッド部11aにおいて吐出する複数のカラーインクの数および/または色はこれらに限定されるものではない。
【0028】
第2のヘッド部11bは、単一種類の下地用のインクを吐出するインクジェット方式のノズルを含む。第2のヘッド部11bは、第1のヘッド部11aの紙送り方向(記録媒体90の搬送方向)の上流側に配置されており、第1のヘッド部11aに先立って、記録媒体90に下地用のUVインクを吐出する。下地用のインクの一例は、不透明な(遮光性を有する)白色のUVインクまたは透明なUVインク(UV樹脂)である。UV硬化型白色インクとしては、マーケム社製のUV白インク4600シリーズなどを挙げることができる。
【0029】
プリンタ10のメモリ14の1つの機能は、PC20から供給されたデータを一時的に蓄積することである。メモリ14は、各ドットを形成するインクの総液滴数TDNの数および/またはパターン(関数)を蓄積するパターン記憶部30と、第1のヘッド部11a用のデータを蓄積する第1のバッファ(第1のヘッド部11aの出力用のバッファ)31と、第2のヘッド部11b用のデータを蓄積する第2のバッファ(第2のヘッド部11bの出力用のバッファ)32とを含む。第1のバッファ31には、プリンタドライバ23から供給される印刷用のデータ29が格納される。パターン記憶部30には、総液滴数TDNが固定値または関数で設定される。総液滴数TDNが固定値(コンスタント値)であれば、記録媒体90の上に一定の厚みのカラー画像が形成される。
【0030】
プリンタ10の制御ユニット13はCPUを含み、メモリ14に格納された処理プログラム19に従い、プリンタ10に含まれる各装置を制御する。たとえば、制御ユニット13は、ヘッドユニット11の駆動、第1のヘッド部11aおよび第2のヘッド部11bの動作、紫外線照射装置15の動作などを制御する。制御ユニット13は、1ドット当たりに各色のインクを1滴ずつ吐出する制御を行うものであってもよく、1滴の液滴量を小液滴量のインク液滴を複数発吐出して実現する、いわゆるマルチドロップ方式によりカラー画像の記録を行わせるものであってもよい。
【0031】
制御ユニット13は、差分計算機能41と、下地用インク吐出機能42と、色調整機能(カラーインク吐出機能)43とを含む。差分計算機能41は、第2のヘッド部11bにより下地用のインクを吐出する前に、カラー画像の各ドットを形成するために吐出する総液滴数TDNと、各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を下地用のインクの吐出数UDNとして求め、第2のバッファ32に格納する。差分計算機能41は、色の調整が不要なドット、すなわち、液滴数CDNがゼロのドットについては、下地用のインクの吐出数UDNを総液滴数TDNに設定する。
【0032】
下地用インク吐出機能42は、第1のヘッド部11aによりカラーインクを吐出して色を調整する前に、第2のバッファ32に格納された吐出数UDNに基づき、第2のヘッド部11bにより記録媒体90に下地用のインクを吐出する。したがって、下地用インク吐出機能42により、第1のヘッド部11aによりカラーインクが吐出されるドットについては、カラーインクの液滴数CDNも含めて総液滴数TDNになるように下地用のインクが記録媒体90に吐出される。また、下地用インク吐出機能42により、第1のヘッド部11aによりカラーインクが吐出されないドットについては、下地用のインクが総液滴数TDNになるように記録媒体90に吐出される。
【0033】
色調整機能43は、第1のバッファ31に格納された印刷用のデータ29に基づき、記録媒体90に複数色のカラーインク、たとえば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の少なくとも1つの色のインクを吐出してカラー画像を形成する各ドットの色を調整する。
【0034】
各色のインクを一滴ずつ吐出することによりカラー画像を形成する例においては、ブラック(K)は一色で使われるので、各ドットの色を調整するために要する最大液滴数MDNは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)をそれぞれ使用する場合の「3」となる。したがって、総液滴数TDNは3以上の数値または3以上を示す関数となる。マルチドロップ方式においても、同様に最大液滴数MDNと総液滴数TDNを定義できる。
【0035】
記録媒体90の上に、表面が平坦のカラー画像を形成することを目的とした場合は、総液滴数TDNを一定値(固定値)とすればよい。その場合の総液滴数TDNの一例は最大液滴数MDNと等しい値、本例であれば「3」である。一定の総液滴数TDNと、印刷用データ29により各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を下地用のインクの吐出数UDNとして求め、印刷用データ29によりカラーインクを吐出する前に、第2のヘッド部11bにより下地用のインクを記録媒体90の上に吐出する。たとえば、あるドットの色調整するための液滴数CDNが「2」であれば、事前に下地用のインクを「1」滴吐出する。また、あるドットの色調整するための液滴数CDNが「3」であれば、事前に下地用のインクを吐出しない。さらに、色調整をしないドットについては、事前に下地用のインクを「3」滴吐出する。
【0036】
このように、各ドットを形成するインクの総液滴数TDNが一定となるように記録媒体90に下地用のインクを吐出することにより、カラー画像を形成するすべてのドットについて総液滴数TDNを「3」とすることができ、カラー画像全体の表面を平坦にできる。
【0037】
なお、記録媒体90の上に、表面が平坦でなくても滑らかなカラー画像を形成することを目的とする場合は、総液滴数TDNを、ドット単位より十分に距離が長く、長周期で変化する関数(パターン)で定義することができる。総液滴数TDNを変動させることにより、表面が滑らかにうねったカラー画像や、カラー画像により表現される内容、たとえば、図柄や絵を反映した形状に滑らかに盛り上がったカラー画像を記録媒体90の上に形成(出力)できる。
【0038】
図2は、本例のプリンタ10の制御方法の一例を示すフローチャートである。ステップ101において、PC20からカラー画像データを入力する。ステップ102において、印刷用データ29に基づきカラー画像を出力する各ドットの液滴数CDNを計算する。ステップ103において、各ドットについて、予め設定されている総液滴数TDNと実際の液滴数CDNとの差分UDNを計算する。この差分が下地用のインクの吐出数UDNとなる。カラー画像に含まれるドットであって、色の調整が不要なドットについては、下地用のインクの吐出数UDNは、総液滴数TDNに設定される。
【0039】
ステップ104において、カラーインクを吐出する前に、第2のヘッド部11bにより下地用のインクを差分(吐出数)UDNの液滴数だけ吐出し、カラー画像を形成する各ドットの下地を形成する。カラーインクが吐出されない部分においては、下地用のインクによりドットを形成する。
【0040】
その後、ステップ105において、第1のヘッド部11aにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のうちの少なくとも1つ(最大3種類の色)を、所定の順番で吐出して、カラー画像の各ドットの色を調整する。そして、ステップ106において、紫外線(UV)を照射し、インクを硬化させて、各ドットを定着させる。紫外線は、ステップ104で下地用のインクを吐出した後に、下地用のインクを、カラー用のインクとは別に定着させるために照射してもよい。また、各色のインクを吐出する都度、紫外線でインクを定着させてもよい。
【0041】
図3は、本例の方法により記録媒体90の上に出力(形成)されたカラー画像95の各ドットを模式的に示している。図4(a)は、記録媒体90の上に印刷用データ29によりカラーインク81Y、81M、81Cおよび81Kのみを吐出し、カラー画像99を形成したときの各ドットを模式的に示している。図4(b)は、透明な樹脂89により表面を覆ったカラー画像98の各ドットの様子を示している。
【0042】
図4(a)に示すように、カラーインク81Y〜81Kのみを吐出してカラー画像99を形成すると、ドットで表現する色の相違によりインクの吐出数が異なる。このため、カラー画像99を形成するドット99dの高さが異なり、カラー画像99の表面は凹凸になる。このため、カラー画像99の表面が物理的に凸凹するので、手触りで違和感があったり、カラー画像の表面の凹凸に異物が引っ掛かって画質を損ねたり、カラー画像の耐久性を損ねたりする可能性がある。さらに、色によりドット99dの高さが異なり、ドット99dを形成するために下側から積み重ねられているカラーインク81Y〜81Cが条件によっては斜め方向から見えたりする可能性があり、隣接するドット99dの間で混色する可能性もある。
【0043】
図4(b)に示すように、透明な樹脂(液滴)89を重ねることで、カラー画像98を形成するドット98dの高さは一定になるので、カラー画像98の表面は滑らかになる。しかしながら、カラーインク81Y〜81Cが下側(記録媒体の側)から積み重ねられていることには変わりなく、隣接するドットの間で混色する可能性がある。さらに、透明な樹脂89の厚みや形状が様々になるので、意図しない反射や屈折などにより、必ずしも意図する色合いや見え方が得られない可能性もある。特にUVインク81Y〜81Cは、典型的には、有色透明なので、透明な樹脂89でカバーしても隣接するドットの間でクロストークが起きやすい。
【0044】
これに対し、図3に示した本発明による方法により形成されたカラー画像95においては、カラーインク81Y〜81Kを吐出する前に、総液滴数TDNと実際の液滴数CDNとの差分UDMだけ下地用のインク85が吐出され、記録媒体90の上に積み重ねられている。このため、カラー画像95を形成する全てのドット95dの高さが一定になり、表面が滑らかで平坦なカラー画像95を記録媒体90の上に形成できる。さらに、カラーインク81Y〜81Kは、下から、すなわち、記録媒体90の側から積み重ねられるのではなく、逆方向の上から、すなわち、カラー画像95の表面の側95sから積み重ねられた状態になる。このため、カラー画像95の色調整が必要な部分は、カラー画像95の表面95sがカラーインク81Y〜81Kのいずれかで形成されるので、隣接するドットの間で混色したり、意図しない反射や屈折が発生することは少ない。
【0045】
さらに、カラー画像95においては、下地用のインク85により事前にかさ上げされ、カラー画像95の表面95sにカラーインク81Y〜81Kが並ぶので、下地用のインク85は透明でなくてもよく、不透明で、遮光性があるインク85を使用できる。不透明な下地用のインク85を採用することによりクロストークをさらに抑制できる。さらに、カラー画像95の色調整が不要なドット、典型的にはカラー画像95のエッジの部分のドットを不透明な、たとえば、白色の下地用のインク85を積み上げることにより形成できる。このため、カラー画像95のエッジを強調することが容易となり、さらにシャープなカラー画像95を記録媒体90に形成できる。
【0046】
このように、本例の装置10および方法では、UVインクのような硬化型、樹脂性、反応性といった記録媒体90の表面に凹凸が生じやすいインクを用いても、下地用のインクにより発色面の凹凸は抑制されるため、より自然な風合いの平坦なカラー画像を得ることができる。
【0047】
総液滴数TDNは、上述したように、各ドットの色を調整するために要する最大液滴数MDNと同一またはそれ以上である。総液滴数TDNを最大液滴数MDNより多くすることも可能であり、下地用のインク85によりカラー画像95の全体の下地を形成することも可能である。
【0048】
すなわち、記録媒体90の表面の影響を下地用のインク85を一層または多層載せることでリセットすることが可能であり、さまざま記録媒体90の上に、高品質のカラー画像95を形成できる。たとえば、総液滴数TDNを「4」とし、記録媒体90の上に、カラーインクを塗布する前に、記録媒体90の上に少なくとも一滴の下地用のインクを塗布するとよい。透明な記録媒体90であれば、不透明な下地用のインク85を用いることにより反対側からの映り込みを抑制できる。また、地色のある記録媒体90であれば、地色をキャンセルできる下地用のインク85を用いることにより、地色の影響を抑制できる。
【0049】
図5は、本例の方法により記録媒体90の上に出力(形成)されたカラー画像の異なる例を示している。図5に示したカラー画像96は、各ドットの総液滴数TDNを「4」に設定して出力されたものである。このため、第1のヘッド部11aによりカラーインク81C〜81Kが記録媒体90に塗布される前に、第2のヘッド部11bにより記録媒体90の上に少なくとも一滴(一層)86の下地用のインク85が塗布される。このカラー画像96においても、各ドット96dの厚さは一定になるので、表面が滑らかなカラー画像96を記録媒体90に出力できる。また、カラーインク81C〜81Kは、カラー画像96の表面96sの側から積み重ねられるので、上記のカラー画像95と同様に鮮明なカラー画像が得られる。さらに、記録媒体90の地色の影響を下地用のインク85により抑制できるので、さらに鮮明なカラー画像を得ることができる。
【0050】
なお、上記では総液滴数TDNが一定にセットされた例を説明しているが、総液滴数TDNを長期的な周期(パターン)で変動させてもよいことは上述した通りである。その場合でも、カラー画像の表面の側からカラーインクが積層され、カラー画像の表面にカラーインク(複数色のカラーインクの少なくとも1つ)が存在する。このため、クロストークを抑制でき、反射や屈折などによるカラー画像の品質の低下を抑制できる。
【0051】
図6に示すように、総液滴数TDNを、カラー画像97のエッジ97eまたその周囲で、段階的にあるいは滑らかに変化させることも有効である。カラー画像あるいはカラー画像を印字する領域(印字領域)のエッジ(境界)領域においては、記録媒体90の表面に総液滴数TDNの液滴が急激に積み重ねられる。したがって、カラー画像または印字領域のエッジまたは周囲に、差の大きな段差が発生する可能性がある。総液滴数TDNを、関数あるいはルックアップテーブル(LUT)を用い、カラー画像97または印字領域のエッジ97eまたは周囲で、カラー画像97に近づくにつれて徐々に大きくなるように制御する。総液滴数TDNをそのように制御することにより、下地用のインク85を用いて、カラー画像97または印字領域のエッジ97eまたは周囲に傾斜または細かい段差を形成することが可能となる。このため、カラー画像または印字領域のエッジまたは周囲に顕著な段差が生ずることを防止できる。段差が顕著な箇所は、手触りが異常になるとともに、カラー画像が損傷したり、異物が堆積しやすく、エッジの段差を小さくしたり、滑らかにすることによりそれらの不具合を未然に防止できる。
【0052】
また、上記の例では、総液滴数TDNなどを計算する差分計算機能41はプリンタ10の制御ユニット13に実装されているが、この機能はPC20のプリンタドライバ23に備えていてもよい。
【0053】
さらに、本例においては、カラーインクとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクを用いるようにしたが、使用するインクの色はこれに限定されるものではない。例えば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ライトブラック(LK)を加えた8色をカラーインクとして使用するようにしてもよい。また、本例では、下地用のインクとして不透明な(遮光性を有する)インクを用いたが、下地用のインクも、これに限定されるものではない。例えば、無色透明なインクなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 プリンタ(記録媒体に対してカラー画像を出力する装置)
11a 第1のヘッド部、 11b 第2のヘッド部
13 制御ユニット、41 差分計算機能、 42 下地用インク吐出機能
43 色調整機能、 90 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にカラー画像を出力する方法であって、
前記記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して前記カラー画像の各ドットの色を調整することと、
前記色を調整することの前に、前記各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように前記記録媒体に下地用のインクを吐出することとを有する、方法。
【請求項2】
請求項1において、前記下地用のインクを吐出することは、前記カラー画像に含まれる色の調整が不要なドットを、前記下地用のインクを総液滴数が前記所定のパターンになるように前記記録媒体に吐出することにより形成することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記総液滴数は、前記各ドットの色を調整するために要する最大液滴数以上であり、
前記下地用のインクを吐出することの前に、前記総液滴数と前記各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を前記下地用のインクの吐出数として求めることをさらに有する、方法。
【請求項4】
請求項3において、前記総液滴数は、少なくとも一滴の前記下地用のインクが吐出される液滴数である、方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記下地用のインクは不透明である、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記総液滴数の所定のパターンは、前記総液滴数を一定にすることである、方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記総液滴数の所定のパターンは、前記カラー画像のエッジまたは周囲で前記総液滴数を前記カラー画像に向けて徐々に増加させることを含む、方法。
【請求項8】
記録媒体にカラー画像を出力する装置であって、
前記記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、
前記第1のヘッドに先立って、前記各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように下地用のインクを吐出する第2のヘッド部とを有する装置。
【請求項9】
請求項8において、さらに、制御ユニットを有し、
前記総液滴数は、前記各ドットの色を調整するために要する最大液滴数以上であり、
前記制御ユニットは、前記総液滴数と前記各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を前記下地用のインクの吐出数として求める機能を含む、装置。
【請求項10】
請求項8または9において、前記下地用のインクは不透明である、装置。
【請求項11】
記録媒体に対してカラー画像を出力する装置であって、
前記記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、
前記第1のヘッド部に先立って下地用のインクを吐出する第2のヘッド部と、
前記第1および第2のヘッド部の動作を制御する制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、
前記記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して前記カラー画像の各ドットの色を調整する機能と、
色を調整する前に、前記各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように前記記録媒体に下地用のインクを吐出する機能とを含む、装置。
【請求項12】
記録媒体にカラー画像を出力する装置の制御方法であって、
前記出力する装置は、前記記録媒体に複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部と、前記第1のヘッド部に先立って下地用のインクを吐出する第2のヘッド部とを含み、
当該制御方法は、
前記第2のヘッド部が、前記各ドットを形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように前記記録媒体に前記下地用のインクを吐出することと、
前記第1のヘッド部が、記録媒体に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して前記カラー画像の各ドットの色を調整することとを含む、制御方法。
【請求項13】
請求項12において、前記総液滴数は、前記各ドットの色を調整するために要する最大液滴数以上であり、
前記下地用のインクを吐出することの前に、前記総液滴数と前記各ドットの色を調整するために要する実際の液滴数との差を前記下地用のインクの吐出数として求め、前記第2のヘッド部の出力用のバッファに格納することをさらに含む、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245723(P2011−245723A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120553(P2010−120553)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】