説明

記録媒体及びその製造方法及び記録再生装置

【課題】本発明はディスクリートトラックメディアまたはパターンドメディアに用いて好適な記録媒体及びその製造方法及び記録再生装置に関し、研磨加工を実施することなく表面の平滑化を図れると共に十分な潤滑性を得ることを課題とする。
【解決手段】ディスクリートトラックタイプの記録媒体において、表面に溝17を有する磁性層12上に、固定層14と流動層15とを積層した潤滑剤16を形成する。固定層14は前記溝17を埋めるように配設されると共に硬化処理が行われる。流動層15は固定層14の上層に位置しており、流動性を有して磁気ヘッドとの摺接性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体及びその製造方法及び記録再生装置に係り、特にディスクリートトラックメディアまたはパターンドメディアに用いて好適な記録媒体及びその製造方法及び記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に種々の記録媒体が提供されているが、その一種としてHDD等で使用されるディスク状の磁気記録媒体がある。この磁気記録媒体は、記録される情報量が増大する一方で小型化が望まれており、記録密度の高密度化が進んでいる。
【0003】
このため、磁気記録媒体の隣接トラック間の干渉を低減し,トラック密度を高めるディスクリートトラックメディアや、隣接ビット間の干渉を低減して線記録密度を高めるパターンドメディアが提案されている。この種の磁気記録媒体は、記録トラック間を充分に小さくしても互いのトラック間の磁気的影響(クロストーク)を抑制できることから記録密度の高密度化を図ることができる。
【0004】
一方、この種の磁気記録媒体に対する記録再生処理は、ディスク状の磁気記録媒体を高速回転し、このディスクの上で空気の抵抗(粘度)により浮上する磁気ヘッドを用いて行われる。この際、高密度記録を行うためには磁気ヘッドと磁気記録媒体が近接していることが望ましく、よって磁気ヘッドの浮上量は低減することが望ましい。
【0005】
しかしながら、ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアにおいては、記録層を溝等により隔絶するため、その表面に微小な段差が必然的に発生する。そして、この段差が生じている状態のディスクリートトラックメディアやパターンドメディアに対し、磁気ヘッドの浮上量を極限まで低くすると、磁気ヘッドと各メディアが摺接(当接)することが考えられ、この場合には摺動により発生する熱や衝撃でディスク表面に形成された記録層が劣化、あるいは破壊されエラーの原因となるおそれがある。
【0006】
この段差が記録ヘッドの浮上に悪影響を及ぼさないようにするため、従来では平坦化技術を用いて段差を無くすることが行われていた。この平坦化技術を用いて形成された記録媒体を図18に示す。
【0007】
同図に示す記録媒体100Aは、ディスクリートトラックメディアである。この記録媒体100Aにおいて磁性層112に溝117を形成することにより生じた段差を除去するには、溝117をアルミナやSiOなどの酸化膜からなる硬質の非磁性層131で埋め、その後に表面をCMP(化学的機械的研磨)等の研磨技術により平坦化加工し、その上に保護膜113を設け、更に潤滑剤116を配設していた。
【0008】
また他の方法としては、特許文献1に開示され方法が提案されている。図19は、特許文献1に開示された記録媒体100Bを示している。同図に示すように特許文献1に開示された記録媒体100Bは、ディスク基板112の表面に多数条のデータトラックが同心円に並ぶ記録ディスクの溝部117に対し、一定体積以上の媒体潤滑剤116を配設した構成とされていた。
【特許文献1】特開2000−293843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、CMPは精度の高い平坦面を形成できるものの、設備が高価でかつその構成が複雑で、CMPを用いることにより記録媒体の製造工程が複雑となり、また記録媒体の製品コストも上昇してしまうという問題点があった。
【0010】
また、特許文献1に開示された技術では、最表面に潤滑剤116が露出しておらず、よって十分な潤滑性が得にくいと考えられる。よって、磁気ヘッドが記録媒体100Bと摺接した場合、やはり摺動により発生する熱や衝撃で記録層が劣化したり破壊されたりするおそれがある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、研磨加工を実施することなく表面の平滑化を図れると共に十分な潤滑性を得ることができる記録媒体及びその製造方法及び記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項1記載の発明は、
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に硬化処理が行われた固定層と、前記固定層上に位置しており流動性を有した流動層とが一体的に積層された潤滑剤層とを有することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に表面が平坦面とされた潤滑剤固定層と、
前記固定層上に積層形成されており流動性を有した潤滑剤流動層とを有することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、
記録層を隔絶する溝を設けたディスクリートトラックタイプの記録媒体の製造方法において,
前記溝部内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程とを有することを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、
請求項3記載の記録媒体の製造方法において、
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、
非磁性層にナノホールを設けると共に該ナノホールに磁性層を配設した記録層を有するパターンドタイプの記録媒体の製造方法において、
前記ナノホール内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程とを有することを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、
請求項5記載の記録媒体の製造方法において、
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項7記載の発明に係る記録再生装置は、
請求項1または2記載の記録媒体と、該記録媒体に対して記録再処理を行う手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録層の表面に段差が存在しても潤滑剤層の表面は平坦面となるため、従来必要とされていたCMP等の研磨処理は不要となり、記録媒体の製造工程の簡単化及び記録媒体の低コスト化を図ることができる。
【0021】
更に、固定層上には流動性を有した流動層が存在するため潤滑性を維持することができ、よって浮上磁気ヘッドと記録媒体との摺動に起因した熱や衝撃による記録層の劣化や破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例である記録媒体10Aを示しており、図2はその製造方法を示している。尚、以下説明する図1乃至8に示す記録媒体はディスクリートトラックメディアを例として挙げているため、図1乃至8に示す各実施例の説明では各記録媒体をディスクリートトラックメディア10A〜10Dと示し説明するものとする。
【0024】
図1に示すディスクリートトラックメディア10Aは、例えば垂直磁気記録媒体として使用されるものである。このディスクリートトラックメディア10Aは、大略すると図示しない基板上に軟磁性層11、磁性層12(記録層)、保護膜13、及び潤滑剤16等が積層された構成とされている。
【0025】
軟磁性層11は、例えば絶縁材(例えばガラスやアルミ合金等)の基板上に形成されている。この軟磁性層11は、高透磁率を有するバーマロイ(Ni−Fe合金)を用いることができる。また、軟磁性層11の厚さは、例えば500〜1000Åである。
【0026】
この軟磁性層11の上部には磁性層12が形成されている。この磁性層12としては、例えばCoCrP、CoCrTa、CoCrTi、CoCrGe、CoNi、CoNiZr、CoCrW、CoCrV等のCo系磁性合金、またはγ−Fe2O3等のFe系磁性材料を用いることができる。この磁性層の厚さは、例えば200〜800Åである。
【0027】
また、本実施例に係る記録媒体はディスクリートトラックメディア10Aであるため、この磁性層12には溝17が形成されている。この溝17は、電子線リソグラフィやナノインプリントリソグラフィ技術を用いて、データトラック形成位置の間に形成されている。このように、磁性層12に溝17が形成されることにより、磁性層12には段差(凹凸)が形成されることとなる。
【0028】
本実施例では、上記した磁性層12の上部に保護膜13を形成した構成としている。この保護膜13は磁性層12に腐食が発生することを防止するために設けられるものであり、材料としてはダイヤモンドライクカーボン(DLC)や二酸化珪素等を用いることができる。また、保護膜13の厚さは、例えば100〜200Åである。
【0029】
この保護膜13は、前記のように磁性層12を保護するものであるため、磁性層12の表面全体を被覆するよう形成される。また、磁性層12には溝17が形成されているため、この溝17の内部にも保護膜13は形成される。しかしながら、保護膜13の厚さは前記のように薄いため、保護膜13により溝17が埋まることはなく、保護膜13にも溝17に起因した段差(凹凸)が形成されている。
【0030】
潤滑剤16は、磁気ヘッド42(図17参照)との摺動時の摩擦係数を下げて摩耗を軽減すると共に、表面を溌水性にして腐食を防ぐなどの目的で配設される。この潤滑剤16の材質としては、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)を用いることができる。このPFPEは常温では流動性を有しており、よって磁気ヘッド42がディスクリートトラックメディア10Aと摺接したときの摩擦低減を図ることができる。
【0031】
本実施例では、潤滑剤16が固定層14と流動層15とにより構成されていることを特徴としている。固定層14は磁性層12側に位置した部分であり、後述するように加熱処理等を行うことにより硬化(ゲル状も含む)した部分である。これに対し、流動層15は加熱処理等は行われておらず、よって流動性を有したままの状態となっている。本実施例では、固定層14と流動層15は連続的かつ一体的な構成とされている。
【0032】
後に詳述するように、固定層14は、硬化処理が行われる前の流動性を有した状態で保護膜13上に配設され、その後に硬化処理が行われる。即ち、固定層14となる潤滑剤材料20(図2(D)参照)は、保護膜13に形成されている段差(凹凸)の内部に配設された後に硬化処理が行われる。
【0033】
このため、固定層14の表面14a及び流動層15の表面15aは平滑な面となり、磁気ヘッド42との摺動性を良好なものとすることができる。更に、固定層14と流動層15は連続的かつ一体的な構成とされているため、流動層15と固定層14との結合力が強く、磁気記録再生時にディスクリートトラックメディア10Aが高速回転しても流動層15が固定層14から離脱して飛散することを防止できる。
【0034】
続いて、図2を参照し、上記構成とされたディスクリートトラックメディア10Aの製造方法について説明する。尚、図2において、図1に示した構成と同一構成については同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0035】
図2(A)は、図示しない基板上に軟磁性層11及び磁性層12が積層された状態を示している。基板上への軟磁性層11の形成、及び軟磁性層11上への磁性層12の形成は、いずれもスパッタリングを用いることができる。
【0036】
続いて、図2(B)に示すように、磁性層12に溝17の形成処理が実施される。この溝17の形成は、例えば電子線リソグラフィやナノインプリントリソグラフィ技術を用いて、データトラックが形成される所定位置の間に形成される。このように、磁性層12に溝17が形成されることにより、同図に矢印A1示すように、磁性層12には段差(凹凸)が形成されることとなる。
【0037】
磁性層12に溝17が形成されると、続いて軟磁性層11及び磁性層12の上部に保護膜13が成膜される(請求項に記載の成膜工程に相当)。この保護膜13は、例えばスパッタリングにより形成することができる。図2(C)は、保護膜13が形成された状態を示している。
【0038】
前記のように保護膜13はDLCや二酸化珪素等の非磁性材料であり、磁気記録再生特性を高めるためには、磁性層12を保護しうる範囲で最小の膜厚とすることが望ましい。このため、保護膜13が形成されても溝17は保護膜13により埋まることはなく、保護膜13にも溝17に起因した凹凸が形成される(図2(C)に矢印A2で示す)。
【0039】
上記のように保護膜13が形成されると、続いて潤滑剤16となる潤滑剤材料20(潤滑剤16の材料となるもの)が保護膜13の上部に配設される。この潤滑剤材料20は前記したPFPEを用いており、このPFPEは常温において流動性を有している。また、潤滑剤材料20の保護膜13上に対し配設する厚さは、固定層14及び流動層15を含めた厚さとなるよう設定されている。
【0040】
図2(D)は、保護膜13上に潤滑剤材料20が配設された状態を示している。流動性を有する潤滑剤材料20を配設することにより、潤滑剤材料20は保護膜13上に形成されている段差A2の内部まで配設される(請求項に記載の配設工程に相当)。
【0041】
この際、この段差内に潤滑剤材料20を配設するのに特別な配設工程は必要でなく、単に保護膜13上に潤滑剤材料20を配設するだけで、流動性を有した潤滑剤材料20は上記段差内に配設される。また、潤滑剤材料20は流動性を有しているため、段差を有した保護膜13上に潤滑剤材料20を配設しても、潤滑剤材料20の表面20aは保護膜13の表面の段差形状を履歴することはなく平坦な面となる。
【0042】
潤滑剤材料20の配設処理が終了すると、軟磁性層11の下面側から潤滑剤材料20に対して加熱処理が実施される。この加熱処理により、熱は軟磁性層11,磁性層12,及び保護膜13を介して潤滑剤材料20に熱伝達される。即ち、PFPEよりなる潤滑剤材料20は、磁性層12側の位置から加熱処理が実施される(請求項に記載の硬化工程に相当)。
【0043】
この加熱処理により、潤滑剤材料20の磁性層12に近い所定領域において架橋が生じ、これにより硬化されて固定層14が形成される。この固定層14の表面14aは、平坦な面となる。
【0044】
これに対して潤滑剤材料20の表面側は、加熱による熱が伝達されないため熱硬化は発生せず、よって固定層14の上部には流動性を有した流動層15が自動的に形成される。この際、流動層15の下層となる固定層14の表面14aは平坦面であるため、流動層15の表面15aも平坦な面となる。
【0045】
このようにして、固定層14と流動層15とを積層した構造の潤滑剤16が形成される。また、このように形成された潤滑剤16は、配設された潤滑剤材料20の一部を加熱することにより固定層14が形成され、残る部分が流動層15とされるため、固定層14と流動層15とは連続的かつ一体的な構成となる。
【0046】
上記した製造工程を実施することにより、図2(E)に示すディスクリートトラックメディア10Aが製造される。この本実施例に係るディスクリートトラックメディア10Aの製造方法では、高密度化によるクロストークの発生を防止するために磁性層12に溝17を形成し、これにより磁性層12に段差が形成されても、固定層14(潤滑剤16)の表面は平坦面となる。このため、従来必要とされていたCMP等の研磨処理は不要となり、ディスクリートトラックメディア10Aの製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。
【0047】
また、固定層14の上部には流動性を有した流動層15が存在するため潤滑性を維持することができ、よって磁気ヘッド42とディスクリートトラックメディア10Aとの摺動に起因した熱や衝撃による記録層の劣化や破壊を防止することができる。更に、固定層14は硬化されているため、磁性層12(保護膜13)に形成された段差部分に強く保持され、かつ固定層14と流動層15との密着性も良好であるため、ディスクリートトラックメディア10Aが高速回転しても流動層15の飛散を防止することができる。
【0048】
次に、第2実施例について説明する。
【0049】
図3は第2実施例に係るディスクリートトラックメディア10Bを示しており、図4はディスクリートトラックメディア10Bの製造方法を示している。尚、第2乃至第4実施例の説明で使用する図3乃至図8において、図1及び図2に示した構成と対応する構成については同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0050】
前記した第1実施例に係るディスクリートトラックメディア10Aは、潤滑剤材料20の一部に熱印加することにより、潤滑剤16を固定層14と流動層15とが連続的かつ一体的な構成とされていた。これに対して本実施例に係るディスクリートトラックメディア10Bは、図3に示すように、保護膜13上にそれぞれ独立して形成された潤滑剤固定層18と潤滑剤流動層19を積層した構成としたことを特徴とするものである。
【0051】
このディスクリートトラックメディア10Bを製造するには、図4(A)に示すように基板上に形成されている軟磁性層11上に磁性層12をスパッタリング等により形成し、更に図4(B)の示すように溝17を形成する。更に、溝17が形成された磁性層12及び軟磁性層11上に、図4(C)の示すように保護膜13スパッタリング等により形成する。ここまでの製造工程は、図2(A)〜(C)に示す工程と同一である。
【0052】
続いて本実施例では、先ず潤滑剤固定層18となる潤滑剤材料20(図に現れず)を保護膜13の上部に配設する(請求項に記載の第1の配設工程)。潤滑剤材料20は流動性を有しているため、保護膜13に形成されている溝17に起因した段差A2内にも配設される。また、潤滑剤材料20が段差A2内に配設された状態において、流動性を有していることにより潤滑剤材料20の表面は平坦な面となる。
【0053】
続いて、この潤滑剤材料20の上方から加熱処理を行うことにより硬化させ、図4(D)に示すように保護膜13上に潤滑剤固定層18を形成する(硬化工程)。前記のように硬化前の潤滑剤材料20の表面20aが平坦であることにより、熱硬化された潤滑剤固定層18の表面18aも平坦な面となる。
【0054】
上記のように潤滑剤固定層18が形成されると、その上部に更に潤滑剤材料20が配設される(請求項に記載の第2の配設工程に相当する)。潤滑剤材料20に対しては熱硬化処理は実施されないため、よって潤滑剤材料20はそのまま潤滑剤流動層19となる。上記した製造工程を実施することにより、図4(E)に示すディスクリートトラックメディア10Bが製造される。
【0055】
本実施例に係るディスクリートトラックメディア10Bの製造方法においても、従来必要とされていたCMP等の研磨処理を不要とすることができ、製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。また、潤滑剤固定層18の上部には流動性を有した潤滑剤流動層19が存在するため潤滑性を維持することができ、よって磁気ヘッド42とディスクリートトラックメディア10Bとの摺動に起因した熱や衝撃による記録層の劣化や破壊を防止することができる。
【0056】
次に、第3実施例について説明する。
【0057】
図5は第3実施例に係るディスクリートトラックメディア10Cを示しており、図6はディスクリートトラックメディア10Cの製造方法を示している。本実施例は、基本的には図1及び図2を用いて説明した第1実施例に係るディスクリートトラックメディア10A及びその製造方法と略同様のものである。
【0058】
しかしながら、第1実施例においては、磁性層12の上部に保護膜13が形成されているのに対し、本実施例ではこの保護膜13を除去した構成としたことを特徴とするものである。よって、本実施例に係るディスクリートトラックメディア10Cは、図5に示すように、軟磁性層11及び磁性層12の上部に直接潤滑剤16が形成された構成とされている。
【0059】
また、ディスクリートトラックメディア10Cの製造方法においても、図6(A),(B)は、図2(A),(B)と同一の製造工程であるが、本実施例では磁性層12に溝17が形成された後、図6(C)に示すように直ちに潤滑剤材料20を配設する(配設工程)。
【0060】
その後、潤滑剤材料20に対して背面側から加熱処理を行うことにより固定層14を形成し、潤滑剤材料20を固定層14と流動層15に分離させ潤滑剤16を形成すること(硬化工程)は、前記した第1実施例と同様である。図6(D)は、本実施例に係る方法により製造されたディスクリートトラックメディア10Cを示している。
【0061】
前記したように、保護膜13はDLCや二酸化珪素等の非磁性材料であり、磁気記録再生特性を高めるためには、磁性層12を保護しうる範囲で最小の膜厚とすることが望ましい。また、磁性層12の材質として、耐腐食性を有する材料を選定した場合には、必ずしも保護膜13を設ける必要はない。
【0062】
このため、本実施例ではこの保護膜13を除去し、軟磁性層11及び磁性層12の上部に直接潤滑剤16を形成した。この構成することにより、保護膜13を成膜する工程(成句工程)が不要となり、製造工程の簡単化を図ることができる。更に、保護膜13が不要となることにより部品点数を削減でき、ディスクリートトラックメディア10Cの低コスト化を図ることができる。
【0063】
次に、第4実施例について説明する。
【0064】
図7は第4実施例に係るディスクリートトラックメディア10Dを示しており、図8はディスクリートトラックメディア10Dの製造方法を示している。本実施例は、基本的には図3及び図4を用いて説明した第2実施例に係るディスクリートトラックメディア10B及びその製造方法と略同様のものである。
【0065】
しかしながら、第2実施例においては、磁性層12の上部に保護膜13が形成されているのに対し、本実施例ではこの保護膜13を除去した構成としたことを特徴とするものである。よって、本実施例に係るディスクリートトラックメディア10Dは、図7に示すように、軟磁性層11及び磁性層12の上部に直接潤滑剤固定層18及び潤滑剤流動層19が積層して形成された構成とされている。
【0066】
また、ディスクリートトラックメディア10Dの製造方法においても、図8(A),(B)は、図4(A),(B)と同一の製造工程であるが、本実施例では磁性層12に溝17が形成された後、図8(C)に示すように直ちに潤滑剤固定層18用の潤滑剤材料20を配設する(第1の配設工程)。その後、上部から加熱処理を行うことにより潤滑剤材料20を硬化させて潤滑剤固定層18を形成する。この時、潤滑剤固定層18の表面18aは、平坦面となっている。そして、潤滑剤固定層18の上部に潤滑剤流動層19を形成し、これにより図8(D)に示すディスクリートトラックメディア10Dが製造される。
【0067】
本実施例に係るディスクリートトラックメディア10D及びその製造方法は、前記の第3実施例と同様に保護膜13が除去された構成であるため、保護膜13を成膜する工程(成句工程)が不要となり、製造工程の簡単化を図ることができる。更に、保護膜13が不要となることにより部品点数を削減でき、ディスクリートトラックメディア10Dの低コスト化を図ることができる。
【0068】
次に、第5実施例について説明する。
【0069】
図9は本発明の第5実施例である記録媒体30Aを示しており、図10はその製造方法を示している。尚、以下説明する図9乃至16に示す記録媒体はパターンドメディアを例として挙げているため、図9乃至16に示す各実施例の説明では各記録媒体をパターンドメディア30A〜30Dと示し説明するものとする。また、図9及び図10において、図1乃至図8に示した構成と対応する構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図9に示すパターンドメディア30Aも、例えば垂直磁気記録媒体として使用されるものである。このパターンドメディア30Aは、図1に示したディスクリートトラックメディア10Aと同様に、図示しない基板上に軟磁性層11、磁性層12、保護膜13、及び潤滑剤16等が積層された構成とされている。
【0071】
しかしながら、ディスクリートトラックメディア10Aは、高密度化によるクロストークの発生を防止するために磁性層12に溝17を形成していたのに対し、パターンドメディア30Aは非磁性層31に微細な小孔(以下、ナノホール32という)を形成し、このナノホール32内に磁性層12を形成したことを特徴としている。
【0072】
このように、パターンドメディア30Aでは、ナノホール32内に磁性層12を形成(成長)させるため、非磁性層31の上面と磁性層12の上面とを精度よく一致させることは困難であり、よって非磁性層31の上面と磁性層12の上面との間に段差(凹凸)が発生してしまう。
【0073】
一方、本実施例においても、磁性層12及び非磁性層31の上部に磁性層12を保護する保護膜13が形成されている。前記のように保護膜13の厚さは薄いため、保護膜13により段差が埋まることはなく、保護膜13にも非磁性層31の上面と磁性層12の上面との間の段差に起因した段差(凹凸)が形成される。
【0074】
次に、潤滑剤16について説明する。本実施例の潤滑剤16は、第1実施例で示したのと同様に、潤滑剤16固定層14と流動層15とにより構成されている。固定層14は磁性層12側に位置した部分であり、下方より加熱処理等を行うことにより硬化(ゲル状も含む)した部分である。これに対し、流動層15は加熱処理等は行われておらず、よって流動性を有したままの状態となっている。よって、本実施例においても、固定層14と流動層15は連続的かつ一体的な構成とされている。
【0075】
続いて、図10を参照し、上記構成とされたパターンドメディア30Aの製造方法について説明する。尚、図10において、図9に示した構成と同一構成については同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0076】
図10(A)は、図示しない基板上に軟磁性層11及び非磁性層31が積層された状態を示している。この非磁性層31に対しては、図10(B)に示すように、ナノホール32の形成処理が実施される。このナノホール32の形成は、例えば電子線リソグラフィや光リソグラフィ技術を用いて形成される。
【0077】
非磁性層31にナノホール32が形成されると、続いてナノホール32の内部に磁性層12が形成される。図10(C)は、ナノホール32内に磁性層12が形成された状態を示している。この際、非磁性層31の上面と磁性層12の上面とを精度よく一致させることは困難であり、よって非磁性層31の上面と磁性層12の上面との間に段差B1(凹凸)が発生してしまう。
【0078】
ナノホール32内に磁性層12が形成されると、続いて磁性層12及び非磁性層31の上部に保護膜13が成膜される(請求項に記載の成膜工程に相当)。この保護膜13は、例えばスパッタリングにより形成することができる。図10(D)は、保護膜13が形成された状態を示している。また、保護膜13が形成されても前記の段差B1は保護膜13により埋まることはなく、保護膜13にも段差B1に起因した段差B2が形成される(図10(D)に矢印で示す)。
【0079】
上記のように保護膜13が形成されると、続いて潤滑剤16となる潤滑剤材料20が保護膜13の上部に配設される。図10(E)は、保護膜13上に潤滑剤材料20が配設された状態を示している。流動性を有する潤滑剤材料20を配設することにより、潤滑剤材料20は保護膜13上に形成されている段差B2を完全に覆った状態となる(請求項に記載の配設工程に相当)。
【0080】
この際、この段差B2を覆うように潤滑剤材料20を配設するのに特別な配設工程は必要でなく、単に保護膜13上に潤滑剤材料20を配設するだけで、流動性を有した潤滑剤材料20は段差B2を覆うように配設される。また、潤滑剤材料20は流動性を有しているため、段差B2を有した保護膜13上に潤滑剤材料20を配設しても、潤滑剤材料20の表面20aは保護膜13の表面の段差形状を履歴することはなく平坦な面となる。
【0081】
潤滑剤材料20の配設処理が終了すると、軟磁性層11の下面側から潤滑剤材料20に対して加熱処理が実施される。この加熱処理により、熱は軟磁性層11,磁性層12,及び保護膜13を介して潤滑剤材料20に熱伝達される(請硬化工程)。この加熱処理により、潤滑剤材料20の磁性層12に近い所定領域において架橋が生じて硬化し、これにより固定層14が形成される。
【0082】
これに対して潤滑剤材料20の表面側は、加熱による熱が伝達されないため熱硬化は発生せず、よって固定層14の上部には流動性を有した流動層15が自動的に形成される。この際、流動層15の下層となる固定層14の表面14aは平坦面であるため、流動層15の表面15aも平坦な面となる。この際、本実施例においても、固定層14と流動層15は連続的かつ一体的な構成となる。
【0083】
上記した製造工程を実施することにより、図10(F)に示すパターンドメディア30Aが製造される。この本実施例に係るパターンドメディア30Aの製造方法では、非磁性層31と磁性層12との間に段差が形成されても、前記した第1実施例と同様に固定層14(潤滑剤16)の表面は平坦面となる。
【0084】
このため、従来必要とされていたCMP等の研磨処理は不要となり、ディスクリートトラックメディア10Aの製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。また、固定層14の上部には流動性を有した流動層15が存在するため潤滑性を維持することができ、よって磁気ヘッド42とパターンドメディア30Aとの摺動に起因した熱や衝撃による記録層の劣化や破壊を防止することができる。
【0085】
次に、第6実施例について説明する。
【0086】
図11は第6実施例に係るパターンドメディア30Bを示しており、図12はパターンドメディア30Bの製造方法を示している。尚、第6実施例以降の説明で使用する図13乃至図16において、図9及び図10に示した構成と対応する構成については同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0087】
前記した第5実施例に係るパターンドメディア30Aは、潤滑剤材料20の一部に熱印加することにより、潤滑剤16を固定層14と流動層15とが連続的かつ一体的な構成とされていた。これに対して本実施例に係るパターンドメディア30Bは、図11に示すように、保護膜13上にそれぞれ独立して形成された潤滑剤固定層18と潤滑剤流動層19を積層した構成としたことを特徴とするものである。
【0088】
このパターンドメディア30Bを製造するには、図12(A)に示すように基板上に形成されている軟磁性層11上に非磁性層31を形成し、次に図12(B)の示すように非磁性層31にナノホール32を形成し、更にナノホール32の内部に磁性層12を形成する。更に、磁性層12及び非磁性層31上に、図12(D)の示すように保護膜13スパッタリング等により形成する。ここまでの製造工程は、図10(A)〜(D)に示す工程と同一である。
【0089】
続いて本実施例では、先ず潤滑剤固定層18となる潤滑剤材料20(図に現れず)を保護膜13の上部に配設する(請求項に記載の第1の配設工程)。潤滑剤材料20は流動性を有しているため、保護膜13に形成されている段差B2も潤滑剤材料20により覆われた状態となる。また、潤滑剤材料20は流動性を有しているため、段差B2を覆っても潤滑剤材料20の表面は平坦な面となる。
【0090】
続いて、この潤滑剤材料20の上方から加熱処理を行うことにより硬化させ、図12(E)に示すように保護膜13上に潤滑剤固定層18を形成する(硬化工程)。前記のように硬化前の潤滑剤材料20の表面20aが平坦であることにより、熱硬化された潤滑剤固定層18の表面18aも平坦な面となる。
【0091】
上記のように潤滑剤固定層18が形成されると、その上部に更に潤滑剤材料20が配設される(請求項に記載の第2の配設工程に相当する)。潤滑剤材料20に対しては熱硬化処理は実施されないため、よって潤滑剤材料20はそのまま潤滑剤流動層19となる。上記した製造工程を実施することにより、図12(F)に示すパターンドメディア30Bが製造される。
【0092】
本実施例に係るパターンドメディア30Bの製造方法においても、従来必要とされていたCMP等の研磨処理を不要とすることができ、製造工程の簡単化及び低コスト化を図ることができる。また、潤滑剤固定層18の上部には流動性を有した潤滑剤流動層19が存在するため潤滑性を維持することができ、よって磁気ヘッド42とパターンドメディア30Bとの摺動に起因した熱や衝撃による記録層の劣化や破壊を防止することができる。
【0093】
次に、第7実施例について説明する。
【0094】
図13は第7実施例に係るパターンドメディア30Cを示しており、図14はパターンドメディア30Cの製造方法を示している。本実施例は、基本的には図9及び図10を用いて説明した第5実施例に係るパターンドメディア30A及びその製造方法と略同様のものである。
【0095】
しかしながら、第5実施例においては、磁性層12の上部に保護膜13が形成されているのに対し、本実施例ではこの保護膜13を除去した構成としたことを特徴とするものである。よって、本実施例に係るパターンドメディア30Cは、図13に示すように、磁性層12及び非磁性層31の上部に直接潤滑剤16が形成された構成とされている。
【0096】
また、パターンドメディア30Cの製造方法においても、図14(A)〜(C)は、図10(A)〜(C)と同一の製造工程であるが、本実施例ではナノホール32に磁性層12が形成された後、図14(D)に示すように直ちに潤滑剤材料20を配設する(配設工程)。
【0097】
その後、潤滑剤材料20に対して背面側から加熱処理を行うことにより固定層14を形成し、潤滑剤材料20を固定層14と流動層15に分離させ潤滑剤16を形成すること(硬化工程)は、前記した第5実施例と同様である。図14(E)は、本実施例に係る方法により製造されたパターンドメディア30Cを示している。
【0098】
本実施例では保護膜13を除去し、磁性層12及び非磁性層31の上部に直接潤滑剤16を形成した。この構成することにより、保護膜13を成膜する工程(成句工程)が不要となり、製造工程の簡単化を図ることができる。更に、保護膜13が不要となることにより部品点数を削減でき、パターンドメディア30Cの低コスト化を図ることができる。
【0099】
次に、第8実施例について説明する。
【0100】
図15は第8実施例に係るパターンドメディア30Dを示しており、図16はパターンドメディア30Dの製造方法を示している。本実施例は、基本的には図11及び図12を用いて説明した第6実施例に係るパターンドメディア30B及びその製造方法と略同様のものである。
【0101】
しかしながら、第6実施例においては、磁性層12の上部に保護膜13が形成されているのに対し、本実施例ではこの保護膜13を除去した構成としたことを特徴とするものである。よって、本実施例に係るパターンドメディア30Dは、図15に示すように、磁性層12及び非磁性層31の上部に直接潤滑剤固定層18及び潤滑剤流動層19が積層された構成とされている。
【0102】
また、パターンドメディア30Dの製造方法においても、図16(A)〜(C)は、図12(A)〜(C)と同一の製造工程であるが、本実施例ではナノホール32内に磁性層12が形成された後、図16(D)に示すように直ちに潤滑剤固定層18用の潤滑剤材料20を配設する(第1の配設工程)。その後、上部から加熱処理を行うことにより潤滑剤材料20を硬化させて潤滑剤固定層18を形成する。この時、潤滑剤固定層18の表面18aは、平坦面となっている。そして、潤滑剤固定層18の上部に潤滑剤流動層19を形成し、これにより図16(E)に示すパターンドメディア30Dが製造される。
【0103】
本実施例に係るパターンドメディア30D及びその製造方法は、前記の第7実施例と同様に保護膜13が除去された構成であるため、保護膜13を成膜する工程(成句工程)が不要となり、製造工程の簡単化を図ることができる。更に、保護膜13が不要となることにより部品点数を削減でき、パターンドメディア30Dの低コスト化を図ることができる。
【0104】
上記した第1乃至第4実施例で示したディスクリートトラックメディア10A〜10D、及び第5乃至第8実施例で示したパターンドメディア30A〜30Dは、図17に示すような磁気ディスク装置40(記録再生装置)に適用することができる。その場合、磁気ヘッド42と各メディア10A〜10D,30A〜30Dとの摺動性を良好とすることができ、また磁性層12の損傷も防止できるため、信頼性の高い磁気ディスク装置40を実現することができる。
【0105】
尚、上記した各実施例では潤滑剤材料20を硬化させるのに熱を用いた例を示したが、赤外線を用いて硬化させる構成としてもよい。
【0106】
また、第2,4,6.8実施例では、潤滑剤固定層18と潤滑剤流動層19の材料を同一材料としたが、必ずしも同一にする必要はなく、適用される環境や条件に応じて適宜選定することが可能である。
【0107】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に硬化処理が行われた固定層と、前記固定層上に位置しており流動性を有した流動層とが一体的に積層された潤滑剤層とを有することを特徴とする記録媒体。
(付記2)
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に表面が平坦面とされた潤滑剤固定層と、
前記固定層上に積層形成されており流動性を有した潤滑剤流動層とを有することを特徴とする記録媒体。
(付記3)
記録層を隔絶する溝を設けたディスクリートトラックタイプの記録媒体の製造方法において,
前記溝部内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
(付記4)
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする付記3記載の記録媒体の製造方法。
(付記5)
記録層を隔絶する溝を設けたディスクリートトラックタイプの記録媒体の製造方法において,
前記溝部内に配設されると共にその表面が平坦となるよう、流動性のある第1の潤滑剤を配設する第1の配設工程と、
前記第1潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い潤滑剤固定層を形成する硬化工程と、
前記潤滑剤固定層上に、流動性のある第2の潤滑剤を配設し潤滑剤流動層を形成する第2の配設工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
(付記6)
前記第1の配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする付記5記載の記録媒体の製造方法。
(付記7)
非磁性層にナノホールを設けると共に該ナノホールに磁性層を配設した記録層を有するパターンドタイプの記録媒体の製造方法において、
前記ナノホール内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
(付記8)
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする付記7記載の記録媒体の製造方法。
(付記9)
非磁性層にナノホールを設けると共に該ナノホールに磁性層を配設した記録層を有するパターンドタイプの記録媒体の製造方法において、
前記ナノホール内に配設されると共にその表面が平坦となるよう、流動性のある第1の潤滑剤を配設する第1の配設工程と、
前記第1潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い潤滑剤固定層を形成する硬化工程と、
前記潤滑剤固定層上に、流動性のある第2の潤滑剤を配設し潤滑剤流動層を形成する第2の配設工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
(付記10)
前記第1の配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする付記7記載の記録媒体の製造方法。
(付記11)
前記記録層は磁性層であり、該磁性層の下層に軟磁性層が形成されていることを特徴とする付記1または2記載の記録媒体。
(付記12)
前記該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層を形成する際、前記熱または赤外線照射は、背面側から印加或いは照射することを特徴とする付記3,4,7,8のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法。
(付記13)
請求項1または2記載の記録媒体と、該記録媒体に対して記録再処理を行う手段とを有することを特徴とする記録再生装置。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、本発明の第1実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の第4実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の第5実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図10】図10は、本発明の第5実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図11】図11は、本発明の第6実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図12】図12は、本発明の第6実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明の第7実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図14】図14は、本発明の第7実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図15】図15は、本発明の第8実施例である記録媒体の部分断面図である。
【図16】図16は、本発明の第8実施例である記録媒体の製造方法を説明するための図である。
【図17】図17は、本発明に係る記録媒体を搭載した磁気ディスク装置を示す平面図である。
【図18】図18は、第1従来例である記録媒体の部分断面図である。
【図19】図19は、第2従来例である記録媒体の部分断面図である。
【符号の説明】
【0109】
10A〜10D ディスクリートトラックメディア
11 軟磁性層
12 磁性層
13 保護膜
14 固定層
15 流動層
16 潤滑剤
17 溝
18 潤滑剤固定層
19 潤滑剤流動層
30A〜30D パターンドメディア
31 非磁性層
32 ナノホール
40 磁気ディスク装置
42 磁気ヘッド
43 アーム43

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に硬化処理が行われた固定層と、前記固定層上に位置しており流動性を有した流動層とが一体的に積層された潤滑剤層とを有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
ディスクリートトラックタイプまたはパターンドタイプの記録媒体において,
表面に凹凸を有する記録層と、
該記録層上に形成されており、前記凹凸に配設されると共に表面が平坦面とされた潤滑剤固定層と、
前記固定層上に積層形成されており流動性を有した潤滑剤流動層とを有することを特徴とする記録媒体。
【請求項3】
記録層を隔絶する溝を設けたディスクリートトラックタイプの記録媒体の製造方法において,
前記溝部内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする請求項3記載の記録媒体の製造方法。
【請求項5】
非磁性層にナノホールを設けると共に該ナノホールに磁性層を配設した記録層を有するパターンドタイプの記録媒体の製造方法において、
前記ナノホール内にも配設されるよう、流動性のある潤滑剤を配設する配設工程と、
前記潤滑剤に熱または赤外線照射により硬化処理を行い、該潤滑剤の前記記録層に近い側の一部を硬化させて固定層とし、残る表面に近い側を流動層とする硬化工程と
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記配設工程を実施する前に、前記記録層の全面に一様に保護膜を成膜する成膜工程を実施することを特徴とする請求項5記載の記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の記録媒体と、該記録媒体に対して記録再処理を行う手段とを有することを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−171506(P2008−171506A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4555(P2007−4555)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】