説明

記録媒体支持装置及び記録装置

【課題】支持部材の変形を防ぐことができる記録媒体支持装置及び記録装置を提供すること。
【解決手段】付勢部材を支持する付勢部材支持部が、支持部材とは異なる部分に保持されているため、付勢部材による付勢力が支持部材に直接作用するのを回避することができる。このため、支持部材の変形を低減させることができる。加えて、付勢部材支持部が、支持部材と封止基板との間に設けられているため、支持部材に直接付勢部材を支持させる場合に比べて、被覆部材の寸法精度を高くすることができる。このため、被覆部材の密閉を確保するための付勢力を必要以上に大きくする必要が無く、支持部材の変形を低減させることができる。以上のことから、支持部材の変形を低減させることで、記録媒体の搬送精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体支持装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、記録装置としてインクジェット式プリンターが開示されている。このインクジェット式プリンターは、記録媒体としてロール紙が用いている。インクジェットヘッドによる印字領域では、ロール紙の平坦性を保つため、プラテンにロール紙を吸着させる構成となっている。これにより、平坦な状態でロール紙に印字を行うことができるようになっている。
【0003】
このようなプラテンは、ロール紙の支持面が板状の支持部材によって形成されている。この支持部材には、複数の吸引孔が形成されている。プラテンの内部は、当該吸引孔を吸引するため、複数の室が形成されている。したがって、プラテンは、支持部材が中空の室に接する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−211749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持部材が中空の室に接する構成においては、支持部材が力の作用を受けて変形しやすいという問題がある。支持部材が変形すると、ロール紙の平坦性が損なわれるため、ロール紙の搬送精度が低下し、記録の品質が低下してしまう虞がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、支持部材の変形を防ぐことができる記録媒体支持装置及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る記録媒体支持装置は、記録媒体を支持する支持面を有し、前記支持面と当該支持面の裏側の第二面との間を貫通する複数の貫通孔が形成された支持部材と、前記支持部材の前記第二面に設けられ、前記第二面上の空間を複数の前記貫通孔のうち少なくとも1つに接する複数の室に区画する区画部材と、前記支持部材と前記区画部材とで囲まれた複数の前記空気室を封止するように設けられ、複数の前記空気室に接続される複数の接続孔が形成された封止部材と、複数の前記接続孔を介して複数の前記空気室に接続された前記封止部材上の空間を吸引する吸引部と、複数の前記空気室のうち所定の前記空気室に設けられ、前記接続孔と前記封止部材の一部とを覆う被覆部材と、前記接続孔が閉塞されるように前記被覆部材を前記封止部材側へ付勢する付勢部材と、前記接続孔が開くように前記被覆部材を前記封止部材から離れる方向へ押圧可能な押圧部と、所定の前記空気室において前記支持部材と前記封止基板との間に設けられ、前記支持部材とは異なる部分に保持され、前記付勢部材を支持する付勢部材支持部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、付勢部材を支持する付勢部材支持部が、支持部材とは異なる部分に保持されているため、付勢部材による付勢力が支持部材に直接作用するのを回避することができる。このため、支持部材の変形を低減させることができる。加えて、付勢部材支持部が、支持部材と封止基板との間に設けられているため、支持部材に直接付勢部材を支持させる場合に比べて、被覆部材の寸法精度を高くすることができる。このため、被覆部材の密閉を確保するための付勢力を必要以上に大きくする必要が無く、支持部材の変形を低減させることができる。以上のことから、支持部材の変形を低減させることで、記録媒体の搬送精度を高めることができる。
【0009】
上記の記録媒体支持装置は、前記付勢部材支持部は、前記区画部材に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、付勢部材支持部が区画部材に設けられていることとしたので、付勢部材による付勢力が支持部材に直接作用するのを回避することができる。このため、支持部材の変形を低減させることができる。
【0010】
上記の記録媒体支持装置は、前記支持面は、前記記録媒体の寸法に拘らず当該記録媒体を支持する第一支持領域と、前記第一支持領域とは異なる第二支持領域と、を有し、所定の前記空気室は、前記第二支持領域に配置された前記貫通孔に接するように設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、所定の室以外の室については付勢部材を設ける必要が無いため、その分、装置全体に作用する付勢部材の付勢力を減らせることができる。
【0011】
上記の記録媒体支持装置は、前記押圧部は、複数の前記接続孔に対応して配置された複数のカム部材を有し、複数の前記カム部材は、前記支持部材とは異なる部分に回転可能に支持される回転軸に接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、押圧部が複数の接続孔に対応して配置された複数のカム部材を有し、複数のカム部材が支持部材とは異なる部分に回転可能に支持される回転軸に接続されている構成としたので、付勢部材から被覆部及びカム部材を介して受ける回転軸への押圧力が支持部材とは異なる部分に作用することになる。このため、支持部材の変形を低減させることができる。
【0012】
上記の記録媒体支持装置は、前記吸引部によって吸引される前記封止部材上の空間を囲う空間形成部材を更に備え、前記回転軸は、前記空間形成部材に支持されていることを特徴とする。
本発明によれば、付勢部材から被覆部及びカム部材を介して受ける回転軸への押圧力が空間形成部材に作用することになる。このため、支持部材の変形を低減させることができる。
【0013】
上記の記録媒体支持装置は、前記押圧部は、前記回転軸を複数の角度に切り替えて回転させる回転軸駆動部を有し、複数の前記カム部材は、前記被覆部に当接される凸部を有し、前記凸部は、前記カム部材ごとに異なる角度に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、押圧部が回転軸を複数の角度に切り替えて回転させる回転軸駆動部を有し、複数のカム部材が被覆部に当接される凸部有し、凸部がカム部材ごとに異なる角度に設けられている構成であるため、回転軸の角度を切り替えることでそれぞれの接続孔について開閉状態が異なるように制御することができる。
【0014】
上記の記録媒体支持装置は、前記支持部材及び前記封止部材は、金属材料を用いて形成されており、前記区画部材は、樹脂材料を用いて形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、支持部材及び封止部材が金属材料を用いて形成されており、区画部材が樹脂材料を用いて形成されていることとしたので、支持部材、区画部材、封止部材の線膨張係数の差による変形を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る記録装置は、記録媒体を支持する記録媒体支持装置と、前記記録媒体支持装置に支持される記録媒体に対して記録処理を行う記録部とを備え、前記記録媒体支持装置は、上記の記録媒体支持装置であることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、記録媒体を支持する記録媒体支持装置と、記録媒体支持装置に支持される記録媒体に対して記録処理を行う記録部とを備え、記録媒体支持装置が記録媒体の搬送精度を高めることができるものであるため、記録部による記録の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る記録部を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプラテンを示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る支持装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る支持装置の分解斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る本体部材の分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る支持装置の断面図である。
【図8】本発明の実施形態における吸引切替装置のカム機構を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態における吸引切替装置のカム機構を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る支持装置の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面では、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。ここで、水平面内の所定方向をX軸方向(幅方向)、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(搬送方向)、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。本実施形態では、記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターと称する)について例示する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター11を示す概略構成図である。
プリンター11は、ロール状に巻かれたロール紙(ロール体)RPから延出される長尺の用紙(記録媒体)Pに対して、インク(流体)を記録ヘッド31から噴射して画像や文字等を印字する構成となっている。プリンター11は、ロール紙RPから延出された用紙Pを搬送する搬送部(搬送装置)20と、用紙Pに対し印字を行う記録部30と、印字を経た用紙Pを所定サイズに切断する切断部40と、切断後の用紙Psの裏面に印字を行う裏面印字部50と、上記各構成部位の動作を統括的に制御する制御装置CONTと、を有している。
【0020】
プリンター11は、ロール紙RPを収容するケース12と、搬送部20、記録部30、切断部40、裏面印字部50等を収容する本体ケース13と、を備えている。そして、本体ケース13の前側(+Y側)には、印字が施されて切断された用紙Psが排出される排紙トレイ17が設けられている。また、用紙Pの切断によって生ずる切断片Pkを受けて溜める容器(以降、「切屑容器」と称する)15が、本体ケース13の右側面において、表面から少し凹むように面が形成された凹部14内に配設されている。切屑容器15は、本実施形態では本体ケース13から搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に引き抜くことができるようになっており、その直交方向の端面が凹部14において露出するとともに、その端面において切屑容器15を引く抜くための取手16が設けられている。
【0021】
以下、プリンター11に設けられた各構成部位について、プリンター11に備えられた搬送部20として機能する複数のローラー対によって搬送される用紙Pの搬送順に従って説明する。搬送部20は、給紙ローラー対21、搬送ローラー対22,23,24,25、排紙ローラー対26を有する。まず、ロール紙RPから巻き解かれた用紙Pは、給紙ローラー対21によって、記録部30に給紙されるようになっている。記録部30は、インクを噴射する記録ヘッド31と、用紙Pを支持する支持装置(記録媒体支持装置)32と、を有する。
【0022】
記録部30では、ロール紙RPから給送された用紙Pを搬送して、用紙Pの上面(表面)に画像等を印字する。まず搬送ローラー対22によって記録ヘッド31と支持装置32との間に用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pの上面(表面)は記録ヘッド31に対して所定の距離を保って搬送され、このとき、用紙Pの上面に記録ヘッド31からインクが噴射されて印字が行われる。その後、用紙Pは、搬送ローラー対23によって切断部40に搬送される。
【0023】
切断部40は、回転刃などによって構成されるカッター41を機能部品として有し、用紙Pを、印字された画像等に対応する領域毎に切断する。このとき、切断部40では、印字された領域について搬送方向の端部に存在する不要な領域を取り除くように切断が行われるようになっている。このため、図示するように、用紙Pは、切断によって切断片Pkが発生し、発生した切断片Pkは重力方向に落下するようになっている。従って、この落下する切断片Pkを受けて溜めるために、切屑容器15が切断部40よりも下側に配設されている。
【0024】
切断後の用紙Psは、次に裏面に文字を印刷する裏面印字部50に搬送される。裏面印字部50は、インクリボンを用紙Psの下面(裏面)に押し付けてインクドットを形成する所謂インパクトドット方式の印字ユニット51と、用紙Psを印字の際に上側から支持する支持台52と、を有している。裏面印字部50では、搬送される用紙Psを、まず搬送ローラー対24によって印字ユニット51と支持台52との間に用紙Psを送り出す。そして、送り出された用紙Psは、その下面(裏面)に印字ユニット51によってドットが記録されることによって所定の文字が印字され、搬送ローラー対25によって搬送方向に送られる。
【0025】
その後、用紙Psは、例えば、乾燥部(不図示)に搬送され、機能部品としてのヒーターユニット(不図示)などによって乾燥が施されるなどの処理を経て、最後に排紙ローラー対26によって排紙トレイ17に排出されるようになっている。
【0026】
次に、本実施形態の記録部30の構成について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施形態における記録部30を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態における支持装置32の平面図である。
【0027】
図2における符号33は、記録ヘッド31を搭載したキャリッジを示す。本実施形態の記録ヘッド31は、搬送される用紙Pの幅方向(X軸方向)に移動するキャリッジ33に搭載される所謂シリアル型インクジェットヘッドである。なお、図2における符号34は、記録ヘッド31のフラッシング(予備吐出)によるメンテナンスを行うフラッシングボックスである。
【0028】
キャリッジ33は、ガイドロッド35によって幅方向に移動自在に支持されている。キャリッジ33は、プーリー36に張架されたベルト37の駆動により、ガイドロッド35に沿って移動する構成となっている。ベルト37は、キャリッジモーター38により駆動される。また、記録部30には、キャリッジ33の移動経路に沿って、リニアエンコーダ39が設けられている。リニアエンコーダ39は、キャリッジ33の幅方向の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ39からの位置情報に基づいて記録ヘッド31の走査位置を認識し、記録ヘッド31による印字動作等を制御するようになっている。
【0029】
支持装置32は、用紙Pを支持する支持面60aを有するプラテン(支持部材)60を備える。プラテン60は、例えばステンレス等の金属材料や合金などによって形成されている。図2及び図3に示すように、プラテン60の支持面60aには、用紙Pの平面性を保つために複数の吸引孔61が形成されている。また、プラテン60には、所謂フチなし印刷を行うために、支持面60aに開口してインクを受けるインク受部(流体受部)62が複数設けられている。インク受部62は、例えば、インクを吸収するスポンジ、不織布等のインク吸収体を備える。本実施形態の用紙Pの給紙形態は、所謂センター給紙を採用しており、インク受部62は、プラテン60のセンター位置に対して対称に配置されている。インク受部62は、用紙Pの規格(A4、B4、A3、B3等)に応じた紙幅に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0030】
複数の吸引孔61で用紙Pを吸引する吸引領域Aは、幅方向(X軸方向)に延在している。吸引孔61を介した吸引は、図2に示すファン63により行われる構成となっている。ファン63と、支持装置32の底部とは、ダクト64を介して接続されている。本実施形態の記録部30は、印字中のインクの飛行曲りを抑制するために、幅方向において、用紙Pから外れた吸引領域Aにおける吸引孔61による吸引を停止させる吸引切替装置90を有する。
【0031】
次に、本実施形態の吸引切替装置90を含めた支持装置32の構成について詳しく説明する。
図4は、本発明の実施形態における支持装置32の分解斜視図である。図5は、本発明の実施形態における支持装置32の分解斜視図である。図6は、本発明の実施形態における本体部材70の分解斜視図である。図7は、図3におけるD−D断面に沿った構成を示す図である。図8は、本発明の実施形態における吸引切替装置90のカム機構91を示す斜視図である。
【0032】
図4及び図7に示すように、支持装置32は、プラテン60と、本体部材(区画部材)70と、底部フレーム(空間形成部材)80と、が組み合わされて構成されている。本体部材70は、例えばプラスチックなどの樹脂材料を用いて形成されている。本体部材70には、吸引孔61に接続される空気室71と、インク受部62に連通するインク受室72とが形成されている。
【0033】
空気室71は、幅方向の位置に応じて複数に区画された第一室71a〜第六室71fを有している。第一室71a〜第六室71fは、インク受室72により挟まれた領域毎に分割されている。X方向中央の空気室71が第一室71aである。第二室71bは、第一室71aに対してX方向の端部側にそれぞれ隣り合う位置に設けられている。以下、X方向の端部側に向けて、第三室71c、第四室71d、第五室71e及び第六室71fがこの順で並んで配置されている。
【0034】
プラテン60と本体部材70の空気室71との位置関係については、図7に示すように、吸引孔61aは第一室71aに連通し、吸引孔61bは第二室71bに連通し、吸引孔61cは第三室71cに連通し、吸引孔61dは第四室71dに連通し、吸引孔61eは第五室71eに連通し、吸引孔61fは第六室71fに連通している。
【0035】
図5及び図7に示すように、第一室71a以外の空気室71の底部は、フレーム73及び弁体74によって閉塞されている。このフレーム73は、例えばプラテン60と同様、ステンレス等の金属材料や合金材料を用いて形成されている。このため、Z方向に順に配置されるプラテン60、本体部材70及びフレーム73の構成材料が、金属材料−樹脂材料−金属材料、の順となる。このため、例えば線膨張係数が変化した場合であっても、プラテン60、本体部材70及びフレーム73のそれぞれの変形が抑制される構成となっている。
【0036】
第一室71aは、用紙Pの最小紙幅に対応する領域に設けられているために常時開放され、この第一室71aに連通する吸引孔61は、用紙Pの紙幅によらずに吸引を行うようになっている。図3に示すように、第一室71aは、プラテン60の第一領域AR1に対応する位置に配置されている。したがって、プラテン60の第一支持領域AR1は、用紙Pの最小紙幅に対応する領域であり、用紙Pの紙幅によらず吸引が行われる領域となる。なお第一支持領域AR1以外の領域は、用紙Pの紙幅によって吸引を行ったり行わなかったりする第二支持領域AR2である。第二室71b〜第六室71fは、それぞれ第二支持領域AR2に配置された吸引孔61b〜61fに接続されている。
【0037】
図6及び図7に示すように、弁体74は、付勢部材75によってフレーム73側に付勢されている。弁体74は、搬送方向に延びる長方形状のベース部74aと、ベース部74aから下方に突出する突出部74bとを有する。突出部74bは、フレーム73に形成された接続孔76に挿入可能な大きさを有する。付勢部材75のうちフレーム73側端部は、弁体74のベース部74aに当接されている。付勢部材75のうちプラテン60側端部は、付勢部材支持部SPによって支持されている。
【0038】
図7に示すように、付勢部材支持部SPは、本体部材70に設けられている。例えば、本体部材70の一部が第二室71b〜第六室71fに突出して設けられている。第二室71b及び第三室71cに設けられる付勢部材支持部SPは、例えば図中プラテン60側からフレーム73側(−Z方向)に突出するように形成されている。第四室71d〜第六室71fに設けられる付勢部材支持部SPは、例えば図中紙面の奥行き方向の奥側から手前側(−Y方向)に突出するように設けられている。
【0039】
付勢部材支持部SPは、付勢部材75の支持位置がプラテン60とフレーム73との間に配置されるように設けられている。付勢部材支持部SPは、付勢部材75のプラテン60側端部に当接される当接部SPaと、当該当接部SPaからフレーム73側に突出して設けられ付勢部材75に係止される係止部SPbとを有している。
【0040】
付勢部材支持部SPは、プラテン60とは異なる部分に保持されているため、付勢部材75による付勢力がプラテン60に直接作用するのを回避することができる構成となっている。また、付勢部材支持部SPは、Z方向においてプラテン60とフレーム73との間に設けられているため、フレーム73側からプラテン60に到達する途中の位置で付勢部材75を支持することができる。この場合、付勢部材75をプラテン60に支持させる構成に比べて、弁体74の寸法精度を高くすることが可能となるため、弁体74の密閉を確保するための付勢力を必要以上に大きくする必要が無い。このように、本体部材70やプラテン60、フレーム73など周囲の部材の変形を低減させることができる構成となっている。
【0041】
図4及び図7に示すように、底部フレーム80は、本体部材70の底部に連結されており、当該本体部材70の内部を封止するように設けられている。底部フレーム80の中央部には、ダクト64(図2参照)が接続される開口部81が設けられている。
【0042】
底部フレーム80には、弁体74を選択的に持ち上げるカム機構91の回転軸SFが支持されている。このように、回転軸SFがプラテン60とは異なる部分に支持されているため、プラテン60の変形を抑制できる構成となっている。カム機構91は、幅方向に延びる軸周りに回転自在に支持されており、各弁体74に対応する位置に、各弁体74に対応する形状のカム92を備える構成となっている。
【0043】
カム機構91は、第二室71bの弁体74に対応するカム92bと、第三室71cの弁体74に対応するカム92cと、第四室71dの弁体74に対応するカム92dと、第五室71eの弁体74に対応するカム92eと、第六室71fの弁体74に対応するカム92fと、を有する。カム92b〜カム92fは、回転軸SFに取り付けられている。
【0044】
図8(a)及び図8(b)に示すように、カム92の形状は、幅方向における位置に応じて異なる形状を有している。カム92は、弁体74の突出部74bと当接可能な径を有する凸部93を有しており、この凸部93の周方向に占める割合が、カム92b〜92fで異なっている。カム92bにおける凸部93の割合が最も多く、次に、カム92c〜92fの順で小さくなっている。
【0045】
具体的に、カム機構91を軸周りに回転させると、カム92b〜92fの全てが弁体74と当接しない状態と、カム92bのみが弁体74を持ち上げ第二室71bを開放する状態と、カム92b,92cが弁体74を持ち上げ第二室71b,72cを開放する状態と、カム92b〜92dが弁体74を持ち上げ第二室71b〜第四室71dを開放する状態と、カム92b〜92eが弁体74を持ち上げ第二室71b〜第五質71eを開放する状態と、カム92b〜92fの全てが弁体74を持ち上げ第二室71b〜第六室71fの全てを開放する状態と、に切り替えることが可能となっている。
【0046】
このように、凸部93がカム92b〜92fごとに異なる角度に設けられている構成であるため、回転軸SFの角度を切り替えることで、それぞれの接続孔76について開閉状態が異なるように制御することができる。
【0047】
上記構成のカム機構91は、ギア機構94を介して接続されるモーター95(図2参照)によって回転駆動する構成となっている。制御装置CONTは、セットされた用紙Pの紙幅情報に基づいてモーター95を駆動させ、カム機構91の回転角度制御を行う構成となっている。
【0048】
例えば、第二室71bに設けられた弁体74の開閉を切り替える場合を例に挙げて説明する。図9(a)及び図9(b)は、図3におけるE−E断面に沿った構成を示す図である。
図3に示す紙幅の用紙Pがセットされた場合は、図9(a)に示す状態からカム機構91を回転させる。この動作により、図9(b)に示すように、カム92bが弁体74を持ち上げ第二室71bを開放する状態となる。そうすると、幅方向において、用紙Pから外れた吸引領域Aにおける吸引孔61bについては吸引された状態となり、吸引孔61c〜61fについては吸引が停止された状態となる。勿論、図示を省略した第三室71c〜第六室71fに設けられた各弁体74を切り替える場合においても、同様の説明が可能である。
【0049】
次に、上記構成のプリンター11の記録部30における印字動作について説明する。
先ず、セットされた用紙Pの紙幅に基づいて、幅方向において、用紙Pから外れた吸引領域Aにおける吸引孔61による吸引を停止させる。具体的には、制御装置CONTが、吸引切替装置90を駆動させることで行う。図3に示す紙幅の用紙Pがセットされた場合、制御装置CONTは、セットされた用紙Pの紙幅情報に基づいてモーター95を駆動させ、カム機構91の回転角度を制御し、カム92bのみが弁体74を持ち上げ第二室71bを開放する状態とさせる。そうすると、ファン63の駆動によって、常時開放されている第一室71aに連通する吸引孔61a及び開放された第二室71bに連通する吸引孔61bからの吸引が開始される。一方、第三室71c〜71fは、弁体74によって閉塞された状態となるので、幅方向において、用紙Pから外れた吸引領域Aにおける吸引孔61c〜61fによる吸引を停止させることができる。
【0050】
次に、搬送部20によって、用紙Pをプラテン60の支持面60aに沿ってY軸方向に搬送する。用紙Pの先端部が、吸引領域Aに進入すると、吸引孔61a,61bによる吸引力が作用する。吸引領域Aにおいては、搬送方向に沿う各列で、吸引孔61a,61bが同一の形状、且つ、同一のピッチで形成されているので、用紙Pが搬送されるに従って作用する吸引力を一定とし、その変動を抑制することができる。このため、用紙Pの搬送精度を高めることができる。
また、インク受部62に挟まれた吸引孔61bの形状は、搬送方向に延びる長孔形状となっているので、幅がとれない狭い領域においても用紙Pの吸引を行うことができる。
【0051】
そして、図3に示すように、用紙Pの搬送方向の先端部が、印字領域Bを超えて、支持面60aにおいて搬送方向の最下流の位置に形成された吸引孔61を覆う位置に達した時に、制御装置CONTは、記録ヘッド31の印字を実行させる。本実施形態では、吸引領域Aが、印字領域Bに対して搬送方向下流側に延在しているため、用紙Pの先端部が浮く部位を印字領域Bから外すことができる。また、この時、用紙Pによって、吸引孔61a,61bが全て閉塞されているので、用紙Pの周辺に不要な空気の流れが形成されなくなる。したがって、記録ヘッド31は、インクの飛行曲りを生じさせることなく、平面性が確保された用紙Pに対して印字を行うことができる。これにより、用紙Pの表面に対し、高品質の画像等を形成することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、付勢部材支持部SPがプラテン60とは異なる部分に保持されているため、付勢部材75による付勢力がプラテン60に直接作用するのを回避することができる。また、付勢部材支持部SPは、Z方向においてプラテン60とフレーム73との間に設けられているため、フレーム73側からプラテン60に到達する途中の位置で付勢部材75を支持することができる。この場合、付勢部材75をプラテン60に支持させる構成に比べて、弁体74の寸法精度を高くすることが可能となるため、弁体74の密閉を確保するための付勢力を必要以上に大きくする必要が無く、プラテン60の変形を低減させることができる。以上のことから、プラテン60の変形を低減させることで、用紙Pの搬送精度を高めることができる。
【0053】
また、用紙Pを支持する支持装置32と、支持装置32に支持される用紙Pに対して記録処理を行う記録部30とを備え、支持装置32が用紙Pの搬送精度を高めることができるものであるため、記録部30による記録の品質を向上させることができる。
【0054】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
図10は、底部フレーム80と本体部材70とを固定する固定部材の構成を示す図である。図10に示すように、固定部材として、段付きネジSCが用いられる構成としても構わない。段付きネジSCは、ヘッドSChと、当該ヘッドSChに接続された第一部分SCaと、当該第一部分SCaに接続された第二部分SCbとを有している。段付きネジSCは、第二部分SCbの径が第一部分SCaの径に比べて小さくなっている。つまり、ヘッドSChから先端に至るに連れて段階的に細くなるように形成されている。
【0056】
一方、底部フレーム80及び本体部材70についても、当該段付きネジSCに対応する構成となっている。すなわち、底部フレーム80に形成されたネジ孔80Pは、本体部材70に形成されたネジ孔70Pよりも径が大きくなっている。このネジ孔80P及びネジ孔70Pに対して段付きネジSCを挿入すると、図10に示すように、底部フレーム80のヘッドSCh対応面80aと段付きネジSCのヘッドSChとの間に隙間が形成されるようになっている。このような段付きネジSCを用いることにより、例えば底部フレーム80が樹脂材料で形成され、熱によって膨張したり収縮したりする場合であっても、前述のZ方向に順に配置される金属材料のプラテン60、樹脂材料の本体部材70及び金属材料のフレーム73の構成によるプラテン60の変形を抑制する効果を維持することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、記録装置の一例としてインクを噴射するインクジェット式のプリンター11を採用したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0058】
また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0059】
また、記録装置の具体例としては、上記実施形態で説明したような用紙がロール状に巻かれたロール紙を収容体(ケース12)に備えた装置に限られない。例えば、可撓性を有する基板や金属板、あるいはプラスチックシートや布など、長尺状の記録媒体がロール状に巻かれているものを収容体に備えた装置であれば、いずれも記録装置として採用することができる。さらに、収容体に備えられた長尺状の記録媒体は、例えば葛折状になっているなどのように必ずしもロール状に巻かれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
P…用紙 CONT…制御装置 SP…付勢部材支持部 SPa…当接部 SPb…係止部 SF…回転軸 AR1…第一領域 AR2…第二領域 11…プリンター 32…支持装置 60…プラテン 60a…支持面 61(61a〜61f)…吸引孔 70…本体部材 71…空気室 71a…第一室 71b…第二室 71c…第三室 71d…第四室 71e…第五室 71f…第六室 73…フレーム 74…弁体 74a…ベース部 74b…突出部 75…付勢部材 76…接続孔 80…底部フレーム 90…吸引切替装置 91…カム機構 92(92b〜92f)…カム 93…凸部 94…ギア機構 95…モーター 30…記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持面を有し、前記支持面と当該支持面の裏側の第二面との間を貫通する複数の貫通孔が形成された支持部材と、
前記支持部材の前記第二面に設けられ、前記第二面上の空間を複数の前記貫通孔のうち少なくとも1つに接する複数の空気室に区画する区画部材と、
前記支持部材と前記区画部材とで囲まれた複数の前記空気室を封止するように設けられ、複数の前記空気室に接続される複数の接続孔が形成された封止部材と、
複数の前記接続孔を介して複数の前記空気室に接続された前記封止部材上の空間を吸引する吸引部と、
複数の前記空気室のうち所定の前記空気室に設けられ、前記接続孔と前記封止部材の一部とを覆う被覆部材と、
前記接続孔が閉塞されるように前記被覆部材を前記封止部材側へ付勢する付勢部材と、
前記接続孔が開くように前記被覆部材を前記封止部材から離れる方向へ押圧可能な押圧部と、
所定の前記空気室において前記支持部材と前記封止基板との間に設けられ、前記支持部材とは異なる部分に保持され、前記付勢部材を支持する付勢部材支持部と
を備える記録媒体支持装置。
【請求項2】
前記付勢部材支持部は、前記区画部材に設けられている
請求項1に記載の記録媒体支持装置。
【請求項3】
前記支持面は、前記記録媒体の寸法に拘らず当該記録媒体を支持する第一支持領域と、前記第一支持領域とは異なる第二支持領域と、を有し、
所定の前記空気室は、前記第二支持領域に配置された前記貫通孔に接するように設けられている
請求項1又は請求項2に記載の記録媒体支持装置。
【請求項4】
前記押圧部は、複数の前記接続孔に対応して配置された複数のカム部材を有し、
複数の前記カム部材は、前記支持部材とは異なる部分に回転可能に支持される回転軸に接続されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の記録媒体支持装置。
【請求項5】
前記吸引部によって吸引される前記封止部材上の空間を囲う空間形成部材を更に備え、
前記回転軸は、前記空間形成部材に支持されている
請求項4に記載の記録媒体支持装置。
【請求項6】
前記押圧部は、前記回転軸を複数の角度に切り替えて回転させる回転軸駆動部を有し、
複数の前記カム部材は、前記被覆部に当接される凸部を有し、
前記凸部は、前記カム部材ごとに異なる角度に設けられている
請求項5に記載の記録媒体支持装置。
【請求項7】
前記支持部材及び前記封止部材は、金属材料を用いて形成されており、
前記区画部材は、樹脂材料を用いて形成されている
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の記録媒体支持装置。
【請求項8】
記録媒体を支持する記録媒体支持装置と、
前記記録媒体支持装置に支持される記録媒体に対して記録処理を行う記録部と
を備え、
前記記録媒体支持装置は、請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の記録媒体支持装置である
記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61813(P2012−61813A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209626(P2010−209626)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】