説明

記録媒体

【課題】表面に表示されるべき文字の視認が妨げられることなく、且つ偽造防止のための文字を追加することなく、偽造防止が図られた記録媒体を提供する。
【解決手段】カード番号中の特定位置にある数字「4」の輪郭部21は、赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで黒く印刷され、内側部22は赤外線および可視光を反射するインキで黒く印刷されている。一方、特定位置以外の位置にある数字「1」は、赤外線を吸収するが可視光を反射するインキのみで黒く印刷されている。特定の数字「4」の位置は、カード番号から算出されるチェックディジットの値や、磁気ストライプに記録されている情報から算出された値から決められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に文字が表示される記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、株券等の印刷物が複写機によって偽造されるのを防止するために、その表面に特殊インクで文字を印刷すること、およびホログラムを貼付することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2には、商品券に赤外線を吸収するインキでOCR番号とこれから生成されたチェックディジットとを印刷し、更に赤外線を吸収しないインキでダミー番号をOCR番号の横に印刷し、赤外線センサで読み取り可能なOCR番号およびチェックディジットによってチェックディジットの有効性を調べ、商品券の真偽を判別することが示されている。このように、視認可能なダミー番号を印刷することによりチェックディジットの生成方法を分かり難くし、偽造の防止を図っている。
【0004】
特許文献3には、株券等に印刷される文字を上下または左右に分割し、一方を赤外線を吸収するが可視光を吸収しないインキで印刷し、他方を赤外線および可視光を吸収するインキで印刷し、さらに赤外線を吸収しないが可視光を吸収するインキでダミーパターンを当該文字の上に重畳して印刷することが示されている。このようにすることで、赤外線センサで検出されるべき文字が視認不可能となり、株券等の偽造が防止される。
【0005】
特許文献4には、株券等にバーコード等の自動読み取り可能なマークを印刷する際に、表面が赤外線を反射する基材上に、可視光を吸収するが赤外線を吸収しない可視光吸収インキ層と、可視光を吸収しないが赤外線を吸収する赤外線吸収インキ層とを近接あるいは重畳して設けることが示されている。このようにすることで、赤外線吸収インキで印刷された部分のみの複写が防止されると共に、赤外線スコープによって赤外線吸収インキで印刷された部分が検出される。
【0006】
【特許文献1】特開2001−207091号公報(請求項1、請求項6、段落0007)
【特許文献2】特開2000−318360号公報(段落0010〜段落0017、図2(c)、(d))
【特許文献3】特開平7−068979号公報(段落0015〜段落0019)
【特許文献4】特開平6−297889号公報(段落0002、段落0016〜段落0019、段落0034〜段落0036)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特殊インキやホログラムを用いる方法では記録媒体のコストが高くなるという問題がある。また、ホログラムは磁気カード等に予め貼付されるので、磁気カードが発行前に盗まれると大量の偽造カードが出回る恐れがあるという問題もある。特許文献2に示されるものにおいては、ダミー番号を余分に印刷しなければならない。このため、小サイズの切符や磁気カードではダミー番号の印刷スペースを取ることができないという問題が生じる。特許文献3に示されるものにおいては、偽造を防止するために各文字を視認することができないようにしているので、各文字の情報提供機能が失われるという問題がある。また、3種類のインキを使用しているために印刷工程が増加し、印刷のスループットが低下するという問題もある。特許文献4に示されるものにおいては、目視される形状と赤外線スコープで検出される形状とに違いがあるので、この印刷方法をバーコードではなく文字に適用する場合には、文字を視認することができず、各文字の情報提供機能が失われるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、表面に表示されるべき文字の視認が妨げられることなく、且つ偽造防止のための文字を追加することなく、偽造防止が図られた記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の記録媒体は、情報を電磁的方法で記録し、その表面に複数の文字が表示された記録媒体であって、複数の文字は整列した一連の文字からなり、少なくとも1つの特定の文字は、目視可能であって、第1部分と第2部分とからなる。そして、第1部分と第2部分の一方は、赤外線あるいは紫外線を吸収し、第1部分と第2部分の他方は、赤外線あるいは紫外線を反射する。また、一連の文字中の特定の文字の位置は、一連の文字の値または電磁的方法で記録された情報から決められる。
【0010】
ここで、「電磁的方法」とは、電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によって認識することができない方法をいう。また、本発明でいう「文字」とは、アルファベットや仮名、漢字等の狭義の文字だけを指すのではなく、数字、記号、図形等も含む広義の文字を意味する。
【0011】
このようにすることで、赤外線あるいは紫外線の領域に反応しない人間の眼やOA用スキャナは、第1部分と第2部分とを識別することができない。これにより、電磁的方法で記録された情報を盗み取って記録媒体が複製された場合でも、第1部分と第2部分とを複製することができないので、記録媒体の偽造が防止される。また、赤外線あるいは紫外線センサを用いれば、本発明の記録媒体と、全体が赤外線あるいは紫外線を吸収する文字のみが表示された記録媒体または全体が赤外線あるいは紫外線を反射する文字のみが表示された記録媒体と、を判別することができるので、記録媒体の偽造を検出することができる。また、偽造防止のために追加的な偽造検出用の文字を表示する必要がないので、小サイズの記録媒体(例えば、切符や磁気カード)にも適用することができる。また、上記の特定の文字は全体が目視可能であるので、記録媒体に表示された複数の文字によって使用者に情報(例えば、記録媒体のカード番号)を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明では、特定の文字の位置が分からなければ偽造することができないので、偽造が一層困難となる。また、当該文字の位置を一連の文字の値または電磁的方法で記録された情報から求められるチェックディジットの値に相当する位置とすれば、記録媒体の複数の文字の表示領域にチェックディジットを表示する必要がなくなり、文字の表示領域のスペース効率を向上させることができる。
【0013】
本発明においては、第1部分と第2部分の一方は、赤外線あるいは紫外線を吸収するが可視光を反射するインキで印刷され、第1部分と第2部分の他方は、赤外線あるいは紫外線、および可視光を反射するインキで印刷されていてもよい。このようにすることで、普通に入手可能な安価なインキで印刷をすることができ、記録媒体のコストアップが防止される。
【0014】
また、本発明においては、第1部分が文字全体の輪郭部であり、第2部分が輪郭部の内側の内側部であって、第1部分と第2部分とは顔料インキと染料インキとで塗り分けられていてもよい。このようにすることで、第1および第2部分は文字を容易に判別することができる形状となり、特別に複雑なパターン認識技術を用いなくても、赤外線あるいは紫外線センサによって検出された文字の印刷状態(印刷状態とは、第1部分と第2部分の一方が赤外線を吸収するインキで印刷されているか否か、および第1部分と第2部分の他方が赤外線あるいは紫外線を反射するインキで印刷されているか否かである)を容易に判別でき、確実に偽造を検出することができる。また、市販のプリンタで使用される顔料インキと染料インキとを使用するので、高価な特製の印刷装置を用いなくとも記録媒体に印刷を行うことができる。
【0015】
さらに、本発明においては、第1部分と第2部分とは同色であってもよい。このようにすることで、第1部分と第2部分とが1つの文字中に存在することが視覚的には認識されないので、偽造防止の実効性が高まる。特に、輪郭部または内側部の一方の線幅を他方の線幅に比較して十分に狭くしたときには、視覚的には2種類のインキで印刷されていることが殆ど識別できないので、偽造が更に困難となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表面に表示されるべき文字の視認が妨げられることなく、且つ偽造防止のための文字を追加することなく、記録媒体の偽造を防止することができ、また偽造の検出も確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る記録媒体の一例である磁気カード1の平面図である。紙製、プラスチック製等の基材11の表側の表面には、磁気カード1の名称13および一連の数字からなるカード番号12が印刷されている。また、裏側には磁気ストライプ14が設けられており、そこにカード番号等の情報が磁気的方法で記録されている。尚、基材11は、紙製、プラスチック製等であるので特別な表面処理をしない限り赤外線を殆ど吸収しない。
【0018】
図2を参照して、本発明における偽造検出の原理について説明する。図2(a)はカード番号12の内の1つの数字「4」の印刷態様を示す図である。ここで、数字全体は輪郭部21と輪郭部21の内側の内側部22とからなり、21Aは輪郭部21の幅、23は数字の背景である。この輪郭部21は赤外線を吸収するが可視光を吸収しないインキ(例えば、黒の顔料インキ)で印刷されている。また、内側部22は赤外線および可視光を吸収しないインキで(例えば、シアン・マゼンダ・イエロー(C・M・Y)の3色の染料インキの混色によって)黒く印刷されている。従って、数字「4」は全体が目視可能となっている。この図では、輪郭部21と内側部22とを識別できるように内側部22を斜線で図示しているが、実際には輪郭部21と内側部22とは共に黒色で人間の眼には区別がつかない。
【0019】
輪郭部21のインキおよび内側部22のインキは共に可視光を吸収しないことから、磁気カード読み取り装置5の可視光センサ51(図7)で検出される画像は図2(b1)に示されるようになる。これは人間の眼で視認される形状と同じである。また、輪郭部21のインキは赤外線を吸収し、内側部22のインキは赤外線を吸収しないことから、赤外線センサ52(図7)で検出される画像は図2(b2)に示されるようになる。図の黒線の部分が輪郭部21に相当する。
【0020】
ここで、背景23、輪郭部21および内側部22の赤外線の吸収の度合いについて説明する。輪郭部21の赤外線の吸収の度合いは、背景23および内側部22の赤外線の吸収の度合いに比較して、図2(b2)に示される画像が認識される程度に高いことが必要である。上記の基材11、顔料インキおよび染料インキはこの条件を満たす。一方、背景23および内側部22の赤外線の吸収の度合いは異なるので、赤外線センサ52で検出された画像に対して、背景23と内側部22との画像が第1の値に、輪郭部21の画像が第2の値になるように2値化処理が行われる。以下では、説明の都合上「赤外線を(殆ど)吸収しない」を「赤外線を反射する」と、「可視光を吸収しない」を「可視光を反射する」と表現することにする。
【0021】
次に、数字の認識および偽造の検出について説明する。数字の認識は、可視光センサ51によって検出された画像(図2(b1))または赤外線センサ52によって検出された画像(図2(b2))をパターン認識することによって行われる。次に、可視光センサ51によって検出された画像および赤外線センサ52によって検出された画像に対してエッジ化処理を施す。これにより、それぞれ図2(c1)、(c2)に示される画像が得られる。このエッジ化処理は、エッジ24の幅24Aが輪郭部21の幅21Aと等しくなるように行われる。輪郭部21の幅21Aは、後述の磁気カード読み取り装置5の制御部41(図7)のメモリーに記憶されている。
【0022】
次に、可視光センサ51によって検出された画像(図2(b1))から当該画像に対してエッジ化処理された画像(図2(c1))を減算する。これによりエッジ24の部分が消失した図2(d1)に示される画像(可視光減算画像)が得られる。図の破線はもとの数字全体の形状を示す。次に、赤外線センサ52によって検出された画像(図2(b2))から当該画像に対してエッジ化処理された画像(図2(c2))を減算する。これによりエッジ24の部分が消失した図2(d2)に示される画像(赤外線減算画像)が得られる。この赤外線減算画像は空の(何もない)画像であり、図の破線はもとの数字全体の形状を示す。
【0023】
尚、可視光センサ51および赤外線センサ52で検出された画像のデータは後述の制御部41のメモリーに記憶されており、上述の画像のエッジ化処理および減算処理はメモリーに記憶された画像のデータに対して行われる。
【0024】
ここで、図2(a)の数字「4」が赤外線を吸収するインキのみで印刷されている場合には、赤外線センサ52で検出される画像データは図2(b1)のようになり、図2(b2)、(d2)の画像が得られない。また、赤外線を反射するインキのみで印刷されている場合には、赤外線センサ52では図2(b1)の画像も図2(b2)の画像も得られない。そして、所望の画像を得ることができない場合には、当該磁気カード1が偽造カードであると判断される。
【0025】
上記の方法では、可視光センサ51および赤外線センサ52で得られた画像および当該画像に対して演算処理を施すことによって得られた画像を用い、輪郭部21が赤外線を吸収し、内側部22が赤外線を反射することを認識し、これによって偽造の検出を行う。
【0026】
また、上記の方法に代えて、赤外線センサ52で検出した画像(図2(b2))をパターン認識し、当該画像が白抜きの「4」であること(輪郭部21が赤外線を吸収し、内側部22が赤外線を反射すること)を認識し、これによって偽造の検出を行うようにしてもよい。
【0027】
図3は本発明の第1の実施形態を示す図である。図3(a)は、カード番号12の内の2つの数字の印刷態様を示す図である。カード番号12中の特定位置にある数字「4」の印刷態様は図2と同じであり、輪郭部21は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで黒く印刷され、内側部22は赤外線および可視光を反射するインキで黒く印刷されている。ここでも、説明の便宜上、内側部22を斜線で図示しているが、実際には輪郭部21と内側部22とは共に黒色で人間の眼には区別がつかない。特定位置以外の位置にある数字(ここでは、「1」だけを示す)は、赤外線を吸収するが可視光を反射するインキのみで黒く印刷されている。
【0028】
図3(b1)、(b2)は、それぞれ当該数字を可視光センサ51で検出した画像および赤外線センサ52で検出した画像を示す。図3(c1)、(c2)は、それぞれ図3(b1)、(b2)の画像に対して図2の場合と同様なエッジ化処理を施したときに得られる画像を示す。図3(d1)、(d2)は、それぞれ図3(b1)の画像から図3(c1)の画像を減算して得られる画像(可視光減算画像)および図3(b2)の画像から図3(c2)の画像を減算して得られる画像(赤外線減算画像)を示す。
【0029】
上記の特定位置とは、例えば、9桁のカード番号12から公知のアルゴリズムで算出されるチェックディジットの値に相当する位置である。例えば、チェックディジットの値が3である場合は、カード番号12の先頭の位置が0であるので、数字4の位置が特定位置になる。特定位置は1つに限られるものではなく、2桁のチェックディジットを生成するアルゴリズムを用いて、2つの位置を特定位置とするようにしてもよい。また、特定位置は、カード番号12に関係なく一定の位置であってもよいし、磁気ストライプ14に記録されている情報から算出された値に相当する位置であってもよい。また、カード番号12にアルファベット等が含まれる場合には、それらのキャラクターコードを使用して特定位置が決められる。
【0030】
次に、カード番号12の印刷が偽造されたものであるかを判断する方法について説明する。まず、可視光センサ51で得られたカード番号12の画像(その一部が図3(b1)に示される)の数字から特定の位置を算出する。この算出方法は、後述の制御部41のメモリーに記憶されている。次に、特定位置以外の数字(ここでは「1」)については、赤外線センサ52で得られた図3(b2)の画像の示す数字と図3(d2)の赤外線減算画像の示す数字が同じであれば、当該位置の数字は偽造されたものではないと判断する。特定位置の数字(ここでは「4」)については、図2と同様にして判断される。
【0031】
上記の方法により、偽造を検出できる理由について説明する。例えば、カード番号12の全ての数字が赤外線を反射するインキのみで印刷されている場合は、図3(b2)の画像が得られない。また、カード番号12の全ての数字が赤外線を吸収するインキのみで印刷されている場合は、図3(b2)において「4」の画像が白抜きとならないので、図3(d2)の「4」の空の画像が得られない。
【0032】
上記の可視光センサ51および赤外線センサ52を用いて偽造の判断を行う方法に代えて、赤外線センサ52で検出した画像(図3(b2))をパターン認識し、その結果から特定位置を算出し、特定位置の数字の画像が白抜きの数字であり、且つ特定位置以外の数字の画像が白抜きではない数字であるとき以外のときに、当該磁気カード1が偽造カードであると判断するようにしてもよい。
【0033】
尚、特定位置の数字以外の数字の印刷に使用される1種類のインキは以下のようになる。可視光センサ51および赤外線センサ52によって偽造を検出する場合には、可視光を反射するインキであれば赤外線を吸収するインキまたは反射するインキのいずれでもよい。赤外線センサ52のみによって偽造を検出する場合には、赤外線を吸収するインキである。
【0034】
図4は、カード番号12を印刷して磁気カード1を発行する磁気カード発行装置3の概略機構を示す図であり、図5はその電気的構成を示す図である。これらの図を参照して磁気カード発行装置3について説明する。磁気カード発行装置3の筐体31の内部にはカード供給台37が設けられており、その上にカード番号12の印刷されていない複数枚の磁気カード1が戴置(収納)されている。カード供給台37は、不図示の機構を介してカード供給台昇降用モータ40に連結されており、その回転によって昇降する。カード供給台37が上昇して、カード検出センサ36(例えば、リミットスイッチ)が磁気カード1を検出すると、ローラ33が回転し、その回転によって磁気カード1はプリンタ35のカード通路35B内に進入する。そして、磁気カード1がカード通路35Bを通過する際にプリンタ35の印字ヘッド35Aが磁気カード1の表側にカード番号12を印刷する。尚、ローラ33はカード搬送用モータ39によって駆動され、ローラ33が正転または逆転することによって磁気カード1をF方向またはB方向に搬送する。
【0035】
この印刷された磁気カード1はローラ33の回転によって更にF方向に進み、磁気ヘッド34によって磁気ストライプ14に所定の情報が記録される。次に、この磁気カード1をB方向に戻し、再度磁気ヘッド34上をF方向に移動させることにより、記録された情報の書き込みチェックを行う。そして、書き込み不良が検出された場合には、磁気カード1をB方向に搬送し、回収容器38に回収する。書き込み不良が検出されない場合は、カード発行口32から磁気カード1を発行する。
【0036】
また、磁気カード1が搬送される経路には磁気カード1の位置を検出する多数の不図示のセンサが設けられている。後述の制御部41は、このセンサの信号を検出し、磁気カード1の位置および処理内容(例えば、カード番号12の印刷)に応じてローラ33が正転・逆転・停止するようにカード搬送用モータ39を制御する。尚、図4の構造では、磁気カード1がカード供給台37からF方向に搬送されるときに、カード供給台37に積まれた他の磁気カード1がずれないように、また書き込み不良カードを回収容器38に回収するときにカード供給台37上を通過できるように、不図示の補助機構が設けられている。
【0037】
図5に示される制御部41は、CPU,メモリー、および磁気ヘッド34の読み取り信号の信号処理回路等から構成される。メモリーは、CPUの動作プログラムおよび各種制御データを記憶すると共に、CPUの演算作業領域として使用される。そして、CPUによってプログラムが実行されることにより、磁気カード発行装置3の各部の制御、上述のカード番号12の印刷等が行われる。また、制御部41は、通信部42を介して上位装置43(例えば、自動現金取引装置)からデータを受信し、このデータに従ってプリンタ35でカード番号12を印刷し、磁気ヘッド34で磁気ストライプ14に情報を記録する。
【0038】
次に、プリンタ35について説明する。このプリンタ35は、例えば、昇華型のプリンタであり、少なくとも黒の顔料インキによる印刷およびC・M・Yの3色の染料インキによる黒色の印刷を行うことができる。この昇華型のプリンタ35は、上記の顔料インキおよび3色の染料インキをそれぞれ塗布したフィルムを備えており、フィルムを加熱することによりインキを昇華させ、それを磁気カード1に写し取る。昇華型のプリンタ35で印刷されたカード番号12は、水に濡れても滲まない、磨耗し難いという長所を有する。尚、顔料インキで印刷された黒色と染料インキで印刷された黒色とは僅かに濃淡の差があるが、磁気カード1等の記録媒体に印刷される数字の高さは3mm〜10mm程度であり、その線幅は高々2mm程度であるので、輪郭部21の線幅を狭く(例えば、0.5mm以下または数字の線幅の1/4以下)にすれば、濃淡の差は視覚では殆ど識別できない。
【0039】
そして、プリンタ35は制御部41から送られてくるカード番号12のビットイメージデータおよび使用するインキの種類を示す情報に従ってカード番号12を印刷する。輪郭部21を顔料インキで印刷し、内側部22を染料インキで印刷する場合(図2(a))には、まず内側部22の形状のビットイメージデータに従って内側部22をC・M・Yの3色の染料インキで黒く印刷し、次に輪郭部21の形状のビットイメージデータに従って黒の顔料インキで輪郭部21を印刷する。この場合、輪郭部21および内側部22は、図6(a)〜(c)のいずれかの態様で印刷される。図6は、磁気カード1の表面に印刷されたインキの側面断面図で、(a)は輪郭部21が内側部22の外周に沿って形成されている例、(b)は輪郭部21の一部が内側部22の縁部を覆っている例、(c)は輪郭部21が内側部22の縁部の上面に形成されている例である。尚、輪郭部21を印刷した後に内側部22を印刷するようにしてもよい。
【0040】
図7は、カード番号12が印刷された磁気カード1を読み取る磁気カード読み取り装置5の概略機構を示す図であり、図8はその電気的構成を示す図である。これらの図を参照して磁気カード読み取り装置5について説明する。これらの図では、図4、図5に示される磁気カード発行装置3と同じ機能を有するものについては同じ番号で示す。また、磁気カード発行装置3と共通する内容については説明を省略する。
【0041】
カード投入口53から投入された磁気カード1は、ローラ33によってB方向に搬送され、可視光センサ51の下方および赤外線センサ52の下方を通過するときにカード番号12の検査が行われる。可視光センサ51は、その投光部から可視光を磁気カード1に照射し、反射光をその受光部で検出する。赤外線センサ52は、その投光部から赤外線を磁気カード1に照射し、反射光をその受光部で検出する。これらの検出信号は制御部41に送られ、そのメモリーに画像データとして記憶される。制御部41のCPUは、図2および図3で説明したように画像データを解析し、カード番号12の印刷が偽造されたものであるか否かを判断する。そして、偽造されたものであると判断した場合は、磁気カード1をカード投入口53から排出するか、または回収容器38に回収する。
【0042】
適正な磁気カード1は更にB方向に搬送され、磁気ヘッド34によって磁気ストライプ14に記録されている情報が読み取られる。この情報は制御部41、通信部42を介して上位装置43に送られ、上位装置43において処理(例えば、現金の払い出し)が行われる。また、上位装置43からの指示に従って磁気ヘッド34からの書き込み信号によって磁気ストライプ14に記録されている情報が更新される。
【0043】
図9は本発明の第2の実施形態を示す図である。本実施形態では、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の内、第1の部分25は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで、第2の部分26は赤外線および可視光を反射するインキで印刷されている。この場合、上述の画像のエッジ化処理は第1の部分25の幅25Aに合わせて行われる。なお、特定位置以外の位置にある数字は、図示を省略してある(以下の実施形態においても同様)。本実施形態でも、図2、図3と同様にして、可視光センサ51および赤外線センサ52を用いて偽造の検出が行われる。また、第1の部分25は、「4」であると判別することができる形状であり、線幅の狭い「4」と判断することができるので、赤外線センサ52のみを用いて偽造の検出を行うこともできる。尚、図9(b)は赤外線センサ52で検出される画像を示す参考図である。
【0044】
図10は本発明の第3の実施形態を示す図である。本実施形態でも、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の内、第1の部分25は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで、第2の部分26は赤外線および可視光を反射するインキで印刷されている。この場合、上述の画像のエッジ化処理は第1の部分25の幅25Aに合わせて行われる。本実施形態でも、図2、図3と同様にして、可視光センサ51および赤外線センサ52を用いて偽造の検出が行われる。また、第1の部分25は、「4」と同じ形状ではないが、「4」であると判別することができる形状であるので、赤外線センサ52のみを用いて偽造の検出を行うこともできる。尚、図10(b)は赤外線センサ52で検出される画像を示す参考図である。
【0045】
図11は本発明の第4の実施形態を示す図である。本実施形態でも、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の内、第1の部分25は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで、第2の部分26は赤外線および可視光を反射するインキで印刷されている。この場合、上述の画像のエッジ化処理は第1の部分25の幅25Aに合わせて行われる。本実施形態でも、図2、図3と同様にして、可視光センサ51および赤外線センサ52を用いて偽造の検出が行われる。また、第1の部分25は、一般的には「4」と判別することができる形状ではないが、「4」の特徴を示す形状(他の数字から「4」を識別することのできる形状)である。従って、カード番号12として印刷されるものが数字およびアルファベット等に限定される場合には、この特徴を示す形状をパターン認識することによって、赤外線センサ52のみを用いて偽造の検出を行うこともできる。尚、図11(b)は赤外線センサ52で検出される画像を示す参考図である。
【0046】
図12は本発明の第5の実施形態を示す図である。図3の実施形態では、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の輪郭部21が赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで、内側部22が赤外線および可視光を反射するインキで印刷されていた。それに対し、本実施形態では、図12(a)に示されるように、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の輪郭部21は赤外線および可視光を反射するインキで、内側部22は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで印刷されている。
【0047】
図12(b1)、(b2)は、それぞれ可視光センサ51および赤外線センサ52で検出された画像を示す図である。図12(c1)、(c2)は、それぞれ図12(b1)、(b2)に示される画像に対してエッジ化処理がされた画像を示す図である。このエッジ化処理は内側部22の幅22Aに合わせて行われる。図12(d1)、(d2)は、それぞれ図12(b1)、(b2)に示される画像から図12(c1)、(c2)に示される画像を減算した結果の画像を示す図である。上記の各画像は図2に示される各画像と同様の関係にあるので、図2、図3と同様にして可視光センサ51および赤外線センサ52によって、または赤外線センサ52のみによって偽造の検出を行うことができる。
【0048】
図13は本発明の第6の実施形態を示す図である。図1では、基材11(図1)の表面が赤外線を反射したが、本実施形態では、基材11の表面は赤外線を吸収する(例えば、基材11が赤外線を吸収するフィルムでコーティングされている)。そして、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の内、輪郭部21は赤外線および可視光を反射するインキで、内側部22は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで印刷されている。可視光センサ51で検出される数字「4」の画像は図2(b1)に示されるものと同じであるが、赤外線センサ52で検出される数字「4」の画像は、図13(b)に示される画像となる。図の斜線部は画像の暗部を示す。この画像に対して白黒(明暗)の反転処理を施すと、図13(c)に示される画像、つまり、図2(b2)に示される画像と同じ画像が得られる。
【0049】
従って、図2、図3と同様にして、可視光センサ51および赤外線センサ52によって、または赤外線センサ52のみによって偽造を検出することができる。尚、特定位置の数字以外の数字の印刷に使用される1種類のインキは、以下のようになる。可視光センサ51および赤外線センサ52によって偽造を検出する場合には、可視光を反射するインキであれば赤外線を吸収するインキまたは反射するインキのいずれでもよい。赤外線センサ52のみによって偽造を検出する場合には、赤外線を反射するインキである。
【0050】
また、図9〜図11に示される実施形態は、第1の部分25を赤外線および可視光を反射するインキで印刷し、第2の部分26を赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで印刷するように変更することによって、基材11の表面が赤外線を吸収する場合であっても実施することができる。
【0051】
図14は本発明の第7の実施形態を示す図であり、図12の実施形態に対応する実施形態である。図12の実施形態では基材11の表面は赤外線を反射した。それに対し、本実施形態では基材11の表面は赤外線を吸収する。そして、カード番号12中の特定位置にある数字「4」の輪郭部21は赤外線を吸収するが可視光を反射するインキで、内側部22は赤外線および可視光を反射するインキで印刷されている。可視光センサ51で検出される画像は図12(b1)に示されるものと同じであるが、赤外線センサ52で検出される画像は、図14(b)に示される画像となる。図の斜線部は画像の暗部を示す。この画像に対して白黒(明暗)の反転処理を施すと、図14(c)に示される画像、つまり、図12(b2)に示される画像と同じ画像が得られる。従って、図12の場合と同様にして、可視光センサ51および赤外線センサ52によって、または赤外線センサ52のみによって偽造を検出することができる。
【0052】
以上述べた実施形態においては、赤外線を吸収するが可視光を反射するインキと赤外線および可視光を反射するインキとを用いてカード番号12の数字を塗り分ける場合について説明したが、紫外線を吸収するが可視光を反射するインキと紫外線および可視光を反射するインキとを用いるようにしてもよい。また、上述の実施形態は、インキ以外の色材を用いてカード番号12の数字を記録媒体の表面に表示することを排除するものではない。
【0053】
また、上記実施形態では、カード番号12の数字の印刷について説明したが、これに限られるものではなく、数字、文字(A,B,C等)、記号(*,−等)、および図形(○、△等)を含む広い意味での文字を用いてカード番号以外のもの(例えば、記録媒体の所有者の名前)を記録媒体に表示する場合にも本発明を実施することができる。
【0054】
さらに、上記実施形態では、記録媒体が磁気カード1である場合について説明したが、これに限られるものではなく、ICカード、預金通帳、定期券、乗車券等の記録媒体についても本発明を実施することができる。
【0055】
さらに、上記実施形態では、赤外線を吸収するインキと反射するインキとが同色である場合について説明したが、両インキの色が互いに異なる場合でも本発明を実施することができる。
【0056】
さらに、上記実施形態では、磁気カード発行装置3は読み取り機能を持たず、磁気カード読み取り装置5は発行機能を持たないものであったが、各装置が両機能を併せ持つようにしてもよい。
【0057】
尚、上記実施形態では、赤外線センサ52および可視光センサ51で検出された画像、または赤外線センサ52で検出された画像に基づいて磁気カード1の偽造を検出する方法を例示したが、他の検出方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】磁気カードの平面図である。
【図2】本発明における偽造検出の原理を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す図である。
【図4】磁気カード発行装置の概略機構を示す図である。
【図5】磁気カード発行装置の電気的構成を示す図である。
【図6】磁気カードの表面に印刷されたインキの側面断面図である。
【図7】磁気カード読み取り装置の概略機構を示す図である。
【図8】磁気カード読み取り装置の電気的構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態を示す図である。
【図14】本発明の第7の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 磁気カード(記録媒体)
11 基材
12 カード番号(複数の文字)
21 輪郭部
22 内側部
25 第1の部分
26 第2の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を電磁的方法で記録する記録媒体であって、その表面に複数の文字が表示された記録媒体において、
前記複数の文字は整列した一連の文字からなり、
少なくとも1つの特定の文字は、目視可能であって、第1部分と第2部分とからなり、
前記第1部分と第2部分の一方は、赤外線あるいは紫外線を吸収し、
前記第1部分と第2部分の他方は、赤外線あるいは紫外線を反射し、
前記一連の文字中の前記特定の文字の位置は、前記一連の文字の値または前記電磁的方法で記録された情報から決められることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体において、
前記第1部分と第2部分の一方は、赤外線あるいは紫外線を吸収するが可視光を反射するインキで印刷され、
前記第1部分と第2部分の他方は、赤外線あるいは紫外線、および可視光を反射するインキで印刷されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項3】
請求項1に記載の記録媒体において、
前記第1部分は前記文字全体の輪郭部であり、
前記第2部分は輪郭部の内側の内側部であり、
前記第1部分と第2部分とは顔料インキと染料インキとで塗り分けられることを特徴とする記録媒体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の記録媒体において、
前記第1部分と前記第2部分とは同色であることを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−6724(P2009−6724A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250265(P2008−250265)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2003−407021(P2003−407021)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】