説明

記録媒体

【課題】 良好な印字濃度及び耐オゾン性を有する画像を得ることができる記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体上にインク受容層を設けた記録媒体であって、前記インク受容層は水酸化マグネシウムとバインダーとを含有しており、前記インク受容層の平均細孔半径は2nm以上、20nm以下であることを特徴とする記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上にインク受容層を設けた記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行うものである。近年、インクジェット記録方式の利用は拡大しており、記録の高速化、高精細化、フルカラー化などの記録特性の更なる向上が要求されている。
【0003】
インクジェット記録方式に用いる記録媒体に関しても、高度な特性が要求されている。例えば、インク吸収速度や得られる画像の鮮明さを向上させること、画像の退色や変色の発生を低減することが求められており、インク受容層を構成している無機顔料や添加剤、樹脂材料の改良が進められている。
【0004】
このような中で、支持体上に設けられたインク受容層に、平均粒子径が10nm〜300nmの水酸化マグネシウムを含有するインクジェット記録シートが提案されている(特許文献1参照)。また、支持体上に顔料を含むインク受容層を設けた記録媒体で、顔料のBET比表面積が30〜120m/g、単位面積あたりのヨウ素吸着量が1.5mg/m以上であり、顔料として水酸化マグネシウムを例示した記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−272232号公報
【特許文献2】特開平03−027976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に記載されている記録媒体は、インク受容層中の無機微粒子の粒子径が大きいことから、細孔半径も大きいものである。この結果、付与されたインク色材は記録媒体の奥深くに浸透してしまい、高い印字濃度を得ることが困難である。さらに、これらの記録媒体は、得られる画像の耐オゾン性の点で十分ではない。
【0006】
従って、本発明の目的は、良好な印字濃度及び耐オゾン性を有する画像を得ることができる記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
即ち、本発明は、支持体上にインク受容層を設けた記録媒体であって、前記インク受容層は水酸化マグネシウムとバインダーとを含有しており、前記インク受容層の平均細孔半径は2nm以上、20nm以下であることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な印字濃度及び耐オゾン性を有する画像を得ることができる記録媒体を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態をあげて本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の記録媒体は、水酸化マグネシウムとバインダーとを含有したインク受容層を支持体上に設けた構成である。
【0012】
本発明者らは、インク受容層が含有する無機顔料に関して、良好な印字濃度及び耐オゾン性を得るべく、詳細な検討を行った。その結果、インク受容層が含有する無機顔料として水酸化マグネシウムを用い、インク受容層の平均細孔半径を2nm以上、20nm以下に制御することで、良好な印字濃度及び耐オゾン性を有する画像が得られることを見出した。
【0013】
尚、本発明における水酸化マグネシウムとは、X線回折法(CuのKα線)で回折角度2θが18°近傍の(001)面のピークと回折角度2θが38°の(101)面のピークが現れるものである。
【0014】
図1は本発明の記録媒体の断面図の一例である。本発明の記録媒体は、図1に示すように、支持体2上にインク受容層1が設けられている。インク受容層1は水酸化マグネシウム粒子3と図示しないバインダーとを含有しており、水酸化マグネシウム粒子3の粒子間には細孔4が存在している。
【0015】
本発明者らは、かかる構成により、記録媒体に得られる画像が良好な印字濃度及び耐オゾン性を発現するメカニズムを以下のように推測する。まず、インク受容層1上に着弾したインク液滴は細孔4に浸透していく、浸透過程でインク中の色材成分はインク受容層1の表面付近に定着する。本発明では、細孔4の平均細孔半径が2nm以上、20nm以下と小さいので、細孔4の毛管力が強く働く。また、水酸化マグネシウム粒子3とインクに相互作用が強く働き、インクをインク受容層1の表面付近に効率良く定着できるので、高い画像濃度を得ることができる。
【0016】
また、上記のように、インク受容層の平均細孔半径が小さいので、毛管力によりインク受容層の細孔の表面付近にインクが効率良く定着するが、気体のオゾンはインク受容層の細孔に侵入しにくい。その結果、高い画像濃度を得ながらも良好な耐オゾン性を発現することができる。さらに、水酸化マグネシウムは固体の塩基化合物なので、酸点を持たない。本発明者らの検討では、オゾンによる印字画像の退色、変色は以下の2工程で発生する。
1、インク受容層中の無機顔料の酸点に付着した水分子が、オゾンによってラジカルを発生する。
2、発生したラジカルが色材と反応し、印字画像の退色、変色が起こる。
従って、本発明の記録媒体は、インク受容層に用いる無機顔料として酸点を持たない水酸化マグネシウムを用いることでラジカルの発生を抑制し、耐オゾン性を良好なものとしている。
【0017】
以下、本発明にかかる記録媒体の各構成材料などについて更に詳細に説明する。
【0018】
(支持体の構成材料)
本発明の記録媒体の支持体の基材としては、例えば適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、ポリエチレンなどを用いたレジンコート紙などの紙類、熱可塑性フィルムのようなシート状物質及び布帛が挙げられる。熱可塑性フィルムとしては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの透明フィルムが挙げられる。また、無機粒子の充填または微細な発泡による不透明化したシートが挙げられる。
【0019】
また、繊維状物質で形成された紙であることが好ましい。繊維状物質としては、例えばセルロースパルプが挙げられる。さらに具体例を挙げると、例えば、広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)などの化学(ケミカル)パルプ。セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械(メカニカル)パルプ。更には、脱墨された二次繊維である古紙パルプ。以上のようなものが挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、パルプは、未漂白パルプ、漂白パルプの区別、及び叩解、未叩解の区別なく使用してよい。叩解されたセルロースパルプとしては、例えば、非木材パルプである草、葉、靱皮、種毛などの繊維、藁、竹、麻、バガス、エスパルト、ケナフ、楮、三椏、コットンリンターなどのパルプが挙げられる。
【0021】
本発明では、上記セルロースパルプに加えて、嵩高性セルロース繊維、マーセル化されたセルロース、フラッフ化セルロース及びサーモメカニカルパルプなどの機械パルプなどからなる群から選択される少なくとも1種を添加して用いてもよい。これらのパルプの添加によって、得られる記録媒体のインク吸収速度、インク吸収量を向上させることができる。
【0022】
上記のセルロースパルプと共に軽叩解セルロースパルプを用いることもできる。本発明において、軽叩解セルロースパルプとは、木材などのチップから作った化学パルプで、叩解処理をあまり行っていないパルプのことである。この軽叩解セルロースパルプは、叩解処理によって生じるフィブリルがそれほど発生していないため、吸収性および嵩高性に優れている。軽叩解セルロースパルプとしては、例えば特開平10−77595号に記載されているものが挙げられる。また、軽叩解セルロースパルプとしては、カナダ標準濾水度550ml以上のパルプが好ましい。
【0023】
更に、上記したセルロースパルプに加えて以下のようなパルプを添加してもよい。例えば、微細フィブリル化セルロース、結晶化セルロース、広葉樹又は針葉樹を原料とする硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ、ソーダパルプ、ヘミセルラーゼ処理パルプ及び酵素処理化学パルプなどである。これらのパルプの添加によって、得られる記録媒体表面の平滑性向上や、地合いが良くなるといった効果がある。
【0024】
本発明では、支持体を構成する繊維状物質に、必要に応じて填料を加えることができる。填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなどの白色顔料、シリカまたはシリケート、珪酸化合物などのシリカ系材料が挙げられる。
【0025】
填料の形状は球状、塊形、針形など各種形状のものを用いることができる。繊維との相互作用を小さくするために多孔質填料を用いることもできる。好ましい填料の比表面積は50m/g以上である。填料の添加量は灰分換算で支持体全体の5質量%以上、20質量%以下が好ましい。5質量%未満では繊維の変形を抑制する効果が小さく、20質量%を超えると紙粉の発生量が多くなる場合がある。なお、多孔質填料の添加量は灰分換算で示した。灰分の測定はJIS P8128に従って行うことができる。また、本発明では、記録媒体のインク吸収速度を高くするために、填料を添加しなくてもよい。
【0026】
本発明の記録媒体の支持体は、支持体材料と、必要に応じて添加した上記多孔質填料とを混合して抄紙することにより製造する。支持体の坪量は、坪量が少なくて記録媒体が極端に薄くならなければ、特に制限はない。例えば、坪量が10gm以上であることが好ましく、20gm以上であることがより好ましい。また、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。この条件を満たすことで、記録媒体の強度を高めることができる。
【0027】
(支持体の製造方法)
本発明の記録媒体に用いる支持体の製造方法には、一般的に用いられている紙の製造方法を適用することができる。抄紙装置としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、円胴、ツインワイヤーなどが挙げられる。
【0028】
本発明の記録媒体では、通常の紙の製造方法で行われるサイズプレス工程を用いて支持体上に多孔質材料を塗工してもよい。この塗工には一般的な塗工方法を選択して用いることができる。例えばゲートロールコーター、サイズプレス、バーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレー装置などによる塗工技術を用いることができる。
【0029】
本発明で形成された支持体はカレンダー処理、熱カレンダー処理やスーパーカレンダー処理を行って表面を平滑にすることができる。
【0030】
(インク受容層)
本発明の記録媒体のインク受容層は、水酸化マグネシウムとバインダーを含有している。水酸化マグネシウムとしては、インク受容層を形成した時に平均細孔半径が2nm以上、20nm以下の範囲にできるものであれば特に制限はない。なお、本発明の平均細孔半径は、窒素吸着脱離法で求めたものである。平均細孔半径は、3nm以上であることが好ましい。さらに、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。かかる範囲に細孔半径を制御することで、高い印字濃度及び良好な耐オゾン性を得ることができる。
【0031】
本発明で用いることができる水酸化マグネシウムの製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)特開平2−279515号に記載された、超微粒子水酸化マグネシウムを用いる方法。この合成方法では粒子径の小さな水酸化マグネシウムを得ることができる。粒子径の小さな水酸化マグネシウムを用いることによって、インク受容層の平均細孔半径を小さなものに制御しやすい。この方法で得られる水酸化マグネシウムの粒子形状は薄片状である。
(2)特開2000−233924号公報に記載された、六角板状結晶のマグネシウムを用いる方法。マグネシウム塩とアルカリ物質の反応で得られた水酸化マグネシウムスラリーを水熱処理して形成している。得られる水酸化マグネシウムは板状である。
(3)特開昭58−120508号公報に記載された、pHスイング法を用いて合成された水酸化マグネシウムを用いる方法。pHスイング法ではスイング回数の制御で粒子径を制御することができる。また多孔質構造を容易に得ることができる。
(4)特開昭54−112400号に記載された、繊維状の水酸化マグネシウムを用いる方法。繊維の長さおよびインク受容層中の繊維配向を制御することによって平均細孔半径の制御が可能である。
(5)特開2007−137694号に記載された、酸化マグネシウムの水蒸気接触水和法で得られた水酸化マグネシウムの微粉末を用いる方法。水蒸気接触水和法で作成した水酸化マグネシウムは、従来の酸化マグネシウムの水分散による水和よりも印字画像の濃度、オゾン退色の両方について優れた効果が得られる。
(6)無機超微粒子を核にしてその外側に水酸化マグネシウムを形成する方法。無機超微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、マイカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどが挙げられる。形状は板状、針状、繊維状など自由に選択できる。
【0032】
また、インク受容層の平均細孔半径を2nm以上、20nm以下に制御する方法として、例えば水酸化マグネシウムの粒子成長を制御して粒子径を小さくする方法、ビーズミルなどの粉砕処理によって粗大粒子を取り除く方法が好ましい。
【0033】
水酸化マグネシウムの合成工程では、必要に応じて、特開平07−061812に記載された、水酸化マグネシウムの結晶成長を妨げる化合物を添加する方法を併用しても良い。この方法によると、水酸化マグネシウムの粒子径を制御しやすい。水酸化マグネシウムの結晶成長を制御する化合物としては、例えばカルシウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ホウ素、珪素、硫黄の化合物から1種類または2種類以上を選択できる。
【0034】
また、得られた水酸化マグネシウムの細孔容積を大きくするために、米国特許第5531976号公報に記載されたゲル化剤を用いることもできる。ゲル化剤は、水酸化マグネシウムの水分散液に添加して用いることが好ましい。また、ゲル化剤は硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムなどの水溶性の金属塩であることが好ましい。
【0035】
本発明では、無機顔料として水酸化マグネシウムを用いる。ここで、無機顔料は水酸化マグネシウムのみで構成されていてもよいし、無機微粒子の表面に水酸化マグネシウムが吸着している構成としてもよい。無機微粒子としては、例えばシリカやアルミナを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のインク受容層のバインダーとしては、例えば下記の水溶性高分子が挙げられる。即ち、ポリビニルアルコール又はその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)。澱粉又はその変性体(酸化、エーテル化)。ゼラチン又はその変性体。カゼイン又はその変性体。カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体。SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス。官能基変性重合体ラテックス。エチレン−酢酸ビニル系共重合体などのビニル系共重合体ラテックス。水性ウレタン系重合体。ポリビニルピロリドン。無水マレイン酸又はその共重合体。アクリル酸エステル共重合体。メタクリル酸エステル共重合体。以上のようなものが挙げられる。これらのバインダーは、単独或いは複数種混合して用いてもよい。無機顔料とバインダーとの混合比は、無機顔料100質量部に対して5部以上、70部以下とすることが好ましい。バインダー量が5部未満の場合は、インク受容層の機械的強度が不足してクラックや粉落ちが発生する恐れがある。バインダー量が70部を超える場合は、インク受容層のインク吸収性が低下する恐れがある。
【0037】
本発明の記録媒体は、必要に応じてインク受容層にカチオン性ポリマーを添加することができる。好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン、ハロゲン化第4級アンモニウム塩。カチオン性ウレタン樹脂、変性PVA、アミン・エピクロルヒドリン重付加体、ジハライド・ジアミン重付加体、ポリアミジン、ビニル(共)重合体。ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体。ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアン系カオチン樹脂、ポリアミン系カオチン樹脂。エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物。第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー・第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー。ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂。以上のようなものが挙げられる。
【0038】
本発明では、インク受容層にさらに以下の添加剤を加えても良い。例えば、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤である。
【0039】
(インク受容層の形成方法)
本発明の記録媒体において、支持体上にインク受容層を設ける方法としては、例えば無機顔料、バインダー及びその他の添加剤などからなる水分散液を作り、該分散液を塗工機で支持体上に塗布、乾燥する方法が挙げられる。この際に用いる塗工方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。即ち、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーターブラッシュコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレー装置。以上のような方法が挙げられる。分散液の塗布量は、乾燥固形分換算で、5g/m以上が好ましく、7g/m以上がより好ましい。また、30g/m以下が好ましく、20g/m以下がより好ましい。5g/m以上とすることで、インク吸収性を良好なものとすることができる。また、30g/m以下とすることで、コックリングの発生を抑制できる。また、インク受容層の形成後に、カレンダーロールなどを用いてインク受容層の表面平滑性を良くしてもよい。
【0040】
(本発明の記録媒体に使用するインク)
本発明の記録媒体に使用するインクとしては、例えば色剤(染料若しくは顔料)、水溶性有機溶剤及び/又は水を含むものが挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0041】
染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素などに代表される水溶性染料を用いることが好ましい。顔料としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。顔料インクを調製する方法としては、顔料と分散剤を併用する方法、自己分散型顔料を用いる方法、顔料をマイクロカプセル化する方法などが挙げられる。
【0042】
水溶性染料は、一般に水又は水と水溶性有機溶剤からなる溶媒中に溶解して使用するものであるが、これらの溶媒成分や、上記顔料を分散させる溶媒としては、水と水溶性の各種有機溶剤などとの混合物が好ましい。この際には、インク中の水分含有量が、20質量%以上、90質量%以下となるように調整することが好ましい。
【0043】
又、上記水溶性有機溶剤としては、例えば、以下のようなものは挙げられる。即ち、メチルアルコールなどの炭素数が1から4の範囲のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類。アセトンなどのケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、エチレングリコールなどのアルキレン基が2から6個の炭素を含むアルキレングリコール類。グリセリン、エチレングリコールメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類など。以上のようなものが挙げられる。これらから選択された1種、或いは2種以上を選択して組合せて用いることができる。これらの水溶性有機溶剤の中でも、特にジエチレングリコールなどの多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類を用いることが好ましい。多価アルコール類は、インク中の水が蒸発し、水溶性染料が析出することに基づくノズルの目詰まり減少を防止するための潤滑剤としての効果が大きいため、特に好ましい。
【0044】
インクには可溶化剤を加えてもよい。代表的な可溶化剤としては、含窒素複素環式ケトン類が挙げられる。その目的は、水溶性染料の溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上させることである。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。更に、インクの特性の改善のために、粘度調整剤、界面活性剤、表面張力調整剤、pH調整剤、比抵抗調整剤などの添加剤を加えて用いてもよい。
【0045】
(印字方法)
本発明の記録媒体に上記のようなインクを付与して画像形成を行なう方法としては、インクジェット記録方法が好適である。特に、熱エネルギーの作用によりインクをノズルから吐出させるインクジェット方式が好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0047】
<実施例1〜4>
硫酸マグネシウム(キシダ化学製)をイオン交換水に溶解して固形分濃度5質量%の硫酸マグネシウム水溶液を作成した。前記硫酸マグネシウム水溶液100gを撹拌装置の付いた10lのホーロー容器に入れた。上記水溶液を撹拌しながら加温して95℃にした。水酸化ナトリウム(キシダ化学製)をイオン交換水に溶解して固形分濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を作成した。この水酸化ナトリウム水溶液を、前記硫酸マグネシウム水溶液に滴下してpHを10.5とした。さらに95℃で撹拌しながら60分間保持して種子マグネシウムスラリーを得た。
【0048】
この種子マグネシウムスラリーに前記硫酸マグネシウム水溶液を加えてスラリーのpHを4.5にした。その状態で10分間保持した。この状態で前記水酸化ナトリウムを加えてスラリーのpHを10.5にして15分間保持した。このpHを4.5から10.5へ変化させ、さらにpHを10.5から4.5へ変化させる操作を、4回(実施例1)、6回(実施例2)、8回(実施例3)、10回(実施例4)繰り返した。尚、pHが4.5から10.5へ変化し、さらに4.5へと変化するまでの一連の工程を「1回」とする。かかる工程により得られたスラリーをろ過してからイオン交換水で洗浄してイオン成分を除去した。さらにスプレードライで乾燥し、X線回折で水酸化マグネシウムが得られたことを確認した。
【0049】
ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ製)をイオン交換水に溶解・分散して10重量%の溶液を得た。実施例1〜4の水酸化マグネシウムを同じようにイオン交換水に分散して15重量%の分散液を得た。上記水酸化マグネシウムとポリビニルアルコール溶液を、ポリビニルアルコール固形分と水酸化マグネシウム固形分が質量混合比で20:100になる量をそれぞれ計量した。次に、ホモミキサー(T.K.ロボミックス、プライミクス製)で8000回転/分で30分間撹拌して混合分散液を得た。前記混合分散液を厚み100μmの透明PETフィルム(ルミラー、東レ製)の上にワイヤーバーで塗工した。分散液が塗布されたPETフィルムをオーブン(ヤマト科学製)に入れて、温度100℃で30分間加熱・乾燥して厚さ30μmのインク受容層が形成された記録媒体を得た。インク受容層の平均細孔半径をTrister3000(島津製作所製)を用いて窒素吸着法で測定したところ、平均細孔半径は6nm(実施例1)、10nm(実施例2)、14nm(実施例3)、20nm(実施例4)であった。
【0050】
<実施例5>
塩化マグネシウム(キシダ化学製)をイオン交換水に溶解して20質量%の塩化マグネシウム水溶液を作成した。前記塩化マグネシウム水溶液100gを容積500cmの円筒形容器に入れて、60℃に液温を保った。前記塩化マグネシウム水溶液をホモミキサー(T.K.ロボミックス、プライミクス製)を用いて5000rpmで強撹拌しながら40質量%の水酸化カルシウム水溶液を当量、10秒間で添加した。さらに強撹拌を30分間行ってからろ過して溶液から固形分を分離した。イオン交換水を用いて固形分を洗浄し、5質量%の不飽和脂肪族カルボン酸石鹸の熱水水溶液で表面処理を行った。100℃のオーブンで乾燥し、X線回折で水酸化マグネシウムが得られたことを確認した。
【0051】
実施例1と同じ方法でポリビニルアルコールと混合して混合分散液を作成した。この混合分散液を実施例1と同じ方法で塗工、乾燥してインク受容層が形成された記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径は12nmであった。
【0052】
<実施例6〜9>
塩化マグネシウム(キシダ化学製)をイオン交換水に溶解して0.5mol/lの塩化マグネシウム水溶液を作成した。水酸化ナトリウム(キシダ化学製)をイオン交換水に溶解させて3Nの水酸化ナトリウム水溶液を作成した。オートクレーブ中で、前記塩化マグネシウム水溶液400mlに、ホウ酸(キシダ化学製)を、塩化マグネシウムに対して0.5mol%滴下し、撹拌しながら混合した。前記混合液に、前記水酸化ナトリウム水溶液を121ml滴下しながら混合した。室温(20℃)で30分反応させて水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに、下記の条件でそれぞれ水熱処理を行った。
実施例6;100℃で30分。
実施例7;100℃で1時間。
実施例8;130℃で30分。
実施例9;130℃で1時間。
水熱処理後、ろ過、さらにイオン交換水で洗浄してから乾燥させ、X線回折で水酸化マグネシウムが得られたことを確認した。電子顕微鏡で形状観察を行うとすべて六角板状結晶の水酸化マグネシウムであった。
【0053】
ビーズミル(OBミル、ターボ工業製)と、平均粒子径0.3mmのジルコニアビーズを用いて粒子径1ミクロン以上の粗大粒子を取り除いた。粒子径はマイクロトラックUP(日機装製)で測定した。
【0054】
実施例1と同じ方法でポリビニルアルコールと混合して混合分散液を作成した。この混合分散液を実施例1と同じ方法で塗工、乾燥してインク受容層が形成された記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径はそれぞれ2nm(実施例6)、7nm(実施例7)、13nm(実施例8)、18nm(実施例9)であった。
【0055】
<実施例10〜12>
実施例6の水酸化マグネシウムスラリーの代わりにシリカゾル(スノーテックスO、日産化学製)を用いた。実施例6〜9と同じ材料を用いて、下記の条件で水熱処理を行った。
実施例10;100℃で30分
実施例11;110℃で30分
実施例12;120℃で30分
水熱処理後、ろ過、さらにイオン交換水で洗浄してから乾燥させ、シリカをコア、水酸化マグネシウムをシェルとしたコア・シェル構造の水酸化マグネシウム粒子を得た。実施例6と同じようにビーズミルで粗大粒子を除去した。さらに、X線回折測定で水酸化マグネシウムであることを確認した。
【0056】
実施例1と同じ方法でポリビニルアルコールと混合して混合分散液を作成した。この混合分散液を実施例1と同じ方法で塗工、乾燥してインク受容層が形成された記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径はそれぞれ8nm(実施例10)、12nm(実施例11)、17nm(実施例12)であった。
【0057】
<実施例13〜15>
実施例1の水酸化マグネシウムスラリーの代わりにアルミナゾル(アルミナゾル520、日産化学製)を用いた。実施例1と同じ材料を用いて、同じ方法でpH4.5からpH10.5への操作を4回(実施例13)、6回(実施例14)、8回(実施例15)繰り返した。得られたスラリーをイオン交換水で洗浄してイオン成分を除去した。スプレードライで乾燥した。アルミナをコア、水酸化マグネシウムをシェルとするコア・シェル構造の水酸化マグネシウム粒子を得た。さらに、X線回折測定で水酸化マグネシウムであることを確認した。
【0058】
実施例1と同じ方法でポリビニルアルコールと混合して混合分散液を作成した。この混合分散液を実施例1と同じ方法で塗工、乾燥してインク受容層が形成された記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定すると平均細孔半径はそれぞれ10nm(実施例13)、12nm(実施例14)、14nm(実施例15)であった。
【0059】
<実施例16〜18>
カナダ標準濾水度380mlの広葉樹さらしクラフトパルプ60質量部とカナダ標準濾水度420mlのLBKP20質量部を原料パルプとした。
【0060】
前記原料パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を10質量部、カオリン填料を3質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量混合して抄紙原料とした。
【0061】
前記抄紙原料を用いて長網抄紙機を使用して坪量80g/mに調整して抄紙した。さらに金属ロールとD硬度が85°である樹脂ロールからなるスーパーカレンダーを用いて、金属ロール温度70℃、線圧200Kg/cmで表面を平滑化して支持体を得た。
【0062】
実施例16、17、18には、それぞれ実施例1、12、14と同様の水酸化マグネシウムを用いた。これらを実施例1と同じ方法でポリビニルアルコールと混合して混合分散液を作成した。さらに、実施例1と同じ方法で塗工、乾燥してインク受容層が形成された記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径はそれぞれ6nm(実施例16)、17nm(実施例17)、12nm(実施例18)であった。
【0063】
<実施例19>
バインダーをポリビニルアルコール117から下記組成からなる混合物バインダーに変更した以外は実施例3と同じ方法で、インク受容層を形成した記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径は14nmであった。
バインダー組成
・ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ製)
85質量部
・酢酸ビニルーエチレン系エマルジョン樹脂(パンフレックスOM−5500、クラレ製)
15質量部
<実施例20>
バインダーをポリビニルアルコール117から下記組成からなる混合物バインダーに変更した以外は実施例3と同じ方法で、インク受容層を形成した記録媒体を得た。実施例1と同じ方法で細孔構造を測定したところ、平均細孔半径は10nmであった。
バインダー組成
・ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ製)
85質量部
・アクリル系エマルジョン樹脂(NKポリマーAC−13、新中村化学工業製)
15質量部
<評価>
上記実施例1〜20で得た記録媒体に、インクジェットプリンター(E−520、インクカートリッジ;ICCL45、エプソン製)を用いて印字を行った。さらに、印字濃度及び耐イゾン性について、下記の基準で評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(印字濃度)
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクの単色ベタ印字した。それぞれの印字濃度を反射濃度計(Spectolino、Gretag製)で測定した。
【0065】
(耐オゾン性)
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の印字デューティを調整して光学濃度が1.0となるように印字した。オゾン試験装置を用いて温度24℃、湿度60%RH、オゾン濃度10ppmの条件で12時間オゾン暴露を行った。オゾン暴露前後で光学濃度を測定して下記式から光学濃度の残存率を求めた。
光学濃度の残存率(%)=(オゾン暴露後の光学濃度/オゾン暴露前の光学濃度)×100
【0066】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の記録媒体の断面図
【符号の説明】
【0068】
1 インク受容層
2 支持体
3 水酸化マグネシウム粒子
4 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を設けた記録媒体であって、
前記インク受容層は水酸化マグネシウムとバインダーとを含有しており、
前記インク受容層の平均細孔半径は2nm以上、20nm以下であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記インク受容層は無機微粒子を含有しており、
前記水酸化マグネシウムは前記無機微粒子の表面に吸着していることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30213(P2010−30213A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196401(P2008−196401)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】