説明

記録媒体

【課題】 インク吸収性、耐湿性及び耐オゾン性が良好な記録媒体を提供すること
【解決手段】 支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該インク受容層は、アルミナ水和物と、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸と、一般式(1)で表される化合物の塩とを含有し、アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、Aが1.0以上2.0以下、Bが0.5以上5.0以下であることを特徴とする記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法やフェルトペンにより記録を行う記録媒体として、支持体上にインク受容層を有する記録媒体が知られている。インク受容層は、シリカやアルミナ水和物等の無機顔料やポリビニルアルコール等のバインダーを含有する。このような記録媒体には、インク吸収性、耐湿性、耐オゾン性等を向上させることが要求されている。また、分散液をインク受容層用塗工液とし、支持体上に塗工してインク受容層を形成する場合、分散液中で無機顔料を良好に分散することが要求されている。
【0003】
特許文献1には、アルミナ水和物と、解膠剤を含有したアルミナゾルが記載されている。解膠剤としては、アミド硫酸等の炭素を有さないスルホン酸、ヘキサンスルホン酸等の炭素数が5以上のアルキルスルホン酸、ベンゼン環を有するスルホン酸等を用いている。また、アルミナ分散液の固形分濃度が15〜30重量%であり、得られるインク受容層は吸収性が良好であることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、インク受容層中にスルフィドのジカルボン酸のアミン塩を含有させることで、印字濃度が高く、耐オゾン性に優れたインクジェット記録媒体が製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3791039号公報
【特許文献2】特開2002−127584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1のように、アミド硫酸や、ヘキサンスルホン酸のような炭素数が5以上のアルキルスルホン酸、ベンゼン環を有するスルホン酸を解膠剤として用いると、厳しい環境条件下では耐湿性が良好ではなかった。また、解膠剤の含有量が多いとインク吸収性が低下し、解膠剤の含有量が少ないと耐オゾン性が低下するため、解膠剤の量を制御するだけではインク吸収性と耐オゾン性を高いレベルで両立することが困難であった。
【0007】
特許文献2では、インク受容層が含有する無機顔料として、シリカが用いられているのみである。また、シリカに対するスルフィドのジカルボン酸のアミン塩の量も、10質量%以上とかなり多い。このため、無機顔料としてアルミナ水和物を含有するアルミナ水和物分散液に適用すると、分散液がゲル化してしまうことがあった。また、インク受容層のインク吸収性が十分ではなかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、インク吸収性、耐湿性及び耐オゾン性が良好な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該インク受容層は、アルミナ水和物と、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸と、下記一般式(1)で表される化合物の塩とを含有し、アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、Aが1.0以上2.0以下、Bが0.5以上5.0以下であることを特徴とする記録媒体である。
一般式(1)
−R−(S)n−R−X
(nは1または2である。X、Xはそれぞれ独立に、H、NH、COOHのいずれかであり、X、Xの少なくともいずれかは、NHまたはCOOHである。R、Rはそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基のいずれかであり、RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク吸収性、耐湿性及び耐オゾン性が良好な記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明の記録媒体を詳細に説明する。本発明の記録媒体は、支持体の少なくとも一方の面上にインク受容層を有する。
【0012】
<支持体>
支持体としては、例えば、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィン等の樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)等の紙類、フィルムからなるものが挙げられる。中でも、インク受容層形成後の光沢性の点からレジンコート紙が好ましい。フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明な熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。これ以外にも、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填若しくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙等)を使用してもよい。また、ガラスまたは金属等からなるシート等を使用してもよい。支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施してもよい。
【0013】
<インク受容層>
(アルミナ水和物)
本発明の記録媒体が有するインク受容層は、顔料としてアルミナ水和物を含有する。かかるアルミナ水和物としては、下記一般式(X)により表されるものが好ましい。
Al3−n(OH)2n・mHO・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2または3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水を表すものであるため、mは整数または整数でない値をとることができる。また、加熱するとmは0の値に達することがある。)
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらのうち、何れの結晶構造のものも使用可能である。これらの中でも好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物である。具体的には、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。このアルミナ水和物は、インク受容層形成時のインク受容層全体の平均細孔半径が7.0nm以上10nm以下となるを用いることが好ましい。また、8.0nm以上となるものを用いるのがより好ましい。インク受容層全体の平均細孔半径が、7.0nm以上10nm以下であることによって、優れたインク吸収性及び発色性を発揮することができる。インク受容層全体の平均細孔半径が7.0nmよりも小さいと、インク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調製したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、インク受容層全体の平均細孔半径が10nmよりも大きくなると、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。さらに、インク受容層には細孔半径が25nm以上となる細孔が存在しないことが好ましい。25nm以上の細孔が存在する場合には、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。
【0014】
インク受容層全体の細孔容積は、全細孔容積で0.50ml/g以上であることが好ましい。全細孔容積が0.50ml/g未満になると、インク受容層全体のインク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調製したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、30.0ml/g以下であることが好ましい。
【0015】
尚、上記の平均細孔半径、全細孔容積、細孔半径とは、窒素吸着脱離法によって測定を行った結果得られる窒素ガスの吸着脱離等温線から、BJH(Barrett−Joyner−Halenda)法によって求められる値である。特に、平均細孔半径とは、窒素ガス脱離時に測定される全細孔容積と比表面積から計算によって求まる値である。記録媒体を窒素吸着脱離法により測定した場合には、インク受容層以外の部分に対しても測定が行われることとなる。しかし、インク受容層以外の成分(例えば、支持体、樹脂被膜層等)は、窒素吸着脱離法で一般的に測定できる範囲である1nm〜100nmの大きさの細孔を持っていない。このため、記録媒体全体を窒素吸着脱離法で測定した場合は、インク受容層の平均細孔半径を測定したものとすることができる。
【0016】
平均細孔半径が7.0nm以上10nm以下であるインク受容層を形成するためには、BET比表面積が、100m/g以上200m/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましい。より好ましくは、125m/g以上である。また、175m/g以下である。尚、BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。BET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。本発明では、相対圧力と吸着量の関係を5点測定し、比表面積を導き出す。
【0017】
アルミナ水和物は、平板状で、平均アスペクト比が3.0以上10以下、平板面の縦横比が0.60以上1.0以下のものが好ましい。なお、アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。アスペクト比は、粒子の(厚さ)に対する(直径)の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察した場合の、平板面の最小値を示す直径と、最大値を示す直径の比を示す。アスペクト比が上記範囲外となるアルミナ水和物を使用した場合、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる場合がある。このため、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる場合がある。また、同様に、縦横比が上記範囲外のものを使用した場合も、インク受容層の細孔径分布が狭くなる。
【0018】
本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が良い。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向し、形成される細孔が小さくなって、インク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は、インク受容層の細孔を良好に形成することができるため、好ましい。
【0019】
インク受容層のアルミナ水和物の含有量は、30.0質量%以上98.0質量%以下であることが好ましい。
【0020】
(バインダー)
本発明の記録媒体が有するインク受容層は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、アルミナ水和物を結着して被膜を形成する能力があり、本発明の効果を大きく損なわないものが好ましい。例えば、下記のものを挙げることができる。酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールまたはその誘導体。ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス。エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス。上記の各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス。カチオン基を用いて上記各種重合体をカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤を用いて上記各種重合体の表面をカチオン化したもの。カチオン性ポリビニルアルコール下で上記各種重合体を重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの。カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記各種重合体の重合を行い、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの。メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー。ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体または共重合体樹脂。ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー。これらのバインダーは、単独で、または複数種を混合して用いることができる。中でもポリビニルアルコールが最も好ましい。ポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールを挙げることができる。ポリビニルアルコールは、粘度平均重合度が1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。また、5000以下であることが好ましい。ケン化度は80以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましい。また、100以下であることが好ましい。
【0021】
インク受容層のポリビニルアルコールの含有量は、アルミナ水和物に対して7.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、8.0質量%以上である。また、9.0質量%以下である。7.0質量%未満の場合は、インク受容層の強度が低いことがある。また、12.0質量%より高い場合は、塗工液のゲル化が促進されて、塗工適性が低下することがある。
【0022】
(解膠剤)
インク受容層は、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工することで形成する。インク受容層用塗工液は、アルミナ水和物分散液を含有するものであるが、アルミナ水和物分散液中でアルミナ水和物を良好に分散することが好ましい。このため、本発明では、アルミナ水和物分散液が、解膠剤として炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を含有し、結果として、インク受容層が炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を含有している。この結果、アルミナ水和物分散液中で、アルミナ水和物を安定的に分散させることができる。
【0023】
解膠剤として、炭素数が5以上のアルキルスルホン酸やベンゼン環を有するスルホン酸を用いると、色安定性、耐湿性が低下し、画像濃度が低くなりやすい。この理由は、炭素数が多くなると解膠剤の疎水性が強くなり、結果としてアルミナ水和物表面の疎水性が強くなるので、アルミナ水和物表面での染料定着速度が遅くなるためと考えられる。また、炭素数が5以上のアルキルスルホン酸やベンゼン環を有するスルホン酸でアルミナ水和物を解膠すると、十分な分散安定性を得ることが困難であり、増粘が進みやすくなる。また、アルミナ水和物が凝集してしまい、画像濃度の低下を引き起すことがある。
【0024】
上記炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸は、可溶化基としてスルホン酸基のみを有する1塩基酸であることが好ましい。水酸基やカルボキシル基といった可溶化基を有さないアルキル基であると、耐湿性の点で好ましい。また、アルキルスルホン酸は一塩基酸であり、かつ、アルキル鎖の炭素数が1以上4以下の無置換アルキル基であることが好ましい。また、直鎖あるいは分岐のいずれでもよい。好ましいアルキルスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、i−ブタンスルホン酸、t−ブタンスルホン酸等が挙げられる。中でも、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸が好ましい。さらに、メタンスルホン酸が最も好ましい。尚、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸は、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
本発明では、記録媒体のインク受容層において、アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%としたときに、Aを1.0以上2.0以下とする。Aが1.0より低いと、耐湿性及び耐オゾン性が良好でなく、2.0より高いとインク吸収性が良好でなくなる。また、Aは1.3以上であることが好ましい。さらに、1.6以下であることが好ましい。
【0026】
(塩)
本発明の記録媒体のインク受容層は、下記一般式(1)で表される化合物の塩を含有する。
一般式(1)
−R−(S)n−R−X
(nは1または2である。X、Xはそれぞれ独立に、H、NH、COOHのいずれかであり、X、Xの少なくともいずれかは、NHまたはCOOHである。R、Rはそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基のいずれかであり、RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。)
【0027】
本発明の記録媒体が有するインク受容層は、一般式(1)で表される化合物の塩を、酸やアルカリで適宜中和した形で含有していてもよい。尚、本発明においては、インク受容層中で一般式(1)で表される化合物の塩が解離している状態であっても、インク受容層が一般式(1)で表される化合物の塩を含有しているものとする。
【0028】
インク受容層が一般式(1)で表される化合物の塩を含有することにより、インク吸収性と耐オゾン性が共に良好となる。また、固形分濃度が30.0質量%よりも高いような非常に高濃度のアルミナ水和物分散液であっても、安定的に分散することができる。アルミナ水和物を高濃度で塗工できることにより、インク受容層塗工時の生産性を飛躍的に高めることができる。
【0029】
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基のいずれかである。中でも、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、メチル基等が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的に以下の化合物が挙げられる。例えば、3−アセチルチオイソ酪酸、3−メチルチオプロピオン酸、2,2’−チオジグリコール酸、3,3’−チオジプロピオン酸、2,2’−ジチオグリコール酸、3,3’−ジチオプロピオン酸、2,2’−ジチオジ安息香酸、チオジ琥珀酸、6,6’−ジチオジニコチン酸、5,5’−チオジサリチル酸等のカルボン酸を有するスルフィド類、2,5−チオフェンジカルボン酸、3−メチル−2−チオフェンカルボン酸、5−ホルミル−2−チオフェンカルボン酸、5−メチル−2−チオフェンカルボン酸、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸等のカルボン酸を有するチオフェン類、S−メチル−L−システイン、S−エチル−L−システイン、S−(カルボキシメチル)−L−システイン、(2−アミノ−2−カルボキシエチル)ホモシステイン、S−ベンジル−DL−ホモシステイン、DL−メチオニン、DL−エチオニン、L−シスチン、DL−ホモシスチン、2−アミノ−3−(メチルスルファニル)ブタン酸、S−エチルカルバモイル−L−システイン、S−フェニル−L−システイン、2−[(2−アミノ−2−オキソエチル)ジチオ]アセトアミド等のアミノ基を有するスルフィド類である。本発明では、これらの化合物を、塩として用いる。中でも、2,2’−チオジグリコール酸、3,3’−チオジプロピオン酸、2,2’−ジチオジグリコール酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸を塩としたものは、取り扱いが容易で、耐オゾン性が向上するため好ましい。また、2,2’−ジチオビス(エチルアミン)ジヒドロクロリド(別名:シスタミン二塩酸塩)も、取り扱い及び耐オゾン性の点で好ましい。
【0031】
上記一般式(1)のX、XがともにOHである化合物は、耐オゾン性の向上が発現しにくい。また、アルミナ水和物を高濃度で分散する効果が小さい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物を塩とする場合、アルカリや酸を用いる。例えば、X、XのいずれかがCOOHの場合には、アルカリを用いる。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム等の水酸化物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア水等が挙げられる。X、XのいずれかがNHの場合には、酸を用いる。酸としては、例えば塩酸、酢酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。
【0033】
一般式(1)で表される化合物の塩の酸性またはアルカリ性が強い場合には、アルカリや酸で適宜中和してもよい。中和に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム等の水酸化物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア水等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが取り扱いが容易であるため好ましい。さらにはジエタノールアミン、トリエタノールアミンが、耐オゾン性がさらに向上するため好ましい。中和に用いる酸としては、塩酸、メタンスルホン酸、酢酸等が好ましい。
【0034】
本発明では、記録媒体のインク受容層中において、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、Bを0.5以上5.0以下とする。Bが0.5未満だと、耐オゾン性が十分でなくなる。5.0を超えると、アルミナ水和物分散液の安定性が低下したり、記録媒体としての耐湿性が低下する。Bは、好ましくは1.0以上である。また、3.0以下である。アルミナ水和物分散液の安定性が低下すると、粗大粒子が増加し、結果として記録媒体の光沢度が低下する場合がある。記録媒体の光沢度としては、20°光沢度で20以上であることが好ましい。
【0035】
一般式(1)で表される化合物の塩は、水に対する溶解度が、室温(25℃)で5.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10.0質量%以上である。溶解度が5.0質量%よりも低いと、アルミナ水和物分散液の安定性が低下する場合がある。また、50.0質量%以下であることが好ましい。50.0質量%を超えて溶解するものは、記録媒体中で吸湿しやすくなる場合がある。より好ましくは、30.0質量%以下である。
【0036】
アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、B/Aが0.4以上3.1以下であることが好ましい。0.4以上3.1以下であることで、アルキルスルホン酸とアルミナ水和物とが相乗的に作用し、耐オゾン性がより向上する。さらに、B/Aは0.5以上であることが好ましい。また、1.9以下であることがより好ましい。0.5以上1.9以下とすることで、耐オゾン性とインク吸収性とを高いレベルで両立できる。
【0037】
本発明の記録媒体は、以上のような特性を有するため、インクジェット記録媒体として好ましく用いられる。
【0038】
尚、インク受容層が含有する一般式(1)で表される化合物の塩は、予めアルミナ水和物分散液に含有させてもよいし、インク受容層用塗工液を塗工後、オーバーコートすることでインク受容層に含有させてもよい。好ましくは、アルミナ水和物分散液が含有している形態である。アルミナ水和物分散液が含有していると、記録媒体のインク吸収性、耐湿性が良好である。これは、インク受容層の最表面に一般式(1)で表される化合物の塩が局在しにくく、色材が染着域全体に良好に存在する傾向となるためである。また、アルミナ水和物の固形分濃度が高い場合であっても、良好に分散することができる。
【0039】
(その他の材料)
本発明では、必要に応じて、インク受容層がバインダーの架橋成分を含有してもよい。バインダーの架橋成分としては、ホウ酸やホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸やホウ酸塩を含有することにより、インク受容層内でのクラックの発生を抑制することができる。このようなホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、及び次ホウ酸等が挙げられる。中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点から、オルトホウ酸が好ましい。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましい。具体的には、下記のホウ酸のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na・10HO、NaBO・4HO等)、ホウ酸のカリウム塩(K・5HO、KBO等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH・3HO、NHBO等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩が挙げられる。インク受容層におけるホウ酸及びホウ酸塩の含有量は、バインダーに対して、ホウ酸固形分で5.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。50.0質量%を超えると、塗工液の経時安定性が低下する場合がある。5.0質量%より少ないと、バインダーを十分に架橋させにくくなる。
【0040】
この他の添加剤としては、以下のようなものがある。例えば、pH調製剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等である。
【0041】
(インク受容層用塗工液)
本発明では、インク受容層用塗工液を支持体上に塗工することで、インク受容層を形成する。インク受容層用塗工液は、アルミナ水和物と、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸と、水とを含有するアルミナ水和物分散液と、バインダー等とを含有する。アルミナ水和物分散液は、一般式(1)で表される化合物の塩を含有することが好ましい。また、インク受容層用塗工液は、その他の材料(例えばホウ酸)等を含有していてもよい。
【0042】
アルミナ水和物分散液のアルキルスルホン酸の含有量は、アルミナ水和物の含有量に対して1.0質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の塩の含有量は、アルミナ水和物の含有量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これらによって、本発明のアルミナ水和物分散液は、固形分濃度が30.0質量%以上と高くても、低粘度で安定な分散状態を発現することができる。アルミナ水和物分散液の固形分濃度を30.0質量%以上と高くすることで、ポリビニルアルコールや架橋剤成分と混合したインク受容層用塗工液の固形分濃度も高くできるため、塗工速度を上げることができる。アルミナ水和物分散液の固形分濃度は、33.0質量%以上であることがより好ましい。また、50.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
インク受容層用塗工液の塗工には、例えば、各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター等を用いることが好ましい。塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温してもよい。或いはコーターヘッドを加温してもよい。塗工後の塗工液の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機を使用してもよい。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を使用してもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例、比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
<支持体の作製>
下記条件にて支持体を作製した。まず、下記組成の紙料を固形分濃度が3.0質量%となるように純水で調製した。
・濾水度450ml CSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) 80.00質量部
・濾水度480ml CSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
20.00質量部
・カチオン化澱粉 0.60質量部
・重質炭酸カルシウム 10.00質量部
・軽質炭酸カルシウム 15.00質量部
・アルキルケテンダイマー 0.10質量部
・カチオン性ポリアクリルアミド 0.03質量部
【0046】
得られた紙料を長網抄紙機で抄造し3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸させ、乾燥させた。さらに、マシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙を得た。
【0047】
得られた基紙上に、低密度ポリエチレン(70質量部)と、高密度ポリエチレン(20質量部)と、酸化チタン(10質量部)からなる樹脂組成物を、25.0g/m塗布した。さらに、樹脂組成物を塗布した面と裏側の面に、高密度ポリエチレン(50質量部)と、低密度ポリエチレン(50質量部)からなる樹脂組成物を、25.0g/m塗布することで、樹脂被覆した支持体を作製した。
【0048】
<アルミナ水和物分散液の調製>
(アルミナ水和物分散液1)
純水195g中に、アルミナ水和物(Disperal HP14、サソール製)100g、メタンスルホン酸を1.0g(アルミナ水和物の含有量に対して1.0質量%)、シスタミン二塩酸塩(一般式(1)で表される化合物の塩、別名:2,2’−ジチオビスエチルアミンジヒドロクロライド)を1.0g(アルミナ水和物の含有量に対して1.0質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、アルミナ水和物分散液1を調製した。30分後、アルミナ水和物の分散状態が良好であることを目視で確認した。アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。固形分濃度の測定は、アルミナ水和物分散液5.0gを秤り取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。
【0049】
(アルミナ水和物分散液2)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して1.3質量%とした以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液2を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0050】
(アルミナ水和物分散液3)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して1.6質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液3を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0051】
(アルミナ水和物分散液4)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して2.0質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液4を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0052】
(アルミナ水和物分散液5)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して2.0質量%、シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して0.5質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液5を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0053】
(アルミナ水和物分散液6)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して1.6質量%、シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して0.5質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液6を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0054】
(アルミナ水和物分散液7)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して1.6質量%、シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して3.0質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液7を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0055】
(アルミナ水和物分散液8)
メタンスルホン酸の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して1.6質量%、シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して5.0質量%とした。これ以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液8を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0056】
(アルミナ水和物分散液9)
シスタミン二塩酸塩を3,3’−チオジプロピオン酸ナトリウムとした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液9を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0057】
(アルミナ水和物分散液10)
シスタミン二塩酸塩を3,3’−ジチオジプロピオン酸ナトリウムとした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液10を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0058】
(アルミナ水和物分散液11)
メタンスルホン酸をエタンスルホン酸とした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液11を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0059】
(アルミナ水和物分散液12)
メタンスルホン酸をブタンスルホン酸とした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液12を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0060】
(アルミナ水和物分散液13)
メタンスルホン酸の含有量を0.8質量%とした以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液13を調製した。分散開始から30分経過しても良好な分散状態は得られず、ゲル化した状態であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0061】
(アルミナ水和物分散液14)
シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して0.1質量%とした以外は、アルミナ水和物分散液2と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液14を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0062】
(アルミナ水和物分散液15)
シスタミン二塩酸塩の含有量をアルミナ水和物の含有量に対して6.0質量%とした以外は、アルミナ水和物分散液2と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液15を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0063】
(アルミナ水和物分散液16)
シスタミン二塩酸塩を塩化アンモニウムとした以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液16を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0064】
(アルミナ水和物分散液17)
メタンスルホン酸の量を2.5質量%とし、一般式(1)で表される化合物の塩を添加しなかった以外は、アルミナ水和物分散液1と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液17を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0065】
(アルミナ水和物分散液18)
一般式(1)で表される化合物の塩を添加しなかった以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液18を調製した。分散開始から30分経過しても良好な分散状態は得られず、ゲル化した状態であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0066】
(アルミナ水和物分散液19)
純水250g中に、アルミナ水和物Disperal HP14(サソール製)100g、メタンスルホン酸を1.3g(アルミナ水和物の含有量に対して1.3質量%)混合し、ミキサーで30分間撹拌し、アルミナ水和物分散液19を調製した。30分後、アルミナ水和物の分散状態が良好であることを目視で確認した。アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、28.0質量%であった。
【0067】
(アルミナ水和物分散液20)
シスタミン二塩酸塩を2,2’−チオジエタノールとした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液20を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、28.0質量%であった。
【0068】
(アルミナ水和物分散液21)
シスタミン二塩酸塩をビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィドとした以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液21を調製した。30分後、分散状態が良好であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、28.0質量%であった。
【0069】
(アルミナ水和物分散液22)
解膠剤としてメタンスルホン酸の代わりにアミド硫酸を用いた以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液22を調製した。分散開始から30分経過しても良好な分散状態は得られず、ゲル化した状態であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0070】
(アルミナ水和物分散液23)
解膠剤としてメタンスルホン酸の代わりにベンゼンスルホン酸を用いた以外は、アルミナ水和物分散液3と同一組成、同一条件にて、アルミナ水和物分散液23を調製した。分散開始から30分経過しても良好な分散状態は得られず、ゲル化した状態であることを目視で確認した。同様に、アルミナ水和物分散液の固形分濃度を測定したところ、33.0質量%であった。
【0071】
<実施例1>
ポリビニルアルコール(PVA235、クラレ製。重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分9.0質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。このポリビニルアルコール水溶液とアルミナ水和物分散液1とを、アルミナ水和物の固形分に対し、ポリビニルアルコールの固形分が9.0質量%となるように混合した。次に、固形分3.0質量%のホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸の固形分が1.5質量%となるように混合し、インク受容層用塗工液とした。
【0072】
このインク受容層用塗工液を、作製した上記支持体上に、スライドダイを用いて塗工量が35.0g/mとなるように塗工した。塗工液の液温は45℃とした。塗工後、80℃で乾燥して、実施例1の記録媒体を作製した。
【0073】
<実施例2〜実施例12、及び比較例1〜11>
それぞれ下記表1に示す通りのアルミナ分散液を用い、実施例2〜実施例12、及び比較例1〜11の記録媒体を作製した。ポリビニルアルコールとホウ酸のアルミナ水和物に対する配合比率は、実施例1と同様にした。
【0074】
<実施例13>
ポリビニルアルコール(PVA235、クラレ製。重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分9.0質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。このポリビニルアルコール水溶液とアルミナ水和物分散液19とを、アルミナ水和物の固形分に対し、ポリビニルアルコールの固形分が9.0質量%となるように混合した。次に、固形分3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸の固形分が1.5質量%となるように混合し、インク受容層用塗工液とした。
【0075】
このインク受容層用塗工液を、作製した上記支持体上に、スライドダイを用いて塗工量が35.0g/mとなるように塗工した。塗工液の液温は45℃とした。次に、これを80℃で乾燥した。乾燥後、5.0質量%のシスタミン二塩酸塩水溶液を、ウエット塗工量で3.1g/mとなるようにバーコーターで塗工した。その後、80℃で乾燥することで実施例13の記録媒体を作成した。尚、インク受容層中のシスタミン二塩酸塩の含有量は、アルミナ水和物の含有量に対して0.5質量%であった。
【0076】
【表1】

【0077】
<評価>
以下に示す通りに各記録媒体の評価を行った。尚、アルミナ水和物分散液の分散性の評価は、既に示した通りである。
【0078】
<評価1;光沢度>
上記で得られた各記録媒体の20°光沢度を測定した。測定装置は、VG2000(日本電色工業製)を用いた。
【0079】
<評価2;インク吸収性>
上記で得られた各記録媒体のインク吸収性を評価した。記録装置は、iP4700(キヤノン製)の印字処理方法を改造した装置を使用した。印字パターンは、Green色の64階調のベタ(6.25%Duty刻みで64階調、0〜400%Duty)を使用し、キャリッジ速度が25インチ/秒で、往復2回のパスで印字が完了する双方向印字とした。尚、本装置における400%Dutyとは、600dpi四方に44ngのインクを付与することを意味する。インク吸収性とビーディングは良好な正の相関性があるため、ビーディングを評価することによって、記録媒体のインク吸収性を評価した。ビーディングとは、インクが記録媒体に定着し終わる前の流動性を有する状態で、インクで形成したドットが記録媒体の表面上で面方向に不規則に移動し、かかるドットと隣接するドットとが集合体を形成することにより、画像濃度にムラが生じる現象である。評価は目視にて下記の基準で行った。
【0080】
(評価基準)
ランク4:300%Dutyでビーディングしていない。
ランク3:300%Dutyではビーディングしているが、250%Dutyではビーディングしていない。
ランク2:250%Dutyではビーディングしているが、200%Dutyではビーディングしていない。
ランク1:150%Dutyでビーディングしている。
【0081】
<評価3;耐湿性>
上記で得られた各記録媒体の耐湿性を評価した。記録装置としては、iP4700(キヤノン製)を用い、背景がブルーで「電驚」の白抜き文字を48ポイント及び10ポイントで印字し、30℃、90%の環境で、10日間放置した。放置前後での白抜き部分への色材のにじみ度合いを目視にて下記の基準で評価した。
【0082】
(評価基準)
ランク4:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方とも、滲みは見られず、文字ははっきりとしている。
ランク3:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方とも、やや滲みが見られる程度であり、文字は潰れていない。
ランク2:10ポイント白抜き文字は滲みが見られ、文字が潰れている部分があるが、48ポイント白抜き文字はやや滲みが見られる程度であり、文字は潰れていない。
ランク1:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方とも、かなり滲みが見られ、文字が潰れている部分がある。
【0083】
<評価4;耐オゾン性>
上記で得られた各記録媒体の耐オゾン性を評価した。プリンタはiP4600(キヤノン製)を用い、256階調のグレーパッチを印字した。BkのO.D.(光学濃度)値で1.0に最も近いパッチをオゾン暴露し、オゾン暴露前後のO.D.値の比率(O.D.残存率)にて耐オゾン性を評価した。オゾン暴露の条件は、気温23℃、湿度50%、オゾン濃度4ppm、オゾン暴露時間40時間とした。
【0084】
(評価基準)
ランク4:O.D.残存率が95%以上である。
ランク3:O.D.残存率が90%以上95%未満である。
ランク2:O.D.残存率が80%以上90%未満である。
ランク1:O.D.残存率が80%未満である。
以上の評価結果を、表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2に示す通り、実施例1〜13では、分散性、インク吸収性、耐湿性、耐オゾン性のいずれもが評価2以上であった。比較例1では、アルミナ水和物に対するメタンスルホン酸の含有量が0.8質量%と少なく、耐湿性及び耐オゾン性が評価1であった。比較例5では、逆に2.5質量%と多く、インク吸収性が評価1であった。比較例2では、アルミナ水和物に対するシスタミン二塩酸塩の含有量が0.1質量%と少なく、耐オゾン性が評価1であった。比較例3では、逆に6.0質量%と多く、耐湿性が評価1であった。また、アルミナ水和物分散液中で、アルミナ水和物を良好に分散することができなかった。比較例4、6〜9では、インク受容層が一般式(1)で表される化合物の塩を含有しておらず、耐オゾン性が評価1であった。比較例6では、アルミナ水和物分散液の固形分濃度が33.0質量%と高いのにもかかわらず、一般式(1)で表される化合物の塩を含有していないため、アルミナ水和物を良好に分散することができなかった。比較例10、11では、解膠酸として炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を用いておらず、耐湿性が評価1であった。また、アルミナ水和物を良好に分散することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、
該インク受容層は、アルミナ水和物と、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸と、下記一般式(1)で表される化合物の塩とを含有し、
アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、Aが1.0以上2.0以下、Bが0.5以上5.0以下であることを特徴とする記録媒体。
一般式(1)
−R−(S)n−R−X
(nは1または2である。X、Xはそれぞれ独立に、H、NH、COOHのいずれかであり、X、Xの少なくともいずれかは、NHまたはCOOHである。R、Rはそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基のいずれかであり、RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。)
【請求項2】
アルミナ水和物に対する炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸の含有量をA質量%、アルミナ水和物に対する一般式(1)で表される化合物の塩の含有量をB質量%としたときに、B/Aが0.4以上3.1以下である請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸がメタンスルホン酸である請求項1または2に記載の記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法であって、
支持体上に、アルミナ水和物分散液とバインダーとを混合したインク受容層用塗工液を塗工することで、インク受容層を形成する工程を有し、
該アルミナ水和物分散液の固形分濃度が30.0質量%よりも高いことを特徴とする記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2012−20478(P2012−20478A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159884(P2010−159884)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】