記録方法及び記録装置
【課題】記録手段を走査させる記録方式において、副走査方向に延びるバンディング(濃度むら)を低減できる記録方法及び記録装置を提供する。
【解決手段】印刷エリアPAは、シート(記録媒体)において記録ユニットによる印刷対象領域である。まず1回目のラテラルスキャンでは、副走査方向Yに配列されたノズルを使用して、主走査方向Xに記録ユニットを移動させて下地画像のラスターラインRL21(白丸)を印刷し、1パス毎に主走査方向X及び副走査方向Yにずらしつつ合計Mパスの印刷を施す。2回目のラテラルスキャンでは、下地画像のラスターラインRL21と本画像のラスターラインRL22(黒丸)を、1パス毎に主走査方向X及び副走査方向Yにずらして印刷する。このとき、本画像のラスターラインRL22は下地画像のラスターラインRL21の上に印刷される。以降、これを繰り返すことにより、2版が重なる画像が連続的に印刷される。
【解決手段】印刷エリアPAは、シート(記録媒体)において記録ユニットによる印刷対象領域である。まず1回目のラテラルスキャンでは、副走査方向Yに配列されたノズルを使用して、主走査方向Xに記録ユニットを移動させて下地画像のラスターラインRL21(白丸)を印刷し、1パス毎に主走査方向X及び副走査方向Yにずらしつつ合計Mパスの印刷を施す。2回目のラテラルスキャンでは、下地画像のラスターラインRL21と本画像のラスターラインRL22(黒丸)を、1パス毎に主走査方向X及び副走査方向Yにずらして印刷する。このとき、本画像のラスターラインRL22は下地画像のラスターラインRL21の上に印刷される。以降、これを繰り返すことにより、2版が重なる画像が連続的に印刷される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテラル記録方式やシリアル記録方式などのように、記録ヘッド等の記録手段を走査させることにより記録媒体に記録を施す記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ラテラルスキャン式プリンターやシリアル式プリンターなどの印刷装置(記録装置)では、キャリッジを主走査方向に複数回(複数パス)移動させつつ、各移動途中にキャリッジに設けられた記録ヘッドのノズルからインク滴を噴射して記録媒体(ターゲット)に文書や画像を印刷する。記録ヘッドのターゲットと対向するノズル形成面には、主走査方向と交差する副走査方向に複数(例えば180又は360)個のノズルを一定ピッチで配列するノズル列が色毎に形成されている。
【0003】
キャリッジが主走査したときに各ノズルが主走査方向に一列に描画するドット列(ラスターライン)の副走査方向の間隔は、ノズルのピッチのばらつきに依存する。例えば全てのノズルを使用して印刷するバンド印刷では、ノズルのピッチのばらつきがラスターラインの間隔のばらつきとして反映されるため、印刷画像に主走査方向に延びる白スジ等のバンディング(濃度むら)が発生し、印刷品質低下の原因となる。これは、隣接するラスターラインの描画に使用されるノズルが常に同じ隣接ノズルであるためである。このため、特に高品質の印刷画像を印刷する必要のある印刷モードでは、隣接するラスターラインの描画に使用される使用ノズルを隣接ノズルとならないように選択して記録するインターレース記録方式(マイクロウィーブ記録方式)が採用される場合がある。
【0004】
インターレース記録方式では、ノズル列を構成する全ノズルのうち副走査方向に所定個数おきのノズルを使用ノズルとして、1回目のキャリッジの主走査(パス)で複数本のラスターラインを描画し、その後、次回のパス位置まで副走査方向に移動し、次のパスで使用ノズルを用いて前回の画素ラインの隙間を埋めるようにラスターラインを描画し、これを複数回繰り返して隙間をラスターラインで徐々に埋めて印刷画像を形成する。
【0005】
例えば特許文献1には、バンディングを低減するために、補正用パターンを印刷してこれをスキャナーで読み取って得た読取階調値に基づいてノズルに対応する列領域の階調値を補正する補正値を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−253699号公報
【特許文献2】特開2000−229425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ラテラルスキャン方式では、ロール紙などの長尺状の記録媒体にラベル用の画像などを連続的に印刷する場合、キャリッジ(記録ヘッド)の主走査が記録媒体の搬送方向であるため、印刷媒体の長手方向に所定長さ分ずつ印刷が進められる。このため、記録ヘッドの前回の印刷と、次回の印刷との境界が、1つの画像内に発生する場合が起こりうる。この場合、画像内に前回と今回の印刷の境界部分に、副走査方向に延びる白スジ等のバンディングが発生してしまうという問題がある。前述の特許文献1に開示された技術は、製品出荷時になどに印刷装置に階調値補正用の補正値が初期設定されるものであり、この種の前回の印刷と今回の印刷との境界にできる副走査方向に延びるバンディングは、特許文献1の技術によっても解消することはできない。
【0008】
なお、透明フィルムなどの透明の記録媒体に印刷を施す場合、まず下地色(例えば白色)のインクで下地の版画像(例えばベタ印刷画像)の印刷(下地印刷)を施した後、下地の版画像の上に重ねて本画像の版の印刷(本印刷)を施す2版印刷が行われる。この場合、下地のインクが乾きにくいと、半乾きの下地印刷上に施された本印刷のインクが滲み、印刷品質の低下を招く。これを解決するためには、例えば、主走査時に印刷エリアの上流側半分に下地印刷、下流側半分に本印刷を施し、インターレース記録方式で所定回数の主走査を終えて1回のラテラルスキャンを終える度に、主走査方向へ印刷エリア長の半分だけ長尺の記録媒体を搬送し、以降、これを交互に繰り返し行う記録方法が考えられる。この記録方法であれば、前回の下地印刷から、今回の本印刷までの時間間隔がラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい時間だけ確保される。このため、インクの乾いた下地印刷の上に本印刷が施され、本印刷のインクの滲みに起因する印刷品質の低下を回避できる。しかし、この記録方法でも、前回の下地印刷と今回の下地印刷との境界、及び前回の本印刷と今回の本印刷との境界が、画像領域内に位置すると、印刷画像内にその境界に起因する副走査方向に延びるバンディングが発生することになる。
【0009】
ところで、滲みを回避するために必要な時間間隔については、例えば特許文献2に開示されており、インク液滴が記録媒体に全部吸収されるまでに必要な時間T(ms)は、T=(4V/πD2Ka)2で表される。ここで、Vはインクジェットヘッドから1回の動作で吐出する最大インク液滴量(ml)、Dはそのインク液滴が記録媒体に着弾したときのドットの平均等価円直径(m)、Kaはインクの記録媒体への吸収係数(ml/m2・ms1/2)である。特許文献2では、記録媒体上にインク液滴が着弾してからその同一位置に次のインク液滴が着弾するまでの時間をTx(ms)としたとき、T≦Tx、すなわち、(4V/πD2Ka)2≦TxとなるようにT、V、D、Kaの条件を設定する。しかし、インク種や記録媒体の材質、さらには最大インク液滴量やドットの平均等価円直径Dなどはユーザー先で予め決まっている場合が多く、この場合、V、D、Kaを変更できないので、インク種や記録媒体の材質などに応じたV、D、Kaから決まる時間T(=4V/πD2Ka)2以上の時間間隔を確保する必要がある。特に水性レジンを含有するインク(水性レジンインク)は、エコソルインク(有機溶媒インクの一種)や紫外線硬化性インク(UVインク)に比べ、乾燥又は硬化しにくいので、記録媒体にインク液滴を着弾させてからその同一位置に次のインク液滴を着弾させるまでの時間間隔を比較的長くする必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、記録手段を走査させる記録方式において、副走査方向に延びるバンディング(濃度むら)を低減できる記録方法及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つである記録方法では、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段とを備え、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録工程と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録工程でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程と、を備え、以降、前回の前記第2の記録工程における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録工程を繰り返すことを要旨とする。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、記録手段の移動途中でノズルを用いてドット列を記録する主走査と、記録手段と記録媒体とを第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行うことにより、主走査方向かつ副走査方向にずれて位置する複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列が記録される。つまり、主走査毎のドット列が記録されうる異なる行の行記録領域が、主走査方向(行方向)にずれて配置されるため、主走査毎に記録される異なる行のドット列が主走査方向(行方向)にずれて配置される。そして、次の第2の記録工程では、前回のドット列が記録された行記録領域と同じ行で隣接する行記録領域に次のドット列が記録される。そして、以降、前回の第2の記録工程における今回の行記録領域を前回の行記録領域として、第2の記録工程が繰り返し行われる。このため、同一行にある前回と今回の各行記録領域の境界が行毎に主走査方向に異なる位置に位置するので、各行記録領域に記録された各回(例えば前回と今回)の各ドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れる。この結果、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。
【0013】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記第1の記録工程では、前記記録手段の移動途中で前記ノズル列を構成する少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行い、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間を埋めるように今回の主走査でドット列を記録するインターレース記録方式を用いて、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録することが好ましい。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、ノズル列を構成するノズルのうち少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、記録手段と記録媒体とを第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行うことにより、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間(副走査方向の隙間)を埋めるように次回の主走査でドット列が記録される。つまり、インターレース記録方式で記録が行われる。このため、記録手段におけるノズルの副走査方向の位置のばらつきに起因する主走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。また、記録媒体に主走査方向にも副走査方向にもずれた位置に設定された複数の行記録領域にドット列が記録される。このため、例えば行記録領域を満たしてドット列が記録された場合、同一行の前回と今回のドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れるので、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。従って、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも共に発生しにくくなる。
【0015】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録媒体が前記第1方向と平行な搬送方向へ搬送されると共に、前記記録手段が前記主走査と前記副走査とを交互に行ってM回の主走査を終える度に1回目の主走査位置に戻るラテラルスキャンを行って記録を施すラテラルスキャン記録方式であり、前記第1及び第2の記録工程は、前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、前記主走査の後に、前記記録媒体を主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行って、前記M回の主走査を終える度に、前記記録手段を1回目の主走査位置に戻すことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、記録工程で1回の主走査が行われることで今回の行記録領域にドット列が記録され、この1回の主走査の後に走査位置切替え工程が行われる。この走査位置切替え工程では、記録媒体が主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ第1方向と平行な搬送方向に搬送されると共に、記録手段が第2方向に副走査されて記録手段が次の主走査位置に配置される。そして、M回の主走査を終える度に、記録手段が1回目の主走査位置に戻る。以降同様に、記録工程での主走査による今回の行記録領域へのドット列の記録と、走査位置切替え工程での記録手段の副走査及び記録媒体の搬送とが交互に行われ、M回の主走査(記録工程)を終える度に記録手段が1回目の主走査位置に戻される動作が繰り返される。1回の主走査により行記録領域にドット列が記録される度に、主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さずつ記録媒体が搬送されることで、行記録領域が搬送方向と反対方向へずれ、その搬送方向(主走査方向)にずれた行記録領域にドット列が記録されるので、行記録領域に記録される各回(例えば前回と今回)のドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れる。この結果、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。
【0017】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録手段は前記記録媒体にN個(但しNは2以上の自然数)の版画像を重ねて記録するN版記録を行い、前記第1及び第2の記録工程における前記行記録領域は、前記記録手段の1回の主走査により記録しうる最大記録領域を前記第1方向にN分割した分割領域の主走査方向長さに等しい長さに設定されており、前記第1及び第2の記録工程は、前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、1回の主走査の後に、前記記録媒体を前記分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、N個の前記分割領域を搬送方向上流側から順に、第1分割領域、…、第N分割領域とすると、前記第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記N個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、i=1,…,N−1とした場合に、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程であり、前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記第1分割領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程である、ことが好ましい。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、記録工程では、記録手段の1回の走査により記録しうる最大記録領域を第1方向にN分割したN個の分割領域内に当該分割領域の主走査方向長さに等しい長さで設定された行記録領域にドット列が記録される。1回の主走査の後に、記録媒体は、分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ搬送され、またこれと並行して、記録手段が第2方向へ副走査されて次の主走査位置に配置される。そして、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われて、M回の主走査が行われることで1回のラテラルスキャンが行われる。まず第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われてM回の主走査においてN個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内(但しi=1,…,N−1)の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。これにより、1回のラテラルスキャンを構成するM回の主走査においてN個の分割領域に第1版画像〜第N版画像をそれぞれ構成するドット列がそれぞれ前回のラテラルスキャンで記録された1版分下層の版画像の上に記録される。例えばN=2の2版記録では、M回の主走査において2個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第2分割領域内の行記録領域に第2版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第1版画像の上に重ねて記録される。また、例えばN=3の3版記録では、M回の主走査において3個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第2分割領域内の行記録領域に第2版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第1版画像の上に重ねて記録され、さらに第3分割領域内の行記録領域に第3版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第2版画像の上に重ねて記録される。
【0019】
そして、第2の記録工程では、第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われてM回の主走査において第1分割領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。以降、第2記録工程が繰り返されることにより、毎回のラテラルスキャンにおける各主走査において、第1分割領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。これにより、次のラテラルスキャンを構成するM回の主走査において、N個の分割領域に第1版画像〜第N版画像をそれぞれ構成するドット列がそれぞれ前回のラテラルスキャンで記録された1版分下層の版画像の上に記録される。よって、下層の版画像の上に上層の版画像が記録されるまでの時間間隔をラテラルスキャン1回分の所要時間だけ確保することができる。よって、下層の版画像の記録から、その上層の版画像が記録されるまでの間に、乾燥時間が確保される。この結果、流体の滲みを回避しつつN版の画像を重ねて記録することが可能となる。よって、主走査方向及び副走査方向に延びる各バンディングが発生しにくくなるうえ、上層の版画像のインクの滲みが発生しにくく品質の高い複数版記録を行うことができる。
【0020】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記N個の分割領域には、当該分割領域毎に異なるN種類の流体で前記第1版画像〜第N版画像の記録が施されることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、N個の分割領域には、分割領域内の行記録領域に異なるN種類の流体で第1版画像〜第N版画像の記録が施される。各版の役割に応じた適切な種類の流体を用いて各版画像が記録されるので、品質の高い印刷物を提供できる。
【0021】
本発明の態様の一つである記録方法では、ラテラルスキャン記録方式であって、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が前記第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かを判断し、前記所要時間が前記設定時間以上でないと判断された場合は、前記記録手段の移動速度を遅くするか、又は前記記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、前記所要時間が前記設定時間以上になるようにすることが好ましい。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かが判断される。そして、その所要時間が設定時間以上でないと判断された場合は、記録手段の移動速度を遅くするか、又は記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、所要時間が設定時間以上になるように調整される。よって、下層の版画像を記録してからその上に上層の版画像を記録するまでに必要な乾燥時間が確保される。従って、下層の版画像の記録が施された部分が必要な程度に乾燥した後、上層の版画像の記録が施されるので、例えば下層のインクの乾燥が不十分な状態で上層の版画像が印刷されたために起こるインクの滲みに起因する印刷画像の品質の低下を抑制できる。
【0023】
本発明の態様の一つである記録方法では、N個の分割領域に1回の主走査で施されるN版の画像は、下地画像、本画像、オーバーコート画像のうち二つ以上の組合せであることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、記録媒体に、下地画像の版、本画像の版、オーバーコート画像の版のうち二つ以上の組合せであるN版(2版又は3版)の記録が施される場合に、主走査方向及び副走査方向に延びる各バンディングが共に発生しにくいうえ、複数版記録でもインクの滲みを抑えて品質の高い記録を行うことができる。
【0025】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録手段が噴射する流体は、水性レジンを含むインクであることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、記録手段は流体として水性レジンを含むインク(水性レジンインク)を噴射して記録媒体に記録を施す。水性レジンインクはエコソルインク等の有機溶媒系インクやUVインク等の光硬化性樹脂系インクに比べ乾燥しにくいが、下層の版の記録と上層の版の記録との間に待ち時間(乾燥時間)が確保されるので、水性レジンインクを使用して記録されても、インクの滲みを抑えて高品質な印刷画像を提供できる。
【0026】
本発明の態様の一つである記録装置では、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段と、前記記録手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録処理と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録処理でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録処理とを行い、以降、前回の前記第2の記録処理における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録処理を繰り返すように、前記記録手段及び相対移動手段を制御することを要旨とする。本発明の一実施態様の記録装置によれば、上記記録方法に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における印刷システムの模式正面図。
【図2】印刷システムの電気的構成を示すブロック図。
【図3】コントローラーの機能構成を説明するブロック図。
【図4】記録ユニットの模式底面図。
【図5】三版印刷を構成する各版の画像データを示す模式図。
【図6】マイクロウィーブ処理部の機能構成を示すブロック図。
【図7】印刷エリアにおける分割領域を説明する模式図。
【図8】(a)〜(f)2版印刷における1回目のラテラルスキャンの印刷処理を示す印刷画像図。
【図9】(a)〜(f)2版印刷における2回目のラテラルスキャンの印刷処理を示す印刷画像図。
【図10】(a)〜(d)3版印刷におけるラテラルスキャン回数別の印刷手順を説明する模式図。
【図11】3版印刷における版画像別の印刷手順を説明する模式図。
【図12】印刷処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図12を用いて説明する。
図1に示すように、印刷システム100は、画像データを生成する画像生成装置110と、画像生成装置110から受信した画像データを基に印刷データを生成するホスト装置120と、ホスト装置120から受信した印刷データに基づく画像を印刷する記録装置の一例としてのラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す)とを備えている。
【0029】
画像生成装置110は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体111内のCPUが画像作成用プログラムを実行することで構築される画像生成部112を備える。ユーザーは、画像生成部112を起動して入力装置113の操作で、モニター114上で印刷用の画像を作成する。例えば製品がラベルの場合、複数個のラベルの画像を縦横に配列した複数コマ画像が作成される。そして、入力装置113を用いて所定の操作をすると、その画像に係る画像データが通信インターフェイスを介してホスト装置120へ送信される。もちろん、ホスト装置120を操作して画像生成装置110から画像データをホスト装置120内に読み込むことも可能である。
【0030】
ホスト装置120は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体121内のCPUがプリンタードライバー用プログラムを実行することで構築されるプリンタードライバー122を備える。プリンタードライバー122は、画像データを基に印刷データを生成し、その印刷データをプリンター11に設けられた制御装置Cへ送信する。制御装置Cは、プリンタードライバー122から受信した印刷データに基づいてプリンター11を制御し、印刷データに基づく画像をプリンター11に印刷させる。モニター123には、メニュー画面や印刷対象の画像等が表示される。メニュー画面での選択操作で表示されるその下位の印刷設定画面では、印刷対象の製品(例えばラベル等)に関する管理情報、及び各種の印刷条件などを入力設定することが可能である。
【0031】
ここで、管理情報には、製品の品番やロット番号、両面印刷の場合に表面印刷か裏面印刷かを指定するための印刷面情報などがある。また、印刷条件には、印刷媒体の種類、サイズ、印刷品質及び版数などがある。印刷媒体の種類には、大きくは紙系とフィルム系がある。例えば紙系には、上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙などがあり、フィルム系には合成紙、PET、PPなどがある。また、印刷媒体のサイズには、長尺状の印刷媒体が巻回されたロールの使用を前提とする本プリンター11では、ロール幅などが設定される。印刷品質には、印刷解像度や記録方式を決める複数種の印刷モードが用意されており、その中から一つ印刷モードを選択する。もちろん、印刷モードに替え、印刷解像度を設定してもよい。また、版数には、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する複数版印刷を行う場合に、その版(画像)の数が設定される。版数が2以上の場合、版毎に画像を指定することが可能である。
【0032】
次に、図1に示すプリンター11の構成について説明する。なお、以下の明細書中の説明において、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、図1において手前側を前側、奥側を後側とする。
【0033】
図1に示すように、プリンター11の直方体状の本体ケース12内には、長尺状のシート13をロールR1から繰り出す繰出し部14と、そのシート13にインク(流体)の噴射により印刷を施す印刷室15と、その印刷によりインクが付着したシート13に乾燥処理を施す乾燥装置16(乾燥炉)と、乾燥処理が施されたシート13をロールR2として巻き取る巻取り部17とが設けられている。
【0034】
本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18よりも上側の領域が印刷室15になっており、この印刷室15内の底部中央位置には、シート13の印刷エリアを支持するための矩形板状の支持台19が基台18上に支持された状態で配置されている。そして、本体ケース12内の基台18より下側の領域には、シート13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に繰出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に巻取り部17が配設されている。そして、繰出し部14と巻取り部17の間のやや上方位置に乾燥装置16が配設されている。なお、支持台19の下面には、支持台19を所定温度(例えば40〜60℃)に加熱するためのヒーター19Aが設けられており、シート13のうち印刷が施された部分は支持台19上で一次乾燥される。そして、一次乾燥の終わったシート13は乾燥装置16内で二次乾燥されるようになっている。
【0035】
図1に示すように、繰出し部14には巻き軸20が回転自在に設けられ、ロールR1がその巻き軸20に対して一体回転可能に支持されている。そして、シート13は、巻き軸20が回転することによりロールR1から繰り出されるようになっている。ロールR1から繰り出されたシート13は、巻き軸20の右側に位置する第1ローラー21に巻き掛けられて上方へ案内される。
【0036】
第1ローラー21によって搬送方向が鉛直上方向に変換されたシート13は、支持台19の左側であって第1ローラー21と上下方向で対応する位置に配置された第2ローラー22に左側下方から巻き掛けられる。そして、第2ローラー22に巻き掛けられて搬送方向が水平右方向に変換されたシート13は、支持台19の上面に摺接するようになっている。
【0037】
また、支持台19の右側には、左側の第2ローラー22と支持台19を挟んで対向する第3ローラー23が設けられている。第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部が支持台19の上面と同一高さとなるように位置調整されている。
【0038】
支持台19の上面から下流側(右側)に搬送されたシート13は、第3ローラー23に右側上方から巻き掛けられて搬送方向が鉛直下方向に変換され、その後、支持台19の下側に配置された第4ローラー24及び第5ローラー25間を水平方向に案内される。シート13は、これらローラー24,25間の搬送経路の途中で乾燥装置16内を通過するようになっている。そして、乾燥装置16内で乾燥処理が施されたシート13は、第5ローラー25、第6ローラー26及び第7ローラー27に案内されて巻取り部17の近くまで搬送され、搬送モーター61(図2参照)の駆動力に基づいて巻取り軸28が回転することによりロールR2として巻き取られる。
【0039】
例えば両面印刷時は、表面印刷が施されたシート13が全てロールR2に巻き取られると、そのロールR2を取り外し、裏面印刷供給用のロールR1として再び繰出し部14にセットする。そして、ロールR1からのシート13はその裏面が印刷面になるように図1に二点鎖線で示す経路で第1ローラー21に巻き掛けられる。なお、乾燥装置16と巻取り部17との間における搬送経路の途中に、シート13に印刷された製品部分(例えばラベル)を型抜き可能な型抜き用の加工機(不図示)を設け、プリンター11内で製品部分の型抜き工程まで終えられる構成を採用してもよい。
【0040】
図1に示すように、印刷室15内における支持台19の前後方向両側には、左右方向に延びるガイドレール29(図1では2点鎖線で示す)が一対設けられている。一対のガイドレール29には、記録手段の一例である記録ユニット30が主走査方向Xに往復移動可能に案内される。記録ユニット30は矩形状のキャリッジ31と、キャリッジ31の下面側に支持板32を介して支持された複数の記録ヘッド33とを備えている。キャリッジ31は、第1キャリッジモーター62(図2参照)の駆動に基づき両ガイドレール29に沿って主走査方向X(図1では左右方向)への往復移動が可能な状態で支持されている。また、キャリッジ31は第2キャリッジモーター63(図2参照)の駆動に基づき副走査方向Y(図1では紙面と直交する前後方向)への移動も可能となっている。これにより記録ユニット30は主走査方向Xと副走査方向Yとの2方向への移動が可能となっている。
【0041】
支持台19の上面のほぼ全域に亘る一定範囲が印刷領域となっており、シート13はこの印刷領域に対応する印刷エリア単位で間欠的に搬送される。支持台19の下側には吸引装置34が設けられている。吸引装置34は、支持台19の上面に開口する多数の吸引孔(図示せず)に負圧を及ぼすように駆動され、その負圧による吸引力によりシート13は支持台19の上面に吸着される。そして、記録ユニット30が主走査方向Xに移動してその移動途中に記録ヘッド33からインクを噴射する主走査と、記録ユニット30を次回の主走査位置まで副走査方向Yへ移動させる副走査とが交互に行われることで、シート13のうち支持台19上に位置する印刷エリアに印刷が施される。また、シート13が搬送方向(図1における右方)に搬送されることにより、シート13に対する印刷位置が主走査方向Xに変更される。このとき、吸引装置34の負圧が解除されることでシート13の支持台19上への吸着が解除され、その後、シート13は搬送されるようになっている。
【0042】
また、図1において印刷室15内の右端側となる非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド33のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置35が設けられている。メンテナンス装置35は、キャップ36と昇降装置37とを備える。非印刷時にホーム位置で待機する記録ユニット30の記録ヘッド33は、昇降装置37の駆動により上昇したキャップ36でキャッピングされ、ノズル内のインクの増粘等が回避される。また、所定のメンテナンス時期になると、キャッピング状態の下でメンテナンス装置35の吸引ポンプ(図示せず)が駆動されてキャップ36内を負圧にすることによりノズルからインクを強制的に排出して、ノズル内の増粘インクやインク中の気泡等を除去するクリーニングが行われる。
【0043】
また、図1に示すように、本体ケース12内には、異なる色のインクをそれぞれ収容した複数個(例えば8個)のインクカートリッジIC1〜IC8が着脱可能に装着されている。8個のインクカートリッジIC1〜IC8は、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、白(W)、クリア(オーバーコート用の透明色)等の各インクを収容する。もちろん、インクの種類(色数)は適宜設定でき、黒インクだけでモノクロ印刷する構成や、インクを2色、あるいは8色以外で3色以上の任意の色数とした構成も採用できる。また、メンテナンス用の保湿液を収容するカートリッジが装着される構成も採用できる。
【0044】
各インクカートリッジIC1〜IC8はインク供給路等(図示省略)を通じて記録ヘッド33に接続されている。各記録ヘッド33は各インクカートリッジIC1〜IC8から供給されたインクを噴射してシート13に印刷を施す。このため、本例のプリンター11では、カラー印刷が可能となっている。また、印刷媒体が透明フィルムなどの透明体の場合は、まずシート13上に白インクで下地層(下地画像)を印刷する「下地印刷」が行われ、さらにその下地層の上にカラー又は単色で画像(本画像)を印刷する「本印刷」が施される。また、シート13が透明体であるか否かに関わらず、本画像の上層に、クリアインク(透明インク)を噴射してオーバーコート層を形成し、印刷表面に耐性と光沢を付与する「オーバーコート印刷」が施される。
【0045】
このようにプリンター11においては、本画像の1版のみを印刷する「単版印刷」、本画像とオーバーコート層、あるいは下地層と本画像の各組合せのように、異なる種類の2版を印刷する「2版印刷」、さらに下地層と本画像とオーバーコート層の3版を印刷する「3版印刷」が可能である。もちろん、3版を超える複数版印刷を行ったり、複数版印刷を構成する印刷層が、上記3種類以外のその他の種類の印刷であったりする構成も採用できる。
【0046】
次に、記録ユニット30の底面に設けられた複数の記録ヘッド33の構成を図4に基づいて説明する。図4に示すように、キャリッジ31の底面側(図4では手前側)に支持された支持板32には、複数個(本実施形態では15個)の記録ヘッド33が、シート13の搬送方向(図4において白抜き矢印で示す方向)と直交する副走査方向Yに亘って千鳥状の配置パターンで支持されている。つまり、15個の記録ヘッド33は、副走査方向Yに沿って一定ピッチで配列された2列(図4では7個の列と8個の列)の記録ヘッド33が、列間で副走査方向Yに半ピッチずれた状態で配置されている。そして、各記録ヘッド33の底面となるノズル形成面33Aには、多数個(例えば180個)のノズル38が副走査方向Yに沿って一定のノズルピッチで配列されてなるノズル列39が、主走査方向Xに所定間隔をおいて複数列(本実施形態では8列)形成されている。そして、複数(8列)のノズル列39は、8個のインクカートリッジIC1〜IC8のうちそれぞれ対応する1個のインクカートリッジからインクの供給を受け、それぞれ異なる種類のインクを噴射する。なお、本実施形態では、ノズル列39の列方向(ノズル列方向)と交差する主走査方向Xが第1方向となり、主走査方向X(第1方向)と交差する副走査方向Yが第2方向となる。
【0047】
記録ユニット30が、図4における主走査方向Xへの移動(主走査)と、副走査方向Yへの移動(副走査)とを交互に行って、印刷解像度に応じた所定回数の主走査を行うことで、副走査方向Yの全ての行が埋まる1回のラテラルスキャンが行われる。ここで、記録ユニット30が主走査方向Xに移動する1回の主走査を「パス」と呼び、本例では、ラテラルスキャン1回のパスの回数が4回の4パス印刷と、パスの回数が8回の8パス印刷とがある。図4には、4パス印刷の例で、記録ユニット30の移動経路が矢印で示されている。すなわち、4パス印刷では、まず記録ユニット30が主走査方向Xへ一回移動する主走査を行って1パス目を印刷し、1パス目の印刷を終えると、記録ユニット30を副走査方向Yへ副走査送り量Δyだけ移動させる副走査を行って、記録ユニット30を次の主走査開始位置(次パス開始位置)に配置する。続いてその位置から2パス目の印刷を行い、2パス目の印刷後に副走査送り量Δyの副走査を行って、記録ユニット30を3パス目の主走査開始位置に配置する。以降、同様に主走査及び副走査を行って、3パス目と4パス目の各印刷を行う。
【0048】
ここで、ノズルピッチをΔpとおくと、副走査送り量Δyは、4パス印刷ではノズルピッチΔpの1/2の値(=Δp/2)に設定され、8パス印刷ではノズルピッチΔpの1/4の値(=Δp/4)に設定される。このため、8パス印刷では、4パス印刷のときの約2倍の印刷解像度が得られる。もちろん、副走査送り量Δyは、要求される印刷解像度に応じた適宜な値に設定できる。
【0049】
ところで、本実施形態では、記録ヘッド33のノズル38が目詰まりしないように比較的乾きにくい水系レジンを含むインク(以下「水性レジンインク」という)を使用し、印刷した後にはインクを熱乾燥させてインクを定着させる構成である。ここで、水性レジンインクに比べ、エコソルインク(有機溶剤系インクの一種)やUVインク(紫外線硬化性樹脂)は乾燥又は硬化しやすいので、1回の主走査で下層(下版)と上層(上版)を重ねて印刷する追い刷りも可能ではある。しかし、乾燥性又は硬化性の比較的悪い水性レジンインクを使用して複数版印刷を行う場合、下層(下版)のインクの乾燥が不十分な状態で直ぐに上層(上版)の印刷を行うと、上層のインクが滲んでしまい、印刷品質の低下に繋がる。そのため、水性レジンインクには、エコソルインクやUVインクで採用される1回の主走査で追い刷りする技術の適用は困難である。そこで、本実施形態では、1回のラテラルスキャンでは、スキャン領域を主走査方向に複数分割した複数の分割領域にその搬送方向上流側から下層(下版)から順番に異なる版の画像を1層のみ印刷することとし、前回のラテラルスキャンで印刷した下層の上に、今回のラテラルスキャンで上層を印刷する。こうすることで、前回のラテラルスキャンで下層を印刷してから、今回のラテラルスキャンで上層を印刷するまでの間に、下層のインクを乾燥するために必要な時間間隔を設けている。
【0050】
インクの乾燥に必要な時間間隔の最小値を設定時間Toとおくと、時間間隔は設定時間To以上の値に設定すればよい。ここで、必要な設定時間Toの求め方には次の2通りがある。1つは、予備実験による方法、他の1つは理論式から求める方法である。まず前者の方法では、記録媒体に白インクで下層を印刷してから、種々の時間間隔をおいた後にその上にカラーのインクで上層を印刷して、カラーのドットが滲んでいるかどうかを検査し、滲みが許容範囲になりうる最短の時間間隔を設定時間Toとする。
【0051】
また、後者の方法は、特許文献2に開示された理論式に基づき、滲みを回避するために必要な最短の時間間隔を設定時間Toとする方法である。すなわち、インク滴が記録媒体に全部吸収されるまでの時間を設定時間Toとすると、設定時間Toは、式 T=(4V/πD2Ka)2で表される。ここで、Vは記録ヘッド33から1回の動作で噴射する最大インク液滴量(ml)、Dはインク滴が記録媒体に着弾したときのドットの平均等価円直径(m)、Kaはインクの記録媒体への吸収係数(ml/m2・ms1/2)である。
【0052】
本実施形態では、前回のラテラルスキャンで印刷した下層の上に、今回のラテラルスキャンで上層を印刷するため、下層の印刷から上層の印刷までの時間間隔、つまり下層のインクの乾燥時間T1は、ラテラルスキャン1回の所要時間となる。そして、乾燥時間T1を規定するラテラルスキャン1回の所要時間が、設定時間To以上(T1≧To)となるように設定している。例えばT1≧(4V/πD2Ka)2となるように設定している。
【0053】
本例では、1回のラテラルスキャンのパス数Mには、前述のように、印刷解像度に応じてM=4の場合とM=8の場合の2種類ある。そして、所要時間の一番短いM=4の場合でも、前述の設定時間To以上の乾燥時間T1が確保されるように、ラテラルスキャン1回に要する所要時間を設定している。詳しくは、T1≧Toの条件を満たすように、記録ユニット30の主走査移動速度、主走査移動距離、副走査移動速度、副走査移動距離及びラテラルスキャン中の記録ユニット30の停止待機時間のうち少なくとも1つを調整している。なお、設定時間Toに所定のマージン時間Δtを加え、T1≧To+Δtの条件を満たすようにしてもよい。
【0054】
次に印刷システム100の電気構成を図2に基づいて説明する。図2に示すホスト装置120内のプリンタードライバー122は、モニター123に表示させるべきメニュー画面及び印刷設定画面などの各種画面の表示制御を行うと共に、各画面の表示状態において操作部124から入力した操作信号に応じた所定処理を行うホスト制御部125を備えている。ホスト制御部125は、プリンタードライバー122を統括的に制御する。
【0055】
また、プリンタードライバー122には、上位の画像生成装置110から受信した画像データに対して印刷データの生成に必要な画像処理を施すために、解像度変換部126、色変換部127及びハーフトーン処理部128を備えている。解像度変換部126は、画像データを表示解像度から印刷解像度へ変換する解像度変換処理を行う。色変換部127は、表示用の表色系(例えばRGB表色系やYCbCr表色系)から印刷用の表色系(例えばCMYK表色系)に色変換する色変換処理を行う。さらにハーフトーン処理部128は、表示用の高階調(例えば256階調)の画素データを印刷用の低階調(例えば2階調又は4階調)の画素データに階調変換するハーフトーン処理などを行う。そして、プリンタードライバー122は、これらの画像処理を施して生成した印刷画像データに、印刷制御コード(例えばESC/P)で記述されたコマンドを付して印刷ジョブデータ(以下、単に「印刷データPD」と称す)を生成する。
【0056】
ホスト装置120はデータの転送制御を行う転送制御部129を備える。転送制御部129は、印刷データPDをシリアル通信ポートU1を介して所定容量のパケットデータずつプリンター11へシリアル転送する。また、ホスト制御部125は、プリンター11の制御装置Cと双方向の通信が可能になっており、転送制御部129を介してプリンター11へコマンドや制御信号を送信し、その応答をプリンター11から受信する。
【0057】
図2に示すプリンター11側の制御装置Cは、ホスト装置120からの印刷データPDをシリアル通信ポートU2で受信して印刷制御をはじめとする各種制御を行うためのコントローラー40を備えている。図2に示すように、コントローラー40には、複数個(N個(本例では8個))のヘッド制御ユニット45(以下、単に「HCU45」という)を介して複数個(本例では15個)の記録ヘッド33が接続されている。
【0058】
図2に示すように、コントローラー40には、キャリッジ31(つまり記録ユニット30)の移動経路に沿って設けられているリニアエンコーダー50が接続されている。コントローラー40は、キャリッジ31の移動距離に比例する数のパルスをもつ検出信号(エンコーダーパルス信号)をリニアエンコーダー50から入力する。コントローラー40は、エンコーダーパルス信号のパルスエッジ数の計数によりキャリッジ31の主走査方向Xにおける位置(キャリッジ位置)を取得すると共に、A相・B相の各エンコーダーパルス信号の信号レベルの比較結果に基づきキャリッジ移動方向を取得する。また、コントローラー40は、リニアエンコーダー50からのエンコーダーパルス信号を基に、記録ヘッド33の噴射タイミングを決める噴射タイミング信号を生成する。コントローラー40は、印刷データPD中の印刷画像データから記録ヘッド33内のヘッド駆動回路が使用可能なヘッド制御データを生成し、そのうちキャリッジ31の1回の主走査分(1パス分)のデータずつHCU45を介して各記録ヘッド33に送信する。記録ヘッド33内のヘッド駆動回路はヘッド制御データに基づき噴射すべきノズルから噴射タイミング信号に同期して各記録ヘッド33の噴射制御を行う。
【0059】
図2に示すように、コントローラー40は、CPU51(中央処理装置)、ASIC52(Application Specific IC(特定用途向け集積回路))、ROM53、RAM54及び不揮発性メモリー55を備えている。CPU51は、ROM53及び不揮発性メモリー55に記憶されたプログラムを実行することにより、印刷制御に必要な各種の処理を行う。また、ASIC52は、印刷データPDの画像処理を含む記録系のデータ処理などを行う。
【0060】
また、図2に示すように、制御装置Cは、コントローラー40の出力側(制御下流側)に通信線SL1を通じて接続されたメカコントローラー43を備えている。コントローラー40は、印刷データPDに含まれるコマンドを所定のタイミングで送信することにより、メカコントローラー43にメカニカル機構44の駆動を指示する。メカコントローラー43は、コントローラー40から受信したコマンドに基づき所定のシーケンスに従って、主に搬送系及びキャリッジ駆動系を含むメカニカル機構44を駆動制御する。このとき、メカコントローラー43によるメカニカル機構44の駆動タイミングの制御は、コントローラー40が、送信したコマンドに従ったメカニカル機構44のシーケンス動作を終えた旨の応答をメカコントローラー43から受信すると、次のコマンドを送信する手順をとることにより行われる。
【0061】
図2に示すように、メカニカル機構44は、搬送系を構成する搬送モーター61と、キャリッジ駆動系を構成する第1キャリッジモーター(以下、「第1CRモーター62」ともいう)及び第2キャリッジモーター(以下、「第2CRモーター63」ともいう)とを備えている。メカコントローラー43には、モーター駆動回路60を介して搬送モーター61、第1CRモーター62及び第2CRモーター63がそれぞれ接続されている。搬送モーター61は各ローラー21〜27と軸20,28等により構成される搬送機構を駆動するためのものである。
【0062】
また、第1CRモーター62は、キャリッジ31を主走査方向Xに駆動させるための動力源であり、第2CRモーター63はキャリッジ31を副走査方向Yに駆動させるための動力源である。ラテラルスキャン方式では、キャリッジ31を主走査方向Xに移動させてその移動途中に記録ヘッド33からインクを噴射することにより1パス分の印刷を施す主走査(パス)と、キャリッジ31を副走査方向Yに所定ピッチだけ駆動させて記録ヘッド33を次パスの印刷位置までずらす副走査とを交互に所定回数(M回)繰り返す。そして、所定回数の主走査(パス)により、ラテラルスキャン1回分の印刷が施される。なお、本実施形態では、搬送モーター61及び搬送機構により、搬送手段の一例が構成される。また、第1CRモーター62及び第2CRモーター63により、記録手段を移動させるための駆動手段(動力源)の一例が構成される。
【0063】
さらに、図2に示すように、メカニカル機構44は、乾燥系を構成するヒーター19A及び乾燥装置16と、吸引装置34と、メンテナンス装置35とを備え、これらはメカコントローラー43と電気的に接続されている。また、このメカコントローラー43には、入力系として、電源スイッチ65、エンコーダー66及び温度センサー67,68がそれぞれ接続されている。電源スイッチ65のオン/オフ操作により、プリンター11の電源がオン/オフされる。
【0064】
また、メカコントローラー43は、コントローラー40から通信線SL1を通じて受信した各種コマンドに従って、各モーター61〜63、吸引装置34及びメンテナンス装置35を駆動制御する。エンコーダー66は、搬送モーター61を動力源とする搬送駆動系の回転軸の回転を検出するものであり、メカコントローラー43は、エンコーダー66の検出信号(エンコーダーパルス信号)を用いてシート13の搬送量及び搬送位置を検出する。
【0065】
また、温度センサー67は、支持台19の表面温度を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー67の検出温度に基づき、支持台19の表面温度を設定温度に調整する温度制御を行う。また、温度センサー68は、乾燥装置16の炉内温度(乾燥温度)を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー68の検出温度に基づき、乾燥装置16の炉内温度を設定温度に調整する温度制御を行う。
【0066】
制御装置Cは、印刷時に、シート13の次の印刷エリアを支持台19上に配置すべくシート13を搬送する搬送動作と、シート13の印刷エリアを支持台19に吸着させる吸着動作と、記録ヘッド33によるシート13への印刷動作(記録動作)と、1回分の印刷動作終了後にシート13の吸着を解除する吸着解除動作とを行わせる。
【0067】
図3は、コントローラー40の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、コントローラー40内には、CPU51がプログラムを実行することにより構築される機能部分、及びASIC52内の各種の電子回路により構成される機能部分などが設けられている。すなわち、コントローラー40内には、図3に示すように、主制御部71、画像処理部72、ヘッド制御部73及びメカ制御部74を備える。さらに画像処理部72は、解凍処理部75、コマンド解析部76、マイクロウィーブ処理部77及び縦横変換処理部78などを備える。なお、各部71〜78は、本例ではソフトウェアとハードウェアの協働による構成としたが、ソフトウェアのみ、あるいはハードウェアのみで構成してもよい。
【0068】
RAM54には、受信バッファー81と中間バッファー82と印刷バッファー83とが設けられている。ホスト装置120からシリアル通信ポートU2(USBポート)が受信した印刷データPDは受信バッファー81に格納される。
【0069】
次に、図3に示す各部71〜78について詳細に説明する。
主制御部71は、各部72〜78を統括的に制御する。
画像処理部72は、その内部の各部75〜78を用いて、印刷データPDの解凍処理、コマンド解析処理、マイクロウィーブ処理、縦横変換処理などの画像処理を行う。詳しくは、解凍処理部75は、受信バッファー81に格納された印刷データPD(圧縮データ)の解凍処理を行う。解凍された印刷データPDは、プレーンデータMD(印刷画像データ)と、印刷言語で記述された印刷コマンドとを含む。コマンド解析部76は、解凍後の印刷データPD中のコマンドを解析してメカ制御部74へ送る。
【0070】
マイクロウィーブ処理部77は、プレーンデータMDに対してマイクロウィーブ処理を行う。ここで、マイクロウィーブ処理とは、記録ヘッド33のノズル位置のばらつきに起因する印刷ドットの位置のばらつきを抑制するために行われるマイクロウィーブ印刷方式(インターレース記録方式)で印刷を行うためのデータ処理である。ここで、記録ユニット30の主走査により、ノズル38から間欠的に噴射されたインク滴がシート13上に着弾して形成される印刷ドットが、主走査方向Xに1列に並ぶドット列を、「ラスターライン」と呼ぶ。マイクロウィーブ処理では、副走査方向Yに隣り合うラスターラインの間隔が、副走査方向Yに隣接するノズルの間隔に依存しないように、M回の各パスで印刷すべき画素データの並び順を並び替えて、画像データをパス毎に分解するパス分解処理が行われる。本実施形態におけるマイクロウィーブ処理は、M回のパスのうち1回目のパスで印刷されたラスターラインの間(行間)を、2回目以降のパスで印刷されるラスターラインで埋めるように、画像データをパス毎に分解する。
【0071】
すなわち、全て(n個)のノズルを用いて1パス目を印刷して最大n本のラスターラインを描画し、2パス目で前回パスのラスターラインの行間を埋めるようにラスターラインを描画し、これをMパス目まで行って1回目のラスターラインの行間が全て埋めることにより、1回のラテラルスキャンが行われる。このMパスで1巡するラテラルスキャンにより、ノズルの副走査方向Yの位置ばらつき(ノズルピッチのばらつき)に起因するラスターラインの行間のばらつきが原因で発生する主走査方向Xに延びるバンディング(スジ状の濃度むら)が抑制される。マイクロウィーブ処理後のプレーンデータMDは、マイクロウィーブ処理部77から順次転送されて中間バッファー82に格納される。
【0072】
縦横変換処理部78は、中間バッファー82から転送されたマイクロウィーブ処理後のプレーンデータMDに対し縦横変換処理を施す。ここで、プレーンデータMDは、画素が表示用の並び順で配列されたデータである。縦横変換処理では、記録ヘッド33のノズル38からインク滴を噴射する噴射順序に合わせて、表示用の横方向(ノズル列の並び方向)の画素の並び順を、縦方向(ノズル列方向)の並び順に変換する。つまり、1回のパスにおいて180個のノズル38から最初に噴射される180画素、2番目に噴射される180画素、…、最後に噴射される180画素の順番になるように、元の横方向の順番に並ぶ画素の並び順を、噴射順序に合わせた縦方向の順番に変換する縦横変換処理が行われる。縦横変換処理後により生成されたヘッド制御データHDは、縦横変換処理部78から転送されて印刷バッファー83に格納される。
【0073】
ヘッド制御部73は、印刷バッファー83から転送されてきたヘッド制御データHDを、記録ヘッド33毎に分割し、分割した各データを各ヘッド制御ユニット45(HCU)へ逐次転送する。そして、HCU45は記録ヘッド33へヘッド制御データHDを逐次送信する。記録ヘッド33内の不図示のヘッド駆動回路は、ヘッド制御データHDに基づきノズル38毎の噴射駆動素子を駆動制御し、ノズル38からインク滴を噴射させる。このとき、記録ヘッド33の噴射タイミングは、リニアエンコーダー50のエンコーダーパルス信号を基にヘッド制御部73が生成した噴射タイミング信号に基づきヘッド駆動回路が噴射駆動素子の駆動タイミングを制御することにより行われる。なお、画像処理部72とRAM54との間、RAM54とヘッド制御部73との間におけるデータ転送は、CPU51の指示に従うDMAコントローラー(不図示)により行われる。
【0074】
図3に示すメカ制御部74は、コマンド解析部76から受け付けたコマンドをメカコントローラー43へ送る。このコマンドには、例えば搬送コマンド、吸着コマンド、第1キャリッジ起動コマンド(主走査コマンド)、第2キャリッジ起動コマンド(副走査コマンド)、吸着解除コマンドなどがある。メカ制御部74は、メカコントローラー43側の進捗に合わせた適宜なタイミングで、コマンドをメカコントローラー43へ送る。
【0075】
図2に示すメカコントローラー43は、例えば搬送コマンドであればこれに従って搬送モーター61を駆動してシート13を搬送させる。また、主走査コマンドであれば、メカコントローラー43はこれに従って第1CRモーター62を駆動してキャリッジ31を主走査方向Xに移動させる。このときコントローラー40に制御された記録ヘッド33がノズル38からインク滴を噴射し、シート13の印刷エリアへ1パス分の印刷が施される。そして、1パスを終える度に、メカコントローラー43は、副走査コマンドに従って第2CRモーター63を駆動させ、キャリッジ31を次の主走査位置まで副走査方向Yへ移動させる。本実施形態では、メカコントローラー43は、この副走査時に、搬送コマンドに従って搬送モーター61を駆動してシート13を搬送方向(主走査方向Xの下流側)に所定量だけ搬送する。つまり、1パス毎にシート13の搬送も行われる。以降、記録ユニット30の主走査と、副走査及び搬送とを交互に繰り返し、記録ユニット30のMパス毎に1巡するラテラルスキャンを連続的に行うことにより、1つ(1フレーム)の画像(製品)が連続的に印刷される。
【0076】
ここで、本実施形態では、1回のラテラルスキャンにおいて、1パス分の印刷を終える度に、副走査に加え、シート13を所定の搬送量だけ搬送する。1回の主走査では、ノズルを用いて副走査方向Yに複数本のラスターラインが描画される。2パス目〜Mパス目では、1パス目で描画された複数本のラスターラインの行間を1パス毎に順次埋めるように毎パス複数本ずつのラスターラインを描画する。なお、本実施形態のプリンター11では、シート13の同一エリアに同一又は異なる画像(版)を重ねて印刷する複数版印刷が可能である。
【0077】
図5は、3版印刷が行われる場合の例で各版の画像を示す。図5の例は、「あ」の文字の画像を含むラベルが複数コマ配列されて、一度に多数個のラベルを印刷するラベル印刷用の画像である。3版印刷の場合、下層から順番に、第1版〜第3版の画像(版画像)から構成される。すなわち、図5に示すように、1版目の画像データ(以下、「第1版画像データPD1」という)と、2版目の画像データ(以下、「第2版画像データPD2」という)と、3版目の画像データ(以下、「第3版画像データPD3」という)である。
【0078】
第1版画像データPD1は、白インクで白色の下地層をベタ印刷(下地印刷)するための下地画像(ベタ画像)の画像データである。第2版画像データPD2は、CMYK系インクでカラー又はグレイスケールで本画像を印刷(CMYK印刷)するための本印刷用の画像データである。図5の例における本画像は、ラベルの「あ」の文字画像が複数配列された複数コマ画像である。第3版画像データPD3は、透明インク(クリアインク)でオーバーコート層をベタ印刷するためのオーバーコート画像(ベタ画像)の画像データである。
【0079】
本実施形態では、印刷領域を主走査方向Xに版数Nに等しい数でN分割し、基本的に1回のパスで、各分割領域に搬送方向上流側から「下地画像」、「本画像」、「オーバーコート画像」を印刷する。このとき、1パス毎にシート搬送を行って各パスの印刷位置が搬送方向下流側へ一定量ずつ変位させる印刷方法を採用する。
【0080】
はじめに図7を用いて用語を次のように定義する。図7に示す「印刷エリアPA」とは、記録ユニット30が1回のラテラルスキャンにより印刷できる最大範囲(最大記録領域)を指し、支持台19上の矩形エリアで表される。例えばシート13が搬送されても印刷エリアPAは移動しない。図7に示すように、印刷エリアPAの主走査方向長さをリピート長L、副走査方向幅をエリア幅Wとする。このプリンター11では、1パスで印刷しうる最大ラスターライン長が「L」となる。
【0081】
また、ラベル印刷の場合、ラベルが複数コマ配置された矩形状の画像単位を「ページ」と呼ぶ。そして、1ページの画像(複数コマ画像)が印刷エリアPAに納まるように1ページ分又は複数ページ分並べられた矩形状の画像単位を「フレーム」と呼ぶ。また、「フレーム」の主走査方向長さをフレーム長Lf、その副走査方向幅をフレーム幅Wfと呼ぶ。リピート長Lは、フレーム長Lf以上の値として設定される(L≧Lf)。本例では、フレームを印刷エリアPAに等しく設定するものとする。つまり、リピート長Lがフレーム長Lfに等しく、エリア幅Wがフレーム幅Wfに等しくなるように印刷エリアPAを設定している。なお、ラベル印刷などの場合、ページ内の周縁の余白やラベル間の隙間が存在するため、通常、リピート長Lのうちラベル部分、あるいはそのラベル部分よりマージン分だけ少し広い部分に限りインクは噴射される。
【0082】
図7に示すように、本実施形態では、印刷エリアPAを主走査方向Xに版数Nに等しい数でN等分し、搬送方向上流側から順番に、第1分割領域DA1、第2分割領域DA2、…、第N分割領域DANと設定する。1パスで、N個の各分割領域に、搬送方向上流側から順番にそれぞれ第1版〜第N版のラスターラインを印刷する。但し、同一の分割領域に印刷される順序は、下層から上層への順番で、第i版(i=1,2,…,N−1)の印刷層の上に第i+1版が印刷される。つまり、同一分割領域への版の印刷順序は、第1版〜第N版の重ね順になっている。なお、以下の説明において、分割領域DA1,DA2,…,DANを特に区別しない場合は、「分割領域DA」と記すことにする。
【0083】
ここで、分割領域DAの主走査方向長さは、分割領域DAに記録できる最大記録長ΔLとなる。1パス毎のシート13の送り量(搬送量)を主走査送り量Δxとおくと、主走査送り量Δxは、分割領域DAの最大記録長ΔLを、ラテラルスキャン1回当たりのパス数Mで割った値として、式 Δx=ΔL/Mにより与えられる。従来のラテラルスキャン方式では、ラテラルスキャン1回の間は、主走査と副走査が交互に行われるだけで、1回のラテラルスキャンを終えた時点で1フレーム相当長のシート搬送が行われていたが、本実施形態では、シート13の搬送が1パス毎に主走査送り量Δxずつ行われる。
【0084】
図8及び図9は、1回のラテラルスキャンがMパスで行われるMパス印刷方式でN版印刷を行う例を示す。但し、これらの図では、説明を簡単にするため、M=4、N=2とし、4パスで1巡するラテラルスキャンで、下地画像と本画像との2版からなる2版印刷を行う例を示す。版数N=2の例なので、印刷エリアPAは、主走査方向Xに、第1分割領域DA1と第2分割領域DA2に2分割される。また、最大記録長はΔL=L/2、主走査送り量はΔx=ΔL/4、副走査送り量はΔy=Δp/4になる。なお、図8及び図9中にラスターラインRLを示す符号「RL」の後に続く3桁の数字「KiJ」は、前から順に「ラテラルスキャンK回目」、「第i版」「Jパス目」をそれぞれ示す。また、これらの図では、右方向が搬送方向である。
【0085】
図8(a)の例では、1パス目に、印刷エリアPAの上流側(同図の左側)半分の第1分割領域DA1に、記録ユニット30の1パス動作により白ドットのラスターラインRL111が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。1パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δx(=ΔL/4)だけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δy(=Δp/4)だけシフトして2パス目の位置に配置される(図8(b))。
【0086】
そして、図8(c)に示すように、2パス目の印刷が行われ、2パス目の白ドットのラスターラインRL112が、1パス目の白ドットのラスターラインRL111の次行に、Δxだけ搬送方向上流側(図8では左側)の位置に印刷される。そして、2パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして3パス目の位置に配置される。
【0087】
さらに、図8(d)に示すように、3パス目の印刷が行われ、3パス目の白ドットのラスターラインRL113は、2パス目の白ドットのラスターラインRL112の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、3パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして4パス目の位置に配置される。
【0088】
そして、図8(e)に示すように、4パス目の印刷が行われ、4パス目の白ドットのラスターラインRL114が、3パス目のラスターラインRL113の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、4パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され(図8(f))、かつ記録ユニット30が副走査送り量(M−1)・Δyだけ逆方向(図8における上方向)にシフトして1パス目の位置に戻る。
【0089】
次に2回目のラテラルスキャンでは、図9(a)に示すように、1パス目の前半に、印刷エリアPAの第1分割領域DA1に、記録ユニット30の1パス動作により白ドットのラスターラインRL211が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。さらに続いて、この1パス目の後半に、印刷エリアPAの第2分割領域DA2に、カラードットのラスターラインRL221が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。1パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして2パス目の位置に配置される。
【0090】
そして、図9(b)に示すように、2パス目の印刷が行われ、2パス目の白ドットのラスターラインRL212が、1パス目の白ドットのラスターラインRL211の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷されるとともに、第2分割領域に、カラードットのラスターラインRL222が、1パス目のカラードットのラスターラインRL221の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、2パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして3パス目の位置に配置される。
【0091】
さらに、図9(c)に示すように、3パス目の印刷が行われ、3パス目の白ドットのラスターラインRL213は、2パス目の白ドットのラスターラインRL212の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷されるとともに、第2分割領域DA2にカラードットのラスターラインRL223が、2パス目のカラードットのラスターラインRL222の次行にΔxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、3パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして4パス目の位置に配置される。
【0092】
以下、同様に、4パス目の印刷が行われ(図9(d))、4パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され(図9(e))、かつ記録ユニット30が副走査送り量(M−1)・Δyだけ逆方向(図9おける上方向)にシフトして1パス目の位置に戻る。つまり、次のラテラルスキャンの1パス目の位置に戻る。
【0093】
1回のラテラルスキャンで1パス毎にΔL/Mの搬送がM回行われることにより、合計で分割領域DAの主走査方向長さである最大記録長ΔLの搬送が行われる。つまり、ラテラルスキャン1回毎に、シートが分割領域DA一つ分ずつ搬送される。このため、今回のラテラルスキャンでは、前回のラテラルスキャンで印刷された下層の上にその上層が印刷される。そして、これが連続的に繰り返されることにより、下層(第i版)の印刷から上層(第i+1版)の印刷までの時間間隔がラテラルスキャン1回分の所要時間だけ確保されつつ、複数版印刷が行われる。
【0094】
さらに1パス毎にΔL/Mの搬送が入り、ラスターラインRLがパス毎に主走査方向XにΔL/Mずつずれるので、1回のラテラルスキャンで印刷される画像はその主走査方向Xの両端がジグザグ形状(鋸歯形状)となった画像形状になる(図8(e),(f))。そして、今回のラテラルスキャンで、前回のラテラルスキャンで印刷された画像の搬送方向上流側端部のジグザグ形状と次回のジグザグ形状が噛み合うように同形状の画像が印刷される。このため、前回と今回のラスターラインRLの境界が主走査方向Xにずれるので、副走査方向に延びるバンディングの発生が抑制される。本実施形態では、分割領域の領域幅(主走査方向長さである最大記録長ΔL)内で、ラスターラインRLが印刷されうる行領域が、記録対象領域となる行記録領域に相当する。なお、行記録領域内に印刷(記録)されるドットは、画像データに依存するので、行記録領域内の全てにドットが印刷される訳ではなく、全くドットが印刷されない行記録領域も存在する。
【0095】
上記の例では、4パス/版の場合であったが、8パス/版の場合でも考え方は同じである。つまり、2版印刷であれば、主走査送り量ΔxがL/16になり、副走査送り量ΔyがΔp/4になる。また、3版以上の複数版印刷でも考え方は同じである。例えば3版印刷では、1回目のラテラルスキャンでは第1分割領域DA1に下地画像が印刷され、2回目のラテラルスキャンでは第1分割領域DA1に下地画像が印刷されるとともに、第2分割領域DA2に本画像が1回目の下地画像の上に印刷される。そして、3回目のラテラルスキャンでは、第1分割領域DA1に下地画像が印刷され、第2分割領域DA2に本画像が1回目の下地画像の上に印刷され、さらに第3分割領域DA3にオーバーコート画像が2回目の本画像の上に印刷される。
【0096】
図10及び図11はこのような3版印刷の例におけるラテラルスキャン単位の印刷手順を示す。図10はラテラルスキャンの回数別に印刷手順を示し、図11はラテラルスキャンの版別に印刷手順を示す。図10(a)に示すように、ラテラルスキャン1回目に、白色の下地画像P1が印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで、図10(a)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状(鋸歯形状)となった印刷パターンで下地画像P1が印刷される。
【0097】
次に、図10(b)に示すように、ラテラルスキャン2回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が1回目のラテラルスキャンで印刷された下地画像P1の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで印刷される下地画像P1と本画像P2は、図10(b)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、1回目の下地画像P1と2回目の下地画像P1は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。
【0098】
さらに図10(c)に示すように、ラテラルスキャン3回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が2回目の下地画像P1の上に印刷され、第3分割領域DA3に透明インクでオーバーコート画像P3が2回目の本画像P2の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで印刷される下地画像P1と本画像P2とオーバーコート画像P3は、図10(c)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、2回目の本画像P2と3回目の本画像P2は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。
【0099】
また、図10(d)に示すように、ラテラルスキャン4回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が3回目の下地画像P1の上に印刷され、第3分割領域DA3に透明インクでオーバーコート画像P3が3回目の本画像P2の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、下地画像P1と本画像P2とオーバーコート画像P3は、図10(c)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、3回目のオーバーコート画像P3と4回目のオーバーコート画像P3は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。なお、図10及び図11でジグザグ形状の印刷パターンになるのは、ベタ印刷などシート13の全面に印刷する場合の例であり、画像間の隙間がある場合には印刷されないその隙間部分では必ずしもジグザグ形状とはならない。
【0100】
本実施形態では、第i版(但しiは自然数)の上層に第(i+1)版が印刷されるまでに、ラテラルスキャン1回分の待ち時間が確保される。これにより、この待ち時間が、下層の第i版(下地画像P1、本画像P2)の上に第(i+1)版(本画像P2、オーバーコート画像P3)が印刷されるまでの乾燥時間として確保される。このため、第i版の上に第(i+1)版が印刷されたときにインクの滲みを回避し易くなる。つまり、下地画像P1の上に印刷される本画像P2の滲みや、本画像P2の上にオーバーコート画像P3が印刷されたときの本画像P2の滲みが回避され易くなっている。
【0101】
また、1パス毎に印刷位置を主走査方向にずらし、各版の印刷範囲の主走査方向両端をジグザグ形状とするので、例えばラベル内に版の境界が位置しても、ラベル内に副走査方向Yに延びるバンディングが発生しにくくなっている。このように本実施形態では、主走査方向Xに延びるバンディングをマイクロウィーブ印刷により抑制し、副走査方向Yに延びるバンディングをパス毎に実施されるシート搬送により抑制する。
【0102】
画像データから上記の印刷手順で印刷が可能なヘッド制御データを作成するために、本実施形態の主制御部71とマイクロウィーブ処理部77などは、図6に示す詳細な構成を有している。すなわち、図6に示すように、演算部90と、マイクロウィーブ処理部77内に設けられたパス分解処理部91、ノズル割付処理部92及びカウンター93とを備えている。演算部90は、例えば主制御部71内に設けられている。
【0103】
マイクロウィーブ処理部77は、第1版画像データPD1、第2版画像データPD2、…第N版画像データPDNを入力する。パス分解処理部91は、版画像データPD1〜PD3をパス毎に分解するパス分解処理を行う。本実施形態では、ラテラルスキャン3回目以降は、1パスで3版の画像のラスターラインを印刷するため、N個の版画像データPD1〜PDNから対応する分割領域DA1〜DANのうちそのときのパスに対応する部分の画素列データを、1パス毎に入るシート搬送で主走査方向にずれる主走査送り量Δx分を考慮して抜き出すことによりパス分解処理を行う。
【0104】
ノズル割付処理部92は、パス分解された画素列データをノズルに割り付けるノズル割付処理と、CMYK各色のノズル列間で噴射タイミングを調整すべく、ノズル列毎の画素データの配置位置をダミーデータの付加によってずらす列間ずらし処理とを行う。
【0105】
縦横変換処理部78は、中間バッファー82からパス分解後のプレーンデータを処理単位分ずつ読み出し、ノズル割付処理結果及び列間ずらし処理結果を反映しつつプレーンデータの画素の順序を横方向から縦方向へ並び換える縦横変換処理を行う。そして、縦横変換処理後のヘッド制御データを印刷バッファー83に格納する。
【0106】
カウンター93は、マイクロウィーブ処理を行ううえで、パス分解処理の対象がMパスのうち何パス目かを計数する処理と、ラテラルスキャンの回数を計数する処理などを行う。演算部90は、マイクロウィーブ処理部77がパス分解処理及びノズル割付処理などで使用する制御値を演算して、マイクロウィーブ処理部77に与える。パス分解処理部91は、演算部90から取得した各種の制御値、及びカウンター93が計数するパス数及びラテラルスキャン回数などの各計数値を用いて、そのときのラテラルスキャン回数及び何パス目かの情報に応じた画素列データを抜き取ることで、パス分解処理を行う。
【0107】
次に、演算部90が演算する制御値について説明する。図6に示すように、演算部90は、版数N、パス数M、リピート長Lの各データを入力する。ここで、版数Nは、ユーザーが操作部124を操作して入力した値である。パス数Mは、そのときの印刷モードから決まる印刷解像度に応じた値として設定され、印刷解像度が高いほど大きな値をとる。本例では、印刷解像度の低い印刷モードではパス数M=4の「4パス印刷」が設定され、印刷解像度の高い印刷モードではパス数M=8の「8パス印刷」が設定される。リピート長Lは、ユーザーが操作部124を操作して入力したフレーム長Lfを用いる。但し、印刷エリアPAを固定とし、不揮発性メモリー55に予め記憶されたリピート長Lを用いることもできる。
【0108】
演算部90は、取得した版数N、パス数M、リピート長Lを用いて、プリンター11の印刷制御に用いられる各種の制御値を演算する。制御値には、1パスで1つの分割領域に記録しうる最大記録長ΔL、主走査送り量Δx、副走査送り量Δyがある。これらの制御値ΔL,Δx,Δyは、版数N、パス数M、リピート長Lを用いて算出される。すなわち、最大記録長ΔLは、式 ΔL=L/Nにより演算される。また、主走査送り量Δxは、式 Δx=ΔL/Mにより演算される。さらに副走査送り量Δyは、式 Δy=Δp/Mにより演算される(図7を参照)。もちろん、Δyの演算式として、所望の印刷解像度が得られる適宜な式を採用できる。
【0109】
次にプリンター11の作用を、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、必要に応じて図8及び図9を用いて説明する。また、このフローチャートによる処理の前あるいは当該処理と並行して、マイクロウィーブ処理部77がプレーンデータにパス分解処理及びノズル割付処理などを順次施すマイクロウィーブ処理と、縦横変換処理部78がマイクロウィーブ処理後のプレーンデータに縦横変換処理を施す処理が行われる。これらマイクロウィーブ処理及び縦横変換処により生成されたヘッド制御データが、ヘッド制御部73からHCU45を介して記録ヘッド33へ順次転送される。
【0110】
まずステップS1では、版数N、パス数M、リピート長Lを取得する。本例では、3版印刷及び低印刷解像度の印刷モードが設定され、版数N=3、パス数M=4が設定されたものとする。
【0111】
ステップS2では、最大記録長ΔL=L/N、主走査送り量Δx=ΔL/Mを演算する。
ステップS3では、J=1,K=1を設定する。つまり、不図示のカウンター(メカ制御部内のカウンター)にJ,Kの初期値を設定する。ここで、カウント値Jは、ラテラルスキャン1回のMパスのうち今回が何パス目であるかを示す計数値である。このカウント値Jは、記録ユニット30を1パス目の位置に戻すかどうかの判断に用いられる。また、カウント値Kは、ラテラルスキャン回数を版数Nに達するまで計数する計数値である。このカウント値Kは、1パスでN版全ての印刷を実施する回数N(版数Nに等しい回数)に達したか否かの判断に用いられる。つまり、本実施形態では、ラテラルスキャン1回目は第1版のみの印刷、ラテラルスキャン2回目は第1版及び第2版の印刷、ラテラルスキャンN回目以降は第1版〜第N版が印刷される。カウント値Kは、ラテラルスキャン回数が、このN版全てが印刷されるようになるまでの回数に達したか否かの判断に使用される。
【0112】
ステップS4では、印刷エリアPAをN分割した各分割領域に第1版〜第K版の対応する部分画像(副走査方向YにノズルピッチΔpの間隔をおいたラスターライン)を印刷するためのJパス目の印刷を行う。ラテラルスキャン1回目(K=1)の1パス目(J=1)である今回は、図8(a)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで第1版(下地画像)のラスターラインRL111を印刷する。なお、本実施形態では、ステップS4の処理が、今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程に相当する。
【0113】
ステップS5では、主走査送り量Δxでシート搬送を行う。つまり、メカ制御部74が主走査送り量Δxを指定した主走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した主走査コマンドに基づき搬送モーター61を駆動することにより、シート13を主走査送り量Δxだけ搬送させる。この結果、1パス目の印刷を終えた後、図8(b)に示すように、主走査送り量Δx分のシート搬送が行われる。
【0114】
ステップS6では、J=Mであるか否かを判断する。つまりラテラルスキャン1回分が終了したか否かを判断する。J=MでなければステップS7に進み、一方、J=MであればステップS9に進む。J=1(1パス目)である今回はステップS7に進むことになる。
【0115】
ステップS7では、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する。つまり、メカ制御部74が副走査送り量Δyを指定した副走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した副走査コマンドに基づき第2CRモーター63を駆動することにより、記録ユニット30を副走査送り量Δyだけ副走査させる。なお、本実施形態では、ステップS4及びステップS7の処理が、走査位置切替え工程に相当する。
【0116】
そして、次のステップS8においてJ値をインクリメントした後、ステップS4に戻る。すなわち、J値をインクリメントしてJ=2とした後、ステップS4に戻る。
そして、2パス目の印刷を行う(S4)。この2パス目は図8(c)に示すように、1パス目のラスターラインRL111の次行にラスターラインRL112がラスターラインRL111に対して主走査方向Xの上流側にΔL/M(つまり分割領域幅の1/M)だけずれて印刷される。
【0117】
2パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ2パス目(J=2)でMパス目(本例では4パス目)に達していないので(J≠M)(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。そして、J値をインクリメントしてJ=3とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0118】
そして、3パス目の印刷を行う(S4)。この3パス目は図8(d)に示すように、2パス目のラスターラインRL112の次行にラスターラインRL113がラスターラインRL112に対して主走査方向Xの上流側にΔL/Mだけずれて印刷される。
【0119】
3パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ3パス目(J=3)でMパス目に達していないので(J≠M)(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。そして、J値をインクリメントしてJ=4とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0120】
そして、4パス目の印刷を行う(S4)。この4パス目は図8(e)に示すように、3パス目のラスターラインRL113の次行にラスターラインRL114がラスターラインRL113に対して主走査方向Xの上流側にΔL/Mだけずれて印刷される。
【0121】
4パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このため、シート13は図8(f)の位置に配置される。そして、J=M(本例ではJ=4)であると判断されるので(S6で肯定判定)、ステップS9において、記録ユニット30を1パス目の位置へ戻す。つまり、メカ制御部74は主走査送り量「−3・Δy」を指定した副走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した副走査コマンドに基づき第2CRモーター63を駆動することにより、記録ユニット30を副走査送り量「−3・Δy」だけ副走査させて1パス目の位置に戻す。そして、次のステップS10においてJ=1に戻す。
【0122】
続いてステップS11では、K=Nであるか否かを判断する。つまり、ラテラルスキャン回数Kが版数Nに等しい値に達したか否かを判断する。K=NでなければステップS12に進み、K=NであればステップS13に進む。今回は、1回目のラテラルスキャンを終えた段階でK=1であるので、ステップS12に進む。
【0123】
ステップS12では、K値をインクリメントする(K=K+1)。
そして、ステップS13では、印刷終了であるか否かを判断する。すなわち、印刷データに基づく画像の印刷を指定ページ分すべて終わると、印刷終了と判断する。例えば主制御部71は印刷ページ数を計数しており、その計数値が指定ページ数に達すると、印刷終了と判断する。まだ印刷すべきページが残っており印刷終了でなければステップS4に戻り、印刷終了であれば当該ルーチンを終了する。今回はまだ印刷終了ではないので、ステップS4に戻る。
【0124】
このように1回目のラテラルスキャンでは、M回のパス動作で、1パス毎に主走査方向XにΔL/Mずつずらしつつ第1分割領域DA1に、白色のラスターラインRL111〜RL114を印刷して、下地画像だけが印刷される。つまり、図8(e)に示すように、主走査方向にΔL/MずつずれたラスターラインRL111〜RL114からなる第1版の画像(下地画像)のみ印刷される。このとき、パス毎のラスターラインRL111〜RL114の主走査方向両端位置はそれぞれΔL/Mずつずれている。このため、ラテラルスキャン1回目で印刷された下地画像はその主走査方向両端形状がジグザグ形状(鋸歯形状)になっている。そして、1回目のラテラルスキャンを終えると、記録ユニット30が1パス目の位置に戻され、かつシート13は図8(f)の状態、つまり2回目のラテラルスキャンの開始位置に配置される。
【0125】
次に2回目のラテラルスキャンが行われる。
ステップS4では、印刷領域をN分割した各分割領域に第1版〜第3版の対応する部分画像(ラスターライン)を印刷するためのJパス目の印刷を行う。ラテラルスキャン2回目(K=2)の1パス目(J=1)である今回は、図9(a)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで第1版(下地画像)のラスターラインRL211が印刷されるとともに、第2分割領域DA2に前回の1パス目のラスターラインRL111(下地画像(白色))の上に重ねてカラーインクでラスターラインRL221(図9では黒丸のドット列)が印刷される。
【0126】
2回目のラテラルスキャンにおける1パス目を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このとき、まだ1パス目(J=1)でMパス目に達していない(J≠M)ので(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S7)。そして、J値をインクリメントした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0127】
そして、2パス目の印刷を行う(S4)。この2パス目は、図9(b)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで2パス目のラスターラインRL212が、前回の2パス目のラスターラインRL112に対して搬送方向上流側(図9では左側)に隣接して印刷される。さらに第2分割領域DA2には、カラーインクで2パス目のラスターラインRL222が、前回の2パス目のラスターラインRL112(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0128】
2パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ2パス目(J=2)でMパス目に達していない(J=M)ので(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S7)。そして、J値をインクリメントしてJ=3とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0129】
そして、3パス目の印刷を行う(S4)。この3パス目は図9(c)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで3パス目のラスターラインRL213が、前回の3パス目のラスターラインRL113の搬送方向上流側(図9では左側)に隣接するように印刷される。さらに第2分割領域DA2にはカラーインクで3パス目のラスターラインRL223が、前回の3パス目のラスターラインRL113(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0130】
3パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行うとともに(S5)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。
そして、4パス目(最初から8パス目)の印刷を行う(S4)。この4パス目は図9(d)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで4パス目のラスターラインRL214が、前回の4パス目のラスターラインRL114の搬送方向上流側(図9では左側)に隣接するように印刷される。さらに第2分割領域DA2にはカラーインクで4パス目のラスターラインRL224が、前回の4パス目のラスターラインRL114(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0131】
そして、4パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このため、シート13と印刷エリアPAは図9(e)の位置関係に配置される。そして、Mパス目に達した(J=M)(本例ではJ=4)と判断されるので(S6で肯定判定)、記録ユニット30を1パス目の位置へ戻す(S9)。そして、J=1に戻す(S10)。
【0132】
続いてラテラルスキャン回数Kが版数N(図8、図9の例ではN=2)に等しい値に達した(K=N)か否かを判断する。K=N(K=2)であるので、ステップS13において印刷終了であるか否かを判断する。印刷終了でなければ(S13で否定判定)ステップS4に戻る。例えば主制御部71が、印刷ページ数の計数値が指定ページ数に達していないと判断すればステップS4に戻る。
【0133】
こうして2回目のラテラルスキャンを終えると、3回目のラテラルスキャンを行う。3回目のラテラルスキャンでは、新たに白インクで各パスのラスターラインがパス毎にΔL/Mだけずらして印刷されるとともに、前回(2回目)の下地画像(白色)のラスターラインの上にカラーインクで本画像のラスターラインが重ねて印刷される。
【0134】
こうして今回の印刷で第1分割領域DA1に新たな下地画像が白インクで印刷されるとともに、第2分割領域DA2には前回印刷された下地画像の上に本画像が重ねて印刷される。そして、これが連続的に行われ、指定ページの印刷が終了すると(S13で肯定判定)印刷が終了される。
【0135】
なお、2版印刷である本例では、下地画像に着目すれば、1回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、2回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、本画像に着目すれば、2回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、3回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、2版印刷である本例では、N回目(本例はN=2)以降のラテラルスキャンにおいて、N個(2個)の分割領域に、第1版画像と、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する前回のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、N個の分割領域に、第1版画像と、前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する今回のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。
【0136】
また、3版印刷の場合は、図10(a)及び図11に示すように、ラテラルスキャン1回目で第1版の下地画像P1が印刷される。また、図10(b)及び図11に示すように、ラテラルスキャン2回目で、第1版の下地画像P1が前回の下地画像P1に対して搬送方向上流側に隣接して印刷されるとともに、第2版の本画像P2が前回の下地画像P1の上に重ねて印刷される。そして、図10(c)及び図11に示すように、ラテラルスキャン3回目で、第1版の下地画像P1が前回の下地画像P1に対して搬送方向上流側に隣接して印刷されるとともに、第2版の本画像P2が前回の下地画像P1の上に重ねて印刷され、さらに第3版のオーバーコート画像P3が前回の本画像P2の上に重ねて印刷される。以降、ラテラルスキャン4回目以後は、印刷エリアPAがシート13の前回の位置に対して分割領域一つ分だけ搬送方向下流側に位置し、3回目と同様に、シート13の上流側(第1分割領域DA1側)から順番に、新たな下地画像P1の印刷、前回の下地画像P1の上への本画像P2の印刷、前回の本画像P2の上へのオーバーコート画像P3の印刷が行われる。
【0137】
なお、3版印刷である本例では、下地画像に着目すれば、1回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、2回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、本画像に着目すれば、2回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、3回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。さらにオーバーコート画像に着目すれば、3回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、4回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、3版印刷である本例では、N回目(本例はN=3)以降のラテラルスキャンにおいて、N個(3個)の分割領域に、第1版画像と、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する前回のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、N個の分割領域に、第1版画像と、前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する今回のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。
【0138】
このように本印刷方法によると、2版印刷の場合は、前回の下地画像の印刷からその上に重ねられる今回の本画像の印刷までの間に、ラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい待ち時間(乾燥時間)が確保される。この結果、下地画像の上に印刷された本画像のインクが滲みにくくなる。また、3版印刷の場合は、前回の下地画像の印刷からその上に重ねられる今回の本画像の印刷までの間、及び前回の本画像の印刷からその上に重ねられる今回のオーバーコート画像の印刷までの間に、ラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい待ち時間(乾燥時間)が確保される。この結果、下地画像の上に印刷された本画像のインクが滲みにくくなるうえ、本画像の上にオーバーコート画像が印刷された際の本画像のインクが滲みにくくなる。
【0139】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)前回のラスターラインRLの行間を埋めるように今回のラスターラインRLを印刷するマイクロウィーブ印刷を行うとともに、分割領域一つ分の幅の1/Mである主走査送り量ΔL/Mでシート搬送を行いつつ、各分割領域に搬送方向上流側から順番に第1版〜第N版の印刷をそれぞれ施す。よって、あるパスで隣接ノズルで印刷したラスターラインRLの行間を、次パス以降で印刷されるラスターラインRLが埋めるので、主走査方向に延びるバンディングの発生を抑制できるうえ、パス毎の行記録領域が主走査方向XにΔL/Mずつずれるので、副走査方向に延びるバンディングの発生を抑制することができる。
【0140】
(2)前回のラテラルスキャンで印刷した画像の上に今回のラテラルスキャンで本画像を印刷するので、下層の画像の印刷と、その上層の画像の印刷との間にラテラルスキャン1回分の所要時間に相当する待ち時間(乾燥時間)を確保することができる。よって、この待ち時間の間に、下層の画像のインクの乾燥が進んでから、上層の画像を印刷することができる。この結果、上層の画像のインクが滲みにくくなり、印刷品質を高めることができる。例えば2版印刷の場合、下地画像の上に本画像を印刷したときのインクの滲みを抑えることができる。また、3版印刷の場合、さらに本画像の上にオーバーコート画像を印刷した際の本画像のインクの滲みも抑えることができる。よって、印刷品質の高いラベル等の製品(印刷物)を提供することができる。
【0141】
(3)N=3としたので、下地印刷と本印刷とオーバーコート印刷の3版の画像を、主走査方向Xにも副走査方向Yにもバンディングの少ない高品質に印刷することができる。
(4)1パスにおいて、印刷エリアPAを主走査方向XにN分割した各分割領域DA1〜DANに、第1版〜第N版の各画像のラスターラインRLを印刷するので、無駄なく印刷ができるうえ、前回と今回のラテラルスキャンの間に、インクを乾燥させるための停止時間を設ける必要がない。よって、印刷品質の高い製品を効率よく生産(印刷)できる。
【0142】
(5)下層の版画像が印刷されてからその上層の版画像が印刷されるまでの乾燥時間T1(時間間隔)が、下層インクの乾燥に必要な設定時間To以上確保される。よって、シート13上に印刷されたラベル等の印刷物にインクの滲みが発生する事態を効果的に回避できる。
【0143】
(6)1回のラテラルスキャンの所要時間(つまり乾燥時間)が設定時間To以上確保されないと判断された場合、主走査速度、副走査速度を遅くするか、パス間又はラテラルスキャン間の停止待機時間を長くする調整を行い、ラテラルスキャン1回の所要時間を設定時間To以上にする。よって、比較的乾燥しにくいインクを使用して複数版印刷を行う場合でも、そのインクの乾きにくさに影響されず、品質の高い印刷を効率よく行うことができる。
【0144】
(7)特にエコソルインクやUVインクに比べ乾燥又は硬化しにくい水性レジンインクを使用した場合でも、画像の滲みを回避し易い。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
【0145】
・複数版印刷の場合に、前回印刷が施された下層の画像の乾燥のために待ち時間が必要であるか否かを判断する判断手段を設けてもよい。判断手段により乾燥のための待ち時間が必要であると判断された場合、制御手段は、記録ユニット30の移動速度(主走査速度と副走査速度とのうち少なくとも一方)を遅くするか、今回の記録ユニット30の相対移動の開始を遅らせることにより、必要な待ち時間が確保されるようにする。なお、判断手段が判断するステップが判断ステップに相当する。よって、前回の印刷と、今回の印刷との間に必要な乾燥時間が確保される。従って、前回の印刷が施された部分が必要な程度に乾燥した後、前回の印刷の上に今回の印刷が施されるので、今回の印刷によるインクの滲みが発生しにくくなる。
【0146】
・パス毎に主走査方向にΔx(=ΔL/M)ずつずらしたが、パスによって主走査送り量Δxを変化させてもよい。この場合、行記録領域の境界が現れる主走査方向の間隔が不均一になるので、副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。
【0147】
・分割領域はN等分の分割に限定されない。分割領域の領域幅が不均一でも副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。
・ラテラルスキャン方式のプリンターに適用したが、シリアルプリンターに適用してもよい。例えばシリアルプリンターにおいてインターレース記録方式で記録する場合、例えば、記録ヘッドが主走査方向に移動する途中で使用ノズルを切り換えて、主走査方向かつ副走査方向に位置の異なる行記録領域のそれぞれにドット列を形成する。そして、次の主走査で、前回の主走査での行記録領域と同じ行で隣接する行記録領域にドット列を記録する。例えば記録ヘッドには副走査方向上流側に予備ノズルが設けてあり、1パス目は予備のノズルは使用せず、2パス目以降で予備ノズルも使用すれば、1パス毎にシート(用紙)が搬送されても、前回のパスの行記録領域に隣接する行記録領域にドット列を記録することはできる。このようなシリアルプリンターであっても、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも共に発生しにくくすることができる。また、使用ノズルの切り換えによる方法に替えて、1回の主走査の途中で記録媒体の副走査方向への搬送を間欠的に入れることにより、複数の行記録領域を主走査方向かつ副走査方向にずれた位置とする構成も採用できる。
【0148】
・シリアルプリンターで複数版印刷を行う場合は、搬送方向上流側から順番に、白インクを噴射する第1記録ヘッド(第1版用記録ヘッド)、カラーインクを噴射する第2記録ヘッド(第2版用記録ヘッド)、オーバープリント用のインクを噴射する第3記録ヘッド(第3版用記録ヘッド)を配置してもよい。つまり、版専用の記録ヘッドを下層側の版画像を印刷するものほど搬送方向上流側に位置するように配置し、下層が印刷された後に、その搬送方向下流側においてその下層上に上層の印刷が施されるようにする。例えば、N版印刷を行う場合は、N個の各版専用の記録ヘッドを、搬送方向に第1版用の第1記録ヘッドから第N版用の第N記録ヘッドまで順番に配置する。
【0149】
・前記実施形態では、同一版(例えば第1版)の同一行のドット列を印刷する際に、ラテラルスキャン1回目の1パス目とラテラルスキャン2回目の1パス目を同じノズルを使用して印刷したが、ラテラルスキャン1回目の1パス目とラテラルスキャン2回目の1パス目を、異なるノズルを使用して印刷してもよい。この構成によれば、バンディングを一層低減し易くなる。
【0150】
・下地印刷とオーバーコート印刷のための各版の画像は、高解像度印刷の必要がないので、大きなドットで、Mパスより小さいQパス(Q=M/2R、但しRは自然数)の印刷で済ませてもよい。この構成によれば、本画像を印刷する全てのパスのうち一部のパスでは下地画像とオーバーコート画像の印刷は不要になる。例えば1パスの移動範囲を本画像の印刷に必要な所定範囲に制限したり、少なくとも初回と最終回のラテラルスキャンのパス数をQパスに留めたりすることができる。この結果、印刷効率を向上させることができる。
【0151】
・ラテラルスキャン方式のプリンター又はシリアルプリンターにおいて、インターレース記録方式を用いることは必須ではない。例えばノズル列の一部又は全部のノズルを用いて、主走査方向かつ副走査方向にずれて設定される複数の行記録領域のそれぞれにドット列を記録する第1の記録工程と、第1の記録工程で設定された前回の行記録領域と同一行で隣接する行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程とを行い、以降、前回の第2の記録工程で設定された行記録領域を前回の行記録領域として、第2の記録工程を繰り返し行う構成とする。ノズル列の一部又は全部のノズルを用いて、インターレース記録方式以外の記録方式で記録を施した場合も、副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。例えばバンド印刷で複数版を重ねて印刷する場合でも、下層の版の印刷からその上に重ねられる上層の版の印刷までの時間間隔を長くでき、しかも記録媒体を主走査方向に分割した各分割領域に記録を施す場合には前回と今回の記録の境界が副走査方向に延びるバンディングの原因にもなるが、この種の境界が少なくともバンド行毎に主走査方向にずれて位置するので、副走査方向に延びるバンディングを目立たなくすることができる。
【0152】
・版数は複数に限定されない。1版のみ印刷する構成でもよい。1版のみ印刷する場合でも、本発明の記録方法で記録を行えば、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも低減できる。
【0153】
・複数版印刷は2版印刷又は3版印刷に限定されない。例えば4版印刷以上の印刷を行う構成としてもよい。
・複数版のうち少なくとも2版が、同一の画像を二度重ねて印刷する構成であってもよい。
【0154】
・2版印刷の場合に使用するインクは、白とカラーの組合せ及びカラーとオーバーコートの各インクの組合せでもよい。さらに白用とオーバーコート用の各インクの組み合わせでもよい。要するに、白とカラーとオーバーコート用の各インクのうちどの組合せを採用してもよい。
【0155】
・記録手段は、複数個の記録ヘッドを備えた記録ユニットに替え、1個の記録ヘッドでもよい。
・図3及び図6におけるコントローラーの各機能部を、プログラムを実行するCPUとASICにより主にソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したが、ソフトウェアにより実現したり、ハードウェアにより実現したりしてもよい。
【0156】
・前記実施形態では、印刷装置として、インクジェット式のプリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【符号の説明】
【0157】
11…記録装置の一例であるプリンター、13…記録媒体の一例であるシート、30…記録手段の一例である記録ユニット、31…記録手段を構成するキャリッジ、33…記録手段を構成する記録ヘッド、38…ノズル、39…ノズル列、40…コントローラー、43…メカコントローラー、44…メカニカル機構、45…ヘッド制御ユニット(HCU)、51…CPU、52…ASIC、53…ROM、54…RAM、55…不揮発性メモリー、61…搬送手段を構成する搬送モーター、62…第1CRモーター、63…相対移動手段の一例を構成する第2CRモーター、71…主制御部、73…ヘッド制御部、74…メカ制御部、76…コマンド解析部、77…マイクロウィーブ処理部、78…縦横変換部、90…演算部、91…パス分解処理部、92…ノズル割付処理部、93…カウンター、100…印刷システム、110…画像生成装置、120…ホスト装置、C…制御手段の一例である制御装置、PD…印刷データ、PD1…第1版画像データ、PD2…第2版画像データ、PD3…第3版画像データ、PDN…第N版画像データ、PA…最大記録領域の一例である印刷エリア、DA1…分割領域の一例である第1分割領域、DA2…分割領域の一例である第2分割領域、DA3…分割領域の一例である第3分割領域、DAN…分割領域の一例である第N分割領域、L…リピート長、ΔL…最大記録長、Δx…主走査送り量、Δy…副走査送り量、RL…ドット列の一例であるラスターライン、P1…下地画像、P2…本画像、P3…オーバーコート画像、X…主走査方向、Y…副走査方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテラル記録方式やシリアル記録方式などのように、記録ヘッド等の記録手段を走査させることにより記録媒体に記録を施す記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ラテラルスキャン式プリンターやシリアル式プリンターなどの印刷装置(記録装置)では、キャリッジを主走査方向に複数回(複数パス)移動させつつ、各移動途中にキャリッジに設けられた記録ヘッドのノズルからインク滴を噴射して記録媒体(ターゲット)に文書や画像を印刷する。記録ヘッドのターゲットと対向するノズル形成面には、主走査方向と交差する副走査方向に複数(例えば180又は360)個のノズルを一定ピッチで配列するノズル列が色毎に形成されている。
【0003】
キャリッジが主走査したときに各ノズルが主走査方向に一列に描画するドット列(ラスターライン)の副走査方向の間隔は、ノズルのピッチのばらつきに依存する。例えば全てのノズルを使用して印刷するバンド印刷では、ノズルのピッチのばらつきがラスターラインの間隔のばらつきとして反映されるため、印刷画像に主走査方向に延びる白スジ等のバンディング(濃度むら)が発生し、印刷品質低下の原因となる。これは、隣接するラスターラインの描画に使用されるノズルが常に同じ隣接ノズルであるためである。このため、特に高品質の印刷画像を印刷する必要のある印刷モードでは、隣接するラスターラインの描画に使用される使用ノズルを隣接ノズルとならないように選択して記録するインターレース記録方式(マイクロウィーブ記録方式)が採用される場合がある。
【0004】
インターレース記録方式では、ノズル列を構成する全ノズルのうち副走査方向に所定個数おきのノズルを使用ノズルとして、1回目のキャリッジの主走査(パス)で複数本のラスターラインを描画し、その後、次回のパス位置まで副走査方向に移動し、次のパスで使用ノズルを用いて前回の画素ラインの隙間を埋めるようにラスターラインを描画し、これを複数回繰り返して隙間をラスターラインで徐々に埋めて印刷画像を形成する。
【0005】
例えば特許文献1には、バンディングを低減するために、補正用パターンを印刷してこれをスキャナーで読み取って得た読取階調値に基づいてノズルに対応する列領域の階調値を補正する補正値を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−253699号公報
【特許文献2】特開2000−229425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ラテラルスキャン方式では、ロール紙などの長尺状の記録媒体にラベル用の画像などを連続的に印刷する場合、キャリッジ(記録ヘッド)の主走査が記録媒体の搬送方向であるため、印刷媒体の長手方向に所定長さ分ずつ印刷が進められる。このため、記録ヘッドの前回の印刷と、次回の印刷との境界が、1つの画像内に発生する場合が起こりうる。この場合、画像内に前回と今回の印刷の境界部分に、副走査方向に延びる白スジ等のバンディングが発生してしまうという問題がある。前述の特許文献1に開示された技術は、製品出荷時になどに印刷装置に階調値補正用の補正値が初期設定されるものであり、この種の前回の印刷と今回の印刷との境界にできる副走査方向に延びるバンディングは、特許文献1の技術によっても解消することはできない。
【0008】
なお、透明フィルムなどの透明の記録媒体に印刷を施す場合、まず下地色(例えば白色)のインクで下地の版画像(例えばベタ印刷画像)の印刷(下地印刷)を施した後、下地の版画像の上に重ねて本画像の版の印刷(本印刷)を施す2版印刷が行われる。この場合、下地のインクが乾きにくいと、半乾きの下地印刷上に施された本印刷のインクが滲み、印刷品質の低下を招く。これを解決するためには、例えば、主走査時に印刷エリアの上流側半分に下地印刷、下流側半分に本印刷を施し、インターレース記録方式で所定回数の主走査を終えて1回のラテラルスキャンを終える度に、主走査方向へ印刷エリア長の半分だけ長尺の記録媒体を搬送し、以降、これを交互に繰り返し行う記録方法が考えられる。この記録方法であれば、前回の下地印刷から、今回の本印刷までの時間間隔がラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい時間だけ確保される。このため、インクの乾いた下地印刷の上に本印刷が施され、本印刷のインクの滲みに起因する印刷品質の低下を回避できる。しかし、この記録方法でも、前回の下地印刷と今回の下地印刷との境界、及び前回の本印刷と今回の本印刷との境界が、画像領域内に位置すると、印刷画像内にその境界に起因する副走査方向に延びるバンディングが発生することになる。
【0009】
ところで、滲みを回避するために必要な時間間隔については、例えば特許文献2に開示されており、インク液滴が記録媒体に全部吸収されるまでに必要な時間T(ms)は、T=(4V/πD2Ka)2で表される。ここで、Vはインクジェットヘッドから1回の動作で吐出する最大インク液滴量(ml)、Dはそのインク液滴が記録媒体に着弾したときのドットの平均等価円直径(m)、Kaはインクの記録媒体への吸収係数(ml/m2・ms1/2)である。特許文献2では、記録媒体上にインク液滴が着弾してからその同一位置に次のインク液滴が着弾するまでの時間をTx(ms)としたとき、T≦Tx、すなわち、(4V/πD2Ka)2≦TxとなるようにT、V、D、Kaの条件を設定する。しかし、インク種や記録媒体の材質、さらには最大インク液滴量やドットの平均等価円直径Dなどはユーザー先で予め決まっている場合が多く、この場合、V、D、Kaを変更できないので、インク種や記録媒体の材質などに応じたV、D、Kaから決まる時間T(=4V/πD2Ka)2以上の時間間隔を確保する必要がある。特に水性レジンを含有するインク(水性レジンインク)は、エコソルインク(有機溶媒インクの一種)や紫外線硬化性インク(UVインク)に比べ、乾燥又は硬化しにくいので、記録媒体にインク液滴を着弾させてからその同一位置に次のインク液滴を着弾させるまでの時間間隔を比較的長くする必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、記録手段を走査させる記録方式において、副走査方向に延びるバンディング(濃度むら)を低減できる記録方法及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つである記録方法では、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段とを備え、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録工程と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録工程でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程と、を備え、以降、前回の前記第2の記録工程における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録工程を繰り返すことを要旨とする。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、記録手段の移動途中でノズルを用いてドット列を記録する主走査と、記録手段と記録媒体とを第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行うことにより、主走査方向かつ副走査方向にずれて位置する複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列が記録される。つまり、主走査毎のドット列が記録されうる異なる行の行記録領域が、主走査方向(行方向)にずれて配置されるため、主走査毎に記録される異なる行のドット列が主走査方向(行方向)にずれて配置される。そして、次の第2の記録工程では、前回のドット列が記録された行記録領域と同じ行で隣接する行記録領域に次のドット列が記録される。そして、以降、前回の第2の記録工程における今回の行記録領域を前回の行記録領域として、第2の記録工程が繰り返し行われる。このため、同一行にある前回と今回の各行記録領域の境界が行毎に主走査方向に異なる位置に位置するので、各行記録領域に記録された各回(例えば前回と今回)の各ドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れる。この結果、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。
【0013】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記第1の記録工程では、前記記録手段の移動途中で前記ノズル列を構成する少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行い、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間を埋めるように今回の主走査でドット列を記録するインターレース記録方式を用いて、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録することが好ましい。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、ノズル列を構成するノズルのうち少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、記録手段と記録媒体とを第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行うことにより、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間(副走査方向の隙間)を埋めるように次回の主走査でドット列が記録される。つまり、インターレース記録方式で記録が行われる。このため、記録手段におけるノズルの副走査方向の位置のばらつきに起因する主走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。また、記録媒体に主走査方向にも副走査方向にもずれた位置に設定された複数の行記録領域にドット列が記録される。このため、例えば行記録領域を満たしてドット列が記録された場合、同一行の前回と今回のドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れるので、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。従って、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも共に発生しにくくなる。
【0015】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録媒体が前記第1方向と平行な搬送方向へ搬送されると共に、前記記録手段が前記主走査と前記副走査とを交互に行ってM回の主走査を終える度に1回目の主走査位置に戻るラテラルスキャンを行って記録を施すラテラルスキャン記録方式であり、前記第1及び第2の記録工程は、前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、前記主走査の後に、前記記録媒体を主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行って、前記M回の主走査を終える度に、前記記録手段を1回目の主走査位置に戻すことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、記録工程で1回の主走査が行われることで今回の行記録領域にドット列が記録され、この1回の主走査の後に走査位置切替え工程が行われる。この走査位置切替え工程では、記録媒体が主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ第1方向と平行な搬送方向に搬送されると共に、記録手段が第2方向に副走査されて記録手段が次の主走査位置に配置される。そして、M回の主走査を終える度に、記録手段が1回目の主走査位置に戻る。以降同様に、記録工程での主走査による今回の行記録領域へのドット列の記録と、走査位置切替え工程での記録手段の副走査及び記録媒体の搬送とが交互に行われ、M回の主走査(記録工程)を終える度に記録手段が1回目の主走査位置に戻される動作が繰り返される。1回の主走査により行記録領域にドット列が記録される度に、主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さずつ記録媒体が搬送されることで、行記録領域が搬送方向と反対方向へずれ、その搬送方向(主走査方向)にずれた行記録領域にドット列が記録されるので、行記録領域に記録される各回(例えば前回と今回)のドット列の境界が、行間で主走査方向に異なる位置に現れる。この結果、副走査方向に延びるバンディングが発生しにくくなる。
【0017】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録手段は前記記録媒体にN個(但しNは2以上の自然数)の版画像を重ねて記録するN版記録を行い、前記第1及び第2の記録工程における前記行記録領域は、前記記録手段の1回の主走査により記録しうる最大記録領域を前記第1方向にN分割した分割領域の主走査方向長さに等しい長さに設定されており、前記第1及び第2の記録工程は、前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、1回の主走査の後に、前記記録媒体を前記分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、N個の前記分割領域を搬送方向上流側から順に、第1分割領域、…、第N分割領域とすると、前記第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記N個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、i=1,…,N−1とした場合に、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程であり、前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記第1分割領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程である、ことが好ましい。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、記録工程では、記録手段の1回の走査により記録しうる最大記録領域を第1方向にN分割したN個の分割領域内に当該分割領域の主走査方向長さに等しい長さで設定された行記録領域にドット列が記録される。1回の主走査の後に、記録媒体は、分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ搬送され、またこれと並行して、記録手段が第2方向へ副走査されて次の主走査位置に配置される。そして、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われて、M回の主走査が行われることで1回のラテラルスキャンが行われる。まず第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われてM回の主走査においてN個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内(但しi=1,…,N−1)の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。これにより、1回のラテラルスキャンを構成するM回の主走査においてN個の分割領域に第1版画像〜第N版画像をそれぞれ構成するドット列がそれぞれ前回のラテラルスキャンで記録された1版分下層の版画像の上に記録される。例えばN=2の2版記録では、M回の主走査において2個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第2分割領域内の行記録領域に第2版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第1版画像の上に重ねて記録される。また、例えばN=3の3版記録では、M回の主走査において3個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第2分割領域内の行記録領域に第2版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第1版画像の上に重ねて記録され、さらに第3分割領域内の行記録領域に第3版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第2版画像の上に重ねて記録される。
【0019】
そして、第2の記録工程では、第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、記録工程と走査位置切替え工程とが交互に行われてM回の主走査において第1分割領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。以降、第2記録工程が繰り返されることにより、毎回のラテラルスキャンにおける各主走査において、第1分割領域に第1版画像を構成するドット列が記録され、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列が前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて記録される。これにより、次のラテラルスキャンを構成するM回の主走査において、N個の分割領域に第1版画像〜第N版画像をそれぞれ構成するドット列がそれぞれ前回のラテラルスキャンで記録された1版分下層の版画像の上に記録される。よって、下層の版画像の上に上層の版画像が記録されるまでの時間間隔をラテラルスキャン1回分の所要時間だけ確保することができる。よって、下層の版画像の記録から、その上層の版画像が記録されるまでの間に、乾燥時間が確保される。この結果、流体の滲みを回避しつつN版の画像を重ねて記録することが可能となる。よって、主走査方向及び副走査方向に延びる各バンディングが発生しにくくなるうえ、上層の版画像のインクの滲みが発生しにくく品質の高い複数版記録を行うことができる。
【0020】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記N個の分割領域には、当該分割領域毎に異なるN種類の流体で前記第1版画像〜第N版画像の記録が施されることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、N個の分割領域には、分割領域内の行記録領域に異なるN種類の流体で第1版画像〜第N版画像の記録が施される。各版の役割に応じた適切な種類の流体を用いて各版画像が記録されるので、品質の高い印刷物を提供できる。
【0021】
本発明の態様の一つである記録方法では、ラテラルスキャン記録方式であって、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が前記第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かを判断し、前記所要時間が前記設定時間以上でないと判断された場合は、前記記録手段の移動速度を遅くするか、又は前記記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、前記所要時間が前記設定時間以上になるようにすることが好ましい。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かが判断される。そして、その所要時間が設定時間以上でないと判断された場合は、記録手段の移動速度を遅くするか、又は記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、所要時間が設定時間以上になるように調整される。よって、下層の版画像を記録してからその上に上層の版画像を記録するまでに必要な乾燥時間が確保される。従って、下層の版画像の記録が施された部分が必要な程度に乾燥した後、上層の版画像の記録が施されるので、例えば下層のインクの乾燥が不十分な状態で上層の版画像が印刷されたために起こるインクの滲みに起因する印刷画像の品質の低下を抑制できる。
【0023】
本発明の態様の一つである記録方法では、N個の分割領域に1回の主走査で施されるN版の画像は、下地画像、本画像、オーバーコート画像のうち二つ以上の組合せであることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、記録媒体に、下地画像の版、本画像の版、オーバーコート画像の版のうち二つ以上の組合せであるN版(2版又は3版)の記録が施される場合に、主走査方向及び副走査方向に延びる各バンディングが共に発生しにくいうえ、複数版記録でもインクの滲みを抑えて品質の高い記録を行うことができる。
【0025】
本発明の態様の一つである記録方法では、前記記録手段が噴射する流体は、水性レジンを含むインクであることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、記録手段は流体として水性レジンを含むインク(水性レジンインク)を噴射して記録媒体に記録を施す。水性レジンインクはエコソルインク等の有機溶媒系インクやUVインク等の光硬化性樹脂系インクに比べ乾燥しにくいが、下層の版の記録と上層の版の記録との間に待ち時間(乾燥時間)が確保されるので、水性レジンインクを使用して記録されても、インクの滲みを抑えて高品質な印刷画像を提供できる。
【0026】
本発明の態様の一つである記録装置では、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段と、前記記録手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録処理と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録処理でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録処理とを行い、以降、前回の前記第2の記録処理における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録処理を繰り返すように、前記記録手段及び相対移動手段を制御することを要旨とする。本発明の一実施態様の記録装置によれば、上記記録方法に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における印刷システムの模式正面図。
【図2】印刷システムの電気的構成を示すブロック図。
【図3】コントローラーの機能構成を説明するブロック図。
【図4】記録ユニットの模式底面図。
【図5】三版印刷を構成する各版の画像データを示す模式図。
【図6】マイクロウィーブ処理部の機能構成を示すブロック図。
【図7】印刷エリアにおける分割領域を説明する模式図。
【図8】(a)〜(f)2版印刷における1回目のラテラルスキャンの印刷処理を示す印刷画像図。
【図9】(a)〜(f)2版印刷における2回目のラテラルスキャンの印刷処理を示す印刷画像図。
【図10】(a)〜(d)3版印刷におけるラテラルスキャン回数別の印刷手順を説明する模式図。
【図11】3版印刷における版画像別の印刷手順を説明する模式図。
【図12】印刷処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図12を用いて説明する。
図1に示すように、印刷システム100は、画像データを生成する画像生成装置110と、画像生成装置110から受信した画像データを基に印刷データを生成するホスト装置120と、ホスト装置120から受信した印刷データに基づく画像を印刷する記録装置の一例としてのラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す)とを備えている。
【0029】
画像生成装置110は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体111内のCPUが画像作成用プログラムを実行することで構築される画像生成部112を備える。ユーザーは、画像生成部112を起動して入力装置113の操作で、モニター114上で印刷用の画像を作成する。例えば製品がラベルの場合、複数個のラベルの画像を縦横に配列した複数コマ画像が作成される。そして、入力装置113を用いて所定の操作をすると、その画像に係る画像データが通信インターフェイスを介してホスト装置120へ送信される。もちろん、ホスト装置120を操作して画像生成装置110から画像データをホスト装置120内に読み込むことも可能である。
【0030】
ホスト装置120は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体121内のCPUがプリンタードライバー用プログラムを実行することで構築されるプリンタードライバー122を備える。プリンタードライバー122は、画像データを基に印刷データを生成し、その印刷データをプリンター11に設けられた制御装置Cへ送信する。制御装置Cは、プリンタードライバー122から受信した印刷データに基づいてプリンター11を制御し、印刷データに基づく画像をプリンター11に印刷させる。モニター123には、メニュー画面や印刷対象の画像等が表示される。メニュー画面での選択操作で表示されるその下位の印刷設定画面では、印刷対象の製品(例えばラベル等)に関する管理情報、及び各種の印刷条件などを入力設定することが可能である。
【0031】
ここで、管理情報には、製品の品番やロット番号、両面印刷の場合に表面印刷か裏面印刷かを指定するための印刷面情報などがある。また、印刷条件には、印刷媒体の種類、サイズ、印刷品質及び版数などがある。印刷媒体の種類には、大きくは紙系とフィルム系がある。例えば紙系には、上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙などがあり、フィルム系には合成紙、PET、PPなどがある。また、印刷媒体のサイズには、長尺状の印刷媒体が巻回されたロールの使用を前提とする本プリンター11では、ロール幅などが設定される。印刷品質には、印刷解像度や記録方式を決める複数種の印刷モードが用意されており、その中から一つ印刷モードを選択する。もちろん、印刷モードに替え、印刷解像度を設定してもよい。また、版数には、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する複数版印刷を行う場合に、その版(画像)の数が設定される。版数が2以上の場合、版毎に画像を指定することが可能である。
【0032】
次に、図1に示すプリンター11の構成について説明する。なお、以下の明細書中の説明において、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、図1において手前側を前側、奥側を後側とする。
【0033】
図1に示すように、プリンター11の直方体状の本体ケース12内には、長尺状のシート13をロールR1から繰り出す繰出し部14と、そのシート13にインク(流体)の噴射により印刷を施す印刷室15と、その印刷によりインクが付着したシート13に乾燥処理を施す乾燥装置16(乾燥炉)と、乾燥処理が施されたシート13をロールR2として巻き取る巻取り部17とが設けられている。
【0034】
本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18よりも上側の領域が印刷室15になっており、この印刷室15内の底部中央位置には、シート13の印刷エリアを支持するための矩形板状の支持台19が基台18上に支持された状態で配置されている。そして、本体ケース12内の基台18より下側の領域には、シート13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に繰出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に巻取り部17が配設されている。そして、繰出し部14と巻取り部17の間のやや上方位置に乾燥装置16が配設されている。なお、支持台19の下面には、支持台19を所定温度(例えば40〜60℃)に加熱するためのヒーター19Aが設けられており、シート13のうち印刷が施された部分は支持台19上で一次乾燥される。そして、一次乾燥の終わったシート13は乾燥装置16内で二次乾燥されるようになっている。
【0035】
図1に示すように、繰出し部14には巻き軸20が回転自在に設けられ、ロールR1がその巻き軸20に対して一体回転可能に支持されている。そして、シート13は、巻き軸20が回転することによりロールR1から繰り出されるようになっている。ロールR1から繰り出されたシート13は、巻き軸20の右側に位置する第1ローラー21に巻き掛けられて上方へ案内される。
【0036】
第1ローラー21によって搬送方向が鉛直上方向に変換されたシート13は、支持台19の左側であって第1ローラー21と上下方向で対応する位置に配置された第2ローラー22に左側下方から巻き掛けられる。そして、第2ローラー22に巻き掛けられて搬送方向が水平右方向に変換されたシート13は、支持台19の上面に摺接するようになっている。
【0037】
また、支持台19の右側には、左側の第2ローラー22と支持台19を挟んで対向する第3ローラー23が設けられている。第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部が支持台19の上面と同一高さとなるように位置調整されている。
【0038】
支持台19の上面から下流側(右側)に搬送されたシート13は、第3ローラー23に右側上方から巻き掛けられて搬送方向が鉛直下方向に変換され、その後、支持台19の下側に配置された第4ローラー24及び第5ローラー25間を水平方向に案内される。シート13は、これらローラー24,25間の搬送経路の途中で乾燥装置16内を通過するようになっている。そして、乾燥装置16内で乾燥処理が施されたシート13は、第5ローラー25、第6ローラー26及び第7ローラー27に案内されて巻取り部17の近くまで搬送され、搬送モーター61(図2参照)の駆動力に基づいて巻取り軸28が回転することによりロールR2として巻き取られる。
【0039】
例えば両面印刷時は、表面印刷が施されたシート13が全てロールR2に巻き取られると、そのロールR2を取り外し、裏面印刷供給用のロールR1として再び繰出し部14にセットする。そして、ロールR1からのシート13はその裏面が印刷面になるように図1に二点鎖線で示す経路で第1ローラー21に巻き掛けられる。なお、乾燥装置16と巻取り部17との間における搬送経路の途中に、シート13に印刷された製品部分(例えばラベル)を型抜き可能な型抜き用の加工機(不図示)を設け、プリンター11内で製品部分の型抜き工程まで終えられる構成を採用してもよい。
【0040】
図1に示すように、印刷室15内における支持台19の前後方向両側には、左右方向に延びるガイドレール29(図1では2点鎖線で示す)が一対設けられている。一対のガイドレール29には、記録手段の一例である記録ユニット30が主走査方向Xに往復移動可能に案内される。記録ユニット30は矩形状のキャリッジ31と、キャリッジ31の下面側に支持板32を介して支持された複数の記録ヘッド33とを備えている。キャリッジ31は、第1キャリッジモーター62(図2参照)の駆動に基づき両ガイドレール29に沿って主走査方向X(図1では左右方向)への往復移動が可能な状態で支持されている。また、キャリッジ31は第2キャリッジモーター63(図2参照)の駆動に基づき副走査方向Y(図1では紙面と直交する前後方向)への移動も可能となっている。これにより記録ユニット30は主走査方向Xと副走査方向Yとの2方向への移動が可能となっている。
【0041】
支持台19の上面のほぼ全域に亘る一定範囲が印刷領域となっており、シート13はこの印刷領域に対応する印刷エリア単位で間欠的に搬送される。支持台19の下側には吸引装置34が設けられている。吸引装置34は、支持台19の上面に開口する多数の吸引孔(図示せず)に負圧を及ぼすように駆動され、その負圧による吸引力によりシート13は支持台19の上面に吸着される。そして、記録ユニット30が主走査方向Xに移動してその移動途中に記録ヘッド33からインクを噴射する主走査と、記録ユニット30を次回の主走査位置まで副走査方向Yへ移動させる副走査とが交互に行われることで、シート13のうち支持台19上に位置する印刷エリアに印刷が施される。また、シート13が搬送方向(図1における右方)に搬送されることにより、シート13に対する印刷位置が主走査方向Xに変更される。このとき、吸引装置34の負圧が解除されることでシート13の支持台19上への吸着が解除され、その後、シート13は搬送されるようになっている。
【0042】
また、図1において印刷室15内の右端側となる非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド33のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置35が設けられている。メンテナンス装置35は、キャップ36と昇降装置37とを備える。非印刷時にホーム位置で待機する記録ユニット30の記録ヘッド33は、昇降装置37の駆動により上昇したキャップ36でキャッピングされ、ノズル内のインクの増粘等が回避される。また、所定のメンテナンス時期になると、キャッピング状態の下でメンテナンス装置35の吸引ポンプ(図示せず)が駆動されてキャップ36内を負圧にすることによりノズルからインクを強制的に排出して、ノズル内の増粘インクやインク中の気泡等を除去するクリーニングが行われる。
【0043】
また、図1に示すように、本体ケース12内には、異なる色のインクをそれぞれ収容した複数個(例えば8個)のインクカートリッジIC1〜IC8が着脱可能に装着されている。8個のインクカートリッジIC1〜IC8は、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、白(W)、クリア(オーバーコート用の透明色)等の各インクを収容する。もちろん、インクの種類(色数)は適宜設定でき、黒インクだけでモノクロ印刷する構成や、インクを2色、あるいは8色以外で3色以上の任意の色数とした構成も採用できる。また、メンテナンス用の保湿液を収容するカートリッジが装着される構成も採用できる。
【0044】
各インクカートリッジIC1〜IC8はインク供給路等(図示省略)を通じて記録ヘッド33に接続されている。各記録ヘッド33は各インクカートリッジIC1〜IC8から供給されたインクを噴射してシート13に印刷を施す。このため、本例のプリンター11では、カラー印刷が可能となっている。また、印刷媒体が透明フィルムなどの透明体の場合は、まずシート13上に白インクで下地層(下地画像)を印刷する「下地印刷」が行われ、さらにその下地層の上にカラー又は単色で画像(本画像)を印刷する「本印刷」が施される。また、シート13が透明体であるか否かに関わらず、本画像の上層に、クリアインク(透明インク)を噴射してオーバーコート層を形成し、印刷表面に耐性と光沢を付与する「オーバーコート印刷」が施される。
【0045】
このようにプリンター11においては、本画像の1版のみを印刷する「単版印刷」、本画像とオーバーコート層、あるいは下地層と本画像の各組合せのように、異なる種類の2版を印刷する「2版印刷」、さらに下地層と本画像とオーバーコート層の3版を印刷する「3版印刷」が可能である。もちろん、3版を超える複数版印刷を行ったり、複数版印刷を構成する印刷層が、上記3種類以外のその他の種類の印刷であったりする構成も採用できる。
【0046】
次に、記録ユニット30の底面に設けられた複数の記録ヘッド33の構成を図4に基づいて説明する。図4に示すように、キャリッジ31の底面側(図4では手前側)に支持された支持板32には、複数個(本実施形態では15個)の記録ヘッド33が、シート13の搬送方向(図4において白抜き矢印で示す方向)と直交する副走査方向Yに亘って千鳥状の配置パターンで支持されている。つまり、15個の記録ヘッド33は、副走査方向Yに沿って一定ピッチで配列された2列(図4では7個の列と8個の列)の記録ヘッド33が、列間で副走査方向Yに半ピッチずれた状態で配置されている。そして、各記録ヘッド33の底面となるノズル形成面33Aには、多数個(例えば180個)のノズル38が副走査方向Yに沿って一定のノズルピッチで配列されてなるノズル列39が、主走査方向Xに所定間隔をおいて複数列(本実施形態では8列)形成されている。そして、複数(8列)のノズル列39は、8個のインクカートリッジIC1〜IC8のうちそれぞれ対応する1個のインクカートリッジからインクの供給を受け、それぞれ異なる種類のインクを噴射する。なお、本実施形態では、ノズル列39の列方向(ノズル列方向)と交差する主走査方向Xが第1方向となり、主走査方向X(第1方向)と交差する副走査方向Yが第2方向となる。
【0047】
記録ユニット30が、図4における主走査方向Xへの移動(主走査)と、副走査方向Yへの移動(副走査)とを交互に行って、印刷解像度に応じた所定回数の主走査を行うことで、副走査方向Yの全ての行が埋まる1回のラテラルスキャンが行われる。ここで、記録ユニット30が主走査方向Xに移動する1回の主走査を「パス」と呼び、本例では、ラテラルスキャン1回のパスの回数が4回の4パス印刷と、パスの回数が8回の8パス印刷とがある。図4には、4パス印刷の例で、記録ユニット30の移動経路が矢印で示されている。すなわち、4パス印刷では、まず記録ユニット30が主走査方向Xへ一回移動する主走査を行って1パス目を印刷し、1パス目の印刷を終えると、記録ユニット30を副走査方向Yへ副走査送り量Δyだけ移動させる副走査を行って、記録ユニット30を次の主走査開始位置(次パス開始位置)に配置する。続いてその位置から2パス目の印刷を行い、2パス目の印刷後に副走査送り量Δyの副走査を行って、記録ユニット30を3パス目の主走査開始位置に配置する。以降、同様に主走査及び副走査を行って、3パス目と4パス目の各印刷を行う。
【0048】
ここで、ノズルピッチをΔpとおくと、副走査送り量Δyは、4パス印刷ではノズルピッチΔpの1/2の値(=Δp/2)に設定され、8パス印刷ではノズルピッチΔpの1/4の値(=Δp/4)に設定される。このため、8パス印刷では、4パス印刷のときの約2倍の印刷解像度が得られる。もちろん、副走査送り量Δyは、要求される印刷解像度に応じた適宜な値に設定できる。
【0049】
ところで、本実施形態では、記録ヘッド33のノズル38が目詰まりしないように比較的乾きにくい水系レジンを含むインク(以下「水性レジンインク」という)を使用し、印刷した後にはインクを熱乾燥させてインクを定着させる構成である。ここで、水性レジンインクに比べ、エコソルインク(有機溶剤系インクの一種)やUVインク(紫外線硬化性樹脂)は乾燥又は硬化しやすいので、1回の主走査で下層(下版)と上層(上版)を重ねて印刷する追い刷りも可能ではある。しかし、乾燥性又は硬化性の比較的悪い水性レジンインクを使用して複数版印刷を行う場合、下層(下版)のインクの乾燥が不十分な状態で直ぐに上層(上版)の印刷を行うと、上層のインクが滲んでしまい、印刷品質の低下に繋がる。そのため、水性レジンインクには、エコソルインクやUVインクで採用される1回の主走査で追い刷りする技術の適用は困難である。そこで、本実施形態では、1回のラテラルスキャンでは、スキャン領域を主走査方向に複数分割した複数の分割領域にその搬送方向上流側から下層(下版)から順番に異なる版の画像を1層のみ印刷することとし、前回のラテラルスキャンで印刷した下層の上に、今回のラテラルスキャンで上層を印刷する。こうすることで、前回のラテラルスキャンで下層を印刷してから、今回のラテラルスキャンで上層を印刷するまでの間に、下層のインクを乾燥するために必要な時間間隔を設けている。
【0050】
インクの乾燥に必要な時間間隔の最小値を設定時間Toとおくと、時間間隔は設定時間To以上の値に設定すればよい。ここで、必要な設定時間Toの求め方には次の2通りがある。1つは、予備実験による方法、他の1つは理論式から求める方法である。まず前者の方法では、記録媒体に白インクで下層を印刷してから、種々の時間間隔をおいた後にその上にカラーのインクで上層を印刷して、カラーのドットが滲んでいるかどうかを検査し、滲みが許容範囲になりうる最短の時間間隔を設定時間Toとする。
【0051】
また、後者の方法は、特許文献2に開示された理論式に基づき、滲みを回避するために必要な最短の時間間隔を設定時間Toとする方法である。すなわち、インク滴が記録媒体に全部吸収されるまでの時間を設定時間Toとすると、設定時間Toは、式 T=(4V/πD2Ka)2で表される。ここで、Vは記録ヘッド33から1回の動作で噴射する最大インク液滴量(ml)、Dはインク滴が記録媒体に着弾したときのドットの平均等価円直径(m)、Kaはインクの記録媒体への吸収係数(ml/m2・ms1/2)である。
【0052】
本実施形態では、前回のラテラルスキャンで印刷した下層の上に、今回のラテラルスキャンで上層を印刷するため、下層の印刷から上層の印刷までの時間間隔、つまり下層のインクの乾燥時間T1は、ラテラルスキャン1回の所要時間となる。そして、乾燥時間T1を規定するラテラルスキャン1回の所要時間が、設定時間To以上(T1≧To)となるように設定している。例えばT1≧(4V/πD2Ka)2となるように設定している。
【0053】
本例では、1回のラテラルスキャンのパス数Mには、前述のように、印刷解像度に応じてM=4の場合とM=8の場合の2種類ある。そして、所要時間の一番短いM=4の場合でも、前述の設定時間To以上の乾燥時間T1が確保されるように、ラテラルスキャン1回に要する所要時間を設定している。詳しくは、T1≧Toの条件を満たすように、記録ユニット30の主走査移動速度、主走査移動距離、副走査移動速度、副走査移動距離及びラテラルスキャン中の記録ユニット30の停止待機時間のうち少なくとも1つを調整している。なお、設定時間Toに所定のマージン時間Δtを加え、T1≧To+Δtの条件を満たすようにしてもよい。
【0054】
次に印刷システム100の電気構成を図2に基づいて説明する。図2に示すホスト装置120内のプリンタードライバー122は、モニター123に表示させるべきメニュー画面及び印刷設定画面などの各種画面の表示制御を行うと共に、各画面の表示状態において操作部124から入力した操作信号に応じた所定処理を行うホスト制御部125を備えている。ホスト制御部125は、プリンタードライバー122を統括的に制御する。
【0055】
また、プリンタードライバー122には、上位の画像生成装置110から受信した画像データに対して印刷データの生成に必要な画像処理を施すために、解像度変換部126、色変換部127及びハーフトーン処理部128を備えている。解像度変換部126は、画像データを表示解像度から印刷解像度へ変換する解像度変換処理を行う。色変換部127は、表示用の表色系(例えばRGB表色系やYCbCr表色系)から印刷用の表色系(例えばCMYK表色系)に色変換する色変換処理を行う。さらにハーフトーン処理部128は、表示用の高階調(例えば256階調)の画素データを印刷用の低階調(例えば2階調又は4階調)の画素データに階調変換するハーフトーン処理などを行う。そして、プリンタードライバー122は、これらの画像処理を施して生成した印刷画像データに、印刷制御コード(例えばESC/P)で記述されたコマンドを付して印刷ジョブデータ(以下、単に「印刷データPD」と称す)を生成する。
【0056】
ホスト装置120はデータの転送制御を行う転送制御部129を備える。転送制御部129は、印刷データPDをシリアル通信ポートU1を介して所定容量のパケットデータずつプリンター11へシリアル転送する。また、ホスト制御部125は、プリンター11の制御装置Cと双方向の通信が可能になっており、転送制御部129を介してプリンター11へコマンドや制御信号を送信し、その応答をプリンター11から受信する。
【0057】
図2に示すプリンター11側の制御装置Cは、ホスト装置120からの印刷データPDをシリアル通信ポートU2で受信して印刷制御をはじめとする各種制御を行うためのコントローラー40を備えている。図2に示すように、コントローラー40には、複数個(N個(本例では8個))のヘッド制御ユニット45(以下、単に「HCU45」という)を介して複数個(本例では15個)の記録ヘッド33が接続されている。
【0058】
図2に示すように、コントローラー40には、キャリッジ31(つまり記録ユニット30)の移動経路に沿って設けられているリニアエンコーダー50が接続されている。コントローラー40は、キャリッジ31の移動距離に比例する数のパルスをもつ検出信号(エンコーダーパルス信号)をリニアエンコーダー50から入力する。コントローラー40は、エンコーダーパルス信号のパルスエッジ数の計数によりキャリッジ31の主走査方向Xにおける位置(キャリッジ位置)を取得すると共に、A相・B相の各エンコーダーパルス信号の信号レベルの比較結果に基づきキャリッジ移動方向を取得する。また、コントローラー40は、リニアエンコーダー50からのエンコーダーパルス信号を基に、記録ヘッド33の噴射タイミングを決める噴射タイミング信号を生成する。コントローラー40は、印刷データPD中の印刷画像データから記録ヘッド33内のヘッド駆動回路が使用可能なヘッド制御データを生成し、そのうちキャリッジ31の1回の主走査分(1パス分)のデータずつHCU45を介して各記録ヘッド33に送信する。記録ヘッド33内のヘッド駆動回路はヘッド制御データに基づき噴射すべきノズルから噴射タイミング信号に同期して各記録ヘッド33の噴射制御を行う。
【0059】
図2に示すように、コントローラー40は、CPU51(中央処理装置)、ASIC52(Application Specific IC(特定用途向け集積回路))、ROM53、RAM54及び不揮発性メモリー55を備えている。CPU51は、ROM53及び不揮発性メモリー55に記憶されたプログラムを実行することにより、印刷制御に必要な各種の処理を行う。また、ASIC52は、印刷データPDの画像処理を含む記録系のデータ処理などを行う。
【0060】
また、図2に示すように、制御装置Cは、コントローラー40の出力側(制御下流側)に通信線SL1を通じて接続されたメカコントローラー43を備えている。コントローラー40は、印刷データPDに含まれるコマンドを所定のタイミングで送信することにより、メカコントローラー43にメカニカル機構44の駆動を指示する。メカコントローラー43は、コントローラー40から受信したコマンドに基づき所定のシーケンスに従って、主に搬送系及びキャリッジ駆動系を含むメカニカル機構44を駆動制御する。このとき、メカコントローラー43によるメカニカル機構44の駆動タイミングの制御は、コントローラー40が、送信したコマンドに従ったメカニカル機構44のシーケンス動作を終えた旨の応答をメカコントローラー43から受信すると、次のコマンドを送信する手順をとることにより行われる。
【0061】
図2に示すように、メカニカル機構44は、搬送系を構成する搬送モーター61と、キャリッジ駆動系を構成する第1キャリッジモーター(以下、「第1CRモーター62」ともいう)及び第2キャリッジモーター(以下、「第2CRモーター63」ともいう)とを備えている。メカコントローラー43には、モーター駆動回路60を介して搬送モーター61、第1CRモーター62及び第2CRモーター63がそれぞれ接続されている。搬送モーター61は各ローラー21〜27と軸20,28等により構成される搬送機構を駆動するためのものである。
【0062】
また、第1CRモーター62は、キャリッジ31を主走査方向Xに駆動させるための動力源であり、第2CRモーター63はキャリッジ31を副走査方向Yに駆動させるための動力源である。ラテラルスキャン方式では、キャリッジ31を主走査方向Xに移動させてその移動途中に記録ヘッド33からインクを噴射することにより1パス分の印刷を施す主走査(パス)と、キャリッジ31を副走査方向Yに所定ピッチだけ駆動させて記録ヘッド33を次パスの印刷位置までずらす副走査とを交互に所定回数(M回)繰り返す。そして、所定回数の主走査(パス)により、ラテラルスキャン1回分の印刷が施される。なお、本実施形態では、搬送モーター61及び搬送機構により、搬送手段の一例が構成される。また、第1CRモーター62及び第2CRモーター63により、記録手段を移動させるための駆動手段(動力源)の一例が構成される。
【0063】
さらに、図2に示すように、メカニカル機構44は、乾燥系を構成するヒーター19A及び乾燥装置16と、吸引装置34と、メンテナンス装置35とを備え、これらはメカコントローラー43と電気的に接続されている。また、このメカコントローラー43には、入力系として、電源スイッチ65、エンコーダー66及び温度センサー67,68がそれぞれ接続されている。電源スイッチ65のオン/オフ操作により、プリンター11の電源がオン/オフされる。
【0064】
また、メカコントローラー43は、コントローラー40から通信線SL1を通じて受信した各種コマンドに従って、各モーター61〜63、吸引装置34及びメンテナンス装置35を駆動制御する。エンコーダー66は、搬送モーター61を動力源とする搬送駆動系の回転軸の回転を検出するものであり、メカコントローラー43は、エンコーダー66の検出信号(エンコーダーパルス信号)を用いてシート13の搬送量及び搬送位置を検出する。
【0065】
また、温度センサー67は、支持台19の表面温度を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー67の検出温度に基づき、支持台19の表面温度を設定温度に調整する温度制御を行う。また、温度センサー68は、乾燥装置16の炉内温度(乾燥温度)を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー68の検出温度に基づき、乾燥装置16の炉内温度を設定温度に調整する温度制御を行う。
【0066】
制御装置Cは、印刷時に、シート13の次の印刷エリアを支持台19上に配置すべくシート13を搬送する搬送動作と、シート13の印刷エリアを支持台19に吸着させる吸着動作と、記録ヘッド33によるシート13への印刷動作(記録動作)と、1回分の印刷動作終了後にシート13の吸着を解除する吸着解除動作とを行わせる。
【0067】
図3は、コントローラー40の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、コントローラー40内には、CPU51がプログラムを実行することにより構築される機能部分、及びASIC52内の各種の電子回路により構成される機能部分などが設けられている。すなわち、コントローラー40内には、図3に示すように、主制御部71、画像処理部72、ヘッド制御部73及びメカ制御部74を備える。さらに画像処理部72は、解凍処理部75、コマンド解析部76、マイクロウィーブ処理部77及び縦横変換処理部78などを備える。なお、各部71〜78は、本例ではソフトウェアとハードウェアの協働による構成としたが、ソフトウェアのみ、あるいはハードウェアのみで構成してもよい。
【0068】
RAM54には、受信バッファー81と中間バッファー82と印刷バッファー83とが設けられている。ホスト装置120からシリアル通信ポートU2(USBポート)が受信した印刷データPDは受信バッファー81に格納される。
【0069】
次に、図3に示す各部71〜78について詳細に説明する。
主制御部71は、各部72〜78を統括的に制御する。
画像処理部72は、その内部の各部75〜78を用いて、印刷データPDの解凍処理、コマンド解析処理、マイクロウィーブ処理、縦横変換処理などの画像処理を行う。詳しくは、解凍処理部75は、受信バッファー81に格納された印刷データPD(圧縮データ)の解凍処理を行う。解凍された印刷データPDは、プレーンデータMD(印刷画像データ)と、印刷言語で記述された印刷コマンドとを含む。コマンド解析部76は、解凍後の印刷データPD中のコマンドを解析してメカ制御部74へ送る。
【0070】
マイクロウィーブ処理部77は、プレーンデータMDに対してマイクロウィーブ処理を行う。ここで、マイクロウィーブ処理とは、記録ヘッド33のノズル位置のばらつきに起因する印刷ドットの位置のばらつきを抑制するために行われるマイクロウィーブ印刷方式(インターレース記録方式)で印刷を行うためのデータ処理である。ここで、記録ユニット30の主走査により、ノズル38から間欠的に噴射されたインク滴がシート13上に着弾して形成される印刷ドットが、主走査方向Xに1列に並ぶドット列を、「ラスターライン」と呼ぶ。マイクロウィーブ処理では、副走査方向Yに隣り合うラスターラインの間隔が、副走査方向Yに隣接するノズルの間隔に依存しないように、M回の各パスで印刷すべき画素データの並び順を並び替えて、画像データをパス毎に分解するパス分解処理が行われる。本実施形態におけるマイクロウィーブ処理は、M回のパスのうち1回目のパスで印刷されたラスターラインの間(行間)を、2回目以降のパスで印刷されるラスターラインで埋めるように、画像データをパス毎に分解する。
【0071】
すなわち、全て(n個)のノズルを用いて1パス目を印刷して最大n本のラスターラインを描画し、2パス目で前回パスのラスターラインの行間を埋めるようにラスターラインを描画し、これをMパス目まで行って1回目のラスターラインの行間が全て埋めることにより、1回のラテラルスキャンが行われる。このMパスで1巡するラテラルスキャンにより、ノズルの副走査方向Yの位置ばらつき(ノズルピッチのばらつき)に起因するラスターラインの行間のばらつきが原因で発生する主走査方向Xに延びるバンディング(スジ状の濃度むら)が抑制される。マイクロウィーブ処理後のプレーンデータMDは、マイクロウィーブ処理部77から順次転送されて中間バッファー82に格納される。
【0072】
縦横変換処理部78は、中間バッファー82から転送されたマイクロウィーブ処理後のプレーンデータMDに対し縦横変換処理を施す。ここで、プレーンデータMDは、画素が表示用の並び順で配列されたデータである。縦横変換処理では、記録ヘッド33のノズル38からインク滴を噴射する噴射順序に合わせて、表示用の横方向(ノズル列の並び方向)の画素の並び順を、縦方向(ノズル列方向)の並び順に変換する。つまり、1回のパスにおいて180個のノズル38から最初に噴射される180画素、2番目に噴射される180画素、…、最後に噴射される180画素の順番になるように、元の横方向の順番に並ぶ画素の並び順を、噴射順序に合わせた縦方向の順番に変換する縦横変換処理が行われる。縦横変換処理後により生成されたヘッド制御データHDは、縦横変換処理部78から転送されて印刷バッファー83に格納される。
【0073】
ヘッド制御部73は、印刷バッファー83から転送されてきたヘッド制御データHDを、記録ヘッド33毎に分割し、分割した各データを各ヘッド制御ユニット45(HCU)へ逐次転送する。そして、HCU45は記録ヘッド33へヘッド制御データHDを逐次送信する。記録ヘッド33内の不図示のヘッド駆動回路は、ヘッド制御データHDに基づきノズル38毎の噴射駆動素子を駆動制御し、ノズル38からインク滴を噴射させる。このとき、記録ヘッド33の噴射タイミングは、リニアエンコーダー50のエンコーダーパルス信号を基にヘッド制御部73が生成した噴射タイミング信号に基づきヘッド駆動回路が噴射駆動素子の駆動タイミングを制御することにより行われる。なお、画像処理部72とRAM54との間、RAM54とヘッド制御部73との間におけるデータ転送は、CPU51の指示に従うDMAコントローラー(不図示)により行われる。
【0074】
図3に示すメカ制御部74は、コマンド解析部76から受け付けたコマンドをメカコントローラー43へ送る。このコマンドには、例えば搬送コマンド、吸着コマンド、第1キャリッジ起動コマンド(主走査コマンド)、第2キャリッジ起動コマンド(副走査コマンド)、吸着解除コマンドなどがある。メカ制御部74は、メカコントローラー43側の進捗に合わせた適宜なタイミングで、コマンドをメカコントローラー43へ送る。
【0075】
図2に示すメカコントローラー43は、例えば搬送コマンドであればこれに従って搬送モーター61を駆動してシート13を搬送させる。また、主走査コマンドであれば、メカコントローラー43はこれに従って第1CRモーター62を駆動してキャリッジ31を主走査方向Xに移動させる。このときコントローラー40に制御された記録ヘッド33がノズル38からインク滴を噴射し、シート13の印刷エリアへ1パス分の印刷が施される。そして、1パスを終える度に、メカコントローラー43は、副走査コマンドに従って第2CRモーター63を駆動させ、キャリッジ31を次の主走査位置まで副走査方向Yへ移動させる。本実施形態では、メカコントローラー43は、この副走査時に、搬送コマンドに従って搬送モーター61を駆動してシート13を搬送方向(主走査方向Xの下流側)に所定量だけ搬送する。つまり、1パス毎にシート13の搬送も行われる。以降、記録ユニット30の主走査と、副走査及び搬送とを交互に繰り返し、記録ユニット30のMパス毎に1巡するラテラルスキャンを連続的に行うことにより、1つ(1フレーム)の画像(製品)が連続的に印刷される。
【0076】
ここで、本実施形態では、1回のラテラルスキャンにおいて、1パス分の印刷を終える度に、副走査に加え、シート13を所定の搬送量だけ搬送する。1回の主走査では、ノズルを用いて副走査方向Yに複数本のラスターラインが描画される。2パス目〜Mパス目では、1パス目で描画された複数本のラスターラインの行間を1パス毎に順次埋めるように毎パス複数本ずつのラスターラインを描画する。なお、本実施形態のプリンター11では、シート13の同一エリアに同一又は異なる画像(版)を重ねて印刷する複数版印刷が可能である。
【0077】
図5は、3版印刷が行われる場合の例で各版の画像を示す。図5の例は、「あ」の文字の画像を含むラベルが複数コマ配列されて、一度に多数個のラベルを印刷するラベル印刷用の画像である。3版印刷の場合、下層から順番に、第1版〜第3版の画像(版画像)から構成される。すなわち、図5に示すように、1版目の画像データ(以下、「第1版画像データPD1」という)と、2版目の画像データ(以下、「第2版画像データPD2」という)と、3版目の画像データ(以下、「第3版画像データPD3」という)である。
【0078】
第1版画像データPD1は、白インクで白色の下地層をベタ印刷(下地印刷)するための下地画像(ベタ画像)の画像データである。第2版画像データPD2は、CMYK系インクでカラー又はグレイスケールで本画像を印刷(CMYK印刷)するための本印刷用の画像データである。図5の例における本画像は、ラベルの「あ」の文字画像が複数配列された複数コマ画像である。第3版画像データPD3は、透明インク(クリアインク)でオーバーコート層をベタ印刷するためのオーバーコート画像(ベタ画像)の画像データである。
【0079】
本実施形態では、印刷領域を主走査方向Xに版数Nに等しい数でN分割し、基本的に1回のパスで、各分割領域に搬送方向上流側から「下地画像」、「本画像」、「オーバーコート画像」を印刷する。このとき、1パス毎にシート搬送を行って各パスの印刷位置が搬送方向下流側へ一定量ずつ変位させる印刷方法を採用する。
【0080】
はじめに図7を用いて用語を次のように定義する。図7に示す「印刷エリアPA」とは、記録ユニット30が1回のラテラルスキャンにより印刷できる最大範囲(最大記録領域)を指し、支持台19上の矩形エリアで表される。例えばシート13が搬送されても印刷エリアPAは移動しない。図7に示すように、印刷エリアPAの主走査方向長さをリピート長L、副走査方向幅をエリア幅Wとする。このプリンター11では、1パスで印刷しうる最大ラスターライン長が「L」となる。
【0081】
また、ラベル印刷の場合、ラベルが複数コマ配置された矩形状の画像単位を「ページ」と呼ぶ。そして、1ページの画像(複数コマ画像)が印刷エリアPAに納まるように1ページ分又は複数ページ分並べられた矩形状の画像単位を「フレーム」と呼ぶ。また、「フレーム」の主走査方向長さをフレーム長Lf、その副走査方向幅をフレーム幅Wfと呼ぶ。リピート長Lは、フレーム長Lf以上の値として設定される(L≧Lf)。本例では、フレームを印刷エリアPAに等しく設定するものとする。つまり、リピート長Lがフレーム長Lfに等しく、エリア幅Wがフレーム幅Wfに等しくなるように印刷エリアPAを設定している。なお、ラベル印刷などの場合、ページ内の周縁の余白やラベル間の隙間が存在するため、通常、リピート長Lのうちラベル部分、あるいはそのラベル部分よりマージン分だけ少し広い部分に限りインクは噴射される。
【0082】
図7に示すように、本実施形態では、印刷エリアPAを主走査方向Xに版数Nに等しい数でN等分し、搬送方向上流側から順番に、第1分割領域DA1、第2分割領域DA2、…、第N分割領域DANと設定する。1パスで、N個の各分割領域に、搬送方向上流側から順番にそれぞれ第1版〜第N版のラスターラインを印刷する。但し、同一の分割領域に印刷される順序は、下層から上層への順番で、第i版(i=1,2,…,N−1)の印刷層の上に第i+1版が印刷される。つまり、同一分割領域への版の印刷順序は、第1版〜第N版の重ね順になっている。なお、以下の説明において、分割領域DA1,DA2,…,DANを特に区別しない場合は、「分割領域DA」と記すことにする。
【0083】
ここで、分割領域DAの主走査方向長さは、分割領域DAに記録できる最大記録長ΔLとなる。1パス毎のシート13の送り量(搬送量)を主走査送り量Δxとおくと、主走査送り量Δxは、分割領域DAの最大記録長ΔLを、ラテラルスキャン1回当たりのパス数Mで割った値として、式 Δx=ΔL/Mにより与えられる。従来のラテラルスキャン方式では、ラテラルスキャン1回の間は、主走査と副走査が交互に行われるだけで、1回のラテラルスキャンを終えた時点で1フレーム相当長のシート搬送が行われていたが、本実施形態では、シート13の搬送が1パス毎に主走査送り量Δxずつ行われる。
【0084】
図8及び図9は、1回のラテラルスキャンがMパスで行われるMパス印刷方式でN版印刷を行う例を示す。但し、これらの図では、説明を簡単にするため、M=4、N=2とし、4パスで1巡するラテラルスキャンで、下地画像と本画像との2版からなる2版印刷を行う例を示す。版数N=2の例なので、印刷エリアPAは、主走査方向Xに、第1分割領域DA1と第2分割領域DA2に2分割される。また、最大記録長はΔL=L/2、主走査送り量はΔx=ΔL/4、副走査送り量はΔy=Δp/4になる。なお、図8及び図9中にラスターラインRLを示す符号「RL」の後に続く3桁の数字「KiJ」は、前から順に「ラテラルスキャンK回目」、「第i版」「Jパス目」をそれぞれ示す。また、これらの図では、右方向が搬送方向である。
【0085】
図8(a)の例では、1パス目に、印刷エリアPAの上流側(同図の左側)半分の第1分割領域DA1に、記録ユニット30の1パス動作により白ドットのラスターラインRL111が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。1パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δx(=ΔL/4)だけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δy(=Δp/4)だけシフトして2パス目の位置に配置される(図8(b))。
【0086】
そして、図8(c)に示すように、2パス目の印刷が行われ、2パス目の白ドットのラスターラインRL112が、1パス目の白ドットのラスターラインRL111の次行に、Δxだけ搬送方向上流側(図8では左側)の位置に印刷される。そして、2パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして3パス目の位置に配置される。
【0087】
さらに、図8(d)に示すように、3パス目の印刷が行われ、3パス目の白ドットのラスターラインRL113は、2パス目の白ドットのラスターラインRL112の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、3パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして4パス目の位置に配置される。
【0088】
そして、図8(e)に示すように、4パス目の印刷が行われ、4パス目の白ドットのラスターラインRL114が、3パス目のラスターラインRL113の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、4パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され(図8(f))、かつ記録ユニット30が副走査送り量(M−1)・Δyだけ逆方向(図8における上方向)にシフトして1パス目の位置に戻る。
【0089】
次に2回目のラテラルスキャンでは、図9(a)に示すように、1パス目の前半に、印刷エリアPAの第1分割領域DA1に、記録ユニット30の1パス動作により白ドットのラスターラインRL211が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。さらに続いて、この1パス目の後半に、印刷エリアPAの第2分割領域DA2に、カラードットのラスターラインRL221が、副走査方向Yにノズルピッチ分の行間隔をおいて印刷される。1パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして2パス目の位置に配置される。
【0090】
そして、図9(b)に示すように、2パス目の印刷が行われ、2パス目の白ドットのラスターラインRL212が、1パス目の白ドットのラスターラインRL211の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷されるとともに、第2分割領域に、カラードットのラスターラインRL222が、1パス目のカラードットのラスターラインRL221の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、2パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして3パス目の位置に配置される。
【0091】
さらに、図9(c)に示すように、3パス目の印刷が行われ、3パス目の白ドットのラスターラインRL213は、2パス目の白ドットのラスターラインRL212の次行に、Δxだけ搬送方向上流側の位置に印刷されるとともに、第2分割領域DA2にカラードットのラスターラインRL223が、2パス目のカラードットのラスターラインRL222の次行にΔxだけ搬送方向上流側の位置に印刷される。そして、3パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され、かつ記録ユニット30が副走査送り量Δyだけシフトして4パス目の位置に配置される。
【0092】
以下、同様に、4パス目の印刷が行われ(図9(d))、4パス目を終えると、シート13が主走査送り量Δxだけ搬送され(図9(e))、かつ記録ユニット30が副走査送り量(M−1)・Δyだけ逆方向(図9おける上方向)にシフトして1パス目の位置に戻る。つまり、次のラテラルスキャンの1パス目の位置に戻る。
【0093】
1回のラテラルスキャンで1パス毎にΔL/Mの搬送がM回行われることにより、合計で分割領域DAの主走査方向長さである最大記録長ΔLの搬送が行われる。つまり、ラテラルスキャン1回毎に、シートが分割領域DA一つ分ずつ搬送される。このため、今回のラテラルスキャンでは、前回のラテラルスキャンで印刷された下層の上にその上層が印刷される。そして、これが連続的に繰り返されることにより、下層(第i版)の印刷から上層(第i+1版)の印刷までの時間間隔がラテラルスキャン1回分の所要時間だけ確保されつつ、複数版印刷が行われる。
【0094】
さらに1パス毎にΔL/Mの搬送が入り、ラスターラインRLがパス毎に主走査方向XにΔL/Mずつずれるので、1回のラテラルスキャンで印刷される画像はその主走査方向Xの両端がジグザグ形状(鋸歯形状)となった画像形状になる(図8(e),(f))。そして、今回のラテラルスキャンで、前回のラテラルスキャンで印刷された画像の搬送方向上流側端部のジグザグ形状と次回のジグザグ形状が噛み合うように同形状の画像が印刷される。このため、前回と今回のラスターラインRLの境界が主走査方向Xにずれるので、副走査方向に延びるバンディングの発生が抑制される。本実施形態では、分割領域の領域幅(主走査方向長さである最大記録長ΔL)内で、ラスターラインRLが印刷されうる行領域が、記録対象領域となる行記録領域に相当する。なお、行記録領域内に印刷(記録)されるドットは、画像データに依存するので、行記録領域内の全てにドットが印刷される訳ではなく、全くドットが印刷されない行記録領域も存在する。
【0095】
上記の例では、4パス/版の場合であったが、8パス/版の場合でも考え方は同じである。つまり、2版印刷であれば、主走査送り量ΔxがL/16になり、副走査送り量ΔyがΔp/4になる。また、3版以上の複数版印刷でも考え方は同じである。例えば3版印刷では、1回目のラテラルスキャンでは第1分割領域DA1に下地画像が印刷され、2回目のラテラルスキャンでは第1分割領域DA1に下地画像が印刷されるとともに、第2分割領域DA2に本画像が1回目の下地画像の上に印刷される。そして、3回目のラテラルスキャンでは、第1分割領域DA1に下地画像が印刷され、第2分割領域DA2に本画像が1回目の下地画像の上に印刷され、さらに第3分割領域DA3にオーバーコート画像が2回目の本画像の上に印刷される。
【0096】
図10及び図11はこのような3版印刷の例におけるラテラルスキャン単位の印刷手順を示す。図10はラテラルスキャンの回数別に印刷手順を示し、図11はラテラルスキャンの版別に印刷手順を示す。図10(a)に示すように、ラテラルスキャン1回目に、白色の下地画像P1が印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで、図10(a)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状(鋸歯形状)となった印刷パターンで下地画像P1が印刷される。
【0097】
次に、図10(b)に示すように、ラテラルスキャン2回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が1回目のラテラルスキャンで印刷された下地画像P1の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで印刷される下地画像P1と本画像P2は、図10(b)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、1回目の下地画像P1と2回目の下地画像P1は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。
【0098】
さらに図10(c)に示すように、ラテラルスキャン3回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が2回目の下地画像P1の上に印刷され、第3分割領域DA3に透明インクでオーバーコート画像P3が2回目の本画像P2の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、1回のラテラルスキャンで印刷される下地画像P1と本画像P2とオーバーコート画像P3は、図10(c)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、2回目の本画像P2と3回目の本画像P2は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。
【0099】
また、図10(d)に示すように、ラテラルスキャン4回目に、第1分割領域DA1に白色の下地画像P1が印刷され、第2分割領域DA2にカラーの本画像P2が3回目の下地画像P1の上に印刷され、第3分割領域DA3に透明インクでオーバーコート画像P3が3回目の本画像P2の上に印刷される。このとき、1パス毎にシート搬送が行われるので、下地画像P1と本画像P2とオーバーコート画像P3は、図10(c)に示すように主走査方向両端がジグザグ形状となった印刷パターンで印刷される。このとき、図11に示すように、3回目のオーバーコート画像P3と4回目のオーバーコート画像P3は互いのジグザグ形状の部分が噛み合うように接合される。なお、図10及び図11でジグザグ形状の印刷パターンになるのは、ベタ印刷などシート13の全面に印刷する場合の例であり、画像間の隙間がある場合には印刷されないその隙間部分では必ずしもジグザグ形状とはならない。
【0100】
本実施形態では、第i版(但しiは自然数)の上層に第(i+1)版が印刷されるまでに、ラテラルスキャン1回分の待ち時間が確保される。これにより、この待ち時間が、下層の第i版(下地画像P1、本画像P2)の上に第(i+1)版(本画像P2、オーバーコート画像P3)が印刷されるまでの乾燥時間として確保される。このため、第i版の上に第(i+1)版が印刷されたときにインクの滲みを回避し易くなる。つまり、下地画像P1の上に印刷される本画像P2の滲みや、本画像P2の上にオーバーコート画像P3が印刷されたときの本画像P2の滲みが回避され易くなっている。
【0101】
また、1パス毎に印刷位置を主走査方向にずらし、各版の印刷範囲の主走査方向両端をジグザグ形状とするので、例えばラベル内に版の境界が位置しても、ラベル内に副走査方向Yに延びるバンディングが発生しにくくなっている。このように本実施形態では、主走査方向Xに延びるバンディングをマイクロウィーブ印刷により抑制し、副走査方向Yに延びるバンディングをパス毎に実施されるシート搬送により抑制する。
【0102】
画像データから上記の印刷手順で印刷が可能なヘッド制御データを作成するために、本実施形態の主制御部71とマイクロウィーブ処理部77などは、図6に示す詳細な構成を有している。すなわち、図6に示すように、演算部90と、マイクロウィーブ処理部77内に設けられたパス分解処理部91、ノズル割付処理部92及びカウンター93とを備えている。演算部90は、例えば主制御部71内に設けられている。
【0103】
マイクロウィーブ処理部77は、第1版画像データPD1、第2版画像データPD2、…第N版画像データPDNを入力する。パス分解処理部91は、版画像データPD1〜PD3をパス毎に分解するパス分解処理を行う。本実施形態では、ラテラルスキャン3回目以降は、1パスで3版の画像のラスターラインを印刷するため、N個の版画像データPD1〜PDNから対応する分割領域DA1〜DANのうちそのときのパスに対応する部分の画素列データを、1パス毎に入るシート搬送で主走査方向にずれる主走査送り量Δx分を考慮して抜き出すことによりパス分解処理を行う。
【0104】
ノズル割付処理部92は、パス分解された画素列データをノズルに割り付けるノズル割付処理と、CMYK各色のノズル列間で噴射タイミングを調整すべく、ノズル列毎の画素データの配置位置をダミーデータの付加によってずらす列間ずらし処理とを行う。
【0105】
縦横変換処理部78は、中間バッファー82からパス分解後のプレーンデータを処理単位分ずつ読み出し、ノズル割付処理結果及び列間ずらし処理結果を反映しつつプレーンデータの画素の順序を横方向から縦方向へ並び換える縦横変換処理を行う。そして、縦横変換処理後のヘッド制御データを印刷バッファー83に格納する。
【0106】
カウンター93は、マイクロウィーブ処理を行ううえで、パス分解処理の対象がMパスのうち何パス目かを計数する処理と、ラテラルスキャンの回数を計数する処理などを行う。演算部90は、マイクロウィーブ処理部77がパス分解処理及びノズル割付処理などで使用する制御値を演算して、マイクロウィーブ処理部77に与える。パス分解処理部91は、演算部90から取得した各種の制御値、及びカウンター93が計数するパス数及びラテラルスキャン回数などの各計数値を用いて、そのときのラテラルスキャン回数及び何パス目かの情報に応じた画素列データを抜き取ることで、パス分解処理を行う。
【0107】
次に、演算部90が演算する制御値について説明する。図6に示すように、演算部90は、版数N、パス数M、リピート長Lの各データを入力する。ここで、版数Nは、ユーザーが操作部124を操作して入力した値である。パス数Mは、そのときの印刷モードから決まる印刷解像度に応じた値として設定され、印刷解像度が高いほど大きな値をとる。本例では、印刷解像度の低い印刷モードではパス数M=4の「4パス印刷」が設定され、印刷解像度の高い印刷モードではパス数M=8の「8パス印刷」が設定される。リピート長Lは、ユーザーが操作部124を操作して入力したフレーム長Lfを用いる。但し、印刷エリアPAを固定とし、不揮発性メモリー55に予め記憶されたリピート長Lを用いることもできる。
【0108】
演算部90は、取得した版数N、パス数M、リピート長Lを用いて、プリンター11の印刷制御に用いられる各種の制御値を演算する。制御値には、1パスで1つの分割領域に記録しうる最大記録長ΔL、主走査送り量Δx、副走査送り量Δyがある。これらの制御値ΔL,Δx,Δyは、版数N、パス数M、リピート長Lを用いて算出される。すなわち、最大記録長ΔLは、式 ΔL=L/Nにより演算される。また、主走査送り量Δxは、式 Δx=ΔL/Mにより演算される。さらに副走査送り量Δyは、式 Δy=Δp/Mにより演算される(図7を参照)。もちろん、Δyの演算式として、所望の印刷解像度が得られる適宜な式を採用できる。
【0109】
次にプリンター11の作用を、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、必要に応じて図8及び図9を用いて説明する。また、このフローチャートによる処理の前あるいは当該処理と並行して、マイクロウィーブ処理部77がプレーンデータにパス分解処理及びノズル割付処理などを順次施すマイクロウィーブ処理と、縦横変換処理部78がマイクロウィーブ処理後のプレーンデータに縦横変換処理を施す処理が行われる。これらマイクロウィーブ処理及び縦横変換処により生成されたヘッド制御データが、ヘッド制御部73からHCU45を介して記録ヘッド33へ順次転送される。
【0110】
まずステップS1では、版数N、パス数M、リピート長Lを取得する。本例では、3版印刷及び低印刷解像度の印刷モードが設定され、版数N=3、パス数M=4が設定されたものとする。
【0111】
ステップS2では、最大記録長ΔL=L/N、主走査送り量Δx=ΔL/Mを演算する。
ステップS3では、J=1,K=1を設定する。つまり、不図示のカウンター(メカ制御部内のカウンター)にJ,Kの初期値を設定する。ここで、カウント値Jは、ラテラルスキャン1回のMパスのうち今回が何パス目であるかを示す計数値である。このカウント値Jは、記録ユニット30を1パス目の位置に戻すかどうかの判断に用いられる。また、カウント値Kは、ラテラルスキャン回数を版数Nに達するまで計数する計数値である。このカウント値Kは、1パスでN版全ての印刷を実施する回数N(版数Nに等しい回数)に達したか否かの判断に用いられる。つまり、本実施形態では、ラテラルスキャン1回目は第1版のみの印刷、ラテラルスキャン2回目は第1版及び第2版の印刷、ラテラルスキャンN回目以降は第1版〜第N版が印刷される。カウント値Kは、ラテラルスキャン回数が、このN版全てが印刷されるようになるまでの回数に達したか否かの判断に使用される。
【0112】
ステップS4では、印刷エリアPAをN分割した各分割領域に第1版〜第K版の対応する部分画像(副走査方向YにノズルピッチΔpの間隔をおいたラスターライン)を印刷するためのJパス目の印刷を行う。ラテラルスキャン1回目(K=1)の1パス目(J=1)である今回は、図8(a)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで第1版(下地画像)のラスターラインRL111を印刷する。なお、本実施形態では、ステップS4の処理が、今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程に相当する。
【0113】
ステップS5では、主走査送り量Δxでシート搬送を行う。つまり、メカ制御部74が主走査送り量Δxを指定した主走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した主走査コマンドに基づき搬送モーター61を駆動することにより、シート13を主走査送り量Δxだけ搬送させる。この結果、1パス目の印刷を終えた後、図8(b)に示すように、主走査送り量Δx分のシート搬送が行われる。
【0114】
ステップS6では、J=Mであるか否かを判断する。つまりラテラルスキャン1回分が終了したか否かを判断する。J=MでなければステップS7に進み、一方、J=MであればステップS9に進む。J=1(1パス目)である今回はステップS7に進むことになる。
【0115】
ステップS7では、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する。つまり、メカ制御部74が副走査送り量Δyを指定した副走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した副走査コマンドに基づき第2CRモーター63を駆動することにより、記録ユニット30を副走査送り量Δyだけ副走査させる。なお、本実施形態では、ステップS4及びステップS7の処理が、走査位置切替え工程に相当する。
【0116】
そして、次のステップS8においてJ値をインクリメントした後、ステップS4に戻る。すなわち、J値をインクリメントしてJ=2とした後、ステップS4に戻る。
そして、2パス目の印刷を行う(S4)。この2パス目は図8(c)に示すように、1パス目のラスターラインRL111の次行にラスターラインRL112がラスターラインRL111に対して主走査方向Xの上流側にΔL/M(つまり分割領域幅の1/M)だけずれて印刷される。
【0117】
2パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ2パス目(J=2)でMパス目(本例では4パス目)に達していないので(J≠M)(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。そして、J値をインクリメントしてJ=3とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0118】
そして、3パス目の印刷を行う(S4)。この3パス目は図8(d)に示すように、2パス目のラスターラインRL112の次行にラスターラインRL113がラスターラインRL112に対して主走査方向Xの上流側にΔL/Mだけずれて印刷される。
【0119】
3パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ3パス目(J=3)でMパス目に達していないので(J≠M)(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。そして、J値をインクリメントしてJ=4とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0120】
そして、4パス目の印刷を行う(S4)。この4パス目は図8(e)に示すように、3パス目のラスターラインRL113の次行にラスターラインRL114がラスターラインRL113に対して主走査方向Xの上流側にΔL/Mだけずれて印刷される。
【0121】
4パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このため、シート13は図8(f)の位置に配置される。そして、J=M(本例ではJ=4)であると判断されるので(S6で肯定判定)、ステップS9において、記録ユニット30を1パス目の位置へ戻す。つまり、メカ制御部74は主走査送り量「−3・Δy」を指定した副走査コマンドをメカコントローラー43へ送信し、メカコントローラー43がその受信した副走査コマンドに基づき第2CRモーター63を駆動することにより、記録ユニット30を副走査送り量「−3・Δy」だけ副走査させて1パス目の位置に戻す。そして、次のステップS10においてJ=1に戻す。
【0122】
続いてステップS11では、K=Nであるか否かを判断する。つまり、ラテラルスキャン回数Kが版数Nに等しい値に達したか否かを判断する。K=NでなければステップS12に進み、K=NであればステップS13に進む。今回は、1回目のラテラルスキャンを終えた段階でK=1であるので、ステップS12に進む。
【0123】
ステップS12では、K値をインクリメントする(K=K+1)。
そして、ステップS13では、印刷終了であるか否かを判断する。すなわち、印刷データに基づく画像の印刷を指定ページ分すべて終わると、印刷終了と判断する。例えば主制御部71は印刷ページ数を計数しており、その計数値が指定ページ数に達すると、印刷終了と判断する。まだ印刷すべきページが残っており印刷終了でなければステップS4に戻り、印刷終了であれば当該ルーチンを終了する。今回はまだ印刷終了ではないので、ステップS4に戻る。
【0124】
このように1回目のラテラルスキャンでは、M回のパス動作で、1パス毎に主走査方向XにΔL/Mずつずらしつつ第1分割領域DA1に、白色のラスターラインRL111〜RL114を印刷して、下地画像だけが印刷される。つまり、図8(e)に示すように、主走査方向にΔL/MずつずれたラスターラインRL111〜RL114からなる第1版の画像(下地画像)のみ印刷される。このとき、パス毎のラスターラインRL111〜RL114の主走査方向両端位置はそれぞれΔL/Mずつずれている。このため、ラテラルスキャン1回目で印刷された下地画像はその主走査方向両端形状がジグザグ形状(鋸歯形状)になっている。そして、1回目のラテラルスキャンを終えると、記録ユニット30が1パス目の位置に戻され、かつシート13は図8(f)の状態、つまり2回目のラテラルスキャンの開始位置に配置される。
【0125】
次に2回目のラテラルスキャンが行われる。
ステップS4では、印刷領域をN分割した各分割領域に第1版〜第3版の対応する部分画像(ラスターライン)を印刷するためのJパス目の印刷を行う。ラテラルスキャン2回目(K=2)の1パス目(J=1)である今回は、図9(a)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで第1版(下地画像)のラスターラインRL211が印刷されるとともに、第2分割領域DA2に前回の1パス目のラスターラインRL111(下地画像(白色))の上に重ねてカラーインクでラスターラインRL221(図9では黒丸のドット列)が印刷される。
【0126】
2回目のラテラルスキャンにおける1パス目を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このとき、まだ1パス目(J=1)でMパス目に達していない(J≠M)ので(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S7)。そして、J値をインクリメントした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0127】
そして、2パス目の印刷を行う(S4)。この2パス目は、図9(b)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで2パス目のラスターラインRL212が、前回の2パス目のラスターラインRL112に対して搬送方向上流側(図9では左側)に隣接して印刷される。さらに第2分割領域DA2には、カラーインクで2パス目のラスターラインRL222が、前回の2パス目のラスターラインRL112(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0128】
2パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。そして、まだ2パス目(J=2)でMパス目に達していない(J=M)ので(S6で否定判定)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S7)。そして、J値をインクリメントしてJ=3とした後(S8)、ステップS4に戻る。
【0129】
そして、3パス目の印刷を行う(S4)。この3パス目は図9(c)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで3パス目のラスターラインRL213が、前回の3パス目のラスターラインRL113の搬送方向上流側(図9では左側)に隣接するように印刷される。さらに第2分割領域DA2にはカラーインクで3パス目のラスターラインRL223が、前回の3パス目のラスターラインRL113(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0130】
3パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行うとともに(S5)、記録ユニット30を次パス位置へ副走査する(S6)。
そして、4パス目(最初から8パス目)の印刷を行う(S4)。この4パス目は図9(d)に示すように、第1分割領域DA1に白インクで4パス目のラスターラインRL214が、前回の4パス目のラスターラインRL114の搬送方向上流側(図9では左側)に隣接するように印刷される。さらに第2分割領域DA2にはカラーインクで4パス目のラスターラインRL224が、前回の4パス目のラスターラインRL114(下地画像(白色))の上に重ねて印刷される。
【0131】
そして、4パス目の印刷を終えると、主走査送り量Δxでシート搬送を行う(S5)。このため、シート13と印刷エリアPAは図9(e)の位置関係に配置される。そして、Mパス目に達した(J=M)(本例ではJ=4)と判断されるので(S6で肯定判定)、記録ユニット30を1パス目の位置へ戻す(S9)。そして、J=1に戻す(S10)。
【0132】
続いてラテラルスキャン回数Kが版数N(図8、図9の例ではN=2)に等しい値に達した(K=N)か否かを判断する。K=N(K=2)であるので、ステップS13において印刷終了であるか否かを判断する。印刷終了でなければ(S13で否定判定)ステップS4に戻る。例えば主制御部71が、印刷ページ数の計数値が指定ページ数に達していないと判断すればステップS4に戻る。
【0133】
こうして2回目のラテラルスキャンを終えると、3回目のラテラルスキャンを行う。3回目のラテラルスキャンでは、新たに白インクで各パスのラスターラインがパス毎にΔL/Mだけずらして印刷されるとともに、前回(2回目)の下地画像(白色)のラスターラインの上にカラーインクで本画像のラスターラインが重ねて印刷される。
【0134】
こうして今回の印刷で第1分割領域DA1に新たな下地画像が白インクで印刷されるとともに、第2分割領域DA2には前回印刷された下地画像の上に本画像が重ねて印刷される。そして、これが連続的に行われ、指定ページの印刷が終了すると(S13で肯定判定)印刷が終了される。
【0135】
なお、2版印刷である本例では、下地画像に着目すれば、1回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、2回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、本画像に着目すれば、2回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、3回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、2版印刷である本例では、N回目(本例はN=2)以降のラテラルスキャンにおいて、N個(2個)の分割領域に、第1版画像と、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する前回のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、N個の分割領域に、第1版画像と、前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する今回のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。
【0136】
また、3版印刷の場合は、図10(a)及び図11に示すように、ラテラルスキャン1回目で第1版の下地画像P1が印刷される。また、図10(b)及び図11に示すように、ラテラルスキャン2回目で、第1版の下地画像P1が前回の下地画像P1に対して搬送方向上流側に隣接して印刷されるとともに、第2版の本画像P2が前回の下地画像P1の上に重ねて印刷される。そして、図10(c)及び図11に示すように、ラテラルスキャン3回目で、第1版の下地画像P1が前回の下地画像P1に対して搬送方向上流側に隣接して印刷されるとともに、第2版の本画像P2が前回の下地画像P1の上に重ねて印刷され、さらに第3版のオーバーコート画像P3が前回の本画像P2の上に重ねて印刷される。以降、ラテラルスキャン4回目以後は、印刷エリアPAがシート13の前回の位置に対して分割領域一つ分だけ搬送方向下流側に位置し、3回目と同様に、シート13の上流側(第1分割領域DA1側)から順番に、新たな下地画像P1の印刷、前回の下地画像P1の上への本画像P2の印刷、前回の本画像P2の上へのオーバーコート画像P3の印刷が行われる。
【0137】
なお、3版印刷である本例では、下地画像に着目すれば、1回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、2回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、本画像に着目すれば、2回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、3回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。さらにオーバーコート画像に着目すれば、3回目のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、4回目以降のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。また、3版印刷である本例では、N回目(本例はN=3)以降のラテラルスキャンにおいて、N個(3個)の分割領域に、第1版画像と、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する前回のラテラルスキャンが第1の記録工程に相当し、N個の分割領域に、第1版画像と、前回のラテラルスキャンで記録された第i版画像の上に重ねて、第i+1版画像(i=1〜N−1)を印刷する今回のラテラルスキャンが第2の記録工程に相当する。
【0138】
このように本印刷方法によると、2版印刷の場合は、前回の下地画像の印刷からその上に重ねられる今回の本画像の印刷までの間に、ラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい待ち時間(乾燥時間)が確保される。この結果、下地画像の上に印刷された本画像のインクが滲みにくくなる。また、3版印刷の場合は、前回の下地画像の印刷からその上に重ねられる今回の本画像の印刷までの間、及び前回の本画像の印刷からその上に重ねられる今回のオーバーコート画像の印刷までの間に、ラテラルスキャン1回分の所要時間に等しい待ち時間(乾燥時間)が確保される。この結果、下地画像の上に印刷された本画像のインクが滲みにくくなるうえ、本画像の上にオーバーコート画像が印刷された際の本画像のインクが滲みにくくなる。
【0139】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)前回のラスターラインRLの行間を埋めるように今回のラスターラインRLを印刷するマイクロウィーブ印刷を行うとともに、分割領域一つ分の幅の1/Mである主走査送り量ΔL/Mでシート搬送を行いつつ、各分割領域に搬送方向上流側から順番に第1版〜第N版の印刷をそれぞれ施す。よって、あるパスで隣接ノズルで印刷したラスターラインRLの行間を、次パス以降で印刷されるラスターラインRLが埋めるので、主走査方向に延びるバンディングの発生を抑制できるうえ、パス毎の行記録領域が主走査方向XにΔL/Mずつずれるので、副走査方向に延びるバンディングの発生を抑制することができる。
【0140】
(2)前回のラテラルスキャンで印刷した画像の上に今回のラテラルスキャンで本画像を印刷するので、下層の画像の印刷と、その上層の画像の印刷との間にラテラルスキャン1回分の所要時間に相当する待ち時間(乾燥時間)を確保することができる。よって、この待ち時間の間に、下層の画像のインクの乾燥が進んでから、上層の画像を印刷することができる。この結果、上層の画像のインクが滲みにくくなり、印刷品質を高めることができる。例えば2版印刷の場合、下地画像の上に本画像を印刷したときのインクの滲みを抑えることができる。また、3版印刷の場合、さらに本画像の上にオーバーコート画像を印刷した際の本画像のインクの滲みも抑えることができる。よって、印刷品質の高いラベル等の製品(印刷物)を提供することができる。
【0141】
(3)N=3としたので、下地印刷と本印刷とオーバーコート印刷の3版の画像を、主走査方向Xにも副走査方向Yにもバンディングの少ない高品質に印刷することができる。
(4)1パスにおいて、印刷エリアPAを主走査方向XにN分割した各分割領域DA1〜DANに、第1版〜第N版の各画像のラスターラインRLを印刷するので、無駄なく印刷ができるうえ、前回と今回のラテラルスキャンの間に、インクを乾燥させるための停止時間を設ける必要がない。よって、印刷品質の高い製品を効率よく生産(印刷)できる。
【0142】
(5)下層の版画像が印刷されてからその上層の版画像が印刷されるまでの乾燥時間T1(時間間隔)が、下層インクの乾燥に必要な設定時間To以上確保される。よって、シート13上に印刷されたラベル等の印刷物にインクの滲みが発生する事態を効果的に回避できる。
【0143】
(6)1回のラテラルスキャンの所要時間(つまり乾燥時間)が設定時間To以上確保されないと判断された場合、主走査速度、副走査速度を遅くするか、パス間又はラテラルスキャン間の停止待機時間を長くする調整を行い、ラテラルスキャン1回の所要時間を設定時間To以上にする。よって、比較的乾燥しにくいインクを使用して複数版印刷を行う場合でも、そのインクの乾きにくさに影響されず、品質の高い印刷を効率よく行うことができる。
【0144】
(7)特にエコソルインクやUVインクに比べ乾燥又は硬化しにくい水性レジンインクを使用した場合でも、画像の滲みを回避し易い。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
【0145】
・複数版印刷の場合に、前回印刷が施された下層の画像の乾燥のために待ち時間が必要であるか否かを判断する判断手段を設けてもよい。判断手段により乾燥のための待ち時間が必要であると判断された場合、制御手段は、記録ユニット30の移動速度(主走査速度と副走査速度とのうち少なくとも一方)を遅くするか、今回の記録ユニット30の相対移動の開始を遅らせることにより、必要な待ち時間が確保されるようにする。なお、判断手段が判断するステップが判断ステップに相当する。よって、前回の印刷と、今回の印刷との間に必要な乾燥時間が確保される。従って、前回の印刷が施された部分が必要な程度に乾燥した後、前回の印刷の上に今回の印刷が施されるので、今回の印刷によるインクの滲みが発生しにくくなる。
【0146】
・パス毎に主走査方向にΔx(=ΔL/M)ずつずらしたが、パスによって主走査送り量Δxを変化させてもよい。この場合、行記録領域の境界が現れる主走査方向の間隔が不均一になるので、副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。
【0147】
・分割領域はN等分の分割に限定されない。分割領域の領域幅が不均一でも副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。
・ラテラルスキャン方式のプリンターに適用したが、シリアルプリンターに適用してもよい。例えばシリアルプリンターにおいてインターレース記録方式で記録する場合、例えば、記録ヘッドが主走査方向に移動する途中で使用ノズルを切り換えて、主走査方向かつ副走査方向に位置の異なる行記録領域のそれぞれにドット列を形成する。そして、次の主走査で、前回の主走査での行記録領域と同じ行で隣接する行記録領域にドット列を記録する。例えば記録ヘッドには副走査方向上流側に予備ノズルが設けてあり、1パス目は予備のノズルは使用せず、2パス目以降で予備ノズルも使用すれば、1パス毎にシート(用紙)が搬送されても、前回のパスの行記録領域に隣接する行記録領域にドット列を記録することはできる。このようなシリアルプリンターであっても、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも共に発生しにくくすることができる。また、使用ノズルの切り換えによる方法に替えて、1回の主走査の途中で記録媒体の副走査方向への搬送を間欠的に入れることにより、複数の行記録領域を主走査方向かつ副走査方向にずれた位置とする構成も採用できる。
【0148】
・シリアルプリンターで複数版印刷を行う場合は、搬送方向上流側から順番に、白インクを噴射する第1記録ヘッド(第1版用記録ヘッド)、カラーインクを噴射する第2記録ヘッド(第2版用記録ヘッド)、オーバープリント用のインクを噴射する第3記録ヘッド(第3版用記録ヘッド)を配置してもよい。つまり、版専用の記録ヘッドを下層側の版画像を印刷するものほど搬送方向上流側に位置するように配置し、下層が印刷された後に、その搬送方向下流側においてその下層上に上層の印刷が施されるようにする。例えば、N版印刷を行う場合は、N個の各版専用の記録ヘッドを、搬送方向に第1版用の第1記録ヘッドから第N版用の第N記録ヘッドまで順番に配置する。
【0149】
・前記実施形態では、同一版(例えば第1版)の同一行のドット列を印刷する際に、ラテラルスキャン1回目の1パス目とラテラルスキャン2回目の1パス目を同じノズルを使用して印刷したが、ラテラルスキャン1回目の1パス目とラテラルスキャン2回目の1パス目を、異なるノズルを使用して印刷してもよい。この構成によれば、バンディングを一層低減し易くなる。
【0150】
・下地印刷とオーバーコート印刷のための各版の画像は、高解像度印刷の必要がないので、大きなドットで、Mパスより小さいQパス(Q=M/2R、但しRは自然数)の印刷で済ませてもよい。この構成によれば、本画像を印刷する全てのパスのうち一部のパスでは下地画像とオーバーコート画像の印刷は不要になる。例えば1パスの移動範囲を本画像の印刷に必要な所定範囲に制限したり、少なくとも初回と最終回のラテラルスキャンのパス数をQパスに留めたりすることができる。この結果、印刷効率を向上させることができる。
【0151】
・ラテラルスキャン方式のプリンター又はシリアルプリンターにおいて、インターレース記録方式を用いることは必須ではない。例えばノズル列の一部又は全部のノズルを用いて、主走査方向かつ副走査方向にずれて設定される複数の行記録領域のそれぞれにドット列を記録する第1の記録工程と、第1の記録工程で設定された前回の行記録領域と同一行で隣接する行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程とを行い、以降、前回の第2の記録工程で設定された行記録領域を前回の行記録領域として、第2の記録工程を繰り返し行う構成とする。ノズル列の一部又は全部のノズルを用いて、インターレース記録方式以外の記録方式で記録を施した場合も、副走査方向に延びるバンディングを発生しにくくすることができる。例えばバンド印刷で複数版を重ねて印刷する場合でも、下層の版の印刷からその上に重ねられる上層の版の印刷までの時間間隔を長くでき、しかも記録媒体を主走査方向に分割した各分割領域に記録を施す場合には前回と今回の記録の境界が副走査方向に延びるバンディングの原因にもなるが、この種の境界が少なくともバンド行毎に主走査方向にずれて位置するので、副走査方向に延びるバンディングを目立たなくすることができる。
【0152】
・版数は複数に限定されない。1版のみ印刷する構成でもよい。1版のみ印刷する場合でも、本発明の記録方法で記録を行えば、主走査方向に延びるバンディングも副走査方向に延びるバンディングも低減できる。
【0153】
・複数版印刷は2版印刷又は3版印刷に限定されない。例えば4版印刷以上の印刷を行う構成としてもよい。
・複数版のうち少なくとも2版が、同一の画像を二度重ねて印刷する構成であってもよい。
【0154】
・2版印刷の場合に使用するインクは、白とカラーの組合せ及びカラーとオーバーコートの各インクの組合せでもよい。さらに白用とオーバーコート用の各インクの組み合わせでもよい。要するに、白とカラーとオーバーコート用の各インクのうちどの組合せを採用してもよい。
【0155】
・記録手段は、複数個の記録ヘッドを備えた記録ユニットに替え、1個の記録ヘッドでもよい。
・図3及び図6におけるコントローラーの各機能部を、プログラムを実行するCPUとASICにより主にソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したが、ソフトウェアにより実現したり、ハードウェアにより実現したりしてもよい。
【0156】
・前記実施形態では、印刷装置として、インクジェット式のプリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【符号の説明】
【0157】
11…記録装置の一例であるプリンター、13…記録媒体の一例であるシート、30…記録手段の一例である記録ユニット、31…記録手段を構成するキャリッジ、33…記録手段を構成する記録ヘッド、38…ノズル、39…ノズル列、40…コントローラー、43…メカコントローラー、44…メカニカル機構、45…ヘッド制御ユニット(HCU)、51…CPU、52…ASIC、53…ROM、54…RAM、55…不揮発性メモリー、61…搬送手段を構成する搬送モーター、62…第1CRモーター、63…相対移動手段の一例を構成する第2CRモーター、71…主制御部、73…ヘッド制御部、74…メカ制御部、76…コマンド解析部、77…マイクロウィーブ処理部、78…縦横変換部、90…演算部、91…パス分解処理部、92…ノズル割付処理部、93…カウンター、100…印刷システム、110…画像生成装置、120…ホスト装置、C…制御手段の一例である制御装置、PD…印刷データ、PD1…第1版画像データ、PD2…第2版画像データ、PD3…第3版画像データ、PDN…第N版画像データ、PA…最大記録領域の一例である印刷エリア、DA1…分割領域の一例である第1分割領域、DA2…分割領域の一例である第2分割領域、DA3…分割領域の一例である第3分割領域、DAN…分割領域の一例である第N分割領域、L…リピート長、ΔL…最大記録長、Δx…主走査送り量、Δy…副走査送り量、RL…ドット列の一例であるラスターライン、P1…下地画像、P2…本画像、P3…オーバーコート画像、X…主走査方向、Y…副走査方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、
前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段とを備え、
前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録工程と、
前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録工程でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程と、
を備え、
以降、前回の前記第2の記録工程における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録工程を繰り返すことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記第1の記録工程では、前記記録手段の移動途中で前記ノズル列を構成する少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行い、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間を埋めるように今回の主走査でドット列を記録するインターレース記録方式を用いて、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録することを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記記録媒体が前記第1方向と平行な搬送方向へ搬送されると共に、前記記録手段が前記主走査と前記副走査とを交互に行ってM回の主走査を終える度に1回目の主走査位置に戻るラテラルスキャンを行って記録を施すラテラルスキャン記録方式であり、
前記第1及び第2の記録工程は、
前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、
前記主走査の後に、前記記録媒体を主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、
前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行って、前記M回の主走査を終える度に、前記記録手段を1回目の主走査位置に戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記記録手段は前記記録媒体にN個(但しNは2以上の自然数)の版画像を重ねて記録するN版記録を行い、
前記第1及び第2の記録工程における前記行記録領域は、前記記録手段の1回の主走査により記録しうる最大記録領域を前記第1方向にN分割した分割領域の主走査方向長さに等しい長さに設定されており、
前記第1及び第2の記録工程は、
前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、
1回の主走査の後に、前記記録媒体を前記分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、
N個の前記分割領域を搬送方向上流側から順に、第1分割領域、…、第N分割領域とすると、
前記第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記N個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、i=1,…,N−1とした場合に、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程であり、
前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記第1分割領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項5】
前記N個の分割領域には、当該分割領域毎に異なるN種類の流体で前記第1版画像〜第N版画像の記録が施されることを特徴とする請求項4に記載の記録方法。
【請求項6】
ラテラルスキャン記録方式であって、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が前記第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かを判断し、前記所要時間が前記設定時間以上でないと判断された場合は、前記記録手段の移動速度を遅くするか、又は前記記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、前記所要時間が前記設定時間以上になるようにすることを特徴とする請求項4又は5に記載の記録方法。
【請求項7】
N個の分割領域に1回の主走査で施されるN版の画像は、下地画像、本画像、オーバーコート画像のうち二つ以上の組合せであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項8】
前記記録手段が噴射する流体は、水性レジンを含むインクであることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項9】
複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、
前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段と、
前記記録手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録処理と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録処理でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録処理とを行い、以降、前回の前記第2の記録処理における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録処理を繰り返すように、前記記録手段及び相対移動手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、
前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段とを備え、
前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録工程と、
前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録工程でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録工程と、
を備え、
以降、前回の前記第2の記録工程における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録工程を繰り返すことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記第1の記録工程では、前記記録手段の移動途中で前記ノズル列を構成する少なくとも一部のノズルを用いてドット列を記録する主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に所定回数行い、前回の主走査で記録されたドット列の行間の隙間を埋めるように今回の主走査でドット列を記録するインターレース記録方式を用いて、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録することを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記記録媒体が前記第1方向と平行な搬送方向へ搬送されると共に、前記記録手段が前記主走査と前記副走査とを交互に行ってM回の主走査を終える度に1回目の主走査位置に戻るラテラルスキャンを行って記録を施すラテラルスキャン記録方式であり、
前記第1及び第2の記録工程は、
前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、
前記主走査の後に、前記記録媒体を主走査1回分の最大記録長の1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、
前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行って、前記M回の主走査を終える度に、前記記録手段を1回目の主走査位置に戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記記録手段は前記記録媒体にN個(但しNは2以上の自然数)の版画像を重ねて記録するN版記録を行い、
前記第1及び第2の記録工程における前記行記録領域は、前記記録手段の1回の主走査により記録しうる最大記録領域を前記第1方向にN分割した分割領域の主走査方向長さに等しい長さに設定されており、
前記第1及び第2の記録工程は、
前記記録手段の主走査を行って今回の行記録領域にドット列を記録する記録工程と、
1回の主走査の後に、前記記録媒体を前記分割領域の主走査方向長さの1/Mに相当する長さだけ前記搬送方向へ搬送すると共に、前記記録手段を前記第2方向に副走査させて次の主走査位置に配置する走査位置切替え工程と、を備え、
N個の前記分割領域を搬送方向上流側から順に、第1分割領域、…、第N分割領域とすると、
前記第1の記録工程は、N回目以降のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記N個の分割領域のうち第1分割領域内の行記録領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、i=1,…,N−1とした場合に、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程であり、
前記第2の記録工程は、前記第1の記録工程の次のラテラルスキャンにおいて、前記記録工程と前記走査位置切替え工程とを交互に行ってM回の主走査において前記第1分割領域に第1版画像を構成するドット列を記録し、第i+1分割領域内の行記録領域に第i+1版画像を構成するドット列を前回のラテラルスキャンで記録された前記第i版画像の上に重ねて記録することにより第1版画像〜第N版画像を記録する工程である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項5】
前記N個の分割領域には、当該分割領域毎に異なるN種類の流体で前記第1版画像〜第N版画像の記録が施されることを特徴とする請求項4に記載の記録方法。
【請求項6】
ラテラルスキャン記録方式であって、前回のラテラルスキャン終了から今回のラテラルスキャン開始までの所要時間が前記第1版画像〜第N版画像のうち下層の版画像の記録と上層の版画像の記録との間で下層の版画像の記録が施された部分の乾燥のために必要な設定時間以上であるか否かを判断し、前記所要時間が前記設定時間以上でないと判断された場合は、前記記録手段の移動速度を遅くするか、又は前記記録手段に停止時間を付与して駆動の開始を遅らせることにより、前記所要時間が前記設定時間以上になるようにすることを特徴とする請求項4又は5に記載の記録方法。
【請求項7】
N個の分割領域に1回の主走査で施されるN版の画像は、下地画像、本画像、オーバーコート画像のうち二つ以上の組合せであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項8】
前記記録手段が噴射する流体は、水性レジンを含むインクであることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項9】
複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列方向と交差する第1方向に移動すると共に当該移動途中に前記ノズルから流体を噴射して記録媒体に記録を施す記録手段と、
前記記録手段と前記記録媒体とを前記第1方向と交差する第2方向へ相対移動させる相対移動手段と、
前記記録手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記記録手段の移動途中で前記ノズルから流体を噴射して一のノズルにつき主走査方向と平行な行方向にドットが並ぶドット列を記録する主走査と主走査と、前記記録手段と前記記録媒体とを前記第2方向に相対移動させる副走査とを交互に行い、前記記録媒体に主走査方向かつ副走査方向にずれた位置に設定された複数の行記録領域を記録対象領域としてドット列を記録する第1の記録処理と、前記主走査と前記副走査とを交互に行って、前記第1の記録処理でドット列が記録された前回の前記行記録領域と同じ行で隣接する今回の行記録領域にドット列を記録する第2の記録処理とを行い、以降、前回の前記第2の記録処理における前記今回の行記録領域を前記前回の行記録領域として、前記第2の記録処理を繰り返すように、前記記録手段及び相対移動手段を制御することを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−148449(P2012−148449A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7908(P2011−7908)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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