説明

記録材料

【課題】 熱現像に適するサーモグラフィ記録材料を提供すること。
【解決手段】 支持体、並びにベヘン酸銀、それと熱作用関係にあるそのための有機還元剤および結合剤を含んでなる感熱性要素を含んでなる記録材料であって、ベヘン酸銀は水銀および/または鉛イオンと会合しておらずそして記録材料を銅KαX線源で照射する時に1m当たり1gの記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST標準1976、菱面体AlのX線回折線のピーク高さの合計の比が0.85より大きいことを特徴とする記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱現像に適するサーモグラフィ記録材料に関する。特に、本発明は像通りの熱現像時の像色調並びにそのサーモグラフィ印刷物の保存性および光安定性における改良に関する。
【背景技術】
【0002】
熱による像形成すなわちサーモグラフィは、像が熱エネルギーの使用により形成される記録方法である。
【0003】
直接的な熱によるサーモグラフィでは、化学的または物理的方法により色または光学濃度を変化させる物体を含有する記録材料の像通りの加熱により可視像パターンが形成される。そのような記録材料は、紫外線への露呈後に可視または赤外光線がサーモグラフィ法において触媒作用を与えるかまたはそれに関与して色または光学の濃度における変化をもたらしうる感光剤の導入で、フォトサーモグラフィ性となる。
【0004】
「直接的」サーモグラフィ記録材料のほとんどは化学的なタイプである。一定の転化温度に加熱すると、非可逆的な化学反応が起きそして着色された像が形成される。
【0005】
特許文献1によると、典型的な感熱性(サーモグラフィ)コピー紙は感熱層の中に熱可塑性結合剤、水−不溶性銀塩および適当な有機還元剤を含む。感熱性コピー紙は特許文献2の図1および2に示されているようにオリジナルの赤外光線吸収性像領域との接触で吸収されそして熱に変換される赤外照射線を用いる「表刷り」(“front-printing”)または「裏刷り」(“back-printing”)で使用される。
【0006】
特許文献3は有機カルボン酸の銀塩の製造方法を開示しており、それは(a)硝酸銀または銀錯体の水溶液を(b)有機カルボン酸は可溶性であるが有機カルボン酸の銀塩および硝酸銀の両者はほとんど不溶性であり且つそれと水は微混和性であるような溶媒中の有機カルボン酸の溶液と混合して有機カルボン酸を銀イオンと反応させることを含んでなり、この反応は可溶性水銀化合物および/または可溶性の鉛化合物の存在下で行われる。
【0007】
本出願の優先権主張日後に公告された特許文献4は、水性液体に対する有機カルボン酸もしくはその塩の水溶液または懸濁液および銀塩の水溶液の同時計量添加を含む有機カルボン酸の実質的に非感光性の銀塩を含有する粒子の懸濁液の製造方法を開示しており、そこでは有機カルボン酸もしくはその塩の水溶液もしくは懸濁液および/または銀塩の水溶液は水性液体中の銀イオンの濃度または銀塩のアニオンの濃度により調節される。
【0008】
1978年6月に発行された非特許文献1は有機重金属塩の種々の製造方法の概観を示している。例えば、方法5は(a)ベヘン酸を水中でこの酸の融点より上であるが分散液の沸点より下の温度に加熱し、(b)アルカリ金属またはアンモニウム水酸化物の水溶液を加え、そして(c)硝酸銀の水溶液を加えることによるベヘン酸銀の製造を記載している。しかしながら、有機重金属塩の微細エマルションを得るには、カルボン酸銀用の例えば特許文献5に開示されている有機溶媒中でまたは例えば特許文献6に開示されている水と実質的に水不溶性の有機溶媒との混合物中で合成を実施しなければならない。
【0009】
特許文献3に開示されているベヘン酸銀と水銀または鉛イオン、特に水銀イオン、との会合は環境的に望ましくなく且つ政府による規制に違反する。非特許文献1に記載された方法を用いて像通りの加熱で形成されるベヘン酸銀を用いる直接的な熱記録材料は、観察
箱(viewing box)を用いて透視する医学用の像にとっては望ましくない褐色の像の色を示す。この像の色の純粋性の欠如をASTM NormE179−90に従う分光計測定によりR(45/0)幾何学的形状で定量化してASTM Norm E308−90に従い評価することができCIELABa*およびb*座標を生ずる。CIELAB値に基づく色の純粋性は0のa*およびb*座標に対応しており、負のa*値は緑色がかった像の色を示しておりa*がより大きく負になるにつれてより緑色が強くなり、正のa*値は赤色がかった像の色を示しておりa*がより大きく正になるにつれてより赤色が強くなり、負のb*値は青色がかった像の色を示しておりb*がより大きく負になるにつれてより青色が強くなり、正のb*値は黄色がかった像の色を示しておりb*がより大きく正になるにつれてより黄色が強くなる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,080,254号明細書
【特許文献2】米国特許第3,074,809号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第1,378,734号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第754,969号明細書
【特許文献5】米国特許第3,700,458号明細書
【特許文献6】米国特許第3,960,908号明細書
【非特許文献1】Research Disclosure number 17029, section II
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の目的
従って、本発明の目的は、像通りの熱現像でかなり青色の強い像色調を有する像を形成するサーモグラフィ記録材料を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、その印刷物が改良された保存性および光安定性を示す材料およびフォトサーモグラフィ記録材料を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、ベヘン酸銀を含んでなる実質的に非感光性の有機銀塩の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的および利点は以下の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
驚くべきことに、支持体、並びに比較的高い結晶度を有するベヘン酸銀、それと熱作用関係にあるそのための有機還元剤および結合剤を含んでなる感熱性要素を含んでなるサーモグラフィ記録材料は、先行技術の材料より実質的に増加した結晶度を有するベヘン酸銀が内部に存在している時には、像通りの熱現像でかなり青色の強い像色調を示しそして/または改良された保存性(archivability)および/もしくは改良された光安定性を有するサーモグラフィ印刷を生成することが見いだされた。
【0016】
上記の目的は、支持体、並びにベヘン酸銀、それと熱作用関係にあるそのための有機還元剤および結合剤を含んでなる感熱性要素を含んでなる記録材料であって、ベヘン酸銀は水銀および/または鉛イオンと会合しておらずそして記録材料を銅KαX線源で照射する時に1m当たり1gの記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角(Braggangle)2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST標準1976、菱面体AlのX線回折線のピーク高さの合
計の比が0.85より大きいことを特徴とする記録材料を用いて実現される。
【0017】
(i)上記の記録材料の最も外側の層を熱源に近接させ、そして
(ii)記録材料を熱源に近接させて保ちながら熱源からの熱を記録材料に像通りに適用して加熱して像を形成し、そして(iii)記録材料を熱源から除去する段階を含んでなる記録方法もまた本発明により提供される。
【0018】
i)少なくとも1個の酸性水素原子を有する有機化合物のアルカリ金属またはアンモニア塩を含んでなり、ベヘン酸を水および有機溶媒の混合物中に含んでなる溶液または分散液Aを、ベヘン酸銀を含んでなる実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子が還元を受けないような温度で製造し、そしてii)溶液または分散液A中のアルカリまたはアンモニウムイオンに等しい数の銀イオンを含有する銀塩の水溶液Bのある量を加える段階を含んでなるベヘン酸銀を含んでなる実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子を製造する方法であって、水溶液Bの溶液または分散液Aへの添加中の初期混合数がベヘン酸銀を含んでなる実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子の製造中に2×10−4より大きいかまたはそれに等しく、混合数は銀塩が反応器中で溶液Aに供給されるモル速度対アルカリまたはアンモニウム塩が反応器中を循環するモル速度の比であることを特徴とする方法もまた本発明により提供される。
【0019】
i)ベヘン酸およびアニオン性界面活性剤を含む1種もしくはそれ以上の有機酸の水性分散液を製造し、ii)有機酸を水性アルカリで実質的に中和してそれによりベヘン酸塩を含む有機酸塩を生成せしめ、(iii)銀塩の水溶液を加えて有機酸塩をベヘン酸銀を含むそれらの銀塩に完全に転化させる段階を含んでなるベヘン酸銀を水性媒体中に含む実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子の分散液を製造する方法であって、アニオン性界面活性剤が有機酸に関して0.15より大きいモル比で存在しておりそして銀塩が0.025モル/モルの有機銀塩・分ないし2.25モル/モルの有機銀塩・分の間の速度で加えられることを特徴とする方法がさらに本発明により提供される。
【0020】
発明の詳細な記述
本発明による記録材料の好適な態様では、熱源は熱ヘッドであり、薄膜熱ヘッドが特に好ましい。
【0021】
感熱性要素
本発明による感熱性要素はベヘン酸銀、それと熱作用関係にあるそのための有機還元剤および結合剤を含んでなる。この要素は内部で成分が異なる層の中に分散でき、但し条件として二成分が互いに反応性関係であり、すなわち熱現像工程中に還元剤はそれがベヘン酸銀に拡散できてベヘン酸銀から銀への還元が起きて希望する像色調を与える層システムを含んでなる。
【0022】
本発明の好適な態様では、感熱性要素はさらに露光時にベヘン酸銀の還元に触媒作用を与えうる種を生成しうる感光性種も含んでなる。
【0023】
ベヘン酸銀の特徴
本発明の記録材料中のベヘン酸銀は、銅KαX線源で照射する時にm当たり1gの該記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST(米国、MD20899ー0001、ガイサーズブルグのナショナル・インスティテュート・オブ・スタンダーズ)標準1976、菱面体AlのX線回折線のピーク高さの合計の比が0.
85より大きいことにより特徴づけられている。本発明の好適な態様では、以上で定義された基準化された比は1.0より大きくそして特に好適な態様では1.2より大きい。
【0024】
規格化された比は、使用するX線回折計のサンプルホルダーに適合するように切断された特定の記録材料およびNIST標準1976のシート上でX線回折スペクトルを測定し、標準的技術を用いて背景を引き、回折ピークのピーク高さを測定し、記録材料のサンプルに関して6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀によるXRD線のピーク高さの合計、Kmaterial、を測定し、25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるX線回折線のピーク高さの合計、K1976、を測定し、記録材料に関するKmaterial/K1976の比を計算し、記録材料中に存在する銀CAGの濃度を平方メートルの材料当たりのグラム数で測定しそして最後にCAGを用いてKmaterial/K1976の比を規格化して規格化されたKmaterial/(K1976×CAG)を与え、それは本発明の詳細な記述中ではベヘン酸銀の結晶化度と称する。
【0025】
記録材料中に存在する銀の濃度は既知の技術、例えばX線蛍光法の如き非破壊的方法、並びに R. Belcher and A. J. Nutten, Quantitative Inorganic Analysis, 2ndedition,
Butterworths, London (1960), pages 201-219 に記載されているような銀塩の溶解およびその後の銀測定用の標準的な容積測定技術の如き破壊方法、により測定することができる。
【0026】
標準的試験を使用して本発明のベヘン酸銀を含んでなるサーモグラフィ記録材料の像色調を評価する。これは最初に下塗りされた175μmの厚さのポリエチレンテレフタレート支持体を、ベヘン酸銀(AgB)、AgBに関して400重量%のポリビニルブチラール、AgBに関して50モル%の3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、AgBに関して15モル%のベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン、AgBに関して5モル%の7−(エチルカルボナト)−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン、AgBに関して0.9重量%のシリコーン油、AgBに関して5モル%の無水テトラクロロフタル酸、AgBに関して21.98モル%のアジピン酸およびAgBに関して10モル%のベンゾトリアゾールを含んでなる溶媒分散液で約5g/mのAgBのコーテイング重量となるまでコーテイングすることからなっていた。50℃で1時間乾燥した後に、サーモグラフィ記録材料を45℃で7日間焼き戻した。下塗り層、耐熱層および滑り層(抗−摩擦層)で連続的にコーテイングされた分離可能な5μm厚さのポリエチレンテレフタレートリボンにより感熱層から離されている印刷ヘッド並びに300dpiの解像度を有する薄膜熱ヘッドが装備されておりそして19msの線時間(線時間は1本の線を印刷するのに必要な時間である)で操作されるプリンターを用いて熱印刷を行った。線時間中に印刷ヘッドは一定の動力を受けた。1線時間中の電気入力エネルギーの合計量を線時間および発熱抵抗器の表面積で割算したものである平均印刷動力は1.5mJ/ドットであった。可視検査並びにMACBETHTMTR924濃度計で測定された像の光学濃度の関数としての像のL*,a*およびb*CIELAB値に基づく両方で像の色調を評価した。L*,a*およびb*CIELAB値はASTM Norm E179−90に従う分光計測定によりR(45/0)幾何学的形状でASTM Norm E308−90に従う評価により測定した。−2.0より低い像濃度に対するb*に依存する最小のb*における値は、最小値に関してそれより高いb*値を有する褐色の色調と比べて、青色の色調を有する像に対応することが見いだされた。
【0027】
ベヘン酸銀結晶化度を高めるための化合物
非−ハロゲン化物イオンを含有するホスホニウム化合物がベヘン酸銀結晶化度を高めることが見いだされた。本発明に従う好適な非−ハロゲン化物イオンを含有するホスホニウム化合物は、
PC01=トルエンスルホン酸(2−メトキシエチル)トリフェニルホスホニウム、
PC02=トルエンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム、
PC03=ベンゼンスルホン酸(2−トリフェニルホスホニウム)エチルトリフェニルホスホニウム
である。
【0028】
ベヘン酸銀
本発明のベヘン酸銀は水銀および/または鉛イオンと会合されていない。このことは、水銀および/または銀イオンを製造工程中のいずれの時点でも意図的に加えず従って本発明の記録材料中ではベヘン酸銀と意図的に会合されていないことを意味する。
【0029】
溶媒/水媒体中でのベヘン酸銀の製造
本発明のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀が上記の基準を満たす限り、本発明のベヘン酸銀を製造するためにはいずれの既知の合成技術およびいずれの既知の分散技術でも使用することができる。
【0030】
本発明の記録材料の好適な態様では、ベヘン酸銀は感熱性要素中にベヘン酸銀を含んでなる実質的に非感光性の有機銀塩の粒子として存在する。
【0031】
ベヘン酸銀を含んでなる実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の上記の製造方法は、溶液または分散液Aに対する水溶液Bの添加中の混合数がベヘン酸銀を含んでなる実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の製造中に2×10−4より大きいかもしくはそれに等しいことにより特徴づけられており、混合数は銀塩が反応器中の溶液Aに適用されるモル速度対アルカリまたはアンモニウム塩が反応器中を循環するモル速度の比である。混合数は下記のように表すことができる:
【0032】
【数1】

【0033】
[式中、
【0034】
【数2】

【0035】
であり、
【0036】
【数3】

【0037】
=溶液Bの添加速度(dm/分)であり、
=溶液Bの濃度(モル/dm)であり、
=溶液中に存在するベヘン酸を含んでなる少なくとも1個の酸性水素原子を有する有機化合物のアルカリ金属またはアンモニウム塩の初期量(モル)であり、
=反応器中の溶液Aの量(dm)であり、
=反応器中のスタラーのポンピング数であり、
n=撹拌速度(回転数/分)であり、
D=スタラー直径(dm)であり、
t=時間(分)である]。
【0038】
反応器中のスタラーのポンピング数はスタラーポンピング速度対三乗されたスタラー直径と撹拌速度との積(n×D)の比でありそして例えばスタラー対反応器の直径、スタラーおよびスタラーのレイノルズ数のオフ−ボトムクリアランス比のような種々の要素に依存しており、例えば A. Bakker and L.E. Gates, Chemical Engineering Progress pages 25 to34 (December 1995) および Nagata, ”Mixing Principles and Applications”, J. Wiley& Sons, New York (1975), pages 136-139 を参照のこと。
【0039】
混合数に関する上記の関数の数学的性質は、ベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子の製造が進行するにつれて混合数が常に増加するようなものである。
【0040】
本発明に従う好適な製造方法では、溶液または分散液Aは水および有機溶媒の混合物中にベヘン酸を含んでなる少なくとも1個の酸性水素原子を有する有機化合物のアルカリ金属またはアンモニウム塩の0.022より大きいモル濃度を有する。
【0041】
本発明に従う他の好適な製造方法では、有機溶媒は混合物の20〜80重量%の間でそして好適には35〜65重量%の間で存在する。別の好適な製造方法では有機溶媒は2−ブタノンである。
【0042】
驚くべきことに、ベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子の分散液の走査電子顕微鏡写真からそしてベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子の分散液でコーテイングされた感熱層の薄片の転写電子顕微鏡写真から、混合数が増加するにつれえこれらの粒子の形状が一般的には棒状からより球状に変化すること並びにベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩のこれらの粒子の分散が同様な条件下で行われる限り粒子形態におけるこの変化には結晶化度の増加が伴われることが見いだされた。本発明の記録材料の好適な態様では、ベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子の少なくとも20重量%は球状粒子として存在しておりそして本発明の記録材料の特に好適な態様ではベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子の少なくとも40重量%が球状粒子として存在している。
【0043】
溶媒の実質的な不存在下でのベヘン酸銀を含有する粒子の水性分散液の製造
i)ベヘン酸およびアニオン性界面活性剤を含む1種もしくはそれ以上の有機酸の水性分散液を製造し、ii)該有機酸を水性アルカリで実質的に中和してそれによりベヘン酸塩を含む有機酸塩を生成せしめ、(iii)銀塩の水溶液を加えて該有機酸塩をベヘン酸銀を含むそれらの銀塩に完全に転化させる段階を含んでなるベヘン酸銀を水性媒体中に含む実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法であって、該アニオン性界面活性剤が有機酸に関して0.15より大きいモル比で存在しておりそして該銀塩が0.025モル/モルの有機銀塩・分ないし2.25モル/モルの有機銀塩・分の間の速度で加えられることを特徴とする水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法が本発明に従い提供される。水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法の好適な態様では、アニオン性界面活性剤が
有機カルボン酸に関して0.25より大きいモル比で存在しておりそして銀塩は0.03モル/モルの有機銀塩・分ないし0.7モル/モルの有機銀塩・分の間の割合で加えられ、有機酸に関するアニオン性界面活性剤のモル比は0.3より大きくそして0.04モル/モルの有機銀塩・分ないし0.3モル/モルの有機銀塩・分の間の銀塩添加割合が特に好ましい。
【0044】
好適な態様では、本発明の製造方法の段階(iii)はこの方法の段階(ii)で製造される酸塩の溶液の一部が銀塩溶液の添加前に反応容器中に存在しておりそしてそれの一部は銀塩溶液の添加と同時に加えられ、段階(ii)で製造される酸塩の溶液の約25〜50%が銀塩の添加前に反応容器中にあることが特に好ましい。
【0045】
水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法の別の好適な態様では、アニオン性界面活性剤はアルキルスルホン酸塩、アルカリールスルホン酸塩、アラルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アラルキル硫酸塩、アリール硫酸塩、アルカリール硫酸塩および有機カルボン酸塩よりなる群から選択される。本発明の特に好適な態様ではアニオン性界面活性剤はアルカリールスルホン酸塩でありそして特に好適な態様ではアニオン性界面活性剤はアルキルベンゼンスルホン酸塩である。本発明に従う水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法における使用に適するアニオン性界面活性剤は以下のものである:
界面活性剤番号1=MARLONTMA−396、ヒュルスからのアルキルフェニルスルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号2=MarlonTMA−53、アルカリ水酸化物で中和されたヒュルス(Huls)からのアルキルフェニルスルホン酸、
界面活性剤番号3=4−ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、
界面活性剤番号4=ULTRAVONTMW、チバ−ガイギー(Ciba-Geigy)からのアリールスルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号5=ERKANTOLTMBX、バイエル(BAYER)からのジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号6=ALKANOLTMXC、デュポン(DU PONT)からのノニルナフタレンスルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号7=HOSTAPURTM、ヘキスト(HOECHST)からのセカンダリーアルカンスルホン酸塩、
界面活性剤番号8=MERSOLATTMH80、バイエルからのヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号9=HOSTAPURTMB、ヘキストからのトリスアルキルフェニル−ポリエチレングリコール(EO7−8)スルホン酸ナトリウム、
界面活性剤番号10=TERGITOLTM4、ゴールドシュミット(GOLDSCHMID)からの1−(2′−エチルブチル)−4−エチルヘキシル硫酸ナトリウム。
【0046】
水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の上記の方法では、使用されるpHは銀イオンから酸化銀または水酸化銀への酸化を避けるのに十分なほど低くすべきであり、10より下のpHが要求され、工程温度は使用する1種もしくは複数の有機酸の融点より上になるように選択され、それはベヘン酸の場合には約80〜85℃の温度を意味し、それは撹拌しながら実施すべきであり、撹拌速度は反応容器に関するスタラーの寸法、使用するスタラーのタイプ、不十分な混合による酸化銀または水酸化銀生成の回避、および発泡の回避に依存しており、そして一般的には200〜1000rpmの間であり、そしてわずかに過剰の有機酸、例えば2モル%過剰のベヘン酸、が好ましい。
【0047】
ベヘン酸銀を含有する銀酸塩粒子の寸法は銀塩添加速度、アニオン性界面活性剤の濃度および温度を変えることにより変えることができ、添加速度の減少、アニオン性界面活性剤の濃度の減少および温度上昇に伴い相当する粒子の直径は増加する。
【0048】
本発明に従う水性媒体中にベヘン酸銀を含む実質的に非感光性の有機銀塩の粒子の分散液の製造方法の他の好適な態様では、この製造方法はベヘン酸銀を含む銀有機塩を限外濾過にかける段階も含む。限外濾過はイオン種を除去しそしてベヘン酸銀を除去せずに有機銀塩の生成時に製造される塩を除去するのに十分な小さい孔寸法を有するカートリッジ−フィルターを通す濾過によりベヘン酸銀分散液を濃縮する。10000〜500 000の分子量を有するカートリッジ−フィルターがこの目的に適していることが見いだされている。限外濾過中のベヘン酸銀の安定性を保つためには、アニオン性界面活性剤の最小濃度を保つことが必要であるが、元の対イオンの存在がサーモグラフィ記録材料中で望ましくない場合にはアニオン性界面活性剤の対イオンを変えることができる。例えば、界面活性剤番号1においてナトリウムイオンを限外濾過工程中に硝酸アンモニウム溶液で洗浄することによりアンモニウムイオンにより置換することができ且つナトリウムイオン濃度を100ppmより下に減ずることができる。
【0049】
実質的に非感光性の有機銀塩分散液
以上で定義されているように比較的高い結晶化度を有するベヘン酸銀を含んでなる有機銀塩の粒子を有する分散液を製造することが必要であるなら、粒子自身が満足のいく分散液性質を得ることを保証しながらできるだけ小さい損傷を受けるような分散技術を用いてその分散液が製造される場合には、本発明に従うサーモグラフィ記録材料を製造できることが見いだされた。微細流動化器、超音波装置、ロータースターターミキサーなどの使用をこれに関して利用できることが見いだされた。
【0050】
界面活性剤および分散剤
界面活性剤および分散剤が特定の分散媒体中に不溶性である成分または反応物の分散を助ける。本発明のサーモグラフィ記録材料は1種もしくはそれ以上のアニオン性、非イオン性もしくはカチオン性の界面活性剤であってよい界面活性剤および/または1種もしくはそれ以上の分散剤を含有できる。
【0051】
適する分散剤は天然性の重合体状物質、合成性の重合体状物質および微細分割状粉末、例えば微細分割状の非金属無機粉末、例えばシリカ、である。適する親水性の天然性もしくは合成性の重合体状物質は1個もしくはそれ以上のヒドロキシル、カルボキシルまたはホスフェート基を含有しており、例えば蛋白質−タイプの結合剤、例えばゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アルブミンおよび改質ゼラチン;改質セルロース、澱粉、改質澱粉、改質糖、改質デキストランなどである。適する親水性の合成重合体状物質の例はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、およびポリメタクリル酸並びにそれらの共重合体である。
【0052】
還元剤
実質的に非感光性の有機重金属塩の還元用に適する有機還元剤は、O、NもしくはCに結合された少なくとも1つの活性水素原子を含有する有機化合物、例えば芳香族ジ−およびトリ−ヒドロキシ化合物、アミノフェノール類、METOL(商品名)、p−フェニレン−ジアミン類、アルコキシナフトール類、例えばUS−P3,094,41に記載されている4−メトキシ−1−ナフトール、ピラゾリジン−3−オンタイプの還元剤、例えばPHENIDONE(商品名)、ピラゾリン−5−オン、インダン−1,3−ジオン誘導体、ヒドロキシテトロン酸、ヒドロキシットロンイミド、例えばUS−P4,082,901に記載されているヒドロキシルアミン誘導体、ヒドラジン誘導体、および例えばアスコルビン酸の如きレダクトンであり、US−P 3,074,809、3,080,254、3,0
94,417および3,887,378も参照のこと。
【0053】
同じ芳香族核、例えばベンゼン核、上でオルト−またはパラ−位置に少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有用な芳香族ジ−およびトリ−ヒドロキシ化合物の中では、ヒドロキノンおよび置換されたヒドロキノン類、カテコール、ピロガロール、没食子酸および没食子酸エステル類が好ましい。ポリヒドロキシスピロ−ビス−インダン化合物が特に有用である。
【0054】
カテコール−タイプの還元剤、すなわちオルト−位置に2個のヒドロキシ基(−OH)を有する少なくとも1つのベンゼン核を含有する還元剤、の中では下記のものが好ましい:カテコール、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、1,2−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸およびエステル類、例えば没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、タンニン酸、および3,4−ジヒドロキシ−安息香酸エステル類。特に好適なカテコール−タイプの還元剤はEP−B692 733および公開されていないヨーロッパ特許出願EP 97202872.4に記載されている。
【0055】
特にフォトサーモグラフィ記録材料用の、他の適する還元剤は立体障害フェノール類、ビスフェノール類およびスルホンアミドフェノール類である。
【0056】
加熱するとベヘン酸銀を含んでなる実質的に非感光性の有機銀塩の還元における反応相手になる還元剤の組み合わせも使用できる。例えば、還元剤とスルホンアミドフェノール類との組み合わせは定期刊行の Research Disclosure, February 1979, item 17842、US−P 4,360,581および4,782,004、並びにEP−A423 891に記載されており、そして立体障害フェノール類とスルホニルヒドラジド還元剤との組み合わせはUS−P 5,464,738に開示されており、トリチルヒドラジド類およびホルミル−フェニル−ヒドラジド類はUS−P5,496,695に開示されており、トリチルヒドラジド類およびホルミル−フェニル−ヒドラジド類と多様な補助還元剤はUS−P5,545,505、US−P 5,545,507およびUS−P 5,558,983に開示されており、アクリロニトリル化合物はUS−P 5,545,515およびUS−P5,635,339に開示されており、そして2−置換されたマロンジアルデヒド化合物はUS−P 5,654,130に開示されている。US−P 3,460,946および4,547,648に開示されているように有機還元性金属塩類、例えばステアリン酸第一錫、もそのような還元剤中で使用されている。それぞれUS−P4,001,026およびUS−P 3,547,648に記載されているように、立体障害フェノール類およびビスフェノール類はそれら自身そのような還元剤の中で使用されている。
【0057】
銀像濃度は以上で定義された1種もしくは複数の還元剤および1種もしくは複数の銀塩の被覆率に依存しており、そして好適には100℃より上への加熱時に少なくとも2.5の光学濃度が得られるようなものでなければならない。好適には1モルの有機銀塩当たり少なくとも0.10モルの還元剤が使用される。
【0058】
ポリカルボン酸類およびそれらの無水物
本発明の記録材料によると、感熱性要素はその他に少なくとも1種のポリカルボン酸および/またはその無水物を、存在する全ての有機銀塩(類)に関して少なくとも20のモル%の量で且つそれと熱作用関係で含んでなっていてもよい。ポリカルボン酸は脂肪族(飽和並びに不飽和脂肪族および脂環式)または芳香族ポリカルボン酸であってよい。これらの酸は例えばアルキル、ヒドロキシル、ニトロまたはハロゲンで置換されていてもよい。それらは無水物形態でまたは少なくとも2個の遊離カルボン酸が残存しているかもしくは熱記録段階で利用可能である条件で部分的にエステル化された形態で使用できる。
【0059】
炭素数が少なくとも4の飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン−ジカルボン酸、デカン−ジカルボン酸、ウンデカン−ジカルボン酸、が特に適する。
【0060】
適する不飽和ジカルボン酸はマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸およびアコニット酸である。適するポリカルボン酸はクエン酸およびその誘導体、アセトンジカルボン酸、イソ−クエン酸およびα−ケトグルタル酸である。
【0061】
好適な芳香族ポリカルボン酸はオルト−フタル酸および3−ニトロ−フタル酸、テトラクロロフタル酸、メリト酸、ピロメリト酸およびトリメリト酸並びにそれらの無水物である。
【0062】
感熱性要素のフィルム−生成性結合剤
実質的に非感光性の有機重金属塩を含有する感熱性要素のフィルム−生成性結合剤は有機重金属塩が均質に分散されている全ての種類の天然樹脂、改質天然樹脂もしくは合成樹脂またはそのような樹脂の混合物、例えばセルロース誘導体、例えばエチルセルロース、セルロースエステル類、例えば硝酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉エーテル類、ガラクトマンナン、α,β−エチレン系不飽和化合物から誘導される重合体、例えばポリ塩化ビニル、後塩素化されたポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、ポリ酢酸ビニルおよび部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、出発物質としてのポリビニルアルコールから製造され反復ビニルアルコール単位がアルデヒドと反応しているポリビニルアセタール類、好適にはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドの共重合体、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレンおよびポリエチレンまたはそれらの混合物、であってよい。
【0063】
少量のビニルアルコール単位を含有する特に適するポリビニルブチラールはモンサントUSAから商品名BUTVARTMB79として販売されており、紙および適当に下塗りされたポリエステル支持体に対する良好な接着性を与える。
【0064】
有機銀塩を含有する層は一般的にはシート−またはウェブ−形態の支持体上に内部に結合剤を含有する有機溶媒からコーテイングされるが、水溶性結合剤および/または水分散性結合剤を含有する水性媒体から適用してもよい。
【0065】
本発明に従うサーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ記録材料中での使用に適する水溶性のフィルム−生成性結合剤は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、蛋白質系結合剤、例えばゼラチン、改質ゼラチン、例えばフタロイルゼラチン、多糖類、例えば澱粉、アラビアゴムおよびデキストラン並びに水溶性セルロース誘導体である。本発明のサーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ記録材料中での使用に適する水溶性結合剤はゼラチンである。
【0066】
本発明のサーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ記録材料中での使用に適する水−分散性結合剤はいずれかの水−不溶性重合体、例えば水−不溶性セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、並びにα,β−エチレン系不飽和化合物から誘導される重合体、例えば後塩素化されたポリ塩化ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール類、好適にはポリビニルブチラール、並びに塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、メタクリレート類、アクリレート類、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルエステル類、スチレン類、ジエン類およびアルケン類よりなる群から選択される単量体を用いて製造されるホモ重合体および共重合体、またはそれらの混合物、であ
ってよい。溶解した重合体の最小の粒子を生ずる非常に小さい重合体粒子および分散液中にあるそれよりわずかに大きいものの場合には重合体分散液と重合体溶液との間には明確は区分がないことに注意すべきである。
【0067】
本発明に従う使用に好適な水−分散性結合剤はスルホネート、スルフィネート、カルボキシレート、ホスフェート、第四級アンモニウム、第三級スルホニウムおよび第四級ホスホニウム基よりなる群から選択される共有結合されたイオン基を有する水−分散性のフィルム−生成性重合体である。本発明に従う使用にさらに好適な水−分散性結合剤は1個もしくはそれ以上の酸基と共有結合された部分を有する水−分散性のフィルム−生成性重合体である。
【0068】
架橋結合可能な基、例えばエポキシ基、アセト−アセトキシ基および架橋結合可能な二重結合を有する水−分散性結合剤も好ましい。
【0069】
本発明のサーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ記録材料における使用に好適な水−分散性結合剤は重合体ラテックスである。ラテックスとしての使用のためには、分散性重合体は好適には幾つかの親水性官能基を有する。水性重合体分散液(ラテックス)を生成するための親水性官能基を有する重合体は例えばUS−P5,006,451に記載されているが、そこでは帯電防止剤として存在する五酸化バナジウムの望ましくない拡散を防止するバリア層を形成するために機能する。
【0070】
結合剤対有機銀塩の比
結合剤対有機銀塩の比は好適には0.2〜6の範囲であり、そして記録層の厚さは好適には5〜50μmの範囲である。
【0071】
熱溶媒
上記の結合剤またはその混合物を、高温におけるレドックス反応の反応速度を改良するワックスすなわち「熱溶媒(thermal solvents)」もしくは「熱溶媒(thermosolvents)」とも称する「熱溶媒(heat solvents)」と組み合わせて使用してもよい。本発明における「熱溶媒」という語は、記録層中で50℃より下の温度では固体状態であるが60℃より上の温度では加熱された領域中での記録層用の可塑剤および/またはレドックス反応物の少なくとも1種、例えば有機重金属塩用の還元剤、のための液体溶媒となる加水分解できない有機物質を意味する。
【0072】
調色剤
純粋な黒色の像色調を比較的高い濃度でそして純粋な灰色を比較的低い濃度で得るためには、記録層は好適には有機重金属塩および還元剤と混合されたサーモグラフィまたはフォトサーモグラフィから既知のいわゆる調色剤を含有する。
【0073】
適する調色剤はUS−P4,082,901に記載されている一般式の範囲内のフタルイミド類およびフタラジノン類である。さらにUS−P 3,074,809、3,446,648および3,844,797に開示されている調色剤を参照のこと。他の特に有用な調色剤はGB−P1,439,478、US−P 3,951,660およびUS−P5,599,647に記載されているベンゾキサジンジオンまたはナフトキサジンジオンタイプの複素環式調色剤化合物である。ポリヒドロキシベンゼン還元剤との組み合わせ使用に特に適する調色剤化合物はUS−P3,951,660に記載されている3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1,3,2H−ベンゾキサジンである。
【0074】
他の添加剤
記録層は上記の成分の他に添加剤、例えば遊離脂肪酸類、界面活性剤、帯電防止剤、例
えばFC(CF)CONH(CHCHO)−Hのようにフルオロカーボン基を含む非イオン性帯電防止剤、シリコーン油、例えばBAYSILONETMOElA(ドイツ、BAYER AGから)、紫外線吸収化合物、白色光線反射性および/または紫外線反射性顔料および/または光学明色化剤を含有できる。
【0075】
支持体
本発明に従う熱による像形成要素用の支持体は透明、半透明、または不透明であってよく、例えば白色光線反射面を有するものであってよくそして好適には例えば紙、ポリエチレンコーテイング紙、または、例えばセルロースエステル、例えば三酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネートもしくはポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートから製造される透明な樹脂フィルムである。例えば、紙をベースにした基質が存在しており、それは白色反射性顔料を含有していてもよく、場合により記録材料および紙をベースにした基質の間に中間層が適用されていてもよい。
【0076】
支持体はシート、リボンまたはウェブ形態であってよくそして必要ならそれに対してコーテイングされる感熱性記録層の接着性を改良するために下塗りされていてもよい。支持体は不透明にされた樹脂組成物、例えば顔料および/もしくは微小空所により不透明にされたか並びに/または不透明な顔料−結合剤層でコーテイングされたポリエチレンテレフタレートから製造されていてもよく、そしていわゆる合成紙、または紙様フィルムであってもよく、そのような支持体に関する情報はEP194 106および234 563並びにUS−P 3,944,699、4,187,113、4,780,402および5,059,579に見られる。透明なベースが使用される場合には、ベースは無色であってもまたは着色されていてもよく、例えば青色を有していてもよい。
【0077】
例えばカールおよび帯電の如き物理的性質を調節するために1つもしくはそれ以上の裏打ち層を付与してもよい。
【0078】
最も外側の層
記録材料の最も外側の層は本発明の種々の態様では、感熱性要素の最も外側の層、感熱性要素に適用された保護層または感熱性要素に対して支持体の反対側にある層であってよい。
【0079】
保護層
本発明に従う記録材料の好適な態様によると、感熱性要素の局部的変形を避けるためおよび摩擦耐性を改良するために感熱性要素は保護層でコーテイングされる。
【0080】
保護層は好適には結合剤を含んでなり、それは溶媒−可溶性、溶媒−分散性、水溶性、水−分散性であってよい。溶媒−可溶性結合剤の中では、EP−A614 769に記載されているポリカーボネート類が特に好ましい。しかしながら、水溶性または水−分散性結合剤が好ましく、その理由はコーテイングを水性組成物から行うことができそして保護層と中間的な下層との混合が中間的な下層中で溶媒−可溶性または溶媒−分散性結合剤を使用することにより避けられるからである。
【0081】
本発明に従う保護層はさらにWO94/11199に記載されているように保護層の上部に存在する熱溶融性粒子を場合により潤滑剤と共に含んでなっていてもよい。好適な態様では、150℃より下の融点を有する少なくとも1種の固体潤滑剤および少なくとも1種の液体潤滑剤が結合剤の中に存在しており、そこで潤滑剤の少なくとも1種は燐酸誘導体である。
【0082】
最も外側の層のための水溶性または水−分散性結合剤
本発明の態様によると、記録材料の最も外側の層は水溶性結合剤、水−分散性結合剤または水溶性および水−分散性結合剤の混合物を含んでなっていてもよい。最も外側の層に適する水溶性結合剤は、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体または他の多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどであり、硬化可能な結合剤が好ましくそしてポリビニルアルコールが特に好ましい。適する水−分散性結合剤は重合体状ラテックスである。
【0083】
最も外側の層のための架橋結合剤
本発明に従う最も外側の層は架橋結合されていてもよい。架橋結合は例えばWO95/12495に記載されているもののような保護層用の架橋結合剤、例えばテトラ−アルコキシシラン類、ポリイソシアナート類、ジルコナート類、チタナート類、メラミン樹脂などを使用して行われ、例えばオルト珪酸テトラメチルおよびオルト珪酸テトラエチルの如きテトラアルコキシシラン類が好ましい。
【0084】
最も外側の層のための無光沢剤
本発明に従う記録材料の最も外側の層は無光沢剤を含んでいてもよい。適当な無光沢剤はWO94/11198に記載されておりそしてそれは例えば滑石粒子を含んでおりそして場合により最も外側の層から突出していてもよい。
【0085】
最も外側の層のための潤滑剤
固体もしくは液体の潤滑剤またはそれらの組み合わせが本発明に従う記録材料の滑り特性を改良するために適する。
【0086】
本発明に従い使用できる固体潤滑剤はポリオレフィンワックス類、エステルワックス類、ポリオレフィン−オレフィンエーテルブロック共重合体、アミドワックス類、ポリグリコール類、脂肪酸類、脂肪アルコール類、天然ワックス類および固体燐酸誘導体である。好適な固体潤滑剤は例えばWO94/11199に記載されているような熱溶融性粒子である。
【0087】
本発明に従い使用できる液体潤滑剤は脂肪酸エステル類、例えばトリオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタンおよびトリオレイン酸ソルビタン、シリコーン油誘導体および燐酸誘導体である。
【0088】
感光性の種
露光時に本発明のベヘン酸銀の還元に触媒作用を与えうる種を生成しうる好適な感光性の種はハロゲン化銀である。
【0089】
本発明で使用される感光性ハロゲン化銀は実質的に非感光性の有機銀塩の0.1〜100モル%、好適には0.2〜80モル%、特に好適には0.3〜50モル%、特別に好適には0.5〜35モル%、そして特に1〜12モル%の範囲で使用できる。
【0090】
ハロゲン化銀はいずれの感光性ハロゲン化銀、例えば臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、ブロモヨウ化銀、クロロブロモヨウ化銀、クロロ臭化銀など、であってもよい。ハロゲン化銀は立方体、斜方晶系、管状、四面体、八面体などを含むがそれらに限定されない感光性のいずれの形態であってもよくそしてその上での結晶のエピタキシアル成長を有していてもよい。
【0091】
本発明で使用されるハロゲン化銀は改質せずに使用してもよい。しかしながら、それを化学的増感剤、例えば硫黄、セレン、テルルなどを含有する化合物、または金、白金、鉄、ルテニウム、ロジウムもしくはイリジウムなどを含有する化合物、還元剤、例えばハロ
ゲン化錫など、またはそれらの組み合わせ、を用いて化学的に増感してもよい。これらの工程の詳細は T. H. James, ”The Theory of the Photographic Process”, FourthEdition, Macmillan Publishing Co. Inc., New York (1977), Chapter 5, pages 149to 169 に記載されている。
【0092】
分光増感剤
本発明に従う記録材料は赤外線増感剤、超紫外線増感剤または可視光線増感剤を含有していてもよい。適する増感剤には、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノールおよびキサンテン染料が包含される。有用なシアニン染料には塩基性核、例えばチアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核およびイミダゾール核、を有するものが包含される。好適なメロシアニン染料には上記の塩基性核だけでなく酸性核、例えばチオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリジンジオン核、ハルビツル酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核およびピラゾロン核、も有するものが包含される。上記のシアニンおよびメロシアニン染料の中では、イミノ基またはカルボキシル基を有するものが特に好ましい。
【0093】
適する赤外線増感剤にはEP−A465 078、559 101、616 014および635 756、JN 03−080251、03−163440、05−019432、05−072662および06−003763並びにUS−P4,515,888、4,639,414、4,713,316、5,258,282および5,441,866に開示されているものが包含される。
【0094】
強色増感剤
本発明に従うと記録材料はさらに強色増感剤も含む。好適な強色増感剤はメルカプト化合物、二硫化物−化合物、スチルベン化合物、有機ホウ酸エステル化合物およびスチリル化合物よりなる化合物群から選択される。赤外分光増感剤と共に使用するのに適する強色増感剤はEP−A559 228、EP−A 587 338、US−P 3,877,943、US−P 4,873,184および公開されていないヨーロッパ特許出願EP96202107.7に開示されている。
【0095】
抗ハレーション染料
上記成分の他に、本発明で使用される記録材料は感光性の熱的に現像可能な写真材料中を通過した光を吸収しそれによりその反射を防止する抗ハレーションまたはアキュータンス染料も含有できる。そのような染料は感光性の熱的に現像可能な写真材料の中にまたは本発明の写真材料の他の層の中に加えることができる。
【0096】
帯電防止層
本発明の記録材料の好適な態様では、潤滑剤の少なくとも1種が燐酸誘導体である150℃より低い融点を有する少なくとも1種の固体潤滑剤および少なくとも1種の液体潤滑剤を結合剤中に含んでいない帯電防止層が最も外側の層に適用される。
【0097】
コーテイング
本発明の記録材料のいずれかの層のコーテイングは例えば Edward D. Cohen および Edgar B. Gutoff により編集された Modern Coating andDrying Technology, (1992) VCH Publishers Inc. 220 East 23rd Street, Suite 909New York, NY 10010, U.S.A. に記載されているもののようないずれかのコーテイング技術により行うことができる。
【0098】
サーモグラフィ処理
サーモグラフィ像形成は像からの反射による像を通る直接的露光によるアナログ方式で
、或いは例えばNd−YAGレーザーもしくは他の赤外レーザーの如き赤外熱源を使用することによるかまたは熱ヘッドを用いる直接的な熱による像形成による画素毎のデジタル方式のいずれかの像通りの熱の適用により行われ、サーモグラフィ材料は好適には赤外吸収性化合物を含有する。
【0099】
熱による印刷では、像信号が電気パルスに変換されそして次にドライバー回路を通って熱印刷ヘッドに選択的に移される。熱印刷ヘッドは顕微鏡的寸法の耐熱要素からなっており、それがジュール効果により電気エネルギーを熱に変換させる。このようにして熱信号に変換された電気パルスはそれ自身熱として熱紙に移され、そこでカラー現像を生ずる化学反応が起きる。そのような熱印刷ヘッドは記録層と接触してまたは近接して使用することができる。一般的な熱印刷ヘッドの操作温度は300〜400℃の範囲であり、そして絵の要素(画素)当たりの加熱時間は1.0msより短く、熱印刷ヘッドと記録材料との圧力接触は良好な熱の移動を確実にするためには例えば200〜500g/cmである。
【0100】
熱印刷ヘッドと最も外側の保護層が付与されていない記録材料との直接的接触を避けるために、熱印刷ヘッドによる記録材料の像通りの加熱は接触しているが加熱中にそこから除去可能な樹脂シートまたはウェブを通して行われるが、記録材料の移動は生ずることはできない。
【0101】
熱印刷ヘッドのマイクロ−レジスター中でレーザー光線または電流を調節するための像信号は例えば光電子走査装置からまたは場合により特定の要求を満たすために像情報を処理できるデジタル像走査ステーションに連結されていてもよい中間的な貯蔵手段、例えば磁気ディスクもしくはテープもしくは光学的ディスク貯蔵媒体、から直接的に得られる。
【0102】
加熱要素の作動は動力−調節可能式であるかまたは一定動力におけるパルス−長さ調節可能式である。像通りの加熱は、像画素を形成するために必要ではない加熱要素が下記の式:
0.5H<H<H
[式中、Hはサーモグラフィ記録材料中で可視像形成を生ずるのに必要な熱の最少量を表す]
に従う熱の量(H)を発生するような方法で、行うことができる。
【0103】
EP−A 654355は、加熱要素の作動が仕事量循環パルス式で行われるようなエネルギー化可能な加熱要素を有する熱ヘッドによる像通りの加熱により像を形成する方法を記載している。熱印刷ヘッドを用いて操作されるサーモグラフィ記録材料中で使用される時には、サーモグラフィ記録材料は連続的な色調再現に必要なかなり多い数の灰色水準を有する像を再現するためには適していない。EP−A622 217は連続的な色調再現における改良を与える直接的な熱による像形成要素を使用して像を形成する方法を開示している。
【0104】
サーモグラフィ記録材料の像通りの加熱は材料中に加えられる電気抵抗性リボンを使用して行うこともできる。サーモグラフィ記録材料の像通りまたはパターン通りの加熱は画素通りに調節された超音波により、例えばUS−P4,908,631に記載されているような超音波画素プリンターを使用して行うこともできる。
【0105】
フォトサーモグラフィ処理
本発明に従うフォトサーモグラフィ記録材料をX線波長〜5ミクロン波長の間の波長の照射線で露光することもでき、例えば精密に焦点を合わせた光源、例えばCRT光源;紫外線、可視光線もしくは赤外線波長のレーザー、例えば780nm、830nmもしくは
850nmで発光するHe/Ne−レーザーもしくは赤外−レーザーダイオード;または発光ダイオード、例えば659nmで発光するものを用いる画素通りの露光により、または適当な照明を用いる、例えば紫外線、可視光線もしくは赤外線を用いる、対象自身もしくはそこからの像への直接的な露光により像が得られる。
【0106】
本発明に従う像通りに露光されたフォトサーモグラフィ記録材料の熱による現像のためには、関連する適用法、例えば接触加熱、放射加熱、マイクロウエーブ加熱などに関して許容できる時間内に記録材料を現像温度に均一に加熱しうるいずれの種類の熱源でも使用することができる。
【0107】
工業的用途
直接的な熱による像形成は透明および反射タイプの両方の印刷物の製造に使用することができる。本発明の用途は適用されるドットエネルギー依存性の非常に鮮明な印刷濃度を有する高コントラスト像が要求されるグラフィック像および例えば医学診断分野で要求されるような適用されるドットエネルギー依存性の比較的弱い印刷濃度が要求される連続的色調の像の両方の分野で推奨される。ハードコピー分野では白色の不透明ベース上の記録材料が使用されるが、医学診断分野では黒色像が形成される透明体が光箱を用いて操作される検査技術において広く使用されている。
【0108】
本発明を以下でその好適な態様に関して記載するが、本発明をその態様に限定しようとするものではないことは理解されよう。それとは対照的に、添付されている請求項により定義されている本発明の精神および範囲内に含まれる全ての変更、改変、および同等物を包括することを意図する。
【実施例】
【0109】
本発明を以下で本発明の実施例および比較例により説明する。これらの実施例に示されている百分率および比は断らない限り重量による。上記のもの以外の本発明の実施例および比較例で使用された成分は以下のものである:
・有機銀塩として:
AgB=ベヘン酸銀、
・結合剤として:
PVB=BUTVARTMB79、モンサント(Monsanto)からのポリビニルブ チラール、
K7598=タイプK7598、ケッフ(Koepff)からのカルシウムを含まない ゼラチン、
LATEX01=50重量%のブタジエンおよび50重量%のメタクリル酸メ チルの共重合体のラテックス、
LATEX02=47.5重量%のブタジエン、47.5重量%のメタクリル酸 メチルおよび5重量%のイタコン酸の三元共重合体のラテックス、
・還元剤として:
R01=3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、
R02=3(3′,4′−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸
・調色剤として:
TA01=ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン、
TA02=7−(炭酸エチル)−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン (下記の式II参照)
【0110】
【化1】

【0111】
TA03=スクシンイミド、
TA04=フタラジノン、
TA05=フタラジン、
・平滑剤として:
oil=BaysilonTM、Bayer AGからのシリコーン油、
・安定剤として:
S01=無水テトラクロロフタル酸、
S02=アジピン酸、
S03=ベンゾトリアゾール。
【0112】
本発明の実施例1〜7および比較例1〜3
ベヘン酸銀の製造
必要量のベヘン酸を2−ブタノン中に60℃で激しく撹拌しながら溶解させ、その後に反応器を56〜60℃の間の温度に保ちながら脱塩水を加え、反応器の温度を56〜60℃の間に保ちながら水酸化ナトリウムの水溶液を激しく撹拌しながら加えることにより、それぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2で指定されている量および濃度でベヘン酸をベヘン酸ナトリウムに転化させ、そして最後にそれぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2で特定の実施例およびベヘン酸銀タイプに関して指定されている量の硝酸銀を、それぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2で特定の実施例およびベヘン酸銀タイプに関して指定されている濃度で、それぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2で特定の実施例およびベヘン酸銀タイプに関して指定されている速度で、反応器温度をそれぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2で特定の実施例およびベヘン酸銀タイプに関して示されている温度に保ちながら激しく撹拌しながら加えることによりベヘン酸ナトリウムをベヘン酸銀に転化させることにより、比較例1〜3のベヘン酸銀タイプA〜Cおよび本発明の実施例1〜7のベヘン酸銀タイプI〜VIIを製造した。2−ブタノンおよび水の懸濁混合物中の2−ブタノンの最終的な重量%並びに特定の実施例およびベヘン酸銀タイプに関する初期混合数もそれぞれ比較例および本発明の実施例に関して表1および2に示されている。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
本発明の実施例8〜15および比較例4〜6
ベヘン酸銀の2−ブタノン中分散液
56.5gのそれぞれ比較例1、比較例2および本発明の実施例1の乾燥したベヘン酸銀粉末を56.6gのPVBの387.5gの2−ブタノン中溶液の中で120分間ボールミル粉砕することにより、比較例4、比較例5および本発明の実施例9の分散液を得た。
【0116】
最初に以下の表3および5に示されている56.5gの比較例3および本発明の実施例1〜7の乾燥したベヘン酸銀粉末を56.6gのPVBの387.5gの2−ブタノン中溶液の中でUltra−TurraxTMスタラーを用いて10分間撹拌することにより予備分散液を製造することにより、比較例6並びに本発明の実施例8および10〜15の分散液を得た。これらの予備分散液を次にMICROFLUIDICSTMM−110Y高圧微細流動化器の中に400バールのジェット圧力で1回通すことにより微細流動化して比較例6並びに本発明の実施例8および10〜15の分散液を製造した。
【0117】
記録材料のコーテイング
175μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体を2−ブタノンを溶媒として含有しているコーテイング組成物から上記のベヘン酸銀分散液および以下に示されている追加成分を使用してドクターブレードコーテイングして、50℃における1時間の乾燥後にそれぞれ比較例1〜3に従い製造されたそれぞれベヘン酸銀タイプA〜3を有する比較例4〜5に関しては表3にそして本発明の実施例1〜7に従い製造されたそこに示されているベヘン酸銀タイプI〜VIIを有する本発明の実施例8〜15に関しては表8に示されている組成物を上部に有する層を得た。
【0118】
記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度の測定
比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を下記の通りにして測定した:
i)比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料並びにNIST標準1976の30mm直径のサンプルをパンチを用いて比較的大きいシートから切断し、
ii)次にX線回折走査を40keVおよび30mAの電流で操作されている銅KαX線源が装備されたSIEMENS D5000X線回折計を使用してそのサンプルホルダー
中でサンプルを用いて行って比較的4〜6、本発明の実施例8〜15およびNIST標準1976のサンプルを同じX線回折計を用いて正確に同じ調節状態で、0.05度の段階で1段階/秒の速度で5°および50°の間のブラッグ角で走査させそしてデータをSIEMENS DIFFRACTMATソフトウエアを用いて処理して背景に関して補正されたX線回折スペクトルおよび各々のX線回折ピークの正確なピーク高さを得て、
iii)次に6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線の平均ピーク高さを加えることによりKmaterial値を比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料に関して測定し、
iv)NIST標準1976に関して25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるX線回折線の平均ピーク高さを加えることによりK1976値を測定し、
v)1mの比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料中に存在する銀の重量、CAg、を銀濃度が標準的容量滴定技術を用いて測定されており一定の銀を含有するサンプルを用いて銀に関して目盛り付けされている60keVおよび50mAの電流で操作されている銅KαX線源が装備されたPHILIPS PW2400波長分散X線蛍光装置を用いて測定し、そして
vi)比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料中に存在するベヘン酸銀に関する結晶化度の値を式:Kmaterial/(K1976×CAg)を用いて測定した。
【0119】
比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料中に存在するベヘン酸銀に関する結晶化度はそれぞれ表3および4にまとめられている。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
サーモグラフィ印刷
プリンターには300dpiの解像度を有する薄膜熱ヘッドが装備されておりそして19msの線時間(線時間は1本の線を印刷するのに必要な時間である)で操作された。線時間中に印刷ヘッドは一定の動力を受けた。線時間および発熱抵抗器の表面積により割算された1線時間中の電気入力エネルギーの合計量である平均印刷力は1.5mJ/ドットであり、それは記録材料の各々の中で最大光学濃度を得るのに十分であった。印刷中に、連続的に下塗り層、耐熱層および滑り層(抗−摩擦層)でコーテイングされて6μmの合計厚さを有するリボンを与えるような分離できる5μm厚さのポリエチレンテレフタレートリボンの滑り層と接触している薄い中間物質により印刷ヘッドは像形成層から分離されている。
【0123】
像の評価
それぞれ255および0のデータ水準に対応する灰色基準段階に関してMacbethTMTR924濃度計付きの可視フィルターにより測定された比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料で得られた印刷物の光学的最大および最小濃度は表5および6に示されている。
【0124】
像色調の評価
最初に45℃で7日間焼き戻しされた記録材料を上記の通りにして印刷しそして次に印刷物を可視検査および像のb*CIELAB値の測定にかけてMACBETHTMTR924濃度計で測定された像濃度の関数として像色調を測定した。ASTMNorm E179−90に従う分光計測定によりR(45/0)幾何学的形状で定量化したASTM Norm E308−90に従う分光計測定によりL*、a*およびb*CIELAB値を測定した。比較例4〜6および本発明の実施例8〜15の記録材料に関する可視的に評価された像色調並びに像濃度におけるb*値に依存する最小値におけるb*値もそれぞれ表5および6にまとめられている。
【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
ベヘン酸銀タイプA〜Cを有する比較例4〜6の記録材料は全て褐色の色調および−2.0より大きい像濃度におけるb*値に依存する最小値におけるb*値を有する印刷を示したが、本発明に従う製造されたベヘン酸銀タイプI〜IVVを有する本発明の実施例8〜15の記録材料は青色または青色/赤色の色調および−2.0より小さい像濃度におけるb*値に依存する最小値におけるb*値を有する印刷物を示した。
【0128】
比較例7および8
比較例7であるラベロンからのベヘン酸銀−還元剤システムをベースにしたTHERMALRESTMFILMタイプPR−PM−FILMムロット番号04673456サーモグラフィ記録材料および比較例8であるイマチオンからのベヘン酸銀−還元剤システムをベースにしたDRYVIEWTM39701DVB(青色)ロット番号021132−013−A−025フォトサーモグラフィ記録材料のサンプルの中でベヘン酸銀の結晶化度および可視色調を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載された通りにして測定しそして結果は表7にまとめられている。DRYVIEWTM39701DVB(青色)の場合にはベヘン酸銀の可視検査は青色支持体の使用のために不可能である。
【0129】
【表7】

【0130】
比較例9
EP−A 754969の教示に従い製造されるベヘン酸銀を加えたサーモグラフィ記録材料
最初に34kgのベヘン酸を340Lの2−プロパノール中に65℃で加えそして次に水酸化ナトリウムの0.25N溶液を8.7のpHが得られるまで撹拌しながら加えた。これには約400Lの0.25N NaOHを必要とした。生じた溶液の濃度を次に蒸発および希釈の組み合わせにより8.9重量%のベヘン酸ナトリウム濃度および16.7容量%の溶媒混合物中の2−プロパノールの濃度に調節した。
【0131】
ベヘン酸銀合成を400mVの一定のUAgにおいて下記の通りにして行った:30gのゼラチン(ケッフ・アンドソエンのアグファ・ゲラチンファッブリクからの7598タイプ)の750mLの蒸留水中の72℃の撹拌されている溶液に二重壁反応器中で数滴の硝酸銀の2.94M水溶液を加えてUAgを反応の開始時に400mVに調節しそして次に製法が上記の通りである374mLのベヘン酸ナトリウム溶液を78℃の温度で反応器中に46.6mL/分の速度で計量添加しそして同時に硝酸銀の2.94M水溶液を反応器に計量添加し、その添加速度は反応器中の分散媒体中で400±5mVのUAgを維持するのに必要な硝酸銀溶液の量により調節された。ベヘン酸ナトリウムおよび硝酸銀溶液の両者を分散媒体のすぐ下におかれた小さい直径の管を通して分散媒体に加えた。添加段階の終わりに、0.092モルのベヘン酸ナトリウムおよび0.101モルの硝酸銀を加えた。生じたベヘン酸銀分散液は3.13重量%のベヘン酸銀および2.28重量%のK7598を含有していた。
【0132】
0.032gのTA03、2gのLATEX01の20重量%水性分散液および界面活性剤を撹拌しながら15gのこのベヘン酸銀分散液に加えそして生じた分散液を脱塩水で18.8gの重量まで希釈し、その後40℃の温度で、120μmのスリット幅を有するドクターブレードコーターを用いて、下塗りされた100μm厚さのポリエステルシート上にコーテイングしそして乾燥した。乾燥した層は約3g/mのベヘン酸銀、約2.5g/mのLATEX01、約2.2g/mのK7598および約0.2g/mのTA03からなっていた。
【0133】
サーモグラフィ材料中のベヘン酸銀の結晶化度は本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定すると0.33であった。
【0134】
本発明の実施例16〜20
単独ジェット法を用いる水性媒体中のベヘン酸銀分散液の製造
本発明の実施例16〜20のベヘン酸銀タイプVIII〜XIIの水性分散液を下記の通りにして製造した:
i)102.18g(0.3M)のベヘン酸を400rpmで100mm直径のタイフーンスタラーを用いて撹拌しながら250mm直径容器の中で80℃において脱イオン水で1LにされるmL量の界面活性剤nr1/gベヘン酸(表8参照)の10%溶液の中に80℃の温度で分散させ、
ii)次に150mLの水酸化ナトリウムの2M水溶液を400rpmで100mm直径のタイフーンスタラーを用いて撹拌しながら250mm直径の容器中で80℃において10〜20分間の期間にわたり加えて実質的にベヘン酸ナトリウムを含有する透明な溶液とし、
iii)次に300mLの硝酸銀の1M(または本発明の実施例17および18の媒体には100mlの3M)水溶液を400rpmで100mm直径のタイフーンスタラーを用いて撹拌しながら250mm直径の容器中で80℃においてモル/モルのベヘン酸銀・分の特定速度で加えて(特定のベヘン酸銀タイプに関する値に関しては表8を参照のこと)ベヘン酸ナトリウムをベヘン酸銀に完全に転化させ、そして
iv)500000の分子量のポリスルホンカートリッジフィルターを用いる室温容器における限外濾過で生じたベヘン酸銀分散液を濃縮する(最終的なAgB−濃度および残存伝導度、mS/cm、は表8に示されている)。
【0135】
CoulterLS230回折計により測定された容量平均粒子寸法も表8に示されている。
【0136】
【表8】

【0137】
ベヘン酸銀のこれらの分散液を水性媒体でコーテイングされたサーモグラフィ要素を含んでなるサーモグラフィ記録材料の製造において直接使用した。
【0138】
調色剤分散液
調色剤分散液01:30%のTA01および3%の界面活性剤番号1(分散液として加え
られる)を含有する界面活性剤番号1の水溶液中のTA01の分散液

調色剤分散液02:20%のK7598(ゼラチン)および10%のTA02(片として
加えられる)を含有するゼラチン溶液中のTA02の分散液。
【0139】
水性ベヘン酸銀−分散液を用いるサーモグラフィ記録材料の製造
最初にK7598を脱イオン水中に36℃で加え(量に関しては表9を参照のこと)、次に界面活性剤番号1を含有するベヘン酸銀エマルション(量および濃度に関しては表9を参照のこと)を加え、次にLATEX02を5.0のpHで加え(量に関しては表9を参照のこと)、その後、5分間撹拌し、次に分散液を36℃に保ちそしてその後に激しく撹拌ながら水性調色剤分散液を加え、次に6.3gの調色剤分散液02(本発明の実施例16〜20参照)、次に11.23gのR01のエタノール中13.7重量%溶液、そして最後に1.31gのホルムアルデヒドの3.66重量%水溶液を加えることにより、本発明の実施例16〜20のサーモグラフィ記録材料を製造した。
【0140】
【表9】

【0141】
生じたベヘン酸銀エマルションを次に175μm厚さの下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体上にドクターブレードコーテイングして表10に示されているコーテイング重量を生じた。
【0142】
本発明の実施例16〜20のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定しそしてそれらは表10に示されている。
【0143】
本発明の実施例16〜20および比較例7のサーモグラフィ記録材料を印刷しそして印刷を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして評価した。灰色基準に関してMacbethTMTR924濃度計を用いて青色フィルターを通して測定された実施例16〜20のサーモグラフィ記録材料で得られたそれぞれ255および0のデータ水準に相当する最大および最小濃度は表10に示されている。
【0144】
保存性試験
本発明の実施例16および20および比較例7のサーモグラフィ記録材料を用いて製造される印刷の保存性を印刷を暗所で34%の相対的湿度(RH)で57℃に3日間加熱する時の最小濃度における観察された変化を基にして評価した。これらの結果は表10に示されている。
【0145】
光箱試験
本発明の実施例16および20並びに比較例7のサーモグラフィ記録材料を用いて製造される印刷の像背景の安定性を変化を基にして評価した。露光時に30℃および85%の相対湿度(RH)においてボッシェ調整棚の中に3日間置かれた特別に構成された光箱の白色PVC窓の上部でMacbethTMTR924濃度計を用いて青色フィルターを通して測定された最小(背景)濃度における変化を基にして評価した。均質な露光を確実にするために試験材料の設置には長さが550mmであり幅が500mmである窓の中心領域だけを使用した。
【0146】
使用したステンレス鋼製の光箱は長さが650mm、幅が500mm、そして高さが120mmであり、長さが610mm、幅が560mmの開口部を有しており、開口部の周囲には幅が10mm、深さが5mmの縁がついており、それにより長さが630mmで幅が580mmの白色PVCの5mm厚さの板のための台を形成して光箱の上部での白色PVC−板フラッシュを生じそして白色PVC板中以外の光箱からの光の損失を防止する。この光箱には2つの側面から等距離的に長さ方向に設置されている9個の直径が27mmのPlaniluxTMTLD36W/54蛍光灯が適合されており、これらの灯は互いに等距離に置かれておりそして光箱の幅全体にわたる側面および白色PVC板の底から30mm下にある蛍光管の上部でそして材料から35mm下で試験した。
【0147】
光箱試験の結果は表10に示されている。本発明の実施例16〜20のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀並びに高いないし非常に高い結晶化度を有するこれらのベヘン酸銀を用いるサーモグラフィ記録材料は、本発明の保存性および光箱試験にかけられた時にほとんど変化しない最小濃度を示す。
【0148】
【表10】

【0149】
本発明の実施例21
56.5gの本発明の実施例2の乾燥したベヘン酸銀粉末タイプIIを56.5gのPVBの413.1gの2−ブタノン中溶液に加えそして次にUltra−TurraxTMスタラーを用いて10分間撹拌することにより最初に予備分散液を製造することにより製造されたベヘン酸銀分散液を使用して本発明の実施例21のフォトサーモグラフィ記録材料を製造した。この予備分散液を次にMICROFLUIDICSTMM−110Y高圧微細流動化の器中に400バールのジェット圧力で通すことにより微細流動化してベヘン酸銀の2−ブタノン中10.74重量%分散液を製造した。
【0150】
次に43.326gのベヘン酸銀分散液を48.959gのPVBの30重量%溶液と20分間混合し、0.145gのヨウ化カリウムと混合し、その後15分間撹拌し、0.934gの30重量%のTA01および15.4重量%のTA02を含有する2−ブタノン溶液と混合し、その後20分間撹拌し、0.441gのoilの2−ブタノン中10%溶液と混合し、その後20分間撹拌し、そして0.351gのS02と混合し、その後20分間撹拌することによりフォトサーモグラフィ分散液を得た。この分散液に次に撹拌しながら0.997gのR01、0.078gのS01および0.130gのS03を加えた。生じたコーテイング分散液を次に175μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体上に120μmの湿潤厚さでドクターブレードコーテイングして、50℃で1時間乾燥した後に、4.31g/mのベヘン酸銀コーテイング重量および0.19g/mのヨウ化銀コーテイング重量を有するフォトサーモグラフィ記録材料を得た。
【0151】
本発明の実施例21のフォトサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定すると1.16であった。
【0152】
本発明の実施例21のフォトサーモグラフィ記録材料を次にAgfa−GevaertTMDL1000露光装置中で材料と接触させた試験オリジナルを通して紫外線に露光し、その後に加熱された金属ブロック上で5秒間にわたり100℃に加熱して良好な像を形成した。
【0153】
本発明の実施例22
限外濾過を行わなかったことおよび分散液中のベヘン酸銀の濃度が14.0重量%の代
わりに8.15重量%であったこと以外はベヘン酸銀タイプXIIに関して本発明の実施例20で記載されている通りにして製造されたベヘン酸銀分散液を使用して、本発明の実施例22のフォトサーモグラフィ記録材料を製造した。
【0154】
撹拌しながら7.5gのベヘン酸銀分散液を4gのヨウ化カリウムの0.44重量%水溶液と、次に2gのLATEX02の20重量%水性分散液と、次に0.64gのフタラジンの5.6重量%水溶液と、そして最後に2gのR02の5.6重量%水溶液と混合することによりフォトサーモグラフィ分散液を得た。生じたコーテイング分散液を次に100μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体上に120μmの湿潤厚さでドクターブレードコーテイングして、50℃で1時間乾燥した後に、3.28g/mのベヘン酸銀コーテイング重量および0.12g/mのヨウ化銀コーテイング重量を有するフォトサーモグラフィ記録材料を得た。
【0155】
本発明の実施例22のフォトサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定すると1.10であった。
【0156】
本発明の実施例22のフォトサーモグラフィ記録材料を次にAgfa−GevaertTMDL1000露光装置中で材料と接触させた試験オリジナルを通して紫外線に露光し、その後に加熱された金属ブロック上で5秒間にわたり100℃に加熱して高いコントラストを有する非常に良好な像を形成した。
【0157】
本発明の実施例23
本発明の実施例22に記載されたベヘン酸銀分散液を用いて本発明の実施例23のフォトサーモグラフィ記録材料を製造した。4gのヨウ化カルシウムの0.97重量%水溶液を4gのヨウ化カリウムの0.44重量%水溶液の代わりに使用したこと以外は本発明の実施例22に記載されている通りにしてフォトサーモグラフィコーテイング分散液を製造した。生じた分散液を次に100μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体上に120μmの湿潤厚さでドクターブレードコーテイングして、50℃で1時間乾燥した後に、3.17g/mのベヘン酸銀コーテイング重量および0.11g/mのヨウ化銀コーテイング重量を有するフォトサーモグラフィ記録材料を得た。
【0158】
本発明の実施例23のフォトサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定すると1.22であった。
【0159】
本発明の実施例23のフォトサーモグラフィ記録材料を次に本発明の実施例22に関して以上で記載されている通りに露光しそして熱的に現像して高いコントラストを有する非常に良好な像を形成した。
【0160】
本発明の実施例24〜26
ホスホニウム化合物の存在下でのベヘン酸銀結晶化度の増加
本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料は本発明の実施例10のものとは異なる組成を有していた。従って、この組成は像の色に影響を与えるため、本発明の実施例24〜26の印刷特性は本発明の実施例10のものとは直接的に比較できない。
【0161】
56.5gの本発明の実施例2の乾燥したベヘン酸銀粉末タイプIIを56.5gのPVBの413.1gの2−ブタノン中溶液に加えそして次にUltra−TurraxTMスタラーを用いて10分間撹拌することにより予備分散液を最初に製造することにより製造されたベヘン酸銀分散液を使用して本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料
を製造した。この予備分散液を次にMICROFLUIDICSTMM−110Y高圧微細流動化器の中に400バールのジェット圧力で通すことにより微細流動化してベヘン酸銀の2−ブタノン中10.74重量%分散液を製造した。
【0162】
記録材料のコーテイング
175μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体に2−ブタノンを溶媒として含有するコーテイング組成物から上記のベヘン酸銀分散液および以下に示されている追加成分を用いてドクターブレードコーテイングして、50℃で1時間乾燥した後に、本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料に関して表11に示されている組成を有する層を上部に得た。
【0163】
【表11】

【0164】
比較例4〜6および本発明の実施例8〜15に関して記載されている通りにして本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料中に存在するベヘン酸銀に関する結晶化度の値は表12にまとめられている。これらの結果から、同じ濃度の他の成分を用いると、ホスホニウム化合物PC01およびPC02の存在が本発明の実施例25および26の記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度を本発明の実施例24のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀のものより増加させることが明らかである。
【0165】
本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料を用いるサーモグラフィ印刷およびその評価を比較例4〜6および本発明の実施例8〜15のサーモグラフィ記録材料に関して記載されている通りにして行った。評価結果は表12にまとめられている。
【0166】
【表12】

【0167】
同じ組成を有する本発明の実施例24〜26のサーモグラフィ記録材料に関しては、存在するベヘン酸銀に関して8モル%の濃度のホスホニウム化合物の添加時の結晶化度の増
加は像色調に関して望ましいa、b′対CD特性での最小値におけるb′値の減少をもたらした。
【0168】
本発明の実施例27〜31
添加時間が1.5分間の代わりに2.5分間でありそして最終的な2−ブタノンの重量%が45の代わりに40.9であったこと以外は本発明の実施例4に関して記載されている通りにして製造されたベヘン酸銀タイプXIIIを使用して、本発明の実施例27〜31のサーモグラフィ記録材料を製造した。56.5gの乾燥したベヘン酸銀粉末タイプXIIIを56.5gのPVBの389.2gの2−ブタノン中溶液に加えそして次にUltra−TurraxTMスタラーを用いて10分間撹拌することにより予備分散液を最初に製造することにより製造されたタイプXIVベヘン酸銀粉末を使用して本発明の実施例27のサーモグラフィ記録材料を製造した。この予備分散液を次にMICROFLUIDICSTMM−110Y高圧微細流動化器中に400バールのジェット圧力で通すことにより微細流動化してベヘン酸銀の2−ブタノン中11.25重量%分散液を製造した。
【0169】
175μmの厚さを有する下塗りされたポリエチレンテレフタレート支持体に2−ブタノンを溶媒として含有するコーテイング組成物から上記のベヘン酸銀分散液および以下に示されている追加成分を用いてドクターブレードコーテイングして、50℃で1時間乾燥した後に、本発明の実施例27〜31のサーモグラフィ記録材料に関して表13に示されている組成を有する層を上部に得た。
【0170】
本発明の実施例8〜15および比較例4〜6に関して記載されている通りにして測定された本発明の実施例27〜31のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度も表13にまとめられている。
【0171】
【表13】

【0172】
ホスホニウム化合物PC01が中に存在する本発明の実施例28〜31のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀の結晶化度は本発明の実施例27のサーモグラフィ記録材料中のベヘン酸銀のものより高いこと並びにPC01−濃度を存在するベヘン酸銀に関して4〜6モル%の濃度まで増加させるにつれてベヘン酸銀結晶化度における増加があることが表13から明らかである。
【0173】
本発明の実施例27〜31のサーモグラフィ記録材料を用いるサーモグラフィ印刷およびその評価を比較例4〜6および本発明の実施例8〜15のサーモグラフィ記録材料に関して記載されているようにして行った。評価結果は表14にまとめられている。
【0174】
【表14】

【0175】
異なる濃度でホスホニウム化合物PC01を有する本発明の実施例28〜31のサーモグラフィ記録材料に関する表14の結果はホスホニウム化合物を含まない本発明の実施例27のサーモグラフィ記録材料に匹敵するb′対OD特性での最小値におけるb′値を示している。
【0176】
本発明の詳細な好適態様を記載してきたが、当技術の専門家には特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱しないような多くの改変を行えることはここに明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、並びにベヘン酸銀、それと熱作用関係にあるそのための有機還元剤および結合剤を含んでなる感熱性要素を含んでなる記録材料であって、該ベヘン酸銀は水銀および/または鉛イオンと会合しておらず、そして該記録材料を銅Kα1X線源で照射する時に、1m2当たり1gの該記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角(Bragg angle)2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST標準1976、菱面体Al23のX線回折線のピーク高さの合計の比が0.85m2/gより大きいことを特徴とする記録材料。
【請求項2】
1m2当たり1gの該記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST標準1976、菱面体Al23のX線回折線のピーク高さの合計の比が1.0m2/gより大きい請求項1に記載の記録材料。
【請求項3】
1m2当たり1gの該記録材料中の銀の量に規格化された、同じ調節状態で同じX線回折計を用いて測定された、6.01°、7.56°、9.12°、10.66°、12.12°および13.62°のブラッグ角2θにおけるベヘン酸銀に起因するX線回折線のピーク高さの合計対25.60°、35.16°および43.40°のブラッグ角2θにおけるNIST標準1976、菱面体Al23のX線回折線のピーク高さの合計の比が1.2m2/gより大きい請求項1に記載の記録材料。
【請求項4】
(i)請求項1〜3のいずれかに記載の記録材料の最も外側の層を熱源に近接させ、(ii)該記録材料を該熱源に近接させて保ちながら該熱源からの熱を該記録材料に像通りに適用して加熱して像を形成せしめ、そして(iii)該記録材料を該熱源から除去する段階を含んでなる記録方法。

【公開番号】特開2007−230240(P2007−230240A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104009(P2007−104009)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【分割の表示】特願平9−356336の分割
【原出願日】平成9年12月10日(1997.12.10)
【出願人】(593194476)アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (50)
【Fターム(参考)】