説明

記録用紙

【課題】磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制する記録用紙を提供する。
【解決手段】パルプ繊維に大バルクハウゼン効果を有する磁性材料が漉き込まれ、かつ填料が配合されており、填料と磁性材料との距離が10μm以下である記録用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣や有価証券等のような特殊な文書(特殊文書)においては、偽造の防止が極めて重要である。このような特殊文書における偽造防止のために、特殊文書中に磁気的手段により検知可能な磁性材料等の金属繊維を漉き込んだり埋め込んだりする技術が従来より知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
一方、近年、コンピュータやネットワークの普及により、膨大な情報の中から所望の情報を容易に取得し、取得した情報を印刷、複写することが可能となってきた。このため、秘匿性の高い情報が不正に複写もしくは印刷された印刷物が持ち出されることによって機密情報が漏洩するという問題がクローズアップされつつある。そこで、秘匿性の高い情報が不正に複写もしくは印刷された印刷物が持ち出されることによって機密情報が漏洩することを防止するために情報のセキュリティを強化した種々の装置や方法が提案されている。
【0004】
例えば、固有の識別情報が記録可能な磁性体を含む印刷用紙と、この識別情報を読み取って、印刷用紙に印刷された情報の正当性を判断する情報読取装置とを組み合わせて利用することにより情報のセキュリティを強化する方法が提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
上述したような偽造防止に利用される特殊文書や印刷用紙においては、用紙中に大バルクハウゼン効果を有する磁性材料等の金属繊維が漉き込まれたり配合されたり埋め込まれる。ここで、磁性材料が大バルクハウゼン効果を有する場合、この効果を利用して磁性材料に起因するパルス信号を検出装置によって検出することによって、用紙の存在を確認することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−143708号公報
【特許文献2】特開平7−32778号公報
【特許文献3】特開2004−284053号公報
【特許文献4】特開2004−285524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制する記録用紙を提供することを目的とする。
【0008】
記録用紙の収縮は、例えば電子写真方式で形成した画像の定着時やインクジェット方式で印字したインクの乾燥時などに起こるが、これらの場合に限られるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、パルプ繊維に大バルクハウゼン効果を有する磁性材料が漉き込まれ、かつ填料が配合されており、前記填料と前記磁性材料との距離が10μm以下である記録用紙である。
【0010】
ここで、填料と磁性材料との距離とは、記録用紙において、磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面と、填料との距離をいう。1つの磁性材料に対して、磁性材料の両端及び中心部の断面から距離を測定し、測定数は15(磁性材料5本)として、その最大値を填料と磁性材料との「距離」とする。なお、1枚の記録用紙中の磁性材料が5本未満の場合、磁性材料1本あたりの測定数を増やし、全測定数が15になるように断面を作製する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記記録用紙中の前記磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面から10μm以内の範囲を蛍光X線分析法により元素分析したときに、前記10μm以内の範囲の面積に対する前記填料の面積率Sが3%≦S≦85%の範囲である請求項1に記載の記録用紙である。
【0012】
ここで、填料の面積率Sは、蛍光X線元素分析装置(XGT−2000V型、株式会社堀場製作所製)を用い、磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面から10μm以内の範囲の面積Ssを算出し、填料の元素マッピング(例えば炭酸カルシウムを使用していればCaの元素マッピング)を行い、Caの元素マッピング画像から磁性材料配合部の填料の面積Sfを算出し、下記式により填料の面積率Sを求めたものである。1つの磁性材料に対して、磁性材料の両端及び中心部の断面についてSを測定し、測定数は15(磁性材料5本)として、その最大値を本願における「面積率S」とする。
S=(Sf/Ss)×100
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記磁性材料のゼータ電位に対して前記填料のゼータ電位が逆電位である請求項1または2に記載の記録用紙である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【0015】
本発明の請求項2によると、填料の面積率Sが本範囲外の場合に比べて、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのをより抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【0016】
本発明の請求項3によると、磁性材料のゼータ電位に対して填料のゼータ電位が同電位である場合に比べて、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのをより抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
大バルクハウゼン効果を有する磁性材料を含む記録用紙について、電子写真方式、インクジェット方式等により画像を形成した場合、画像形成直後に一時的にパルス信号が弱くなり、結果として記録用紙の存在の検出精度も低下してしまう場合があった。本発明者らは、電子写真方式、インクジェット方式等により画像を形成した直後においても、記録用紙の存在が確認できるようにするために、大バルクハウゼン効果を有する磁性材料を含む記録用紙に対して電子写真方式等で画像を形成した場合、画像形成直後に一時的にパルス信号が検出しにくくなる現象について鋭意検討した。
【0019】
このため、本発明者らは、まず、電子写真方式による画像形成前後における記録用紙から検出されるパルス信号の強度変化について調査した。その結果、パルス信号強度は、図1に示されるように変化することが分かった。
【0020】
図1は、電子写真方式による画像形成前後における記録用紙から検出されるパルス信号の強度変化の一例を示すグラフである。図1中、横軸は時間を表し、縦軸は検出されるパルス信号の強度を表し、符号Aで示される区間は定着前を意味し、符号Bで示される区間は定着中(記録用紙が加熱されながら定着機を通過している状態で、時間にして数十から数百msec)を意味し、符号Cで示される区間は定着後(画像形成後)を意味し、符号NDで示される区間は検出装置によりパルス信号が検出しにくい状態(またはパルス信号強度が所定のレベル以下であるため、記録用紙が存在しないと検出装置が認識している状態)を意味する。
【0021】
また、実線は、検出装置の検出エリア内の特定の一点における時間に対するパルス信号強度の変化を表す(但し、符号Bで示される区間は予測値を意味する)。また、符号Lで示される一点鎖線は、検出装置の検出エリア内の特定の一点におけるパルス信号の検出限界強度(又は、検出したパルス信号強度から記録用紙の存在が検出されたか否かを判断して、記録用紙検出と判断した場合にアラーム音などの検出シグナルを発する検出判定強度)を意味する。なお、区間NDの存在の有無やその長さは、検出装置の構成にもよるが、通常、検出装置の検出エリア内の位置によって変動するものである。
【0022】
図1から明らかなように、検出装置の検出エリア内の特定の一点では、パルス信号強度は、定着中に急激に低下して検出限界強度(又は、検出判定強度)以下となり、定着後に徐々に増加(回復)し、暫くすると(区間NDを経過すると)再び検出限界強度(又は、検出判定強度)以上となる。このため、定着後暫くの間、画像を形成した記録用紙の存在を検出装置により確認しようとしても、検出エリア内で、記録用紙が検出できない領域が発生することになる。
【0023】
本発明者らは、記録用紙中に発生した収縮応力が磁性材料に影響し、図1に例示するパルス信号強度の変化をもたらしているものと考えた。すなわち、記録用紙に収縮応力が急激に発生すれば、磁性材料にも同様に急激に応力が加わってパルス信号強度が急激に低下するものと推定される。
【0024】
磁性材料を含む記録用紙に対して電子写真方式により画像を形成した直後においても、記録用紙の検出精度の低下(検出確率の低下および検出エリア内での検出不可能な領域の増大のうち少なくとも1つ)を抑制するには、画像形成直後のパルス信号強度が極小値を示す時点でも、記録用紙が検出できるように検出限界強度(又は、検出判定強度)を設定する方法が挙げられる。しかし、実際には、ノイズ信号を拾いやすくなるため検出装置の誤動作が多くなったり、かなり微弱なパルス信号でも検出できるように検出装置のスペックを向上させたりすることなどが必要となり、実用性に欠ける場合がある。また、記録用紙中により多くの磁性材料を添加する方法も考えられるが、記録用紙表面に磁性材料に起因する凸凹が発生して、画像形成時にこの凸凹に起因する転写抜け等が発生しやすくなる場合がある。それゆえ、このような観点からは、定着時におけるパルス信号強度の低下を抑制する方法が最も有効であると考えられる。
【0025】
また、磁性材料記録用紙内部に漉き込んだ用紙に電子写真方式で画像を出力すると、磁性材料を配合した磁性材料配合部付近に画像の濃度ムラが発生する場合があった。本発明者らは、この現象についても鋭意検討した。その結果、磁性材料配合部付近における濃度ムラは磁性材料配合部と磁性材料非配合部における体積電気抵抗値の差により、転写時の電界強度に差が発生することが主要因であると推定した。
【0026】
本発明者らによる検討の結果、パルプ繊維に大バルクハウゼン効果を有する磁性材料が漉き込まれ、かつ填料が配合されている記録用紙において、填料と磁性材料との距離を10μm以下にすることにより、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制することができることを見出した。また、さらに、電子写真方式による画像出力後の画像において磁性材料配合部付近の濃度ムラを改善することができることを見出した。記録用紙に配合されている填料と磁性材料との距離を10μm以下にすることで、電子写真方式の画像形成における定着時、あるいはインクジェット方式の画像形成において印字したインクの乾燥時等の記録用紙の脱水による収縮応力が、填料により分散、緩和され、磁性材料にかかる負荷を低減することができ、パルス信号強度の低下を防ぐことができると考えられる。また、填料と磁性材料との距離が10μm以下であることから、磁性材料の近傍に絶縁層(空気層)が設けられ、磁性材料配合部と磁性材料非配合部における体積電気抵抗値の差を小さくすることができ、電子写真法式における濃度ムラを低減することができると考えられる。填料と磁性材料の距離は8μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。下限値は特に設けないが、填料と磁性材料が接触している状態(填料と磁性材料の距離が0μm)が最も好ましい。
【0027】
記録用紙に配合されている填料と磁性材料との距離を10μm以下にする方法としては例えば、填料のゼータ電位を磁性材料に対して逆電位にして填料を磁性材料に付着させる、あるいは、磁性材料の表面に接着層を設けて、填料を付着させる等の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、填料と磁性材料との距離は、填料の配合量、填料の粒径等を調整することにより調整することができる。例えば、磁性材料に対する填料の配合量を多くすると填料と磁性材料との距離は大きくなる傾向にあり、磁性材料に対する填料の配合量を少なくすると填料と磁性材料との距離は小さくなる傾向にある。また、填料の粒径を大きくすると填料と磁性材料との距離は大きくなる傾向にあり、填料の粒径を小さくすると填料と磁性材料との距離は小さくなる傾向にある。ゼータ電位は、pH調整、界面活性剤の種類、量等で調整することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る記録用紙において、磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面から10μm以内の範囲を蛍光X線分析法により元素分析したときに、前記10μm以内の範囲の面積に対する前記填料の面積率Sが3%≦S≦85%の範囲であることが好ましい。填料の面積率Sが3%未満の場合、パルス信号強度の低下及び磁性材料配合部付近における濃度ムラを低減する効果が十分に得られない場合がある。また、填料の面積率Sが85%を越えると、磁性材料近傍の絶縁層(空気層)が少なくなり、磁性材料配合部付近の濃度ムラを低減することができなくなる場合がある。填料の面積率Sは5%≦S≦80%での範囲であることがより好ましく、8%≦S≦75%の範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
次に、本実施形態に係る記録用紙の構成材料や、製造方法、諸物性等について詳細に説明する。
【0030】
<磁性材料>
本実施形態に係る記録用紙に含有される磁性材料は、大バルクハウゼン効果を有するものである。ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明する。図2は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図2(a)に示すようなB−H(磁束密度−磁界)特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siにより構成されるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性材料を置くと、磁化反転時に、磁性材料の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。
【0031】
例えば、励磁コイルにより図2(b)の上段に示すような交番磁界を発生させた場合、検知コイルには、図2(b)の下段に示すようなパルス電流が流れることとなる。
【0032】
ただし、検知コイルに流れる電流には、交番磁界によって誘導される交流電流も流れており、パルス電流は、この交流電流に重畳されて検出されることとなる。また、複数の磁性材料を含むものを交番磁界中に置いた場合には、複数のパルス電流が重畳され、図2(c)に示すような電流が検出される。
【0033】
本実施形態に係る記録用紙の内部に含有される磁性材料としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)−コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等があるが、基本組成がFe−Co−SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0034】
磁性材料の形状としては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した縦長の形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすには、断面積に対して所定の長さが必要となってくることから、基本的にはワイヤ状や帯状などの繊維状であることが好ましく、ワイヤ状であることがより好ましい。
【0035】
磁性材料がワイヤ状である磁性体ワイヤの場合には、上述のように、大バルクハウゼン効果を起こすためにその直径は10μm以上であることが好ましい。また、最大直径としては90μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましい。直径が90μmを越えると磁性材料を記録用紙内部に配合しても表面に突出してしまう可能性がある。
【0036】
磁性体ワイヤの長さは、大バルクハウゼン効果を起こすために10mm以上が好ましい。なお磁性体ワイヤの最大長については、内部に含有されたときに、記録用紙から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされないが、350mm以下であることが好ましい。なお、磁性体ワイヤの直径や長さは、記録用紙中に含まれる全ての磁性体ワイヤの直径や長さが上述した範囲を満たすことが好ましいが、値に分布がある場合には、平均値として上述した範囲を満たすことが好ましい。また、磁性材料の表面はパルス信号の出力を高くする等のためにセラミック、ガラス等の絶縁材料により絶縁処理されていてもかまわない。
【0037】
<記録用紙の検出方法および検出手段>
本実施形態に係る記録用紙には、上述した磁性材料が含まれるため、磁界中に記録用紙が置かれた場合に磁性材料に発生する電気的信号(例えば、図2に例示するパルス信号など)を、検出装置により検出することで、記録用紙の存在を確認できる。
【0038】
検出装置としては、上述した電気的信号が何らかの形で検出できるものであればその構成や使用態様は特に限定されるものではない。しかし、本実施形態においては、人間が通過できる程度の幅を有するように所定の位置に固定して配置された一対の非接触型の検出手段から構成される検出装置(以下、「検出ゲート」と称す場合がある)を用いることが好適である。
【0039】
この検出ゲートでは、一対の検出手段間に検出エリアが形成されるため、検出ゲートを本実施形態の記録用紙が通過する際に、記録用紙の存在を感知することが可能である。この検出ゲートを利用して記録用紙の存在を検出する場合、例えば、画像として記録用紙に形成された機密情報の不正複写や不正持ち出しを防止するなどの用途に利用することが可能である。但し、本実施形態の記録用紙は上述した用途での利用のみに限定されるものではない。
【0040】
<紙基材>
次に紙基材について説明する。本実施形態の記録用紙は、パルプ繊維と磁性材料とを含む紙基材を有する。なお、紙基材は、2つ以上の層から構成されていてもよく、また、紙基材の少なくとも片面に必要に応じて顔料塗工層などの表面層を設けることもできる。
【0041】
紙基材の主成分として用いられるパルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプ繊維、サルファイトパルプ繊維、セミケミカルパルプ繊維、ケミグラウンドパルプ繊維、砕木パルプ繊維、リファイナーグラウンドパルプ繊維、サーモメカニカルパルプ繊維等を使用することが好ましい。また、これらの繊維中のセルロースあるいはヘミセルロースを化学的に修飾した繊維も必要に応じて使用することができる。
【0042】
さらに、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0043】
また、必要に応じて、上記パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用することでテーバー摩耗量、及び内部結合強度を向上させることができる。
【0044】
また、更に上記パルプ繊維に、上質系および中質系の古紙パルプを配合することもできる。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定される。例えば、資源保護の観点から古紙パルプを配合する場合には、紙基材に含まれる全パルプ繊維に対して古紙パルプを10質量%以上配合することが好ましく、30質量%以上配合することがより好ましい。
【0045】
本実施形態に係る記録用紙は上述の通り磁性材料との距離10μm以下の範囲内に填料を含む。また、用いられる紙基材に、不透明度、白さ、及び表面性を調製するために、必要に応じて填料を添加してもよい。
【0046】
本実施形態に係る記録用紙に配合される填料の種類としては、紙の充填剤として用いられる有機系及び無機系の粒子であればよく特に限定されるものではなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム系填料や、カオリン、焼成クレー、パイロフィライト、セリサイト、及びタルク等のケイ酸類や二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ホワイトカーボン、サポナイト、ドロマイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機填料、ポリメチルメタクリレート粒子、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂粒子、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、およびスチレン等の有機填料を使用できる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を構成する紙基材には、サイズ剤等の各種薬品を内添または外添させることができる。
【0048】
紙基材に添加可能なサイズ剤の種類としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を挙げることができる。さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉などのサイズ剤と、定着剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0049】
上記サイズ剤のうち、電子写真方式の画像形成装置において、画像が形成された後の用紙の保存性の観点から、中性サイズ剤、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を用いることが好ましい。また、表面サイズ剤として、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体、スチレンアクリル系ラテックス、スチレンマレイン酸系ラテックス、アクリル系ラテックスなどを単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を構成する紙基材には、紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。
【0051】
紙力増強剤としては、例えば、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
【0052】
また、紙基材には、上記に列挙した種々の成分以外にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を必要に応じて使用しても構わない。
【0053】
本実施形態に係る記録用紙の作製に際しては、紙基材を構成する材料の抄紙方法、順序や、紙基材に必要に応じて表面層を設けることにより、所望の層構成を有する用紙を作製することができる。
【0054】
例えば、上述したパルプ繊維等の紙基材を構成する材料を混合し紙料スラリを抄紙することによって作製した紙基材層の片面に、磁性材料を分散配置した後、この磁性材料が配置された面に他の紙基材層を貼り合わせるプロセスを経て紙基材を作製し、更に必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。
【0055】
また、パルプ繊維等の紙基材を構成する材料に磁性材料も配合した紙料スラリを抄紙して単層の紙基材を作製し、必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。あるいは、磁性材料を含む紙基材層の両面に、磁性材料を含まない紙料スラリを用いて抄紙された紙基材層を貼り合わせて3層構成の紙基材を作製し、更に必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。このように多層抄紙を利用して紙基材を作製したり、更に表面層を形成することで記録用紙を作製してもよい。
【0056】
なお、本実施形態に係る記録用紙は1層の紙基材からなる単層構成であってもよいが、2つ以上の層を有するものであることが好ましい。この場合、紙基材自体が2つ以上の層から構成されるものであってもよく、紙基材の片面あるいは両面に表面層を設けたものであってもよく、両者を組み合わせた構成としてもよい。
【0057】
紙基材が2つ以上の層から構成される場合、磁性材料は層と層との界面に配置することにより、磁性材料が用紙表面に露出するのを防ぐと共に、記録用紙表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させることができる。また、紙基材が3つ以上の層から構成される場合、磁性材料を紙基材の最外層以外の層中や層間に含有させることにより、記録用紙表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させることができる。この場合に、パルプ繊維を少なくとも含む紙基材層を少なくとも2層以上有し、いずれか2つの紙基材層が、互いに隣接するように積層されると共に、2つの紙基材層の界面に磁性材料が配置されている層構成が最も好ましい。
【0058】
また、磁性材料が記録用紙表面に露出するのを防いだり、記録用紙表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させたりする上では、表面層を設けることも好ましく、特に紙基材が単層構成からなる場合に有効である。
【0059】
以上に説明したように記録用紙の厚み方向の層構成については、その製造プロセスを必要に応じて選択して組み合わせることにより所望の構成とすることが可能である。
【0060】
紙基材(又は紙基材層)を作製する場合の抄紙法としては特に限定されるものではない。多層抄紙法または、従来知られている長網抄紙機や、円網抄紙機、ツインワイヤ方式など何れも使用できる。酸性または中性抄紙法いずれでも構わない。
【0061】
多層抄紙の方法としては、円網多筒抄紙、長網多筒、長網・円網コンビ、マルチヘッドボックス、短網・長網方式いずれの方法を用いても構わないし、例えば石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法いずれを用いても構わないし、丸網を複数連ねた丸網多筒式等を用いてもよい。
【0062】
紙基材の表面(複数の紙基材層によって記録用紙の紙基材が構成される場合には、最表面の紙基材層の表面)には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を、表面強度向上等の観点から水性液体の吸収を阻害しない程度に必要に応じて添加するようにしてもよい。さらに硫酸バンド、カチオン化澱粉などの、サイズ剤とパルプ繊維間の定着剤を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
また、紙基材の表面(複数の紙基材層によって記録用紙の紙基材が構成される場合には、最表面の紙基材層の表面)には、下記に示すサイズプレス液を塗布することが好ましい。
【0064】
サイズプレス液に用いるバインダは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの未加工澱粉を始めとして、加工澱粉として酵素変性澱粉、燐酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉などを使用することができる。また、その他にもポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、グアーガム、カゼイン、カードランなどの水溶性高分子及びそれらの誘導体などを単独あるいは混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。ただし、製造コストの観点からは、より安価である澱粉を使用する場合が多い。
【0065】
また、本実施形態に係る記録用紙には表面抵抗率や体積抵抗率を所定の範囲に調整することが好適である。この抵抗調整を行うためには、本実施形態の記録用紙に、抵抗調整剤として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、スルホン酸ナトリウム塩、及び第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を単独もしくは混合して使用することができる。また、これら抵抗調整剤を記録用紙に含有させる方法としては、これらの無機物や有機材料を上記サイズプレス液中に含有させて、上記紙基材表面に塗布するようにすればよい。
【0066】
上記サイズプレス液を上記紙基材表面(複数の紙基材層によって記録用紙の紙基材が構成される場合には、最表面の紙基材層の表面)に塗布する方法としては、サイズプレスのほか、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗工手段を用いることができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る記録用紙には、少なくとも片面に主として接着剤と顔料とからなる顔料塗工層用塗布液を塗工することにより顔料塗工層を形成してコート紙として用いることも可能である。
【0068】
また、高光沢画像を得るために、この顔料塗工層上に樹脂層を設けることも可能である。樹脂層として用いられる樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定はなく、例えばエステル結合を有する樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂等のポリアミド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロビオン酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルブチラール等のポリオール樹脂;エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;ポリカプロラクトン樹脂;スチレン−無水マレイン酸樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリエーテル樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂;アクリル樹脂などを例示することができる。
【0069】
顔料塗工層用塗布液に含まれる接着剤としては、水溶性及び水分散性の何れか一方または双方の高分子化合物が用いられ、例えば、カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エ−テル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、イソプレン、ネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成高分子化合物等を用いることができる。そしてこれらの中から、記録用紙の品質目標に応じて1種あるいは2種以上が選択して使用される。
【0070】
また、顔料塗工層用塗布液に含まれる顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、粒子状珪酸カルシウム、粒子状炭酸マグネシウム、粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂並びにそれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機顔料等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上が用いられる。
【0071】
上記顔料塗工層用塗布液中の顔料に対する接着剤の配合割合は、顔料100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内にあることが好ましい。接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が5質量部未満では、顔料塗工層用塗布液を、上記紙基材上に塗工して、上記紙基材上に顔料塗工層を形成した後に、更に上記樹脂層を塗工する時に、紙基材の表面が樹脂液によって侵されるため、良好な白紙光沢度を得ることが出来ない場合がある。また接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が50質量部を超えると、顔料塗工層用塗布液を上記紙基材上に塗工する時に泡が発生し、顔料塗工面にザラツキを生ずるため、良好な白紙光沢度が得られなくなる場合がある。
【0072】
上記顔料塗工層用塗布液中には、更に、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、酸化防止剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、及び香料等を必要に応じて添加することも可能である。
【0073】
上記顔料塗工層用塗布液の上記記録用紙への塗工量については、本実施形態に係る記録用紙の使用目的に応じて選択されるものであるが、一般的には、記録用紙表面の凹凸をほぼ完全に覆う程度の量が必要であり、乾燥質量で2g/m以上8g/m以下の範囲内であることが好ましい。
【0074】
上記顔料塗工層用塗布液を、上記サイズプレス液が塗布された上記紙基材表面に更に塗布する方法としては一般に公知の塗被装置、例えばブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等を必要に応じて選択して用いることができる。
【0075】
顔料塗工層は、紙基材上に設けられることで、記録用紙の片面或いは両面の表面層として形成され、表面層は1層あるいは必要に応じて2層以上の中間層を設け、多層構造とすることも可能である。なお記録用紙の両面へ塗工、又は多層構造にする場合、各々の塗工層を形成するための塗布液の量が同一、且つ塗布液に含まれる上記材料の種類及び含有量が同一である必要はなく、上記規定範囲を満たす範囲内で所要の品質レベルに応じて調整して配合されればよい。
【0076】
また記録用紙の一方の面に顔料塗工層を設けた場合、他方の面に合成樹脂層や接着剤と顔料等を含む塗被層、または帯電防止層等を設けて、カール発生防止、印刷適性付与、及び給排紙適性等を付与することも可能である。
【0077】
さらに記録用紙の上記他方の面に種々の加工、例えば粘着、磁性、難燃、耐熱、耐水、耐油、防滑等の後加工を施すことにより、各種の用途適性を付加することも勿論可能である。
【0078】
本実施形態に係る記録用紙は、紙基材表面に上記サイズ剤や、サイズプレス液や、上記顔料塗工層用塗布液等が必要に応じて塗布された後に、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて平滑化処理するのが好ましい。また、オンマシンやオフマシンで必要に応じて平滑化が施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に準じて適宜調節されるようにすればよい。
【0079】
<記録用紙の諸物性等>
本実施形態に係る記録用紙の坪量(JIS P−8124)は特に規定しないが、60g/m以上であることが好ましい。坪量が60g/mを下回ると、記録用紙のこしが小さくなることにより、電子写真方式の画像形成装置に用いられたときに、記録用紙上に転写されたトナー像を記録用紙上に定着させる定着工程における、定着装置への巻き付きや、定着装置からの剥離不良にともなう画像欠陥を発生させやすくなる。また、坪量が60g/mを下回ると、電子写真方式やインクジェット方式の画像形成装置に用いられたときに、記録用紙中に含有されている磁性材料が記録用紙表面から5μm未満の範囲内に存在し易くなるため、転写抜けが発生してしまう場合がある。
【0080】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を23℃50%RH環境下に12時間以上調湿したときの記録用紙中に含まれる水分の含有率は4.0質量%以上7.0質量%以下の範囲内が好ましく、4.5質量%以上7.0質量%以下の範囲内であることがより好ましい。水分の含有率が4.0質量%未満または7.0質量%を超えると電子写真方式で画像を形成したときに画質が悪化する場合がある。
【0081】
なお、本実施形態に係る記録用紙は、電子写真方式以外の公知の記録方式、例えばインクジェット方式などを利用して画像を形成するために用いてもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例で用いた磁性体ワイヤは全て同じものを使用した。
【0083】
(実施例1)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部を含む紙料スラリ中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.12質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.07質量部を添加した。このようにして得られた紙料スラリ(固形分濃度0.8質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、以下の条件で抄紙してシートA、シートBを作製した。
〔抄紙条件〕
・ドラム回転速度:1000回転/min
・紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
【0084】
続いて、水500質量部中に直径20μm、長さ40mmの磁性体ワイヤ50本(組成:Feベース、ガラス絶縁処理済み)及び炭酸カルシウム(ソフトン1000、白石カルシウム株式会社製)5質量部を混合撹拌し、pHが7になるように調製した(混合液A)。混合液Aから磁性体ワイヤを5本とり出し、シートAの表面にのせ、シートBで磁性体ワイヤを挟み込むように張り合わせた。その後、角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、坪量102g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0085】
(実施例2)
実施例1で用いた混合液Aの炭酸カルシウム混合量を2質量部に変更して混合液Bを調製し、それ以外は実施例1と同様にして坪量100g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0086】
(実施例3)
実施例1で用いた混合液Aの炭酸カルシウム混合量を12質量部に変更して混合液Cを調製し、それ以外は実施例1と同様にして坪量104g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例1で用いた混合液Aの炭酸カルシウムをソフトン2600(白石カルシウム株式会社製)に変更する以外は実施例1と同様にして坪量100g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0088】
(実施例5)
水475質量部中に酸化澱粉(エースA、王子コーンスターチ株式会社製)25質量部を混合し、澱粉溶液を作製した。澱粉溶液中に直径20μm、長さ40mmの磁性体ワイヤを磁性体ワイヤがすべて澱粉溶液中に入るように浸してから取り出し、澱粉溶液の水滴が落ちなくなった後に、カオリンクレー(Huber80、J、M、Huber製)が500質量部入ったビーカーの中に磁性体ワイヤがすべて入るように浸した後、取り出した。
【0089】
取り出した磁性体ワイヤは、実施例1で作製したシートA、Bの間に挟み込み、角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥した。これにより、3層の紙基材層が積層された層構成を有する坪量102g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0090】
(実施例6)
カオリンクレーを炭酸カルシウム(ソフトン1000、白石カルシウム株式会社製)に変更する以外は、実施例5と同様にして坪量100g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0091】
(実施例7)
実施例1で用いた混合液Aの炭酸カルシウム混合量を1質量部に変更して混合液Dを調製し、それ以外は実施例1と同様にして坪量101g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0092】
(実施例8)
実施例1で用いた混合液Aの炭酸カルシウム混合量を15質量部に変更して混合液Eを調製し、それ以外は実施例1と同様にして坪量105g/mの記録用紙を得た。詳細な記録用紙特性を表1に示す。
【0093】
(比較例1)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部を含む紙料スラリ中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.12質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.05質量部及び炭酸カルシウム(ソフトン1000、白石カルシウム株式会社製)2重量部を混合した。
【0094】
このようにして得られた紙料スラリ(固形分濃度0.7質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、以下の条件で抄紙してシートA、Bを作製した。
〔抄紙条件〕
・ドラム回転速度:1000回転/min
・紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
【0095】
作製したシートA、Bの間に直径20μm、長さ40mmの磁性体ワイヤを挟み込み、その後角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、単層構造の坪量101g/mの記録用紙を得た。
【0096】
(比較例2)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部を含む紙料スラリ中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.12質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.05質量部を混合した。
【0097】
このようにして得られた紙料スラリ(固形分濃度0.7質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、以下の条件で抄紙してシートA’、B’を作製した。
〔抄紙条件〕
・ドラム回転速度:1000回転/min
・紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
【0098】
作製したシートA’、B’の間に直径20μm、長さ40mmの磁性体ワイヤを挟み込み、その後角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、単層構造の坪量104g/mの記録用紙を得た。
【0099】
<磁性材料/填料間距離の測定方法>
作製した記録用紙サンプルを、磁性材料を含み磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面を作製した。断面のSEM画像(VE−7800、株式会社キーエンス製)から磁性材料の表面と填料との間の距離を測定した。1つの磁性材料に対して、磁性材料の両端及び中心部の断面から距離を測定した。測定数は15(磁性材料5本)とし、その最大値を填料と磁性材料との距離とした。なお、1枚の記録用紙中の磁性材料が5本未満の場合、磁性材料1本あたりの測定数を増やし、全測定数が15になるように断面を作製した。
【0100】
<磁性材料配合部における填料の面積率Sの測定方法>
作製した記録用紙サンプルにおいて、填料の面積率Sの測定には、蛍光X線元素分析装置(XGT−2000V型、株式会社堀場製作所製)を用いた。面積率Sの測定方法は、磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面から10μm以内の範囲の面積Ssを算出し、填料の元素マッピング(例えば炭酸カルシウムを使用していればCaの元素マッピング)を行い、Caの元素マッピング画像から磁性材料配合部の填料の面積Sfを算出し、下記式により填料の面積率Sを求めた。
S=(Sf/Ss)×100
【0101】
<ゼータ電位の測定方法>
ゼータ電位の測定はゼータ電位測定装置(ZEWCOM/ZC200、株式会社マイクロテック・ニチオン製)を用いた。磁性材料についてはガラス絶縁処理が施されていることから、粉末ガラス(SiO)のゼータ電位を測定した。またゼータ電位は、pH調整、界面活性剤の種類、量等で調整した。
【0102】
<評価(パルス値)>
記録用紙の存在の検出精度を評価するために、図3に示す検出ゲート(ユニパルス株式会社製、磁性ワイヤ方式物品監視システム、商品名:SAS)を用いて、記録用紙中に含まれる磁性材料に起因するパルス信号を測定した。
【0103】
評価に用いた検出ゲートは、交番磁界を形成する励磁コイルと用紙100中の磁性体ワイヤの磁化反転を検出する検出コイルとを備えた2つの検出器を対にして配置したものである。図3は、実施例の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図であり、図3(A)は検出ゲートの正面図であり、図3(B)は、検出ゲートを構成する一方の検出器を側面から観察した場合(図3(A)中の矢印X方向から観察した場合)の側面図であり、図3(C)は、検出ゲートを構成する一方の検出器を上方から観察した場合(図3(A)中の矢印Y方向から観察した場合)の上面図である。また、図中、100が(A4サイズの)記録用紙、300が検出ゲート、302が第1の検出器、304が第2の検出器、400が床面を表し、また、Hは床面400から記録用紙100までの高さ、Eが第1の検出器302の(長辺側の)側端部から記録用紙100の短辺の中心点までの距離を表す。
【0104】
図3に示すように検出ゲート300は、床面400上に対向配置された第1の検出器302と第2の検出器304とから構成され、第1の検出器302および第2の検出器304は同等の構成を有し、その高さは約1.5mである。また、2つの検出器302、304間の距離は約0.9mである。ここで、パルス信号の測定は、23℃30%RH環境下にて、図3に示すように記録用紙100を床面400と平行にした状態で、記録用紙100の一方の短辺を第1の検出器302の第2の検出器304が配置された側の面に接触させて静止した状態で実施した。なお、床面400から記録用紙100までの高さHは1250mmとし、第1の検出器302の側端部から記録用紙100の短辺の中心点までの距離Eは200mmとした。また、測定に際しては、第1の検出器302の記録用紙を接触させる面内において、床面からの高さH、第1の検出器302の側端部からの距離Eの位置の交番磁界の最大強度が、9.2Oeとなるように設定した。
【0105】
なお、検出ゲート300により検出されたパルス信号はディジタルオシロスコープ(DL1540、横河電機株式会社製)に取り込み、パルスのピーク値の電圧をパルス値とした。
【0106】
パルス値としては、各々の実施例、比較例で作製した記録用紙について定着前の記録用紙のパルス値(初期パルス値)と、画像形成装置により画像を形成した後のパルス値(定着後パルス値)とを測定した。ここで、初期パルス値は、画像形成テスト前の記録用紙を23℃50%RH環境下で12時間以上調湿した後に測定した。
【0107】
また、定着後パルス値は、画像形成テスト前の23℃50%RH環境下で12時間以上調湿された記録用紙を用いて画像形成装置(富士ゼロックス株式会社製、DocuCentreColor f450)により、普通紙Aモード、フルカラーモードで白紙画像を両面プリントし、両面プリントが終了した後の記録用紙を検出ゲート300まで移動させて図3に示す状態に配置して測定した。ここで、定着後パルス値は、記録用紙の両面プリントが終了して画像形成装置から排紙された直後(2回目の定着直後)の時点を始点として30秒後に測定したパルス値を意味する。
【0108】
そして、初期パルス値および定着後パルス値から、下式に基づいてパルス値変化量T(%)を求めた。結果を表1に示す。なお、このパルス値変化量Tが小さいほど、記録用紙の検出精度が低下する傾向にあるものといえる。
パルス値変化量T=(定着後パルス値/初期パルス値)×100
【0109】
なお、表1中に示す評価グレードの判定基準は以下の通りである。
G1:T=80以上100以下
G2:T=60以上80未満
G3:T=40以上60未満
G4:T=20以上40未満
G5:T=20未満
【0110】
<評価(濃度ムラ)>
濃度ムラは目視による官能評価を実施した。表1中に示す評価グレードの判定基準は以下の通りである。
G1:濃度ムラなし
G2:やや濃度ムラがあるが製品として問題なし
G3:一部濃度ムラがやや目立つが製品として問題なし
G4:濃度ムラが目立ち、製品として問題あり
G5:濃度ムラがあり製品として使用できない
【0111】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】画像形成前後における記録用紙から検出されるパルス信号の強度変化の一例を示すグラフである。
【図2】大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【図3】実施例の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0113】
100 記録用紙、300 検出ゲート、302 第1の検出器、304 第2の検出器、400 床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維に大バルクハウゼン効果を有する磁性材料が漉き込まれ、かつ填料が配合されており、前記填料と前記磁性材料との距離が10μm以下であることを特徴とする記録用紙。
【請求項2】
前記記録用紙中の前記磁性材料の軸方向に垂直な方向の断面における磁性材料の表面から10μm以内の範囲を蛍光X線分析法により元素分析したときに、前記10μm以内の範囲の面積に対する前記填料の面積率Sが3%≦S≦85%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
前記磁性材料のゼータ電位に対して前記填料のゼータ電位が逆電位であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−133032(P2009−133032A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310386(P2007−310386)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】