説明

記録用紙

【課題】磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制する記録用紙を提供する。
【解決手段】パルプを含むパルプ層の間に、大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料と填料とを含む磁性材料含有層を有する記録用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣や有価証券等のような特殊な文書(特殊文書)においては、偽造の防止が極めて重要である。このような特殊文書における偽造防止のために、特殊文書中に磁気的手段により検知可能な磁性材料等の金属繊維をすき込んだり埋め込んだりする技術が従来より知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
一方、近年、コンピュータやネットワークの普及により、膨大な情報の中から所望の情報を容易に取得し、取得した情報を印刷、複写することが可能となってきた。このため、秘匿性の高い情報が不正に複写もしくは印刷された印刷物が持ち出されることによって機密情報が漏洩するという問題がクローズアップされつつある。そこで、秘匿性の高い情報が不正に複写もしくは印刷された印刷物が持ち出されることによって機密情報が漏洩することを防止するために情報のセキュリティを強化した種々の装置や方法が提案されている。
【0004】
例えば、固有の識別情報が記録可能な磁性体を含む印刷用紙と、この識別情報を読み取って、印刷用紙に印刷された情報の正当性を判断する情報読取装置とを組み合わせて利用することにより情報のセキュリティを強化する方法が提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
上述したような偽造防止に利用される特殊文書や印刷用紙においては、用紙中に大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料等の金属繊維が配合されたり埋め込まれる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−143708号公報
【特許文献2】特開平7−32778号公報
【特許文献3】特開2004−284053号公報
【特許文献4】特開2004−285524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制する記録用紙を提供することを目的とする。
【0008】
記録用紙の収縮は、例えば電子写真方式で形成した画像の定着時やインクジェット方式で印字したインクの乾燥時などに起こるが、これらの場合に限られるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、パルプを含むパルプ層の間に、大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料と填料とを含む磁性材料含有層を有する記録用紙である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記磁性材料含有層中の填料の形状係数が0.2以上1.0以下である請求項1に記載の記録用紙である。
【0011】
ここで形状係数とは、粒子の短径と長径の比(短径/長径)である。記録用紙中の填料の形状係数は記録用紙断面の走査電子顕微鏡画像から測定する。図4に示す幅50μmの領域ア〜エ(記録用紙の対角線上の角から中心方向へ50μmの領域)及び領域オ(記録用紙の一方の対角線上の中心から角方向へそれぞれ25μm、計50μmの領域)の記録用紙断面の電子顕微鏡画像を、画像処理ソフトウェアである画像処理ソフト「Image−Pro」(株式会社日本ローパー製)を用いて解析し、それぞれの領域において形状係数の平均値を計算する。計算した平均値が5つの領域のうち最大である領域及び最小である領域を除いた3つの領域で形状係数の平均をとったものを本願の填料の「形状係数」とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記記録用紙中のパルプ固形分に対して3質量%以上30質量%以下の填料を含み、前記記録用紙中の全填料のうち前記磁性材料含有層中の填料の割合が50%以上90%以下の範囲である請求項1または2に記載の記録用紙である。
【0013】
ここで、記録用紙中のパルプ固形分に対する填料の配合量は、JIS P 8251により測定した値である。また、全填料のうち磁性材料含有層中の填料の割合は、SEM−EDX(株式会社日立製作所製、S−3400N)による元素配合比率分析により測定したものである。観察条件は2次電子像、加速電圧20kV、倍率500倍、ワーキングディスタンス10mmであり、観察領域は図5に示す幅250μmの5つの領域a〜d(記録用紙の対角線上の角から中心方向へ250μmの領域)及び領域e(記録用紙の一方の対角線上の中心から角方向へそれぞれ125μm、計250μmの領域)の記録用紙断面である。それぞれの領域において磁性材料含有層中の填料の割合が求まるので、その割合が5つの領域のうち最大となる領域及び最小となる領域を除いた3つの領域で平均をとったものを本願の「磁性材料含有層中の填料の割合」とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、本構成を有さない場合に比べて、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【0015】
本発明の請求項2によると、填料の形状係数が本範囲外である場合に比べて、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのをより抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【0016】
本発明の請求項3によると、本構成を有さない場合に比べて、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのをより抑制することが可能な記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る記録用紙の構成の一例を示す概略断面図である。記録用紙1は、パルプ層10と、磁性材料含有層12とを含む。図1に示すように、2層のパルプ層10の間に、磁性材料14及び填料16を含む磁性材料含有層12が形成されている。
【0019】
また、図2は、本実施形態に係る記録用紙の構成の他の例を示す概略断面図である。記録用紙3は、パルプ層10と、磁性材料含有層12とを含む。図2に示すように、2層のパルプ層10の間に、磁性材料14、填料16及びパルプ18を含む磁性材料含有層12が形成されている。
【0020】
次に、本実施形態に係る記録用紙の構成材料や、製造方法、諸物性等についてより詳細に説明する。
【0021】
<磁性材料>
本実施形態に係る記録用紙に含有される磁性材料14は、大バルクハウゼン効果を起こすものである。ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明する。図3は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図3(a)に示すようなB−H(磁束密度−磁界)特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siにより構成されるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性材料を置くと、磁化反転時に、磁性材料の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。
【0022】
例えば、励磁コイルにより図3(b)の上段に示すような交番磁界を発生させた場合、検知コイルには、図3(b)の下段に示すようなパルス電流が流れることとなる。
【0023】
ただし、検知コイルに流れる電流には、交番磁界によって誘導される交流電流も流れており、パルス電流は、この交流電流に重畳されて検出されることとなる。また、複数の磁性材料を含むものを交番磁界中に置いた場合には、複数のパルス電流が重畳され、図3(c)に示すような電流が検出される。
【0024】
本実施形態に係る記録用紙の内部に含有される磁性材料14としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)−コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料、基本組成がFe−Co−SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料等がある。
【0025】
次に紙基材について説明する。紙基材の主成分として用いられるパルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプ繊維、サルファイトパルプ繊維、セミケミカルパルプ繊維、ケミグラウンドパルプ繊維、砕木パルプ繊維、リファイナーグラウンドパルプ繊維、サーモメカニカルパルプ繊維等が使用される。また、これらの繊維中のセルロースあるいはヘミセルロースを化学的に修飾した繊維も必要に応じて使用することができる。
【0026】
さらに、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール共重合体、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、必要に応じて、上記パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用することでテーバー摩耗量、及び内部結合強度を向上させることができる。
【0028】
また、更に上記パルプ繊維に、上質系および中質系の古紙パルプを配合することもできる。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定されるが、例えば、資源保護の観点から古紙パルプを配合する場合には、紙基材に含まれる全パルプ繊維に対して10質量%以上、好ましくは30質量%以上配合される。
【0029】
なお、図2に示すような磁性材料含有層12に含まれるパルプ18としては、例えば上記紙基材の主成分として用いられるパルプ繊維を使用することができる。
【0030】
本実施形態に係る記録用紙に用いられる紙基材には、不透明度、白さ、及び表面性を調製するために、必要に応じて填料を添加してもよい。
【0031】
本実施形態に係る記録用紙のパルプ層10及び磁性材料含有層12に配合される填料の種類としては、紙の充填剤として用いられる有機系及び無機系の粒子であればよく特に限定されるものではなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム系填料や、カオリン、焼成クレー、パイロフィライト、セリサイト、及びタルク等のケイ酸類や二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ホワイトカーボン、サポナイト、ドロマイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機填料、ポリメチルメタクリレート粒子、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂粒子、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、およびスチレン等の有機填料を使用できる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を構成する紙基材には、サイズ剤等の各種薬品を内添または外添させることができる。紙基材に添加可能なサイズ剤の種類としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を挙げることができる。さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉などのサイズ剤と、定着剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0033】
上記サイズ剤のうち、電子写真方式の画像形成装置において、画像が形成された後の用紙の保存性の観点から、中性サイズ剤、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を用いることが好ましい。また、表面サイズ剤として、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体、スチレンアクリル系ラテックス、スチレンマレイン酸系ラテックス、アクリル系ラテックスなどを単独または組み合わせて使用することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を構成する紙基材には、紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。
【0035】
紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
【0036】
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を適宜使用しても構わない。
【0037】
本実施形態に係る記録用紙は、例えば、上記紙基材を構成する主材料と、その他の材料とを混合して、これらを抄紙することによって作製した複数の紙基材同士を、磁性材料14及び填料16を含む磁性材料含有層12、あるいは磁性材料14、填料16及びパルプ18を含む磁性材料含有層12を挟んで、貼り合わせ、更に必要に応じて後述するサイズプレス液の塗布及び顔料塗工層を形成することで作製することができる。また、上記紙基材を構成する主材料と、上記紙基材を構成するその他の材料と、上記磁性体線材と、を混合してこれらを抄紙または多層抄紙した後に、更に必要に応じて後述するサイズプレス液の塗布及び顔料塗工層を形成することで作製してもよい。
【0038】
抄紙法としては特に限定されるものではない。多層抄紙法、または長網抄紙機や、円網抄紙機、ツインワイヤー方式など何れも使用できる。酸性または中性抄紙法いずれでも構わない。
【0039】
多層抄紙の方法としては、円網多筒抄紙、長網多筒、長網・円網コンビ、マルチヘッドボックス、短網・長網方式いずれの方法を用いても構わないし、例えば石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法いずれを用いても構わないし、丸網を複数連ねた丸網多筒式等を用いてもよい。
【0040】
紙基材の表面(複数の紙基材によって記録用紙を構成する場合には、最表面層の紙基材の表面)には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を、表面強度向上等の観点から水性液体の吸収を阻害しない程度に適宜添加するようにしてもよい。さらに硫酸バンド、カチオン化澱粉などの、サイズ剤と繊維間の定着剤を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
また、上記紙基材の表面(複数の紙基材によって記録用紙を構成する場合には、最表面層の紙基材の表面)には、下記に示すサイズプレス液を塗布してもよい。
【0042】
サイズプレス液に用いるバインダは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの未加工澱粉を始めとして、加工澱粉として酵素変性澱粉、燐酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉などを使用することができる。また、その他にもポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、グアーガム、カゼイン、カードランなどの水溶性高分子及びそれらの誘導体などを単独あるいは混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。ただし、製造コストの観点からは、より安価である澱粉を使用する場合が多い。
【0043】
また、本実施形態に係る記録用紙には、抵抗調整剤として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、スルホン酸ナトリウム塩、及び第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を単独もしくは混合して使用することができる。また、これら抵抗調整剤を用紙に含有させる方法としては、これらの無機物や有機材料を上記サイズプレス液中に含有させて、上記紙基材表面に塗布するようにすればよい。
【0044】
上記サイズプレス液を上記紙基材表面(複数の紙基材によって記録用紙が構成される場合には、最表面の紙基材の表面)に塗布する方法としては、サイズプレスのほか、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗工手段を用いることができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る記録用紙には、少なくとも片面に主として接着剤と顔料とを含む塗布液を塗工することにより顔料塗工層を形成してコート紙として用いることも可能である。
【0046】
また、この顔料塗工層上に樹脂層を設けてもよい。樹脂層として用いられる樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定はなく、例えばエステル結合を有する樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂等のポリアミド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロビオン酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルブチラール等のポリオール樹脂;エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;ポリカプロラクトン樹脂;スチレン−無水マレイン酸樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリエーテル樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂;アクリル樹脂などを例示することができる。
【0047】
顔料塗工層の形成に用いられる塗布液(以下、「顔料塗工層用塗布液」という)に含まれる接着剤としては、水溶性及び水分散性の何れか一方または双方の高分子化合物が用いられ、例えば、カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、イソプレン、ネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成高分子化合物等を用いることができる。そしてこれらの中から、用紙の品質目標に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。
【0048】
また、顔料塗工層用塗布液に含まれる顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂並びにそれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機顔料等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上が用いられる。
【0049】
上記顔料塗工層用塗布液中の顔料に対する接着剤の配合割合は、顔料100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内にあることが好ましい。接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が5質量部未満では、顔料塗工層用塗布液を、上記紙基材上に塗工して、上記紙基材上に顔料塗工層を形成した後に、更に上記樹脂層を塗工する時に、紙基材の表面が樹脂液によって侵されるため、良好な白紙光沢度を得ることが出来ないという問題が生じる場合がある。また接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が50質量部を超えると、顔料塗工層用塗布液を上記紙基材上に塗工する時に泡が発生し、顔料塗工面にザラツキを生ずるため、良好な白紙光沢度が得られない場合がある。
【0050】
上記顔料塗工層用塗布液中には、更に、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、酸化防止剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、及び香料等を必要に応じて添加することも可能である。
【0051】
上記顔料塗工層用塗布液の上記用紙への塗工量については、本実施形態に係る記録用紙の使用目的に応じて適宜に選択されるものであるが、例えば乾燥質量で2g/m以上8g/m以下の塗工量で塗布される。
【0052】
上記顔料塗工層用塗布液を、上記サイズプレス液が塗布された上記紙基材表面に更に塗布する方法としては一般に公知の塗被装置、例えばブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等を適宜用いることができる。
【0053】
顔料塗工層は、紙基材上に設けられることで、用紙の片面或いは両面の表面層として形成され、表面層は1層あるいは必要に応じて2層以上の中間層を設け、多層構造とすることも可能である。なお用紙の両面へ塗工、又は多層構造にする場合、各々の塗工層を形成するための塗布液の量が同一、且つ塗布液に含まれる上記材料の種類及び含有量が同一である必要はなく、上記規定範囲を満たす範囲内で所要の品質レベルに応じて適宜調整して配合されればよい。
【0054】
また用紙の一方の面に顔料塗工層を設けた場合、他方の面に合成樹脂層や接着剤と顔料等を含む塗被層、または帯電防止層等を設けて、カール発生防止、印刷適性付与、及び給排紙適性等を付与することも可能である。
【0055】
さらに用紙の上記他方の面に種々の加工、例えば粘着、磁性、難燃、耐熱、耐水、耐油、防滑等の後加工を施すことにより、各種の用途適性を付加することも勿論可能である。
【0056】
本実施形態に係る記録用紙は、紙基材表面に上記サイズ剤や、サイズプレス液や、上記顔料塗工層用塗布液等が必要に応じて塗布された後に、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて平滑化処理するのが好ましい。また、オンマシンやオフマシンで適宜平滑化が施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に準じて適宜調節されるようにすればよい。
【0057】
本実施形態に係る記録用紙において、磁性材料含有層中の填料の形状係数は、0.3以上1.0以下であることがより好ましく、0.4以上1.0以下であることがさらに好ましい。
【0058】
磁性材料含有層中の填料の形状係数を上記範囲にすることにより、磁性材料を配合した記録用紙が収縮する際に大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのをさらに抑制することができる。
【0059】
本実施形態に係る記録用紙中の填料16はその粒子径が0.1μm以上50μm以下の粒子であることが好ましく、0.5μm以上40μm以下がより好ましく、1μm以上30μm以下がさらに好ましい。
【0060】
記録用紙における填料16の粒子径は記録用紙断面の走査電子顕微鏡画像から測定する。図4に示す幅50μmの領域ア〜エ(記録用紙の対角線上の角から中心方向へ50μmの領域)及び領域オ(記録用紙の一方の対角線上の中心から角方向へそれぞれ25μm、計50μmの領域)の記録用紙断面の電子顕微鏡画像を、画像処理ソフトウェアである画像処理ソフト「Image−Pro」(株式会社日本ローパー製)を用いて解析し、それぞれの領域において粒子径の平均値を計算する。計算した平均値が5つの領域のうち最大である領域及び最小である領域を除いた3つの領域で平均をとったものを、本願の「粒子径」とする。
【0061】
上記範囲にすることにより、填料16の粒子径が0.1μm未満の場合に比較して、大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力の低下をより抑制することができ、また50μmを超える場合に比較して、より記録用紙の強度を保つことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る記録用紙における磁性材料14の形状としては、縦長の形状(線状)であることが好ましく、ワイヤ状や帯状であることがより好ましく、ワイヤ状であることがさらに好ましい。
【0063】
縦長の形状であることで大バルクハウゼン効果によるパルス信号をより確実に検出することができる。
【0064】
磁性材料14がワイヤ状である場合には、その直径は10μm以上90μm以下の範囲が好ましく、10μm以上80μm以下がより好ましい。
【0065】
上記範囲にすることにより、磁性材料14の直径が90μmを越える場合に比較して、磁性材料14が記録用紙表面に突出してしまう可能性が低くなる。また磁性材料14の直径が10μm未満の場合に比較して、大バルクハウゼン効果によるパルス信号をより確実に検出することができる。
【0066】
また、磁性材料14の長さは、10mm以上が好ましい。また磁性材料14の最大長は、350mm以下であることが好ましく、300mm以下がより好ましい。
【0067】
上記範囲にすることにより、長さが10mm未満の場合に比較して大バルクハウゼン効果によるパルス信号をより確実に検出することができる。また、350mmを超える場合に比較して、記録用紙の可撓性をより保つことができる。
【0068】
なお、磁性材料14の直径や長さは、記録用紙中に含まれる全ての磁性材料14の平均値とする。記録用紙における磁性材料14の直径については、記録用紙断面あるいは記録用紙内部から物理的に磁性材料を取り出し、光学顕微鏡または電子顕微鏡等で測定することができる。また磁性材料14の長さは記録用紙の表面あるいは記録用紙内部から物理的に磁性材料を取り出し、光学顕微鏡または電子顕微鏡等で測定することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る記録用紙の表面抵抗率は1×10Ω/□以上5×1011Ω/□以下の範囲に、体積抵抗率は1×1010Ω・cm以上1×1014Ω・cm以下の範囲に調製されることが好ましい。
【0070】
電子写真法により画像を形成する場合に、磁性材料の表面が樹脂や金属酸化物等を含む絶縁層等により被覆されていなくても、記録用紙中の磁性材料が存在する部位の周辺での局所的な転写不良が発生しにくくなる。抵抗調整を行うためには、例えば前述の抵抗調整剤が用いられる。
【0071】
本実施形態に係る記録用紙の坪量(JIS P−8124)は特に規定しないが、好ましくは60g/m以上である。
【0072】
坪量が60g/mを下回る場合に比較して、電子写真方式の画像形成装置に用いられたときに、記録用紙上に転写されたトナー像を記録用紙上に定着させる定着工程における、定着装置への巻き付きや、定着装置からの剥離不良にともなう画像欠陥を発生させにくくなる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る記録用紙を23℃50%RH環境下に12時間以上調湿したときの用紙水分は、4.0質量%以上7.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、4.5質量%以上7.0質量%以下の範囲内であることがより好ましい。4.0質量%未満または7.0質量%を超える場合に比較して、電子写真方式で画像を出力したときに画質がより良好となる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
<記録用紙の作製>
(実施例1)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部のパルプスラリ中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.13質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、王子ナショナル(株)製)0.04質量部、棒状炭酸カルシウム(HPC−R8、北海道共同石灰(株)製)10質量部を添加した。これらの混合物を白水で希釈し、紙料スラリAとした。
【0076】
このようにして得られた紙料スラリA(固形分濃度1.0質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、下記条件で抄紙して、シートAおよびBを作製した。
〔抄紙条件〕
ドラム回転速度:1000回転/min
紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
ストローク回数:5回
【0077】
次に、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部のパルプスラリ中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.13質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、王子ナショナル(株)製)0.04質量部を添加し、さらに磁性材料(組成:Fe−Si−B、直径:50μm、長さ:50mm)及び填料として棒状炭酸カルシウム(HPC−R8、北海道共同石灰(株)製)をそれぞれパルプ固形分100質量部に対し5質量部、25質量部配合した。これらの混合物を白水で希釈し、紙料スラリBとした。
【0078】
このようにして得られた紙料スラリB(固形分濃度1.0質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、下記条件で抄紙し、シートCを作製した。
〔抄紙条件〕
ドラム回転速度:1000回転/min
紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
ストローク回数:5回
【0079】
作製した3つのシートは、シートCが中間層になるようにシートA、Bで挟み込み、その後、シート角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、坪量101g/mの記録用紙を得た。
【0080】
磁性材料含有層中の填料の割合は、SEM−EDXによる元素配合比率分析においてCaの配合比率をみることで測定した。詳細な用紙特性を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で用いた棒状炭酸カルシウムを軽質炭酸カルシウム(軽微性炭酸カルシウム、林化成株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、坪量100g/mの記録用紙を得た。
【0081】
(実施例3)
実施例1で用いた棒状炭酸カルシウムを軽質炭酸カルシウム(ネオライトSP−300、竹原化学工業株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、坪量102g/mの記録用紙を得た。
【0082】
(実施例4)
実施例1で用いた棒状炭酸カルシウムを軽質炭酸カルシウム(ネオライトSS、竹原化学工業株式会社製)に変更し、紙料スラリAに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を7質量部、紙料スラリBに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を10質量部とした以外は実施例1と同様にして、坪量102g/mの記録用紙を得た。
【0083】
(実施例5)
実施例4で作製した紙料スラリAに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を12質量部、紙料スラリBに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を30質量部とした以外は実施例4と同様にして、坪量103g/mの記録用紙を得た。
【0084】
(実施例6)
実施例3で作製した紙料スラリAに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を12質量部、紙料スラリBに用いた軽質炭酸カルシウムの配合量を45質量部とした以外は実施例3と同様にして、坪量104g/mの記録用紙を得た。
【0085】
(実施例7)
実施例1で作製した紙料スラリAの棒状炭酸カルシウムをシリカゲル(ミズカシルP−78D、水澤化学工業株式会社製)に変更し、配合量を4質量部にした紙料スラリA’を調製した。このようにして得られた紙料スラリA’(固形分濃度1.2質量%)を用いて配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により、下記条件で抄紙して、シートA’およびB’を作製した。
〔抄紙条件〕
ドラム回転速度:1000回転/min
紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
ストローク回数:7回
【0086】
次に、シートA’の表面に磁性材料(組成:Fe−Si−B、直径:20μm、長さ:340mm)を置き、シリカゲル(ミズカシルP−78D、水澤化学工業株式会社製)を紙料スラリA’中のパルプ固形分100質量部に対し30質量部となるようにシートA’の表面に均一になるように分配し、さらにシートB’をシートA’の表面に重ねた。その後、シート角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、坪量100g/mの用紙を得た。磁性材料含有層中の填料の割合は、SEM−EDXによる元素配合比率分析においてSiの配合比率をみることで測定した。詳細な用紙特性を表1に示す。
【0087】
(実施例8)
実施例7で使用した磁性材料を組成:Fe−Si−B(直径:85μm、長さ:15mm)に変更した以外は実施例7と同様にして坪量102g/mの記録用紙を得た。
【0088】
(比較例1)
実施例1において調製した紙料スラリAの填料の配合量を20質量部、紙料スラリBの填料の配合量を0質量部とした以外は実施例1と同様にして、坪量103g/mの記録用紙を得た。詳細な用紙特性を表1に示す。
【0089】
(比較例2)
実施例7において、紙料スラリA’の填料の配合量を20質量部に変更し、シートA’の表面に填料を分配せずに磁性材料を置き、その上にシートB’を重ねた。その後、シート角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、坪量102g/mの記録用紙を得た。詳細な用紙特性を表1に示す。
【0090】
<評価>
記録用紙の存在の検出精度を評価するために、図6に示す検出ゲート(ユニパルス株式会社製、磁性ワイヤ方式物品監視システム、商品名:SAS)を用いて、用紙中に含まれる磁性材料に起因するパルス信号を測定した。
【0091】
評価に用いた検出ゲートは、交番磁界を形成する励磁コイルと用紙100中の磁性体ワイヤの磁化反転を検出する検出コイルとを備えた2つの検出器を対にして配置したものである。図6は、実施例の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図であり、図6(A)は検出ゲートの正面図であり、図6(B)は、検出ゲートを構成する一方の検出器を側面から観察した場合(図6(A)中の矢印X方向から観察した場合)の側面図であり、図6(C)は、検出ゲートを構成する一方の検出器を上方から観察した場合(図6(A)中の矢印Y方向から観察した場合)の上面図である。また、図中、100が(A4サイズの)用紙、300が検出ゲート、302が第1の検出器、304が第2の検出器、400が床面を表し、また、Hは床面400から用紙100までの高さ、Eが第1の検出器302の(長辺側の)側端部から用紙100の短辺の中心点までの距離を表す。
【0092】
図6に示すように検出ゲート300は、床面400上に対向配置された第1の検出器302と第2の検出器304とから構成され、第1の検出器302および第2の検出器304は同等の構成を有し、その高さは約1.5mである。また、2つの検出器302、304間の距離は約0.9mである。ここで、パルス信号の測定は、23℃30%RH環境下にて、図6に示すように用紙100を床面400と平行にした状態で、用紙100の一方の短辺を第1の検出器302の第2の検出器304が配置された側の面に接触させて静止した状態で実施した。なお、床面400から用紙100までの高さHは1250mmとし、第1の検出器302の側端部から用紙100の短辺の中心点までの距離Eは200mmとした。また、測定に際しては、第1の検出器302の用紙を接触させる面内において、床面からの高さH、第1の検出器302の側端部からの距離Eの位置の交番磁界の最大強度が、9.2Oeとなるように設定した。
【0093】
なお、検出ゲート300により検出されたパルス信号はディジタルオシロスコープ(DL1540、横河電機株式会社製)に取り込み、パルスのピーク値の電圧をパルス値とした。
【0094】
パルス値としては、各々の実施例、比較例で作製した記録用紙について定着前の記録用紙のパルス値(初期パルス値)と、画像形成装置により画像を形成した後のパルス値(定着後パルス値)とを測定した。ここで、初期パルス値は、画像形成テスト前の記録用紙を23℃50%RH環境下で12時間以上調湿した後に測定した。
【0095】
また、定着後パルス値は、画像形成テスト前の23℃50%RH環境下で12時間以上調湿された記録用紙を用いて画像形成装置(富士ゼロックス株式会社製、DocuCentreColor f450)により、普通紙Aモード、フルカラーモードで白紙画像を両面プリントし、両面プリントが終了した後の記録用紙を検出ゲート300まで移動させて図6に示す状態に配置して測定した。ここで、定着後パルス値は記録用紙の両面プリントが終了して画像形成装置から排紙された直後(2回目の定着直後)の時点を始点として30秒後に測定したパルス値を意味する。
【0096】
そして、初期パルス値および定着後パルス値から、下式に基づいてパルス値変化量T(%)を求めた。結果を表1に示す。
パルス値変化量T=(定着後パルス値/初期パルス値)×100
なお、得られたパルス値変化量Tは以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
G0:T=80以上100以下
G1:T=50以上80未満
G2:T=30以上50未満
G3:T=30未満
【0097】
【表1】

【0098】
このように、実施例1〜8の記録用紙は、比較例1および2の記録用紙に比較して、大バルクハウゼン効果によるパルス信号の出力が低下するのを抑制することができた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係る記録用紙の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る記録用紙の他の例を示す概略断面図である。
【図3】磁性材料の大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る記録用紙において、記録用紙中の填料の形状係数および粒子径を測定する領域を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係る記録用紙において、記録用紙の磁性材料含有層中の填料の割合を測定する領域を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例における記録用紙の存在検出精度の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1,3 記録用紙、10 パルプ層、12 磁性材料含有層、14 磁性材料、16 填料、18 パルプ、100 用紙、300 検出ゲート、302 第1の検出器、304 第2の検出器、400 床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを含むパルプ層の間に、大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料と填料とを含む磁性材料含有層を有することを特徴とする記録用紙。
【請求項2】
前記磁性材料含有層中の填料の形状係数が0.2以上1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
前記記録用紙は、前記記録用紙中のパルプ固形分に対して3質量%以上30質量%以下の填料を含み、
前記記録用紙中の全填料のうち前記磁性材料含有層中の填料の割合が50%以上90%以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−19290(P2009−19290A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181122(P2007−181122)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】