説明

記録装置、及び、記録装置におけるカバー支持構造

【課題】記録媒体を本体に収容する記録装置において、記録媒体の出し入れが容易で、狭い場所にも設置することができ、かつ、装置本体の小型化が可能な記録装置、及び、記録装置におけるカバー支持構造を提供する。
【解決手段】ロール紙100に記録を行う記録装置1であって、記録装置1の本体10にロール紙100を収容する記録媒体収容部27を設け、記録媒体収容部27の背面カバー20を、カバー支持部40を介して開閉可能に本体10に支持し、カバー支持部40は、本体10に台座41を介して固定されたピン41Aにより、本体10に回動可能に連結される一方、背面カバー20に連結されたリンク43を有し、リンク43は伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、及び、記録装置におけるカバー支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に記録を行うプリンター等の記録装置において、記録媒体を本体内部に収容する構成を有し、記録媒体を出し入れ可能とするために開閉可能なカバーを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の記録装置においては、カバーが容易に壊れないような丈夫なものであること、記録媒体の交換等を簡単に行えるようにカバーを開位置で保持できること等が求められる。これらの要求を満足するために、例えば特許文献1記載の記録装置は、記録装置本体に対して大きなカバーを備え、このカバーを、装置本体の上方に大きく開くようにヒンジにより本体に連結した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載の記録装置のように、カバーが大きく、開閉時にカバーが大きく動くような構造を採用した場合、カバーを開くためのスペースを確保する必要があった。このため、狭い空間に記録装置を設置した場合には、設置状態でカバーを開くことが難しく、記録媒体を出し入れする際にはいったん設置場所から記録装置を移動する必要があった。また、カバーを設けたために装置本体の小型化が難しくなるという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、記録媒体を本体に収容する記録装置において、記録媒体の出し入れが容易で、狭い場所にも設置することができ、かつ、装置本体の小型化が可能な記録装置、及び、記録装置におけるカバー支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記記録装置の本体に前記記録媒体を収容する媒体収容部を設け、前記媒体収容部のカバーを、支持構造を介して開閉可能に前記本体に支持し、前記支持構造は、前記本体に台座を介して固定された回動軸により、前記本体に回動可能に連結される一方、前記カバーに連結されたリンクを有し、前記リンクは伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする。
本発明によれば、本体に対して回動可能に設けられたカバーを、本体から突出しないように、カバーを記録媒体の出し入れに支障のない位置まで開放可能とすることができる。これにより、記録媒体の出し入れを容易にし、かつ、狭い場所への記録装置の設置が可能となる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記カバーは、前記支持構造により前記本体の一側面側に回動可能に支持され、開位置において前記記録媒体を前記媒体収容部から外に引き出す引き出し経路の延長上から外れ、かつ、前記本体の前記一側面より突出しないよう構成され、前記リンクは、前記カバーが前記開位置となる前記所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体の出し入れを妨げない位置までカバーを開くことができ、かつ、カバーが本体から突出しないため狭い場所にも設置できる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、前記媒体収容部内で前記記録媒体を保持し、前記媒体収容部から前記本体の外に引き出し可能な記録媒体保持部を有することを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体を引き出すことで記録媒体の交換等を容易に行える。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、前記支持構造は、前記カバーの上下端部を回動自在に前記本体に連結するヒンジをさらに備えることを特徴とする。
本発明によれば、ヒンジによってカバーの上下端部で支持されるので、リンクはカバーの回動範囲を規制するに必要な強度を有するものであればよく、支持構造の構成を複雑化及び大型化することなく十分な強度を確保できる。
【0009】
また、本発明は、上記記録装置において、前記本体の側部に、記録動作を制御する制御基板を収容する基板収容部を設け、前記台座は前記本体の前記基板収容部側に取り付けられたことを特徴とする。
本発明によれば、制御基板を収容する基板収容部側に台座を設けたことにより、カバーの回動中心が本体の側面から離れるので、カバーを開いた際に本体からカバーが突出しない。このため、狭い場所に記録装置を設置できる。
【0010】
また、本発明は、上記記録装置において、前記リンクは、前記台座または前記カバーの一方に取り付けられた第1リンク部材と、前記第1リンク部材にスライド可能に嵌合し、前記台座または前記カバーの他方に取り付けられた第2リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とを所定のスライド位置で保持する保持部材とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、2つのリンク部材をスライド可能に嵌合した簡易な構成によって支持構造を実現できる。
【0011】
また、本発明は、上記記録装置において、前記カバーは、前記本体の背面と一方の側面とにまたがって設けられ、前記カバーの閉位置において前記媒体収容部に収容された前記記録媒体を視認可能な窓を有することを特徴とする。
本発明によれば、本体の背面から側面にまたがるカバーを開くことで大きな開口を確保し、記録媒体を容易に出し入れすることができる。また、カバーに記録媒体を視認可能な窓を設けることにより、本体に加工を施すよりも簡単に、窓を設けることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置において記録媒体を収容する媒体収容部のカバーを開閉可能に支持するカバー支持構造であって、前記記録装置の本体に台座を介して固定された回動軸により、前記本体に回動可能に連結される一方、前記カバーに連結されたリンクを有し、前記リンクは伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする。
本発明によれば、本体に対して回動可能に設けられたカバーを、本体から突出しないように、カバーを記録媒体の出し入れに支障のない位置まで開放可能とすることができる。これにより、記録媒体の出し入れを容易にし、かつ、狭い場所への記録装置の設置が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録媒体を本体に収容する記録装置において、記録媒体の出し入れを容易にし、かつ、狭い場所への記録装置の設置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る記録装置の構成を示す外観図である。
【図2】記録装置の背面図である。
【図3】背面カバーを開いた状態の斜視図である。
【図4】背面カバーを開いた状態の側面図である。
【図5】ロール紙を引き出した状態の斜視図である。
【図6】ロール紙を引き出した状態の側面図である。
【図7】背面カバーを閉じた状態の要部斜視図である。
【図8】背面カバーを開いた状態の要部斜視図である。
【図9】背面カバーの支持構造を示す要部平明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明を適用した実施形態に係る記録装置1の外観図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図である。また、図2は背面図である。
これら図1及び図2に示すように、記録装置1は略箱形の本体10に記録ヘッド(図示略)及び記録媒体としてのロール紙100を含む(図3)各部を収容して構成され、ロール紙100に文字や画像を印刷して出力する装置である。
本体10は、本体10の前面を構成する前面パネル11、本体10の右側面を有する側面パネル13、本体10の上面の一部を構成する上面パネル14、本体10の上面から右側面にまたがる開閉可能な上部カバー15、本体10の背面を構成する背面パネル17、及び、本体10の背面の一部及び左側面の一部を構成する背面カバー20(カバー)を備えて構成される。これら前面パネル11、側面パネル13、上面パネル14、上部カバー15、背面パネル17、及び背面カバー20は、それぞれ、本体10に内蔵される金属製の本体フレーム(図示略)に取り付けられている。本体10の底面には、接地面に接する4つの脚31が配置されている。
【0016】
図1(A)に示すように、本体10の前面には、記録装置1の電源のオン/オフ、記録動作に係る設定等を行う操作子を有する操作パネル33、記録装置1の動作状態に係る各種表示を行う表示パネル34が配置されている。また、前面パネル11には印刷後のロール紙100を排出する排紙口36が形成されている。
また、図1(B)に示すように、背面カバー20において本体10の左側面を構成する部分には、窓21が設けられている。窓21は、本体10内部に収容されたロール紙100を視認可能な、例えば透明な樹脂で構成され、この窓21を介してロール紙100の残量を確認できるようになっている。
【0017】
図2に示すように、背面カバー20は、本体10の右側(図中右側)においてヒンジ24、25を介して本体10に回動自在に連結されている。ヒンジ24は、背面カバー20の上端部と本体10とを連結し、本体10の本体フレーム(図示略)に固定されて本体10外部に突出する本体側板24Aと、背面カバー20のフレーム(図示略)に固定されて本体10の背面側に突出するカバー側板24Bとを重ねてリベット(図示略)により連結した構成である。また、ヒンジ25は背面カバー20の下端部と本体10とを連結し、本体フレームに固定されて突出する本体側板25Aと、背面カバー20のフレームに固定されて本体10の背面側に突出するカバー側板25Bとを重ねてリベット(図示略)により連結した構成である。
【0018】
また、本体10の右側部には、記録装置1の動作を制御する制御基板(図示略)が収容される制御基板収容部37(基板収容部)が設けられている。この制御基板収容部37に収容された制御基板は、本体10の前面の操作パネル33及び表示パネル34に結線され、操作パネル33の操作を検出するとともに表示パネル34の表示を制御する。また、この制御基板は印刷ヘッドの動作の制御、ロール紙100を搬送する搬送モーター(図示略)の制御、及び、外部のコンピューターと記録装置1との通信の制御等を実行する。ヒンジ24、25は、本体10において制御基板収容部37側に設けられている。このため、図2に示すように、背面カバー20の側端は本体10の右側面から離れた位置にあり、この位置に設けられたヒンジ24、25を中心として回動することにより、開閉される。
【0019】
図3は記録装置1の背面カバー20及び上部カバー15を開いた状態の斜視図であり、図4は背面カバー20及び上部カバー15を開いた状態の側面視図である。
図3及び図4に示すように、上部カバー15は本体10の本体フレーム(図示略)に連結されたヒンジによって上方に回動して開く。図3及び図4に示すように上部カバー15を完全に開いた位置では上部カバー15の自重により開いた状態が保たれる。
また、背面カバー20は、ヒンジ24、25を中心として本体10の後方に回動して開く。本体10の内部にはロール紙100を収容する空間である記録媒体収容部27(媒体収容部)が設けられ、背面カバー20が開くことにより記録媒体収容部27が露出する。
【0020】
背面カバー20は、ヒンジ24、25のほか、カバー支持部40(支持構造)によって本体フレームに支持されている。カバー支持部40は、本体フレームに固定された台座41と、台座41のピン41A(回動軸)を介して、台座41に対して回動自在に連結された2本のリンク43とを備えて構成される。2本のリンク43は上下に並べて平行に配設され、それぞれ、ピン41Aに連結された第1リンク部材45と、背面カバー20側に連結された第2リンク部材47とを組み合わせて構成されている。2本のリンク43は、後述するように背面カバー20の回動位置を規制する。
【0021】
記録媒体収容部27の底部には、ロール紙100を支持するスライド台29(記録媒体保持部)が配置されている。スライド台29は、スライド台29をスライドさせる際の持ち手となるバー30を備え、記録媒体収容部27の内部と本体10の外とにスライド可能に配置されており、このバー30を持って後方に引っ張ることで、スライド台29ごとロール紙100を引き出すことができる。
【0022】
図5はロール紙100を引き出した状態の斜視図であり、図6はロール紙100を引き出した状態の側面視図である。
これら図5及び図6に示すように、スライド台29は左右両側に設けられたスライドレール35によってスライド可能に支持される。スライド台29は、バー30を持って本体10の後方に引き出すことができ、スライド台29をいっぱいに引き出した状態でロール紙100が本体10の外部に露出する。スライド台29は、ロール紙100の芯部に装着される芯支持部38と、芯支持部38を下方から支持するスタンド39とを備え、これら芯支持部38及びスタンド39によってロール紙100が回転自在に支持される。記録装置1が印刷を実行する際には、記録媒体収容部27内に収容されたロール紙100が、搬送ローラー(図示略)の動作によって回転しながら引き出される。また、ロール紙100の上方にはロール紙ガイド32が配置される。ロール紙ガイド32は、本体10の本体フレームに固定され、記録媒体収容部27に収容されたロール紙100が左右に蛇行しないようにガイドする。
【0023】
ロール紙100を交換する際には、図5及び図6に示すようにスライド台29を引き出し、ロール紙100を、ロール紙ガイド32を避けるように斜め後方に持ち上げて取り出し、新しいロール紙100に芯支持部38を装着してスタンド39に載せれば良い。
背面カバー20が完全に開かれた位置(開位置)では、背面カバー20の全体がスライド台29の引き出し経路から外れた位置にあり、スライド台29を引き出す操作およびロール紙100を交換する操作の支障にならない。
【0024】
本体10の左側面を構成する側面パネル13は、本体10の後部側では上下に分割され、上部は背面カバー20の一部を構成し、下部13Aは側面パネル13とともに固定されている。背面カバー20の下部には突起20Aが設けられ、下部13Aの先端部13Bには、背面カバー20が閉じられた位置(閉位置)で突起20Aを保持するキャッチ機構(図示略)が設けられており、このキャッチ機構により背面カバー20は容易に開かないように保持される。また、下部13Aは、本体10の本体フレームの剛性を高める作用を有し、さらに、背面カバー20を開いた状態でスライドレール35を隠す機能を果たしている。
【0025】
ここで、背面カバー20を支持するカバー支持部40について詳細に説明する。
図7は、背面カバー20を閉じた状態の要部斜視図であり、図8は背面カバー20を開いた状態の要部斜視図である。
図7及び図8では、背面カバー20の支持構造を詳細に示すため、側面パネル13、上部カバー15及び記録媒体収容部27内に配置される各部の図示を省略する。
【0026】
図7及び図8に示すように、カバー支持部40を構成するリンク43は、台座41のピン41Aに連結された第1リンク部材45と、背面カバー20に固定された第2リンク部材47とを有し、第2リンク部材47には、その長手方向に延びる長穴47Aが形成され、この長穴47Aには第1リンク部材45の端部に固定されたピン48が嵌合し、このピン48を介して第1リンク部材45と第2リンク部材47とが連結されている。第1リンク部材45と第2リンク部材47とは、ピン48が長穴47A内を移動する範囲において相互にスライド可能であり、これによりリンク43は全体として伸縮する。第1リンク部材45及び第2リンク部材47は伸縮性に劣る、或いは伸縮しない材料により構成され、第1リンク部材45は台座41に連結され、第2リンク部材47は背面カバー20に固定されているので、ピン48は背面カバー20を開く角度に応じて長穴47A内を移動する。また、第1リンク部材45は、上下及び一側面の3平面からなる断面C字形状(或いは断面コ字状)の部材であり、第1リンク部材45の内部に第2リンク部材47を収容可能である。このため、第1リンク部材45と第2リンク部材47とが相互にスライドして、リンク43全体が短くなった状態では、第2リンク部材47が第1リンク部材45の内側に入り込む。
【0027】
図7に示すように背面カバー20が閉位置にある状態では、ピン48は長穴47Aの基端側に位置し、第2リンク部材47のほぼ全体が第1リンク部材45に収容されている。この図7の状態でリンク43は最短となる。また、図8に示すように、背面カバー20が全開された開位置にある状態では、ピン48は長穴47Aの先端側に位置し、リンク43の長さはほぼ最長となる。
【0028】
図9は、カバー支持部40の構成を示す要部平面図であり、特に背面カバー20が開位置にある状態を示す。
上述のように、第2リンク部材47は背面カバー20の内面20Bに固定されている。また、第2リンク部材47には板バネ49、50(保持部材)が、背面カバー20と第2リンク部材47とにまたがるように配置されている。板バネ49、50は、いずれも断面U字形状に形成され、U字の一方は背面カバー20に固定され、他方は長穴47A内に露出する。板バネ49は、第2リンク部材47の先端側すなわち本体10から離れた側に配置され、板バネ50は第2リンク部材47の基端側すなわち本体10側に配置される。板バネ49、50は、長穴47A内でピン48が通過する通路に露出している。板バネ49、50は、背面カバー20の内部においては露出していないが、図9では理解の便宜を図るために実線で図示する。
【0029】
板バネ49は、長穴47Aの内部に突出する凸部49Aを有する。凸部49Aは長穴47Aの長手方向先端部に設けられ、ピン48が通る通路の幅を狭めるように突出しており、凸部49Aにより長穴47Aが区画されて端部空間43Aが形成される。端部空間43Aはピン48が収まる程度の大きさであり、端部空間43Aにおいてピン48が長穴47Aの壁と凸部49Aとにより押圧される程度の大きさとしてもよい。
また、板バネ50は、長穴47Aの内部に突出する凸部50Aを有する。凸部50Aは長穴47Aの長手方向基端部に設けられ、ピン48が通る通路の幅を狭めるように突出しており、凸部50Aにより長穴47Aが区画されて端部空間43Bが形成される。端部空間43Bはピン48が収まる程度の大きさであり、端部空間43Bにおいてピン48が長穴47Aの壁と凸部50Aとにより押圧される程度の大きさとしてもよい。
【0030】
ピン48は、背面カバー20の開閉動作に伴って長穴47A内を移動する。ここで、背面カバー20を開く動作に伴い、リンク43が伸長され、ピン48が長穴47Aの基端部側に移動すると、ピン48が凸部50Aに当接したところで背面カバー20の回動が制限される。ここで、さらに強い力で背面カバー20が開かれると、ピン48が板バネ50の弾性に抗して基端側に押され、板バネ50が変形してピン48が凸部50Aを乗り越えて端部空間43Bに収まる。この位置は図9に示す開位置であり、ピン48は凸部50Aによって端部空間43B内で保持されるため、背面カバー20は、開位置で保持される。この開位置では、ピン48が凸部50Aを乗り越えるのに必要な力が加わらない限り、背面カバー20は閉じないように保持される。
そして、背面カバー20を閉じる力が加わると、背面カバー20の回動に伴ってリンク43が短縮され、ピン48は板バネ50の弾性に抗して長穴47A内を移動する。背面カバー20が閉じられるにつれてピン48は長穴47Aの先端側に移動し、凸部49Aに接して止まる。さらに強い力が背面カバー20に加わると、ピン48が板バネ49の弾性に抗して先端側に押され、板バネ49が変形してピン48が凸部49Aを乗り越えて端部空間43Aに収まる。この位置は背面カバー20の閉位置であり、ピン48は凸部49Aによって端部空間43A内で保持されるため、背面カバー20は、閉位置で保持される。また、閉位置では、上記の突起20Aが先端部13Bのキャッチ(図示略)により保持されているので、背面カバー20は容易に開かないように保持される。
さらに、背面カバー20が閉じる際に、ピン48が板バネ49を乗り越えなければならないため、背面カバー20の動きが減速あるいはいったん停止するように規制される。これにより、記録装置1を操作する操作者が誤って背面カバー20に指を挟んでしまう可能性を低減することができ、操作者が安心して背面カバー20を開閉する操作を行える。
【0031】
このように、ピン48が板バネ49、50の弾性によって端部空間43A、43Bで保持されることで、リンク43は、所定の長さ位置、すなわち背面カバー20の開位置と閉位置とに対応する長さ位置で保持される。これにより、背面カバー20を閉位置で保持することで、記録装置1の使用時に容易に背面カバー20が開かないように保持することができ、また、背面カバー20を開位置で保持することで、ロール紙100の交換作業を容易に行うことができる。
また、図9に示すように板バネ49、50は背面カバー20と第2リンク部材47とにまたがって配設されており、第2リンク部材47を背面カバー20に固定する作用も有する。このため、第2リンク部材47の固定に要する部材を削減し、小型化を容易にしている。
【0032】
また、図9に示すように、背面カバー20は制御基板収容部37側に設けられ、背面カバー20を全開した開位置において、本体10の右側面の延長上(図中破線A)から突出しない位置にある。このため、本体10を、その右側面を壁などに密着させて設置した場合であっても、背面カバー20を全開にしてロール紙100を交換できる。さらに、背面カバー20の開位置で、背面カバー20はスライド台29が引き出される領域の延長上(図中破線B)から突出しないので、スライド台29を引き出してロール紙100を交換する作業の妨げにならず、容易にロール紙100の交換等を行える。
【0033】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態では、ロール紙100に記録を行う記録装置1であって、記録装置1の本体10にロール紙100を収容する記録媒体収容部27を設け、記録媒体収容部27の背面カバー20を、カバー支持部40を介して開閉可能に本体10に支持し、カバー支持部40は、本体10に台座41を介して固定されたピン41Aにより、本体10に回動可能に連結される一方、背面カバー20に連結されたリンク43を有し、リンク43は伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能であるので、背面カバー20が本体10から突出しないように、背面カバー20をロール紙100の出し入れに支障のない位置まで開放可能とすることができる。これにより、ロール紙100の出し入れを容易にし、かつ、狭い場所への記録装置1の設置が可能となる。
【0034】
また、背面カバー20は、カバー支持部40により本体10の右側面側に回動可能に支持され、開位置においてロール紙100を記録媒体収容部27から外に引き出すスライド台29の移動経路の延長上から外れ、かつ、本体10の右側面より突出しないよう構成され、リンク43は、背面カバー20が開位置となる所定の長さ位置で保持可能であるため、ロール紙100の出し入れを妨げない位置まで背面カバー20を開くことができ、かつ、背面カバー20が本体10から突出しないため狭い場所にも設置できる。
また、記録装置1は、記録媒体収容部27内でロール紙100を保持し、記録媒体収容部27から本体10の外に引き出し可能なロール紙100保持部を有し、ロール紙100を容易に引き出して交換できる。
【0035】
また、カバー支持部40は、背面カバー20の上下端部を回動自在に本体10に連結するヒンジ24、25をさらに備え、これらヒンジ24、25によって背面カバー20の上下端部を支持し、リンク43の長さにより背面カバー20の開度を規制する。この構成により、リンク43は背面カバー20の回動範囲を規制するに必要な強度を有するものであればよく、カバー支持部40の構成を複雑化及び大型化することなく十分な強度を確保できる。
【0036】
また、本体10の右側部には、記録動作を制御する制御基板を収容する制御基板収容部37を設け、台座41は本体10の制御基板収容部37側に取り付けられているので、背面カバー20の回動中心が本体10の右側面から離れるので、背面カバー20を開いた際に本体10から背面カバー20が突出しない。このため、狭い場所に記録装置1を設置できる。本体10の左側面側に制御基板収容部37を設け、ヒンジ24、25及びリンク43を本体10の左側面側に設けた場合も同様の効果が得られる。
【0037】
また、リンク43は、台座41に取り付けられた第1リンク部材45と、第1リンク部材45にスライド可能に嵌合し、背面カバー20に取り付けられた第2リンク部材47とを備え、第1リンク部材45のピン48と第2リンク部材47の長穴47Aとを板バネ49、50によって所定のスライド位置で保持するので、板バネ49、50によって第1リンク部材45と第2リンク部材47とのスライド位置を保持することで、背面カバー20を開位置及び閉位置で保持する構成を容易に実現できる。ここで、第2リンク部材47を台座41に連結し、第1リンク部材45を背面カバー20に固定しても、同様の効果を得ることができる。この場合、板バネ49、50は、第2リンク部材47に固定されていればよく、図9に示したように背面カバー20に固定する必要はない。
【0038】
さらに、背面カバー20は、本体10の背面と右側面とにまたがって設けられ、背面カバー20の閉位置において記録媒体収容部27に収容されたロール紙100を視認可能な窓21が設けられているので、背面カバー20を開くことで大きな開口を確保することができ、ロール紙100を容易に出し入れすることができる。また、背面カバー20に窓21を設けることで、本体10に加工を施すよりも簡単に、ロール紙100を視認可能とすることができる。
【0039】
なお、上記各実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、記録装置1において制御基板収容部37を左側面側に設け、カバー支持部40を本体10の左側面側に設け、この左側面側を中心として背面カバー20が回動して開閉される構成としてもよい。また、板バネ49、50は、ピン48を長穴47A内の所定の位置で保持できるものであればよく、例えば、長穴47A内に進退可能に設けられた突起と、この突起を長穴47A側に付勢する圧縮コイルバネ等を板バネ49、50に代えて用いることも可能であるし、板バネ49、50が第2リンク部材47を背面カバー20に固定する作用を持たない構成とすることも可能である。さらに、ヒンジ24、25の回動範囲も任意であり、少なくともリンク43によって規制される範囲を超える回動範囲で背面カバー20を回動可能とするものであればよい。さらに、リンク43は、第1リンク部材45と第2リンク部材47とで構成されるものに限らず、3本以上の部材を連結して構成されてもよく、カバー支持部40が、3本以上のリンク43を有する構成とすることも可能であり、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でカバー支持部40の細部構成を適宜変更できる。
【0040】
また、本発明は、記録媒体に記録を行い、記録媒体を本体に収容し、カバーを開くことで記録媒体収容部を露出させる構成を有する記録装置であれば適用可能である。例えば、本実施形態の記録装置1は、インクジェット式プリンター、サーマルプリンター、熱転写式プリンター等のいずれであってもよく、その記録方式は任意である。さらに、記録装置1が使用する記録媒体は、ロール紙100或いは感熱ロール紙に限らず、カット紙であっても、ファンフォールド紙のような折りたたみ式の連続紙であってもよい。また、ロール紙100は、複写紙であってもよいし、ラベル用紙であってもよく、排紙口36近傍にオートカッターユニットを設けた構成としてもよいし、ロール紙100がラベル用紙である場合にラベルを剥離するピーラーを排紙口36に設けた構成としてもよい。さらにまた、記録装置1は、外部のコンピューターに接続され、このコンピューターの制御に従って印刷を行うものであってもよいし、独立して動作するものであってもよく、記録装置としての具体的な細部構成は任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…記録装置、10…本体、13…側面パネル、13A…下部、13B…先端部、17…背面パネル、20…背面カバー(カバー)、20A…突起、20B…内面、21…窓、24、25…ヒンジ、25A…本体側板、25B…カバー側板、27…記録媒体収容部(媒体収容部)、29…スライド台(記録媒体保持部)、31…脚、33…操作パネル、34…表示パネル、35…スライドレール、36…排紙口、37…制御基板収容部(基板収容部)、40…カバー支持部、41…台座、41A…ピン(回動軸)、43…リンク、43A…端部空間、43B…端部空間、45…第1リンク部材、47…第2リンク部材、47A…長穴、48…ピン、49、50…板バネ(保持部材)、49A、50A…凸部、100…ロール紙(記録媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記記録装置の本体に前記記録媒体を収容する媒体収容部を設け、前記媒体収容部のカバーを、支持構造を介して開閉可能に前記本体に支持し、
前記支持構造は、前記本体に台座を介して固定された回動軸により、前記本体に回動可能に連結される一方、前記カバーに連結されたリンクを有し、前記リンクは伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記支持構造により前記本体の一側面側に回動可能に支持され、開位置において前記記録媒体を前記媒体収容部から外に引き出す引き出し経路の延長上から外れ、かつ、前記本体の前記一側面より突出しないよう構成され、
前記リンクは、前記カバーが前記開位置となる前記所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記媒体収容部内で前記記録媒体を保持し、前記媒体収容部から前記本体の外に引き出し可能な記録媒体保持部を有することを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記支持構造は、前記カバーの上下端部を回動自在に前記本体に連結するヒンジをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記本体の側部に、記録動作を制御する制御基板を収容する基板収容部を設け、
前記台座は前記本体の前記基板収容部側に取り付けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記リンクは、前記台座または前記カバーの一方に取り付けられた第1リンク部材と、前記第1リンク部材にスライド可能に嵌合し、前記台座または前記カバーの他方に取り付けられた第2リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とを所定のスライド位置で保持する保持部材とを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記カバーは、前記本体の背面と一方の側面とにまたがって設けられ、前記カバーの閉位置において前記媒体収容部に収容された前記記録媒体を視認可能な窓を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
記録媒体に記録を行う記録装置において記録媒体を収容する媒体収容部のカバーを開閉可能に支持するカバー支持構造であって、
前記記録装置の本体に台座を介して固定された回動軸により、前記本体に回動可能に連結される一方、前記カバーに連結されたリンクを有し、前記リンクは伸縮可能であって所定の長さ位置で保持可能であることを特徴とする記録装置におけるカバー支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59970(P2013−59970A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201472(P2011−201472)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】