説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】ノズルチェック処理の精度を低下させることなくノズルチェック処理を効率的に行う。
【解決手段】ラインインクジェットプリンター1は、上流側ヘッドユニットが有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための上流側ノズルチェック機構43aと、当該機構と独立した機構であって、下流側ヘッドユニットが有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための下流側ノズルチェック機構43bと、上流側ノズルチェック機構43aによるノズルチェックと、下流側ノズルチェック機構43bによるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部27bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル列が配置された記録ヘッドを備え、ノズルチェック処理を実行可能な記録装置、当該記録装置の制御方法、及び、当該記録装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドに設けられたノズルの吐出不良を検出するノズルチェック処理を行うことが可能に構成された記録装置(プリンター)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−198924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した記録装置のようにノズルチェック処理を実行可能に構成されたものでは、実際に記録ヘッドによって記録に係る処理を行う時間との比較において、特にノズルの数が多くなるとノズルチェック処理を行っている時間の長さが長くなる傾向があり、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、ノズルチェック処理を効率的に行いたいとするニーズがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ノズルチェック処理の精度を低下させることなくノズルチェック処理を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録装置であって、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とが独立した機構であることに着目し、これらヘッド部のそれぞれに独立したノズルチェック機構を設けると共に、ノズルチェック処理の際は、第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させるため、これら第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とについて、1つのノズルチェック機構により、順次、ノズルチェックを行う場合と比較して、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、当該処理を効率的に行うことが可能である。
【0006】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記第1記録ヘッド部は、第1の色に対応する第1ノズル列を有し、前記第2記録ヘッド部は、前記第1の色に補完可能な第2の色に対応する第2ノズル列を有し、前記ノズルチェック実行部は、前記第1ノズル列の第1ノズルと、前記第2ノズル列において、前記第1ノズルと対応する位置に配置された第2ノズルと、について、両方のノズルに吐出不良が検出された場合、両方のノズルに吐出不良が検出されなかった場合、及び、いずれか一方に吐出不良が検出された場合のそれぞれについて異なる処理を実行可能であることを特徴とする。
ここで、第1ノズルと記録媒体の同一の位置にドットを形成可能な位置に配置された第2ノズルと、について、両方のノズルに吐出不良が検出された場合、両方のノズルに吐出不良が検出されなかった場合、及び、いずれか一方に吐出不良が検出された場合とでは、印刷品質に対する悪影響の度合が異なる。例えば、第1ノズル及び第2ノズルの両方に吐出不良が検出されている場合は、これらノズルによって形成すべきドットについて白抜けが発生し得る状況にあり印刷品質が著しく低下する可能性がある。一方、第1ノズルに吐出不良が発生しているものの補完関係にある第2ノズルに吐出不良が発生していない場合、これらノズルによって記録媒体に形成されるべきドットについては、吐出不良が検出されていないノズルによって補完的に形成されることとなり、印刷品質の低下が抑制される。
以上を踏まえ、上記構成によれば、第1ノズル及び第2ノズルについて、両方のノズルに吐出不良が検出された場合、両方のノズルに吐出不良が検出されなかった場合、及び、いずれか一方に吐出不良が検出された場合のそれぞれについて異なる処理を実行可能であるため、ノズルチェックの結果に応じて、印刷品質に対する悪影響を考慮した適切な処理を実行可能となる。
【0007】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記ノズルチェック実行部は、ノズルチェック処理に際し、前記第1ノズルに対するノズルチェックと、前記第2ノズルに対するノズルチェックとを、同期をとって実行することを特徴とする。
これによれば、第1ノズルと、第2ノズルとについて、いずれにも吐出不良が検出されなかったこと、双方に吐出不良が検出されたこと、いずれか一方に吐出不良が検出されたことを迅速に検出でき、これらノズル双方の吐出不良の検出結果に基づいた処理を迅速に実行可能である。
【0008】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記第1ノズル列の前記第1の色はブラックとし、前記第2ノズル列の前記第2の色はOD値の高い色とし、又は、前記第1の色と、前記第2の色のそれぞれを、ブラックとし、又は、前記第1の色と、前記第2の色とを、それぞれ、色相の近い色のインクとしたことを特徴とする。
ここで、ブラックのドットに係る白抜けが発生している場合、印刷品質の著しい低下につながる可能性がある。これを踏まえ、第1ノズル列をブラックのインク吐出用のノズル列とし、第2ノズル列をOD値の高い色のインクの吐出用のノズル列とすることにより、ブラックのドットの白抜けを、OD値の高い色、すなわち、ブラックに近い色のインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
また、第1ノズル列と、第2ノズル列とのそれぞれを、ブラックのインクの吐出用のノズル列とすることにより、ブラックのドットの白抜けを、ブラックのインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
また、第1ノズル列と、第2ノズル列とを、それぞれ、色相の近い色のインクの吐出用のノズル列とすることにより、いずれか一方のノズル列のノズルによる白抜けを、色相の近い色のインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
【0009】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記記録媒体の幅を検出する幅検出部を備え、前記ノズルチェック実行部は、前記幅検出部により検出された前記記録媒体の幅に基づいて、前記第1記録ヘッド部が有するノズル列、及び、前記第2記録ヘッド部が有するノズル列の中で、前記記録媒体の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定し、前記特定したノズルについてはノズルチェックを行わないことを特徴とする。
ここで、記録媒体の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルは使用されることがない。そして、記録領域は、記録媒体の幅によって変動する。以上を踏まえ、上記構成によれば、記録媒体の幅を検出すると共に、記録媒体の幅に基づいて、記録媒体の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定し、特定したノズルについてはノズルチェックを行わないため、記録媒体の記録に使用するノズルへのノズルチェックを行うことによってノズルチェックの精度を担保した上で、ノズルチェックに要する時間の短縮化を図ることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、を備える記録装置の制御方法であって、前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行し、ノズルチェック処理の結果に応じて対応する処理を実行することを特徴とする。
この制御方法によれば、第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とが独立した機構であることに着目し、これらヘッド部のそれぞれに独立したノズルチェック機構を設けると共に、ノズルチェック処理の際は、第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させるため、これら第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とについて、1つのノズルチェック機構により、順次、ノズルチェックを行う場合と比較して、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、当該処理を効率的に行うことが可能である。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部と、として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とが独立した機構であることに着目し、これらヘッド部のそれぞれに独立したノズルチェック機構を設けると共に、ノズルチェック処理の際は、第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させるため、これら第1記録ヘッド部と、第2記録ヘッド部とについて、1つのノズルチェック機構により、順次、ノズルチェックを行う場合と比較して、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、当該処理を効率的に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズルチェック処理の精度を低下させることなくノズルチェック処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るラインインクジェットプリンターの構成を示す図。
【図2】図1の範囲H1におけるインクの吐出量の変化の態様を示す図である。
【図3】記録システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】ノズルチェックを説明するための図である。
【図5】ラインインクジェットプリンターの動作を示すフローチャートである。
【図6】ラインインクジェットプリンターの動作を示すフローチャートである。
【図7】ノズルチェック処理の手順を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係るラインインクジェットプリンターの構成を示す図。
【図9】第3実施形態に係る記録システムの機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1(記録装置)の構成を示す図である。
ラインインクジェットプリンター1は、搬送ローラー10によって記録媒体11を搬送方向YJ1における搬送正方向YJ1aに搬送しつつ、搬送方向YJ1と直交する方向であるノズル列方向YJ2に延びる複数のノズル列を有するラインインクジェットヘッド12から記録媒体11に対してインクを吐出して、記録媒体11にドットを形成することにより画像を記録するライン型のインクジェットプリンターである。
【0015】
図1に示すように、ラインインクジェットヘッド12は、上流側ヘッドユニット17(第1記録ヘッド部)と、下流側ヘッドユニット18(第2記録ヘッド部)とを備えている。
上流側ヘッドユニット17には、搬送正方向YJ1aに向かって左側から順に、上流側第一記録ヘッド171、上流側第二記録ヘッド172、上流側第三記録ヘッド173、及び、上流側第四記録ヘッド174の4つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。同様に、下流側ヘッドユニット18には、搬送正方向YJ1aに向かって左側から順に、下流側第一記録ヘッド181、下流側第二記録ヘッド182、下流側第三記録ヘッド183、及び、下流側第四記録ヘッド184の4つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。
【0016】
上流側ヘッドユニット17の上流側第一記録ヘッド171には、ブラックノズル列KN1と、このブラックノズル列KN1の搬送正方向YJ1aの下流(以下、単に「下流」という。)に配置されたマゼンタノズル列MN1とが設けられている。ブラックノズル列KN1がノズル列方向YJ2において延在する範囲と、マゼンタノズル列MN1がノズル列方向YJ2において延在する範囲とは一致している。
ブラックノズル列KN1は、インクを微細なインク粒(液滴)として吐出するノズルが、ノズル列方向YJ2に延在して形成されたノズル列である。ブラックノズル列KN1には、ブラックのインクカートリッジ(不図示)から、インクが供給される構成となっており、上流側第一記録ヘッド171は、例えばピエゾ素子を用いて構成されるアクチュエーターによって、ブラックのインクカートリッジから供給されるインクを記録媒体11へ向かって押し出して、所定のノズルから微細なインク粒を吐出する。
マゼンタノズル列MN1は、ブラックノズル列KN1と同様、ノズルがノズル列方向YJ2に延在して形成されたノズル列であり、マゼンタのインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。
【0017】
上流側第二記録ヘッド172は、上流側第一記録ヘッド171と同様の構成であり、ブラックのインク吐出用のブラックノズル列KN2と、このブラックノズル列KN2の下流に配置されたマゼンタのインク吐出用のマゼンタノズル列MN2とを備えている。
図1に示すように、上流側第一記録ヘッド171に形成された各ノズル列と、上流側第二記録ヘッド172に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H1において、オーバーラップしている。このオーバーラップは、記録媒体11において、上流側第一記録ヘッド171によって記録媒体11に形成されるドットと、上流側第二記録ヘッド172によって記録媒体11に形成されるドットとの境目に対応する部位に、ドットの不均一な乖離に起因したいわゆる白線が発生し、見た目上の違和感が発生することを抑制するために設けられたものである。
上流側第三記録ヘッド173は、上流側第二記録ヘッド172と同様の構成であり、ブラックノズル列KN3と、このブラックノズル列KN3の下流に配置されたマゼンタノズル列MN3とを備えている。
図1に示すように、上流側第三記録ヘッド173に形成された各ノズル列と、上流側第二記録ヘッド172に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H2において、オーバーラップしている。
上流側第四記録ヘッド174は、上流側第三記録ヘッド173と同様の構成であり、ブラックノズル列KN4と、このブラックノズル列KN4の下流に配置されたマゼンタノズル列MN4とを備えている。
図1に示すように、上流側第四記録ヘッド174に形成された各ノズル列と、上流側第三記録ヘッド173に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H3において、オーバーラップしている。
【0018】
図1に示すように、上流側第一記録ヘッド171のブラックノズル列KN1と、上流側第三記録ヘッド173のブラックノズル列KN3との搬送方向YJ1における位置は一致している。同様に、マゼンタノズル列MN1及びマゼンタノズル列MN3、ブラックノズル列KN2及びブラックノズル列KN4、マゼンタノズル列MN2及びマゼンタノズル列MN4、の搬送方向YJ1における位置はそれぞれ一致している。
【0019】
一方、下流側ヘッドユニット18の下流側第一記録ヘッド181には、シアンノズル列CN1と、このシアンノズル列CN1の下流に配置されたイエローノズル列YN1とが設けられている。シアンノズル列CN1には、シアンのインクカートリッジからインクが供給され、イエローノズル列YN1には、イエローのインクカートリッジからインクが供給される。シアンノズル列CN1がノズル列方向YJ2において延在する範囲と、イエローノズル列YN1がノズル列方向YJ2において延在する範囲とは、同一である。さらに、これらシアンノズル列CN1及びイエローノズル列YN1と、上流側ヘッドユニット17の上流側第一記録ヘッド171におけるブラックノズル列KN1及びマゼンタノズル列MN1と、がノズル列方向YJ2において延在する範囲は同一である。
【0020】
下流側第二記録ヘッド182は、下流側第一記録ヘッド181と同様の構成であり、シアンのインク吐出用のシアンノズル列CN2と、このシアンノズル列CN2の下流に配置されたイエローのインク吐出用のイエローノズル列YN2とを備えている。
これらシアンノズル列CN2及びイエローノズル列YN2と、上流側ヘッドユニット17の上流側第二記録ヘッド172におけるブラックノズル列KN2及びマゼンタノズル列MN2と、がノズル列方向YJ2において延在する範囲は同一である。
また、下流側第一記録ヘッド181に形成された各ノズル列と、下流側第二記録ヘッド182に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H1において、オーバーラップしている。
下流側第三記録ヘッド183は、下流側第二記録ヘッド182と同様の構成であり、シアンのインク吐出用のシアンノズル列CN3と、このシアンノズル列CN3の下流に配置されたイエローのインク吐出用のイエローノズル列YN3とを備えている。
これらシアンノズル列CN3及びイエローノズル列YN3と、上流側ヘッドユニット17の上流側第三記録ヘッド173におけるブラックノズル列KN3及びマゼンタノズル列MN3と、がノズル列方向YJ2において延在する範囲は同一である。
また、下流側第二記録ヘッド182に形成された各ノズル列と、下流側第三記録ヘッド183に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H2において、オーバーラップしている。
下流側第四記録ヘッド184は、下流側第三記録ヘッド183と同様の構成であり、シアンのインク吐出用のシアンノズル列CN4と、このシアンノズル列CN4の下流に配置されたイエローのインク吐出用のイエローノズル列YN4とを備えている。
これらシアンノズル列CN4及びイエローノズル列YN4と、上流側ヘッドユニット17の上流側第四記録ヘッド174におけるブラックノズル列KN4及びマゼンタノズル列MN4と、がノズル列方向YJ2において延在する範囲は同一である。
また、下流側第三記録ヘッド183に形成された各ノズル列と、下流側第四記録ヘッド184に形成された各ノズル列とは、ノズル列方向YJ2における範囲H3において、オーバーラップしている。
【0021】
図1に示すように、下流側ヘッドユニット18において、シアンノズル列CN1及びシアンノズル列CN3、シアンノズル列CN2及びシアンノズル列CN4、イエローノズル列YN1及びイエローノズル列YN3、イエローノズル列YN2及びイエローノズル列YN4の搬送方向YJ1における位置はそれぞれ一致している。
【0022】
上流側ヘッドユニット17、及び、下流側ヘッドユニット18は、それぞれキャリッジ(不図示)に搭載されている。そして、上流側ヘッドユニット17は、キャリッジによって、図1に示すホームポジションHP1に移動可能であり、下流側ヘッドユニット18は、ホームポジションHP2に移動可能に構成されている。このホームポジションHP1、HP2では、フラッシングや、キャッピングのほか、後述するノズルチェックが実行される。
【0023】
ラインインクジェットプリンター1は、記録媒体11にインクを吐出してドットを形成し、このドットの組み合わせにより、画像を記録する。
以下、記録媒体11にある1つのドットを形成する場合のラインインクジェットプリンター1の基本的な動作について説明する。なお、以下の説明では、記録媒体11が図1に示す位置に位置しており、この記録媒体11上の位置P1に所定の色のドットを形成する場合を例にして説明する。この所定の色は、ブラック、シアン、イエロー、及び、マゼンタのインクがそれぞれ所定量ずつ吐出されることによって表現される色であるものとする。図1に示すように、位置P1は、ノズル列方向YJ2において、範囲H1に属している。
【0024】
まず、ラインインクジェットプリンター1は、記録媒体11にドットを形成している間、記録媒体11を、予め定められた一定の速さで搬送正方向YJ1aへ向かって搬送する。そして、図1に示す状態から記録媒体11の搬送正方向YJ1aへの搬送が進行し、記録媒体11上の位置P1がブラックノズル列KN2の位置P2に至ったタイミングで、ブラックノズル列KN2の対応するノズルから所定量のブラックのインクを吐出する。同様にして、ラインインクジェットプリンター1は、位置P1が、各ノズル列の位置P3〜位置P9に至ったタイミングで、所定量のインクを吐出する。
このようにして、記録媒体11上の位置P1に、ブラック、マゼンタ、シアン、及び、イエローのインクがそれぞれ所定量ずつ吐出され、位置P1に所定の色のドットが形成される。
つまり、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1では、画像の記録に係る処理中は、ラインインクジェットヘッド12はその位置が固定された状態であり、この固定されたラインインクジェットヘッド12に対して記録媒体11が相対的に移動しつつ、各記録ヘッドから適宜インクが吐出されてドットが形成され、画像が記録される。
【0025】
図2は、範囲H1におけるブラックノズル列KN1と、ブラックノズル列KN2とのインク吐出量の変化を示す図である。
図2中、横軸は、記録媒体11において、ノズル列方向YJ2に延在するドットを示しており、縦軸は、インクの量を示している。また、グラフG1は、ブラックノズル列KN2のインクの吐出量の変化を示すグラフであり、一方、グラフG2は、ブラックノズル列KN1のインクの吐出量の変化を示すグラフである。これらグラフG1、及び、グラフG2は、ブラックを利用して表現されるある一定の色のドットを形成する場合における、各ノズル列を構成する各ノズルのインクの吐出量の変化を示している。
また、図1に示すように、ノズル列方向YJ2において、搬送正方向YJ1aに向かって左方向を左方向YJ2aとし、右方向を右方向YJ2bと称するものとする。
図2に示すように、範囲H1に一定の色のドットを形成する場合、範囲H1において、ブラックノズル列KN2から吐出されるインクの量は、左方向YJ2aへ向かうに従って徐々に減少し、一方、ブラックノズル列KN1から吐出されるインクの量は、右方向YJ2bへ向かうに従って徐々に減少する。
範囲H1における各ノズル列のインクの吐出量の態様を、図2に示す態様とすることにより、範囲H1においてドットの配列が不均一となることが緩和され、例えば、いわゆる白線が発生することを好適に防止できる。特に、図2に示すように、範囲H1において、ブラックノズル列KN2から吐出されるインクの量が左方向YJ2aへ向かって減少していくのに対応して、ブラックノズル列KN1から吐出されるインクの量が左方向YJ2aへ向かって増加していく状態となり、範囲H1に属するドットについて、インクの吐出量の相違に起因した色の不均一な変化が生じにくい。
【0026】
次いで、ブラックノズル列と、シアンノズル列との関係について説明する。
本実施形態では、記録媒体11にブラックのドットを形成する場合、ブラックノズル列の対応するノズルからブラックのインクを吐出すると共に、当該ブラックノズル列に対応するシアンノズル列の対応するノズルから、補完的に、シアンのインクを吐出する構成となっている。ブラックノズル列とシアンノズル列とが対応しているとは、これらノズル列がノズル列方向YJ2における同一の範囲に延在していることを言い、例えば、ブラックノズル列KN1と、シアンノズル列CN1とが対応関係にある。
また、対応関係にあるブラックノズル列と、シアンノズル列のうち、ブラックノズル列が「第1ノズル列」に該当し、シアンノズル列が「第2ノズル列」に該当する。
このように、ブラックのインクを吐出してブラックのドットを形成する場合に、当該ドットに対してシアンのインクを補完的に吐出するのは以下の理由による。
すなわち、ブラックのドットについていわゆる白抜けが発生した場合、他の色のドットについて白抜けが発生した場合と比較して、印刷品質の著しい低下につながる可能性がある。これを踏まえ、本実施形態では、ブラックのインクを吐出してブラックのドットを形成する場合に、シアンのインクを補完的に吐出することにより、仮に、ブラックのインクを吐出するノズルについて吐出不良が発生しブラックのインクの吐出が正常に行われなかった場合であっても、シアンのインクにより補完的にドットを形成し、これにより、白抜けを抑制すると共に、印刷品質の低下を抑制している。
ここで、周知のように、OD値が高い色ほど、ブラックに近い色であると言えるが、マゼンタ、シアン、及び、イエローのうち最もOD値が高い色は、シアンである。これを踏まえ、本実施形態では、上流側ヘッドユニット17におけるブラックノズル列の位置と、下流側ヘッドユニット18におけるシアンノズル列の位置とを対応させた上で、ブラックをシアンによって補完している。
【0027】
図3は、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1、及び、このラインインクジェットプリンター1を制御するホストコンピューター25(制御装置)を備える記録システム5の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ラインインクジェットプリンター1は、制御部27を備えている。
制御部27は、ラインインクジェットプリンター1の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPUや、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや、この基本制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM、その他の周辺回路等を備えている。制御部27は、記録実行部27a、及び、ノズルチェック実行部27bを備えているが、これら機能ブロックについては後述する。
制御部27は、記録ヘッドドライバー31を介して、ラインインクジェットヘッド12の各記録ヘッドが備えるアクチュエーターを駆動し、各ノズル孔から必要量のインクを吐出する。
また、制御部27は、モータードライバー33を介して、各種モーターに駆動信号を出力して、各種モーターを駆動する。モータードライバー33には、少なくとも、搬送モーター36と、キャリッジ駆動モーター35とが接続されている。
制御部27は、モータードライバー33を介して搬送モーター36に駆動信号を出力して、搬送モーター36を所定量だけ駆動させる。搬送モーター36の駆動に応じて、搬送ローラー10が回転し、記録媒体11が、搬送正方向YJ1a、又は、その逆方向である搬送逆方向YJ1bに所定量だけ搬送される。制御部27や、搬送ローラー10、搬送モーター36、その他の機構、装置が協働して搬送部として機能する。
また、キャリッジ駆動モーター35は、上流側ヘッドユニット17、下流側ヘッドユニット18が搭載されたキャリッジを移動させるためのモーターである。制御部27は、モータードライバー33を介してキャリッジ駆動モーター35を駆動することにより、上流側ヘッドユニット17、下流側ヘッドユニット18を、固定位置KP1、KP2(図1)からホームポジションHP1、HP2に移動させ、また、ホームポジションHP1、HP2から固定位置KP1、KP2に移動させる。
【0028】
検出部37は、記録ヘッドの温度を検出するセンサーや、搬送状態を検出するセンサー、紙ジャムを検出するセンサー等の各種センサーに接続され、これらセンサーの検出値に所定の信号処理を施して制御部27に出力する。検出部37には、不図示の紙幅センサー37aが接続されている。紙幅センサー37aは、セットされている記録媒体11の幅を検出するセンサーである。制御部27は、紙幅センサー37aの検出値に基づいて、セットされている記録媒体11の幅を検出する。この機能は、CPUがファームウェアを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
以下の説明では、記録媒体11は、いわゆるロール紙であり、ラインインクジェットプリンター1には、40mm幅の記録媒体11(以下、「40mm用紙」という。)、又は、80mm幅の記録媒体11(以下、「80mm用紙」という。)のいずれかがセットされるものとする。この場合、制御部27は、紙幅センサー37aの検出値に基づいて、セットされている記録媒体11が、40mm用紙であるか、80m用紙であるかを検出する。なお、ラインインクジェットプリンター1及びホストコンピューター25のいずれかの記憶領域に、記録媒体11の幅を示す設定値が記録されている場合、制御部27は、当該設定値を取得することにより、記録媒体11の幅を検出してもよい。
【0029】
表示部39は、複数のLEDを備え、制御部27の制御の下、複数のLEDを所定の態様で点灯/消滅することにより、ラインインクジェットプリンター1の状態や、エラーの発生の有無、その他の情報を報知する。
入力部40は、各種スイッチに接続され、各種スイッチに対する操作を検出して制御部27に出力する。
記憶部41は、EEPROMやハードディスク等の不揮発性メモリーを備え、各種データを書き換え可能に記憶する。
通信インターフェイス42(I/F)は、制御部27の制御の下、所定の通信プロトコルに準拠して、ホストコンピューター25との間で通信する。通信インターフェイス42とホストコンピューター25との間は、例えば、IEEE1284や、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)等の規格に準じた形式で有線、又は、無線により接続される。
上流側ノズルチェック機構43a、下流側ノズルチェック機構43bについては、後述する。
【0030】
一方、ホストコンピューター25は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備え、ホストコンピューター25の各部を中枢的に制御するホスト側制御部45と、各種情報を表示する表示部46と、ユーザーの入力を検出する入力部47と、各種データを記憶する記憶部48と、ラインインクジェットプリンター1との間で通信する通信インターフェイス49(I/F)と、を備えている。
【0031】
ホストコンピューター25には、ラインインクジェットプリンター1を制御するためのプリンタードライバーがインストールされている。ラインインクジェットプリンター1に記録に係る動作をさせる場合、ホスト側制御部45は、プリンタードライバーを読み出して実行することにより、記録に係る動作をラインインクジェットプリンター1に実行させる制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドをラインインクジェットプリンター1に出力する。
ラインインクジェットプリンター1の制御部27の記録実行部27aは、入力された制御コマンドを、順次、読み出して実行することにより、ラインインクジェットヘッド12や、搬送モーター36、その他の機構、装置を制御して記録媒体11への画像の記録を実行する。この記録実行部27aの機能は、CPUがファームウェアを読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0032】
さて、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、ノズルチェック処理を実行可能に構成されている。
以下、ノズルチェック処理の基本的な動作について説明する。
まず、ラインインクジェットプリンター1の制御部27のノズルチェック実行部27bは、上流側ヘッドユニット17、下流側ヘッドユニット18をホームポジションHP1、HP2にそれぞれ移動する。このノズルチェック実行部27bの機能は、CPUがファームウェアを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
ホームポジションHP1には上流側ノズルチェック機構43a(第1ノズルチェック機構)が設けられ、ホームポジションHP2には下流側ノズルチェック機構43b(第2ノズルチェック機構)が設けられている。
【0033】
図4は、上流側ノズルチェック機構43aを横から見た様子を模式的に示す図である。
図4に示すように、上流側ヘッドユニット17の鉛直下方には、上面が開口した箱状の吸収剤収容部50が設けられ、この吸収剤収容部50には吸収剤51が収容されると共に、吸収剤51と電気的に導通するように導電材52が設けられている。吸収剤51は、上流側ヘッドユニット17のノズルが形成された領域の全域に延在しており、いずれのノズルからインクが吐出された場合であっても吸収剤51に着弾する構成となっている。また、導電材52を流れる電気信号は所定の信号処理回路に出力される構成となっている。また、図示は省略したが、上流側ヘッドユニット17の各ノズルの近傍には、各ノズルから吐出されるインクを帯電させる電極が配置されている。
以上のような構成の下、ノズルチェック実行部27bは、上流側ヘッドユニット17の各ノズルについて、以下のようにしてノズルチェックを行う。すなわち、ノズルチェック実行部27bは、ノズルチェックの対象となっているノズルから所定量のインク滴を吐出させる。吐出されたインク滴は、電極により所定量の電荷が帯電された上で、吸収剤51に着弾する。このインク滴の着弾に応じて、導電材52における電流の状態が変化し、その変化量を示す信号が所定の信号処理回路を介して制御部27に出力される。ノズルチェック実行部27bは、入力された信号が示す値が所定の閾値を上回っている場合、想定された量のインクが正常に吐出されたとして当該ノズルについて吐出不良が発生していないと判別し、一方、閾値を下回っている場合、何らかの原因により想定された量のインクが正常に吐出されなかったとして、当該ノズルについて吐出不良が発生していると判別する。
下流側ノズルチェック機構43bの構成は、上流側ノズルチェック機構43aと同様であり、また、下流側ヘッドユニット18の各ノズルに対するノズルチェックの方法は、上流側ヘッドユニット17の各ノズルに対するノズルチェック方法と同様であるため、その説明を省略する。
ノズルチェック処理では、上流側ノズルチェック機構43a、及び、下流側ノズルチェック機構43bのそれぞれにおいて、1つずつ順番にノズルのノズルチェックが行われる。
本実施形態では、上流側ヘッドユニット17と、下流側ヘッドユニット18とが独立した機構であることを利用して、上流側ノズルチェック機構43aと、下流側ノズルチェック機構43bとを独立した機構として設けている。これにより、上流側ヘッドユニット17の各ノズルのノズルチェックと、下流側ヘッドユニット18の各ノズルのノズルチェックとを並行して実行することが可能となっている。
なお、検査対象のノズルから、記録媒体11にインクを吐出してドットを形成し、形成したドットをスキャナーなどで光学的に読み取って、当該ノズルに吐出不良が生じているか否かを判別するようにしてもよい。すなわち、各ノズルについて、ノズルの吐出不良が検出できるのであれば、いかなる方法を用いてノズルチェックを行ってもよい。
【0034】
ここで、上述したように、ノズルチェック処理では、上流側ノズルチェック機構43a、及び、下流側ノズルチェック機構43bのそれぞれにおいて、1つずつノズルのノズルチェックが行われる。従って、ノズルチェック処理の開始から終了までに要する時間が、実際にラインインクジェットヘッド12により記録媒体11への記録を行っている時間との関係で、長くなる傾向があるという問題があった。
これを踏まえ、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、以下の動作を行うことにより、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、ノズルチェック処理の効率化を図っている。
【0035】
図5は、ノズルチェック処理の流れを模式的に示す図である。
なお、上述したように、上流側ヘッドユニット17、及び、下流側ヘッドユニット18に対するノズルチェックは構造的に並行して実行可能である。
ノズルチェック処理において、まず、ノズルチェック実行部27bは、セットされている記録媒体11が40mm用紙であるか、80mm用紙であるかを検出する(ステップSA1)。この場合、ノズルチェック実行部27bは、幅検出部として機能する。
次いで、ノズルチェック実行部27bは、ラインインクジェットヘッド12の各ノズルのうち、記録媒体11へ記録している間、記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定する(ステップSA2)。ここで、記録媒体11の記録領域の外側に位置しているノズルは、記録の際には使用しない。本実施形態では、40mm用紙がセットされた場合に、当該40mm用紙の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルが、予め、事前のシミュレーションにより特定されており、当該特定されたノズルを示す情報が、例えば、ノズルチェックに係るプログラム上に記述されている。80mm用紙についても同様である。このため、セットされている記録媒体11の幅を検出することにより、ノズルチェック実行部27bは、各幅の記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定可能である。
なお、左マージン、及び、右マージンが設定により変動可能に構成されている場合は、ノズルチェック実行部27bが、これらマージンの設定値に応じて、所定のアルゴリズムのプログラムを実行することにより、記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定するようにしてもよい。
そして、本実施形態では、ステップSA2において特定したノズルについてはノズルチェックを行わない。つまり、以下のステップSA3〜ステップSA6では、ステップSA2において特定したノズルについては、ノズルチェックの対象から除外される。これらノズルは、画像の記録に使用しないノズルであるため、仮にこれらノズルについて吐出不良が発生している場合であっても画像の印刷品質に悪影響は発生し得ず、これらノズルに対してノズルチェックをする必要がないからである。このように、本実施形態では、ノズルチェックにおいて、当該画像の記録に使用しないノズルについてはノズルチェックが行われない。このため、使用するノズルに対しては過不足無くノズルチェックが実行されてノズルチェック自体の精度の低下、信頼性の低下を抑制でき、さらに、ノズルチェックを実行すべきノズルの絶対数が削減され、ノズルチェックに要する時間の短縮化を実現できる。
【0036】
次いで、ノズルチェック実行部27bは、上流側ノズルチェック機構43aを制御して、上流側ヘッドユニット17の各ノズル列のうち、ブラックノズル列KN1〜KN4を構成するノズルについて、順次、ノズルチェックを行う(ステップSA3)。これと並行して、ノズルチェック実行部27bは、下流側ノズルチェック機構43bを制御して、下流側ヘッドユニット18の各ノズル列のうち、シアンノズル列CN1〜CN4を構成するノズルについて、順次、ノズルチェックを行う(ステップSA4)。このように、上流側ヘッドユニット17のブラックノズル列と、下流側ヘッドユニット18のシアンノズル列とに対するノズルチェックを並行して行うため、ノズルチェック処理が効率化し、ノズルチェック処理に要する時間が短縮する。説明の便宜のため、ステップSA3の処理、及び、ステップSA4の処理を「第1段階ノズルチェック処理」と言う。
次いで、ノズルチェック実行部27bは、上流側ノズルチェック機構43aを制御して、上流側ヘッドユニット17の各ノズル列のうち、マゼンタノズル列MN1〜MN4を構成するノズルについて、順次、ノズルチェックを行う(ステップSA5)。これと並行して、ノズルチェック実行部27bは、下流側ノズルチェック機構43bを制御して、下流側ヘッドユニット18の各ノズル列のうち、イエローノズル列YN1〜YN4を構成するノズルについて、順次、ノズルチェックを行う(ステップSA6)。ステップSA5の処理と、ステップSA6の処理とを並行して行うことにより、第1段階ノズルチェック処理と同様、処理の効率化、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0037】
次いで、第1段階ノズルチェック処理におけるノズルチェック実行部27bの動作について詳述する。
図6は、第1段階ノズルチェック処理におけるノズルチェック実行部27bの動作を示すフローチャートである。また、図7は、第1段階ノズルチェック処理において、ノズルチェックの手順を説明するための図である。
第1段階ノズルチェック処理では、以下の手順で各ノズルについてノズルチェックが行われる。すなわち、図7を参照し、まず、ブラックノズル列KN1、及び、シアンノズル列CN1を構成する各ノズルについて、左方向YJ2a側の端のノズルから、右方向YJ2bに向かって、順番に、ノズルチェックが行われる(手順1)。その際、ブラックノズル列KN1の1のノズルと、シアンノズル列CN1の対応する他のノズル(ノズル列方向YJ2における当該1のノズル列と一致する位置に配置されたノズル)とについては、同期をとってノズルチェックが実行される。この場合、1のノズルが「第1ノズル」に該当し、他のノズルが「第2ノズル」に該当する。
【0038】
例えば、図7を参照し、ブラックノズル列KN1には、左方向YJ2a側の端から右方向YJ2bに向かって、順番に、ブラックノズルKK1、ブラックノズルKK2、及び、ブラックノズルKK3の3つのノズルが配置され、一方、シアンノズル列CN1には、左方向YJ2a側の端から右方向YJ2bに向かって、順番に、シアンノズルCP1、シアンノズルCP2、及び、シアンノズルCP3の3つのノズルが配置されているものとする。なお、ブラックノズルKK1(第1ノズル)及びシアンノズルCP1(第2ノズル)、ブラックノズルKK2(第1ノズル)及びシアンノズルCP2(第2ノズル)、ブラックノズルKK3(第1ノズル)及びシアンノズルCP3(第2ノズル)のノズル列方向YJ2における位置はそれぞれ一致している。このような場合において、ノズルチェック実行部27bは、ブラックノズルKK1、及び、シアンノズルCP1に対して同期をとってノズルチェックを実行する。次いで、ノズルチェック実行部27bは、ブラックノズルKK2、及び、シアンノズルCP2に対して同期をとってノズルチェックを実行する。次いで、ノズルチェック実行部27bは、ブラックノズルKK3、及び、シアンノズルCP3に対して同期をとってノズルチェックを実行する。
手順1にて、ブラックノズル列KN1及びシアンノズル列CN1に対するノズルチェックが完了した後、ノズルチェック実行部27bは、手順1と同様の手順で、ブラックノズル列KN2及びシアンノズル列CN2に対して同期してノズルチェックを行い(手順2)、次いで、ブラックノズル列KN3及びシアンノズル列CN3に対して同期してノズルチェックを行い(手順3)、次いで、ブラックノズル列KN4及びシアンノズル列CN4に対して同期してのノズルチェックを行う(手順4)。
【0039】
さて、図6に示すように、ノズルチェック実行部27bは、ブラックノズル列のノズルのうちノズルチェックの対象となっているノズルに対してノズルチェックを行うと共に(ステップSB1)、これと同期して、シアンノズル列のノズルのうちノズルチェックの対象となっているノズルに対してノズルチェックを行う(ステップSB2)。以下、ステップSB1でノズルチェックの対象となったノズルのことを「処理対象ブラックノズル」といい、一方、ステップSB2でノズルチェックの対象となったノズルのことを「処理対象シアンノズル」という。ステップSB1、及び、ステップSB2のノズルチェックの結果は、RAM等の一次記憶領域に記憶される。上述したように、ブラックノズル列を構成するノズルについて、全てのノズルに対するノズルチェックが完了するまで、順番に、処理対象ブラックノズルとなる。
次いで、ノズルチェック実行部27bは、ステップSB1における処理対象ブラックノズルに対するノズルチェックの結果、及び、ステップSB2における処理対象シアンノズルに対するノズルチェックの結果をそれぞれ取得する(ステップSB3)。
次いで、ノズルチェック実行部27bは、ノズルチェックの結果、処理対象ブラックノズルに吐出不良が検出され、かつ、処理対象シアンノズルに吐出不良が検出されたか否かを検出する(ステップSB4)。
【0040】
処理対象ブラックノズル、及び、処理対象シアンノズルの両方に吐出不良が検出された場合(ステップSB4)、ノズルチェック実行部27bは、エラー処理を実行する(ステップSB5)。以下、エラー処理について説明する。
上述したように、処理対象ブラックノズルと、処理対象シアンノズルとは、補完関係にあり、処理対象ブラックノズルによってブラックのドットを形成する場合は、処理対象シアンノズルによってシアンのインクを補完的に吐出し、これにより、ブラックのドットの白抜けを効果的に抑制している。従って、処理対象ブラックノズル、及び、処理対象シアンノズルの両方に吐出不良が検出されている場合は、処理対象ブラックノズルによって形成すべきブラックのドットについて、白抜きが発生し得る状態にあるということである。
そして、エラー処理では、白抜きが発生し得る状態にあることを前提として予め定められた所定の処理を実行する。例えば、ノズルチェック実行部27bは、エラー処理として、表示部39を制御してLEDを所定の態様で点灯/消滅して、ブラックのドットについて白抜きが発生し得る状態にあることを報知したり、また、ホストコンピューター25に対してその旨通知したり、また、一定の印刷品質を担保すべく吐出不良が解消するまでラインインクジェットヘッド12による画像の記録を停止したり、また、ノズルチェック処理を中断したりする。本実施形態では、エラー処理として実行すべき処理をユーザーが設定可能な構成となっている。ユーザーは、求める印刷品質、その他の状況、環境に応じて、エラー処理として実行すべき処理を設定する。
ステップSB5のエラー処理後、ノズルチェック実行部27bは、処理手順をステップSB6へ移行する。
【0041】
一方、ステップSB4において、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方に吐出不良が検出されている状態ではない場合(ステップSB4:NO)、ノズルチェック実行部27bは、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方について吐出不良が検出されていない状態であるか否かを判別する(ステップSB7)。
処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方について吐出不良が検出されていない状態の場合(ステップSB7:YES)、ノズルチェック実行部27bは、正常時対応処理を実行する(ステップSB8)。
正常時対応処理とは、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方について吐出不良が検出されず、従って、これらノズルによって形成すべきドットについて正常に形成することが可能であることを前提として実行すべき処理として予め定められた処理である。例えば、ノズルチェック実行部27bは、正常時対応処理として、表示部39を制御してLEDを所定の態様で点灯/消滅して、現在ノズルチェックの対象となっている処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方について吐出不良が検出されなかった旨報知したり、ホストコンピューター25に対してその旨通知したりする。また例えば、ノズルチェック実行部27bは、何ら対応する処理を行わず、処理手順を次のステップへ移行する。本実施形態では、正常時対応処理として実行すべき処理をユーザーが設定可能な構成となっている。
ステップSB8の正常時対応処理後、ノズルチェック実行部27bは、処理手順をステップSB6へ移行する。
【0042】
一方、ステップSB7において、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方について吐出不良が検出されていない状態ではない場合、換言すれば、いずれか一方のノズルにのみ吐出不良が検出されている場合(ステップSB7:NO)、ノズルチェック実行部27bは、処理対象ブラックノズルについてのみ吐出不良が検出されたか否かを判別する(ステップSB9)。
処理対象ブラックノズルについてのみ吐出不良が検出された場合(ステップSB9:YES)、ノズルチェック実行部27bは、第1準正常時対応処理を実行する(ステップSB10)。
第1準正常時対応処理とは、処理対象ブラックノズルについてのみ吐出不良が検出されていることを前提として実行すべき処理として予め定められた処理である。この場合、処理対象ブラックノズルによって形成すべきブラックのドットについて、処理対象ブラックノズルによっては正常に形成できないものの、処理対象シアンノズルから補完的にインクが吐出されてドットが形成されるため、印刷品質の著しい低下は抑制できるものの、印刷品質自体の低下は免れ得ない状況にある。
例えば、ノズルチェック実行部27bは、第1準正常時対応処理として、表示部39を制御してLEDを所定の態様で点灯/消滅して、処理対象ブラックノズルについてのみ吐出不良が検出されている旨報知したり、また、ホストコンピューター25に対してその旨通知したり、また、ユーザーの設定に応じて、一定の印刷品質を担保すべく吐出不良が解消するまでラインインクジェットヘッド12による画像の記録を停止したり、また、ノズルチェック処理を中断したりする。本実施形態では、第1準正常時対応処理として実行すべき処理をユーザーが設定可能な構成となっている。ユーザーは、例えば、求める印刷品質との関係で、処理対象ブラックノズルについての吐出不良を許容しない場合は、第1準正常時対応処理において、ノズルチェック処理の中断や、画像の記録の停止等、エラー処理に準じる処理が行われるよう設定する。また、ユーザーは、処理対象ブラックノズルのみに吐出不良が検出されていても、処理対象シアンノズルによって補完されることを鑑みて、当面の間は、当該吐出不良を解消せずに画像を記録することを許容する場合は、ノズルチェック処理を継続して実行すると共に、ラインインクジェットヘッド12による画像の記録を停止しないよう設定する。
ステップSB10の第1準正常時対応処理後、ノズルチェック実行部27bは、処理手順をステップSB6へ移行する。
【0043】
一方、ステップSB9において、吐出不良が検出されたノズルが処理対象ブラックノズルではない場合、換言すれば、処理対象シアンノズルについてのみ吐出不良が検出された場合(ステップSB9:NO)、ノズルチェック実行部27bは、第2準正常時対応処理を実行する(ステップSB11)。
第2準正常時対応処理とは、処理対象シアンノズルについてのみ吐出不良が検出されていることを前提として実行すべき処理として予め定められた処理である。この場合、処理対象シアンノズルについて吐出不良が検出されているものの、処理対象ブラックノズルについては正常であり、処理対象ブラックノズルによって形成すべきブラックのドットについて白抜けが発生するということがなく、従って、処理対象ブラックノズルについてのみ吐出不良が検出されている場合と比較して、印刷品質の低下は抑制される。
例えば、ノズルチェック実行部27bは、第2準正常時対応処理として、表示部39を制御してLEDを所定の態様で点灯/消滅して、処理対象シアンノズルについてのみ吐出不良が検出されている旨報知したり、また、ホストコンピューター25に対してその旨通知したりする。なお、本実施形態では、第2準正常時対応処理として実行すべき処理をユーザーが設定可能な構成となっている。ユーザーは、例えば、求める印刷品質との関係で、処理対象シアンノズルについての吐出不良を許容しない場合は、第2準正常時対応処理において、ノズルチェック処理の中断や、画像の記録の停止等、エラー処理に準じる処理が行われるよう設定する。また、ユーザーは、処理対象シアンノズルのみに吐出不良が検出されていても、少なくとも、ブラックのドットの白抜けがなく、印刷品質が著しく低下しないとして、当該吐出不良を解消せずに画像を記録することを許容する場合は、ノズルチェック処理を継続して実行すると共に、ラインインクジェットヘッド12による画像の記録を停止しないよう設定する。
ステップSB11の第2準正常時対応処理後、ノズルチェック実行部27bは、処理手順をステップSB6へ移行する。
【0044】
このように、本実施形態では、ノズルチェック実行部27bは、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルの両方に吐出不良が検出された場合、処理対象ブラックノズル及び処理対象シアンノズルのいずれにも吐出不良が検出されなかった場合、処理対象ブラックノズルにのみ吐出不良が検出された場合、及び、処理対象シアンノズルにのみ吐出不良が検出された場合のそれぞれについて、異なる処理を実行可能である。このため、双方のノズルに対するノズルチェックの結果に応じて、印刷品質に対する悪影響を考慮した適切な処理を実行可能である。
【0045】
ステップSB6において、ノズルチェック実行部27bは、図7に示す手順1〜手順4の処理が完了し、ノズルチェックをすべき全てのノズルについてノズルチェックが完了したか否かを判別する(ステップSB6)。
完了していない場合(ステップSB6:NO)、ノズルチェック実行部27bは、処理手順を、ステップSB1及びステップSB2へ戻す。
一方、完了した場合(ステップSB6:YES)、ノズルチェック実行部27bは、終了処理を行う(ステップSB12)。この終了処理は、第1段階ノズルチェック処理の終了に伴って行われる処理であり、例えば、第1段階ノズルチェック処理における各ノズルに対するノズルチェックの結果を示す情報が、ホストコンピューター25に対して出力される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、記録媒体11を搬送方向YJ1に搬送する搬送部(制御部27、搬送モーター36、搬送ローラー10等)と、ノズル列方向YJ2に延在する複数のノズル列が配置された上流側ヘッドユニット17と、上流側ヘッドユニット17から搬送方向YJ1に離間して配置され、上流側ヘッドユニット17における複数のノズル列の配置と同様の配置で複数のノズル列が配置された下流側ヘッドユニット18と、記録媒体11を搬送正方向YJ1aに搬送させつつ、ラインインクジェットヘッド12からインクを吐出して記録する記録実行部27aと、上流側ヘッドユニット17のノズルのノズルチェックを行うための上流側ノズルチェック機構43aと、上流側ノズルチェック機構43aと独立した機構であって、下流側ヘッドユニット18のノズルチェックを行うための下流側ノズルチェック機構43bと、上流側ノズルチェック機構43aによるノズルチェックと、下流側ノズルチェック機構43bによるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部27bと、を備えている。
この構成によれば、上流側ヘッドユニット17と、下流側ヘッドユニット18とが独立した機構であることに着目し、これらユニットのそれぞれに独立したノズルチェック機構を設けると共に、ノズルチェック処理の際は、上流側ノズルチェック機構43aによるノズルチェックと、下流側ノズルチェック機構43bによるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させるため、これら上流側ヘッドユニット17と、下流側ヘッドユニット18とについて、1つのノズルチェック機構により、順次、ノズルチェックを行う場合と比較して、ノズルチェック処理の精度を低下させることなく、当該処理を効率的に行うことが可能である。
【0047】
また、本実施形態では、上流側ヘッドユニット17のブラックノズル列と、下流側ヘッドユニット18のシアンノズル列とは、補完関係にある。そして、ノズルチェック実行部27bは、ブラックノズル列の1のノズル(処理対象ブラックノズル)と、対応するシアンノズル列の対応する他のノズル(処理対象シアンノズル)とについて、両方のノズルに吐出不良が検出された場合、両方のノズルに吐出不良が検出されなかった場合、及び、いずれか一方に吐出不良が検出された場合のそれぞれについて異なる処理を実行可能である。
これによれば、ノズルチェックの結果に応じて、印刷品質に対する悪影響を考慮した適切な処理を実行可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、ノズルチェック実行部27bは、ノズルチェック処理に際し、ブラックノズル列の1のノズル(処理対象ブラックノズル)と、対応するシアンノズル列の対応する他のノズル(処理対象シアンノズル)とについて、同期をとってノズルチェックを実行する。
これによれば、ブラックノズル列の1のノズルと、シアンノズル列の他のノズルとについて、いずれにも吐出不良が検出されなかったことや、双方に吐出不良が検出されたこと、いずれか一方に吐出不良が検出されたことを迅速に検出でき、これらノズル双方の吐出不良の検出結果に基づいた処理を迅速に実行可能である。
【0049】
また、本実施形態では、OD値の高いシアンのインク吐出用のシアンノズル列を、上流側ヘッドユニット17のブラックノズル列に対応するノズル列としている。
ここで、ブラックのドットに係る白抜けが発生している場合、印刷品質の著しい低下につながる可能性がある。これを踏まえ、ブラックノズル列を補完するノズル列を、OD値の高いシアンのインク吐出用のノズル列とすることにより、ブラックのドットの白抜けを、OD値の高い色、すなわち、ブラックに近い色のインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、紙幅を検出し、使用しない範囲のノズルはノズルチェックを行わない。
画像の記録が指示された場合、幅検出部は、セットされている記録媒体11が40mm用紙であるか、80mm用紙であるかを検出する。次いで、ノズルチェック実行部27bは、ラインインクジェットヘッド12の各ノズルのうち、記録媒体11へ記録している間、記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定する。
記録領域の外側に位置しているノズルは、記録の際には使用しない。本実施形態では、40mm用紙がセットされた場合に、当該40mm用紙の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルが、予め、事前のシミュレーションにより特定されており、当該特定されたノズルを示す情報が、例えば、ノズルチェックに係るプログラム上に記述されている。80mm用紙についても同様である。このため、セットされている記録媒体11の幅を検出することにより、ノズルチェック実行部27bは、各幅の記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定可能である。
なお、左マージン、及び、右マージンが設定により変動可能に構成されている場合は、ノズルチェック実行部27bが、これらマージンの設定値に応じて、所定のアルゴリズムのプログラムを実行することにより、記録媒体11の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定するようにしてもよい。
特定したノズルについてはノズルチェックを行わない。これらノズルは、画像の記録に使用しないノズルであるため、仮にこれらノズルについて吐出不良が発生している場合であっても画像の印刷品質に悪影響は発生し得ず、これらノズルに対してノズルチェックをする必要がないからである。このように、本実施形態では、ノズルチェックにおいて、当該画像の記録に使用しないノズルについてはノズルチェックが行われない。このため、使用するノズルに対しては過不足無くノズルチェックが実行されてノズルチェック自体の精度の低下、信頼性の低下を抑制でき、さらに、ノズルチェックを実行すべきノズルの絶対数が削減され、ノズルチェックに要する時間の短縮化を実現できる。
【0051】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態について説明する。
本実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素については、共通の符号を付してその説明を省略する。
図8は、上流側ヘッドユニット17に設けられた記録ヘッドKH1と、下流側ヘッドユニット18に設けられた記録ヘッドKH2とを模式的に示す図である。これら記録ヘッドKH1、KH2は互いに対応する記録ヘッドである。すなわち、上流側ヘッドユニット17における記録ヘッドKH1の相対的な位置と、下流側ヘッドユニット18における記録ヘッドKH2との相対的な位置とは一致している。
記録ヘッドKH1には、搬送正方向YJ1aに向かって、順に、ブラックのブラックノズル列BL1、イエローのイエローノズル列YL1、及び、ライトマゼンタのライトマゼンタノズル列LL1が配置されている。また、記録ヘッドKH2には、搬送正方向YJ1aに向かって、順に、ブラックのブラックノズル列BL2、シアンのシアンノズル列CL2、及び、マゼンタのマゼンタノズル列ML2が配置されている。
本実施形態では、上流側ヘッドユニット17のブラックノズル列BL1と、下流側ヘッドユニット18のブラックノズル列BL2とが互いに補完関係にある。すなわち、ブラックのドットを形成する際は、双方のノズル列の対応するノズルからインクを吐出してドットを形成する。このように、上流側ヘッドユニット17と、下流側ヘッドユニット18とのそれぞれの対応する位置に、ブラックのノズル列を設け、ブラックのドットを形成する際は、互いに補完的にインクを吐出する構成のため、ブラックのドットの白抜けを、ブラックのインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
ノズルチェック処理の際は、図8の手順5に示すように、ブラックノズル列BL1を構成するノズルと、ブラックノズル列BL2を構成するノズルとについて同期をとってノズルチェックが行われ、ノズルチェックの対象となった双方のノズルのノズルチェックの結果に応じて、エラー処理、正常時対応処理、第1準正常時対応処理、及び、第2準正常時対応処理のうち適切な処理が選択的に実行される。
【0052】
また、本実施形態では、上流側ヘッドユニット17のライトマゼンタノズル列LL1と、下流側ヘッドユニット18のマゼンタノズル列ML2とが互いに補完関係にある。すなわち、いずれか一方のノズル列のノズルでドットを形成する場合は、他方のノズル列の対応するノズルから補完的にインクを吐出する。周知のとおり、ライトマゼンタと、マゼンタとは、色相が近い色である。
このように、上流側ヘッドユニット17と、下流側ヘッドユニット18とのそれぞれの対応する位置に、色相の近い色のノズル列を設け、ドットを形成する際は、互いに補完的にインクを吐出する構成のため、いずれか一方のノズル列のノズルによる白抜けを、色相の近い色のインクによって補完でき、印刷品質の低下を効果的に抑制できる。
ノズルチェック処理の際は、図8の手順6に示すように、ライトマゼンタノズル列LL1を構成するノズルと、マゼンタノズル列ML2とを構成するノズルとについて、同期をとってノズルチェックが行われ、ノズルチェックの対象となった双方のノズルのノズルチェックの結果に応じて、エラー処理、正常時対応処理、第1準正常時対応処理、及び、第2準正常時対応処理のうち適切な処理が選択的に実行される。
【0053】
<第3実施形態>
次いで、第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態に係る記録システム5の機能的構成を模式的に示すブロック図である。
図3と、図9との比較において明らかなように、本実施形態では、ホストコンピューター25のホスト側制御部45が、記録実行部27a、及び、ノズルチェック実行部27bのぞれぞれの機能ブロックを有している。この場合、ホスト側制御部45の記録実行部27aは、例えばプリンタードライバーの機能により、適宜ラインインクジェットプリンター1と通信して、記録媒体11への画像の記録を行わせる。また、ノズルチェック実行部27bは、適宜ラインインクジェットプリンター1と通信して上流側ノズルチェック機構43a、及び、下流側ノズルチェック機構43bを制御して、図5及び図6のフローチャートに準じた処理を実行させることにより、ノズルチェック処理を実行させる。
このように、ホストコンピューター25が記録実行部27a、及び、ノズルチェック実行部27bを備える構成であっても、上述した第1実施形態と同様、ノズルチェック処理の効率化を実現可能である。
【0054】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、ラインインクジェットヘッド12の構成を具体的に説明したが、この構成に限らない。例えば、上流側ヘッドユニット17、下流側ヘッドユニット18のそれぞれに3つの記録ヘッドが千鳥状に配置される構成であってもよく、また、ノズル列方向YJ2に延在する1つの記録ヘッドが配置される構成であってもよい。また、各ユニットにおけるノズル列の順番は、上述した実施形態で説明したものに限らず、ラインインクジェットヘッド12の構成に応じて、設計の思想に応じて、設計上の制限に応じて、適宜、設定することができる。
また例えば、図3、図8に示す各機能ブロックはハードウェアとソフトウェアの協働により任意に実現可能であり、特定のハードウェア構成を示唆するものではない。
また例えば、制御部27や、ホスト側制御部45の機能を、ラインインクジェットプリンター1や、ホストコンピューター25に外部接続される別の装置に持たせるようにしてもよい。
また、外部の記憶媒体に記憶させたプログラムを実行することにより、図で示した各フローチャートの各ステップを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ラインインクジェットプリンター(記録装置)、11…記録媒体、12…ラインインクジェットヘッド、17…上流側ヘッドユニット(第1記録ヘッド部)、18…下流側ヘッドユニット(第2記録ヘッド部)、25…ホストコンピューター(制御装置)、27…制御部、27a…記録実行部、27b…ノズルチェック実行部、43a…上流側ノズルチェック機構(第1ノズルチェック機構)、43b…下流側ノズルチェック機構(第2ノズルチェック機構)、45…ホスト側制御部、BL1、BL2、KN1、KN2、KN3、KN4…ブラックノズル列(ノズル列)、CL2、CN1、CN2、CN3、CN4…シアンノズル列(ノズル列)、ML2、MN1、MN2、MN3、MN4…マゼンタノズル列(ノズル列)、YL1、YN1、YN2、YN3、YN4…イエローノズル列、LL1…ライトマゼンタノズル列(ノズル列)、CP1、CP2、CP3…シアンノズル(ノズル)、KK1、KK2、KK3…ブラックノズル(ノズル)、YJ1…搬送方向、YJ2…ノズル列方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、
前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、
前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、
前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、
前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、
前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1記録ヘッド部は、第1の色に対応する第1ノズル列を有し、
前記第2記録ヘッド部は、前記第1の色に補完可能な第2の色に対応する第2ノズル列を有し、
前記ノズルチェック実行部は、
前記第1ノズル列の第1ノズルと、
前記第2ノズル列において、前記第1ノズルと対応する位置に配置された第2ノズルと、について、
両方のノズルに吐出不良が検出された場合、両方のノズルに吐出不良が検出されなかった場合、及び、いずれか一方に吐出不良が検出された場合のそれぞれについて異なる処理を実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ノズルチェック実行部は、
ノズルチェック処理に際し、前記第1ノズルに対するノズルチェックと、前記第2ノズルに対するノズルチェックとを、同期をとって実行することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1ノズル列の前記第1の色はブラックとし、前記第2ノズル列の前記第2の色はOD値の高い色とし、又は、
前記第1の色と、前記第2の色のそれぞれを、ブラックとし、又は、
前記第1の色と、前記第2の色とを、それぞれ、色相の近い色のインクとしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体の幅を検出する幅検出部を備え、
前記ノズルチェック実行部は、
前記幅検出部により検出された前記記録媒体の幅に基づいて、前記第1記録ヘッド部が有するノズル列、及び、前記第2記録ヘッド部が有するノズル列の中で、前記記録媒体の記録領域が延在する範囲の外側に位置するノズルを特定し、前記特定したノズルについてはノズルチェックを行わないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、
前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、
前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、
前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、
前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、を備える記録装置の制御方法であって、
前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行し、ノズルチェック処理の結果に応じて対応する処理を実行することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交わる方向であるノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第1記録ヘッド部と、
前記第1記録ヘッド部から前記搬送方向に離間して配置され、前記ノズル列方向に延在する複数のノズル列が配置された第2記録ヘッド部と、
前記第1記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第1ノズルチェック機構と、
前記第2記録ヘッド部が有するノズル列を構成するノズルのノズルチェックを行うための第2ノズルチェック機構と、を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記搬送部により前記記録媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、少なくとも前記第1記録ヘッド部、及び、前記第2記録ヘッド部のいずれか一方からインクを吐出して記録する記録実行部と、
前記第1ノズルチェック機構によるノズルチェックと、前記第2ノズルチェック機構によるノズルチェックとの少なくとも一部を同時に実行させて、ノズルチェック処理を実行するノズルチェック実行部と、として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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