記録装置、記録装置の製造方法
【課題】 可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置の製造工程において、記録装置の製造効率が低下する虞を低減させる。
【解決手段】 第1カットワッシャー41は、トレイ支持部材26の第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291から手差し給送用トレイ23の凸部232が抜けることを防止する。第2カットワッシャー42は、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262から回転軸27が抜けることを防止する。対向配置された2つのトレイ支持部材26は、第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42によって相対的な位置関係が保持される。つまり手差し給送装置20は、第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42によって、独立した一の単位体として組み立てることができる。
【解決手段】 第1カットワッシャー41は、トレイ支持部材26の第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291から手差し給送用トレイ23の凸部232が抜けることを防止する。第2カットワッシャー42は、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262から回転軸27が抜けることを防止する。対向配置された2つのトレイ支持部材26は、第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42によって相対的な位置関係が保持される。つまり手差し給送装置20は、第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42によって、独立した一の単位体として組み立てることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンター等の記録装置には、普通紙や写真用紙等の被記録材を記録実行手段へ給送するための自動給送装置が設けられている。しかしボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等は、撓ませることができないため、一般的な自動給送装置では記録実行手段へ給送することが困難な場合が多い。このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、記録実行後の被記録材が排出される排出口から排出経路を介して、ボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等を手差し挿入により記録実行手段へ給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。このような手差し給送装置を備えた記録装置によれば、自動給送装置では給送することが困難なボード紙や厚紙等の被記録材(以下、「厚紙等」という。)にも記録を実行することが可能になる。また、ディスク用トレイに装着した光ディスクのレーベル面に記録を実行することも可能になる。
【0003】
上記のような手差し給送装置を備えた記録装置の一例としては、記録装置内部に退避した状態と被記録材の排出口から進出した状態とをとり得るように、スライド可能に手差し給送用トレイが設けられたものが公知である(例えば特許文献1を参照)。例えば特許文献1に開示されている記録装置の手差し給送用トレイは、記録装置内部に退避した状態でプッシュラッチ機構により係止されている。手差し給送時には、記録装置内部に退避した状態にある手差し給送用トレイの先端を押動する操作をユーザーが行うことによって、プッシュラッチ機構による手差し給送用トレイの係止が解除される。それによって、付勢手段の付勢力により、被記録材の排出口から進出した状態となる位置へ手差し給送用トレイが変位し、その手差し給送用トレイによって、排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面が構成される。ユーザーは、その手差し給送用トレイの載置面に厚紙等を載置するとともに、その載置面に沿って厚紙等を記録装置内部へ向けて押し入れることによって、排出口から排出経路を介して厚紙等を手差し給送することを簡単かつ正確に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−088657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置は、手差し給送用トレイを使用することにより簡単かつ正確に厚紙等の手差し給送を行うことできるとともに、使用しないときには手差し給送用トレイを記録装置にコンパクトに収納することができるという利点がある。
【0006】
しかしながら可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置は、記録装置の製造ラインにおいて、手差し給送装置の組み立てと手差し給送装置の記録装置への組付けが同時に行われて製造されることが多い。そのため、手差し給送装置の機能の追加や改良等で手差し給送装置の部品点数が増加したり構造が複雑化したりすると、それによって記録装置の製造ラインにおける製造工程が増加したり複雑化したりすることとなる。したがって、手差し給送装置の組み立て及び組み付け工程において作業の遅延等が生ずる虞が高まることとなり、それによって記録装置の製造ライン全体の製造工程に遅延等が生ずる虞が高まることとなる結果、記録装置の製造効率が低下する虞が生ずる。
【0007】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、本発明の目的は、可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置の製造工程において、記録装置の製造効率が低下する虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成であり、前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材が設けられている、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
対向配置された二つの支持部材は、支持部材の手差し給送用トレイガイド孔から手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材によって、その相対的な位置関係が保持される。それによって本発明に係る手差し給送装置は、独立した一の単位体として組み立てることが可能になるので、その組み立て工程を記録装置の製造ラインから分離独立させることができる。つまり記録装置の製造ラインとは別個の独立した製造ラインで、記録装置の組み立てと並行して手差し給送装置の組み立て作業を行うことができる。したがって記録装置の製造ラインでは、独立した一の単位体として組み立てた手差し給送装置を記録装置に組み付ける作業だけ行われることになる。それによって、手差し給送装置の組み立て作業に遅延等が生じても記録装置の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0010】
これにより本発明の第1の態様によれば、可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置の製造工程において、記録装置の製造効率が低下する虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、前記第2位置から前記第1位置への前記手差し給送用トレイの変位に連動して前記排出経路に進出し、前記第1位置にある前記手差し給送用トレイと前記排出装置との間に被記録材の支持面を構成する補助トレイを有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記補助トレイが配設され、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の補助トレイガイド孔に挿通され、前記補助トレイガイド孔に沿って前記補助トレイが変位する構成である、ことを特徴とした記録装置である。
【0012】
可動式の手差し給送用トレイを設けた従来の手差し給送装置は、その構造上、排出装置より排出方向の下流側に手差し給送用トレイが被記録材の支持面を構成する状態において、その手差し給送用トレイと被記録材の排出装置との間隔が広くなりやすい。これは、手差し給送用トレイが可動範囲において排出装置や他の構成要素に干渉することを回避しつつ、手差し給送用トレイの良好な操作感を実現する上では、この間隔を小さくすることが実際上困難な場合が多いことによるものである。そのため厚紙等の被記録材を手差し給送する際には、その厚紙等の被記録材の先端が手差し給送用トレイと排出装置との間に入り込んで引っ掛かってしまい、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞がある。この手差し給送時における被記録材の引っ掛かりは、腰が弱く先端の垂れ下がりが生じやすい被記録材を手差し給送する際に特に生じやすくなる。
【0013】
本発明の第2の態様に記載の記録装置は、手差し給送用トレイが排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する状態(第1位置に変位させた状態)においては、補助トレイによって、その手差し給送用トレイと排出装置との間に被記録材の支持面が構成される。それによって、被記録材を手差し給送する際に、その被記録材が手差し給送用トレイと被記録材の排出装置との間に引っ掛かってしまうことを防止することができる。したがって、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができる。
【0014】
また補助トレイは、第2位置から第1位置への手差し給送用トレイの変位に連動して、被記録材の排出経路(手差し給送時には手差し給送経路となる経路)に進出する。すなわち、手差し給送用トレイを用いて被記録材の手差し給送を行わない状態(手差し給送用トレイを第2位置に変位させた状態)では、補助トレイは排出経路から退避した位置にあるため、排出装置による被記録材の排出が補助トレイによって妨げられることはない。
【0015】
そして対向配置された二つの支持部材は、支持部材の手差し給送用トレイガイド孔から手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材によって、その相対的な位置関係が保持される。それによって、支持部材の補助トレイガイド孔から補助トレイの凸部が抜けることも防止することができる。つまり、手差し給送用トレイのみならず、補助トレイも含めて、独立した一の単位体として手差し給送装置を組み立てることが可能になる。したがって本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様と同様に、手差し給送装置の組み立て作業に遅延等が生じても記録装置の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、対向配置された二つの前記支持部材を外方へ付勢する付勢機構を有し、前記付勢機構の付勢力によって、前記抜け防止部材と前記支持部材とが係合する部分を支点として、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部と前記補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの前記支持部材を内方へ付勢する力が作用する、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、補助トレイの両側面に設けられた凸部と補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの支持部材を内方へ付勢する力が作用することによって、補助トレイガイド孔から補助トレイの凸部が抜けることをより確実に防止することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記抜け防止部材は、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部に取り付けられる弾性を有するカットワッシャーである、ことを特徴とした記録装置である。
このように、弾性を有するカットワッシャーを抜け防止部材として採用することによって、抜け防止部材を設けることによるコスト増を極めて小さくすることができるとともに、抜け防止部材を設けることによる組み立て作業工程の増加も極めて小さくすることができる。したがって、本発明に係る記録装置を極めて低コストで実現することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前述した第4の態様に記載の記録装置において、前記支持部材は、前記カットワッシャーが係合する溝が前記手差し給送用トレイガイド孔の周囲に形成されている、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が支持部材の外側に突出する量をより小さくすることができるので、手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が記録装置側の部品と干渉する虞を低減させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備え、前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成である記録装置の製造方法であって、前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材により、独立した一の単位体として前記手差し給送装置を組み立てる工程と、組み立てられた前記手差し給送装置を前記記録装置に組み付ける工程と、を含む、ことを特徴とした記録装置の製造方法である。
本発明の第6の態様によれば、前述した本発明の第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェットプリンターの要部外観斜視図。
【図2】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図3】斜め前方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図4】斜め前方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図5】斜め後方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図6】斜め後方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図7】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図8】手差し給送装置の斜視図。
【図9】手差し給送装置の左側部を拡大図示した斜視図。
【図10】手差し給送用トレイを裏面側から拡大図示した斜視図。
【図11】手差し給送装置の左側部の分解斜視図。
【図12】インクジェットプリンターの要部斜視図。
【図13】手差し給送装置の組み付け構造の左側部を拡大図示した斜視図。
【図14】手差し給送装置の組み付け構造の右側部を拡大図示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0022】
<インクジェットプリンター1の構成>
まず、「記録装置」としてのインクジェットプリンター1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、インクジェットプリンター1の要部外観斜視図である。
インクジェットプリンター1の外装10の前面側には、開閉カバー2、操作パネル4及び排出口5が設けられている。排出口5は、記録実行後の「被記録材」としての記録紙Pが排出され、開閉カバー2は、その排出口5を開閉可能に設けられている。操作パネル4は、インクジェットプリンター1を操作するための複数の操作ボタン及びインクジェットプリンター1の操作状態等を表示する表示部とを含む。
【0024】
排出口5の内側の下方には、第1トレイ部21及び第2トレイ部22からなる多段スライド構造体が配設されており、開閉カバー2は、その第2トレイ部22の先端に揺動可能に支持されている。記録紙Pに記録を実行する際には、まず開閉カバー2を符号Aで示した方向へ開き、その状態から開閉カバー2を符号Bで示した方向へ引くことにより第1トレイ部21及び第2トレイ部22を符号Bで示した方向へ引き出した状態とする。この状態おいて、排出口5から排出される記録実行後の記録紙Pは、開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22により構成される排出トレイに積重される。
【0025】
また排出口5の上方には、手差し給送用トレイ23が変位可能に設けられている。「手差し給送装置」を構成する手差し給送用トレイ23は、排出口5から記録紙Pの排出経路を介して記録実行手段へ厚紙等の記録紙Pを手差しで給送する際に使用され、符号Cで示した方向へ引き出した状態で使用可能な状態となる。
【0026】
図2は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
インクジェットプリンター1は、記録紙Pに記録を実行する「記録実行手段」として、搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、記録紙支持部材13及びキャリッジ31を備えている。搬送駆動ローラー11は、外周面に高摩擦被膜が施されており、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー12は、従動回転可能にローラーホルダー121に軸支され、ねじりコイルバネ122のバネ力により搬送駆動ローラー11に当接する方向へ付勢されている。記録紙支持部材13は記録紙Pを裏面側から支持する。キャリッジ31の底部に設けられた記録ヘッド311のヘッド面と記録紙Pの記録面(記録が実行される面。以下同じ。)との間隔は、この記録紙支持部材13によって一定の間隔に維持される。
【0027】
キャリッジ31は、底部に記録ヘッド311が設けられており、キャリッジガイド軸32及びガイドフレーム33によって主走査方向Xへ往復動可能に支持されている。ここで主走査方向Xは、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面に沿って副走査方向Y(記録紙Pの搬送方向)と交差する方向である。キャリッジガイド軸32は、主走査方向Xに沿って配設された金属軸体からなる部品であり、キャリッジ31の軸受部312を軸支する。ガイドフレーム33は、金属板を曲げ加工等して形成された部品であり、主走査方向Xに沿って配設され、キャリッジ31の被当接部313と摺接係合する。キャリッジ31の背面には、公知のリニアスケールセンサー314が配設されている。
【0028】
キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の駆動プーリー341と従動プーリー35との間に掛架された無端ベルト(図示せず)が連結されている。キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の回転駆動力で無端ベルトを双方向回転させることによって主走査方向Xへ往復動する。記録ヘッド311は、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面にヘッド面が対面するようにキャリッジ31に搭載されている。記録ヘッド311のヘッド面には、記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成するための多数の噴射ノズルが配設されている(図示せず)。記録紙Pの記録面に噴射するためのインクは、インクチューブ36を介して記録ヘッド311に供給される。
【0029】
インクジェットプリンター1は、記録実行後の記録紙Pを排出する「排出装置」として、第1排出駆動ローラー14、第2排出駆動ローラー15、第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18を備えている。
第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18は、従動回転可能にローラー支持フレーム24に軸支されている。第1排出従動ローラー16は、第1排出駆動ローラー14より上流側に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面へ案内する。第2排出従動ローラー17は、第1排出駆動ローラー14の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面に当接させる。第3排出従動ローラー18は、第2排出駆動ローラー15の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第2排出駆動ローラー15の外周面に当接させる。
【0030】
このような構成のインクジェットプリンター1において記録紙Pは、搬送駆動ローラー11と搬送従動ローラー12とで挟持され、搬送駆動ローラー11の駆動回転によって記録紙支持部材13上を副走査方向Yへ搬送される。記録紙支持部材13上の記録紙Pは、キャリッジ31が主走査方向Xへ往復動しながら記録ヘッド311のヘッド面から記録面にインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラー11の駆動回転により所定の搬送量で副走査方向Yへ搬送される動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。そして、記録面に記録が実行された記録紙Pは、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15の駆動回転によって、副走査方向Yへ搬送されて排出口5から排出され、排出トレイ(開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22)に積重される。これらの一連の記録制御は、公知のマイコン制御回路を有する制御装置(図示せず)により実行される。
【0031】
<手差し給送装置20>
本発明に係るインクジェットプリンター1の手差し給送装置20について、図3〜図7を参照しながら説明する。
図3及び図4は、斜め前方から観たインクジェットプリンター1の要部斜視図であり、図3は手差し給送用トレイ23が内部に収容された状態、図4は手差し給送用トレイ23が排出口5から進出して使用可能な状態をそれぞれ図示したものである。図5及び図6は、斜め後方から観たインクジェットプリンター1の要部斜視図であり、図5は手差し給送用トレイ23が内部に収容された状態、図6は手差し給送用トレイ23が排出口5から進出して使用可能な状態をそれぞれ図示したものである。図7は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
【0032】
まず手差し給送装置20の構成について説明する。手差し給送装置20は、手差し給送用トレイ23、補助トレイ25及び2つのトレイ支持部材26を有している。
【0033】
手差し給送用トレイ23は、厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際にその記録紙Pを支持する支持面部231を有している。手差し給送用トレイ23の主走査方向Xの両端には、凸部232が形成されている。また、手差し給送用トレイ23には回転軸27が軸支されている。回転軸27は、手差し給送用トレイ23の主走査方向Xの両端から突出しており、その両端にはピニオン歯車28が取り付けられている。
【0034】
補助トレイ25は、支持面部251、第1腕部253及び第2腕部256を有している。支持面部251は、厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際にその記録紙Pを支持する面である。支持面部251には、2つの補助ローラー252が従動回転可能に軸支されている。第1腕部253は、支持面部251の下側に支持面部251と交差する方向へ延出している。第2腕部256は、支持面部251に略沿う方向へ第1腕部253から延出しており、先端近傍に凸部257が形成されている。第1腕部253と第2腕部256の間には、バネ係止部254が形成されている。
【0035】
「支持部」としてのトレイ支持部材26は、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25の主走査方向Xの両外側に配設されている。トレイ支持部材26は、ラック261、第1ガイド孔262、第2ガイド孔263、第3ガイド孔264、バネ係止部265及び補助トレイ係止部266を有している。第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263は、手差し給送用トレイ23を変位可能に支持する。ラック261は、第1ガイド孔262の近傍に第1ガイド孔262に沿って形成されている。第3ガイド孔264は、補助トレイ25を変位可能に支持する。補助トレイ係止部266は、補助トレイ25の可動範囲において補助トレイ25の第1腕部253が当接し、その状態で補助トレイ25の姿勢を規制するために設けられている。
【0036】
手差し給送用トレイ23は、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262に回転軸27が挿通され、トレイ支持部材26の第2ガイド孔263に凸部232が挿通された状態で、トレイ支持部材26に支持されている。つまり手差し給送用トレイ23は、第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263の形状に沿って変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。それによって手差し給送用トレイ23は、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15より副走査方向Yの下流側に記録紙Pの支持面が支持面部231により構成される位置(以下、「第1位置」という。)と所定の収納位置(以下、「第2位置」という。)とをとり得るように変位可能に支持される。
【0037】
またピニオン歯車28は、トレイ支持部材26のラック261と噛合している。つまり、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263の形状に沿って手差し給送用トレイ23が変位する際には、2つのピニオン歯車28及び回転軸27が一体となって符号Eで示した方向へ回転しながら転動する。それによって、手差し給送用トレイ23が変位する際の負荷が軽減され、手差し給送用トレイ23を滑らかに変位させることが可能になる。
【0038】
補助トレイ25は、トレイ支持部材26の第3ガイド孔264に第1腕部253の凸部257が挿通された状態でトレイ支持部材26に支持されている。つまり補助トレイ25は、第3ガイド孔264の形状に沿って変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。また、補助トレイ25のバネ係止部254とトレイ支持部材26のバネ係止部265との間には、「付勢手段」としてのコイルバネ255が掛架されている。補助トレイ25は、そのコイルバネ255のバネ力によって符号Fで示した方向へ付勢されている。つまりコイルバネ255は、第1位置にある手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に進出する方向へ補助トレイ25を付勢している。
【0039】
つづいて手差し給送装置20の動作について説明する。
【0040】
手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態(図3、図5及び図7(a)に図示した状態)では、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15による記録実行後の記録紙Pの排出経路Pa(手差し給送時には手差し給送経路となる経路)より上方に手差し給送用トレイ23が退避した状態となる。この手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態は、図示していない公知のプッシュラッチ機構を利用したロック機構により保持される。またこの状態においては、コイルバネ255のバネ力に抗して、手差し給送用トレイ23の凸部232が補助トレイ25を上方へ押し上げた状態となる。それによって補助トレイ25は、記録実行後の記録紙Pの排出経路Paより上方に退避した位置に係止された状態となる(図7(a))。
【0041】
すなわち手差し給送用トレイ23が所定の収納位置(第2位置)にある状態では、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25は、いずれも記録実行後の記録紙Pの排出経路Paより上方に退避した状態となる。したがって、この状態においては、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25によって妨げられることなく、記録実行後の記録紙Pの排出が可能な状態となる。
【0042】
手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態から、手差し給送用トレイ23を押し込むプッシュ操作を行うことによって、プッシュラッチ機構を利用したロック機構のロックが解除される。手差し給送用トレイ23は、補助トレイ25を介して作用するコイルバネ255のバネ力によって、符号Cで示した方向へ変位して第1位置へ移動する。それによって、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15より副走査方向Yの下流側に、手差し給送用トレイ23の支持面部231により記録紙Pの支持面が構成される(図4、図6及び図7(b)に図示した状態)。この状態においては、その手差し給送用トレイ23の支持面部231に厚紙等の記録紙Pを載置するとともに、その支持面部231に沿って厚紙等の記録紙Pをインクジェットプリンター1の内部へ向けて手差し給送方向YRへ押し入れることが可能な状態となる。それによって、排出口5から排出経路Paを介して厚紙等の記録紙Pを手差し給送することを簡単かつ正確に行うことができる。
【0043】
また、その手差し給送用トレイ23の変位により、手差し給送用トレイ23の凸部232による補助トレイ25の係止が解除される。それによって、コイルバネ255のバネ力により補助トレイ25が符号Dで示した方向へ変位して排出経路Paに進出する。すなわち、第1位置にある手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に、補助トレイ25の支持面部251により記録紙Pの支持面が構成される。それによって、厚紙等の記録紙Pを手差し給送方向YRへ押し入れて手差し給送する際に、その記録紙Pが手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に引っ掛かってしまうことを防止することができる。
【0044】
このようにして本発明によれば、手差し給送用トレイ23を介して記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pに折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができる。
【0045】
また補助トレイ25の支持面部251には、当該実施例のように、2つの補助ローラー252を従動回転可能に設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような補助ローラー252を設けることによって、手差し給送用トレイ23を介して記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pに折れ曲がりや損傷等が生ずる虞をさらに低減させることができる。
【0046】
さらに、排出経路Paから退避した状態(図7(a))にある補助トレイ25は、記録実行後の記録紙Pが排出経路Paに沿って副走査方向Yへ排出される際に、その排出される記録紙Pのガイド部材として機能させることもできる。つまり、排出経路Paから退避した位置にある補助トレイ25の裏面(支持面部251の裏側)によって、例えば上向きの反りが生じていることに起因して本来の排出経路Paから逸脱しようとする記録実行後の記録紙Pを本来の排出経路Paへ案内することもできる。より具体的には、例えば補助トレイ25の退避位置を排出経路Paに干渉しない範囲で排出経路Paの上側直近に設定すればよい。それによって、記録紙Pが本来の排出経路Paから逸脱して紙ジャム等が生ずる虞を低減させることができる。さらに、補助トレイ25の支持面部251及びその裏面のいずれにおいても記録紙Pに接触可能に前記の補助ローラー252を配設し、本来の排出経路Paから逸脱しようとする記録紙Pが補助ローラー252に接して本来の排出経路Paへ案内されるようにしても良い。
【0047】
つづいて手差し給送装置20のより詳細な構成について、図8〜図11を参照しながら説明する。
図8は、手差し給送装置20の斜視図である。図9は、手差し給送装置20の左側部を拡大図示した斜視図である。図10は、手差し給送用トレイ23を裏面側から拡大図示した斜視図である。図11は、手差し給送装置20の左側部の分解斜視図である。
【0048】
ローラー支持フレームガイド部材29は、第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18が軸支されているローラー支持フレーム24(図2)を手差し給送用トレイ23の変位に連動して変位させるための部材である。ローラー支持フレームガイド部材29は、トレイ支持部材26の支持面268に沿って符号Gで示した方向へ変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。ローラー支持フレームガイド部材29には、略L字形状の長孔291及び長孔292が形成されている。
【0049】
トレイ支持部材26の第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291には、手差し給送用トレイ23の凸部232が挿通されている。また、トレイ支持部材26の第4ガイド孔267及びローラー支持フレームガイド部材29の長孔292には、ローラー支持フレーム24の主走査方向Xの両端に設けられた凸部(図示せず)が挿通されている。したがって、手差し給送用トレイ23が第2ガイド孔263に沿って変位する際に、ローラー支持フレームガイド部材29が符号Gで示した方向へ変位する。そして、そのローラー支持フレームガイド部材29の変位によって、第4ガイド孔267の形状に沿ってローラー支持フレーム24が変位する。その結果、ローラー支持フレーム24は、手差し給送用トレイ23を押し込んだ状態では、排出経路Paに進出し、手差し給送用トレイ23を引き出した状態では、排出経路Paから退避(レリース)することとなる。
【0050】
手差し給送装置20は、手差し給送用トレイ23の両端に設けられた凸部232の各々の端部に、「抜け防止部材」としての第1カットワッシャー41が設けられている。この第1カットワッシャー41は、トレイ支持部材26の「手差し給送用トレイガイド孔」としての第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291から手差し給送用トレイ23の凸部232が抜けることを防止するものである。また手差し給送装置20は、回転軸27の両端に、「抜け防止部材」としての第2カットワッシャー42が設けられている。この第2カットワッシャー42は、トレイ支持部材26の「手差し給送用トレイガイド孔」としての第1ガイド孔262から回転軸27が抜けることを防止するものである。
【0051】
第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42は、弾性を有する材料で形成されている。このように「抜け防止部材」として弾性を有するカットワッシャーを採用することによって、「抜け防止部材」を設けることによるコスト増を極めて小さくすることができるとともに、「抜け防止部材」を設けることによる組み立て作業工程の増加も極めて小さくすることができる。したがって、本発明に係るインクジェットプリンター1を極めて低コストで実現することができる。
【0052】
また第1カットワッシャー41は、ローラー支持フレームガイド部材29の長孔291に沿って長孔291の周囲に形成された溝293と係合する。つまり第1カットワッシャー41は、ローラー支持フレームガイド部材29の溝293の底面に当接する。それによって、手差し給送用トレイ23の凸部232がトレイ支持部材26の外側に突出する量をより小さくすることができる。したがって、手差し給送用トレイ23の両側面に設けられた凸部232がインクジェットプリンター1側の部品(例えば後述するサイドフレーム等)と干渉する虞を低減させることができる。
【0053】
対向配置された2つのトレイ支持部材26は、この2つの第1カットワッシャー41及び2つの第2カットワッシャー42によって相対的な位置関係が保持される。それによって、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263に手差し給送用トレイ23が支持された状態が保持される。またトレイ支持部材26の「補助トレイガイド孔」としての第3ガイド孔264に補助トレイ25が支持された状態が保持される。さらにトレイ支持部材26の第4ガイド孔267にローラー支持フレーム24が支持された状態が保持される。すなわち、手差し給送用トレイ23、ローラー支持フレーム24及び補助トレイ25が2つのトレイ支持部材26に支持された状態が保持される。つまり手差し給送装置20は、この2つの第1カットワッシャー41及び2つの第2カットワッシャー42によって、独立した一の単位体として組み立てることができる。
【0054】
回転軸27は、手差し給送用トレイ23の側部233に形成された貫通孔及び手差し給送用トレイ23の裏面側に形成された複数の軸受部234により手差し給送用トレイ23に軸支されている。回転軸27には、「付勢機構」を構成するワッシャー271、272、ワッシャー止め部材273及びコイルバネ274が設けられている。ワッシャー271、272は回転軸27に軸支されている。ワッシャー271は、手差し給送用トレイ23の裏側の係止壁面235に当接している。ワッシャー272は、回転軸27に形成された周溝275に嵌合しているワッシャー止め部材273に係止されている。コイルバネ274は、回転軸27に軸支された状態で、ワッシャー271とワッシャー272との間に縮設されている。
【0055】
コイルバネ274のバネ力によって、手差し給送用トレイ23が符号Gで示した方向へ付勢され、その結果、対向配置された2つのトレイ支持部材26は外方へ付勢されることとなる。それによって、補助トレイ25の凸部257と第3ガイド孔264とが係合する部分には、第1カットワッシャー41で抜け止めされている部分(第1カットワッシャー41とトレイ支持部材26とが係合する部分)を支点として、対向配置された2つのトレイ支持部材26を内方へ付勢する力が作用する。それによって、第3ガイド孔264から補助トレイ25の凸部257が抜けることをより確実に防止することができる。
【0056】
つづいてインクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造について、図12〜図14を参照しながら説明する。
図12は、インクジェットプリンター1の要部斜視図であり、手差し給送装置20の組み付け構造の全体を図示したものである。図13は、インクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造の左側部を拡大図示した斜視図である。図14は、インクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造の右側部を拡大図示した斜視図である。
【0057】
インクジェットプリンター1の骨格の主要部は、板金加工により形成されたメインフレーム6、センターフレーム7、左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9により構成される。センターフレーム7はメインフレーム6にネジ止め固定されている。左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9は、メインフレーム6とセンターフレーム7にネジ止め固定されてメインフレーム6及びセンターフレーム7に支持されている。左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9には、前述した搬送駆動ローラー11や記録紙支持部材13が支持される。
【0058】
独立した一の単位体として組み立てられた手差し給送装置20は、インクジェットプリンター1の左サイドフレーム8と右サイドフレーム9にネジ止め固定されて組み付けられる。より具体的には、手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26が左サイドフレーム8にネジ止め固定され、手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26が右サイドフレーム9にネジ止め固定される。
【0059】
手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26は、左サイドフレーム8の矩形孔81に係止凸部269が係合し、左サイドフレーム8の係止端部82に当接部26aが当接し、左サイドフレーム8の円形孔83に位置決め凸部26bが係合して位置決めされる。そして、左サイドフレーム8の孔84に挿通され、トレイ支持部材26に形成されたネジ孔(図示せず)に螺合するネジ85によって、手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26が左サイドフレーム8に固定される(図13)。
【0060】
手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26は、回転軸27の右端部、ピニオン歯車28及びラック261が右サイドフレーム9の孔94を通じて外側に突出した状態で、位置決め凸部26c、位置決め凸部26d、位置決め凸部26eが右サイドフレーム9の円形孔91、円形孔92、円形孔93に各々係合して位置決めされる。そして、右サイドフレーム9の孔95、孔96に挿通され、トレイ支持部材26に形成されたネジ孔(図示せず)に螺合するネジ97、ネジ98によって、手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26が右サイドフレーム9に固定される(図14)。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、手差し給送装置20の組み立て工程をインクジェットプリンター1の製造ラインから分離独立させることができる。つまりインクジェットプリンター1の製造ラインとは別個の独立した製造ラインで、インクジェットプリンター1の組み立てと並行して手差し給送装置20の組み立て作業を行うことができる。したがってインクジェットプリンター1の製造ラインでは、独立した一の単位体として組み立てた手差し給送装置20をインクジェットプリンター1に組み付ける作業だけ行われることになる。それによって、手差し給送装置20の組み立て作業に遅延等が生じてもインクジェットプリンター1の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0062】
これにより本発明によれば、可動式の手差し給送用トレイ23を設けた手差し給送装置20を備えたインクジェットプリンター1の製造工程において、インクジェットプリンター1の製造効率が低下する虞を低減させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 インクジェットプリンター、8 左サイドフレーム、9 右サイドフレーム、20 給送装置、23 給送用トレイ、231 支持面部、232 凸部、233 側部、234 軸受部、235 係止壁面、24 ローラー支持フレーム、25 補助トレイ、26 トレイ支持部材、26a 当接部、26b〜26e 位置決め凸部、27 回転軸、28 ピニオン歯車、29 ローラー支持フレームガイド部材、31 キャリッジ、41 第1カットワッシャー、42 第2カットワッシャー、P 記録紙、Pa 排出経路、X 主走査方向、Y 副走査方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンター等の記録装置には、普通紙や写真用紙等の被記録材を記録実行手段へ給送するための自動給送装置が設けられている。しかしボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等は、撓ませることができないため、一般的な自動給送装置では記録実行手段へ給送することが困難な場合が多い。このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、記録実行後の被記録材が排出される排出口から排出経路を介して、ボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等を手差し挿入により記録実行手段へ給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。このような手差し給送装置を備えた記録装置によれば、自動給送装置では給送することが困難なボード紙や厚紙等の被記録材(以下、「厚紙等」という。)にも記録を実行することが可能になる。また、ディスク用トレイに装着した光ディスクのレーベル面に記録を実行することも可能になる。
【0003】
上記のような手差し給送装置を備えた記録装置の一例としては、記録装置内部に退避した状態と被記録材の排出口から進出した状態とをとり得るように、スライド可能に手差し給送用トレイが設けられたものが公知である(例えば特許文献1を参照)。例えば特許文献1に開示されている記録装置の手差し給送用トレイは、記録装置内部に退避した状態でプッシュラッチ機構により係止されている。手差し給送時には、記録装置内部に退避した状態にある手差し給送用トレイの先端を押動する操作をユーザーが行うことによって、プッシュラッチ機構による手差し給送用トレイの係止が解除される。それによって、付勢手段の付勢力により、被記録材の排出口から進出した状態となる位置へ手差し給送用トレイが変位し、その手差し給送用トレイによって、排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面が構成される。ユーザーは、その手差し給送用トレイの載置面に厚紙等を載置するとともに、その載置面に沿って厚紙等を記録装置内部へ向けて押し入れることによって、排出口から排出経路を介して厚紙等を手差し給送することを簡単かつ正確に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−088657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置は、手差し給送用トレイを使用することにより簡単かつ正確に厚紙等の手差し給送を行うことできるとともに、使用しないときには手差し給送用トレイを記録装置にコンパクトに収納することができるという利点がある。
【0006】
しかしながら可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置は、記録装置の製造ラインにおいて、手差し給送装置の組み立てと手差し給送装置の記録装置への組付けが同時に行われて製造されることが多い。そのため、手差し給送装置の機能の追加や改良等で手差し給送装置の部品点数が増加したり構造が複雑化したりすると、それによって記録装置の製造ラインにおける製造工程が増加したり複雑化したりすることとなる。したがって、手差し給送装置の組み立て及び組み付け工程において作業の遅延等が生ずる虞が高まることとなり、それによって記録装置の製造ライン全体の製造工程に遅延等が生ずる虞が高まることとなる結果、記録装置の製造効率が低下する虞が生ずる。
【0007】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、本発明の目的は、可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置の製造工程において、記録装置の製造効率が低下する虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成であり、前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材が設けられている、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
対向配置された二つの支持部材は、支持部材の手差し給送用トレイガイド孔から手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材によって、その相対的な位置関係が保持される。それによって本発明に係る手差し給送装置は、独立した一の単位体として組み立てることが可能になるので、その組み立て工程を記録装置の製造ラインから分離独立させることができる。つまり記録装置の製造ラインとは別個の独立した製造ラインで、記録装置の組み立てと並行して手差し給送装置の組み立て作業を行うことができる。したがって記録装置の製造ラインでは、独立した一の単位体として組み立てた手差し給送装置を記録装置に組み付ける作業だけ行われることになる。それによって、手差し給送装置の組み立て作業に遅延等が生じても記録装置の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0010】
これにより本発明の第1の態様によれば、可動式の手差し給送用トレイを設けた手差し給送装置を備えた記録装置の製造工程において、記録装置の製造効率が低下する虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、前記第2位置から前記第1位置への前記手差し給送用トレイの変位に連動して前記排出経路に進出し、前記第1位置にある前記手差し給送用トレイと前記排出装置との間に被記録材の支持面を構成する補助トレイを有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記補助トレイが配設され、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の補助トレイガイド孔に挿通され、前記補助トレイガイド孔に沿って前記補助トレイが変位する構成である、ことを特徴とした記録装置である。
【0012】
可動式の手差し給送用トレイを設けた従来の手差し給送装置は、その構造上、排出装置より排出方向の下流側に手差し給送用トレイが被記録材の支持面を構成する状態において、その手差し給送用トレイと被記録材の排出装置との間隔が広くなりやすい。これは、手差し給送用トレイが可動範囲において排出装置や他の構成要素に干渉することを回避しつつ、手差し給送用トレイの良好な操作感を実現する上では、この間隔を小さくすることが実際上困難な場合が多いことによるものである。そのため厚紙等の被記録材を手差し給送する際には、その厚紙等の被記録材の先端が手差し給送用トレイと排出装置との間に入り込んで引っ掛かってしまい、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞がある。この手差し給送時における被記録材の引っ掛かりは、腰が弱く先端の垂れ下がりが生じやすい被記録材を手差し給送する際に特に生じやすくなる。
【0013】
本発明の第2の態様に記載の記録装置は、手差し給送用トレイが排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する状態(第1位置に変位させた状態)においては、補助トレイによって、その手差し給送用トレイと排出装置との間に被記録材の支持面が構成される。それによって、被記録材を手差し給送する際に、その被記録材が手差し給送用トレイと被記録材の排出装置との間に引っ掛かってしまうことを防止することができる。したがって、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができる。
【0014】
また補助トレイは、第2位置から第1位置への手差し給送用トレイの変位に連動して、被記録材の排出経路(手差し給送時には手差し給送経路となる経路)に進出する。すなわち、手差し給送用トレイを用いて被記録材の手差し給送を行わない状態(手差し給送用トレイを第2位置に変位させた状態)では、補助トレイは排出経路から退避した位置にあるため、排出装置による被記録材の排出が補助トレイによって妨げられることはない。
【0015】
そして対向配置された二つの支持部材は、支持部材の手差し給送用トレイガイド孔から手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材によって、その相対的な位置関係が保持される。それによって、支持部材の補助トレイガイド孔から補助トレイの凸部が抜けることも防止することができる。つまり、手差し給送用トレイのみならず、補助トレイも含めて、独立した一の単位体として手差し給送装置を組み立てることが可能になる。したがって本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様と同様に、手差し給送装置の組み立て作業に遅延等が生じても記録装置の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、対向配置された二つの前記支持部材を外方へ付勢する付勢機構を有し、前記付勢機構の付勢力によって、前記抜け防止部材と前記支持部材とが係合する部分を支点として、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部と前記補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの前記支持部材を内方へ付勢する力が作用する、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、補助トレイの両側面に設けられた凸部と補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの支持部材を内方へ付勢する力が作用することによって、補助トレイガイド孔から補助トレイの凸部が抜けることをより確実に防止することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記抜け防止部材は、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部に取り付けられる弾性を有するカットワッシャーである、ことを特徴とした記録装置である。
このように、弾性を有するカットワッシャーを抜け防止部材として採用することによって、抜け防止部材を設けることによるコスト増を極めて小さくすることができるとともに、抜け防止部材を設けることによる組み立て作業工程の増加も極めて小さくすることができる。したがって、本発明に係る記録装置を極めて低コストで実現することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前述した第4の態様に記載の記録装置において、前記支持部材は、前記カットワッシャーが係合する溝が前記手差し給送用トレイガイド孔の周囲に形成されている、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が支持部材の外側に突出する量をより小さくすることができるので、手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が記録装置側の部品と干渉する虞を低減させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備え、前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成である記録装置の製造方法であって、前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材により、独立した一の単位体として前記手差し給送装置を組み立てる工程と、組み立てられた前記手差し給送装置を前記記録装置に組み付ける工程と、を含む、ことを特徴とした記録装置の製造方法である。
本発明の第6の態様によれば、前述した本発明の第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェットプリンターの要部外観斜視図。
【図2】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図3】斜め前方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図4】斜め前方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図5】斜め後方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図6】斜め後方から観たインクジェットプリンターの要部斜視図。
【図7】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図8】手差し給送装置の斜視図。
【図9】手差し給送装置の左側部を拡大図示した斜視図。
【図10】手差し給送用トレイを裏面側から拡大図示した斜視図。
【図11】手差し給送装置の左側部の分解斜視図。
【図12】インクジェットプリンターの要部斜視図。
【図13】手差し給送装置の組み付け構造の左側部を拡大図示した斜視図。
【図14】手差し給送装置の組み付け構造の右側部を拡大図示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0022】
<インクジェットプリンター1の構成>
まず、「記録装置」としてのインクジェットプリンター1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、インクジェットプリンター1の要部外観斜視図である。
インクジェットプリンター1の外装10の前面側には、開閉カバー2、操作パネル4及び排出口5が設けられている。排出口5は、記録実行後の「被記録材」としての記録紙Pが排出され、開閉カバー2は、その排出口5を開閉可能に設けられている。操作パネル4は、インクジェットプリンター1を操作するための複数の操作ボタン及びインクジェットプリンター1の操作状態等を表示する表示部とを含む。
【0024】
排出口5の内側の下方には、第1トレイ部21及び第2トレイ部22からなる多段スライド構造体が配設されており、開閉カバー2は、その第2トレイ部22の先端に揺動可能に支持されている。記録紙Pに記録を実行する際には、まず開閉カバー2を符号Aで示した方向へ開き、その状態から開閉カバー2を符号Bで示した方向へ引くことにより第1トレイ部21及び第2トレイ部22を符号Bで示した方向へ引き出した状態とする。この状態おいて、排出口5から排出される記録実行後の記録紙Pは、開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22により構成される排出トレイに積重される。
【0025】
また排出口5の上方には、手差し給送用トレイ23が変位可能に設けられている。「手差し給送装置」を構成する手差し給送用トレイ23は、排出口5から記録紙Pの排出経路を介して記録実行手段へ厚紙等の記録紙Pを手差しで給送する際に使用され、符号Cで示した方向へ引き出した状態で使用可能な状態となる。
【0026】
図2は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
インクジェットプリンター1は、記録紙Pに記録を実行する「記録実行手段」として、搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、記録紙支持部材13及びキャリッジ31を備えている。搬送駆動ローラー11は、外周面に高摩擦被膜が施されており、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー12は、従動回転可能にローラーホルダー121に軸支され、ねじりコイルバネ122のバネ力により搬送駆動ローラー11に当接する方向へ付勢されている。記録紙支持部材13は記録紙Pを裏面側から支持する。キャリッジ31の底部に設けられた記録ヘッド311のヘッド面と記録紙Pの記録面(記録が実行される面。以下同じ。)との間隔は、この記録紙支持部材13によって一定の間隔に維持される。
【0027】
キャリッジ31は、底部に記録ヘッド311が設けられており、キャリッジガイド軸32及びガイドフレーム33によって主走査方向Xへ往復動可能に支持されている。ここで主走査方向Xは、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面に沿って副走査方向Y(記録紙Pの搬送方向)と交差する方向である。キャリッジガイド軸32は、主走査方向Xに沿って配設された金属軸体からなる部品であり、キャリッジ31の軸受部312を軸支する。ガイドフレーム33は、金属板を曲げ加工等して形成された部品であり、主走査方向Xに沿って配設され、キャリッジ31の被当接部313と摺接係合する。キャリッジ31の背面には、公知のリニアスケールセンサー314が配設されている。
【0028】
キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の駆動プーリー341と従動プーリー35との間に掛架された無端ベルト(図示せず)が連結されている。キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の回転駆動力で無端ベルトを双方向回転させることによって主走査方向Xへ往復動する。記録ヘッド311は、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面にヘッド面が対面するようにキャリッジ31に搭載されている。記録ヘッド311のヘッド面には、記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成するための多数の噴射ノズルが配設されている(図示せず)。記録紙Pの記録面に噴射するためのインクは、インクチューブ36を介して記録ヘッド311に供給される。
【0029】
インクジェットプリンター1は、記録実行後の記録紙Pを排出する「排出装置」として、第1排出駆動ローラー14、第2排出駆動ローラー15、第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18を備えている。
第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18は、従動回転可能にローラー支持フレーム24に軸支されている。第1排出従動ローラー16は、第1排出駆動ローラー14より上流側に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面へ案内する。第2排出従動ローラー17は、第1排出駆動ローラー14の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面に当接させる。第3排出従動ローラー18は、第2排出駆動ローラー15の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第2排出駆動ローラー15の外周面に当接させる。
【0030】
このような構成のインクジェットプリンター1において記録紙Pは、搬送駆動ローラー11と搬送従動ローラー12とで挟持され、搬送駆動ローラー11の駆動回転によって記録紙支持部材13上を副走査方向Yへ搬送される。記録紙支持部材13上の記録紙Pは、キャリッジ31が主走査方向Xへ往復動しながら記録ヘッド311のヘッド面から記録面にインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラー11の駆動回転により所定の搬送量で副走査方向Yへ搬送される動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。そして、記録面に記録が実行された記録紙Pは、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15の駆動回転によって、副走査方向Yへ搬送されて排出口5から排出され、排出トレイ(開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22)に積重される。これらの一連の記録制御は、公知のマイコン制御回路を有する制御装置(図示せず)により実行される。
【0031】
<手差し給送装置20>
本発明に係るインクジェットプリンター1の手差し給送装置20について、図3〜図7を参照しながら説明する。
図3及び図4は、斜め前方から観たインクジェットプリンター1の要部斜視図であり、図3は手差し給送用トレイ23が内部に収容された状態、図4は手差し給送用トレイ23が排出口5から進出して使用可能な状態をそれぞれ図示したものである。図5及び図6は、斜め後方から観たインクジェットプリンター1の要部斜視図であり、図5は手差し給送用トレイ23が内部に収容された状態、図6は手差し給送用トレイ23が排出口5から進出して使用可能な状態をそれぞれ図示したものである。図7は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
【0032】
まず手差し給送装置20の構成について説明する。手差し給送装置20は、手差し給送用トレイ23、補助トレイ25及び2つのトレイ支持部材26を有している。
【0033】
手差し給送用トレイ23は、厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際にその記録紙Pを支持する支持面部231を有している。手差し給送用トレイ23の主走査方向Xの両端には、凸部232が形成されている。また、手差し給送用トレイ23には回転軸27が軸支されている。回転軸27は、手差し給送用トレイ23の主走査方向Xの両端から突出しており、その両端にはピニオン歯車28が取り付けられている。
【0034】
補助トレイ25は、支持面部251、第1腕部253及び第2腕部256を有している。支持面部251は、厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際にその記録紙Pを支持する面である。支持面部251には、2つの補助ローラー252が従動回転可能に軸支されている。第1腕部253は、支持面部251の下側に支持面部251と交差する方向へ延出している。第2腕部256は、支持面部251に略沿う方向へ第1腕部253から延出しており、先端近傍に凸部257が形成されている。第1腕部253と第2腕部256の間には、バネ係止部254が形成されている。
【0035】
「支持部」としてのトレイ支持部材26は、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25の主走査方向Xの両外側に配設されている。トレイ支持部材26は、ラック261、第1ガイド孔262、第2ガイド孔263、第3ガイド孔264、バネ係止部265及び補助トレイ係止部266を有している。第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263は、手差し給送用トレイ23を変位可能に支持する。ラック261は、第1ガイド孔262の近傍に第1ガイド孔262に沿って形成されている。第3ガイド孔264は、補助トレイ25を変位可能に支持する。補助トレイ係止部266は、補助トレイ25の可動範囲において補助トレイ25の第1腕部253が当接し、その状態で補助トレイ25の姿勢を規制するために設けられている。
【0036】
手差し給送用トレイ23は、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262に回転軸27が挿通され、トレイ支持部材26の第2ガイド孔263に凸部232が挿通された状態で、トレイ支持部材26に支持されている。つまり手差し給送用トレイ23は、第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263の形状に沿って変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。それによって手差し給送用トレイ23は、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15より副走査方向Yの下流側に記録紙Pの支持面が支持面部231により構成される位置(以下、「第1位置」という。)と所定の収納位置(以下、「第2位置」という。)とをとり得るように変位可能に支持される。
【0037】
またピニオン歯車28は、トレイ支持部材26のラック261と噛合している。つまり、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263の形状に沿って手差し給送用トレイ23が変位する際には、2つのピニオン歯車28及び回転軸27が一体となって符号Eで示した方向へ回転しながら転動する。それによって、手差し給送用トレイ23が変位する際の負荷が軽減され、手差し給送用トレイ23を滑らかに変位させることが可能になる。
【0038】
補助トレイ25は、トレイ支持部材26の第3ガイド孔264に第1腕部253の凸部257が挿通された状態でトレイ支持部材26に支持されている。つまり補助トレイ25は、第3ガイド孔264の形状に沿って変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。また、補助トレイ25のバネ係止部254とトレイ支持部材26のバネ係止部265との間には、「付勢手段」としてのコイルバネ255が掛架されている。補助トレイ25は、そのコイルバネ255のバネ力によって符号Fで示した方向へ付勢されている。つまりコイルバネ255は、第1位置にある手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に進出する方向へ補助トレイ25を付勢している。
【0039】
つづいて手差し給送装置20の動作について説明する。
【0040】
手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態(図3、図5及び図7(a)に図示した状態)では、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15による記録実行後の記録紙Pの排出経路Pa(手差し給送時には手差し給送経路となる経路)より上方に手差し給送用トレイ23が退避した状態となる。この手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態は、図示していない公知のプッシュラッチ機構を利用したロック機構により保持される。またこの状態においては、コイルバネ255のバネ力に抗して、手差し給送用トレイ23の凸部232が補助トレイ25を上方へ押し上げた状態となる。それによって補助トレイ25は、記録実行後の記録紙Pの排出経路Paより上方に退避した位置に係止された状態となる(図7(a))。
【0041】
すなわち手差し給送用トレイ23が所定の収納位置(第2位置)にある状態では、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25は、いずれも記録実行後の記録紙Pの排出経路Paより上方に退避した状態となる。したがって、この状態においては、手差し給送用トレイ23及び補助トレイ25によって妨げられることなく、記録実行後の記録紙Pの排出が可能な状態となる。
【0042】
手差し給送用トレイ23が第2位置にある状態から、手差し給送用トレイ23を押し込むプッシュ操作を行うことによって、プッシュラッチ機構を利用したロック機構のロックが解除される。手差し給送用トレイ23は、補助トレイ25を介して作用するコイルバネ255のバネ力によって、符号Cで示した方向へ変位して第1位置へ移動する。それによって、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15より副走査方向Yの下流側に、手差し給送用トレイ23の支持面部231により記録紙Pの支持面が構成される(図4、図6及び図7(b)に図示した状態)。この状態においては、その手差し給送用トレイ23の支持面部231に厚紙等の記録紙Pを載置するとともに、その支持面部231に沿って厚紙等の記録紙Pをインクジェットプリンター1の内部へ向けて手差し給送方向YRへ押し入れることが可能な状態となる。それによって、排出口5から排出経路Paを介して厚紙等の記録紙Pを手差し給送することを簡単かつ正確に行うことができる。
【0043】
また、その手差し給送用トレイ23の変位により、手差し給送用トレイ23の凸部232による補助トレイ25の係止が解除される。それによって、コイルバネ255のバネ力により補助トレイ25が符号Dで示した方向へ変位して排出経路Paに進出する。すなわち、第1位置にある手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に、補助トレイ25の支持面部251により記録紙Pの支持面が構成される。それによって、厚紙等の記録紙Pを手差し給送方向YRへ押し入れて手差し給送する際に、その記録紙Pが手差し給送用トレイ23と第2排出駆動ローラー15との間に引っ掛かってしまうことを防止することができる。
【0044】
このようにして本発明によれば、手差し給送用トレイ23を介して記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pに折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができる。
【0045】
また補助トレイ25の支持面部251には、当該実施例のように、2つの補助ローラー252を従動回転可能に設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような補助ローラー252を設けることによって、手差し給送用トレイ23を介して記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pに折れ曲がりや損傷等が生ずる虞をさらに低減させることができる。
【0046】
さらに、排出経路Paから退避した状態(図7(a))にある補助トレイ25は、記録実行後の記録紙Pが排出経路Paに沿って副走査方向Yへ排出される際に、その排出される記録紙Pのガイド部材として機能させることもできる。つまり、排出経路Paから退避した位置にある補助トレイ25の裏面(支持面部251の裏側)によって、例えば上向きの反りが生じていることに起因して本来の排出経路Paから逸脱しようとする記録実行後の記録紙Pを本来の排出経路Paへ案内することもできる。より具体的には、例えば補助トレイ25の退避位置を排出経路Paに干渉しない範囲で排出経路Paの上側直近に設定すればよい。それによって、記録紙Pが本来の排出経路Paから逸脱して紙ジャム等が生ずる虞を低減させることができる。さらに、補助トレイ25の支持面部251及びその裏面のいずれにおいても記録紙Pに接触可能に前記の補助ローラー252を配設し、本来の排出経路Paから逸脱しようとする記録紙Pが補助ローラー252に接して本来の排出経路Paへ案内されるようにしても良い。
【0047】
つづいて手差し給送装置20のより詳細な構成について、図8〜図11を参照しながら説明する。
図8は、手差し給送装置20の斜視図である。図9は、手差し給送装置20の左側部を拡大図示した斜視図である。図10は、手差し給送用トレイ23を裏面側から拡大図示した斜視図である。図11は、手差し給送装置20の左側部の分解斜視図である。
【0048】
ローラー支持フレームガイド部材29は、第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18が軸支されているローラー支持フレーム24(図2)を手差し給送用トレイ23の変位に連動して変位させるための部材である。ローラー支持フレームガイド部材29は、トレイ支持部材26の支持面268に沿って符号Gで示した方向へ変位可能にトレイ支持部材26に支持されている。ローラー支持フレームガイド部材29には、略L字形状の長孔291及び長孔292が形成されている。
【0049】
トレイ支持部材26の第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291には、手差し給送用トレイ23の凸部232が挿通されている。また、トレイ支持部材26の第4ガイド孔267及びローラー支持フレームガイド部材29の長孔292には、ローラー支持フレーム24の主走査方向Xの両端に設けられた凸部(図示せず)が挿通されている。したがって、手差し給送用トレイ23が第2ガイド孔263に沿って変位する際に、ローラー支持フレームガイド部材29が符号Gで示した方向へ変位する。そして、そのローラー支持フレームガイド部材29の変位によって、第4ガイド孔267の形状に沿ってローラー支持フレーム24が変位する。その結果、ローラー支持フレーム24は、手差し給送用トレイ23を押し込んだ状態では、排出経路Paに進出し、手差し給送用トレイ23を引き出した状態では、排出経路Paから退避(レリース)することとなる。
【0050】
手差し給送装置20は、手差し給送用トレイ23の両端に設けられた凸部232の各々の端部に、「抜け防止部材」としての第1カットワッシャー41が設けられている。この第1カットワッシャー41は、トレイ支持部材26の「手差し給送用トレイガイド孔」としての第2ガイド孔263及びローラー支持フレームガイド部材29の略L字形状の長孔291から手差し給送用トレイ23の凸部232が抜けることを防止するものである。また手差し給送装置20は、回転軸27の両端に、「抜け防止部材」としての第2カットワッシャー42が設けられている。この第2カットワッシャー42は、トレイ支持部材26の「手差し給送用トレイガイド孔」としての第1ガイド孔262から回転軸27が抜けることを防止するものである。
【0051】
第1カットワッシャー41及び第2カットワッシャー42は、弾性を有する材料で形成されている。このように「抜け防止部材」として弾性を有するカットワッシャーを採用することによって、「抜け防止部材」を設けることによるコスト増を極めて小さくすることができるとともに、「抜け防止部材」を設けることによる組み立て作業工程の増加も極めて小さくすることができる。したがって、本発明に係るインクジェットプリンター1を極めて低コストで実現することができる。
【0052】
また第1カットワッシャー41は、ローラー支持フレームガイド部材29の長孔291に沿って長孔291の周囲に形成された溝293と係合する。つまり第1カットワッシャー41は、ローラー支持フレームガイド部材29の溝293の底面に当接する。それによって、手差し給送用トレイ23の凸部232がトレイ支持部材26の外側に突出する量をより小さくすることができる。したがって、手差し給送用トレイ23の両側面に設けられた凸部232がインクジェットプリンター1側の部品(例えば後述するサイドフレーム等)と干渉する虞を低減させることができる。
【0053】
対向配置された2つのトレイ支持部材26は、この2つの第1カットワッシャー41及び2つの第2カットワッシャー42によって相対的な位置関係が保持される。それによって、トレイ支持部材26の第1ガイド孔262及び第2ガイド孔263に手差し給送用トレイ23が支持された状態が保持される。またトレイ支持部材26の「補助トレイガイド孔」としての第3ガイド孔264に補助トレイ25が支持された状態が保持される。さらにトレイ支持部材26の第4ガイド孔267にローラー支持フレーム24が支持された状態が保持される。すなわち、手差し給送用トレイ23、ローラー支持フレーム24及び補助トレイ25が2つのトレイ支持部材26に支持された状態が保持される。つまり手差し給送装置20は、この2つの第1カットワッシャー41及び2つの第2カットワッシャー42によって、独立した一の単位体として組み立てることができる。
【0054】
回転軸27は、手差し給送用トレイ23の側部233に形成された貫通孔及び手差し給送用トレイ23の裏面側に形成された複数の軸受部234により手差し給送用トレイ23に軸支されている。回転軸27には、「付勢機構」を構成するワッシャー271、272、ワッシャー止め部材273及びコイルバネ274が設けられている。ワッシャー271、272は回転軸27に軸支されている。ワッシャー271は、手差し給送用トレイ23の裏側の係止壁面235に当接している。ワッシャー272は、回転軸27に形成された周溝275に嵌合しているワッシャー止め部材273に係止されている。コイルバネ274は、回転軸27に軸支された状態で、ワッシャー271とワッシャー272との間に縮設されている。
【0055】
コイルバネ274のバネ力によって、手差し給送用トレイ23が符号Gで示した方向へ付勢され、その結果、対向配置された2つのトレイ支持部材26は外方へ付勢されることとなる。それによって、補助トレイ25の凸部257と第3ガイド孔264とが係合する部分には、第1カットワッシャー41で抜け止めされている部分(第1カットワッシャー41とトレイ支持部材26とが係合する部分)を支点として、対向配置された2つのトレイ支持部材26を内方へ付勢する力が作用する。それによって、第3ガイド孔264から補助トレイ25の凸部257が抜けることをより確実に防止することができる。
【0056】
つづいてインクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造について、図12〜図14を参照しながら説明する。
図12は、インクジェットプリンター1の要部斜視図であり、手差し給送装置20の組み付け構造の全体を図示したものである。図13は、インクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造の左側部を拡大図示した斜視図である。図14は、インクジェットプリンター1に対する手差し給送装置20の組み付け構造の右側部を拡大図示した斜視図である。
【0057】
インクジェットプリンター1の骨格の主要部は、板金加工により形成されたメインフレーム6、センターフレーム7、左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9により構成される。センターフレーム7はメインフレーム6にネジ止め固定されている。左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9は、メインフレーム6とセンターフレーム7にネジ止め固定されてメインフレーム6及びセンターフレーム7に支持されている。左サイドフレーム8及び右サイドフレーム9には、前述した搬送駆動ローラー11や記録紙支持部材13が支持される。
【0058】
独立した一の単位体として組み立てられた手差し給送装置20は、インクジェットプリンター1の左サイドフレーム8と右サイドフレーム9にネジ止め固定されて組み付けられる。より具体的には、手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26が左サイドフレーム8にネジ止め固定され、手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26が右サイドフレーム9にネジ止め固定される。
【0059】
手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26は、左サイドフレーム8の矩形孔81に係止凸部269が係合し、左サイドフレーム8の係止端部82に当接部26aが当接し、左サイドフレーム8の円形孔83に位置決め凸部26bが係合して位置決めされる。そして、左サイドフレーム8の孔84に挿通され、トレイ支持部材26に形成されたネジ孔(図示せず)に螺合するネジ85によって、手差し給送装置20の向かって左側のトレイ支持部材26が左サイドフレーム8に固定される(図13)。
【0060】
手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26は、回転軸27の右端部、ピニオン歯車28及びラック261が右サイドフレーム9の孔94を通じて外側に突出した状態で、位置決め凸部26c、位置決め凸部26d、位置決め凸部26eが右サイドフレーム9の円形孔91、円形孔92、円形孔93に各々係合して位置決めされる。そして、右サイドフレーム9の孔95、孔96に挿通され、トレイ支持部材26に形成されたネジ孔(図示せず)に螺合するネジ97、ネジ98によって、手差し給送装置20の向かって右側のトレイ支持部材26が右サイドフレーム9に固定される(図14)。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、手差し給送装置20の組み立て工程をインクジェットプリンター1の製造ラインから分離独立させることができる。つまりインクジェットプリンター1の製造ラインとは別個の独立した製造ラインで、インクジェットプリンター1の組み立てと並行して手差し給送装置20の組み立て作業を行うことができる。したがってインクジェットプリンター1の製造ラインでは、独立した一の単位体として組み立てた手差し給送装置20をインクジェットプリンター1に組み付ける作業だけ行われることになる。それによって、手差し給送装置20の組み立て作業に遅延等が生じてもインクジェットプリンター1の製造ラインが受ける影響を最小限に止めることができる。
【0062】
これにより本発明によれば、可動式の手差し給送用トレイ23を設けた手差し給送装置20を備えたインクジェットプリンター1の製造工程において、インクジェットプリンター1の製造効率が低下する虞を低減させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 インクジェットプリンター、8 左サイドフレーム、9 右サイドフレーム、20 給送装置、23 給送用トレイ、231 支持面部、232 凸部、233 側部、234 軸受部、235 係止壁面、24 ローラー支持フレーム、25 補助トレイ、26 トレイ支持部材、26a 当接部、26b〜26e 位置決め凸部、27 回転軸、28 ピニオン歯車、29 ローラー支持フレームガイド部材、31 キャリッジ、41 第1カットワッシャー、42 第2カットワッシャー、P 記録紙、Pa 排出経路、X 主走査方向、Y 副走査方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、
前記手差し給送装置は、
前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、
対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成であり、
前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材が設けられている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、前記第2位置から前記第1位置への前記手差し給送用トレイの変位に連動して前記排出経路に進出し、前記第1位置にある前記手差し給送用トレイと前記排出装置との間に被記録材の支持面を構成する補助トレイを有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記補助トレイが配設され、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の補助トレイガイド孔に挿通され、前記補助トレイガイド孔に沿って前記補助トレイが変位する構成である、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、対向配置された二つの前記支持部材を外方へ付勢する付勢機構を有し、前記付勢機構の付勢力によって、前記抜け防止部材と前記支持部材とが係合する部分を支点として、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部と前記補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの前記支持部材を内方へ付勢する力が作用する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記抜け防止部材は、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部に取り付けられる弾性を有するカットワッシャーである、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記支持部材は、前記カットワッシャーが係合する溝が前記手差し給送用トレイガイド孔の周囲に形成されている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備え、
前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成である記録装置の製造方法であって、
前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材により、独立した一の単位体として前記手差し給送装置を組み立てる工程と、
組み立てられた前記手差し給送装置を前記記録装置に組み付ける工程と、を含む、ことを特徴とした記録装置の製造方法。
【請求項1】
被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、
前記手差し給送装置は、
前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、
対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成であり、
前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材が設けられている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、前記第2位置から前記第1位置への前記手差し給送用トレイの変位に連動して前記排出経路に進出し、前記第1位置にある前記手差し給送用トレイと前記排出装置との間に被記録材の支持面を構成する補助トレイを有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記補助トレイが配設され、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の補助トレイガイド孔に挿通され、前記補助トレイガイド孔に沿って前記補助トレイが変位する構成である、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、対向配置された二つの前記支持部材を外方へ付勢する付勢機構を有し、前記付勢機構の付勢力によって、前記抜け防止部材と前記支持部材とが係合する部分を支点として、前記補助トレイの両側面に設けられた凸部と前記補助トレイガイド孔とが係合する部分に、対向配置された二つの前記支持部材を内方へ付勢する力が作用する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記抜け防止部材は、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部に取り付けられる弾性を有するカットワッシャーである、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、前記支持部材は、前記カットワッシャーが係合する溝が前記手差し給送用トレイガイド孔の周囲に形成されている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備え、
前記手差し給送装置は、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成するための手差し給送用トレイと、前記排出装置より排出方向の下流側に被記録材の支持面を構成する第1位置と所定の収納位置である第2位置とをとり得るように前記手差し給送用トレイを変位可能に支持する支持部材と、を有し、対向配置された二つの前記支持部材の間に前記手差し給送用トレイが配設され、前記手差し給送用トレイの両側面に設けられた凸部が前記支持部材の手差し給送用トレイガイド孔に挿通され、前記手差し給送用トレイが前記手差し給送用トレイガイド孔に沿って変位する構成である記録装置の製造方法であって、
前記手差し給送用トレイガイド孔から前記手差し給送用トレイの凸部が抜けることを防止する抜け防止部材により、独立した一の単位体として前記手差し給送装置を組み立てる工程と、
組み立てられた前記手差し給送装置を前記記録装置に組み付ける工程と、を含む、ことを特徴とした記録装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−157190(P2011−157190A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20962(P2010−20962)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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